森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2020.08.10
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最近集談会にやってくる人の不安の中身が漠然とした不安に変わっているという。
深刻な症状でのたうち回っているという雰囲気ではない。
その証拠に「生活の発見誌」を読むことが症状克服に役立つのなら、私も読んでみたいという気持ちになる人は極めて少ない。経済的にそんな余裕がないという人もいる。

多くの人は、そんな海のものとも山のものともわからないものをとって読むことは時期尚早として見向きもしない。あるいは本を読むということ自体に親和性がないのかもしれない。
私が集談会に参加し始めたときは、対人恐怖症で会社を辞めるかどうかという危機的状況であった。なんとかして神経症を治したいという気持ちが強かった。
それだけ切羽詰まった不安を抱えていたのである。

最近の人は、不安の中身が弱いと感じる。軽いのではないかと思う。
決して不安がないのではない。不安があるから集談会にやってきたのだ。
うつ病でいえば、大うつ病ではなくて、慢性的な軽い不安状態が続いている気分変調性障害のような感じである。切羽詰まっている不安よりも、不安のために生きづらさを抱えている。


森田理論は生の欲望が強い人というのが適応条件になっているからです。
それは本人のせいばかりとは言えない。
日本という社会や家庭が、欲望そのものを骨抜きにしてしまっているように感じる。
戦後の教育や社会の在り方が問題だったのです。

例えば、一般的に早く親から精神的にも経済的にも自立して生活したい。
家を建てて、結婚して、子供を設けて、暖かい家庭を作りたい。
このような目標、夢、希望を多くの人が持っているかどうか。
そういう基本的な欲望が希薄になっているのではないか。
一例をあげてみよう。

・家は親の家に住むから別に困らない。
・必死になって働かなくても、親と一緒に暮らしていれば、食いはぐれることはない。

・親が亡くなれば相当の遺産を相続できるから将来路頭に迷うことはないだろう。
・結婚して、炊事、洗濯、掃除、食事の準備に追われて何が楽しいの。
・子供が生まれて、自分の時間を子育てに割かれるのはまっぴらごめんだ。
・会社では、暗黙の了解で、サービス残業を強要されることには耐えられない。
・それより年収は少なく、身分の保証や社会保険の適用はないが、フリーターやアルバイトのほうが気が楽だ。

・学校や職場で自分が傷つくような付き合いは極力回避したい。
・一人の時間を大切にして、ネットゲーム、ネットサーフィン、趣味に没頭したい。
・他人との接触は、ツィッター、フェイスブック、ラインで十分だ。基本一人で生活する。
じかに、他人と面と面を合わせて話しするのは煩わしい。
・精神的におかしくなれば、薬で押さえればよい。カウンセリングを受ければよい。
認知行動療法などの精神療法がある。

以上みてきたように、社会全体として生の欲望が弱まっているのである。
依存的で、今だけ何とかやり過ごすことができればそれで十分だ。
今までそれでやってきたし、これからもそれでやっていけるめどが立っている。
無気力、無関心、無感動の生活にどっぷりとつかっているために、それ以外の生活は考えられないのである。仮にそこから抜け出ようとしても、そのエネルギーが枯渇している。
森田先生は欲望が希薄な人は、哀れなものだといわれている。

仲間を求めて意を決して集談会にやってきた。
すると年配の人ばかりだ。50代の人が若手といわれている。
何しろ年金暮らしだという人がやたらに多い。
健康法や生きがい、趣味や介護の話が多い。
この会は余生をいかに楽しむかを話し合う人たちの集まりなのか。
挙句のはてに、不安は横に置いて、規則正しい生活を送りなさい。
日常茶飯事に丁寧に取り組みなさい。定職を持ちなさいなどと言われる。
自分には全く役に立たないところだった。

森田療法が適応される条件に当てはまる人は、生の欲望が強いという特徴がある。
それを持ち合わせていない人は、残念ながら他の方法でその漠然とした不安感を取り除くことしかない。森田療法がピタッとヒットしないのである。
このブログは毎日800人から1500人の人が閲覧されている。
潜在読者はその3倍から4倍ぐらいだと聞いた。
ということは5000人がいいところだ。
それ以上にアクセス数が増加することは、生の欲望の脆弱社会の現状から見ると期待できない。
このブログを読もうという人は、生の欲望が比較的強い人だと思う。
逆に言うと生の欲望が強い森田適応者が極端に減少しているというのが日本の実情なのだと思う。残念だが、いくら対策を立てても、自助組織が縮小し、森田適応者が減少することはいかんともしがたい。生の欲望を賦活させる社会構造の転換が必要になると感じている。





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Last updated  2020.08.10 07:03:45
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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