森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2016.08.10
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カテゴリ: 生の欲望の発揮
中国の映画監督に王凱歌(チェン・カイコー)さんがおられる。
その人の作品に「人生は琴の糸のように」という作品がある。

ある盲目の老旅芸人の物語です。
彼は三弦の琴を弾き、同じく目が見えない弟子の青年を従えて、転々と各地を放浪しています。
この老いた旅芸人には、ある一つの悲願がありました。
彼の琴の師匠が生前、彼にいい残した「おまえが千本の弦を弾き切ったとき、琴の中にある処方箋が効力を発揮する。
それを持って薬屋に行き、その薬を飲めば、お前は目が見えるようになる」という言葉です。
彼はこの言葉を胸に琴の修業をし、彼の演奏は今や神業に近いものになり、部族間の争いですら、彼の琴の音が聞こえてくると止んでしまうほどでした。

目が見えなくても覚えておられるように、弦が切れるたびに糸に結び目をつけて数えていた老人は、ある日とうとう千本の弦を弾き切ったのです。

もとからそこにはなにも書かれてはおらず、千本の弦を切っても、目が見えるはずもなかったのです。
(流れと動きの森田療法 岩田真理 白揚社 128ページより引用)

この映画は森田理論の「努力即幸福」を思い出させます。
結果よりも努力しているその過程の中に幸せ、生きがいは存在している。
この人は精進を重ねて、多くの人に感動を与える名演奏ができるようになります。
それは過去を振り返って嘆き悲しむのでもなく、将来を悲観して投げやりになるのでもない。
今現在の自分を受け入れて、今この瞬間を生きている。
今に集中して、懸命に生き切っておられる。
それは本人にとっては他に代え難い貴重な体験です。
その姿は、他の人にも感動という大きなおすそ分けをすることにもなるのです。
生きるということはこう言うことだと高らかに宣言しているようなものです。


高橋さんも盲目です。
寒い冬に村々を回り玄関で津軽三味線を弾いては糊口をしのいでおられました。
盲目の自分を嫌ったり、否定しないで、その状況の中で懸命に生きてゆかれました。
そしてもくもくと演奏技術を磨きあげてゆかれました。
そのうち海外にまで認められる演奏ができるようになりました。


高橋さんは、厳しい状況にありながらも、前に進むことをあきらめませんでした。
その演奏は、過酷な経験がかえってプラスに働き、魂の叫びとなって多くの人の心に届き、感動を与えていたのだと思います。
演奏の時「みなさん赦して下さい。私は冷たい仕打ちをされた時皆さんを恨んでおりました。赦して下さい」と言われた言葉が忘れられません。
本来ならこちらが「冷たい仕打ちをしてすみませんでした。赦して下さいね」と謝罪しないといけないのではないでしょうか。
高橋竹山さんのエピソードは、2015年12月24日にも投稿していますので興味のある方はご覧ください。





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Last updated  2024.06.02 07:47:54
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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