森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2019.11.25
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1917年森田先生は中村古峡が主催する「日本精神医学会」の評議委員を受諾している。
森田療法が確立したのが1919年であるから、その2年前のことである。
評議委員の中には、渋沢栄一、幸田露伴をはじめ、10名を超える東京帝大教授などが含まれていた。

中村氏の「日本精神医学会」の設立趣旨に、「はやく父を失ったため10年にわたって苦学する間、脳神経衰弱に襲われ、ひいては脚気、心臓病、肺尖カタルなど万病を併発し、後には弟が精神病にかかり入院中に死亡するという悲惨な経験を経て、ここに新たに精神医学と云う一科を建設してみたいと云う決心を起こしました」と述べている。
この経験は森田正馬の体験とよく類似しており、二人は意気投合したという。

中村古峡との付き合いは1925年で終わっているが、それまでは親密な付き合いが続いている。
中村古峡は「変態心理」という雑誌を発刊していた。
変態というのは、正常でないこと。異常心理、超心理というほどの意味である。
この雑誌には、幸田露伴、賀川豊彦、伊藤忠太、生田長江、柳田國男、井上円了、金田一京助、富士川游、高群逸枝、南方熊楠、古屋信子などの多彩な著名人が寄稿している。


その一端を紹介しよう。
「迷信と妄想」(15回連載)「児童恐怖症について」「恐怖に対する余の臆説」「誤れる不良児の教育法」「神経質の話」「神憑の現象について」「夢の研究」(5回連載)「どんな人が自殺するか」「ヒステリーの話」(2回連載)「催眠術治療の価値」「精神療法の基礎」「赤面恐怖治癒の一例」「肝臓癌の治癒した一例」「神経衰弱に対する余の特殊療法」「若返り法と霊子術」「潜在意識について」「夢の研究に就いて」「変質者に就いて」(2回連載)「形外漫筆」(9回連載)「嫉妬妄想に就いて」「有島武郎の死を評す」「流言蜚語の心理」「心身の健康とは」「注意は活動である」(2回連載)「精神病とは如何なるものぞ」「生の欲望と死の恐怖」(2回連載)
私たちが森田理論学習で学習している内容が、この時にすでに考えられていたということです。

その他、この雑誌の購読者に対して講話も積極的に行っている。
原稿の執筆も含めて「変態心理」に費やす時間は相当なものであった。

呉教授をはじめ精神病学の本道を歩む人たちからは顰蹙をかっていたという。
しかし「変態心理」は森田先生にとって精神療法を進展させるチャンスだったのであり、自ら正しいと信じて、周囲の眼などは気にかけなかった。それが森田正馬の本領なのである。

そして1922年本格的な神経質治療の著書「神経質及神経衰弱症の療法」「精神療法講義」を出版している。この2冊は神経質研究を完成させる重要な役割を担った。
森田正馬にこの2冊の主要著書の執筆を勧め、困難を排して自ら刊行した中村古峡の貢献は大変大きいものがある。

その後自宅で入院生を受けいれての神経症治療が本格化してくるとともに、二人は疎遠になっていった。
1926年に書き手を失った「変態心理」は終刊を迎えた。


1942年には名古屋大学で学位論文を提出して学位をとっている。
千葉市で中村古峡が開設した診療所は、「中村古峡記念病院」として現在に至っているという。
中村古峡は交渉力にも優れ、積極果敢な行動力には驚くばかりである。
森田先生が中村古峡と過ごした7年間が森田療法確立に果たした役割は大変大きいものがある。
(森田療法の誕生 畑野文夫 三恵社 314ページから320ページ要旨引用)





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Last updated  2019.11.25 06:20:07
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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