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ー硝子の少年時代ー …いろんなこと 話したけれど 好きだってことが言えなかった~ 真下から見上げる花火は迫力満点、サウンドも満点だ。 きれい… そう言ってヒトミちゃんは両膝を立て、頬杖をついた… いつもの、グランドで見かける風景だ… ひ・ら・め・い・た ボクは、両膝を立て、頬杖をついた… ヒトミちゃんが笑ってくれた… 刹那。 ヒトミちゃんは右腕を、ボクの左腕に、下から組んできた… “激熱…” 大きな大きな花火は、レモンシャンプーの香りがした… そうか、ヒトミちゃんも家を出る前にお風呂に入って、シャンプーして来たんだな。 ボクは、あらゆる事態を想定し、歯磨きもしてきた… やがて、仕掛け花火が始まった。 わーっ!! 香ばしい火薬の匂いの間隙を縫って、レモンシャンプーの香りと、左腕をくすぐるサラサラロングヘアの感触… “こ、股間が、激熱…” 落ち着け、落ち着け、五年生が股間を激熱にしてどうするのだ!! いろんなこと話したけれど、なにかがタリナイ、のだ。 クライマックスは大花火のレンダンレンダンレンダンレンダン。 夢見心地。 華やかな、儚さ残る闇の中、終了アナウンスが流れ、人々は帰途につく… キレイだったね、 うん、 終わっちゃったね、 ヒトミちゃんはそう言ったが、席を立とうとはしない、組んだ腕を離そうとはしない。 ナニカガタリナイ。 ボクの頭の中の思考回路が逆流し始めた。 否定を前提としていた回路が、楽観論へと、肯定的思考へと変化した。 レモンシャンプーの香りは、腕に触れるサラサラロングヘアは、組んだ腕は、ボクの背中を強く押した。 金魚すくいしようか? えっ? いいのぉ!? 混乱した…。 想定に無いコトバだった。 うん、行く、か、ダメだよぉ、誰かに見られたら困るもんっ、のはずなのに… いいの?いいの?いいの?いいの?いいの?… 危うく、思考の深い海に陥りそうになるボクを、押しとどめたのは、 ヒトミちゃんの笑顔だ。 笑ってくれてるんだから、否定的な意味ではない、と、理解した。 こんなにたくさんの人がいるんだ、見つからないだろう、もう時間も遅いんだ、小学生達は帰っているだろう、もし見られたって今は夏休みだ、二学期まで1ヶ月もある。忘れちゃうだろう… そう自分に言い聞かせた。 今日とゆう日は唯一なのだ。 そう自分を言いくるめた。 うん、ヨーヨー釣りもしようよ、たこ焼きも食べようよ… ……。 土手の斜面を手を繋いで上がり、道路を手を繋いで渡り、夢の屋台村へと降りた。 アイスクリン屋さんでレモンシャーベットとバナナシャーベットを買う。 当然だが“昔ながらの”とは書かれてはいない。 どっち? じゃあレモンシャーベット、 おいしい? と言ってレモンシャーベットをボクに、ボクはバナナシャーベットをヒトミちゃんに… 交互に、食べた。 “間接キッス” こ、股間が、イヤ、胸が激熱…。 ヨーヨー釣り。 どれがいい? あの、アサガオのがいいなぁ。 アキ君は? 紫色のがいい。 お互いの気に入ったものを取り合い、交換した。 繋いだ手をぶらぶらさせながら歩き、ウワメヅカイに見つめるヒトミちゃん。 “激熱…” いよいよ夢の金魚すくいの時は訪れた。 狙いは、デメキン!! ヒトミちゃんは3匹の赤い、カワイイ金魚。ボクは、赤金魚4匹と赤デメキン捕獲に失敗。 すると… その金魚と交換してあげるよっ!! テキ屋のオヤジはいつの時代も子供にはやさしい。 ありがとうございます。 ボクは丁寧に頭を下げてお礼を言い、ひとつのビニールに入れてもらえるようにお願いした。 セツナ。 カワイイ彼女にあげるよっ、と言ってもう1匹デメキンを入れてくれた。 ヒトミちゃんの笑顔がはじけたっ!! いつの時代もテキ屋のオヤジは美少女には果てしなくやさしい。 “永遠に楽しい” 荷物が出来ても手はハ・ナ・サ・ナ・イ。 ずっと、待っててくれる、みどりちゃんの為にリンゴアメを買った。この頃はリンゴアメと言えばひとつしかなかった。大きなリンゴアメ。 永遠に楽しいはずの時も終わりが来るんだと知る。 ヒトミちゃんが、ワタアメを買ってくれた。 袋に描かれてたのは、 “マジンガーZ” ヒトミちゃんは、 “ひみつのアッコちゃん” みどりちゃんが笑顔で待っててくれた。 手をつないでるボク達を見て… “あっつ~いっ”と言った。 当時、いちゃつくカップルを冷やかす時のキマリ文句だ。 みどりちゃんありがとう、と言ってリンゴアメをあげた。 ありがとう。 いつもお世話になってるお礼だから… どういたしましてっ!! 3人で、笑った。 みどりちゃんは、言った。 “ヒトミ、よかったね…” うん…。 みどりちゃんはボグにヒントをくれた。 いいのぉ!? と、 ヒトミ、よかったね!? 3人で歩いて帰った。 両手に花。 みどりちゃんが聞いた。 ヒトミ、なにがイチバン楽しかった? ……。 ボグはなぜかドキドキドキドキドキドキ… カ・キ・ゴ・オ・リ… 驚くみどりちゃん。 永遠に楽しい。 初めての景色をボグは忘れない。 1973年の夏だった。
2010.04.30
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ー硝子の少年時代ー 我が町の夏の一大イベント “川祭り大花火大会” …いいのぉ? ボクは、この意味を知りたくて、書いてきたのだ。 もちろん、大袈裟だ。 夏休みに入ってから二回目の土曜日。 ナナガツサンジュウニチ・ハレノチハレ。 気がかりは、理不尽な夕立だけだ。 そわそわそわそわそわそわそわそわそわそわそわそわそわそわ… ついに、待ちきれず、3時過ぎに家を出た… 誰と行くの?、と、ママ。 無視っ! ヒトミちゃんによろしくね!! ギョッ… ママは今朝の電話を知っている。 もしもし… こんにちは、ミヤモトヒトミです。 あ~ら、こんにちは、ちょっと待ってね…アキ君~、ヒ・ト・ミちゃんからお電話よ~ そう言うことだ。 ボクは、あらゆるお誘いにトラップの限り、無い知恵の限りを尽くし、この日を迎えた。 すべては、 君の髪の香りはじけた… で、あり、 浴衣姿眩しすぎて… の、為だ。 本格的な出店が、数十軒、我が町のみんなが集まってくるであろう。この頃、この時代、希望だけが、明るい明日だけが約束されていた。 好景気に沸き立ってスポンサーの数も、単価もウナギノボリ… 夜8時から始まる花火は延々と9時まで続くのだ。隣り町からも、たくさんの人々が訪れるだろう。 ボクは、軒を連ねる屋台の配置を記憶し、イメージを繰り返した。 あーで、こーで、これだから、こうなって、あーで、こーで、、、 そう、大切なのは純粋な、イメージなのだ。 おはよっ、 うん、おはよう、 ヒトミはどうしたらいいの? うん、あーで、こーで… わかった。じゃあ7時半に行くねっ、 うん。 ヒトミちゃんはいつもお姉ちゃんぶって話すのだ。まぁ、年上だからいいか… ホントは手を繋いで堂々と夜店を見て回り、金魚すくいをして、かき氷を食べながら花火を見る…そうしたいが、そうできない理由がある。 トラブルは絶対ダメだ、誰かに見られちゃダメだ、失敗は許されない。 おてて、つないで、夜道をゆけば…は、あきらめた。 暗闇にまぎれて花火をふたり並んで見る、 これだけは、達成しなくちゃ… 考えて、考えて、考えて、考えて… 大切なのは、純粋なイメージ、なのだ。 ヒトミちゃんは浴衣姿で現れた。となりには親友の、みどりちゃん。 危うく、かっわいいーーーーーーっ!!!!!と、叫びそうになったが、なんとか、自重した。 みどりちゃんはボク達のただひとりの応援団だ。 じゃあ私、いくね… うん、ありがとう。 どういたしましてっ!! やっぱり、お姉ちゃんぶって話す。 美しい夕焼けも過ぎ、薄紫色がやがて漆黒となり、イメージに描いた“冒険”の始まりだ。 川づたいに土手の下を花火大会観覧席に向かって歩く… 楽しいね、 うん。 ボクは誰かに見られてないかキョロキョロ… アキ君、 なに? ううん、なんでもない… 暗闇で、表情は見えなかった。 空砲がなり、開演の放送が始まった頃、ボク達は人知れず、無事に、イメージ通りの場所にたどり着いた。 楽しいね、 うん、ちょっと待ってて… ボクはひとり土手の斜面を駆け上がり、イメージ通りの行動をした。 はいっ、これっ! わーっ!!ありがとう… かき氷が、ひ・と・つ。 当然、いちごみるく味。 そして、 ストロー が、 ひ・と・つ はいっ、これっ! ヒトミちゃんは、ストローを手にとり、くれた。 なにもかもが、イメージ通りの進行。 そう、大切なのは純粋なイメージ。 ボクはかき氷を受け取り、ふたりで交互に食べた。 たったひとつのストローで… ウマレテキタナカデイチバンオイシイカキゴオリダッタ ショータイムの始まりだ。 わーっ、キレイっ!! うん、、カワイイ…、 さぁ、はっじまるよーーーっ。 ヒトミちゃんは六年生だった。
