対人恐怖症の人は、人からの依頼事項を断ることをためらうことが多い。
それは根本的なところで人を信頼することができないことからきている。
他人の依頼事項を断ると、あからさまに相手が嫌な顔をする。
あるいは、面と向かって自分のこと非難する。
すると、自分は孤立して仲間はずれにされるのではないかということを恐れているのだ。
そういう不快な場面が予想されるので、はっきりと自分の意思を伝えることができない。
相手の理不尽な要求でも、自分の意志を捻じ曲げて耐えているのだ。
これは一見すると、八方美人に見える。
反対にそういう人は、相手に自分の意思を伝えて、何かをお願いするということができない。
例えば集談会でも、世話役候補の人に「世話役になってください」と依頼することができない。
ダメでもともとという考えが持てない。特に対人恐怖の人は、一大決心がいるのである。
世話役をすることが相手の神経症の克服にとって重大な意味を持っていることは分かっている。
しかしなんだかんだと理由をつけられて断られることが恐ろしいのである。
予期不安でがんじがらめに支配されているのだ。
注意や意識が外に向かわずに、内へ内へと向いている。常に否定的。ネガティブに考えるのだ。
自分の事を悪く思われても、それは相手の自由なのだ。
自分の依頼事項を相手が断っても、それは相手の自由なのだ。
そういう風には体質的に考えられない。相手が自分の人格を否定していると受け取るのだ。
あるいは自分の人間性に問題があると考える。
本来はうまくいかなかった理由を考えればよいのだが、そんな余裕は持ち合わせていない。
あまりにも飛躍しているのは頭の中ではわかっているが、行動としてはとても怖くてできないのだ。
最近、私はこんな経験をした。
マンション管理人の仕事をしている棟で、居住者のある女性の人から宗教の勧誘を受けた。
私はそのつもりはないのだが、私のところにやって来て、お祈りをさせてくださいという。
3分ぐらい目を閉じてください。今からお祈りをします。きっといいことがありますなどという。
そんなことが2回あった。すると、次には本部の道場に行ってくださいという。
詳しい内容説明は何もない。私はいいカモとみたのか、本部まで送り迎えをしてあげるという。
都合がいい日を選んで電話をして下さいということだった。
私は即座に断りたかったが、そこで働かせてもらっているという手前もあって即答できなかった。
それから数日間、どうすれば当たり障りのない断り方ができるのか悩み必死で考えた。
お布施はいらないのか。信者として勧誘されることはないのか。いつでも中止することができるのか。などなど。でも、これらはいくら考えても断るための口実である。相手に言い訳を与えるようなものだ。
そんな折、名案が思い浮かばないので、会社の営業マンに相談してみた。するとよいヒントもらった。
会社からは、仕事以外のことで、個人的に特定の居住者と接触を持つことは禁じている。
政治活動、宗教の勧誘、物品販売、カラオケや飲食などの関わりは、過去に重大なトラブルに発展したことがあります。会社は、居住者との付き合い方は挨拶程度にとどめておくように決めています。
特定の居住者と親しく世間話を5分以上にわたって続けてはいけません。
管理会社に雇われている管理人は全員そういう誓約書にサインしています。
そういうわけで、ご期待にお応えすることができませんと伝えたらどうかと言われた。
それにヒントを得て、早速その居住者が受付を通りかかった時にお断りの話をした。
相手は予想外の事を言われたので、一瞬驚いた様子であった。
そして「勤務が終わった後も、会社に拘束されているのか」などといわれる。
でも最終的には「わかりました」とぶっきらぼうに言って立ち去られました。
相手に不快な感情が渦巻いているのが分かったが、この1件はこれで落着した。
それ以来お祈りの話はされなくなった。
これをいつまでも先延ばしにして、うやむやにしていたとすれば、後々までイライラ感が続いていたことであろう。思い切って断ることができてほっとしている。
今まで夜寝不足になるほど悩んでいたのはなんだったのだろう。
自分でどうしたらよいのか分からないときは、信頼できる人に相談することが一番だと感じた。
自分一人の判断は間違いが多いという認識は持っておいたほうがよさそうだ。
特に対人関係の面では、集談会の仲間は、適切なアドバイスをしてもらえることが多い。
信頼できる人のアドバイスを参考にして、自分の意思をはっきりと相手に伝える事は大切だなと感じた。
そうしないと、相手の思うつぼで、自分の意志に反した行動をとると苦しみはずっと続くことになる。
ウソも方便ということ 2025.11.28
共感と同情は違います 2025.11.26 コメント(3)
世話活動が心の励みになる 2025.11.15
PR
Keyword Search
メルトスライム25さんCategory
Comments
Calendar