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好書好日「好きなことをして老いる」ネットを巡っていたら、朝日の好書好日で『川本三郎さん「ひとり遊びぞ 我はまされる」インタビュー 好きなことをして老いる』がヒットしたのです。とにかく、「好きなことをして老いる」というキャッチコピーに捕まったわけでおます♪*********************************************************川本三郎さん「ひとり遊びぞ 我はまされる」インタビュー 好きなことをして老いるより 映画を見て、本を読み、旅に出る。雑誌「東京人」の連載をまとめた4冊目。題名は良寛の歌からとった。 「ローカル線、台湾、荷風が、今私の好きな三本柱です」 田舎の駅で降り、小さな商店街のある町を歩くのが楽しみだったが、コロナ禍で難しくなった。でも。 「私の造語で『近鉄(ちかてつ)』という言葉があります。乗り鉄の一種で、近場の鉄道に乗る。八高線や房総のいすみ鉄道に、よく乗りに行きました」 台湾へは2015年から通っている。自著『マイ・バック・ページ』が翻訳され、その出版社の人たちに会いに行ったのがきっかけだ。 「彼らと話すのが喜びです。学生による『ヒマワリ革命』が起き、日本の1960年代から70年代を書いた私の本が読まれたそうです」 そして永井荷風。毎年、初詣はゆかりの寺に。終焉の地・千葉県市川市に書斎が再現されると見に行く。 「好きな作家を持つのは大事ですね。自分が年をとると、太宰治や芥川龍之介のように若くして亡くなった作家に、興味がなくなってくる。79歳で死んだ荷風は老いを知っています。最初から新しさを目指していなかったので、古びないのです」 それまで「花柳小説家」や「好色作家」と見られていた荷風を「都市の作家」ととらえ直し、『断腸亭日乗』に沿って読み解いた『荷風と東京』は、代表作の一つだ。実は今、「荷風の昭和」という連載が50回を超えて続いている(雑誌「波」)。ようやく戦後まで来た。 「軍人や政治家でなく、市井の一作家を通して見た小さな昭和です。荷風は物価や生活、風俗も細かく記している。空襲に遭い地方を転々するなど、日本人の悲劇も体現しています。連載があと何回かで終わるので、さびしくて。この4年ほど書いている時は、本当に幸せでしたね」(文・石田祐樹 写真・大野洋介)=朝日新聞2022年11月26日掲載実は『映画の巨人たち リドリー・スコット』5で川本三郎さんの映画評を読んで、「これは同好の作家ではないか」と思い、朝日の好書好日をチェックしていたらこの記事を見つけた次第です。
2024.05.31
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朝日新聞デジタルでスクラップしているのだが・・・その「スクラップ一覧」と最新記事を紹介します。この一覧は、いわば我が関心事一覧ともいえるのです。*********************************************************■エンジン、生き残りのカギは脱炭素 トヨタ・マツダ・スバルが新技術2024年5月28日 (2024年5月29日登録)中国が牽引する、EV生産であるが・・・EV拡大の鈍化、日本車の頑張りなどで風向きが変わりつつあるようです。********************************************************* トヨタ自動車、マツダ、スバルの3社は28日、新しいエンジンや関連技術を紹介するメディア向けイベントを東京都内で開いた。いずれも厳しい環境規制に備えた「脱炭素」を意識したもので、電気自動車(EV)だけに絞らない全方位戦略をアピールする狙いだ。 トヨタは、開発中の排気量1.5リットルと2.0リットルの次世代エンジンを展示。電動ユニットと組み合わせることを前提に、小型で効率のよいエンジンになると説明した。これまでよりも電気による走行の割合が高い、ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)に載せるという。 マツダは、独自技術のロータリーエンジンと関連技術を披露。もともと小型で軽いため電動化の部品を載せやすい特徴があることから、組み合わせにより燃費が劣る面をカバーできる。今後は様々なPHVに搭載する絵を描いているという。 スバルは、独自技術の水平対向エンジンにトヨタのハイブリッドシステムを組み合わせた新しい仕組みを紹介した。秋には生産を始められるという。 トヨタは27日には、出光興産やENEOS(エネオス)、三菱重工業と一緒に、自動車用のカーボンニュートラル(CN)燃料の導入や普及に向けた検討を始めると発表。28日のイベントでは、マツダとスバルのトップも協力すると表明した。マツダの毛籠(もろ)勝弘社長は、ロータリーエンジンが、バイオ燃料を含む様々な燃料との相性がいいと説明した上で、「社会に貢献できる技術として活用するのが私たちの使命だ」と話した。 3社がこうしたイベントを開いたのは、多くのメーカーがEVシフトを強めている背景がある。EVは欧米で売れ行きにブレーキがかかったり、中国で価格競争が激しくなっていたりするが、今後、さらに環境規制が厳しくなることでエンジンの生き残りが難しくなることも指摘されている。トヨタの佐藤恒治社長は「未来への志を共有する仲間と切磋琢磨することで、技術を進化させたい」と述べた。 とはいえ3社も、EV開発の手を緩めているわけではない。「投資額でいえば今後の技術開発の中心は、やはりEVなど電動化技術だ」(トヨタ幹部)という。 加えてエンジンでも大きな革新を進めようとすれば、研究開発費はさらにかさむ。トヨタの技術部門トップの中嶋裕樹副社長は「研究開発費はもちろん上がる。その分『いい車』を作ってがんがん売るしかない」。特定の技術だけに寄らない姿勢は、かえってリスク分散になるとも考えている。 販売台数規模でトヨタの1割ほどのスバルの藤貫哲郎取締役は「会社の規模が小さいことは、技術開発を深くやることにはデメリットはない。ただ、広くまんべんなくとはいかないので、(他社と)お互い補完できればいい」と話した。(渡辺七海、大平要)■「警告」でなく「懲罰」中国側の威嚇拍車 総統就任演説から2日半2024年5月23日 (2024年5月24日登録)■月探査機SLIMが復活 太陽光で発電し通信確立 岩石調査も成功2024年1月29日 (2024年1月29日登録)■片目の「まねちゃん」は幸せの招き猫 妻は夢かなえて小説家に、夫は2023年11月12日 (2023年11月12日登録)■飛行士は男、看護師は女…ChatGPT、職業にジェンダーバイアス2023年11月9日 (2023年11月10日登録)「ChatGPT」(チャットGPT)はジェンダーバイアスを持っているってか・・・・さもありなんやでぇ。■荒波の捕鯨史証人、日新丸が引退 1.7万頭解体 反対派が妨害 新聞切り抜き2023年11月5日 (2023年11月6日登録)捕鯨母船「日新丸」といえば、反捕鯨団体の妨害活動などによく耐えてきた船ではないか・・・ご苦労さんでした。■囲碁の仲邑菫さん会見 韓国移籍に「高レベルでの勉強が私には必要」2023年10月30日 (2023年10月31日登録)ウン しっかりしてるがな。 結果が出れば、第2の大谷翔平となれるかも♪■「小型で低価格」日本向けEV 中国大手BYD、立体駐車場に合わせ低く 新聞切り抜き新聞切り抜き2023年9月21日 (2023年9月21日登録)補助金を使えば200万円代で買えるのか・・・かなり手ごわい感じやんけ。■「日本は嫌いだけど」 中国から福島に迷惑電話かけた18歳の本音2023年9月21日 (2023年9月21日登録)国歌が抗日を歌う国であり、負の歴史を反芻する国なので、この行動に出たのも分かる気がするが・・・■H2A打ち上げ「ほっ」 イプシロン・H3、失敗続いた国産ロケット 新聞切り抜き2023年9月8日 (2023年9月21日登録)H3は失敗したが、H2A打ち上げは成功(41機連続で)したので・・・良しとするか。■「日本語ってタマネギみたい」北欧出身の漫画家オーサさんが語る魅力2022年4月10日 (2023年9月19日登録)日本語学習に関しては、トップクラスのスキルではないか♪■囲碁の仲邑菫女流棋聖、韓国棋院に移籍の意向 すでに棋士登録を申請2023年9月11日 (2023年9月11日登録)■29歳で獄死した反戦川柳作家・鶴彬 故郷で碑前祭2022年9月15日 (2023年7月6日登録)反戦作家といえば・・・この人を外すわけにはいけないのだろう。■「国恥地図」に秘められた帝国の記憶 世界秩序揺さぶる中国の歴史観2022年4月21日 (2023年7月2日登録)覇権中国スタンスのもとには、この国恥地図があったのか。■突然の解散先送り、首相判断なぜ 公明と亀裂、世論…不安材料重なり2023年6月15日 (2023年6月16日登録)「これからは大きな見せ場もなく、支持率はダラダラと下り坂では」との声もあるようです。■英語信仰は「壮大なムダ」、言語学者の危惧 「日本語こそ国際語」2023年6月12日 (2023年6月14日登録)ウン ええこと言ってるがな♪■書店ゼロ自治体、全国で26% ネットでの無料配送規制の議論も2023年3月29日 (2023年6月10日登録)書店の減少といえば、本の物流的側面や、図書館との住み分けが気になるのです。■強まるエルドアン氏への働きかけ スウェーデンのNATO加盟めぐり2023年6月5日 (2023年6月5日登録)プーチンからもウクライナからも支持されるエルドアン氏は、バランス感の長けた政治家であるが・・・要注意なんでしょうね■各地に線状降水帯、広範囲で大雨 東海道新幹線、全線で運転見合わせ2023年6月3日 (2023年6月2日登録)西日本一帯に避難警報が出ている模様です。■事故から12年後に里帰りした元町職員 未練断ち切った「けれど…」2023年5月31日 (2023年5月31日登録)被災の原因は地震、津波にあるとしても、政府や東電の無慈悲という人災でもあったようですね。■ウクライナはなぜF16を求めたのか? カギを握る総合力と戦い方2023年5月30日 (2023年5月31日登録)「ロシア領内を攻撃したい」という誘惑にかられる可能性もあるようですね。(後略)*********************************************************<スクラップ機能や使い方について> 気に入った記事、あとで読みたい記事をスクラップして、保存しておくことができます。最大5000件まで、記事閲覧期限を過ぎても、保存可能です。 また、新聞記事検索で検索した記事の新聞切り抜き画像もスクラップして保存できます。 スクラップした記事にメモや最大10件のタグ(分類名)を付けることもできます。保存した記事は、記事の本文や見出し、メモ、タグに入力した文字で検索することができます。 スクラップ記事とメモ・タグは、ネット上の保管庫(クラウドサーバー)に保存され、通信環境があれば、ブラウザー版でもアプリ版でも共有して閲覧できます。<新聞記事検索で検索した切り抜きイメージ画像をスクラップする>1. 新聞記事検索で表示された検索結果一覧の記事の右にある「新聞切り抜き」のアイコンの下の「スクラップ」ボタンをクリックしてください。「スクラップをしました」と表示されるとスクラップ完了です。記事の新聞切り抜き画像がスクラップブックからご覧いただけます。 2. 新聞切り抜き画像が表示された画面でも、左上の「スクラップ」ボタンをクリックすると、スクラップできます。
2024.05.30
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図書館で『映画の巨人たち リドリー・スコット』という本を手にしたのです。なんか既視感のある本であるが・・・再読でもいいかということでチョイスしたのです。帰って調べると、やはり再読となっています。で、この記事を(その5)とします。*********************************************************図書館で『映画の巨人たち リドリー・スコット』という本を、手にしたのです。「ブレードランナー」「ブラック・レイン」「テルマ&ルイーズ」とくれば・・・もっとも好きな監督になるのかなあ。【映画の巨人たち リドリー・スコット】佐野亨著、辰巳出版、2020年刊<「BOOK」データベース>よりSFから歴史劇まで、幅広い題材を描きながら、人間の悪意や文明論など明確なテーマ性と独自の映像美で、いまなお第一線で活躍し続けるリドリー・スコットーその魅力と本質をさまざまな角度から読み解く!<読む前の大使寸評>「ブレードランナー」「ブラック・レイン」「テルマ&ルイーズ」とくれば・・・もっとも好きな監督になるのかなあ。rakuten映画の巨人たち リドリー・スコットシド・ミードが作り出した近未来の景観が語られているので、見てみましょう。P48~50<アンドロイドの哀しみ:川本三郎> 核戦争後の荒れ果てた地球、環境汚染と人口過剰で窒息しそうな都市、メディア・テクノロジーの増殖で自己をホログラフィのような空像としか意識しえなくなった人間・・・1982年、53歳で死去したアメリカのSF作家フィリップ・K・ディックはそうしたディストピアとしての近未来にこだわり続けた病的な作家だ。 ディックの短篇集を編んだSF作家ジョン・ブラナーの言葉を借りれば、「ディックの世界はけっして人好きのするものではない。たいていの場合、その世界はさびれ果てている」。 廃墟、マシンや機械人形に囲まれた自閉空間、LSDやスピードやアンフェタミンといったドラッグが生む幻想世界、実像と虚像の差異がなくなったシミュレーションの仕掛け。晩年、霊的世界を見ようとするかのような衝動にとらえられたドラッグの常用へと落ち込んでいったディックは、SFの世界に、テクノロジーの悪夢、実体を喪失した人間の自己幻想、人造人間(アンドロイド)の孤独、現実そのものと現実認識のくい違いといった病的要素を導入していった。「それはけっして快適な世界でも、魅力ある世界でもない」。病気から逃れようと、「医師に処方してもらった薬は、病気よりもひどい副作用を起こす」(ジョン・ブラナー)。 だがその不快な近未来の風景は、読む者にいつか自分たちが見た「懐かしい」風景だと思わせていく魔力を持っている。なぜなら私たちは病なしにはもはや生きられないのだし、河合隼雄の言葉を借りるならば病気とは一つの「ファンタジー」なのだから。SFのFとはサイエンス・テクノロジーの異常な増殖がもたらした病気という「ファンタジー」であるということも可能なのだ。 1982年に製作され、公開当時はさほど話題にならなかったがその後ビデオ化されるや若い世代の圧倒的支持を受け、いまや“カルト・ムービー”になるつつあるSF映画『ブレードランナー』はこのディックの中期の作品(1968年)で、ディック自身が「私のもっとも気に入っている作品の一つ」といっている『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の映画化作品である。 製作は『ディア・ハンター』の製作者でイギリスのEMI社に属するマイケル・ディーリー。監督はゴシック・ホラー調のSF『エイリアン』で名を上げたリドリー・スコット。そして特撮(SFX)は『2001年宇宙の旅』『未知との遭遇』で知られる特撮の第一人者ダグラス・トランブル。この映画ははじめほとんど無名に近い俳優ハンプトン・ファンチャーが原作を読んで感動し、ただちに自分で脚本を書き、SF作家レイ・ブラッドベリを通じて“ハリウッド映画人とほとんど没交渉”の孤高の作家ディックに会い、映画化権を獲得したという、スタートの時点ではごくマイナーな企画だった。 それがディーリーが製作し、リドリー・スコットが監督することになり、さらにダグラス・トランブルが特撮に加わることによって一気にマニアックなまでのSFX(特殊視覚効果)映画へと開花していった。ちなみに映画題名の「ブレードランナー」は、麻薬中毒者の異常な幻想を描いた『裸のランチ』で知られる作家のウィリアム・バロウズの作品からとられており、この映画のクレジットの最後にはバロウズに「スペシャル・サンクス」が捧げられている。 特撮のダグラス・トランブルがこの映画に加わりたいと思ったのは、「(これが)スペース映画ではない」からだったと語っているように、『ブレードランナー』が『スター・ウォーズ』や『スター・トレック』のような「星空をバックに宇宙船をあやつる」美しくファンタジックなSFではなく、近未来のディストピア、痛々しい地球にこだわった「さびれ果てている」病的なSFだったからだ。映画『タクシードライバー』で荒廃したニューヨークのアンダーグラウンドを描いたマーチン・スコセッシ監督もディックの原作を映画化したかった一人だというが、『ブレードランナー』の世界はたしかに未来の広大な宇宙空間よりも、むしろ“娼婦とオカマとヤクの売人と中毒患者がうごめいている”ネクロポリス(死の都)ニューヨークのほうにつながっている。『ブレードランナー』の舞台は21世紀のアメリカの巨大都市。環境汚染と人口過剰のために腐乱した地球から逃れるために人間たちは徐々に他の惑星に移住している。人間たちは惑星での都市建設のためにレプリカントと呼ばれる“人間そっくり”の人造人間を開発した。そのレプリカントの何人かが叛乱を起こし“故郷”の地球に戻ってくる。逃亡者であるレプリカントを殺害するためブレードランナーと呼ばれるハンターが起用される。 物語はこのブレードランナーによるアンドロイドの捜査、追跡、殺害と展開していくのだがこの映画でまず見る者の目を奪うのは、トランブルと、未来派のデザイナー、シド・ミードが作り出した近未来の都市の景観である。 『映画の巨人たち リドリー・スコット』4:リドリー・スコットの生い立ちなど『映画の巨人たち リドリー・スコット』3:「ブレードランナー」の論考『映画の巨人たち リドリー・スコット』2:「テルマ&ルイーズ」の論考『映画の巨人たち リドリー・スコット』1:冒頭の論考
