森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2020.04.17
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​​森田全集第5巻の180ページに次のような話が紹介されている。

元入院患者の奥さんから森田先生に、長文の手紙が届いた。
その内容は、主人が私に悪口、乱暴、非人情、不品行なことばかりする。
どうか主人に意見して、改心させてもらいたいと依頼する内容だった。
森田先生はその手紙を一番弟子といわれる古閑義之先生に見せて、君の見立てはどうかと聞かれた。

古閑先生は、この奥さんに同情して、入院してあれほどよくなったのに、奥さんをそれほどまでいじめるとは、ひどいご主人だと思った。
森田先生にこのことを話したところ、「それは判断の仕方が悪い。言葉の見かけに騙されている」といわれた。森田先生の見立てはつぎのようであった。

この奥さんの言う通りだとすれば、全く理由もないことに、非常識の乱暴をするので、その主人はほとんど精神異常と見なければならない。
すなわち奥さんは、ただいたずらにご主人の悪いことばかりを誇張して、しかも自分の欠点・短所は少しも省みないで、自分がどうした場合に、主人が悪口したかという事は、ほとんど少しも書いていないのであります。すなわちこの奥さんは、少しも自己反省の力がなくていたずらに相手のみを嫉視・憤慨するもので、ヒステリー性・低能性のものと鑑定しなければならぬ。


強い自己内省性は神経質者の特徴の一つとされている。これが感じられない。
ごまかしたり嘘を言わないで、具体的、赤裸々に自己のことを語ることは、神経症を克服するためには必ず通過する関所のようなものです。この奥さんにはそれが欠けている。

森田先生は人を見立てる場合に、その人が事実とどう向き合っているのかを重視されている。
その人の言動から、 ごまかし、嘘をつく、弁解、言い訳、事実のねつ造、責任転嫁、他人批判、自己正当化、同情を得る ​などが見られた場合は、甚だしく事実を軽視しているとみておられるのです。

森田理論は、生の欲望の発揮と並んで、事実本位の生活態度の養成が核となっています。
ですから事実を軽視している人は決して見逃すことはできなかったのだろうと思います。
その点は入院生に対して大変厳しかった。
この奥さんの場合は、入院してよくなったにもかかわらず、事実本位の面から見ると、まるっきり反対であった。つまり第一段階の治り方はしたかもしれないが、第二段階の治り方には程遠い。
こういう人は、森田理論によって、神経質者としての人生観を確立するというところまで行きつくことはできない。いいところまではいったのに、実に残念な結果に終わったとみるべきであろう。





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Last updated  2020.04.17 06:20:05
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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