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ー熱中時代ー 新たな“鉄筋校舎三階物語”が幕を開け、“シロ”の交尾でセックスを知り“生理”のメカニズムと必然を知り、天然芝でやるサッカーの心地よさと意義を知り、町内ソフトボール大会で“エースで三番”で優勝し、西播大会進出が決まり、姫路駅の“駅そば”をひとりで食べれるようになった頃… 最後の夏休みに突入した。 ーラジオ体操の季節ー ボクの家とタブチチカト君ちの田んぼを挟んでラジオ体操の会場はある。“荒神さん”ボクの生まれは岐阜だし、お墓も無いのでよくわからないがここが“村の鎮守の神様の…”の場所だ。 6時15分から始まるラジオ体操は、1日の始まりだ。当時は夏休み初日からお盆休みを除いて8月30日までずっと毎日行われていた。 そこは、ボクとウエダの“闘いの場所”だった… …向学心とは闘争心… 6時半にラジオ体操は終わりみんな帰ってゆく。 ボクとウエダは帰らない。ブランコに座り、ゆらゆらさせながら、ただただ語り合い、ただただ耳を傾ける。 小学校一年生の頃から、ずっとだ。毎年毎年夏休みの朝はウエダとの語り合いの時間だった。 六年間、ずっとだ。 毎朝10時まで、ずっとだ。 小学生は朝10時までは家で“学習”し外出は禁止だった。10時になると“お外で遊んでいいよ~”のサイレンがなる。 ボクとウエダはサイレンが鳴るまで語り合った。ラジオ体操で家を出て帰っていないのだから規則違反とはならない。 ボクの人生で一番語り合ったのは、理解しあったのは間違いなくウエダだ。 なにを話したのだろう… なにを考えていたのだろう… なにを感じていたのだろう… まぁ、“女性関係”と“愛とセックス”と“野球とサッカー”と、夢だったのだろう。 そんなある日、ママはボクにこう言った。 “ウエダ君と遊んだらあかん、悪い子やから…” ボクはなぜか涙が溢れて、悔しさが込み上げて来た。 ボクはママに、こう言った。 “ウエダはボクの友達や…” それ以上言葉が出て来なかった。 ウエダは小さい頃から悪ガキのレッテルを貼られ、問題行動もよく起こして、評判は悪かった。でも、ボクと二人の時は、いい奴だった。 ボクの話す事を理解し、自分の意見をハッキリ言い、会話の成立するただひとりの奴だった。 だから“いい奴”なのだ。 ママはそれ以来、ウエダの事を理解しようと一生懸命だった。そして、理解した。 かわいぃかわいぃ息子が友達だと言い張るのだから… 楽しい夏休みの始まりだ。 1974年の夏だった。
2010.05.31
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ー熱中時代ー 夕暮れの坂道を 大きな背中と歩く グローブを抜いた手 皮革の匂いが残る… 神様のいたずらの舞台となった公園は、ボクの専用練習場となった。 ブロック塀は女房役となり、的を描かれ、体を張って受け止めてくれた。 おっ、やってるなっ!! 夕暮れが、薄紫色になる頃、パパはやって来る。仕事でどんなに疲れていても来てくれる。 キャッチボール。 多くの子ども達がそうであるように、いつの時代の子ども達でもそうであるように、野球への扉の紹介者はパパだった。 色んな事を話しながらするキャッチボール。 パパにとっても至福の時だったのだろう。 どんなに加減しても あなたの球は速くて 逃げ腰の僕を茶化して、 永遠に微笑んだ… パパは小さな頃から働いていた。兄弟達を食べさせる為に小学校にも行かず働いていた。野球なんて夢のまた夢だった。クタクタになって“飯場”で見る長嶋に、巨人軍に癒された。元気をもらってた。 苦労を重ね、ママに出会い、家庭を持ち、ボクが生まれた。ボクが左利きだとわかると飛び上がって喜んだ…。 カワカミテツハル。 物心ついた頃には、ボクは右手にグローブをはめて“軟球”を握りしめていた。 時がたち、ボクはパパの夢に描いていたより以上、野球に夢中になり、上手になり、強くなった。 いつものようにパパはグローブを構え、座る。 よしっ!ど真ん中に投げて来いっ!!! ボクは“高橋一三”を気取りワインドアップに構える。 パパもボクも笑顔いっぱい… 小学校六年生の、ある日。 いつもの薄紫色の夕暮れ時、 いつもの光景。 ボクが投げた球からパパは逃げ出した。 パパは、こう言った。 アキ、スゴいぞっ!!アキが投げる球、速くてパパには捕れんようになってしもうた… ボクも、パパも笑顔いっぱい、夢いっぱいの瞬間だった。 さみしさなんて微塵もない。感傷なんて、これっぽっちもない。 だって、パパもボクも本格的な野球選手を夢見ていたのだから… 独りでこらえた 涙たち 止まらなくなるよ。 あの公園のブロック塀とパパと、夕焼け空。 忘れたことはない。 5月23日はウエダの誕生日。 これだって忘れたことはない。 ボクは、大切な事は、光景は決して忘れないよ。 キャッチボールは永遠だ
2010.05.23