2024.05.29
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図書館で『宇宙へ』という本を、手にしたのです。著者は神戸市生まれの理系女性で、宇宙エレベーターに関するハードSFを書いているのがええでぇ♪【宇宙へ】福田和代著、講談社、2012年刊<「BOOK」データベース>より【目次】職業メンテナンスマン。仕事場は、宇宙!2031年、原田拓海は宇宙へ上がる。天に向かい、まっすぐ伸びていく“宇宙エレベーター”で。誰もが宇宙へ行ける時代の到来。夢のその先には、誰も味わったことのない未知なる“お仕事”が待っていた。 遙かなる宇宙の歌/メンテナンスマンはマタ・ハリの夢を見るか?/アストロノーツに花束を/わが名はテロリスト<読む前の大使寸評>著者は神戸市生まれの理系女性で、宇宙エレベーターに関するハードSFを書いているのがええでぇ♪rakuten宇宙へ最終章「わが名はテロリスト」の核心部あたりを、見てみましょう。p294~298「それじゃ、みんなに大事な話をしよう。少し時間がかかるかもしれないが、心して聞いてくれよ。コーヒーもあるみたいだしな」 そう前置きして、クリスは静かに話を始めた。 宇宙エレベーターの、核心に触れる話を。<8>「もう何年も昔の話だ。タクミやマサトたちの国・・・日本を巨大な地震とツナミが襲ったことは知ってるな」 拓海は真人を見たが、彼は知らん顔でクリスを見つめている。「俺たちはまだ子どもだったけど、もちろん知ってるよ」 忘れられない年だった。その前年は、〈はやぶさ〉の驚異的な帰還を目の当たりにした年だ。感受性の強い年頃の子どもたちには、おそらく一生つきまとう記憶だ。「その時、ツナミの被害をうけたフクシマの原子力発電所が、メルトダウンを起こした。セシウムなどの放射性物質が拡散し、周辺地域は何年にもわたって立ち入りが禁止されたり、住民が避難したりしなけりゃならなかった」 クリスに説明されるまでもない。子ども心にも、その後の騒動はよく記憶に残っている。震災直後の計画停電は、当時大坂にいた拓海たちは話に聞くだけだったが、夏にはほぼ日本中が節電を求められた。関西も例外じゃなかった。放射能が残留しているかもしれないと、風評被害で福島県産の農作物が売られなくなったり、京都の五山送り火で岩手県高田松原の被災松を焚くはずが中止になったり、福島産の花火を上げるのでさえ中止になったり。大人たちの大混乱を、声を上げることもなく子どもたちはじっと見つめていた。「スワベ社長は、そのフクシマの出身なんだ」 クリスの言葉に、突然霧が晴れたように、なにかがすとんと腑に落ちたようだった。「大学生の時に震災被害に遭った。実家は避難地域にあたっていて、その後長い避難所生活を強いられた経験を持つんだよ」 諏訪部敏郎は、その経験から自然エネルギー利用の促進に力を注ぐようになり、大規模太陽光発電所の建設や、ひいては宇宙太陽光発電所の建設をめざして活動し、それが高じて宇宙エレベーターシステムの建造に携わることになったのだとクリスは話した。「人間が作るものに、百パーセント安全なものはない。それが、スワベ社長がフクシマから得て教訓だそうだ。だからこそ、スペース・カーゴには二重、三重のフォールトヨレラント・・・冗長処理を施して、安全に留意してきた。みんなも言われるまでもないと思うが」 いったいこの話はどこに向かおうとしているのだろう。そわそわと落ち着かないイシュマエルや、時々意を決したように顔を上げては、クリスに頷かれるとうつむいてしまうセルゲイたちの姿を見るまでもない。拓海もクリスの話の着地点が読めないでいた。「人間が作るものが、人間に危害を与えてはいけない。それが、スワベ社長の大前提だ」「そいつはまた、ずいぶん理想主義者だな」 ベンジャミンが鼻の上に皺を寄せて毒を吐いたのは、彼が軍人だったからかもしれない。諏訪部社長の掲げる理想が、鼻についたのかもしれない。「なあクリス。歴史上、人類に危害を与えてきたのは、人間が発明したものばかりだぜ。世界中で、毎日何人が車に轢かれてると思う? 何人が人間のこしらえた拳銃で撃たれてる? 大砲は? ミサイルは? 核兵器は? 何人が鉄道に飛び込んで自殺している? 」 おためごかしもいい加減にしてくれ、と言わんばかりにベンジャミンが吐き捨てる。 クリスが鷹揚に頷いた。「おまえの言いたいことはよくわかるよ、ベンジャミン。しかし、しばらく黙って聞いてくれ。・・・スワベ社長は、宇宙エレベーターにもしものことがあっても、地上にいる人間には絶対に危害を加えることがないようにと考えた」 もしものこと・・・つまり、今回のように、ケーブルが破壊され、ステーションが地上に激突するかもしれないといった危機のことだ。「自爆装置でも組み込んだのか?」 存外真面目な声でベンジャミンが尋ねる。「それに近い」 クリスも真面目に応じた。「ただし、ステーションを爆破するわけじゃない。万が一・・・ステーションが地上に落下する可能性が出てきた場合には、ケーブルを自爆する。ステーションのずっと下でな」 制御室が沈黙に満たされたのは、一瞬のことだった。「それはいったい、どういうことだ? ケーブルを切ったりすれば、カウンターウェイトの遠心力でステーションは・・・地球から離れて飛んで行ってしまうじゃないか!」 イシュマエルが真っ赤な顔をして叫ぶ。大富豪のお坊ちゃんだけあって、メンテナンスマンの資格を取った後も、ここで働くようになった後も、基本的な性格はあまり変わらないようだ。クリスが話したのは、まさにそのこと・・・地上に被害を出さないようにするということだったのに、理解が追いついていないらしい。地上を救うために、ステーションを犠牲にする。クリスはそう語ったのだ。・・・それは当然の判断だ。 ステーションに滞在できるのは、現在のところ数名から多くても数十名。ステーションと、地上の犠牲を引き換えにすることはできない。もし静止軌道上からステーションが落下すれば、地上に何が起きるかは・・・たとえば、1908年にロシアで起きたツングーシカ上空の大爆発がいい事例になる。ツングーシカでは、直径百メートル規模の彗星とみられる天体が、地表数キロの位置で爆発したと考えられている。偶然にも近くに人家がなかったため、人的被害はなかったと伝えられているが、半径三十キロメートルにわたる規模で森林が炎上したという。TNTに換算して十から十五メガトンというから、とんでもない大爆発だ。それが、もしオーストラリア大陸の都市近辺で発生したら、どうなるか。 だから、いざとなればステーションを捨てるという会社や諏訪部社長の判断を、理性では支持しないわけにはいかない。 しかし・・・ しかし、感情は別ものだった。 自分たちは見棄てられるのか。万が一の際には、自分たちはステーションとともに捨てられるただの駒なのか。『宇宙へ』1:プロローグの冒頭
2024.05.28
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森見登美彦さんのエッセイ集『太陽と乙女』という本が面白かったので復刻して読んでみようと思い立ったのです。ベーコンエッグが食べたくなったり、書棚を整理したくなったりすること・・・請け合いではないか♪*********************************************************図書館に予約していた『太陽と乙女』という本を、待つこと1週間ほどでゲットしたのです。森見登美彦さんのエッセイ集であるが、何でもありの全90篇とのことで・・・期待できそうである♪【太陽と乙女】森見登美彦著、 新潮社、2017年刊<「BOOK」データベース>よりデビューから14年、全エッセイを網羅した決定版! 登美彦氏はかくもぐるぐるし続けてきた! 影響を受けた本・映画から、京都や奈良のお気に入りスポット、まさかの富士登山体験談、小説の創作裏話まで、大ボリュームの全90篇。台湾の雑誌で連載された「空転小説家」や、門外不出(!?)の秘蔵日記を公開した特別書下ろしも収録。寝る前のお供にも最適な、ファン必携の一冊。<読む前の大使寸評>森見登美彦さんのエッセイ集であるが、何でもありの全90篇とのことで・・・期待できそうである♪<図書館予約:(3/23予約、3/31受取)>rakuten太陽と乙女「第5章 登美彦氏の日常」で「登美彦氏の口福」が語られているので、見てみましょう。ベーコンエッグが食べたくなるでえ♪p288~289<登美彦氏の口福>■ベーコンエッグ 仕上げに秘密の調味料を 私は料理がほとんどできない。一人暮らしの頃に腕を磨かなかったからである。もし妻が料理を作ってくれない人であったなら、現在の我が食生活は惨憺たるものになっていただろう。そんな私でも作ることができる数少ない料理が「ベーコンエッグ」である。 スティーヴンスン『宝島』の冒頭において、ベーコンエッグという言葉が素晴らしい使われ方をしている。乱暴者の海賊が宿の亭主に言う台詞が「俺は安上がりの男だ。ラム酒とベーコンエッグさえあればいい」。皆さん、これでこそ海賊だ。彼の食卓に並ぶベーコンエッグは、さぞかしうまいだろうと思わせる。 料理のレパートリーが少ない人間は、限られたレパートリーに料理センスの一切を注ぎ込むため、その一品にかぎって呆れるほど口うるさいものである。私の父も料理が得意というわけではないが「餅」の焼き方には一家言あり、まるで高名な陶芸家のように慎重な手つきで餅を焼く。私もそれと同じで、ベーコンエッグは自分好みのものでなくては我慢できない。 まずベーコンが必要である。焼かれるなり猛烈に縮んでどこかへ消えちまう「なんちゃってベーコン」ではなく、しっかりとした存在感のある肉でなくてはならない。 次に玉子である。フライパンに落としたら、白身の上にかっきり黄身が盛り上がる凛々しいやつで黄身の味が濃厚でなくては困る。 フライパンでベーコンを焼き、そこに玉子を割って落とす。二つ落として海賊のように豪快な気持ちになるのも悪くない。味付けは塩と胡椒にかぎる。海賊風に荒っぽく塩胡椒を振ったあと、フライパンに少量の水をサッと注ぎ回して蓋をする。このあとどれぐらい蒸すべきか。それが問題だ。白身にはあくまで固くあって欲しいし、黄身にはとろりとした優雅さを保っていて欲しい。 うまく焼き上がったら、美しく形を保ったまま皿にのせる。 ここで仕上げの調味料を使う。『宝島』の妄想である。自分が宿屋「ベンボウ提督亭」に滞在する海賊で、ベーコンエッグとラム酒だけで生きる栄養の偏った荒くれ野郎だと妄想する。そして「俺は安上がりの男だ。ラム酒とベーコンエッグさえあればいい」と呟くのである。それだけで、ベーコンエッグのうまさが三割増すのだ。 以上がベーコンエッグという料理である。シンプルな料理にこそ妄想的味付けが必要である。『太陽と乙女』4:小説を書くときのアイデア『太陽と乙女』3:登美彦氏の口福『太陽と乙女』2:登美彦氏の東京暮らし『太陽と乙女』1:「書棚の整理」など
2024.05.27
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与那覇先生の著した『中国化する日本』という本が中国嫌いの大使のツボを推しているわけで・・・以下のとおり復刻して読んでみます。*********************************************************石原都知事が尖閣買取を公言して、きな臭くなってた日中関係ですが・・・・読み進めていた『中国化する日本』を、ほぼ読破しました♪それにしても、中国が嫌いなはずの与那覇先生は、そういう感情を表に出さず、中国を客観視して述べるところが、さすが歴史学者という感じで・・・・歯がゆいのです。日本は「中国化」しつつある ・・・先生へのインタビュー与那覇先生・清朝は「中国化」社会の究極形p68~71・ポスト「3.11」の歴史観へp293~297*********************************************************************<『中国化する日本』10>目次・憲法改正をまじめに考えるp288~283・近世で終わった歴史:内藤湖南の中国論p31~33*********************************************************************<『中国化する日本』9>目次・日本の未来予想図1p278~280・日本の未来予想図2p281~283*********************************************************************<『中国化する日本』8>目次・郡県化する日本:真説政治改革p247~248・ベーシック・インカムをまじめに考えるp275~278*********************************************************************<『中国化する日本』7 >目次・中国化した世界:1979年革命p233~235・真説バブル経済p239~240*********************************************************************<『中国化する日本』6 >目次・真説「大東亜戦争」p206~209・真説田中角栄p223~225・人権は封建遺制であるp267~271*********************************************************************<『中国化する日本』5 >目次・真説日中戦争1p197~200・真説日中戦争2p203~205*********************************************************************<『中国化する日本』4 >目次・真説明治維新p120~123・真説自由民権p138~140・工業化された封建制p167~169*********************************************************************<『中国化する日本』3 >目次・明朝は中国版江戸時代?p61~63・窓際族武士の悲哀>p103~105*********************************************************************<『中国化する日本』2 >目次・「中国化」とは本当は何かp15~17・真説源平合戦p43~45『中国化する日本』1 *********************************************************************<清朝は「中国化」社会の究極形>p68~71より抜粋 中国史上最後の王朝である清朝は、明朝の後半、東シナ海周辺の闇経済の利権をめぐる勃興マフィア勢力どうしの『仁義なき戦い』を制した、満州族が建国したものです。