森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2021.08.26
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不安や心配事を放っておくからこそ、葛藤や悩みに発展するのだという人がいます。
だから、不安や悩みは、できる限り早めに取り除いた方がよいという考えです。
もっともらしい考え方です。

この考え方に対して、森田理論を学習した人は、その考え方は見当違いも甚だしいと思われるのではないでしょうか。たしかに、森田では不安を取り除こうとすれば、精神交互作用によってますますとらわれが強くなっていくと学びました。
この考え方は、神経症の経験をお持ちの方は、自分の体験として納得できます。

この2つは、まるきり反対の考え方ですが、どちらの見解が正しいのでしょうか。

私は、基本的には、どちらの言い分も正しいと思います。

ここで大切なことは、不安の中身を検討しないと不毛な議論で終わってしまうということです。

一例をあげてみましょう。誰でも入院や事故が起きたときのために保険に入っています。

これらは万が一の不測の事故を想定して、リスクに備えた対策をとっているわけです。
私はマンションの漏水事故が発生した時、多額の修理費用が必要になりましたが火災保険のおかげで助かりました。
この場合は、不安やリスクを察知した場合、早めに積極的な行動をとることが必要となります。
それが有事の際に、自分の命や家族の生活をしっかりとサポートしてくれます。

最近は土石流の災害等が、日本全国あらゆるところで発生しています。
海水温の上昇とともに線状降水帯がいつどこで発生しても不思議ではないのです。
ハザードマップで土石流の発生する可能性のある場所はあらかじめ分かっています。
危険個所に住んでいる人は、7月、8月の豪雨時期になると、直前の天気予報で確認して、あらかじめ避難しておくことが重要になります。
これぐらいは大丈夫だろうという安易な判断が取り返しのつかない大惨事になるのです。
今年の熱海の土石流の災害は、盛土が被害を拡大させた原因とされています。
今後盛土をして宅地を造成する場合、最悪の事態を想定して、立地条件や排水路を確保したうえで慎重に行う必要があります。


不安が湧き上がってこないことは、即、生存の危機につながります。

ただし、気が付いただけではダメです。対策を立てて実行に移すことが不可欠です。
実際に行動しないと、鈍感な人と何ら変わりがありません。
むしろ、不安がいつも付きまとい、イライラして精神的につらくなります。
不安に気が付き、それに対して対策を立てて、実行することで、安全と安心を手にすることができます。


森田理論では欲望が強い人は不安も強くなると学びました。
生の欲望の強い人は、必ず不安が発生するようになっているのです。
この二つは必ずセットになっているという理解を深める必要があります。
車でいえばアクセルを踏み込まないと永遠に目的地を目指すことはできません。
アクセルを踏み込むことを忘れて、ブレーキの効き具合ばかりを気にしているようでは、永遠に目的地にたどり着くことはできません。車の場合は、そんなことを考える人はいません。
ところが、不安と欲望の関係では、欲望を目指すことを忘れて、不安を取り去ることや逃避することに全エネルギーを投入する人が後を絶たないのです。
神経症でのたうち回っている人は、まさにそういう悪循環にはまっています。
そして精神交互作用でどんどん増悪して、アリ地獄の底に落ちていくのです。

神経症的な不安は生の欲望が暴走しないように、注意信号を点灯させてくれていると理解しておけば大丈夫です。不安を活用しながら、注意して前進すればこんなに役に立つことはありません。一番問題になるのは、生の欲望の発揮を無視して、本来は私たちの味方であるはずの不安に敵対することです。ミイラ取りがミイラになるというピエロを演じてしまうことです。
不安の役割を森田理論学習によって正しく理解すれば、不安は私たちが生きていく上でのパートナーだということが分かります。かけがえのない仲間であることが分かります。

これを無視すると、極端なことを言えば、双極性障害の躁状態の様相に近くなります。
妄想的、空想的な発言や行動が多くなります。
金遣いが荒くなる。運転が荒くなり交通事故を起こす。
しっかりした計画もないのに、自由人を目指して、思い切って仕事を辞めて起業する。
離婚に踏み切る、仲間を巻き込む、借金をする。不動産の売却や購入をする。
高級車を買う。一攫千金を狙ったギャンブルに手を出す。
病気が治って、その時のことはなかったことにしてくれ、と言っても後の祭りです。
不安の存在は、それらの抑止力として、健全で健康的な生活を送るためになくてはならないものなのです。

不安というのは、惨禍を回避して将来に明るい展望が開けるものや、他人の役に立つことは積極的に不安の解消に向けて行動することが肝心です。その方が望ましい。
しかし、森田理論でいう、欲望の暴走の抑止力として発生している不安については、その不安を活用して欲望が暴走しないように配慮することが肝心です。
つまり欲望と不安のバランスを常に意識しながら、しかも生の欲望に向かって絶えず前進していくという状態を維持することが大切になるのだと言えます。





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Last updated  2021.08.26 06:20:04
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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