森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2015.01.25
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夏目漱石は小説「草枕」でこう書いている。

「山路を登りながら、かう考へた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい」

小説家というのはうまい表現をするものだ。これを森田理論で考えてみたい。
「智」というのは、「智恵」に通じる。
辞書を見ると、智恵とは、物事の道理がよく分かって、きちんとした判断ができて、いろいろなことをうまく処理できることとある。
つまり今までの教育や経験によって得た知識を、大脳新皮質の判断力によって物事を適切に処理しようという態度のことである。
これを相手に押し付けることを、森田理論では「かくあるべし」と言っている。
どちらかというと相手の言うことを聞こうとしないで、自分の頭で考えた理屈で相手を打ち負かしてやろうという態度である。
自分の「かくあるべし」を相手にぶっつけていこうとすると、最後には反発されて喧嘩になるだろう。


「意地」とは自分の考え方を無理やりに押し通そうとすることである。
「智」よりももっと深刻である。
「意地悪をする」「意地をはる」「意地きたない」「意地っ張り」などの言葉がある。
いずれも自己中心的で、陰湿ないじめや融通性のなさを連想させる。
これも「かくあるべし」を相手に強力に押し付ける態度のことである。
非難、説教、命令、指示、禁止、叱責、怒りの言葉に近い態度をとることである。

「情」とは、心に感じる働き、目に見えるさま、男女のいとなみ、おくゆかしいおもむきとある。
感情、感性、情熱、人情、愛情、実情、表情、旅情等という言葉がある。
森田では、喜怒哀楽などの感情、相手を思いやる人情ということがよく出てくる。

森田では理知と感じの取り扱いは明確である。森田先生曰く。
我々の日常生活は、実際において、まず第一に、時と場合における「感じ」から心が発動し、種々の欲望が起きる時に、それに対して、理知により、理想に従いて、自分の行動を調整していくのであって、すなわち第一が「感じ」で、次に理想が働くのである。

(森田正馬全集第5巻405ページ)

例えば、酒が好きか嫌いから出発する。
嫌いな人は、酒をすすめるとき、「どうしてこんなものが飲めるのだろう」という気持ちでつぐと無理がゆかないで、酒好きもうまく飲まれるが、「あの人は酒が好きだから」と自分の嫌いということを離れて考えると、加減なしにやたら追いかけ追いかけ酒をつぐので、酒好きでもたまらなくなる。
自分の好き嫌いという感じから出発すると、相手の立場に自分を置き換えて考えることができて思いやりということができる。
相手と気持ちが通じる。同情心がでてくる。


ここではっきりしておきたいことは、理知がよいとか、人情がよいとかということではない。
両方とも大切なのである。要はその活用方法が問題なのである。
いつでも感じを第一におき、次に理知で調整しながら生活するというスタイルを踏襲するということが肝心なのである。
喜怒哀楽などの感情はそれほど大事なのだ。
すると苦しいことは多々あるが、胃潰瘍になるほど悩むということはなくなる。
苦悩や葛藤でのたうちまわることはなくなるのである。





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Last updated  2015.01.25 06:19:08
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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