森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2021.05.26
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2013年6月4日、サッカー日本代表はワールドカップ・ブラジル大会への出場を決めました。この試合は、オーストラリアを相手に、勝つか引き分ければ出場が決まるが、負ければ予選敗退という大事な試合でした。

白熱試合になり、後半36分過ぎにオーストラリアに先制されました。
誰もが負けを覚悟した中で、後半のロスタイム、日本はフリーキックを得ました。
この時、本田圭佑選手は、PKの笛が鳴るや否や、「俺が蹴る」とボールを持ち、実際に同点ゴールをど真ん中に決めました。ここでもし外すと、できもしないくせに出しゃばるなとパッシングされたかもしれません。それなのにプレッシャーを乗り越えて、あえて挑戦の道を選んだ、本田選手の決断と勇気に日本中が感動しました。

本田選手は試合後、「真ん中に蹴って捕られたらしゃあないと」思っていたと語っています。
普通に考えると、真ん中はゴールキーパーがいるわけですから、右か左に打ち込まないといけません。これは雑念を取り除いた選択と決断しかありません。

本田選手は、「こういう場面になったら、こう考え、こうプレーする」というシュミレーションを普段からしっかり持っていたのだと思います。
日本中の人がかたずをもって見ているわけですから、相当大きなプレッシャーはあって当然です。それをはねのけるだけの精神力が、普段の練習や生活の中で自信や確信にまで高められていたのだと思われます。
それが普通の人はしり込みするような場面で発揮されたのではないでしょうか。


私たちは、神経症的な不安、恐怖、違和感、不快感から逃げてしまう事が多いのが現状です。
気分に振り回されて、逃げることで自分を守ることを優先してしまうのです。
それを繰り返しているうちに、精神交互作用で蟻地獄に陥っていった。
寝ても覚めても神経症の苦しみから逃れられない。むしろその苦しみは増悪していく。
勉強や仕事に身が入らない。他人からも見放されてしまう。
もはや自分ではどうしてよいのか皆目見当がつかない。
自分は苦しむために生まれてきたのか。
いっそのこと死んでしまいたい。

強迫観念というのは、不安から逃げようとすればするほど、しつこく付きまとってくる代物なのです。アフリカのサバンナで小動物が肉食獣に追いかけられるようなものです。
逃げれば逃げるほど勢いをつけて追い掛け回されます。
そして最後には力尽きて捕らえられてしまいます。


この方法も、結果は逃避の道を選んだ人と何ら変わりません。
不可能なことにチャレンジしているのですから、元々勝ち目はないのです。
水車に飛び込んでいったというドン・キホーテのようなものです。

神経症的な不安に対しては、気分本位になって逃げ回る、あるいは取り除こうとするやり方は間違いだということです。森田理論が教えてくれているのは、逃げ回らないで、不安を直視するということです。イヤイヤ仕方なく受け入れることが道を選択するのです。
不安を取り除くことにエネルギーを使うのではなく、不安を認めて受けいれる。


不安の方の立場に立ってみると、双方の関係性がよく見えてきます。
不安の方は逃げ回る人を見つけると嬉しくなる。
不敵な笑みが思わず出てしまう。さらに追い回していじめてみたくなる。
不安を取り除こうと努力している人を見ると、圧倒的な戦力を動員して、身体的、精神的に立ち直れないほど叩き潰してしまおう考えているのです。息の根を止めることが快感なのです。
さらにますます戦力の増強や補強を考えるようになる。
太平洋戦争を戦った日本とアメリカのようなものです。
そういう方向に向かっている人が、格好のターゲットになっているのです。
不安を突き付けて相手が乗ってくるのを、手ぐすね引いて待っているのです。
その誘いに乗ってしまうことは、針に掛かったマグロのようなものです。
釣りあげられて一巻の終わりです。

一方、不安の挑発に全く乗ってこない。不安から距離をとってじっと観察している。
手はださないので、時間ばかりが過ぎていく。
こういう人は、不安の立場からすると、何とももどかしい。イライラしてしまう。

また、森田理論で不安の特徴や役割を理解している人は厄介です。
不安を自分の仲間として取り入れようとしている人は手出しできなくなる。
不安の方が立ちすくんでしまうのです。
相手が反撃してこないので、戦うきっかけがつかめないので困ってしまう。
不安の方としては、闘う口実がなくなるので、防衛力を強化することは、無駄なエネルギーを使うことになります。
不安にとっては、自分の存在価値を否定されて、居場所が確保できなくなるのです。
そのうち戦力の撤退を考えざるを得なくなるのです。

不安の特徴や役割を身に着けて、実行している人は、いつの間にか大事な仲間として居場所を見つけることになります。不安を大いに活用することになるのです。
昨日の敵は今日の味方になる のです。
信じられないかもしれませんが、森田理論で神経症を克服した人はそうなれるのです。
取り入れた相手と共存共栄の関係に入ってしまうのです。
当初の目論見とは全く違う関係が出来上がってしまうのです。
不安の方としても、自分の存在価値を認めてもらって働き場所を提供してもらっているので異存はありません。こういう関係が出来上がれば、双方とも友好的で、安全、安心、平和な幸せの時を享受できるようになるのです。
こういう方向性をみんなでめざしていこうとしているのが、森田理論学習なのです。
素晴らしい世界が広がるように思えませんか。





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Last updated  2024.06.04 10:06:58
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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