帯津良一さんの本の中に剣法について触れておられる。
武術といえば、 「剣法」には、宮本武蔵に代表される「殺人刀」と、柳生新陰流の「活人剣」の2つの流れがあります。
宮本武蔵は殺人の剣です。誰にも負けない自分になる。
そのために、ひたすら自分を磨いて磨き抜き、向上していくのです。
ある意味で自己中心的な「自力」の剣法です。
そこへいくと、柳生のほうは「活人剣 」と言って、切り結びながら「場」を作っていく。
その根底には、自分という存在は、相手があって自分がいる、という相対的な自己認識です。
だから、相手を殺す事は自分をも殺すことと悟り、おのずと両者を活かす道を求めることになります。
こうして自我をなくし、大いなる時空を超えたいのちの場に身を預けて初めて相手を生かす剣になります。これこそ「他力」の剣法です。 (楽々往生 帯津良一 ベスト新書 151頁より引用)
宮本武蔵は自分1人の力で剣の道を極めて、どんな人と戦っても負けない技術を身につけました。
そういう意味で克己の人だと思います。生の欲望をとことんまで突き進んでいった人です。
これはこれで誰でもできることではありません。森田理論にかなった素晴らしい生き方です。
柳生新陰流の剣法は、ライバルを想定し、日本一の剣の達人を目指すということとは違います。
柳生新陰流は、自分と相手の関係があって剣法が成立しているといいます。
この点この剣法の難しさを感じます。また奥深さも感じます。
一人でいくら剣の道を究めたとしても、相手が自分よりも強ければ負けてしまいます。
優劣や勝敗は相対関係の中でのみ決まるのだとみています。
だから戦う相手を常に観察して分析することが欠かせないといいます。
自分と相手の剣の技術、練習方法、体調、強み、弱みなどをあらゆる情報網を使って収集する必要があるのです。
また自分と相手は時間の経過とともに、常に流動変化していることを忘れてはならない。
今日の分析はもはや明日には役立たないとこころえるべきである。
刻々と変化する自分と相手の状況をよく見定めて、その時の状況に対応した柔軟で最適な手段を用いることが重要である。
そのためには事実に裏付けられていない先入観や決めつけを持たないことだ。
相手の動きをできる限り正確につかんで、千変万化する相手の変化に自分を対応していくというやり方である。
敵をすくませて力ずくで相手を倒すのではなく、相手を動かせ、その動きに沿って無理なく対応するという方向を目指している。
刻々と変化流動する流れに乗って、変化に素早く対応する生き方は、森田理論ととてもよく合致します。
宮本武蔵の剣の道は「今日の自分に明日は克つ」という面が強く、新たな目標を設定して努力していく必要があります。どこまでいってもこれで十分だということはありません。
かなりのエネルギーの持続が要求されます。
下手をすると、思想の矛盾に陥ってしまう危険性をはらんでいると思われます。
柳生新陰流の剣法は、変化を見極め、変化の流れに沿った方法を目指していますので、私たちにはなじみがある方向性を示しているものと思われます。
私は宮本武蔵の生き方のみならず、柳生新陰流のような生き方も考慮しながら生きてゆきたいものだと考えています。
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