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ー熱中時代ー 天気の良い日の、 四時間目とか、 五時間目が、 算数とか理科とか体育とかだったりしたら、 ざわめく… 期待に胸がふくらむ。 スギモトカズマサ君が教壇に立ち、言う。 “みんな、お弁当持って運動場に集合するように… わーーーーいっ!!! イノブ先生は、こわくて、気まぐれで、すぐにゲンコツとかビンタをする教師だったが好きだった。 ボクは叱られるようなヘマはしなかったし、気まぐれが幸運を呼ぶこともあったからだ。 よしっ!こんな天気の良い日に教室で理科の実験なんて楽しくないだろ? はーーーーいっ!!! 今から“自然観察”の授業に行こう! はーーーーいっ! 川がいいか? 山がいいか? ワイワイガヤガヤ… よしっ!じゃあ今日は川にしよう! わーーーーいっ! やった、やったーー! イノブ先生を先頭に二列縦隊で元気に歩く。 最後尾は学級代表のスギモトカズマサ君とナガセチヒロちゃんだ。 勉強大好きなスギモト君だってナガセさんだって楽しそうな顔してる。 カジィやミツケツなら尚更だ。 見慣れた景色の河原だって課外授業として来れば違って見える。 イノブ先生は大きな声で、両手を口にあてて叫ぶ。 平べったい石を探しなさい! はーーーーいっ! 二人一組になって石投げをしよう! はーーーーいっ! ひとりが投げて、ひとりが水の上を跳んだ数を数えるように! はーーーーいっ! やがて… さぁ、お弁当にしよう! わーーーーいっ! いつもと変わらぬ、玉子焼きとタコウインナーと白菜の漬け物と昨日の夜のオカズの残りの弁当でも、輝いて見える。 イノブ先生は得意げに話してくれる… どうだ?キレイな川だろ?キレイな景色だろ?ここがみんなの“ふるさと”なんだぞ、みんなも、先生もこの自然の一員なんだ、大切にしような。 なんだかとって付けたような話だし、授業だとおもったが、そんなことはどうでも良かった。 イノブ先生の機嫌がさらによくなれば、五時間目も六時間目だって“課外授業”になることもあった。 六年一組・ジンノ学級も仕方なく“課外授業”になる。 一組のみんなもきっと喜んでるはずだ。 授業をすっ飛ばされたジンノ先生は変わりに“課題”を出した。 お家の周りの気に入った風景をスケッチして絵をかきましょう。それを図画工作の授業にします。 ボクは、家の裏に造成中の“公園”を書いた。そこでコンクリートを混ぜて壁に塗っている人々と、建物を描いた。 気まぐれに書いた。 テキトーな黒とか茶色とが白の絵の具を混ぜて壁を描いた。作業をするおじさん達は三頭身で描かれお世辞にも、上手とは言えない。 ボクは有り余る才能を有していたが“絵心”は持ち合わせてなんかいない。 なのに… ジンノ先生はほめてくれて、コンクールに出品され… 入賞して、しまった。 “佳作” 神様のいたずらだった。 こんな評価だった。 働く人々が生き生きと描かれ、建物の色彩が鮮やかに景色を彩っています…云々。 コンクリート塀の色が良かったらしい…。 いわれなきおほめの賞を頂き、ジンノ先生にタイヘンほめられ、パパとママも喜んでくれた。 末は、ピカソかシャガールか? それを言うなら、印象派の人々を列挙すべきなのだが、まあ、いい。 残念ながら“神様のいたずら”は一回切りだった。 妥当だ。 小さな町の小さなコンクールに入選しただけの“駄作” 後にも先にも一回こっきりの“駄作” でも、ほめてくれたジンノ先生の笑顔と、駄作を鮮明に覚えている。 ほめられて嫌な小学生なんていない。 叱られてうれしい小学生なんていない。 みんなほめて育てればいいのに… そうすれば、学校はもっと楽しいのに… そう、思った。 アキ、お前はどうでもいいことを一生懸命考えるヤツやなぁ。 ジンノ先生、ほめてくれてありがとう。 ずっと、わすれません。
2010.05.21
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ー熱中時代ー “ステッカーをおくってください。” “ステッカーをおくってください。” “ステッカーをおくってください。” ボクは、毎日、毎日、ハガキを送り続ける… “かとりせんこうを使っています。ステッカーをおくってください。” スギモトカズマサ君が教えてくれた。 会社のこととか作ってる製品のこととかコマーシャルのこととかほめたりして書いたほうが当たるんじゃない? スギモトカズマサ君は何事も冷静に的確に確実に教えてくれるのだ。 当時、大きな会社はテレビコマーシャルをたくさん作り、キャラクターを作り、宣伝していた。 ボンカレー、キンチョーのキンチョール、アース製薬、森永製菓、グリコ、カルビー…等々 アース製薬は“巨人の星”を採用し“星飛雄馬”の青空を背景にワインドアップに構える、大きな大きな大きな大きな、ステッカーを作った。 下敷きに入れるのにピッタリのサイズ。非売品で欲しければハガキを送り当選すればもらえる… ステッカーをおくってください。 毎日、郵便受けを、ポストを覗き込むのが楽しみだった…。ポストから茶封筒らしきものがはみ出して見えたら胸が躍った… ボクはビー玉もしたし、 パッチンだって大好きだし、 コマ回しシだって苦手だが好きだったし、 切手集めなんて郵便屋さんのバカムスコのオガワと競り合うほど知識も数も持っていた。 桜田淳子や山口百恵や伊藤咲子や天地真理や南紗織が好きでプロマイドや雑誌“平凡”や“明星”から切り抜きを集め、付録のシールも使わず収集していた。 ボクの机の引き出しの中は、教科書でも辞書でも筆記用具でも無く、 ビー玉、メンコ、銀玉鉄砲、だった。 アイドルに憧れ、アニメに泣くほど感動し、ドラマのセリフを、やり取りを必死に見入り、暗記した。 醒めた目で大人達を見つめ、矛盾や不条理や思い通りにならない事へのジレンマを吐き出し拗ねた目で夕焼けを睨んでいても、 ボクだって、小学校六年生なのだ。 風に乗せてこの歌をとどけよう 忘れかけた なにかを取り戻す為に 宝物はいつでも そう机の中 ビー玉 メンコ にーびだん 銀玉鉄砲… 数年後、チャゲ&飛鳥がヤマハ音楽祭で優勝し、デビューした。ファーストアルバムの中の一曲にこの歌があった。 “愛すべきバカちん達へ” この一曲のみでチャゲ&飛鳥をボクは評価して、あ・げ・る。 ボクだって六年生だった。
