森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2019.06.07
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森田先生がよくお話をされている正岡子規について調べてみました。
正岡子規は1867年に生まれ、1902年に没しています。
34歳の若さでした。肺結核になり最初に喀血をしたのは1889年22歳の時でした。
当時の肺結核は不治の病で、事実病状はどんどん悪化していきました。
結核菌が脊椎に転移して、脊椎カリエスを発症してから、極度の痛みで歩くことさえままならなくなりました。やがて臀部や背中に穴があき膿が流れ出るようになりました。
自力で寝返りもできなくなり、身体に巻き付けた紐を柱に通して、その紐を引っ張ることでなんとか寝返りをうっていたという。

普通の人は、激しい痛みと精神的な絶望感で何もできなくなってしまうのではないでしょうか。
どうして自分だけがこんな目に合って苦しまなければいけないのか。
腹立たしさと無念さで悲観的になり自暴自棄になっても不思議ではありません。

森田理論学習を続けている私たちに語り掛けているものは何かを見てみましょう。

病状が分かったとき、東大を中退して好きなことに存分に挑戦して楽しんで生きようと決意します。
喀血した自分をホトトギスになぞらえて子規とします。子規という号は肺結核を意味していたのです。
そういう意味では、肺結核とともに残された人生を生きていくという決意の表れでもあったのです。

私は子規の人生の中で次の2点に注目しています。
一つは創作意欲です。「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」に代表される俳句は2万首。
その他短歌も数多く作っている。また新聞などに記事を書いている。
「病牀六尺」「墨汁一滴」「仰臥漫録」などの本を書いている。
痛みを抱えながら、自分の好きな文芸の道に最後まで挑戦し続けたことは、実に感動的であります。

私たちから見ると、これこそが森田実践そのものなのです。
不安や恐怖、違和感や不快感があっても、そのことに振り回されたりしない。


もう一点は最後まで周囲の人たちと温かい交流を続けていたということです。
痛みと苦悩で人を寄せ付けず孤立した人ではないということです。
これがどんなにか精神的な安定に寄与していたかと想像しています。
夏目漱石が松山に赴任したときは、親友の夏目漱石の下宿で静養していた。
弟子には高浜虚子、河東碧梧桐、伊藤佐千夫、長塚節などがいる。

その人たちが、病床の子規を見舞いながら、なおかつ俳句や短歌の指導をうけていた。
河東碧梧桐は暑さに耐えかねている子規のために手動の扇風機を作ってあげた。
寝返りも打てないほどの苦痛を麻痺剤で和らげながらも指導や交流を続けていたのだ。
私たちも神経症や難病を理由にして孤立することは避けたいものです。
幅広い人脈を築いて、温かい人間関係を維持して広げてゆきたいものです。

晩年は子規の面倒は妹の律が見ていた。実に献身的であった。
それでも介護してもらっている子規には、妹律の対応に不平や不満が溜まっていく。
それは「抑臥漫録」という本に残されている。
律は理屈詰めだ。強情だ。冷淡だ。木石だ。などと罵詈雑言を書いている。
書くことでイヤな感情をため込まないで吐き出すようにしていたのだろう。
注目すべきは、愚痴や怒りの言葉なのに、出版を意識したかのように、丁寧な筆跡で書かれていることだ。多分不満や怒りを客観化して、眺めていたのだろうと思う。
決して律に対して不満や怒りを口にするようなことは滅多になかったという。
腹が立ったとき、売り言葉に買い言葉で、相手のことを非難したり否定していては双方ともみじめになるだけだ。その不快な感情を素直に認める。
そして最終的には受け入れることができていたのではないか。
森田的にみれば優れた対人折衝能力を身につけていたということです。
そして不平不満の感情が過ぎ去ったとき、律に対する感謝や思いやりの気持ちが自然に湧き起こってきていたのではないかと思うのである。この点も学ぶ必要があります。

いずれにしても、正岡子規の人生は、森田理論を絵に描いたような見事な作品に仕上がっていることは間違いないようである。





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Last updated  2019.06.07 06:30:06
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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