森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2022.01.12
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昨年行われた第38回森田療法学会に参加した。
今回はコロナ禍のため、web開催だった。
このやり方が私としては参加しやすいと感じた。

この中でご紹介したい論点がいくつも見つかった。
今回中村敬先生の講話に刺激を受けたことを取り上げてみたい。
不問についての考え方である。もちろん症状不問のことである。
高良武久先生、鈴木知準先生、宇佐玄雄・晋一先生の考え方を比較しておられた。

3人の中で不問を一番強調し、徹底されているのは宇佐先生である。
症状を口にすることはご法度である。言葉で理屈を述べるものは治らない。

臨済禅の影響が大きいといわれていた。

その次は鈴木知準先生で、同様に症状不問を重視されている。
作業療法を行うことで、不安の濃度を希釈していく。
作業療法で全治に至るのは、平均27.6ケ月かかるといわれる。
最終的には飛躍があるといわれる。漸吾から頓悟に至る。

高良武久先生は、症状不問はほとんど強調されていない。
時間をかけてタマネギの薄皮をはがすようにいつの間にか治る。
神経症の治り方は漸吾となる。理論と実践の相互作用で治る。
高良先生は普通の生活が戻り、適応障害が緩和すれば神経症の克服と判定される。不安や恐怖を完全に取り除くという考え方ではないようだ。

森田に精通された先達であり、素人が軽率に口をはさむことではないかもしれない。ただ「症状不問」については、生活の発見会でも様々に議論されていることもあり、ここで私見を述べてみたい。

森田先生は、「あるがまま」になろうとしては、すでに「あるがままではない」といわれる。つまりことさら「あるがまま」を強調するような態度は症状克服から離れてしまう。


それはケガをしたときにかさぶたができますが、そのままにしておくとかさぶたが取れてケガが治ります。しかし、本当に治っているとどうか確かめようとして、かさぶたをはがして治り具合を確かめようとしていると、いつまで経ってもケガが治らない。
むしろ雑菌が入り悪化してくる場合もあります。
「症状不問」という言葉にもそういう面が多分に含まれているのではないか。

一心不乱に実践・行動していたら、症状のことは一時的に忘れていた。
そういう場面を多く積み重ねていけば、頭の中の大半を占めていた神経症のことは比重を下げていく。そこに「あるがまま」「症状不問」という言葉が入り込む隙間がなくなっている。


症状で苦しいという状態は、それに対応した欲望が大きいということになります。
森田理論学習では、不安と欲望はコインの裏表の関係にあるといいます。
「症状不問」を問題にしている場合は、不安、恐怖、違和感、不快感のほうに意識や注意が向いています。それに伴い生の欲望の発揮の方への取り組みが不十分になりやすい。

私は「あるがまま」「症状不問」をことさら強調されている人の、日常生活を注目してみるようにしています。規則正しい生活、凡事徹底、物そのものになる、生活を楽しんでいる、手足がよく動いている、自分でなすべきことを人任せにしていない、人間関係の幅が格段に広がっている、生きがいを持った生活を送っている。
そういう人が、時たま自分の生活を振り返って、結果として「あるがまま」「症状不問」の生活になっていると発言されるときは、素直で謙虚な気持ちで受け入れることができるのです。
そういう裏付けを持ったうえで、使用すれば何ら問題はありません。
不安と欲望の調和は森田理論が目指しているところです。





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Last updated  2022.01.12 06:20:06
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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