2010.04.29
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ー硝子の少年時代ー この頃、男子中学生・高校生に圧倒的人気を誇った女優がいた。 “小林麻美” スレンダーな肢体にサラサラロングヘア、大きな瞳、そしてキュートな声。 7月になると毎週土曜日の夜は市町商店街で夜店が開かれる、それは月末の町民花火大会への序章の日々の始まりだ。 出店もプロのテキ屋のそれでは無く、商店街の皆さん、商工会の皆さんの手作りの、それだ。 楽しい。 ボクは明るいうちから出向いてウロウロウロウロするのが大好きだった… 宴の前の厨房の喧騒ににた空気がたまらなく、 楽しい。 メインとなるのは生協入り口前のいつもは自転車置き場となっているところに広げられた“投げ輪”会場。 楽しい。 ヨーヨー、たこ焼き、綿菓子、くじ引き、スーパーボール、そして、金魚すくい、ミドリガメ釣り、 “カラーひよこ” 暗くなり、電灯がつくまでに七回は行き来している。 楽しい。 ママは言うのだ。 生き物は買って来ちゃダメよ。金魚もいるし、ミドリガメは臭いし、絶対に“ひよこ”はダメよ。いつも死んじゃって泣くんだから… 一番泣くのはママだった。 土曜日の夜、我が家には必ず、赤や青や黄色のひよこがいた。 ピーピーぴーぴーピーピーぴーぴーピーピーぴーぴー…… だから、名前は、 “ぴーこちゃん” オスであろうがメスであろうが、赤かろうが青かろうが、毎年、 “ぴーこちゃん” 真夏にコタツ出して面倒みるのはママだ。 ぴーこちゃんは秋にはいなくなる。 次の夏、 ぴーこちゃんは必ずやって来る。 買ってくるのは、名付け親は、ヒロシだ。 ひよこが青い訳はない、赤であろうはずは無い。 赤いたまご産むかなぁ、青いたまご産むかなぁ… ヒロシは、やんちゃで暴れん坊で少しバカだが、ボクより余程純粋で正直でやさしいヤツだ。 暗くなり、本番が始まるとパーティータイムの始まりだ。 いつもの商店街が、通学路がリオのカーニバルとなる。 この胸の高鳴りはなんなのだろう… この押さえきれない高揚感はなんなのだろう… たまらなく、楽しい。 アキ君… アキ君… 生協横路地の暗がりから聞こえる囁き声、 吸い込まれるように、赤い糸に導かれるように引き寄せられていく… そこには、浴衣姿のヒトミちゃんがいた。 はいっ、これ、あげる。 ふたつ同じ柄のヨーヨーのひとつをボクにくれた。 高揚感の、胸の高鳴りの源はこれだった。 あの事件以来ボクとヒトミちゃんは立ち話もままならず、監視の目にさらされていた。 彼女であるとか、付き合ってるとか、はっきりしないままずっと来ていた。 ボクだって純粋な時代はあったのだ。 アキ君、明日遊ぶ? 暗がりから聞こえるささやきは、甘く危険な香りがした。 ヒトミちゃんはスレンダーな肢体にサラサラロングヘア大きな瞳、だった。 そして、 ハスキーボイスだった。 君がいた夏は遠い夢の中空に消えてった打ち上げ花火… 時代を、世代を超えて歌われる夏祭りは永遠だ。 ボクは五年生だった。
2010.04.27
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ー硝子の少年時代ー 考えろっ、考えろっ… 今回のことでボクは多くの経験をした。 学ばなければイケない。 危うく小学校五年生で女性関係のもつれから失敗したヤツと笑い物になるところだった。 たとえそれが不可抗力であったとしても、、だ! 学ばなければイケない。 考えろっ、考えろっ、考えろっ… 学べないなら、ただのバカと言うレッテルを貼られる、誰に? ボク自身に… 学び、考えて、備えれば、経験値となる。 学ばず、考えず、同じ過ちを繰り返せば、作法室が、職員室となり、ジンノ先生がイノブ先生となる。 そう言うことだ。 考えろっ、考えろっ、考えろっ、、考えて、手を打った… ラブレターは受け取る。 しかし、返事は書かない しかし、口頭で本人に直接、お礼とお断りを入れる。 周りのみんなを、巻き込まない。 そして、 ウエダとは学校ではツルマナイ!! わかってたことだが、ふたりが並んで話してると、ロクなことがおきないのだ。周りのみんなに緊張感を与えてしまうのだ! ウエダは言う… お前はどうでも良いことを一生懸命考えるヤツやなぁ… その時になってみんとわからんやろ? ラブレターなんてもらわんかも知れんし、好きな子からもらっても断るんか? ふたりで、笑った。 まぁ、でも、お前が言うんやからオレもそれで、ええよ。きっとそうなるんやろうなぁ、って思えてくるから不思議やな、アキは。 うん、オレもお前と職員室はまっぴらゴメンや。職員室はひとりで行って、ひとりで怒られてっ!! アホかっ! ウエダの家で、コーラとポテトチップス食べながら、寝転んで話した。 まだ、コーラにウイスキーは入っていない。 ボク達は、まだ青春時代手前の小学校五年生なのだ。 夏休み前の林間学校でテント張って寝てたら暑くて暑くて両足を外に出したら気持ちよくて涼しくて熟睡できた…が、が、足の裏までトコトン蚊に刺されて、痒くて痒くて、足の裏かくと、くすぐったくてくすぐったくて、痒くて、くすぐったくて、痒くて、くすぐったくて… どんなに偉そうに理屈コネテても、 ボクは五年生なのだ。
2010.04.25
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ー硝子の少年時代ー 考えろ考えろ考えろ考えろ… 弁当を食べ終わる頃、ズカズカとウエダはボクの教室にやって来た。 マズイッ。 ガラスのように繊細な年頃の五年生は狭い地域社会の中で生きている。仲間意識が強く、外部との関係性に敏感だ。同級生とは言え、知った顔とは言え、クラス外の生徒の侵入を快くは思わない。 ましてや、今、ボクとウエダが一緒にいることに嫌悪感を抱いている生徒も多数いるはずだ。ウエダだから、黙っている、そう言うことだ。 視線が冷たく感じる。 ウエダはそんなこと意に介さない、でもボクは違う、 考えろ考えろ考えろ… 無言でウエダに目配せして教室を出た。 何か言いたげなウエダを制し、階段を下りた。 なに言われると思う? さあなぁ… 考えてなかったんか? いつも怒られてるお前やったらわかるやろ? アホッ! アキはどうおもうんや? 怒られるんじゃ無いと思う… で? 怒られるなら、教室とか職員室やろ?それにいくら考えても理由は無いしな… やな、で? 怒られるような理由は無いんやから堂々としててええと思う、でも、何か言われるかもしれない心当たりは、ある、やろ? まぁな、で? ジンノやし、作法室やし、適当にやってたらなんとかなるやろ? そうか? だから、お前も反抗的な態度からいかんと、睨んだりせんと、何でしょう?ジンノ先生って顔、、、出来るか? あはは…。やってもええよ。 じゃあ、決まり。質問された方が質問されたことだけ答える。これでどうや? アキ。 なんや? お前はやっぱりオレよりワルやな。 はぁ?! ふたりで、笑った。 作法室なんて初めてだ。 少し不安で、少しワクワクした。 ボクに怒られる理由は無い、だが、ウエダには少し、ある。ふたり合わせてチョット注意される程度の事だと判断した。 ジンノ先生は、茶菓子と煎茶を用意して待っていた。 ボク達の勝利を確信した。 