そもそも最初に先手を取ったのは、分裂抗争していたさまざまな組の大合同を達成した日本マフィアでした――これがいわゆる、豊臣秀吉の朝鮮出兵(1592~98)ですね。 秀吉の狙いは、最低でも朝鮮半島をシベリア近辺まで征服して環日本海貿易圏を独占し、可能なら寧波(上海の貿易港)に自身の根城を移して東南アジア交易をも支配下に・・・というあたりにあったといわれています(村井章介『海から見た戦国日本』)。結局、この野望は李氏朝鮮の抵抗と明の援軍の前に潰えますが、これでいよいよ明朝が疲労困憊したところに、トンビが油揚をさらうごとく天下を獲ったのが、満州マフィアの愛新覚羅一家です。 マフィアマフィアとしつこく書いていますが、これは元来、明朝が社会主義政権のごとく自由経済を抑圧するからマフィアとしてやっていかざるを得なかったという話で、別にマフィアだから野蛮とか遅れているとかいった話ではありません。むしろ、長らく「夷荻」として卑しまれてきた満州族から「天子」を出した清という王朝は、宋朝以降の中国社会の変化を集大成した、ひとつの極点ともいうべき文明でありました。(中略) さらに、満州族は中国本土に侵攻する前に、モンゴル族とも義兄弟の契りというか同盟関係を結ぶのですが、その際に元朝以降、彼らの信仰となっていたチベット仏教(昔風にいうラマ教)を摂取しています。そこで、大陸の覇者となりチベットを傘下に収めた後でも、漢族に対して「儒教道徳の実践者」として君臨したのと同様、モンゴルやチベットに対しては「仏教の庇護者」として振る舞うという使い分けをしたので、今日とは対照的に、清朝政府とチベット民族との関係はおおむね良好だったと見られています。(中略) これはまさしく、世界で最初に身分や職業を自由化した、中華文明の光の側面でしょう―― 一方、それと表裏一体の影の側面としては、国家が再配分機能を放棄していますから、(現在の中国と同様)市場競争の勝者と敗者とのあいだに、絶大な格差が作られることになりました。 この場合、できる限り親族ネットワークのメンバーを増やしてサヴァイブしようとするのが、やはり宋朝以降の宗族主義ですから、清代の中国は空前の人口増加を経験し、そして政府は万事レッセ・フェールで、それをコントロールする手段を持っていません。 すなわち、近年まで中国を悩ませてきた過剰人口時代の始まりであり、それがやがて、近代にはかの国の衰退を導くことになります。朝鮮半島をめぐる日本マフィアと満州マフィアという表現が斬新ですね♪また、清代の人口増加を反省し、共産党による一人っ子政策が採られたようですが・・・与那覇先生も中国の人口問題に着目しているとおり、中国が自壊するとしたら人口問題と格差からでしょうね。ということで、老いゆく中国 を読み返してみましょう♪<ポスト「3.11」の歴史観へ>p293~297より 本書の「はじめに」に、「『2010年代』を迎える前後から1~2年間をかけて、『日本社会の終わり』が徐々に明らかになりつつあったのであり、『3.11』はそのことをあからさまにする、最後の一撃となったに過ぎない」と記したのは、そのことです。むしろあのような未曾有の天災の前後においても、私たちの社会が抱える問題の構図は、表層的には変化していても、その根幹においては変っていないのだと思います。 なるほど、日本人が在日米軍に対して感じる親近感は、「辺野古ヘリポート反対」と「トモダチ作戦」のあいだで真逆になりました。しかし、沖縄という島嶼に基地が偏在し、福島の沿岸部に原発が立地してきた理由は、同一のまま何も変っていない。「中国に屈するな!」という「右寄り」のスローガンが、「原発即時全廃!」という「左巻き」な旗印に変ろうとも、合理的戦略よりも情動的倫理感情に突き動かされた群衆行動が放つ熱気と危うさは、やはり一貫しています。 この意味で、「震災前」から一貫して「中国化」という観点で、日本がなぜ行き詰まったのかを考えようとしてきた本書の試みは「震災後」も決して無意味にはなっていないと思っています。否、むしろ「ポスト3.11」においてこそ、「長い江戸時代の終焉」という視点は、ますます重要になってくるものと判断しています。 この国の人々が生活の基盤を置いてきた地域という共同体が丸ごと飲み込まれてしまうような大津波の経験、さらあに政府や企業の公的機構では行き届かないケアの不足の中で、ある意味で日本人は初めて、中国のような社会で生きるとはどのようなことかを、理解しつつあるのかもしれません。そもそも、生活地域が丸々消滅してしまうような洪水、旱魃、疫病等は、地形が比較的平板かつ大河の多い中国では古代から頻繁に起きたことで、だからこそ中国人は危機の時には「一箇所に家族で肩を寄せ合う」のではなく、「宗族のツテを辿ってバラバラに他の土地へ逃げる」選択をしてきました。そして公的政府がほとんど生活の面倒を見てくれず、永続性のある企業共同体も乏しかったからこそ、いざという時は既存の制度や組織ではなく、個人でポンと寄付をしてくれるような「有徳者」のネットワークに望みを託してきた。 そのような状況にまさに今、日本社会は入っていきつつあります。もともと行き詰っていた「長い江戸時代」の崩壊が、不幸にも大地震という、悲惨な災害によって加速されたことで。 たとえば津波に生産手段のすべてをさらわれてしまった沿岸部はもとより、原発事故による放射能汚染(および風評被害)が拡大する地域において、もはや江戸時代の職分性と同様の「公共事業や規制政策による雇用維持を通じて生活保障を代替する」やり方が、通用しないのは自明でしょう。ましてこれから「脱原発」を真剣に考えるのであれば、原発産業の撤退による地元経済の停滞、さらんは電力コストの増大による日本全体の産業空洞化がもたらす雇用の減少も視野に入れつつ、いまこそ「雇用に依存しない福祉」を一から作っていかねばならない。 しかし、これまで地域や職場ごとに結ばれてきた絆を失ってもなお、私たちは生きていけるだろうか。あるいは中間集団なき流民と化した国民と、生活の手綱を一手に握る国家とが対峙した時、そこには日本史上かってない専制権力が生まれはしないだろうか。 たとえばこういった問題を探るヒントを、かような状況の大先輩とも言える中国の歴史にも求めながら、われわれは模索を続けていかざるをえない。もはやそこに安易な希望はなく、ただただ陳腐で気の遠くなるような反復があるだけだとしても。与那覇先生も、この章では庶民の憤り、倫理観に共感しているが・・・・・学者としての冷厳な洞察はいささかも揺るがないようですね。この本を読んだあとは、大使の歴史認識のタイムスパンが、少なくとも室町時代くらいまで広がったことは確かです。だけど、気の遠くなるような反復・・・・与那覇先生の希望の芽を摘むような洞察はとりあえず聞き流しましょう。(さもないと精神衛生上、よくないのです)中国や日本本土、そして米軍まで、付かず離れず付き合ってゆくしかない地政学的地域で暮らした与那覇先生だけに、地に足がついた骨がらみの歴史認識なんでしょうね。(1日文字数制限により一部削除しましたが、全文は『中国化する日本』11に収めています)
2024.05.26
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<『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』(復刻)>パレスチナ自治区ガザの危機的状況はジェノサイドの様相を帯びてきたが・・・歴史を遡ってみると英仏の植民地政策が垣間見えるし、アメリカのイスラエル擁護の真相などが気になるのです。・・・ということで、『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』という本を復刻して読んでみます。*********************************************************図書館で『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』という本を、手にしたのです。ぱらぱらとめくってみると、おお「アラビアのロレンス」にも触れているではないか・・・これが借りる決め手になったのです。【サイクス=ピコ協定 百年の呪縛】池内恵著、新潮社、2016年刊<「BOOK」データベース>より百年前の「秘密協定」は、本当に諸悪の根源なのか?いまや中東の地は、ヨーロッパへ世界へと難民、テロを拡散する「蓋のないパンドラの箱」と化している。1916年、英・仏の協定によって地図の上に無理やり引かれた国境線こそが、その混乱を運命づけたとする説が今日では専らだ。しかし、中東の歴史と現実、複雑な国家間の関係を深く知らなければ、決して正解には至れない。危機の本質を捉える緊急出版!<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくってみると、おお「アラビアのロレンス」にも触れているではないか・・・これがかりる決め手になったのです。rakutenサイクス=ピコ協定 百年の呪縛協定区域地図の上に無理やり引かれた国境線こそが諸悪の根源だともっぱら言われるが、果して?p19~21<第1章 サイクス=ピコ協定とは何だったのか>■分かった気にさせるマジックワード「結局、サイクス=ピコ協定が諸悪の根源だ」 近頃、こういったフレーズをよく聞くようになった。中東の混迷の原因は何なのか。一帯誰が悪いのか。誰もが自然に思い浮かべる素朴な義憤に、単純明快な答えを見つけたような気にさせてくれる万能のマジックワードが「サイクス=ピコ協定」である。 要するに、中東の混乱の原因は、イギリスとフランスが、サイクス=ピコ協定によってアラブ世界に不自然な国境線を引いたからである。だからシリアやイラクなど、民族や宗派が違う人々が同じ国に住まされて、まとまりがなく、争いが絶えないのである…云々。にわか仕込みのテレビ・コメンテーターなどが急にこの言葉を用いるようになった。 確かに、こう言ってしまいたくなる気持ちは分かる。「アラブの春」以来、中東情勢の混迷は一向に収束する気配がない。「イスラーム国」が行なって誇示する処刑やテロなどの蛮行の数々は、一般的な感覚からは到底理解が不可能だろう。何か一つのキーワードで「要するに…」と大雑把にまとめてしまってスッキリしたい、という気持ちは分からないでもない。 そして、実際に「サイクス=ピコ協定」は重要な文書である。現在の中東の成り立ちの、ある根本的な部分を基礎づけている。確かにサイクス=ピコ協定は「悪い」。帝国主義・植民地主義の時代にイギリスやフランスやロシアなど「西欧列強」が、そして冷戦時代はアメリカとソビエト連邦など超大国が、中東に介入し、影響力を競ったことで、どれだけ大きな混乱が、戦争の惨禍が、中東を襲ってきたことか。 しかし同時に、「サイクス=ピコ協定が悪い」と言っているだけでは、現実を理解するという意味でも、将来を見通すという意味でも、そして解決策を見出すという意味でも、先に進めない。 これは東アジアに置き換えて考えてみれば少し分かりやすくなるかもしれない。例えば、北朝鮮の核兵器・ミサイル開発の問題について、「そもそも日本が朝鮮半島で帝国主義・植民地支配をしたから悪い」とだけ言い続ければどうなるだろうか。日本が植民地支配をした挙句、太平洋戦争で敗れて朝鮮半島から撤退したから、朝鮮半島は米ソ冷戦の最前線となって、南北に国家は分断された。 いつ戦争が再開されてもおかしくない緊張状態が続き、北朝鮮は独裁化し、核兵器やミサイルを開発して威嚇する。悪いのは日本の植民地支配だ…と主張したら、どうだろうか。確かに、日本が朝鮮半島を併合して支配していなければ、朝鮮半島は今のような状態にはなっていないかもしれない。おそらく、現在の朝鮮半島の政治情勢に、日本のかつての植民地支配は、多くの日本人が現在意識しているよりももっと大きく影響を及ぼしているだろう。 しかし植民地主義の時代から現代までの間には長い時間が経っており、その間の、より大きな影響を与えた多くの出来事が生じている。もし日本による統治の時代がなければ、もちろん朝鮮半島の歴史は大きく変わっていただろうが、日本の統治下に入る以外の可能性がどれだけあったかとというところが定かでなく、しかも別の可能性がよりましなものであったとも言えない。ロシアや中国に併合されて、現在独立国でいることができなかったかもしれない。それを現在の南北朝鮮の国民の感覚からは、到底受け入れられないだろう。 さらに言えば、現在の朝鮮半島の国家や国際関係が抱える問題に日本が責任がある、ということであれば、「日本が責任を取ってもう一度朝鮮半島に介入して今度はきちんと問題を解決するべきだ」ということにもなりかねない。もちろん、そんなことを現在の日本で本気で主張して実行しようとする人は皆無に近いだろうし、朝鮮半島の民族も決して求めないことだろう。 同じように、「結局、サイクス=ピコ協定が悪いのだ」という議論も、中東の歴史を方向づけた非常に重要な歴史の事象に触れているのだが、それだけでは現在の中東を読み解き、将来を展望するのに十分ではない。『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』1:アラビアのロレンス『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』2:20世紀は難民の世紀『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』3:サイクス=ピコ協定とは何だったのか
2024.05.26