2010.05.19
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ー熱中時代ー “生理”って知ってるか? セイリ? ………。 からっぽな、こころと、あたまと、からだに、ゆめと、ちしきと、たいりょくをつめこむのがいまとゆうなら… たとえば、 たとえば、 “大人への階段”があるのなら… 駆け上がれっ!!!!! 慌てて家に帰り“国語辞典”を引っ張り出し、 せ、せ、せ、 い、い、い、い、 り、り、り、り、り、 生理・生き物のからだのはたらき。月経。 げ、げ、げ、 つ、つ、つ、つ、 け、け、け、け、け、 い、い、い、い、い、 月経・成熟した女性の子宮から、およそ28日の間隔で周期的に出血する現象。 せ、せ、せ、 い、い、い、い、 じゅく、じゅく、じゅく、 成熟・十分にみのること。一人前に成長すること。 期待は裏切られた。なにか果てしなくイヤらしいイメージを抱いて、期待に胸躍らせて、損した。 フッサン、なんもなかったでぇ~ と、ウエダ。 アキはどうやった? と、フッサン。 うん、なんかありそうやけど、辞書じゃわからんことのような気がする…。 ほう…。 ニヤリと笑うフッサン。 あやしい…。 まぁ、そのうちわかるやろ… フジモトヒサトシ。 通称・フッサン、ボクはヒサトッチャンと呼ぶ。 五歳年上の町内子供会のガキ大将。ボクが一年生の時、六年生で、それ以来の付き合いだ。 この時代の町内会とか子供会とかは結束が固く、なにかあると公民館に集合、話し合いが行われていた。 新入生歓迎会とか、秋祭り御神輿担ぎとか、運動会地区対抗リレーとか、クリスマス会とか、卒業パーティーとか… そのリーダー的、言わばボク達の“オピニオンリーダー”がヒサトッチャンだった。 運動会前になると夜、子ども達はヒサトッチャンの家に集合し、“練習場”へと向かう。ストップウォッチを持ったヒサトッチャンが号令をかける。 よしっ、アップから始めるぞっ!! ボク達は“四角”を全員で一周する。四角とは町内の道路を結びヒサトッチャンが距離を測り作られた任意の“長距離用”トラック。 直線の50m、100mトラック。 三角・外周100mの三角形に結ぶリレー練習トラック。 すべてヒサトッチャンの計測なのでアバウトだった。 ヒサトッチャンは陸上部に所属し、テープとストップウォッチを拝借して来ているのだ。 町内子供会の一年生から六年生までの男女が集まりワイワイガヤガヤ…。 楽しい。 大義名分があるので夜堂々と外出できる。ヒサトッチャンはなぜか大人達に信頼されていた。 ボク達の地区はいつも運動会では一番だった。 日曜日の朝、ボクとウエダと他数人はヒサトッチャンの家に遊びに行く。 楽しい。少し背伸びした話が聞ける。色んな事を教え、見せてくれる。 ワイワイガヤガヤワイワイガヤガヤ… やがて、それぞれが家へと帰ってゆく… 最後に残るのは、いつもウエダとボクだ。 マサヒロッ、コーラとお菓子買ってこいやっ!! マサヒロとはウエダのことだ。 アキは、部屋片付けろやっ!! そして、キレイになったブロック造りのヒサトッチャンの部屋で三人でゴロゴロしながら、コーラとカッパエビセンを食べながら話す。 実に楽しい一時。 壁には大きな“小林麻美”のポスターが貼ってある。 レイコはなぁ、チチめちゃデカいんやぞっ! チチ… デカいっ!! ボクとウエダは飛び起きて、正座して“聴講”する。 レイコとはヒサトッチャンの彼女で隣町から通学してくる名前をキモトレイコと言う。 色白で黒のロングヘアでセーラー服姿のレイコちゃんは、実に刺激的だ。 アキ君、マサヒロ君、こんにちわ~。 コ・ン・チ・チ・ワ… 実に、ナマメカシイ。 そろそろ、お前ら、カエレッ!! ニヤリと笑うヒサトッチャン。 チチ… デカい、キモトレイコちゃんと、一体何をするのだろう… 実に、ナマメカシイ!! 妄想の旅は果てしなく続く…。 ボク達は六年生だった。
2010.05.18
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ー熱中時代ー ひよこ物語(1974年・兵庫の西の端の田舎町) 幸せな家庭に降ってわいた命の選択と葛藤を描いた家庭群像。 ヒロシも孤独を知る者だった… 幼少の頃から“癇”が強く度々、ヒキツケを起こし病院へ運ばれたり、脱腸で手術をし入院したり…。小学校四年生になった今でも“おねしょ”を繰り返す。 幼少の頃からお気に入りの小さな熊のぬいぐるみを抱いて、幼少の頃からお気に入りのよだれとおねしょとアカにまみれた“タオルケット”に抱かれて寝る。どこにいくにも“くまとタオルケット”は必需品だ。 洋服は常にボクとの“ペアルック”を希望し、学校では“イタズラ”の限りを尽くしママは学校呼び出し率No.1を独走している。 動物を愛し、犬とネコと文鳥とカメと金魚とニワトリを飼っている。 白いから犬の名前は“シロ”ネコは“ミーコ”手乗り文鳥は“ぴーちゃん”カメは“カメ”金魚は“キンギョ”そして、ぴーこちゃん。何代入れ替わろうと名前は変わらない。 執着心は、こだわりは、果てしない。 ヒロシは、巳年のAB型の次男なのだ。 決行日は日曜のヒロシが遊びに出た隙をついて行われることになった。 アキは、どうする? と、パパ。 ボクも一緒に見る。 ボクは残念ながらニワトリと唐揚げと、ぴーこちゃん焼き鳥は表裏一体なんだと理解する悲しい子供だった… ボクは縁側に座り観戦。 クビとカラダが切り離されても、ニワトリは歩き回るんだ、と知った。 動かなくなったニワトリの足を持ち逆さまにし“血抜き”をする。