なぜ呼ばれたかわかりますか? ウエダ君。 いえ、わかりません。 じゃあ、アキ君は? はい、よくわかりません。 よく、わからない? はい、ウエダ君と一緒に呼ばれたので、もしかしたら…と言うのはありますが、叱られたりするようなことはしていませんから… …ウエダ、、わ・ら・う・な・よ。 ウエダ君どう? アキ君に言われてみればそうかなぁ、と思います。 ジンノ先生は言葉に詰まった。 トドメを刺す… あなたたち、ふたりは悪いことはしていません。でも注意しておきたいことがあります。わかりますね? はいっ! はいっ! 先生からのお願いなんだけど聞いてくれるかな? ……。 六年生の女の子達とあまり喋ったりしないで下さい。騒がれて楽しかったり、嬉しかったりするだろうけど、あまり良いことではありませんから。 まったく正当性の無い話だ。ジンノ先生もわかって言っている。 はいっ、ボクは六年生の女の子達と話したりしたことはありませんが、いつも騒がしくて迷惑かけてるなと思ってました。 そうなの? でも、困ってるボクを見てウエダ君が助けてくれようと女の子達に話してくれてました。 そうだったの? はい、アキ君が知らない子にラブレターもらって困ってました。 ジンノ先生は不覚にも笑ってしまった。 ラブレターもらって困るの? はいっ、どうしたらいいかわからなくて… ジンノ先生は、白旗を上げるように言った。 じゃあ先生が助けてあげますから、それでいい? はいっ、お願いします。 ーウエダ、わらうなよ。 女の子達には先生から言っておきます。だからふたりも廊下をウロウロしたりせず、話しかけられても相手にしたりしないでね?出来るかな? はい、先生から言ってもらえたら助かります。 じゃあ、お菓子食べていいわよ。 はーいっ! ジンノ先生も教師だ。アメトムチを駆使するのだった。 アキ君! は、はいっ! この事は、イノブ先生には言わないでおきますから、、ねっ! 危うく、クッキーを吹き出しそうになった。 ウエダめっ!ガマン出来ず笑いやがった! 一番の不安事を最後に出してクギを刺すとは… 悔しいのでお菓子を全部食べてやった!! 教室への帰り道… アキ、お前はやっぱりオレの友達や…。 えっ? お前の予想通りやった。全部な。 ……。 ジンノもビックリしてるで…。 なにを? オレがあんなに素直にジンノの話聞いたのなんて初めてやからな…。 へぇ…。 そうさせたんはお前やってジンノはわかったはずや。 そうかなぁ… お前は、やっぱりオレよりワルいな。 ふたりで笑った。 ジンノ先生には川を渡った隣の山野里地区に住んでいた。そして、子供がいた。ボク達と同じ五年生の女の子だった。二年後、中学校で同窓となる運命だ。入学後、ボクはその子供と知り合う。 名前を、ジンノミカと言った。 後の演歌歌手と同じ名前だが、当然、別人だ。 こう言われた。 あなた、アキ君? うん、ジンノ先生の子供? ……。 笑いながら、無言。 なんか、言えよ。 お母さんに、アキ君と言う子とウエダ君と言う子には気をつけなさいって、手強いからって…。 えっ!? 安心して、お母さん笑いながら言ってたから… あのさぁ… ジンノミカちゃんはお母さんを小さくしたような子だった。かしこいな、と感じた。 こちらも注意が必要だ。 ボクは五年生だった。
2010.04.24
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ー硝子の少年時代ー バカは~死ななきゃなおらない~、当時、大流行したギャグ歌。 お前、カッコつけてるなぁ…!! 当時、因縁付けるときの常套句。 はぁ?! たしか、コイツはヤナガワ、コイツがフナビキ、で、コイツがオガワ。オガワの弟はボクの同級生でアホだが友達だ。 はぁ?!とはなんや!! プチマッソォ~!! 笑っちゃイケない。プチマッソォ~とは、ドヅクゾッ、殴ったるぞっ、の意だ。 ーお前ら、死ぬぞっ!笑いを堪えるのにも限界があるー はぁ?!は、はぁ?!じゃ… バカは死んでも~治らな~いぃー。 当時、大流行のギャグ歌のオチ歌。 にらみ合う… 刹那。 アキーーーーっ!!!! 遠くから聞こえ、疾風のように近づいてくる… バカヅラ三人の顔色が一瞬で青ざめ、恐怖に変わった。 普通の頭してりゃ、わかる道理。 ボクに向かってた怒りの目は、懇願の、悲哀に満ちた目となった。 救いようが、無い。だからバカとプライドが無いヤツはキライなのだ。 騒がれ、チヤホヤされ、注目されてるボクにムカついたのだろう、同級生の女の子達が年下の男の子に夢中なのに嫉妬したのだろう、でも迷惑してるのはボクも同じだ。 今、ボクが呼び出され連れていかれたのを出待ちの彼女たちは当然見てる…。心配した彼女たちがウエダに助けを求めに行くのは当たり前だろう… 今、この学校で五年生とは言えウエダに刃向かえるヤツなんていない。そして、ウエダの親友と言えばボクしかいない。 こうなることは一年生にだってわかる道筋だ。 アキーっ、どうしたんや、大丈夫か? そう言う目が笑ってる。女の子達と話してる時の何倍も嬉しそうな目をしている。 お前はわかりやすいヤツだな… おいっ、アキ呼び出してなんの用やっ! ………。 オレの友達やって知っててやってるんか? ………。 ボクは、虎の威を借るなんとやら、なんて大っキライだ。 ウエダ。 ん? もう、ええ。 ん? これはオレとコイツらの話やろ? まぁ、そうやけど…。 見てみっ!かわいそうやろ? 今にも泣き出しそうなバカヅラ三人。 ウエダとボクは顔を見合わせて笑った。 ウエダはこう言った。 アキひとりでも大丈夫やったなぁ… そう言うことや。 こわ~い顔になったウエダはバカヅラ三人に、こう言った。 お前ら、アキにお礼言って、サッサと散れっ!アホッ! お礼なんていらんよ…。みんな迷惑してるんやから…。 慌てて六年生の“カッコつけてる”カッチャンがやって来た。 どうしたん? カッチャン、同級生くらいちゃんとみとけよ。 あっ、ゴメン。 はよ、コイツら連れて行けや… うん、わかった… カッチャンもただの根性無しの六年生だった。 ウエダ。 なんや。 暴れたかった? うん、チョットな。 ゴメンな、ジャマして… 二人で、笑った。 それにしても目立ちすぎた。この場面は鉄筋校舎三階の多くの生徒達が見ていた。 やがて、この一連の狂想曲はピークを迎え、やがて災いとなる。 そりゃ、そうだ。 ヒトミちゃんによると、コイタニさんの友達たちと他の生徒達が険悪な関係に陥りクラス全体がピリッとしてるらしい。当然ヒトミちゃんはどちらとも関わりは持ってなかった。 ボクのクラスの女の子達も不愉快な思いをしている。自分達のエリアである教室前をウロウロされ占拠され、騒がれ、先輩だし、微妙な年頃だ。 フラストレーションはピークに達していた。 アキ君!! なに? なにじゃないやんっ!みんなイヤがってるよ。 ずっと一緒に過ごして来た仲間だ、無碍にも出来ない。 うん、悪いなぁ…。でもオレも困ってるんや…。 ホント? うん、別になんとも思ってないし… そうなん? そうや…。 すると… クラスの女の子数人で抗議しに行くとゆう… や、やめといたほうがええん違う? なんでよっ! なんでって…。喧嘩とかなったら困るやろ? この年頃の女子は男子より余程賢くて度胸も体力もある。口八丁手八丁ってヤツだ! アキ君だって六年生の男子と揉めてたやんっ! まぁまぁ…。 ボクが余程情けない顔してたのか、かわいそうに思えたのか… わかったわ、行くのはヤメとくわ!でもアキ君、どうにかしてよっ! うん。なんとかするわ。 そう言ったものの、どうしたらいいのか見当もつかない。 これを災難といわずしてなんとゆうのだろう… 青天の霹靂。 国語の授業が終わった。先生はウエダの担任のジンノ先生だ。教室を去り際にボクを廊下に呼び出した… アキ君。 はい。 お昼休み時間に“作法室”に来なさい。先生待ってますから。 は、はいっ。 作法室は木造校舎二階の一角にひっそりとあった。家庭科教室の隣りだ。 ほどなくして、 アキ、ジンノに呼ばれた? お前もか? うん。 なんかしたんか? なんかしたんかってオレとお前が呼ばれるってことは… ボク達は五年生だった。