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東インド会社、アヘン戦争、アジアの海賊といえば、私のツボでもあるわけで・・・以下のとおり復刻して読んでみようと思い立ったのです。*********************************************************図書館で『東インド会社とアジアの海賊』という本を、手にしたのです。ぱらぱらとめくると、アジアの海賊、国姓爺、アヘン戦争とか興味深い史実が見られます。要するに、清朝末期の列強の大陸侵食が興味深いのでおます。【東インド会社とアジアの海賊】東洋文庫編、勉誠出版、2015年刊<「BOOK」データベース>より誰が海賊だったのか?海賊の多様性を歴史から読み解く。17世紀初頭にヨーロッパで誕生した東インド会社とその海上覇権の確立にあたって大きな障壁となった現地の海賊たち。両者は善と悪という単純な図式では表せない関係にあった。東インド会社もまた海賊であったー。東インド会社と海賊の攻防と、活動の実態を明らかにする。<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくると、アジアの海賊、国姓爺、アヘン戦争とか興味深い史実が見られます。要するに、清朝末期の列強の大陸侵食が興味深いのでおます。rakuten東インド会社とアジアの海賊英メネシス号の中国兵船砲撃アヘン戦争と清朝水師のあたりを、見てみましょう。p280~282<清朝に雇われたイギリス海軍>■清朝の海上支配の動揺とアヘン戦争 清朝の海上支配の崩壊は貿易と治安の両方面から進んだ。周知のように、18世紀末以降、世界的に貿易は拡大し、中国においても、イギリス向け茶貿易の発展により、広州貿易は急速に拡大した。ところが、この広州貿易の発展に仲介業者が対応できずに倒産するなかで、仲介業者以外の商人たちが貿易に参入し、貿易管理制度は動揺を始めた。 一方で、中国の対欧米貿易の中心となっていたイギリスにおいても、貿易の拡大の中でイギリス東インド会社以外の商人、アジア間貿易をになう地方貿易商人が成長し、彼らの批判もあって東インド会社の貿易独占権は失われていった。そして1834年には中国貿易の独占権を失うことになる。中国における東インド会社の時代は終わったのである。こうして中英双方で既存の貿易制度は変更を迫られていた。 治安の問題についてみると、18世紀末~19世紀初頭にかけて、いわゆる「嘉慶海寇」と呼ばれる海賊活動の活性化が、中国東南沿海においてみられた。清朝水師にこれを十分に鎮圧できる能力はなく、海賊を投降させて水師として雇用する招撫や、ポルトガルの軍事力利用など、様々な手法でどうにかこれを沈静化させた。 嘉慶海寇の沈静化の背景には、アヘン貿易の発達があるだろう。東インド会社がインドにおいて専売したアヘンを広州周辺に大量に持ち込んだのは地方貿易商人であるが、広州周辺でこれを入手していったのは沿海の広東人・福建人である。かれらの多くが漁業・海運関係者であり、もともと海賊であった者も多い。実際、アヘン運搬船は清朝水師が手を出せないほど重武装している場合もあった。 沿海の人々にとって、小型船を襲撃する海賊稼業よりも、アヘン貿易はより大きな利益があったであろう。このアヘン貿易の拡大によって銀が流出したことは、清朝財政に大きな影響を与えたため、清朝は真剣にこれを取り締まろうとした。しかし、貿易管理を仲介業者に依存していたために、中国人側の行為を取り締まることができず、結局外国人商人のアアヘンを没収い、それがアヘン戦争の契機となる。 1840年に始まったアヘン戦争であるが、戦争そのものは、軍事技術の格差だけでなく、清朝側の戦術の拙劣さもあり、清朝側の一方的な敗戦に終った。なかでも、東インド会社海軍の汽走砲艦メネシス号の活動はめざましいものがあり、先述の挿絵もメネシス号の活躍を示している。ただし、中国に派遣されたイギリス艦隊の大半は帆船であり、また老旧艦であった。そもそもイギリス海軍の主力は本国防衛と地中海方面への対応のためヨーロッパ海域に展開していたのである。もっとも、清朝相手ならばこの程度の海軍力で十分であるとイギリスは判断したのであろう。 実際、対外戦争を経験したことのない清朝水師は大打撃を受けた。イギリス艦隊は沿海の広範な地域に展開したが、戦場となったのは広州周辺から、福建(〇門)、浙江(舟山、寧波付近)、江蘇(乍浦、上海、鎮江)で、いずれも海上・水上交通の要衝であった。このうち広州周辺の戦闘で清朝側は戦闘ジャンクを少なくとも数十隻を失い、〇門では40余隻の戦闘ジャンクが破壊された。 これによって、広東・福建の水師は海上警備能力を失い、清朝の海上支配はここに完全に崩壊した。そうした中で、海賊活動も活性化し、清朝に代わってイギリス海軍がその掃討にあたるという事態も生じていた。清朝が無償でイギリス海軍にアウト・ソーシングしていたような状況が皮肉です。なお、イギリス向け茶貿易については、『紅茶スパイ』7という本が面白いのでお奨めです。『東インド会社とアジアの海賊』1:東インド会社の特徴や商品『東インド会社とアジアの海賊』2:徽州海商と後期倭寇『東インド会社とアジアの海賊』3:ポルトガル人や後期倭寇の海賊行為『東インド会社とアジアの海賊』4:オランダ東インド会社の登場『東インド会社とアジアの海賊』5:オランダ東インド会社のダークサイド『東インド会社とアジアの海賊』6:清朝水師と海賊の関係『東インド会社とアジアの海賊』7:アヘン戦争と清朝水師
2024.05.25
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パリのアリアンスフランセーズに通って学習したフランス語であるが・・・帰国後の日本で活用したこともなく、単なるお遊びだったかも知れないなあ(涙)・・・ということで『フランス語っぽい日々』という本を復刻して読んでみます。*********************************************************図書館で『フランス語っぽい日々』という本を、手にしたのです。どこを開いても・・・夫の描くマンガの頁、妻の述べる説明の頁がセットになっていてわかり易くて興味深いのである♪【フランス語っぽい日々】じゃんぽ~る西×カリン西村著、白水社、2020年刊<「BOOK」データベース>より外国語を愛する、外国語に苦しむすべての人に。日仏夫婦が漫画とコラムでつづる、異文化・外国語学習・子育ての悲喜こもごも!<読む前の大使寸評>どこを開いても・・・夫の描くマンガの頁、妻の述べる説明の頁がセットになっていてわかり易くて興味深いのである♪rakutenフランス語っぽい日々海外県のフランス語が語られているので、見てみましょう。p40~41<17 海外県のフランス語 Le francais d‛outre—mer> 歌手のダニエル・バラヴォワーヌは、フランス語はよく響く言語だと言いました。その通り。フランス語は遠くまで響く言語、カナダや太平洋のど真ん中、ニューカレドニア、マルキーズ諸島やタヒチにまで響き渡る言語なのですから。海外県のフランス語に接する機会があると、愕然とすることがしばしばあります。 ラジオ・カナダで時評を担当するわたしが接する人たちは、独自の美しい表現も編み出す見事なフランス語を操るのですが、彼らのなまりやイントネーションに思わず不意を打たれ、つまり、笑いそうになってしまうことがあるのです。 ケベックのフランス語話者たちは、かなり独特な話し方をします。具体的に説明するのは難しいですが、主な特徴のひとつに、巻き舌のRがあります。半分Rのような半分Lのような発音で、日本人のそれと少し似ています。 夫とともに招待されたタヒチのサロン・ド・リーブル(ブックフェア)に訪れたときのこと。タヒチのフランス語話者たちもまた、この巻き舌のR()を使うことを知り、おどろいたのなんの。さらに彼らにはフランス語と現地の言葉を頻繁にしかも絶妙に混ぜ合わせる、一風変わった癖があります。結果、本土のフランス人であるわたしには、彼らの言うことの半分しか理解ができません。 旅先であれ、フランス国内であれ、その土地によって多少なりともなまりはあるもの。よく言われるのはマルセイユ、トゥールーズ、そしてエクサンプロヴァンスのなまり。パリジャンだって「粘ついた」フランス語を話すと言われています。 わたしはといえば、ブルゴーニュ出身、厳密にはヨンヌ県の生まれです。さて、みなさんごぞんじでしょうか。お隣のソーヌ・エ・ロワーヌ県の人たちにもある変わった特徴があるんです。それは、なんと巻き舌のRです。『アリアンスフランセーズパリ校『フランス語っぽい日々』3:海外県のフランス語『フランス語っぽい日々』2:新旧のシャンソン『フランス語っぽい日々』1:言葉とは思考の方法
2024.05.25
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<朝日新聞デジタルでスクラップブック>朝日新聞デジタルでスクラップしているのだが・・・その「スクラップ一覧」と最新記事を紹介します。この一覧は、いわば我が関心事一覧ともいえるのです。*********************************************************■「警告」でなく「懲罰」中国側の威嚇拍車 総統就任演説から2日半2024年5月23日 (2024年5月24日登録) 中国軍が、台湾周辺を囲むような広範囲での軍事演習に乗り出した。「台独(台湾独立)派」と警戒してきた頼清徳(ライチントー)新総統の就任演説への不満を、今後4年間の任期も見すえて、むき出しの軍事的な威嚇で示した形だ。これに対し、台湾は「横暴」と反発、日米は中台関係の緊迫度が一段と高まることに警戒を強めている。 「これは『台独』の分裂勢力が独立をたくらむ行為への懲罰だ」 中国軍で台湾方面を担当する東部戦区は2日間の軍事演習をこう表現した。演習に参加するとみられる、ステルス戦闘機「J(殲)20」やミサイル「DF(東風)」、上陸用の「071型揚陸艦」などの兵器も「ミサイルの雨で独立派を一掃する」といった勇ましい標語とともに紹介された。 台湾本島をぐるりと取り囲むような軍事演習は2022年8月にペロシ米下院議長(当時)が中国側の猛反発を押し切って訪台した際や、23年4月に蔡英文(ツァイインウェン)総統(当時)が訪米した時にも実施した。将来の台湾の海上封鎖を想定したとみられる配置だ。 さらに、前2回は含まれていなかった、台湾が管轄する中国沿岸の金門島や馬祖列島といった島嶼(とうしょ)部も演習区域に加えた。台湾当局が島の周りに設定している「禁止・制限水域」を実質的に無効化していく狙いの一環とも受け取れる。 これまでは「警告」としていた演習の理由についても、「懲罰」との表現を用いており、威嚇の度合いをエスカレートさせる意思が明らかだ。 一方で、今回は頼氏の就任演説から3日近くを経て公表した。習近平(シーチンピン)指導部として就任演説を分析し、対応を検討していたとみられる。ペロシ氏の訪台時は同氏の乗った飛行機が台北に着陸した直後に演習実施を発表していた。 中国指導部は20日以降、頼氏への批判を日に日に強めてきていた。 中国政府で台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室は21日にも、就任式当日に続いて報道官談話を出した。頼氏が語った「主権の独立」や「互いに隷属しない」といった表現について、「分裂のでたらめの理屈」と批判した。中国が決して容認できない「(「一つの中国」原則に反する)両国論」と位置づけている。 習指導部は台湾統一を悲願としてかかげる。「平和統一が最優先」とする一方、「武力統一の放棄も約束はしない」とのメッセージを出す。特に、独立に向かう動きに対しては武力を示して強く牽制してきた。 中国指導部は演説内容によって対応を変えることを想定していたとみられる。今回の軍事演習はその中でも強い手段を選んだことが表れている。 今回の演習は「連合利剣―2024A」と名付けられた。元在中国防衛駐在官で、笹川平和財団の小原凡司・上席フェローは「2024のあとにAとあり、過去の演習の例からもプランB、Cもあることを示している。これで終わりとは思うな、との意味がある」と指摘する。(斎藤徳彦=北京、編集委員・奥寺淳)■月探査機SLIMが復活 太陽光で発電し通信確立 岩石調査も成功2024年1月29日 (2024年1月29日登録)■片目の「まねちゃん」は幸せの招き猫 妻は夢かなえて小説家に、夫は2023年11月12日 (2023年11月12日登録)■飛行士は男、看護師は女…ChatGPT、職業にジェンダーバイアス2023年11月9日 (2023年11月10日登録)「ChatGPT」(チャットGPT)はジェンダーバイアスを持っているってか・・・・さもありなんやでぇ。■荒波の捕鯨史証人、日新丸が引退 1.7万頭解体 反対派が妨害 新聞切り抜き2023年11月5日 (2023年11月6日登録)捕鯨母船「日新丸」といえば、反捕鯨団体の妨害活動などによく耐えてきた船ではないか・・・ご苦労さんでした。■囲碁の仲邑菫さん会見 韓国移籍に「高レベルでの勉強が私には必要」2023年10月30日 (2023年10月31日登録)ウン しっかりしてるがな。 結果が出れば、第2の大谷翔平となれるかも♪■「小型で低価格」日本向けEV 中国大手BYD、立体駐車場に合わせ低く 新聞切り抜き2023年9月21日 (2023年9月21日登録)補助金を使えば200万円代で買えるのか・・・かなり手ごわい感じやんけ。■「日本は嫌いだけど」 中国から福島に迷惑電話かけた18歳の本音2023年9月21日 (2023年9月21日登録)国歌が抗日を歌う国であり、負の歴史を反芻する国なので、この行動に出たのも分かる気がするが・・・■H2A打ち上げ「ほっ」 イプシロン・H3、失敗続いた国産ロケット 新聞切り抜き2023年9月8日 (2023年9月21日登録)H3は失敗したが、H2A打ち上げは成功(41機連続で)したので・・・良しとするか。■「日本語ってタマネギみたい」北欧出身の漫画家オーサさんが語る魅力2022年4月10日 (2023年9月19日登録)日本語学習に関しては、トップクラスのスキルではないか♪■囲碁の仲邑菫女流棋聖、韓国棋院に移籍の意向 すでに棋士登録を申請2023年9月11日 (2023年9月11日登録)■29歳で獄死した反戦川柳作家・鶴彬 故郷で碑前祭2022年9月15日 (2023年7月6日登録)反戦作家といえば・・・この人を外すわけにはいけないのだろう。■「国恥地図」に秘められた帝国の記憶 世界秩序揺さぶる中国の歴史観2022年4月21日 (2023年7月2日登録)覇権中国スタンスのもとには、この国恥地図があったのか。■突然の解散先送り、首相判断なぜ 公明と亀裂、世論…不安材料重なり2023年6月15日 (2023年6月16日登録)「これからは大きな見せ場もなく、支持率はダラダラと下り坂では」との声もあるようです。■英語信仰は「壮大なムダ」、言語学者の危惧 「日本語こそ国際語」2023年6月12日 (2023年6月14日登録)ウン ええこと言ってるがな♪■書店ゼロ自治体、全国で26% ネットでの無料配送規制の議論も2023年3月29日 (2023年6月10日登録)書店の減少といえば、本の物流的側面や、図書館との住み分けが気になるのです。■強まるエルドアン氏への働きかけ スウェーデンのNATO加盟めぐり2023年6月5日 (2023年6月5日登録)プーチンからもウクライナからも支持されるエルドアン氏は、バランス感の長けた政治家であるが・・・要注意なんでしょうね■各地に線状降水帯、広範囲で大雨 東海道新幹線、全線で運転見合わせ2023年6月3日 (2023年6月2日登録)西日本一帯に避難警報が出ている模様です。■事故から12年後に里帰りした元町職員 未練断ち切った「けれど…」2023年5月31日 (2023年5月31日登録)被災の原因は地震、津波にあるとしても、政府や東電の無慈悲という人災でもあったようですね。■ウクライナはなぜF16を求めたのか? カギを握る総合力と戦い方2023年5月30日 (2023年5月31日登録)「ロシア領内を攻撃したい」という誘惑にかられる可能性もあるようですね。(後略)*********************************************************朝日新聞デジタル>スクラップブックhttps://digital.asahi.com/member_scrapbook/
2024.05.24