白いタキシードを脱がして産毛を火にあぶって焼き、解体する。 パパは見事な手捌きで処理してゆく… モモ肉、ムネ肉、キモ、ズリ、ネック、ハート、ヒモ… 刹那。 ギャーーーーッ!!!!!!!!!! ヒロシが、 ぴーこちゃん、ぴーこちゃん… ギャーーーーーーッ!! 泣き叫んだ… ママが悲鳴に気づいて慌ててやって来て、ヒロシを抱きかかえて家の中へと連れて入った… ぴーこちゃんが… ぴーこちゃんが…、 ママも、 泣いていた。 パパは少し戸惑ったように、こう言った。 アキ、唐揚げは止めておこうな、ヒロシに見つかったからな… うん、 パパとボクは泣かない。 鶏肉となり、食用となったぴーこちゃんは、パパの会社の社長さんの家にあげた。 社長と奥さんと四人の子ども達は、 唐揚げと、鶏鍋と、レバ刺しにして食べた。 おいしかった… と、お礼の電話がかかって来た。 当たり前だが四人の子ども達は、かわいそう、だなんて思わない。 命を知る為の授業は終わった。 ボク達家族の食卓から、唐揚げ、焼き鳥、は、少しの間だけ消えた。 だが、当たり前だが、再開された。 唐揚げ食べたいよう… ヒロシがそう言ったから… 生きることは学ぶこと。 ママは愛情いっぱいの、やさしさいっぱいの山盛りの唐揚げを作ってくれた。 その日から、しばらくしてヒロシは、ヒキツケを起こさなくなり、オネショをしなくなり、 そして、 そして、 夜店で“カラーヒヨコ”を買って来なくなった。 生きることは、残酷なこと、悲しいこと、不条理なことを見つめ、直視し続けることなのかも知れない でも、もっと大切なことは… 六年生のボクには、まだ、ワ・カ・ラ・ナ・イ ヒロシもボクも、理解の仕方は違ったが、また少し成長した。 ひよこ物語は五年後に、ヒロシが高校一年生の時、結実するのだが、それはまた別の話。 ボク達はたったふたりの兄弟だから…。
2010.05.17
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ー熱中時代ー 小鹿物語(1946年・アメリカ)主演・グレゴリーペック 西部開拓時代の家族の葛藤を描いた言わずと知れた名作。 学校の映画上映会で観て、泣いた。 そ・し・て… ひよこ物語(1974年・兵庫の西の端の田舎町)主演・パパとママとボクとぴーこちゃん、そして、ヒロシ。 夜店のカラーヒヨコは“選別”された悲しい者達だった。 卵を産まないオスであり、生まれた時に他の仲間よりも小さい、弱い、とレッテルを貼られ見放された者達の集団なのだ。 どうせ死んじゃうなら生きてるうちにスプレーで色でも付けて売っちゃえっ…と、夜店に並ぶ。ヒヨコ達の悲しい晴れ舞台。 ぴーぴー、ぴーぴー そんなぴーこちゃんが冬を越し、トサカを付け、赤色から真っ白なタキシードを身に纏い、 コケッ、コケッ、 パパは裏の畑に“鶏小屋”を作ってくれた。 畑は、二年前に我が家にやって来たおばあちゃんの為に借り受けた“職場”でナスやキュウリやトマトやエダマメ、そしてスイカを栽培している。 学校から走って帰って来たヒロシはぴーこちゃんを散歩させようと小屋から解放してやる… ぴーこちゃんは命の恩人と共に畑を元気に飛び回る… コケッ、コケッコ、 翌朝、おばあちゃんの悲鳴が鳴り響く… パパは言う。 畜生のやったことや、仕方ない。許してやれ。ヒロシ、これからは“ニワトリ”は小屋から出すなよ。 ぴーこちゃんは畑のおばあちゃんの大切な野菜達の葉っぱを食べてしまい、ヒロシはおばあちゃんの大切な畑を踏み荒らし、おばあちゃんの仕事をムダにした。 コケッコ、コケッコッ、 やがて… コケコッコーーーーーッ!!!!! ぴーこちゃんは、コケコッコッコちゃんと改名した。 パパはボク達家族の為に朝早くやら夜まで毎日毎日一生懸命働いた。来る日も来る日も働いてくれた。どんなに疲れていても家族の為に頑張ってくれた。 ニワトリは朝が来ると鳴くんじゃない、と知った。 ニワトリは夜が明けると鳴くんじゃない、と知った。 うるさいっ!!!!! 夜中、パパの怒鳴り声が鳴り響く… コケコッコッコーーーーッー!!!!! パパはボク達家族の為に働かなくちゃいけない、疲れを取る為に寝なくちゃいけないのに… コケコッコーーーーッ!!!!! 真夜中に元気に鳴く、コケコッコちゃん。 うるさいっ!! 真夜中に起こされるパパとママとボク。 ヒロシは夢の中… コケコッコーーーーッ!! あぁ、それでも君は成長するのか… あぁ、それでも君は鳴き続けるのか… パパは決断した。 ヨシっ!!! 食べ頃や… 食べ頃?? パパはニヤリと笑った。 家畜のニワトリはやがて唐揚げとなり塩焼きとなる。夜店のヒヨコも間違ってニワトリとなることもある。ニワトリとなったカラーヒヨコも唐揚げや塩焼きとなるのが道理…か? ぴーぴー、ぴーぴーと鳴くヒヨコを見てると、その答えは見つけられない。 小鹿のバンビは、かわいい、 ひよこのぴーこちゃんは、かわいい、 大きく成長した鹿は? 大きくなった鶏は? 答えは、そう、 風の中、だ。
2010.05.15