2010.04.23
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ー硝子の少年時代ー 恋は未知なるもの。 運動神経抜群で、ブサイクな訳でも、バカな訳でも無いがウエダはモテない。 運動神経抜群で、格好良くて、そこそこの学業成績のボクは、騒がれる。 違いは、色々あるだろうが、ボクは“待ち”ウエダは“攻め”のタイプ。 いろはの、い、が違うのだ。 五年生の二人に現状を正しく解析出来る知恵も経験も無い。 ボクが騒がれて嬉しかった訳でも無い。 騒ぐ女の子に、ロクナヤツハイナイノダ…。 騒いで、どうにかなるとでも思って騒いでいるのだろうか? どうにかしたいと思って騒いだり、友達にお願いしたりしているのだろうか? 映画・小さな恋のメロディーに学ぶ。 メロディーに夢中になったダニエルに周りの生徒達が騒ぎ立てる。 メロディーは、ダニエルに、こう諭す、そう、諭す。 …みんなが騒いでるけど、好きなら直接私に言えばいいのに… なぜ、メロディーは不愉快に騒ぎ立てられても、なぜダニエルはセオリーに反して騒ぎ立てても、二人は結ばれたのか… 答えは簡単だ。 ダニエルが、かわいかったからだ。 そういうことだ。 鉄筋校舎三階の風景と匂いは、騒がしく、僕達二人には迷惑となった。 毎朝、毎休み時間、お昼休み、下校時、ボクの教室の前の廊下にやって来る女の子達、それを目当てにやってくるウエダ。 ボクはラブレターを読まなかった。 ボクは女の子達を無視した。 当然、返事も書かなかった。 “コイタニ”さんを初めて見た。 色が白くて目元パッチリ、瞳は茶色でソバカスがあり、中肉中背、ごく普通、イヤ、むしろ可愛い女の子だった…。おとなしい感じの子だった。 廊下で“出待ち”しているのは彼女の友達だけだ。 無視し続けるボクにウエダは言う。 一回くらい話したれよ。 なぁ、ウエダ。お前やったらうれしいか?いつも待ち伏せされて、騒がれて、うれしいか? う、うれしいよ。 ホンマか? ……。 やろ?お前が相手したいとか話たいとかは勝手にやったらええけど、オレは絶対相手にせんからな…。 まぁまぁ… 別にコイタニって子のことは好きでも嫌いでも無い。 ホンマ? 勘違いするなよぉ、なんの興味も無いってことや。 あぁ…。 でもな、いつも廊下に来てるヤツらは嫌いや、うるさい、ムカつく、ジャマやっ!!!! まぁまぁ、まぁまぁ… アイツらにそう言ってくれ、とは言わんけど、なんとかならんかぁ? ニヤリと笑うウエダ。 その心理を読むのは容易い。 これで女の子達と話す口実とネタが出来たってところだろう… ウエダ。 なんや。 あのグループの中に気に入ってる子おるんか? ……。 おらんのか。 あはは。 まぁ、好きなようにして、オレは相手にする気は無いって伝わったらええから… わかった。 本来、ウエダはこんなヤツじゃ無い。硬派な乱暴者だ。ただ思春期手前のボク達は未知なる世界に興味津々なのだ。 ボクは、もう始まってるのだ。でも今のウエダには話さないほうが無難だ。 ウエダがどう伝えたのかは不明だが、彼女たちの行動は益々エスカレートして行った…。 そんなある日のそろばん教室… アキ君…。 なに? モテモテだよっ! えっ? コイタニさんがアキ君のこと好きだってわかってから、他の女の子も好きだって言い出したよ… えっ?誰っ? あっ、気になるの? いや、別に… ふう~ん! イミシンに微笑むヒトミちゃん… 好きじゃないなら、そう言ってあげたほうがいいんじゃない? そう言って微笑むヒトミちゃん。 そんな控えめで聡明でやさしいヒトミちゃんがいいのだ。 アキ君。 なに? ヒトミがアキ君に話したいことある時どうやって連絡したらいい?教室に行くなんて出来ないでしょ? うん、 図書室もダメだし… 騒がれるのは無視すればいいがヒトミちゃんと会ったり、話したり出来ないのはツライ。 ある日から、不穏な空気が漂い始めた。 ボクが教室から出る度に、すれ違う度に… “コイィ~” “コイィ~” と囁くのである。 コイィ~とは当然、コイタニさんのニックネームだろう… そして、、、 ある日、 おいっ、アキっ、ちょっと来いやっ! はぁ?! それは、六年生の男子達だった… ボク達は思春期に突入した。
2010.04.23
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ー硝子の少年時代ー 朝ご飯のコーヒーが、違いがわかる男のネスカフェじゃ無く、、レギュラーコーヒーとなった。 我が家の“文化大革命”第二弾だ。 第一弾は、ママの為にパパが“二層式洗濯機”をプレゼントした。てこねローラー絞りが“脱水機”となりママの労働は飛躍的効率をあげた。 次が、サイフォンで淹れるレギュラーコーヒー。 アルコールランプに火を付けて温めると下段に入ってる水がなぜか“溶けて無くならないコーヒー”がある上段へとブクブクブクブクと駈け上がってゆく。 美しい、 ママがてっぺんの蓋を取ってガラス棒でかき混ぜると、喫茶店の匂いがした。 美しい、、 アルコールランプを取り外ししばらくすると、上段のコーヒーが下段へ帰ってくる。水が温かいコーヒーとなって帰ってくる。上段にはノコリカスとなったコーヒーがさみしげに残っている。 美しい、、、 ママも、うれしそうだ。 ボクとレギュラーコーヒーの出会いは、電話ボックスから現れた天使との出会いのようだった。 …そんな、幻想。 コーヒーの飲み方を知らないボクとヒロシは角砂糖三個と牛乳をたっぷり入れ、甘く甘く、ぬるくぬるくして、トーストにかけて食べた。 実に、おいしい。 モダンな我が家を誇らしく思いながら登校する。 変わらぬ風景、通い慣れた通学路、見慣れたみどりのババァ、ひとつひとつ無意識に、確認しながら校門をくぐる。 昨日とは違っているとは、明日はまた違うとは、なんて考えもしない毎日。この平凡で当たり前の毎日が、どれほど尊いことかなんて思いもしない日々…。 子供は、それでいいのだ。 ある日、いつものように校庭に入ると、 “熱視線” いや、何かの勘違いだ。 “熱視線” ん? 明らかにボクを見てる… ささやき… いやいや、ソラミミだ。 ん? ささやき声が、聞き取れた。 六年生の見たことある女の子が三人。 たしかに、聞こえた。 あの子や、あの子が、アキ君やでっ! なぜか、緊張が駆け抜けた。 ボクは知らんぷりをして下足箱へ向かう、 ん? えっ! ら、ら、ら、 ラブレター??? ボクが、それを、手に取ると… やったーーーーーっ! と、大歓声~!! ボクは、 ボクは、どう振る舞えばいいのだろう… ありがとう、とラブレターをかざし、彼女たちに軽く手を振って、颯爽と階段を駈け上がって行った、、、 はずもない。 刹那。 いつの間に現れたのか、隣には、ウエダがいた。 やるなぁ~。 …。 あの子らか? ……。 誰からか聞いて来たるわっ! はぁ?! 返事も聞かず彼女たちのところへ駆け寄って行く。 はぁ?! ざわつき、はしゃぐ三人の六年生とウエダ。 はぁ?! ウエダがやって来て、こう言った。 “コイタニ”って緑町の子やって! はぁ?! 手紙読んだら返事欲しいって! はぁ?! 返事書いたらオレが渡したるから持って来いや! はぁ?! なにかあったらオレが話に行ったるからな! はぁ?! まかせておけや、ちゃんとしたるから! はぁ?! ボクとウエダと六年生のたくさんの女の子と、六年生男子と同級生女子の無知な嫉妬と、そして、そして、ミヤモトヒトミちゃんを巻き込んだ“鉄筋校舎三階物語”が、 開演。 大丈夫!オレにまかせておけって… はぁ?!なんでお前が入ってくんねん?お前はなんやねんっ! まぁまぁ、まぁまぁ… はぁ?! 僕達は、メザメノトキを迎えようとしていた。 ボクとウエダは五年生だった。
2010.04.23