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京都市美術館では「村上隆もののけ京都」という企画展が催されているが、これは興味深いのです。・・・ということで、2012年11月29日「村上隆の原点」を復刻して読み直してみましょう。まあ村上隆の予習とでも申しましょうか♪*********************************************************今では超ビジネス書を発刊するなど、ブイブイ言わせている村上隆の原点までさかのぼってみたい・・・・ということで、「リトルボーイ」という本を借りたのです。リトルボーイといえば、広島に落とした原爆の愛称であるが・・・今のアメリカ市民は知っていたか、知らなかったか?大使幼少の頃、原子力と言えば、鉄腕アトムとかゴジラを連想するように、割と肯定的なイメージもあるが・・・・これがCIAの刷り込みと言えば、当らずとも遠からずという裏事情もあったようです。(あかん、書評の観点がずれてゆくがな)ということで、ヤノベケンジのゴジラです。ポップやなぁ♪本書は、ニューヨーク市内各所で開催されたリトルボーイ展に際して出版されたという曰くがあるが、村上隆のアメリカに対する強烈なコンプレックスが見られるわけで・・・反米の大使の胸に響くわけです(笑)ともあれ、スーパーフラットとは何だ?という問いに答える本ということでしょうか♪【リトルボーイ】村上 隆(編集) 、ジャパン・ソサエティー イェール大学出版、2005年刊<「MARC」データベース>より2005年にニューヨークのジャパン・ソサエティー・ギャラリーで行われたリトルボーイ展のカタログ。アニメ、だめ、かわいい、マニア、おたく、少女、ゆるキャラ等をキーワードに、村上隆、岡田斗司夫、椹木野衣らが執筆。 <大使寸評>本書は、ニューヨーク市内各所で開催されたリトルボーイ展に際して出版されたという曰くがあるが、村上隆のアメリカに対する強烈なコンプレックスが見られるわけで・・・反米の大使の胸に響くわけです(笑) ともあれ、スーパーフラットとは何だ?という問いに答える本ということでしょうか♪Amazonリトルボーイこの本から一部紹介します。<Superflatプロジェクト発動:村上隆>p153~155「Superflat」 この呼び名はLAのギャラリスト二人が、私の絵画作品のセールストークに使っていた表現が起源だ。「superflatでsuperクオリティー、そしてsuperにクリーンなこのペインティングはいかがでしょうか?」という具合の売り文句。日本の車や電化製品を讃える表現と変わらぬ所に本質的な日本文化の特性を知った気がした。そしてその表面を乗り越えなければ「文化」そのものになり得ない、故にその売り文句を超えていくという批評的な観点から、superflatを冠としたプロジェクトをスタートさせた。「SuperFlat宣言」日本は世界の未来かもしれない。そして日本のいまはsuper flat。 社会も風俗も芸術も文化も、すべて超2次元的、この感覚は日本の歴史の水面下を澱みなく流れ続け、とくに美術にわかりやすく顕在化してきた。現在では、強力なインターナショナル言語となった日本のスーパーエンタテイメント、ゲームとアニメにとくに濃密に存在している。そのフィーリングを説明すると、例えば、コンピューターのデスクトップ上でグラフィックを制作する際の、いくつもに分かれたレイヤーを一つの絵に結合する瞬間がある。けっして分かりやすい例えではないが、そのフィーリングに、私は肉体的感覚に近いリアリティーを感じてしまうのだ。この本で日本のハイもロウもすべてフラットに並んでいるのは、そのフィーリングを伝えるためでもある。POP、ERO POP、OTAKU、HIS-ISM、そして、そんな日本文化の表層下に流れる「レイヤーの結合」の瞬間を体験してほしい。私達のリアリティーはどこにあるのか。 この本は「super flat」を、自分達の、つまり日本文化を潜在的に構築してきた、そしして、今もしつづけている大きな感性であり、世界観として捉え直し、過去から現在、そして未来へとつながるオリジナルなコンセプトとして、展示していくためのものである。近代以降、日本が西洋化されていく過程で、この「super flat」的感性はどのように姿を変え、いまに到っているのか。そこをきっちり見据えることから、いまの我々のスタンスも、見えてくるに違いない。 その意味で、ここには現在進行形の日本のリアルが詰まっている。私達の生きてゆくコンセプト探しの答えが見つかるかもしれない。西洋化されてしまった日本人のオリジナルコンセプト、「super flat」。<東京ポップの逆襲:松井みどり>p226~227 スーパーフラット理論の出発点は、『広告批評』誌1999年4月号のために村上が企画した「東京ポップ」特集にあり、ここで日本のポストモダンの文化状況に対する村上のスタンスが詳らかにされた。同誌に発表された村上のテキスト「拝啓 君は生きている―TOKYO POP宣言」は、世紀末東京の大衆文化生産にひそむカオスと幼稚性から日本独自の芸術表現を形成しようと目論む村上の見事なまでに一貫した戦略を表している。 まず、村上は、日本文化がアメリカとの植民地関係に縛られているとの歴史観に基き、「戦後の日本はアメリカによって生かされ培養されてきた。無意味こそが人間の生きる姿。だから、何も考えずに生きろ、と教育された」と言う。そして、日本で精神的内容を持たない物質主義が膨張した原因を文化の対米依存性に見いだし、この環境こそが、個人や組織の成熟を妨げていると考える。と同時に、近年アメリカが徐々に日本を縛る手綱を緩めている状況下、日本の文化生産は行き先不明の状況に陥っているのだが、にもかかわらず方向性を失った文化的生産に酔いしれる日本社会は真のヒエラルキーを欠き、超富裕階級の台頭は妨げられ、専門水準の形成が遅れ、幼稚な社会構造から脱却できないでいる。これが村上の現状認識だ。 日本文化の「マイナー」な―つまり、本流ではなく、瑣末で、幼稚で、貧相な―特質を認識する村上は、明らかに欠点と思われる要素に、新しい創造の契機を探り当てたのである。 一見ネガティブに見えるこの3点、1)子供的価値観、2)豊かさのレベルなき社会、3)アマチュアリズム。しかしこの3点がアドバンス〔有利〕となって、いま新しい創造の世界を作り始めている。 こうした「マイナー」の条件を逆説的に運動の中心に据えて企画された「ポップ」は、あの輝かしいアメリカのポップ・アートとは似つかない。そのかわりに、村上流ポップは現代東京の異種混合のリアリティーに根ざしており、東京の偽物性をユニークな特質として、また文化占領の歴史的産物として甘受するのである。「TOKYO POP宣言」執筆に加えて、村上は「東京で活躍しながら、西洋的な価値観の軸に乗せてインターナショナリズムを持ち得る、と思わせた10人のアーティスト」を東京ポップの作家として紹介し、軋轢の強い文化的影響を乗り越えて創出された美術表現のハイブリッド性をむしろ誇示するのだ。第五福竜丸とヤノベケンジより椹木野衣・日本のサブカルチャーは原点であるゴジラや、宇宙戦艦ヤマトの放射能除去装置など、核と放射能と被爆の歴史である。鉄腕アトムや仮面ライダー、ドラえもんなどは原子力の平和利用。・放射能に対してはサブカルチャーの蓄積から免疫があった。地震の問題は実は大きな問題で、今一分後に大地震が起こるかもしれない。世界に原発が増え続け、世界各地で地震の多発期に入ったと思われる今、我々は震災の事後にいて、それに対応するばかりではなくて、これから起こる更なる災害に対する想像力を持たなければならない。・(ヤノベのサン・チャイルドに対して)震災後を見すえて作品を作るのはまだ早いのではないか。今サバイバルの方がリバイバルより必要な状況に帰っているのではないか。二人の対話は、阪神・淡路大震災、オウム真理教、東海村臨界事故、さらには戦後のアメリカから日本への原発の輸入の構造にも及び、現在まだわれわれが渦中にある東日本大震災以後にいたる状況を、ヤノベの表現活動の軌跡と重ねて考えさせられる内容だった。「村上隆の原点」
2024.05.24
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図書館で『中国の論理』という新書を、手にしたのです。理屈のこね方・論理のパターンには日中間に違いがあると注目する著者であるが・・・深みのある洞察ではないか♪*********************************************************【中国の論理】岡本隆司著、中央公論新社、2016年刊<「BOOK」データベース>より同じ「漢字・儒教文化圏」に属すイメージが強いためか、私たちは中国や中国人を理解していると考えがちだ。だが「反日」なのに日本で「爆買い」、「一つの中国」「社会主義市場経済」など、中国では矛書がそのまま現実となる。それはなぜかー。本書は、歴史をひもときつつ、目の前の現象を追うだけでは見えない中国人の思考回路をさぐり、切っても切れない隣人とつきあうためのヒントを示す。<読む前の大使寸評>理屈のこね方・論理のパターンには日中間に違いがあると注目する著者であるが・・・深みのある洞察ではないか♪rakuten中国の論理「むすび-現代の日中関係」で日中の領土問題あたりを、見てみましょう。P207~211<歴史認識>「人民解放」から「改革開放」へ。中華人民共和国の歩みは、艱難をきわめた。犠牲になった人もおびただしい。「革命」に彩られ、内戦と戦争に明け暮れた建国以前と合わせてみれば、20世紀の中国は、いよいよ激動艱苦の道を歩んでいた、といえるだろう。 そんな百年、中国の思考・発言・行動は、目まぐるしい転変をくりかえした。けれどもその経過を貫いていたのは、中国の言動を根底で枠づける社会構造、論理枠組の本質が、いかに変わらなかったか、という事実ではなかろうか。 イデオロギー・体制は君主独裁制から立件共和制、三民主義からマルクス主義、計画経済から市場経済へ移り変わっていった。しかしその前提に必ず存在していたのは、「土」「庶」が隔絶し、上下が乖離した社会構成である。 これは歴史のなかでできあがった構造原理なのであって、中国は従うにせよ抗うにせよ、その原理に応じざるをえない。そんな論理が現代中国の言動パターンを形づくっていて、たとえば、わが日本と関りの深い世界観、時間と空間の観念も、同じことがいえよう。 時間の観念とは、いわゆる「歴史認識」のことであって、こう表現すればわかりやすい。その根はやはり20世紀のはじめ、ちょうど梁啓超が近代的な歴史学をつくった時にある。「中国」という国家と社会の歴史を書け、と呼びかけた彼は、断代史・紀伝体のスタイルをとる旧来の史書を非難して、「理想」がない、といいつのった。この発言には共感を覚えながら、同時に腑に落ちないところも残る。はたして旧史に「理想」はなかったのだろうか。 旧来の史学になかった「理想」とは、近代的な「愛国主義」のことである。確かにそれは、旧史学に存在しなかった。けれども儒教の教義という「理想」は、現前としてあったはずである。むしろその「理想」のほうに、史実分析・歴史叙述が従属していた。 梁啓超以後の「中国」人は、ふるき史学を厳しく批判して、断代史・紀伝体という体制・スタイルからは確かに脱却した。しかしながら、「理想」・イデオロギーを考証・叙述の前提・目的としてしまう論理構造は、旧史と変わってはいない。 旧史のスタイルとともに、儒教のドグマが退場したのはまちがいない。それでも愛国主義・三民主義・マルクス主義・毛沢東主義など、体制イデオロギーは最上の価値を与えられ、中国を覆っている。それが続くかぎり、「正統」のイデオロギー・ドグマを説明し、正当化する、という歴史の位置づけと役割も変わらない。 したがって「中国」の歴史学では、中華の史学と同じく、依然として体制イデオロギーを標準とした、史上の人物・政権・事件に対する正邪の判定を何より重視する。現代の「正しい歴史認識」も、そうした意味にほかならない。「満州国」は「偽」でなくてはならないし、「南京大虐殺」は「三十万人」でなくてはならないのである。 「中国」での歴史とは、かつての史学と同じく、政権・イデオロギーの利害得失を代弁、説明、主張するものであって、われわれが「学問の自由」「言論の自由」にもとづく、と普通に考えがちな歴史学とは、次元の異なる存在である。昨今の「歴史認識」問題もそう考えなくては、納得できないことが少なくあるまい。<領土問題> 同じく日本との関係で重大なのは、尖閣という領土問題である。そうはいっても、問題は日本に限ったことではない。中国軍の岩礁埋立てで波高い南シナ海でも、事情はまったく同じである。 そもそも中国ほど、国境問題・領土問題を抱えた国も少ない。そしてどの相手国に対しても共通するのは、一方的な主張と大国意識、卑俗な言い方をすれば、「上から目線」の存在であって、そこにはどうやら史上の論理が作用している。 たとえば「華」「夷」の秩序である。これは礼制にもとづく上下関係なので、中華は常に外夷より上位・優位にあると措定された。それはよい。両者の関係の客観的な実態はどうあれ、主観的な措定そのものは、まちがいない事実だからである。 しかし20世紀の漢人たちは、そうした礼制にもとづく秩序措定に代えて、「中国」というnationと国際関係を選択した。国際関係は主権国家どうしの対等を原則とする。それなら「中国」の世界観・空間認識は、かつての「華」「夷」の上下関係から一変したはずである。 たしかに20世紀の前半、帝国主義の圧迫を受けていたころは、列強との対等な関係こそ、「中国」の念願だった。しかし抗日戦争に勝利してそれを果す屋、またぞろ歴史的な遺制が顕在化してきた。 つまり、自分たち「中国」は中華・上位、周辺国は外夷・下位であるべしという世界観である。しかもそれが西洋流のnationや主権の観念と結びついて、自らのnationを守るべく「愛国」につとめ、いわば「攘夷」を厭ってはならぬ、という主張に転化した。その発現が日本やベトナム・フィリピンなどに対する大国意識、「上から目線」であり、相手に耳を貸さない領土問題での行動様式にほかならない。(中略) つまり、清朝の範囲内に暮らすモンゴル人・チベット人は、自分たち漢人より下位に属するので、その住地と一体化して同化すべきだ、と言う論理になった。たとえば、「五族協和」「中華民族」をとなえた孫文は、漢人への「同化」がその意味内容だと明言している。したがって習近平が「中国の夢」だと語る「中華民族の復興」も、ほとんど意味はかわらない。チベット人・ウイグル族が反発するゆえんである。『中国の論理』2:アヘン戦争あたり『中国の論理』1:はじめに
2024.05.23
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ドングリ国のパルシネマ(2本立て館)で観た2本立て映画について、以下のとおり並べてみたのです。ま~個人的な鑑賞目次みたいなものです。 R1:「男の友情、女の友情」を追記*********************************************************男の友情、女の友情・・・2本立て館:「テルマ&ルイーズ」4回目お腹ペコペコ・・・2本立て館音楽が人生を変える・・・2本立て館男はつらいよ・・・2本立て館ブルース&ブルース・・・2本立て館あなたがいない世界を・・・2本立て館:「テルマ&ルイーズ」3回目我が子への大きな愛・・・2本立て館 *********************************************************上記リストアップしたもの以前については2本立て館で観た映画R20 に収めています。パルシネマ上映スケジュール
2024.05.23