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ー熱中時代ー “海のなかで生きるように、君は孤独に生きてきた。 その孤独の海が、君を育んだ。 嗚呼、それでも君はいま、 岸へ向かおうとするのか。” フリードリッヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ。 わかっているとは思うが、1974年のボクがソクラテスとかプラトンとかサルトルとか知るわけがない。 振り返れば、この時のボク達の気持ちを表現するにはニーチェのこの一節が的を得ている。 そう、極限の大袈裟だ、かてて加えてボクはハイディガー派であり、実存主義では無く、現実主義派だ。 そう、ラジカルなのだ! テキトーに知ってる文字を並べてみただけなので、さほど深い意味は、ない。 ボク達、そう、ボク達とは、ウエダとボクである。 この物語は、ピークへと駆け上ってゆく… ガラガラポンっ。 六年生となったとゆうことは、弟ヒロシは四年生になる。 物事には、道理があり、是非があり、善悪があり、そして、感情がある。どんなにやんちゃ坊主であろうと理不尽な尻拭いをさせられようと非はこちらにあろうと、ヒロシはボクの弟だ。是非も無い、ボクはいかなる時も、ヒロシ側に立つ。 理屈では無い。 たったふたりの兄弟だから… 起きてはならない奇跡がヒロシに降ってわいた。それはそれは残酷で、イキトシイケルモノの不条理を見せつける出来事だった…。あわせてパパの狂気を目の当たりにし、ボク達は成長することとなる。 毎年、夏祭りにやって来て、冬が来る前には居なくなる、 ぴーこちゃん、 が、 一羽、 冬を越した。 真っ白い羽根を輝かせ、立派なトサカを身につけ、 コケッ、コケッ、と鳴き始めた。 あぁ、それでも君は成長するのか… 爆笑の新学期、最終学年が始まった。 ボク達は、四年生と六年生になった。
2010.05.12
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ー熱中時代ー 1974年2月14日。 当時、義理チョコは存在しない。 神聖な儀式だった。 女の子が一年に一度だけ許される“告白の日” 当時、ボクはチョコレートが苦手で好んで食べるのは“三連チロルチョコ”だけだった。 もうわかっていると思うが、ふと洩らした一言が更なる災いを生んだ。 チョコに変わって“クッキー”が山のように届いたのである。 生きることは学ぶこと。 アキ君、サイン帳買うから一番最初に、してね! サイン帳?? こうだ… 当時、卒業のセレモニーのひとつに、お世話になった先生や同級生や友達達にメッセージを書いてもらい宝物にする、とゆうのがあった。 考えて考えて考えた。 憧れのアイドルのサインを真似て書くのが流行ってた。 いっぱいいたがボクは山口百恵のサインが好きだった。 書き殴るように漢字で“山口”百恵の百は丸く、恵は心を大きく丸くかき点々はハートを二つ。 これだっ!! ボクの憧れの野球選手は長嶋引退の後、四番を打つ王貞治だった。全盛時の王は毎年50本近くホームランを量産し続けていた。やがてハンクアーロンの756号を抜くだろうと言われ始めていた。 冠名は“世界の王” これだっ!!! ヒトミちゃん卒業にあたっての特別な感慨とかはホントはなかった。 メッセージが思い浮かばない。 ヒトミちゃんは中学生になったらテニス部に入るんだと言った。 アニメ“エースをねらえ”の影響だ。 ボクは考え勉強し人生初めての“サイン”を書いた。 枕詞は… 丸文字で、横線をなが~く、 “世界の” ボクの名字はアキに濁点の付く一文字を加えて三文字。 ひらがなで、 丸文字で、 あき〇”くん。 濁点は当然ハートマークふたつ。 世界のあき〇”くん。 あ、の右下の丸い部分を、き、の横線と共通に!! かっこいいーーっ!! メッセージは、エースをねらえ最終話の名台詞をいただいた… こう、書いた。 ひとみちゃん、卒業おめでとうございます。 ひとみ、、エースをねらえ! 世界のあき〇”くん 我ながら素晴らしい出来のこのサインは、翌年も、中学時代も、高校時代も、そして、専門学校時代をも通して書き続けた…。 この日がボクとミヤモトヒトミちゃん、ふたりのピークとなった。 これ以上無いほどのハッピーエンド… フェードアウト。 ヒトミちゃん、卒業おめでとう、そして、レモンシャンプーの香りをありがとうね。 ボクの五年生も修了した。 “小さな恋のメロディ”の完結。 一年後… 入学間もない、極度の緊張感漂う4月半ば、ヒトミちゃんはボク達一年生のクラスが並ぶ三階に訪ねて来てくれた…。 アキ君、野球部入ったんだね、頑張ってね。 うん、ヒトミちゃんもテニス頑張ってっ!! エースを… ねらえ、でしょ? ふたりで、笑った。
2010.05.11
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ー熱中時代ー ボクは教師の概念の針を、360度、イヤ、180度、時計とは逆回りに振った。逆回りにそれほどの意味はない。 子供達は天使だが、教師は聖者などでは無い。ボクの反抗期は教師と対峙することにより熟成されてゆく…。 辛辣な、陰湿な、アナグラムな、宣戦布告。 子供達が、成績や、態度で序列化されるように、ボクだって教師をランク付けしてやる、それを態度で、行動で突きつけてやる、試してやる。 そう誓った。 新年1974年を迎えた。 真冬は、有機的でセクシーでイマジネーション豊かなサッカーの季節だ。 ヨシっ!チームのフォーメーションを変更するぞっ!! ……!? 5・3・2から4・3・3の守備を厚く、しかし攻撃的サッカーにしよう! ……!? ポジションの変更もするぞっ!! ………!? 先ず、左ハーフのフナビキは、左バックに、左バックのヨシダはセンターバックに、センターハーフのアキは左フォワードに、センターフォワードのクロダは右フォワードに、左フォワードのウエダはセンターハーフに、右フォワードのタブチは右ハーフに… どうだ?面白そうだろ? ひとりご満悦のマツモトジョウセイ先生。 こうだっ!! 守備陣の司令塔に体幹が強く、判断力の早いヨシダを、守備的ハーフのフナビキを守備専門のバックに、得点力の無いタブチを守備的ハーフに、そして、圧倒的パワーとスピードとキック力を持ったキャプテン・ウエダを攻撃の起点のセンターハーフに。