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ー硝子の少年時代ー ずっと、一番だった。 出席番号では無い。 学業成績だ。 ボクじゃ、無い。 スギモトカズマサクンだ。 そして、ずっと“学級代表”でもあった。 ボク達の小学校では学級委員長のことをそう呼び学業成績一番の男子生徒が代表、学業成績一番の女子が副代表になる、と決まっていた。 市町のイノベクンの家の前の道を行くと幹線道路に出る。渡ったところがイノベクンのお母さんが働く警察署で、そのブロック塀沿いの細い路地を歩いて行くとスギモトカズマサクンの家だった。 こんにちは~ あらっ、アキ君。どうぞ上がってね! カズマサク~ン、アキ君が遊びに来てくれたわよ~。 凛っ、とカズマサクン登場。 机には開かれた教科書とノートと研ぎ澄まされたエンピツとキレイに形良くすり減った消しゴム。 いつもの、どんな場所でも見る、スギモトカズマサクンの“景色”だ。 そんなスギモトカズマサクンをボクは好きなのだ。 いつも冷静沈着、体育のドッチボールの時でも凛と冷静沈着、な、スギモトカズマサクンが好きなのだ。 無言で机に向かい座る。 スギモトクン。 無言で寝転び、国土地理院発行の茶色の表紙の地図を眺めるボク。 ほどなく… どこの国好きなの? 振り向かず机に向かったまま尋ねるスギモトクン。 グリーンランド。 なんで? いつもの会話。 緑いっぱいの広いきれいな国みたいだから… グリーンランドはツンドラの国だよ、寒い寒い国で緑なんて無いはずだよ。 えっ!? だってグリーンで国の色も緑で… それは、勝手な思い込みだよ。 へぇ…。スギモトクンはどこの国が好き? フランス。と即答。 なんで? フランス革命を勉強したから、ベルサイユ宮殿を見てみたいから、マリーアントワネットに興味あるから、ルーブル美術館に行ってモナリザ見てみたいから… 延々と話してくれるのだ。 五年生には縁もゆかりも無い話ばかりだからボクはフランスについてなにも知らない。でもスギモトクンに聞いて覚えるのだ。 ボク、イギリスにも行ってみたい。 そう、次にくるのは… なんで? だ。 小さな恋のメロディー見て好きになったから。 イギリスかぁ。産業革命の発祥の国だね、民主主義の発祥の国だね。でも侵略国家でもあるけど… こうして僕の知識は満たされてゆくのだ。 スギモトクンは家で学校の勉強をしている訳ではなかった。 アメリカは?ソ連は?オーストラリアは?… 話が尽きない世界地図の旅は楽しい。 知らないことがないスギモトクンは、実に楽しい。 そんな時、お父さんがやってくる。 おっ、アキ君こんにちは。 あわてて起き上がり、こんにちはっ! お父さんはやせてて色が白く賢そうな人だった。いつも家にいた。質屋さんでは無い。 弟がいた。ヒロシと同級生だ。なぜかボクと同級生の兄弟はヒロシと同級生の兄弟が多かった。 それは人間の妊娠期間は10ヶ月であることと深く深く関係があるとはまだ知らない。 スギモトクンの弟も群を抜いて賢いらしい。 スギモトクンは勉強好き? しなきゃいけないから… なんで? ボク、お医者さんになりたいんだ。 わーっ、スゴイ。そんなに勉強しなくてもなれるよ… な、なんで? だって“ナカジマイイン”の先生見てたらチョビひげはやして注射も下手くそだし、賢そうには見えないよ。 スギモトクンは少し笑ってくれた。 そして、 お医者さんだっていろんなひといるよ、ボクは大学病院で病気の研究するドクターになりたいんだ。 あっ、大学病院の先生なら知ってるよ、うんっ、確かに賢そうだった。 またまたスギモトクンは笑ってくれた。 アキ君はいろんなこと知ってるんだね。 ボクは、カッテツンボで連れていかれた、とは言えなくなってしまった。 アキ君はいいよ、いろんなこと出来て、いろんな友達いっぱいいて、好きなこと出来て… スギモトクンもすればいいのに… スギモトクンも悲しいことあるのかな?スギモトクンならボクの悲しさがわかってくれそうな気がした。 同じ匂いが、した。 スギモトクンの悲しみや孤独は、勉強が出来て、学級代表であり続けなければならないとか、いつも冷静沈着でいなければいけない、とかゆうものだと思っていた。 子供は、未熟だ。 スギモトクンが抱えてる悲しみは、持って生まれたものだった。それはスギモトクンが勉強すればするほど深くなり、成長すればするほど現実となるものだった。 時が経てば、解決するであろうボクの孤独とは対極にあった。 五年生のボクに理解できるはずなどない。 みんな孤独なんだ、それが反抗期なんだ、それが五年生なんだ。
2010.04.21
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ー硝子の少年時代ー うるさいっ! あっち行けっ!! クソババァー!!! まぁ、ごめんね、 と微笑む。 早よ、あっち… コーラ買って来たけど、飲むでしょ? あっち…、、、飲むに決まってるやろっ! まぁ、ごめんね、 と、微笑む。 アキ君も… 決まってるやろっ! はいはい と、微笑む、お母さん。 ボクは、笑いをこらえるのに必死だ。 必ず、死ぬ、必死。 お母さんはやさしく賢い人だとすぐにわかった。 怒りの矛先の行き着く先が無くなったイノベクンがいじらしく思えた。 内弁慶。 サチオとは、しあわせをつかむひと、と書く。 お父さんお母さんの思いがまっすぐ伝わる素敵な名前だ。 ボクなんて、当時大人気だったNHKのアナウンサーの名前がいいと思い、3000円払い姓名判断で見てもらって漢字を変えただけの名前なのだ。ヒロシでさえ、パパとママの名前から一字づつ取ってつけてるのに… イノベクンは気恥ずかしさを紛らすように、ボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリ、 ボクは、不思議な気持ちで満たされた。 おいしいコーラだった。 翌日… アキ君? なに? 昨日、イノベクンのお家で遊んだの? うんっ、なんで? さっき、お母さんから電話がかかってきたよ。 なんて? 遊びに来てくれてありがとう、って 友達になってくれてありがとう、って えっ? 悲しい違和感。 こうゆう事だった… イノベクンは家では何も話さないどころか、ずっとひとり部屋に閉じこもっている。家庭訪問でも、ちゃんと学校に来てるし、勉強も出来るし問題ありませんよ、大人しくて物静かで引っ込み思案なところはありますが心配ないでしょう、と言われたそうだ。 この頃の子供にはよくある光景に思える。 後日… おい、アキ、ちょっといいか? と、パパ なに? イノベクンと友達なんだって? うんっ、なんで? 友達いっぱいいていいなぁ、と思ってな… えっ? アキの家にも遊びに来てくれたらいいな… えっ? まぁ、仲良くしてやれよ、話聞いてやれよ… なんだか悲しい違和感。 こうゆう事だった。 イノベクンのお父さんは自宅で“質屋”を営み家にいた。お母さんは近所の、わが町の“警察署”で事務職をしている家庭だった。 可愛らしい妹のいる普通の四人家族だ。 小さい頃から大人しくて外で遊んだり、友達連れて来たりすることも無く、ひとり部屋で過ごす子供だった。学校もマジメに通い、なんの問題も無い子供だ。年頃なのだろう、コトバが荒くなり反抗期に入り、どうしたものかと、試行錯誤してた時、突然、ボクが遊びに来た。 うれしくて、うれしくて、お母さんが電話をくれた。 悲しい違和感。 遊びに行って、お世話になった子供の親がお礼の電話をする、、よなぁ… クソババァって言われたら怒る、よなぁ… 我が家ではこうだ。 うるさいっ、クソババァ、あっち行けっ! 親に向かってクソババァとはなんじゃ! うるさいっ、クソババァ!! そのクソババァから生まれたのは誰じゃ!! 生んでくれなんて頼んでないわっ!!! となる。どこの家庭でも反抗期を迎えた子供の家ではフツウだろう。 ボクはイノベクンの家によく遊びに行った。イノベクンとコーラとせんべいとオセロゲームと時々ハサミショウギをして遊ぶのが好きだった。 たぶん、イノベクンの家に遊びにきたのはボクだけだろう。 たぶん、イノベクンの友達はボクだけだろう。 ボクとイノベクンは同じような思考回路を持ち、同じような家族構成をし、ごく普通の環境の中で育った。 違いがあるとするなら、ボクには野球やサッカーがあり、一緒にやる仲間がいた。ボクを必要としてくれる地域の人々がいた。だからいろんなことを、いろんな世界を知った、いろんな価値観を知った。 それだけの違いだった。 イノベクン、 ごめんな、 毎日一緒に遊べなくて、 ごめんな、 サッカーや野球に誘わなくて、 ごめんな…。 せんべいをボリボリ食べるイノベクンは永遠の反抗期となった。 ボク達は五年生だった。