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図書館に予約していた『南海トラフ地震の真実』という本を、待つこと7ヵ月ほどでゲットしたのです。気象庁の公表情報でも発生確率70~80%という数値が出ているわけで・・・この本の告発が興味深いのである。【南海トラフ地震の真実】 小澤慧一著、東京新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」。ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のためにないがしろにされる科学ー。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。科学ジャーナリスト賞で注目のスクープを書籍化!<読む前の大使寸評>気象庁の公表情報でも発生確率70~80%という数値が出ているわけで・・・この本の告発が興味深いのである。<図書館予約:(10/20予約、副本?、予約44)>rakuten南海トラフ地震の真実「おわりに」にこの本の作成時の裏話が載っているので、見てみましょう。p234~237<おわりに> 本書は関東大震災から100年を迎える2023年9月1日前の刊行となった。よく周囲から「首都直下地震は30年以内に70%の確率で発生するといわれているけど、この確率の出し方に問題はないの?」と聞かれる。実は専門家に聞くと、「南海トラフよりも『えこひいき』した確率の出し方をしている」と言う人も多い。「元禄地震」と「関東大震災」は、関東を襲ったM8クラスの巨大地震だ。二つの地震は約220年の間が空いているが、関東ではこの220年の間にM7クラスの地震が8回発生した。単純計算するとM7クラスの地震は27.5年に1度起きていることになり、これを30年確率に当てはめると70%という確率が出る。地震本部は「相模トラフのプレートの沈み込みに伴うM7クラスの地震」の確率としているが、内閣府はこれを首都直下地震の確率として紹介している。 えこひいきのゆえんは、8回の地震の発生した領域の広さだ。首都直下というと23区内をイメージする人が多いのではないか。8回の地震の中には、1855年の安政江戸地震のように東京都の千代田区、墨田区、江東区などを強い揺れが襲ったものもあるが、他にも茨城県南部や神奈川県の小田原、三浦半島付近で起きた地震も含まれる。首都直下というよりは「関東直下」の方がイメージは近いだろう。 大都市は災害に弱く、首都が大地震に見舞われたら国が破綻しかねない被害になることは目に見えている。備えるのは当然だ。だが「30年間で70%」という伝え方は、地震の切迫性をアピールするため、わざわざ近隣の地震をかき集めて高い数値を出すような「せこいまね」をしているようにもみえる。 取材ではさまざまな立場の人から「確率を出さないと地震学の存在意義がない」「低い確率を出すと防災予算が下りない」などとの声を聴いた。確率は地震学や防災、政治の思惑が複雑に絡み合い、本質的な意味が見えにくい情報になっている。本当に必要な情報とは何か、立ち止まって考え直すべきだろう。 この問題を記事にする上で、乗り越えられないと思うような困難が幾度もあった。それがこうして1冊の本に仕上がったのは、奇跡とも思える出会いが連続したからだ。 まず、きっかけとなった鷺谷威名大教授の「告発」は、ともすれば告発した鷺谷氏が不利益を被る恐れがある内容だった。鷺谷氏が覚悟を決めて世に伝えたかった思いを、居合わせた私がたまたま受け取ったことで取材が始まった。しかし、この問題意識をどう記事化するかには苦労した。 私のプレゼンテーション能力が足りないことも手伝い、デスク陣に説明をしても「議論の過程で出た裏話」「科学的論争の一つ」と、一般の紙面で報じるのはそぐわないと判断されることが多かった。ただでさえ難しい科学のテーマだ。しつこく一般記事での掲載を求める私の姿は、日々のニュース対応で忙しいデスク陣の目にはさぞかし困った部下に映っただろう。 そんな時、助けの手を伸ばしてくれたのはニュースの深堀りをする中日新聞の特集面「ニュースを問う」の担当デスクをしていた秦融編集委員(当時)だった。私は秦デスクに「相談がある」とだけ伝え、会社から少し離れたファミリーレストランに呼んだ。簡単な雑談を終えると、秦デスクはテーブルに腕を置いて少し身を乗り出し、「で、ネタは何だ」とメガネの奥の目をギラリと光らせた。 約3時間に及ぶ打ち合わせの末、秦デスクは「南海トラフの高確率がきっかけで他地域に油断が生まれているとしたら、中部の新聞社としては見過ごせない」と、同面での記事化を約束してくれた。 こうして、2019年秋に何とか新聞連載として形にすることができたが、この問題を全国区のものに押し上げてくれたのはライバル紙の科学ジャーナリストたちだった。当時朝日新聞大阪本社科学医療部長で、地震学者の間でも有名な黒沢大陸氏は自らのツイッターで「中日新聞さん、よい仕事だった。やられた」と、連載を紹介してくれた。また、元読売新聞科学部デスクで今はサイエンスライターの保坂直紀氏は連載を読み、「不都合な科学は隠してしまえばよいのか。科学と社会はどう付き合っていくべきなのか。連載の背後に大きな問いかけを感じる」とメールをくれ、科学ジャーナリスト賞に推薦してくれた。 本書を書く上で最も大切だったのは、橋本学東京電機大特任教授の存在だ。橋本氏は確率の検討当時から科学のあるべき姿を貫き通そうとした気骨の地震学者だ。鷺谷氏や橋本氏が当時海溝型文化委員でなければ、「確率がえこひいきされている」とここまで問題にならなかったかもしれない。また、室津港の水深データの問題を高レベルな科学的議論として指摘できたのは、ひとえに橋本氏の執念ともいえる調査・研究があってのことだ。共同研究のメンバーの加納靖之東大准教授の協力も欠かせなかった。 高知での出会いにも恵まれた。先祖から子孫へ約300年間、連綿と受け継がれた久保野文書。史料の保管が難しくなる昨今、久保野由紀子さんがいなければ文書は失われていたかもしれない。高知城歴史博物館で文書の整理を担当した学芸員水松啓太氏が、偶然にも地震学を専攻していたことも幸運だった。水松氏のさまざまな指摘は研究を大幅に進展させた。 室戸ジオパーク推進協議会の専門員小笠原翼さんにはヒントとなる資料を献身的に提供していただいた。小笠原さんから紹介された室戸の郷土史家の多田運さんからは、室戸ならではの習慣や歴史など多くの知見を示してもらった。多田さんは2023年5月に死去された。本書をお見せできなかったことは残念で仕方がない。ご冥福をお祈りしている。『南海トラフ地震の真実』2:「えこひいき」の80%(続き)『南海トラフ地震の真実』1:「えこひいき」の80%
2024.05.22
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図書館に予約していた『南海トラフ地震の真実』という本を、待つこと7ヵ月ほどでゲットしたのです。気象庁の公表情報でも発生確率70~80%という数値が出ているわけで・・・この本の告発が興味深いのである。【南海トラフ地震の真実】 小澤慧一著、東京新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」。ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のためにないがしろにされる科学ー。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。科学ジャーナリスト賞で注目のスクープを書籍化!<読む前の大使寸評>気象庁の公表情報でも発生確率70~80%という数値が出ているわけで・・・この本の告発が興味深いのである。<図書館予約:(10/20予約、副本?、予約44)>rakuten南海トラフ地震の真実まず「第1章 「えこひいき」の80%」の続きを、見てみましょう。p30~33<報じなければ葬られる> 鷺谷氏の告発は、ショッキングなものだった。「30年以内の発生確率が60~70%」という文言は、南海トラフ地震の枕ことばで、私も南海トラフ地震絡みの記事を書く際は毎回使ってきた。それが恣意的に決められたものだったとは・・・。 しかし、私がこの取材をしたのは2018年2月で、13年評価の確率が発表されてから5年近くもたっている。南海トラフの長期評価は社会の耳目を引くテーマだ。鷺谷氏もいろいろな記者と付き合いがあるはずで、中にはこの話をした記者もいたのではないか。「この話はどれくらい知られている話なんですか」と聞くと、鷺谷氏は「確率の決定の経緯は、当初マスコミに知られることを恐れて、表に出されていない話なんです。過去に別の新聞の科学部の記者さんにお話ししたことがありますが、記事にはなりませんでした」と静かに話した。 どうやら、この問題に取り組んでいる報道関係者はいないようだ。私が掘り起こさなければ、誰にも知られないまま葬られてしまうかもしれない。とりわけ東日本大震災以降、防災は報道の主要テーマだ。その内幕で問題のある意思決定がされているとしたら、それを知った記者には記事を通じて議論を呼びかける責務がある。「これは報じるべきですね」。私がそう言うと、鷺谷氏は「それはぜひ」と少し笑みを見せた。 しかし、当然鷺谷氏に聞いた話だけではなく、この内幕模様の裏取り取材をしなければ記事は書けない。複数の証人・・・いや、議事録などがあればいいが。そう思っていると、鷺谷氏は「確か会議の議事録は全て残っていると思いますよ。(地震本部の事務局の)文部科学省に請求すれば出てくるかもしれませんね」と教えてくれた。 政府は「行政文書管理ガイドライン」で議事録などの公文書の取り扱いについて規定している。それによると、外部の有識者らによる懇談会を開催する際は「意思決定の過程を検証できるよう、開催日時、開催場所、出席者、議題、発言者及び発言内容を記載した議事の記録を作成する」と求めている。政府の専門家による会議である海溝型分科会はこれに当たるだろう。 議事録があれば、真相を一網打尽にして知ることができる。私は鷺谷氏に礼を言い、早速本社に戻り、議事録を請求する手続きに移った。<使わぬ手はない「情報公開請求制度」> 情報公開請求制度は「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(情報公開法)によって、誰でも行政機関が持つ資料を請求することができると定めている。この制度を遣えば、当局による自発的な発表ではなく、当局にとって都合の悪い情報も得られる可能性がある。行政側が公開・非公開を決める余地が大きく、問題もあるが、権力の監視が役割の新聞記者が使わない手はない。 情報公開の請求方法は、請求する文書を管轄する行政機関のホームページに掲載されている。目的の史料が明確な場合は、「行政文書開示請求書」に必要事項を記入し、送付する。わからない場合は、請求する先の行政機関に設けられている開示請求の窓口担当に確認するといい。担当者が目的の文書の所在の有無や、行政文書やファイルの名称などを教えてくれる。また、申請から開示までにどれくらい時間がかかりそうか目途も付く。具体的な資料名が判らない場合は、「~に関する一切の資料」などと書くが、絞り込んでいないと余計な文書まで請求対象となり、その分開示に時間がかかることもある。 ちなみに請求先の行政機関自体の不正などを調べようとして、調査していることを感ずかれたくない場合、こちらが何について調べているかわからないよう、わざと関係ない部門の資料を含ませたりすることもある。(中略) 鷺谷氏の取材を終え、文科省に情報公開請求すると、約1ヶ月後に申請した文書の開示を認める「開示決定」が届いた。文書のコピーを選び手数料を支払うと、そのまた約1週間後についに文書が郵送されてきた。『南海トラフ地震の真実』1:「えこひいき」の80%
2024.05.22
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SF小説から科学書まで、サイエンス・ブックを網羅した『サイエンス・ブック・トラベル』という本が面白かったので・・・以下のとおり復刻して読んでみよう。*********************************************************図書館で『サイエンス・ブック・トラベル』という本を、手にしたのです。【サイエンス・ブック・トラベル】 山本貴光著、河出書房新社、2017年刊<「BOOK」データベース>より“いま”と“これから”がわかる。気鋭の科学者ら30名が自然科学の眼差しで捉えた世界の姿!!【目次】1 宇宙を探り、世界を知る(この世界の究極の姿は何か?/人はなぜ宇宙を探るのか?/光より速く進むことは可能か? ほか)/2 生命のふしぎ、心の謎(心はどこにあるのだろうか?/動物はどんなふうに働いているのか?/生物は、細胞は、果たしてどう進化してきたのか? ほか)/3 未来を映す(私たちが“身体性”を備えるとはどういうことなのか?/科学的な思考とは何か?/未来の医療はどうなるだろうか? ほか)<読む前の大使寸評>追って記入rakutenサイエンス・ブック・トラベル「SF小説と科学書の類似」が語られているので、見てみましょう。p190~192<22 SF小説を書くには?:藤井太洋> 1976年に初版が発行され、平成元年の1989年に増補改訂されたリチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』はこう始まる。 “この本はほぼサイエンス・フィクションのように読んでもらいたい” サイエンス・フィクション=SFというジャンルの文学を定義するのは難しいが、多くのSF作家が宇宙開発や時間旅行、人工知能が支配する社会やジェンダーの溶け合った遠い未来を通して人が不思議や神秘に触れたときに感じるときめき・・・“センス・オブ・ワンダー”を描こうと日夜努力していることは共通している。 そんな日々を送っている身にとって、この序文は挑発的だ。 科学者が? 科学書で? SFのように読める? 甘く見るんじゃないよ、と言いたくなるところだが、実のところ本書は優れたサイエンス・フィクションのように読めてしまう。 科学書なので当然ではあるが、ドーキンスは物語を前に進めるためにSF作家がやるような嘘や隠蔽を混ぜない。喩えの中に混入してしまう正確でない言い回しの意図を修正するために、五月蠅いと思えるほどに紙面を割いてすらいる。日本人には馴染みの薄い宗教に対する言葉など、何度繰り返せば気が済むのかと感じてしまうほどだ。それでも本書は面白く読めてしまう。 ドーキンスの語り口は、SF作家が作品の中で架空の事物を作り上げていく方法とそっくりだ。先入観を覆すような言葉で読者の興味を惹いておいて、手触りの感じられる事例を丁寧に紹介しながら伝えるべき理論を積み上げる。最後に力強く、冒頭で示した言葉の意味を述べる。 特に第12章「気のいい奴が一番になる」で扱われるゲーム理論と進化的に安定な戦略・・・ESSのくだりは秀逸だ。囚人のジレンマという思考ゲームで、遺伝子が生命に行わせている戦略が徐々に明かされていく。ゲームノプレイヤーがとる戦略の「やられたらやり返す」というフレーズは、事例がサッカーのゲームや離婚訴訟に及んでも繰り返されるが、最後に「利己的な遺伝子」という本書のテーマを強く補強するチスイコウモリの“献血”事例に帰着して、1世紀以上も居座っている“血まみれの自然”という先入観を打ち砕く。 まるでよく書けた短篇小説のような美しい構成だ。私は何度も読み返しているが、実際のところ本書がなければ、いくつかの重要なSF作品は生まれなかったか、全く違う読み心地となっていただろう。 本書の主たる主張である生物=生命機械論や『利己的な遺伝子』というフレーズだけをとってもマイケル・クライトンの『ジュラシックパーク』や瀬名秀明『パラサイト・イヴ』、岩明均『寄生獣』などにその影響は色濃く出ている。そして進化論というアイディアがDNAに留まらないことを示してみせた“ミーム”に至っては、SF作品において文化を技術的に操作することへのもっともらしさを加えるための必須のアイディアの一つともなっている。 「論」や「説」が生まれた場所とその熱気を知ることは難しいのだが、“ミーム”に関しては『利己的な遺伝子』から始めればよい。その一点だけでも本書の価値は計り知れない。 もう一つ驚くべき事がある。40年近く前に書かれた科学書だというのに、その論旨と事例が全く古びていないことだ。これは驚愕に値する・・・正直に言えば、羨ましい。 東西冷戦が終わったために、スパイ小説家たちは頭を抱えたというが、PCとIT革命は同様にSFを書きにくい時代にしたと言われている。私たちが住む21世紀の社会は情報革命によってかつて描かれていたSFを超えつつあるからだ。『利己的な遺伝子』を以前に読んだので紹介します。【利己的な遺伝子】リチャード・ドーキンス著、紀伊国屋書店、2006年刊<「BOOK」データベース>より「なぜ世の中から争いがなくならないのか」「なぜ男は浮気をするのか」-本書は、動物や人間社会でみられる親子の対立と保護、雌雄の争い、攻撃やなわばり行動などが、なぜ進化したかを説き明かす。この謎解きに当り、著者は、視点を個体から遺伝子に移し、自らのコピーを増やそうとする遺伝子の利己性から快刀乱麻、明快な解答を与える。初刷30年目を記念し、ドーキンス自身による序文などを追加した版の全訳。【目次】人はなぜいるのか/自己複製子/不滅のコイル/遺伝子機械/攻撃ー安定性と利己的機械/遺伝子道/家族計画/世代間の争い/雄と雌の争い/ぼくの背中を掻いておくれ、お返しに背中をふみつけてやろう/ミームー新登場の自己複製子/気のいい奴が一番になる/遺伝子の長い腕<読む前の大使寸評>待つこと2週間、わりと早くゲットできたが・・・世界的なベストセラーという本でも、ちょっと古いのが狙い目かも♪<図書館予約:(12/05予約、12/18受取)>rakuten利己的な遺伝子お薦めの4冊1 リチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子』2 カール・セーガン『COSMOS』3 ブライアン・グリーン『エレガントな宇宙』4 福田和代『宇宙へ』『サイエンス・ブック・トラベル』3:利己的な遺伝子『サイエンス・ブック・トラベル』2:進化とは何か『サイエンス・ブック・トラベル』1:歴史を変えた火山噴火