華麗でしなやかで華やかなボクをゴールポスト前専属のフォワードへ、地味で、小柄だが、素早く、テクニカルで、サッカーを一番良く知るクロダをボクと組むフォワードへ… ツートップ・スリーバックシステムの誕生だ。 背番号は変更せず。なぜならユニフォームに縫い付けてあるので面倒だからだ。 そして… 今日から新入部員がひとり、ヤマノサト小学校から来る。 えーーーーーーーっ!! みんな大興奮!! 色白で背が高く、目鼻立ちのハッキリした筋肉質の男前なヤツだった。 その名は、 ヤスムラ、 ポジションは、 GK。 刺激的だ。戦略戦術の大幅な変更、ポジション、役割の変更でも興奮気味なのに他の見知らぬ小学校からの新メンバー。 ワクワクしてきたぞーーっ!! 深刻顔してるのは、我がチームの絶対的守護神、ヨコッチことGK・ヨコタニだ。 マツモトジョウセイ先生は子供達の特性を見極め、センセーショナルに、大胆に発表する。常に前向きで、笑顔で接してくれ、新しい、見知らぬ世界を紹介してくれる。 残念だった… ヤスムラは見た目はAランクなのに、話すと、すぐにバカだとわかった。だからみんなとその日に打ち解けあえ、仲間となった。 深刻なのは、 ヨコッチだけだった。 ヨシッ、練習始めよう!! わーーーいっ!! 寒空の中、まっ白なマフラー巻いて、真っ赤な手袋して頬杖ついて見つめてる姿が遠くに見える。 なにより、刺激的だ。 ボクたちは五年生だった。
2010.05.08
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ー硝子の少年時代ー 五年生のボクに今の気持ちを自己分析なんて出来ない。この悲しみとも怒りとも悔しさともつかない喪失感はなんなのだろう。 この脱力感はなんなのだろう。 ワカンナイワカンナイ。 わからなくても、時間は過ぎ、めぐりゆく。 ボクは、スマイルの笑顔を見るのがつらかった。 ボクは特殊学級を避けて、逃げるように階段を駆け上がった。 おにいちゃん… ボクはスマイルを避けて通るようになった。 敗北感がボクを支配した。 よくわからないが、負けた気がした。 そんな自分がイヤだった。 ヤマシタが教えてくれた。 アイツは、人のもん平気でパクリよんじゃ。わかってやってるんかわからんのかもワカラン。そやから注意のしようがない。怒っても平気な顔してるしな。アイツはアキがなんぼ優しくしてやったってわかっとらへんよ。相手にせんほうがええんちがうか? そんなことも、どうでも良かった。 そりゃあ、心も歪むやろ? 拗ねてイジワルもしたくなるやろ? 気がついた時には、両親に見離され、ガクエンに預けられ、ワガママも言えず、集団生活を強いられ…。 そりゃあ、勉強なんて興味も持たんやろ?人に優しくなんて出来んやろ?両親にさえ甘えた記憶がないんだから…。 そんなことも、どうでもいい…。 この哀しさは、なんなのだろう… ずっと、こころの隅にありつづけた。 “あの子は、アキ君が思っているようないい子じゃないよ…” 7年後、18歳となったボクは、その意味を知った。 ねぇねぇ、昨日の金八先生良かったね…。 そうやなぁ… ボクの呪縛を解いてくれたのは… 世情の重厚な音楽が流れる中、加藤優と松浦悟は逮捕連行される。 腐ったミカンの方程式。 先生、PTA、刑事達のやり取りが続く… やがて、 金八先生は、こう言った。 子供達は未熟なんです。だから間違うんです。間違えたなら、それは間違いであると、繰り返し繰り返し教える、それが教育なんです。 ボクは… そして、もしそれが出来ないのであれば、、教師は、教師を辞めるべきなんです… ボクは、あの時の、あの気持ちの意味を理解出来た。 あの子は、いい子なんかじゃないよ。 ボクは橋本先生を、いつも一生懸命世話してる、橋本先生を立派な教師だと思っていた。愛情のかぎり子供達と接している立派な教師だと思っていた。 裏切りられたのだろう…。伝わらない悲しみや無情感に苛まれたのだろう…。意思疎通の出来ないことほどツライことは無いのかも知れない。疲れていたのだろう…。フッと気が抜けたのかも知れない。楽しそうに帰ってゆくボクに自分自身を重ね合わせて、情けなくなったのかも知れない。 あの子は、いい子なんかじゃないよ… それは、教師が、決して、言ってはならない言葉だったのだ。 ましてや、五年生の子供に吐いてはならない言葉だったのだ。 裏切られても裏切られても、子供達を信じてやれないのなら… 教師は教師を辞めるべきなんだ。 ボクの人知れず抱え続けたジレンマの答えを知った。 ねぇねぇ、なに考えてるん? ボクは、橋本先生の吐いた言葉と、醒めた目を、ずっと、忘れない。
2010.05.07
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ー硝子の少年時代ー 特殊学級の生徒は比較的軽い障害の子供達だった。 車椅子は無かったし、見た目極端な差異は感じなかった。ただ、歩くとビッコ引いたり、会話に苦労したり、字が書けなかったり、給食をひとりで食べれなかったり、ヨダレとかハナミズが垂れっ放しだったり…。 スマイルはハッキリしたことは聞かなかったので想像だが、学習意欲がまったく無い子なんだと思った。会話は片言で字は書けなかった。外では遊ぼうとせず、教室で同じ遊びを繰り返している子だ。見た目は小学生だが中身は保育園児とゆう感じなんだと理解した。 