2010.04.21
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ー硝子の少年時代ー ずっと、一番だった。 成績では無い。 出席番号だ。 生涯一番だった… メリットはあまりない。テスト採点でも注視の的だし音楽の独唱テストでも興味の的だしなんといっても予防接種の時が苦痛なのだホントは怖くて怖くて仕方ないのにやせ我慢して平気な顔してなくちゃイケない終わると痛かったか?とか表情を観察されるのでどこまでもどこまででも我慢しなくちゃイケない。 そんな時、いつも後ろでうつむいて泣きそうな顔をしてるヤツがいた。 生涯出席番号一番になれなかった、 イノベサチオクン。 イノベクンのおかげでボクは我慢できた。あんな顔見られたらカッコワルイと確信できるほどイノベクンの顔は情けなかった。 大丈夫だって! …。 ボクがどれくらい痛かったかって教えてあげるから心配しなくていいから!! ……。 大丈夫だって!子供が我慢出来ない注射を子供にするわけ無いって!!! ホント? 残念ながらボクの感想を聞く前にイノベクンは注射されるのだった。 イノベクンは無口で一緒に遊ぶ友達も居なくて、でも平気な顔していた。成績は優秀だったが手を上げて発言したことも無い。 でもボクが話かけると、小さく微笑んで、うん、とか、いや、とか答えてくれる。 ボクは思い切って言ってみた。 今日学校終わったら一緒に遊ばない? ……うんっ! ビックリ!! どこで遊ぶ? …。 ボクはどこでもいいから!! …じゃあ、ボクの家で遊ぶ。 じゃあ、そうしよう。 イノベクンの家は市町の生協横の細い小さいアーケード商店街を抜けた所にあった。 玄関には、 “質”とかかれた暖簾があった。 玄関を入ると薄暗く静かだ。 ボク達は、オセロをして遊んだ。イノベクンはナカナカノウデマエだったが、ワンパターンの戦術だとわかってからはボクが連勝した。 すると… 将棋しようか? ボクは“ハサミショウギ”しか知らない。 それを聞いてイノベクンは勝ち誇った顔して、 じゃあできないね~、、と言った。 イノベクンの誇り高きプライドは保たれた。 “負けるが勝ち” 会話なんてほとんどしなかったが妙に楽しい。会話の無いのが気にならない。 同じ匂いがした。 イノベクンもそう思ってくれたみたいだった。 無言でテレビに見入り、せんべいをボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリ… そんな時、玄関が開く音がして、、お母さんが帰って来た。 お母さんがボクを見て驚きの表情をし、すぐに満面の笑みに変わった。 こんにちはっ! たしか、アキ君よね? はいっ! まぁ… ボクは目立つ存在だったのだろう。ボクの事を知っててくれた。 刹那、 うるさいっ!あっち行けっ!! なにが起こったのか?誰が言ったのか?誰に言ったのか? ボクは、混乱した。 ボク達は第一次反抗期の五年生だった。
2010.04.19
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ー硝子の少年時代ー おいっ、“ノボル”呼んでくれっ。 はいっ、と言ってママは電話する。 ドキッと、した。 パパはボク達家族の為、毎日毎日朝から夜まで一生懸命働いて、いつもボク達に笑顔いっぱいお腹いっぱい、何不自由なく満たしてくれた。 ノボルちゃんとは近所に住む“アンマサン”だ。年老いたお母さんと二人暮らし。 オッテーン!オッテーン!オッテーン! そう声を出しながらパパの肩とか腰とか足とかをアンマする。 パパは何も言わず寝ころんで目を瞑っている。 ありがとうな、ノボルちゃん。 と言って、お金を払う。 うんっ。 と、ノボルちゃん。 ボク達子供の間では、ノボルッ!ノボルッ!と言ってからかい追いかけてくるノボルちゃんから逃げて、、遊んだ。 捕まることなんて無い。 ノボルちゃんは太ってて動作が鈍く、ハゲ頭で、頭が悪かった。 子供は未熟で残酷だ。 噂では、お好み焼きしか食べない、と言われてた。 ノボルちゃんが帰った後… おいっ、肩もんでくれっ! ママはやさしくパパをマッサージしてあげる。 ボクも、ヒロシも一生懸命マッサージしてあげる。 ママは言う… ノボルちゃんにマッサージしてもらっても効かないんだったら頼まなくていいのに… ボクもそう思った…。 ヒロシは無邪気に残酷に遠慮なしだ。 あんなアホでどんくさいノボルなんか… パパは起き上がり、少し考えて、言う。 あんなアホ? そうかもなぁ、アンマも下手やし、話も出来ん。でもな、お母さんの面倒みなあかんし、他の仕事なんて出来んやろ?お金無かったらご飯も食べれんやろ?お母さんも生きていけんやろ? ………。 近所に住んでて、それ知ってて知らん顔は、したらあかんっ!お金恵んでやるのも失礼な話や、だからマッサージしてもらってお金払う…。 そして、笑いながらこう言う… そのうちアンマも上手になるかも知れんしな。 いつもノボルちゃんをからかってイジメてる他の友達のところにノボルちゃんは文句を言いに来るそうだ。 ボクの家には来ない。 そんな事を思い返してた時、それを見透かしたようにパパは言う… だから、アキもヒロシも、、、あまり、、イジメてやるなよ… ノボルちゃんはお好み焼きしか食べなかったかどうかは知らないが、早死に、した。ますます年老いたおばあちゃんだけが残った。 あの頃、近所に住む人々はお互いのプライバシーをお互い知り合っていた。タリナイところ、劣ったところを支え合い、認め合い町内会は成り立っていた。 ボクもたくさんの人々に支えられ見守られ応援されていた… 子供は未熟である。 ボクはそれを知らなかった。 ノボルちゃん、ごめんな…。 ボクは五年生だった。
2010.04.17
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ー硝子の少年時代ー ある日の夕方。 いつもの校庭の、 いつもの風景。 を、 引き裂く、 色彩。 そして、 音声。 ボクは、直感で恐怖を、違和感を、そして、嫌悪感を抱いた。 “オンナオトコ” ママは、そう言った。 ショートカットの赤茶けた髪の毛。三白眼の色白な顔。黄色を基調とした青赤緑のチェックのジャケット。赤いカッターシャツ。赤を基調としたチェックのズボン。白の安っぽいエナメル靴。スポーツタイプの自転車に跨り、大きな大きなだみ声でまくし立てるような、不愉快な旋律。 やがて、校庭の一角で怯えるボク達の所にやって来て… おぉー。アイスクリーム食べるか? ………。 センスの無い派手な財布から千円札をポンッと出し、 スギモトで買ってこいやっ!! スギモトとは学校最寄りの酒屋兼駄菓子屋のボク達行き付け店だ。 ボクは敗北した。 アイスクリームを、ありがとう、と言って食べた。 キモチワルイ。 後には、気まずさだけが残った。 名前を、チーチャンとゆう。 ママが行きつけの市町の美容室“マツイ”のひとり娘ひとり娘ひとり娘ひとり娘ひとり娘…。 ムスメって、 オンナの人だったのだ。 違和感の、得体の知れ無い恐怖の、答えがわかった。 ウエダは、こう解説してくれた。 あ~ぁ。アイツな。ヘンやろ?誰も友達もおらんし、オンナやのにオトコになりたがってる。みんなに白い目で見られて怖がられて気持ち悪がられて…。子供やったら相手してくれる思うてたまに学校来るんや。アイスクリーム買うたるゆうたら、逃げたりせんやろ?黙っておごってもろたらええんや、アイツも喜んでるんや…。 それは、ウエダ自身の立場にも似てるのかも知れない。 やっぱり、ウエダも悲しかったり辛かったり、ってものあるんだな。 ボクだってある。 ママは、こう教えてくれた。 