森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2018.12.06
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戸締まりやガスの元栓の点検を繰り返す人は、五感に対する信頼が薄いようだ。
普通の人も戸締まりやガスの元栓は気になる。 2回3回と確認行為をする人は多いだろう。
ただし、それ以上の確認行為はしません。
それはとりもなおさず五感に対する信頼が厚いということだ。

五感に対する信頼が薄いと、本来は理性的な判断や検討を司る前頭前野が割り込んでくる。
前頭前野は、 「五感は信頼できない。私が意識的に身体に納得させるから少し待っていてくれ」という。 1つの不安をあらゆる側面から検討しているのである。
しかし、ドアは閉まっている。ガスの元栓は閉じられている。などと前頭前野で意識的に納得させようとしても、その時に否定的な考え方も同時に沸き起こってくるようになっている。
そうしないで安易に判断する習慣があると、命に関わる危険な状況に遭遇することが多くなるからである。このことを森田理論では、人間にはある考えが浮かんでくると、それを打ち消す否定的な考えが浮かんでくるようになっているという。この事を精神拮抗作用として説明されている。
欲望と不安のバランスがとれるからこそ、欲望の暴走を抑えられるのである。

しかし、そのことが、かえって人間に葛藤や苦悩をもたらしているとも言えるのである。

私はアルトサックスの演奏をしているが、そのことが実感としてよくわかる。
人様の前で演奏する曲は、毎日練習をしている。
定番の曲などはもう1,000回以上は、練習をしていると思う。
暗譜で覚えてしまい、楽器をとると手が勝手に動く状態になっている。
練習の段階ではほとんど間違うことがない。
ところが、いざ本番になると金縛りに遭った状態なって自由に手が動かなくなるのである。
特に司会者が色々と曲の紹介などをしていると、その間に前頭前野が活発に動き出す。
「間違えて演奏会を台無しにすることはないだろうな。そうなればバカにされるぞ」などと脅しをかけるのである。一般的にはプレッシャという。
楽器の演奏する人は、この前頭前野がしゃしゃり出てお節介をやく事をとても嫌がる。

運動野に蓄えられた記憶を元に、前頭前野を経由することなく直接指示命令が来ればほぼ90%以上の演奏はできると思っている。この時に邪魔になるのは、人間にだけに備わった前頭前野の活動なのである。

しかし、そうは言っても前頭前野が働くのは自然現象であるのでどうすることもできない。
私の場合は、イチロー選手や羽生結弦選手に学んで、本番前にルーティーンを作り上げている。
ルーティーンを黙々とこなすことによって、前頭前野が入り込まないようにしているのである。
しかし、実際にはなかなかうまくいかない。というのは、前頭前野を入り込まされないようにするということ自体が「かくあるべし」であり、そのこと自体が前頭前野の活動を促進するという面があるからだ。

実際には、演奏活動は仲間と共にしているので、間違えたらいったん止まり、途中からまた演奏に復帰するという方法をとっている。

80%以上の出来で満足するという気持ちがないと、とても人様の前で演奏する気持ちにはなれない。
練習だけは完璧にして、あとは清水の舞台から飛び降りて、成り行きに任せるという気持ちだ。
演奏が終わるとほっとする。緊張と弛緩の繰り返しである。
そのビクビクハラハラする気持ちが、後で思い返すと快感なのである。





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Last updated  2018.12.06 07:22:09
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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