おにいちゃんっ、エンピツなくなった… 翌日、ボクは鉛筆を持って遊びに行った… 翌日、鉛筆を持って行った… 翌日、行った… ボクだってわかるよ、長い長い鉛筆が1日で無くなるなんておかしいってことくらい… そんなことはどうでも良かった、スマイルが喜んでくれて、おにいちゃんっ、遊ぼうって言ってくれるのがうれしかったんだ。 ボクだって想像がつくよ、スマイルの笑顔の向こうにある“現実”を… 哀れみ持って接して来たわけじゃ無い。慈悲の気持ちを抱いて接して来たわけじゃ無い。ましてや先生にほめられたくてスマイルと遊んでたわけじゃ無い… スマイルは、電動鉛筆削りが面白くて、長いエンピツが短くなり、やがて削れなくなるまで差し込んで“遊んでた” それだって、いいじゃないかっ!! いつものように、ボクは長い鉛筆を持って遊びに行った… また、明日来るからな。 特殊学級の教室を出て帰ろうと廊下に出たボクを、橋本先生は待っていた。 ボクを哀れに思ったのか? ボクをバカなヤツだと思ったのか? こう言った。 いつも、あの子の面倒みてくれて、ありがたいんだけど、、、あの子はアキ君が思っているようないい子なんかじゃ、ないのよ… この人は、なにを言っているのだろう… なにが言いたいのだろう? ボクにどうしろと言うのだろう? 言葉が、出て来なかった。 ボクは混乱した。 迷惑なんだろうか? わからなかった… どうしたらいいのか、わからなかった… 相談できる人がボクには、いなかった。 ボクは孤独だった…
2010.05.06
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ー硝子の少年時代ー この年、大ヒットのキャラクターが現れた。黄色地に黒マジック線で眉と目と鼻と口を描いただけの丸型バッチ。当時アメリカで大流行した“ヒッピー”の流れから来たのか? その名は、 “スマイル” ボクも大小のバッチをカバンに帽子に筆箱にと付けていた…。 ずっと、気になっていた… 下足箱で上履きに履き替え校舎に入ると、教室の窓ガラスを開けて微笑みながら見つめる目。 ずっと、気になっていた… 毎日、毎朝変わらず微笑んで見つめている。 “特殊学級・橋本学級”と書かれたプレート。 何年生? ………。 家はどこ? ………。 刹那。 おにいちゃんっ!! お、おにいちゃん? おにいちゃん、遊ぼう? あ、遊ぼう? ニコニコ微笑む姿はまさに“スマイル” 教室の中を覗くといろんな子供達がいた。小さな子供から大きな子供まで。他のクラスとは違っていた。 じゃあ、お昼休みに遊びに来るから… ………。 ボクは昼休みひとりで特殊学級へ遊びに行った。 教室はミルクの匂いがした。 白のトレパンに紺のジャージ姿の先生がいた。 橋本先生、女の先生だ。 いつも、甲斐甲斐しく世話をしている姿をボクは知っていた。いつも一生懸命汗をかいて世話をしている姿をボクは見ていた。 自己紹介をした。 五年生のアキです。この子と遊ぶ約束してたので来ました。いいですか? ………えぇ、どうぞ。仲良く遊んであげてね。 白髪混じりの中年太りの優しそうな先生だ。 ボクは手を引かれて教室に入った。他のクラスとは違い机は無く、幼稚園の教室のようだった。 その子を、スマイルと呼ぶ事に決めた。なぜなら自分の名前を言えない子だったから名前がわからなかったのである。 橋本先生に聞くと家は“ガクエン”だと言う。ホントは二年生なのだが、ずっと特殊学級で過ごすらしい。 おにいちゃん、遊ぼう… うんっ、遊ぼう!! 積み木とかお絵かきとかして時間は過ぎた…。 また遊びに来るからな。 ………。 ボクは教室に戻りヤマシタに聞いた。 なぁ、ヤマシタ。特殊学級にニコニコしたスマイルに似た子おるやんっ?知ってるか? うんっ、おるでぇ、アキ知ってるんか? 今、一緒に遊んで来た。 えっ!?遊んだ? うんっ、スマイルみたいでかわいいなぁ… えっ!?かわいい? どんな子なん?スマイル…。 どんな子って…。 ……。 知恵遅れやっ!! 知恵遅れ? うんっ、一応二年生やけど字も書けんし、運動も出来んよ。だから特殊学級や。 へぇ…。 アキはなんで遊びに行ったんや? 話かけたら、おにいちゃんって言われて、遊ぼうっ、って言われてニコニコかわいいから遊びに行った。 で?? 積み木とかして遊んで来た。 そうか…。 ………。 橋本先生もヤマシタも少し態度に違和感があったが… ヒロシはわかりやすい。 アホ学級やんかぁ… はぁ!? ただ勉強が出来ないから特殊学級に入る訳では無い。ヒロシは特殊学級では無い。 知りたいこと聞きたいことはたくさんあったが誰にも聞けそうな人はいなかった。イヤ、聞いてはイケないと思った。 ただ、ボクはスマイルがかわいいと思えたから毎日昼休みに特殊学級へ遊びに行った。 スマイルのランドセルの中を覗くと、筆箱があった。お絵かきしようと思い筆箱の中を見ると… みじか~い鉛筆が二本とちいさ~な消しゴムしか無かった。 純粋に、ガクエンだから自由に鉛筆も消しゴムも買えないんだな、と思った。 かわいそう、だとか、助けてあげよう、とか、ボランティア精神が沸々と沸き立った訳ではない。同情とか、哀れみとか、でも無い。 ただ、ボクは鉛筆も消しゴムも自由に手にすることが出来たので、持っていた鉛筆数本と消しゴムをスマイルの筆箱に入れてあげて、一緒にお絵かきをした。 スマイルは、ちゃんと、アリガトーって言えた。 うん、無くなったらまた持って来るから…と、言った。 そんな日が、割と長く続いた。 おにいちゃん、エンピツ無くなったっ!! 翌日、鉛筆を持って遊びに行った… おにいちゃん、ケシゴム無くなった… 翌日、消しゴムを持って遊びに行った… おにいちゃん、フデバコ無くなった… どこかに無くしたんだろうなぁ… 翌日、ボクの古い筆箱を持って遊びに行った。 おにいちゃん、エンピツとケシゴムと…無くなった。 ニコニコいつものスマイル。 翌日、ボクは鉛筆と消しゴムを持って遊びに行った。 聞いてみた… すぐにエンピツとケシゴムなくなるなぁ? …………。 仲良く遊んで帰った。 橋本先生はいつ行っても一生懸命汗を流しながら生徒達の世話をしていた。 立派な、素晴らしい先生だと思った。 スマイルはいつもニコニコ、おにいちゃん遊ぼうっ… うん、明日も来るからな! ボクはエンピツを持って遊びに行った…