チーチャンは店にいるときもオトコのように振る舞い、お客さんと話している。お客さんは小さい時からのチーチャンを知ってて、美容師であるお母さんの辛さ、悲しさも知っている。だからみんな優しくしてあげてるそうだ。ママは新参者の客だが、オンナオトコを今までも見てきたことがあって、接し方を心得てたからチーチャンもママと仲良くしてるらしい。 アキ君も仲良くしようなんて思わなくてもいいけど、顔見て逃げたりはしてあげないでね。なにかあったらママの子供だって言えばわかってくれるはずだから…。 ママも、当たり前だが辛かったり悲しかったりしてきたんだな。 パパは、こう話してくれた。 生まれて来る時、おちんちん忘れて来たんやな。可哀想なヤツや。だからパパやったらアイツを“オトコ扱い”してやるな!!力仕事させたり、役にたたんかったら殴ったりしたる!そうしてやることがアイツを認めてヤルッてことやな。まぁ、アキにはわからんと思うけど、いつかわかるときがくるやろ…。 パパは、誰にだってやさしい…。 ボクにはまったく理解出来ないことばかりだった。 まだ、オナベとかオカマとか、ましてやニューハーフなんて言葉も無く、存在自体が認められて無い時代の悲しさいっぱいの出来事だった。 お母さんのお腹の中に忘れ物をするのはおちんちんだけじゃない…。 ボクは五年生だった。
2010.04.16
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ー硝子の少年時代ー ボクは色気づいて、悩ましい。 雨の日に長靴を履かないのは当然ながらランドセルも卒業した。手提げカバンに代えたのだ。いまでも色合いが頭の片隅に鮮明に残っている。 いよいよ興味の対象が輪郭を現わし、行動に移し始めた。 かさばる道具の習字教室と日本語英語の敬老塾を卒業した。ソロバン教室も、と思ったが先生が二級まで頑張ってとりなさい。君なら出来るっ、と言ってくれたしお姉ちゃんにも会いたいので続けることにした。なぜか周りのみんなは学習塾に通い始めたが、ボクは断固拒否した。 無意味だっ! そう思うから…。 そしてヘアスタイルをスポーツ刈りにし、 人前では、パパママと呼ばなくなった。 今更、お父さんとか、お母ちゃんなんて呼ばない。 そして、ママにはボクを“ちゃん”付けで呼ばないようにお願いした。 要するに、友達に冷やかされて恥ずかしかったからである。 あの頃の教室の風景は、匂いは、おおらかだった。 ミツケツやカジィ~はテストの点数が悪いとイノブ先生によくビンタされた。なにか悪さをすると先生は思いっきり感情のままにビンタの雨を降らせた。 教室の隅には先生の机があり、そこでテストの採点をした。生徒達は机の周りを取り囲み点数に一喜一憂した。イノブ先生はクワエタバコで個別評価しながらマルバツを付けた。 誰も、何も、疑問を持たない、そんな時代だった。 テストの点数が悪いからと言ってバカにしたりイジメたりなんか誰もしない。 先生がビンタして顔が腫れたり、鼻血を出したりしても、抗議にくる親なんていなかった。 そんな時代だった。 ボクは殴られたことなんて一度も無い。 殴られない為にはどう行動すればいいか考え、わかっていたから… そんな子だった。 そんな自分が少しイヤだと、少し思った。 初めての家庭訪問の時、イノブ先生はママにこう言ったらしい。 活発で何事も一生懸命に取り組み、率先して手を上げ発言し、クラスのリーダー的存在です。このままのびのびと成長されるといいですね…。 当たり前だがママは喜び、パパはほめてくれた。 ボクは、 ボクは、 ちっとも嬉しくなんてなかった。 ボクはイノブ先生がミツケツやカジィ~のお母さんになんて言っているんだろう?アイツら怒られてるのかな?ビンタされたことお父さんお母さんに言えばいいのに… ホントに思ってることが言えない自分が少しイヤだった。周りの大人達が容易く思える自分がイヤだった。 そんな時、ボクは台所の下にある“梅酒”の中のシワシワになったウメを箸で取り出し食べるのが習慣になっていた。 カリカリして美味しいのだ! ママはニコニコしながらボクに尋ねる… アキ君、ウメ酒出して食べたの?(笑) 食べるわけないやんっ! そう? (笑) うん。 ウメは食べたければ食べてもいいのよ、でも夜にしなさいね(笑) うん、わかった! それと、三ツ矢サイダーに梅酒入れて飲んじゃダメよ。お酒なんだから。パパが一緒の時、飲んでもいいって言った時だけにしなさいよ(笑) 飲まないよ~。 アキ君? なに? カガミで自分の顔見てみなさい(笑) えっ? 赤くなってたら顔洗った方がいいわよ(笑) もうすぐ、パパ帰ってくるから…(笑) ドキッと、 した。 ママが大好きだ。 ウメッシュも好きだった。 ボクは五年生だった。
2010.04.14
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ー硝子の少年時代ー 移る景色、車内風景、流れる時間、すべてが新鮮で、美しく見えた。 到着駅を告げる車内放送までがボク達を歓迎してくれてるようだ。 そして… 間もなく、アイオイ、アイオイでございます。 当時まだ山陽新幹線相生駅は無く、ごく普通の木造の小さな駅だった。 よしっ、切符あるな? うん。 ミツケツ、カジィ~、ボクの順番で出るから… ミツケツは体が小さくバカだが根性がある。物怖じしないヤツだ。カジィ~はシュッっとしてて見栄えはいいが気が小さくて根性無しだ。トラブればボクが適当に言い訳すればいい。 三人は何事も無く無事切符を手渡しで駅員さんに渡し改札を通過した。 小さな駅前にはタクシーが数台止まってる。 相生には以前、さっちゃんに映画を観に連れてきてもらったことがある。 ゴジラ対キングギドラ たしか、バスに乗ったのだが、どれに乗ったか、どう行けばいいのが思い出せない。 よしっ、歩いていこうか? どこに行くん? 相生の商店街。 駅前には大きな道が一本まっすぐ延びでいた。間違いようがない。歩いて行けば見たことのある風景に出会うだろう。 そう考えた。 初めて歩く道、初めて見る街並み。ただ三人で歩いてるだけなのに、 楽しかった。 夢みたいだった。 やがて、見覚えある虹色の看板が見えてきた。 それはアーケード商店街の入り口にある写真館だった。その前にバス停があり、以前そこで降りたので覚えていた。 不安は一掃され、期待だけがボクを支配した。 写真館の隣りは映画館だ。 商店街は刺激的だ。ずっと、ずっと、色々な店が連なっていた。 楽しい。 やがてアーケードの終わりがやって来た。 そこには“相生生協”があった。 生協いこうか? うん、生協やったら知ってるもんなぁ! 楽しい。 二階にあがると… 食堂があり、手前にはカウンターだけの“喫茶店”があった。 あそこ、いってみよ! えっ? 大丈夫、まかせて!! ボク達はカウンターに座った。 ……。 おばちゃんがやってきた。 こんにちは。クリームソーダ3つとトースト3つ下さい。 はい、わかりました。 呆然とボクをみつめる二人。 やがて、それは尊敬の眼差しとなった。 楽しい。 歩き疲れて、お腹がペコペコとなっていたボク達は無言でトーストを食べ、アイスクリームをスプーンで舐め、ストローでソーダを飲んだ。サクランボも一個付いていた。 おばちゃんが話しかけてきた。 三人で来たの? ううん、ママが下で買い物してる間ここでジュース飲んで待っているんです。 そう、かしこいわねぇ。 またまた呆然とする二人。 おばちゃんはビスケットをボク達にくれた。 ボクはママからもらって来たと言って伊藤博文の千円札を出して支払いを済ませ、 ごちそうさまでした! と、元気にお礼を言い、 また、来ますっ! と、言っておいた。 カジィ~とミツケツは聞きたくて聞きたくて聞きたくて聞きたくて聞きたくて仕方ない、とゆう顔をしていた。 種明かしは、こうだ。 以前、さっちゃんに映画に連れてきてもらった時、生協にも来た。 その時、クリームソーダとトーストを食べた。 そういう事だ。 カジィ~とミツケツは安心したように言った。 なんやぁ、来たことあったんかぁ… 次、来るときは別のもん食べような! 次? 楽しくないか?また来たくないか? 楽しい! また来たい!! やろ? だから、喫茶店のおばちゃんに、また来ますって言ったやろ?ボク。 うん。 そう言っておいたら次行った時、色々聞かれんでええやろ? 二人はまたまたまたまた尊敬の眼差しでボクを見た。 でも、次来る時は自分のお金持って来いよ。 うん、わかった! 帰りの道のりは、もっともっと楽しかった。 不安無く帰れる。知った道を歩くのだ。 帰りの切符は、ひとりひとり自分で買った。 コドモイチマイクダサイ 夕焼け差し込む車内と風景と匂い。 実に、楽しい。 ボク達三人は旅の虜となった。 おこずかいができると旅するようになった。 このことは誰にもゆうなよ。 うん、わかってるって… ボク達は五年生だった。
2010.04.12
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ー硝子の少年時代ー この頃すでにボクは友達を目的に応じて選別化していた。 野球仲間、サッカー仲間、塾仲間、登下校仲間、ご近所仲間、遊び仲間、そして… 母校に帰って来てからのお気に入りの場所は“体育倉庫”だ。 天気のいいお昼休みと、体育の授業中、そして、放課後、南京錠は解放される。 新しいペンキの匂いがたまらなく好きだ。体育マットに寝転がり頬をつけるとヒヤッとした感触と土埃と汗の湿った香りが満たしてくれる。 そばにいるのは“モリデラミツノブとカジモトヨシユキ”だ。 校庭で遊ぶ生徒を眺めながらボクは言った。 なぁ、電車乗ってどこかいかんか? 電車? 二人はマットから飛び上がらんばかりに驚き、目をキラキラさせながらボクを見つめてる… 子供達の最初の自立は、買い食いから始まる。どの時代のどこの国でも同じだ。 自分の意志で、自分のお金で、自分の買いたいものを買う。 次が、外食だ。 当時の我が町の子供達は、市町の商店街の中心にある“生協”の“二階”にある“食堂”で“うどん70円”を食べるのが憧れだったのだ。 校則では買い食いは禁止だ。ましてや外食なんてもってのほかだった。 が、ボク達三人はそれを“達成”していた。 あの緊張感と成し遂げた達成感が次なる目標を指し示してくれた。 …そう、電車。乗ってみたいやろ? うん、乗って行きたい。 ヨシッ、明日は5時間で学校終わりやから、明日行こう! どこに? アイオイ。 ……。 戸惑いと興味津々の二人に向かい、こう言った。 明日までにボク考えてくるからまかせてっ!お金もあるから大丈夫や。 うん、わかった! それから、このことは誰にもゆうたらあかんで~。家出てくる時は、ボクの家に行くっ、ゆうて来いよ。 うん。 モリデラミツノブ君は桜町に住む7人兄弟の大家族の勉強嫌いの背の低いあだ名を“ミツケツ”とゆう。カジモトヨシユキ君は学校の前に家がありブサイクなお姉ちゃんとの二人兄弟の勉強の出来ないあだ名を“カジィ~”とゆう気のイイヤツだった。 翌日、放課後… ボク達は駅前に集合し、駅横裏手に自転車を止めた。 はいっ、これっ! ミツケツには“シュウジ道具カバン”カジィ~には“ソロバン道具カバン”を手渡し、ボクは手提げカバンを持つ。 …アイオイマデコドモサンマイクダサイ。 窓口の駅のおじさんが、じっと、ほんの一瞬、見つめた、気がした… ハイっ、と言って三枚の切符と10円。 片道30円の切符には大きな字で“相生” 切符を手渡すと二人はボクを尊敬の眼差しで見た。 電車を待つ間が、長い。 早く来て、早く来て、早く来て、早く来て… 無事、電車に乗り、四人掛けの座席に座ると、カジィ~とミツケツは笑顔で言った。 やったなぁ~! ドキドキしたなぁ… ボクは緊張から解放され喜ぶ二人を見て、不安になった、 さぁ、どうしよう… 電車に無事乗る為に、駅員さんに聞かれたら答えようと、“塾通い”を装う為にカバンを持った。電車にボク達だけで乗ることに知恵を絞ってきたが、何をするかなんて考えて無い。ミツケツやカジィ~が考えてる訳も無い… 電車の中で大人達に聞かれるかもしれない、相生駅で無事改札を出られるだろうか、街中でなにが待っているのだろう… さぁ、どうしよう、 たまらなく、 楽しかった。 このドキドキ感、緊張感、 そして、二人が信頼してくれてる感じが、たまらなくうれしい… ボク達の冒険は始まった。
2010.04.11
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ー硝子の少年時代ー はじめに… 今から始まる物語は35年前からの五年間のボクの記憶の景色である。ボクの人格形成の礎となる日々の記憶である。よって、当時、見たこと、聞いた言葉、感じたことをすべてそのまま表現したい…と思う。現代の今においては、不適切、不愉快、差別的的表現にあたるものが多数活字として出てくると思う。しかし、それは決して差別を助長したり、蔑視を促すものではありません。ご了解いただきたい。その“言葉”によってボクは“感じ”“考え”成長したのだから… てんてん。 ガラガラポンッ! 小学生最後のクラス変えが行われた。 担任は“イノブ”先生。残念ながらオトコだ。そして、ウエダとは一度も同じクラスになることはなかった。 念願の“三階建て鉄筋コンクリート校舎”が完成し、ボク達は母校に帰って来た。 三階は、新五年生・六年生のフロアとなり、ヒトミちゃんと同じ空間で一年間過ごす… 階段を駆け上がった所が五年一組、隣りがボクの二組、その隣りが六年一組、そしてヒトミちゃんの二組。 担任のイノブ先生は学校で一番怖い先生で、算数・理科・体育の教師だ。小学校高学年になると担任が全教科担当する訳では無いらしい。 文系の、国語・社会、そして図画工作は一組の担任“ジンノ”先生が受け持つ。オンナの先生だ。 音楽は、別教室で専属の先生がいた。 二階は三・四年生のフロア。 一階は一・二年生、そして下足箱入ってすぐの一番近い場所に“特殊学級”と書かれたクラスがあった。 右向かいには木造二階建ての古い校舎は残され一階は職員室と音楽室、二回は図書室と空き部屋があった。図書室はあの匂いと空間のまま残されていた。また、あの場所で“大きい一年生と小さな二年生”が読めると思うだけでシアワセな気持ちになれた。 木造二階建ての古い校舎の前が運動場で向かいには新たに“体育倉庫”が建てられた。そこには、跳び箱とか、体育マットとか、縄跳びとかの体育用具がいっぱい溢れていて普段は“南京錠”が厳重にかけられていた。 体育館は新校舎と幼稚園の間に以前のまま残され、並んで“新プール”が建設中だった。その横には思い出の砂場が残り“藤棚”があった。 高学年となったボク達は、生徒会運営も任されるようになる。 こうしてボクの五年生は始まった。 昭和49年生4月だった。
2010.04.03
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(私がネグラとしているのは…) “永遠の旅行者…”とゆうスタンス。 本日も西ノ京275玉店へ… ふ~う、座らなくちゃいけないクギ(謎) 26回転(当該23回転) 悶絶… 金襖+CBキターーーーー!!!! ポチッ、 金CB慶次キターーー! 会話成立! 脳内80% コンコン…付かず(泣) 金襖付かず(泣) 桜付かず(泣) 直江・白白…少 …今日のこの台は死んだ、イヤ、ボクの気持ちは死んだ(笑) 千円打ち切って、 29回転。 ポイッ! ギャハハハ♪ 絵に描いた餅、5万円なんて… 撤収~!! 慌てて押さえにくる若者。 ヨクマワルヨ、キミが打っても25Pは保証してあげる(笑) 当たらんと思うけど… ギャハハハ♪ わざわざ出向いたホントの訳は、 本物のサクラフェードを見まんが為。 奈良公園へ… 携帯新しくしてお初なので書いてみた。 明日明後日は大中公園。 ひとり酒~花見酒~サクラを聞きながら~♪ じゃあまたね! 追記・明日明後日には“ずっと、孤独だった…”更新しますのでよろしく…
2010.04.02
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