2024.05.21
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手許不如意の大使は外出時には、サイゼリアですますことが多くなりました。だって最近はラーメンが千円近くするので、サイゼリアのコスパがより魅力的に映るわけです。・・・というわけで、ヤマザキマリが説くイタリア料理を復刻して読み直してみます。*********************************************************図書館で『パスタぎらい』という本を、手にしたのです。ヤマザキマリが説くイタリア料理ってか・・・これはいけるかも♪【パスタぎらい】 ヤマザキマリ著、新潮社、2019年刊<「BOOK」データベース>よりイタリアに暮らし始めて三十五年。断言しよう。パスタよりもっと美味しいものが世界にはある!フィレンツェの絶品「貧乏料理」、シチリア島で頬張った餃子、死ぬ間際に食べたいポルチーニ茸、狂うほど愛しい日本食、忘れ難いおにぎりの温もり、北海道やリスボンの名物料理…。いわゆるグルメじゃないけれど、食への渇望と味覚の記憶こそが、私の創造の原点ー。胃袋で世界とつながった経験を美味しく綴る食文化エッセイ。<読む前の大使寸評>ヤマザキマリが説くイタリア料理ってか・・・これはいけるかも♪rakutenパスタぎらい第3章でオリーブ・オイルが語られているので、見てみましょう。p85~87<第3章 それでもイタリアは美味しい>■「万能の液体」オリーブ・オイル イタリアの家庭において絶対に切らしてはいけない調味料といえば、オリーブ・オイルをおいて他にない。 いざ料理する段階となって、オリーブ・オイルを切らしているのに気付くイタリア人で、軽いパニックになる人は少なくないはずだ。実際私も、舅が最後のオリーブ・オイルを使い切っておきながら、新しいのを補填しなかったことに姑が激怒して、その日の食事の準備を放棄してしまったのを目にあたりにしたことがある。 かといって、慌てて近所のスーパーで買ってきたところで、事態が円満に修復されるとは限らない。イタリアではその家庭それぞれにオリーブ・オイルへのこだわりというのが強くあり、どこのものでもいいということは決してない。例えば我が家の場合であれば、オリーブ・オイルはスーパーなどで小売店で購入するのではなく、二世代前から世話になっている農家から分けてもらっているものを使うのが定番だ。どんなに高級で高いオリーブ・オイルを買ってきても、喜んで使ってくれるわけではないのである。 イタリアのサッカーのナショナルチームが海外に遠征する時に、専属の調理師を伴っていくのは有名な話だが、その時に携帯する調味料として絶対に欠かせないのがオリーブ・オイルである。それもおそらく慣れ親しんだものでなければいけないはずだ。 選手によっては自分のコンディションの不調をオリーブ・オイルの味が普段と違うことを理由にしたりもするだろう。もし、普段使っているものが入手できない場合は、せめていつも使っているのと同じ生産地域のもの、それが厳しければせめてイタリア国内のもの、という優先順位になるだろう。 十年ほど前、当時暮らしていたポルトガルからイタリアの実家に持ってきた、お薦めのポルトガル産オリーブ・オイルは、いまだに台所の棚の中にしまわれていて、使われる気配はない。オリーブ・オイルはワインと並び、彼らにとって極めて保守的な食材なのである。 日本だと「オリーブ・オイルごときでそんな大袈裟な」と思われる方もいるかもしれない。例えば醤油にしても、決して全ての料理に使う訳ではない。しかしオリーブ・オイルに関しては、あらゆるイタリアの食事にとって必要不可欠なものなのだ。 パスタでもスープでも調理の段階で用いるだけではなく、食べる直前にも、さらにオリーブ・オイルを上から垂らす。ドレッシング文化のないイタリアでは、サラダを和えるのにもオリーブ・オイルは欠かせないし、肉や魚がどのような形態で調理されても、その上にはやはりオリーブ・オイルが掛けられる。 私が貧乏学生時代によく食べていた「アーリオ・オリオ・エ・ペペロンティーノ」にしても、オリーブ・オイルさえそこそこ美味しければ、かなり贅沢な気持ちになれる。 古代ギリシャや古代ローマの人たちは、朝ごはんにオリーブの実を食べたり、オリーブ・オイルの掛かったパンを食べていたとされているが、「地中海人」たちの徹底的なオリーブ・オイルへの執着は、おそらくあの頃から培われたものなのだろう。『パスタぎらい』3:スパゲッティ・ナポリタン『パスタぎらい』2:恋しいラーメン『パスタぎらい』1:アーリオ・オリオ・エ・ペペロンティーノ*********************************************************
2024.05.21
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図書館に予約していた『南海トラフ地震の真実』という本を、待つこと7ヵ月ほどでゲットしたのです。気象庁の公表情報でも発生確率70~80%という数値が出ているわけで・・・この本の告発が興味深いのである。【南海トラフ地震の真実】 小澤慧一著、東京新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」。ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のためにないがしろにされる科学ー。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。科学ジャーナリスト賞で注目のスクープを書籍化!<読む前の大使寸評>気象庁の公表情報でも発生確率70~80%という数値が出ているわけで・・・この本の告発が興味深いのである。<図書館予約:(10/20予約、副本?、予約44)>rakuten南海トラフ地震の真実まず「第1章」の冒頭から、見てみましょう。p15~18<第1章 「えこひいき」の80%>■地震学者の告発「南海トラフ地震の確率だけ『えこひいき』されていて、水増しがされています。そこには裏の意図が隠れているんです」 取材は、地震学者からの衝撃的な「告発」で始まった。 それは2018年2月9日、地震調査委員会が南海トラフ地震が30年以内に発生する確率を「70%程度」から「70~80%」に変更されるとの情報を事前にキャッチした。「いよいよ東海地方に大地震が迫っている」と直感した私の頭の中では「防災対策は十分か」「自身が起きた場合の被害予測は」など、さまざまなニュースの切り口が駆け巡った。 まずは専門的な観点が必要と考え、本社から名古屋大の鷺谷威教授(地殻変動学)に電話した。鷺谷氏は南海トラフの発生確率の検討に関わった政府の委員会の委員だ。当然、このときは防災のために警鐘を鳴らすコメントが返ってくると期待していた。しかし返ってきたのは、冒頭のえこひいきという意外な発言だった。なぜ、自らが検討した確立を否定するのか・・・。訳がわからなくなりかけている私に、鷺谷氏は続けた。「個人的には非常にミスリーディングだと思っている。80%と言う数字を出せば、次に来る大地震が南海トラフ地震だと考え、防災対策もそこに焦点が絞られる。実際の危険度が数値通りならいいが、そうではない。まったくの誤解なんです。数値は危機感をあおるだけ。問題だと私は思う」 ミスリーディング? 誤解? 問題? 予想外の言葉に頭が混乱した。要領を得ない私に鷺谷氏はさらに驚くことを言った。「南海トラフだけ、予測の数値を出す方法が違う。あれを科学と言ってはいけない。地震学者たちは『信頼できない』と考えています。他の地域と同じ方法にすれば20%程度にまで落ちる。同じ方法にするべきだという声は地震学者の中では多いんです。だが、防災対策を専門とする人たちが、今さら数値を下げるのはけしからん、と主張しています」 科学とは言えない? 20%? 下げるのはけしからん? 想定外のコメントの数々が、ますます頭を混乱させた。だが、80%の数値に何かカラクリがあれば、それを知っておく必要がある。 鷺谷氏によると、地震学者たちは、いったんは全国で統一の計算方法を用いて算出した「20%程度」という確率を素直に発表する案も検討したという。ところが、その方針を政府の委員会の上層部に伝えると、大反対が巻き起こった。 確率の出し方は大きく分けて2通りあり、それぞれのメカニズムを電話のやりとりだけで理解するのは難しかった。だが、南海トラフ地震の確率が高いのは特別な算出方法のためで、その方法を地震学者たちが変えようとすると上から圧力がかかったということに、裏の意図があるらしいことは理解できた。 東海地方に住む人間にとって、南海トラフ地震はずっと「必ず来る」と言われ続けている地震だ。そのため、名古屋出身の私も幼い頃から学校などで防災訓練を念入りに行ってきた。しかし、発生確率が作られた数字だったとしたら・・・。この問題は、しっかりと取材しないといけない。そう直感した。 そのときはひとまず電話を終え、デスク(原稿のまとめ役)に報告した。デスクも「70~80%」の数字の大きさだけがことさら目を引くことを警戒し「そんなにでかでかと書かない方がいいな。粛々と報じよう」と冷静に反応した。
2024.05.20
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図書館で『映画の巨人たち リドリー・スコット』という本を手にしたのです。なんか既視感のある本であるが・・・再読でもいいかということでチョイスしたのです。帰って調べると、やはり再読となっています。で、この記事を(その4)とします。*********************************************************図書館で『映画の巨人たち リドリー・スコット』という本を、手にしたのです。「ブレードランナー」「ブラック・レイン」「テルマ&ルイーズ」とくれば・・・もっとも好きな監督になるのかなあ。【映画の巨人たち リドリー・スコット】佐野亨著、辰巳出版、2020年刊<「BOOK」データベース>よりSFから歴史劇まで、幅広い題材を描きながら、人間の悪意や文明論など明確なテーマ性と独自の映像美で、いまなお第一線で活躍し続けるリドリー・スコットーその魅力と本質をさまざまな角度から読み解く!<読む前の大使寸評>「ブレードランナー」「ブラック・レイン」「テルマ&ルイーズ」とくれば・・・もっとも好きな監督になるのかなあ。rakuten映画の巨人たち リドリー・スコットリドリー・スコットの生い立ちなどが語られているので、見てみましょう。P30~32<リドリー・スコットの生い立ちと原体験:稲田隆紀> リドリー・スコットにはこれまで三度、インタビューを行った。思い起こせば、1980年代は話題作であればプロモーションのために監督、俳優が来日することが定番化していて、取材する機会も頻繁にあった。 最初はスコットが『ブラック・レイン』のロケハンで来日し、『誰かに見られてる』のプロモーションに時間を割いた1988年だった。『誰かに見られてる』はアメリカでの評判も芳しくなく、スコットは意気消沈した風情で取材に応じた。 2回目は1989年、『ブラック・レイン』公開直前のプロモーションで、今度は意気軒昂の彼に取材した。(中略) この時点では彼は巨匠としての風格を身につけていた。 だが、本稿で求められているテーマはスコットの“匠に至る道”ではなく“生い立ちと原体験”だ。これまでの取材のコメントを洗い出し、資料を駆使して挑んだ。 資料によれば、リドリー・スコットは、1937年11月30日に北海に面したサウスシールズ、タイン・アンド・ウェアで生まれた。父親フランシス・バシー・スコットは王立工兵連隊(Royal Èngineers)の将校だった。母親のエリザベスは留守の多い父親に代わって、兄のフランク、リドリー、弟のトニーの三人をタフに育て上げた。彼女は口答えも許さない絶対的存在、強く尊敬に値する女性だった。後にスコットが生み出すタフな女性キャラクターの原型が母親であったことは間違いがない。 時代は第二次世界大戦前夜。父の任地がイギリス、ヨーロッパ各地に及び、家族は父と行動をともにして、各地を巡ることになる。第二次大戦後、スコット一家はダラム州ハートバーン、グリーンズ・ベック・ロードに定住することになった。 スコットが海洋冒険小説、特にジョゼフ・コンラッドなどのファンになったのは、父親の影響だと思われる。実際、彼は兄のフランクが既に輸送船団の一員となっていたこともあり、子供らしい夢として王立工兵連隊に加わりたいと考えていたようだ。 一方で、父親が水彩画を描くのが好きだったこともあって、スコットは絵画やコミックに興味を持つようになり、彼もまた絵を描くのが好きになった。父親は彼に芸術的才能を見いだし、それを伸ばすように勧めた。 さらにこの世代の子供らしく、スコットもまた映画に魅せられた。映画館のスクリーンをみつめながら、夢を育む日々を送っていた。「影響を受けたのは1940年代の英国映画だ。ゾルタン・コルダの『ジャングル・ブック』や『サハラ戦車隊』、マイケル・パウウェルの『赤い靴』、デヴィッド・リーンの『大いなる遺産』。さらにリーンが後に生み出した『戦場にかける橋』や『アラビアのロレンス』にも感動させられた。キャロル・リードの『落ちた偶像』や『第三の男』も忘れられない。みな卓抜したストーリーテラーだった。ハリウッドの作品も見たが、面白いだけで、感銘はなかった」 このコメントは1988年に引き出したのだが、どうも後付け臭い。当時はきれいな映像だけの男という評価に悩み、ストーリーテラーになるべく模索していた頃で、子供時代にこうした監督たちに惹かれたとは考え難い。他のインタビューでは、H・G・ウェルズの小説に熱中し、『恐怖の火星探検』や『放射能X』、『地球が静止した日』などのSF作品を、十代の頃に好んだと語っていた。こちらの方がよほどしっくりくる。 ともあれ、スコットは父の勧めに従い、ウェスト・ハートルプール美術カレッジに進んだ。1954年から1958年まで、彼は本格的に絵画を学び、写真技術やグラフィック・デザインにまで手を広げた。ヴィジアルセンスの何たるかを学んだ時期といえるだろう。 卒業後、今度はロンドン王立美術大学の奨学金を得て、美術的感性をさらに深めていく。デヴィッド・ホックニーやアラン・ジョーンズといった現代を代表する画家とともに学んだことで、スコットの感性は磨きがかかっていった。 この頃からスコットはオーソン・ウェルズや黒澤明をはじめとする世界の映画監督を知り、映画の多様さに眼が開いた。大学の映画部門の設立を積極的に働きかけ、大学の戸棚に置かれていた十六ミリカメラを駆使して、『少年と自転車』という短編を撮り上げる。父親フランシスと、嫌がる弟トニーを出演させたエピソードはつとに知られている。『映画の巨人たち リドリー・スコット』3:「ブレードランナー」の論考『映画の巨人たち リドリー・スコット』2:「テルマ&ルイーズ」の論考『映画の巨人たち リドリー・スコット』1:冒頭の論考