2010.05.05
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ー硝子の少年時代ー …小さく投げキッス する時もする時も こちらにおいでと 呼ぶ時も呼ぶ時も いつでもいつでも彼は 左きき… 麻丘めぐみがデビューし夢中になった。 ボクは左利きなのだ。 …王者の星が俺を呼ぶ 俺は 侍 呼ばれたからは 鉄の左腕の折れるまで 熱い血潮の燃え尽きるまで 熱球一筋命を賭けた ジャイアンツのジャイアンツの旗のもと… アニメ“侍ジャイアンツ”が始まった。 僕は鉄の左腕の持ち主なのだ。 読売ジャイアンツがV9を達成し、それはアニメ“巨人の星”でも描かれた。新幹線で名古屋を通過し、デーゲームで中日が負け、ナイターで勝てば優勝の最終戦。場所は甲子園、スコア0ー9 王貞治選手が大好きだ。 ボクはジャイアンツファンであり、左打者だった。 進む道は一本道。ずっとまっすぐ指し示してくれているように思えるほど、時代は、風は、ボクだけに吹いている。 そう、間違いなく大袈裟だ。 高校野球を見て投球練習をし、プロ野球を見て素振りをし、実践でソフトボールや三角ベースをし、ベッケンバウアーを見てリフティングをし、練習試合で見知らぬ子供達と交流し、旅の楽しさを噛み締めた。気の合う仲間を選別し、場面場面を楽しく愉快に過ごした。恋することを知り、恵まれ、満たされた。大凡、いつの時代も、世界中のどこでも五年生が出会い経験し葛藤し成長するであろうことを、時間を過ごした。 生きることは学ぶこと。 あらゆることから学ばなければならない。 “アキ君が、思っているような子じゃ、無いよ…” ボクの遠い記憶の、小学生時代の一番心に残る言葉… が、 “あの子は、アキ君が思っているような子じゃ無いよ…” だなんて、 誰にも言えなかった。 さりげない一言が、感情にまかせて吐いた一言が、ボクをずっと苦しめた。 ずっと、気になっていた… ボクは11歳になった。
2010.05.04
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ー硝子の少年時代ー 夏休みの子供達の朝は早い。 大夏祭りの翌朝はもっと早い。 子供達に明日の約束なんて、いらない… それは、永遠に楽しい、とゆう事だ。 朝暗い内から続々集まって来る… 場所は夢の跡の屋台村だ。テキ屋の皆さんは次の夏祭り目指して夜中の内に店じまい、移動だ。 やったーーっ!! よっしゃーーっ!! あちこち飛び交う歓声、また歓声… 土埃を立てながら、両足引きずりながら、 “宝探し” 昨夜の夢舞台の神様からのプレゼントだ。 460円!! 上々の“釣果” ボクは、石段に座り、缶コーラを飲みながらオモイダシワライ。 いいの? ヒトミ、よかったね… リフレインリフレインリフレインリフレイン… なんて、奥ゆかしい。 ヒトミ、なにが一番楽しかった? カキゴオリ。 なんて、いじらしい。 ヒトミちゃんはいつもお姉ちゃんぶって話すが、不愉快に思ったことなんて無かった。 ヒトミちゃんはいつもお誘いの電話とかくれたが、どうするかはボクが決めて、、うん、わかった…って同意してくれる。 思い返してみれば、イヤ、とか、ダメ、とか言われた事は無かった。 いいの? は、 ヒトミは、友達に見られたって、冷やかされたって構わないよ。でも、アキ君はイヤなんだよね…。だったらヒトミもガマンするよ… ボクは、自分の意志がヒトミちゃんの意志でもあるなんて思ってた、イヤ、ヒトミちゃんの気持ちなんて想いやって無かったのかも知れない。 自分の都合だけにこだわり、周りのオトナやコドモの顔色をうかがってただけなのだ。 ヒトミちゃんは、何も言わず、何も求めず、黙って、 うんっ、わかった。 と言い続けてくれてたんだ、と、やっとわかった。 そんなヒトミちゃんだから好きなんだと、わかった。 明日、遊ぶ? は、 明日も遊ぼうよ で、あり アキ君は、どうする? は、 ヒトミはアキ君が決めた事に賛成だから… とゆう事だったのだ。 ボクはなんてイヤなヤツなんだ、自惚れたヤツなんだ、と、思った。 ママに度々言われる、 偏屈な子。 オトナに気を使わせる子。 って言われる意味が、なんとなくわかった… そんな事考えてたら、アイツに言われた言葉が胸に甦る… お前は、どうでも良いことを一生懸命考えるヤツやなぁ… ウエダだ!! どうせウエダのことだ、昨夜は子分を引き連れて他校の小学生達を威嚇しながら練り歩いていたのだろう… ボクとヤツは、対極にある。 でも、お互い唯一の親友だ。 ヒトミちゃんはボクの“恋愛観”“女性観”の礎となった。 もうわかっているとは思うが大袈裟だ。 ヒトミちゃんとは彼女が卒業するまで“奥ゆかしく”仲良く過ごした。 ふたりの仲が知れ渡っても、騒ぎ立てられることなんて無かった。 それは、ひとえに、 ヒトミちゃんの美しさと賢さと、そしてそして、奥ゆかしさの賜物だ!! いいの? 永遠に楽しい… ボクは少し、成長した。
2010.05.02
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