森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2025.01.25
XML
為末大氏のお話です。

スポーツの世界では、対象を真正面に見た瞬間に、力み、怖れ、プレッシャーといったネガティブな感情が湧き上がってきて、実力が発揮できないことがあります。
だから、意識をズラして、気をそらすわけです。
ある局面だけを極端に意識すると、動きがぎくしゃくすることがあります。
そして、力を出し切れずに失敗をする。
たとえば、ハードルの前で身構えるクセがある人は、ハードルを飛ぶ瞬間のことばかり考えてしまいがちですが、ハードルの一歩前に意識をズラすと、クセが直ることがあります。

為末氏は海外での競技が増えてきて、ハードルの前で構えるクセはなくなったそうです。
慣れない海外では、試合にエントリーするのも、移動するのも容易ではなく、僕にはまったく気持ちの余裕はありませんでした。
転ばないようにハードルを飛ぶということにまで、頭が回らなかったわけです。

意識がハードルからズレたことで、力みが抜けたのだと思います。

対象を定めている時点で、そこには意識が向かいます。
僕は足の裏の感覚を意識し過ぎて、それを忘れられなくなっていたときは、あえて腕を振ることを考えるようにして、足の裏から意識を遠ざけるようにしていました。
人間には、何かを克服しようと意識すればするほど克服できなくて、対象から意識が外れた瞬間に、期せずして克服できることがあるのです。
(心のブレーキを外す 為末大 三笠書房 179ページ)

神経症はある特定の不安に注意を集中して、その不安を取り除こうとしています。
しかし意に反して、注意と感覚の相互作用によって、その不安はどんどん膨れ上がっていきます。
アリ地獄の底に落ちてしまうと、もがけばもがくほどさらに深みに落ちてしまいます。森田理論では不安を実態以上に増幅しないことを目指しています。
そのためには一つの不安だけに関わり合うのではなく、次々に待ち構えている様々な不安に対応していくようにすることが有効です。

例えば初めて車の運転をするとき、アクセルペタル、ブレーキペタル、ギアチェンジ、ウインカー、ワイパーなどの操作が気になります。
つい正しく操作しているのか目で確認することがあります。

交通標識や信号、人の動きや対向車の動向から目を離さないことです。
右折する時対向車がいないか、交差点内に人がいないかなどを確認する必要があります。
カーブで左廻りの時、視線を側道の白線に向けて運転する。
右回りの時は、中央の白線・黄線をしっかりと確認して運転する。
カーブが続く場合は、意識や注意をその都度どんどん切り替えていかなければなりません。

神経症で苦しんでいる人は、車の運転に学んで不安との付き合い方を見直すことが必要になります。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2025.01.25 08:25:37
コメントを書く
[不安の特徴と役割、欲望と不安の関係] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

知らぬ間に立派な大… 楽天星no1さん

泉佐野フィルムフェ… へこきもとさん

激しい運動の後、疲… メルトスライム25さん

神経症を克服します♪ ROSE33333さん
「私」がいる幸せ えみこた2さん

Profile

森田生涯

森田生涯

Comments

kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

Calendar


© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: