森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2016.08.18
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ロシアの風刺作家のクルイロフにこんな寓話がある。


豪華な邸宅に住む大金持ちの徴税請負人の向かいに靴直しが住んでいます。
この靴直し、めっぽう歌好きで、陽気な男。朝から晩までひっきりなしに歌っています。
一方、大金持ちは、破産するのが心配で睡眠不足。そこへ向かいの靴直しの歌でよく眠れません。そこで大金持ちは靴直しの歌を止めさせるために、500ルーブルの硬貨の入った袋を進呈しました。

靴直しは袋をつかむと、走るというより飛ぶようにして家に帰った。
贈り物は衣服の下に入れて持ち帰り、その夜は地下の穴蔵に隠してしまった。
袋と一緒に持ち前の陽気さも!歌が出なくなったばかりではなく、眠りもどこかへいってしまった。(彼も不眠というものを知ったのである)
すべてのものが疑わしくなり、すべてのものが彼を不安にさせた。

全身に寒気を感じ、耳をそばだてる。要するに、人生が過ぎ去ってしまって、川へ身を投げたいくらいの気持ちだった。

靴直しは考えあぐねた末、やっと気がついた。
袋を持って徴税請負人のところへかけつけて、こう言った。
「ご親切ありがとう。これはあんたの袋です。お収めください。
袋をいただく前は、不眠というものがどんなものか知らなかった。
あんたは自分の財産を身につけて暮らしなさるがいい。
だが、あっしは歌と眠りのためなら、100ルーブルだって要りません」

この寓話を森田理論で考えてみたい。
森田では欲望は生きる源であると言っている。
欲望のない人は哀れなものだと言っている。
欲望にはどんなものがあるのか。

ざっと挙げただけでもこんなにある。
これらを求めないということは生物とは言い難い。人間とは言い難い。
欲望を持って自然や他者に働きかけることで、自分の生命を維持できているのである。
欲望の存在なしに人間は生き延びることはできない。

ところが欲望が暴走することは、その思いとは反対に、自分たち人間の破滅を招いてしまうというジレンマに陥ってしまう。

チェルノブイリ、スリーマイル島、福島原発の放射能漏れの惨事は目を覆いたくなる。
これらは人間のあくなき欲望の暴走の果てに起こした事故であった。
将来私たちの子孫が末広がりに幸せになる方向に向かう欲望の追求は大歓迎である。
ところが今現在の欲望に目がくらみ、刹那的快楽を求めて突き走る方向は如何なものか。

欲望の追求は、けっして暴走を許してはならない。
人間は進化の過程で、欲望の制御機能を身につけていった。
脳でいえば扁桃体や海馬が淘汰されずに残されてきた。

森田では、このことを「精神拮抗作用」という。
今の人間は欲望の追求に弾みがついて、暴走している状態だ。
そして残念ながらもう破滅を味合わないと自己内省できないところにまで来てしまっている。

私はいつもサーカスの綱渡りの芸を思い浮かべる。
サーカスの綱渡りは、長い竿を右に左に揺らしながら、バランスを取りながら、注意して少しずつ前進している。
そうしないとすぐに地上に落ちてしまう。下手をすると命を落としてしまう。
森田理論は、欲望と不安の調和を目指している。
このことに思いを馳せて、世の中にその真意を訴えていく必要がある。





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Last updated  2016.08.18 06:19:04
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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