2024.05.20
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早朝に散歩する太子であるが、南東の空に月と金星が見えるのです。ちょうど三日月の内側に金星が位置しているが、これって中東諸国が好むマークではないか。また、このマークは春分と関係があるのではないか?このところ夏日とはしり梅雨のような日が立ち代わりに現れているが、梅雨入り宣言はいつ出るのでしょうね?『日本のならわしとしきたり』という蔵書に二十四節季の記事があることを思い出したのです。【日本のならわしとしきたり】ムック、 徳間書店、2012年刊<内容紹介>ありふれたムック本ということなのか、ネットにはデータがありません。<大使寸評>とにかく「今日は二十四節季でいえば、何になるか♪」を知りたいロボジーにとって、座右の書となるでしょう♪Amazon日本のならわしとしきたり麦秋この本で、小満のあたりを見てみましょう。和暦p15<小満>万物が次第に成長して、大きくなること 立夏から15日目ころにを小満の節を迎える。期間は5月15日ころから次の節である芒種の前日までである。小満に入るころは「万物が次第に成長して、大きくなること」であり、なかでも、秋に蒔いた麦に穂がつくころにあたる。「小満」は、その出来具合に「少し満足する」といった意味である。 ちなみに『暦便覧』では「万物盈満すれば草木枝葉繁る」とある。盈満の意味は、広辞苑によると「物事が充分に満ち足りること」。小満は、現時点での出来具合が「まずまず」といったほどの意味。 旧暦時代の暮らしでは、作物、なかでも米麦などの穀物の出来が暮らしと経済を左右していたため、収穫までは目を離すことができない。歳時記は、こうした季節の移ろう状態を短い言葉でまとめた冊子だが、農作業の重要な指針とも、なっていたのである。 また小満は穀物だけでなく、梅、桜桃梅(ゆすらうめ)などの草木が実をつけ始めるころでもある。さらに、七十二候に「蚕起食桑」があり、養蚕の蚕が盛んに桑の葉を食べ始めるのも小満のころだ。 小満の期間の七十二候は、次の通り。 初候「蚕起食桑(かいこ、おきて、くわを、はむ)」 次候「紅花栄(べにばな、さかう)」 末候「麦秋至(むぎのとき、いたる)」二十四節季の立夏に注目(復刻3)令和 6年(2024) 暦要項
2024.05.19
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図書館で『中国の論理』という新書を、手にしたのです。理屈のこね方・論理のパターンには日中間に違いがあると注目する著者であるが・・・深みのある洞察ではないか♪*********************************************************【中国の論理】岡本隆司著、中央公論新社、2016年刊<「BOOK」データベース>より同じ「漢字・儒教文化圏」に属すイメージが強いためか、私たちは中国や中国人を理解していると考えがちだ。だが「反日」なのに日本で「爆買い」、「一つの中国」「社会主義市場経済」など、中国では矛書がそのまま現実となる。それはなぜかー。本書は、歴史をひもときつつ、目の前の現象を追うだけでは見えない中国人の思考回路をさぐり、切っても切れない隣人とつきあうためのヒントを示す。<読む前の大使寸評>理屈のこね方・論理のパターンには日中間に違いがあると注目する著者であるが・・・深みのある洞察ではないか♪rakuten中国の論理マカートニーを謁見する乾隆帝「Ⅳ 近代の到来」でアヘン戦争あたりを、見てみましょう。P130~134<1 「西洋の衝撃」と中国の反応>■マカートニー使節 かくて中国・東アジアは19世紀を迎えた。この時代は「中国の論理」が西洋近代に直面して、転換をとげてゆく過程にほかならない。それはここまでⅠ・Ⅱ・Ⅲ章に述べてきた時間観念・社会構成・世界秩序のそれぞれで生じたことであり、その結果、現代の中国が誕生する。 しかしながら、すべてが同時に、また一様に起こったわけではない。たがいにタイムラグがあり、深浅もまちまちだった。 ごく単純にいってしまえば、Ⅰ章とⅡ章の観念・社会というエリアでは、変化が容易に起こらなかったのに対し、Ⅲ章の世界秩序では、論理の相剋と破綻をきたした。そこを起点に中国が自らの姿を次第に、やがて全面的にあらためてゆく、というシナリオになろうか。その過程をわれわれは近代化、中国革命と呼んでいる。 そのためこうした転換をみるには、第三の世界秩序からはじめるのが便宜であろう。まず縁遠かったはずの外国人に、登場いただきたい。イギリスが1793年、史上はじめて派遣した全権大使・マカートニーである。 イギリスは18世紀の後半、すでに中国との貿易を大幅に伸長させていた。中国はその茶買付で、未曽有の貿易黒字と好景気を謳歌していたのである。それはイギリスから見れば、貿易赤字なので、改善の余地が少なからずあった。マカートニー使節の派遣は、そんな貿易の規制緩和と中英の国交樹立を実現するのが目的である。マカートニーを謁見する乾隆帝 マカートニーは乾隆帝に謁見を果したものの、その使命についていえば、まったくの失敗だった。乾隆帝はマカートニーに、イギリス国王ジョージ三世あて勅命を下げわたしている。いわく、わが「天朝」は「外夷の貨物に頼る」必要はないのに対し、「天朝」所産の「茶葉・磁器・生糸」は、西洋に欠かせない必需品なので、「恩恵を加えて優遇」し、貿易をさせてやっているから、過分の要求など以ての外、「遠人に恩恵をあたえ、四夷を撫育する道義をないがしろ」にする、との文面だった。物知らずな「外夷」・野蛮人に教え諭す口吻である。 そもそもマカートニー使節団は全権大使だから、西洋的な基準でいえば最も高位の使節、相応の礼遇があってしかるべきだった。ところが清朝側の待遇は、まったくの「朝貢」使節に対するものである。そこで「朝貢」使節のマナーである、皇帝に対する叩頭の礼も、実践しなくてはならなかったところ、さすがに宥免してもらった。あまりにも遠いところから来た「遠人」・野蛮人だから、ということで、これまた特別の「恩恵」ではある。 要するに、清朝では君臣こぞって、朱子学的な「華夷」意識一色だった。イギリスとの貿易は、それを極力排除したはずの「互市」カテゴリーにあったはずだが、そこにもすでに浸透していたわけである。多元的な秩序体系の併存がくずれつつあった兆候と見てもよい。 使命は果たせなかった一方で、マカートニーたちは滞在中、清朝の実地調査にいそしみ、多くのレポートを書き残した。その統治が危機的な情況にあることを「ボロボロに傷んだ戦闘艦」にたとえており、その末路を正確に予言さえしている。 そして野蛮人の待遇を受けたはずのかれは、清朝の人々を「現代のヨーロッパ諸国民と比べると、半野蛮人となりはてている」と断定した。互いを野蛮人と見下しあっているわけで、東西双方の世界秩序は、もはや大きな矛盾をきたし、衝突を待っていたといえよう。■アヘン戦争 そのイギリスは、旭日の勢いである。東アジアも当然、それとは無縁ではありえない。18世紀も後半に入って、世界経済が始動するなか、イギリスは本格的な工業化をはじめると同時に、中国からおびだたしい量の茶を買い付けた。その経済力はもはや清朝の世界秩序をも左右するほどになっていたのである。 そうしたなか、イギリスは清朝の待遇そのものに不満をいだきはじめた。それは個別の関係や取引からはじまって、全体的な統治構造・秩序体系全体にも及んでいる。それを象徴するのが、アヘン貿易であった。 アヘンは麻薬であり、清朝でも当然、禁制品である。しかし当時のイギリスと世界経済は、その中国への売却を必要不可欠としたばかりではなく、「自由貿易」というシステムで、それを正当化しようとした。 清朝側でも秘密結社の密売人など、強力な受け入れ体制 が厳然として存在している。双方あいまって、清朝が想定する対外秩序を掘り崩していった。 それを押しとどめようと奮闘したのが林則徐である。かれは時の天子、道皇帝の委任を受けて、アヘン貿易禁圧に乗り出した。しかし帝も林則徐もいかに善意で明察だったにせよ、世界観・秩序観では旧態依然、乾隆帝と選ぶところがない。さすがに有能な林則徐は、任に当たって相手のイギリスのことを知るべく、情報を集めて研究しはじめた。けれども実際の政策や態度は、「華夷」「攘夷」でしかありえなかったのである。『中国の論理』1:はじめに
2024.05.19
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図書館で『中国の論理』という新書を、手にしたのです。理屈のこね方・論理のパターンには日中間に違いがあると注目する著者であるが・・・深みのある洞察ではないか♪*********************************************************【中国の論理】岡本隆司著、中央公論新社、2016年刊<「BOOK」データベース>より同じ「漢字・儒教文化圏」に属すイメージが強いためか、私たちは中国や中国人を理解していると考えがちだ。だが「反日」なのに日本で「爆買い」、「一つの中国」「社会主義市場経済」など、中国では矛書がそのまま現実となる。それはなぜかー。本書は、歴史をひもときつつ、目の前の現象を追うだけでは見えない中国人の思考回路をさぐり、切っても切れない隣人とつきあうためのヒントを示す。<読む前の大使寸評>理屈のこね方・論理のパターンには日中間に違いがあると注目する著者であるが・・・深みのある洞察ではないか♪rakuten中国の論理まず「はじめに」あたりを、見てみましょう。中国嫌いの著者のスタンスが見えるのがええでぇ♪Pⅲ~ⅶ<はじめに>■謎の国 見た目にはとっつきやすく、わかりやすそうな中国は、ほんとうは謎の国である。「ロシアのほうがはるかにわかりやすい」といったのは、西洋史学の大家だった。しかしわれわれ中国を専門に学んでいる者にとっても、やはり中国は謎である。その謎がおもしろい。おもしろさが嵩じて、うかつにも専門の職業としてしまった面もある。■言行不一致 もっとも、おもしろがってばかりはいられない。不可解、謎というのは不気味で、不安をかき立てるし、実害を被る時さえある。謎の中国をめぐっては、往々にして不愉快な事象もまぬかれない。 言行が一致しないことは、その1つ。いっていることとやっていることが著しく異なる、というわけで、なかんづく政府の言動がきわだっている。政治・権力というのは、多かれ少なかれ二枚舌の習性があるものだが、中国は格段に甚だしい。 日本人からみれば、自らに関わる尖閣など、領土問題もそうだし、相手のことなら、その内政じたいがそうである。「腐敗」が蔓延しながら、「法治」を呼号し、しかも言論を弾圧しているのは、いかにも理解しがたい。 政府だけではない。全体についても同じ、やはり日本に対する態度が、典型的である。中国人の多くは「反日」だろうが、その同じ中国人が日本を好んで、大挙して「爆買い」にやってくる。どうにも不気味で、愉快な光景ではない。 もっともそれを極論して、全くのウソつき、と断じてしまうのは、いささか躊躇する。おそらく故意にウソをついているのではない。中国人じしんにとっては、むしろごく自然なふるまいなのだろう。われわれにはそれがウソ、不自然に見えてしまうところに、謎の核心がある。 にもかかわらず、日本人は往々にして、自らの常識で中国をはかりがちである。欧米人とはちがって、近隣に暮らし、姿形も似ているし、同じ文字を使っているからである。しかし言行が一致しないことが、中国の謎から来ているのだとすれば、それをウソつきと片づけてしまっては、単なる知的怠慢にすぎない。謎は謎として、向き合う必要がある。■「一つの中国」 では、その謎はどうやったら解けるのか。そんな問いに対する解答があるなら、筆者が真っ先に知りたいところである。自身はようやく謎が謎であることを認識したにすぎない。 そうはいっても、謎であるとわかったら、貧しい知見ながら、その解き方を模索することはできる。なぜ言行が一致しないのか、そんなふるまいと、それをみるこちら側の常識・見方とが、どうしても食い違ってしまうのか。そうしたことを考えてみるのが、まず第一歩である。(中略) やはり現実は決して「一つ」ではない、けれどもその現実は認めがたい、だからこそ「一つ」であらねばならないし、「一つ」だといわねばならぬ。これが中国側の主張であって、やはりそこには、日本人の容易にはかりしれない論理がはたらいている。■「論理」と歴史 こうした中国の論理、ひらたくいえば、理屈のこね方は注目に値する。そもそも理屈というのは、時と場合、ないしは立場によって千差万別、いろいろ変わっても不思議ではない。しかしそんな表に出る多様な理屈をこねまわす方法、あるいは主張を成り立たせる骨格には、身に染みついた一定のパターンがあって、たやすくは抜けない、変わらないものである。日本人には日本人の理屈のこね方があり、中国人には中国人の理屈のこね方があって、そこにこそ、まとまった集団の個性があろう。 だから個々の理屈、その字面はわかったような気がしても、理屈のこね方、論理に考えを及ぼすと、わからなくなってしまうことも少なくない。「一つの中国」は、その典型である。相手をほんとうに理解しようとするなら、そこまで考えなくてはならない。 だとすれば、中国の謎とは、その論理にある。なぜそう思考するのか、発言するのか、行動するのか。そこに通底しているはずの論理を考察してみようというのが、本書の試みである。
2024.05.18
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定年退社前の仕事で、「個体燃料電池を組み込んだ試験用発電設備」の設計、製作、試運転に携わったことがあるのですが・・・ネットで「グリーン水素革命目指す欧州」という記事を見たので紹介します。*********************************************************水素関連で500社弱出展のハノーバーメッセ、「グリーン水素革命」目指す欧州よりドイツ・ハノーバーで開催された「Hannover Messe 2024」の主要テーマは「Energizing a Sustainable Industry(持続可能な産業を活性化する)」。約4000社の出展のうち、多くが「Industry 4.0」、すなわち工場のオートメーション化やデジタル化を軸に出展した。 その中でやや異色だったのが「Hydrogen+Fuel Cells(水素と燃料電池)」をテーマとした出展だ。Hannover Messeでは30年近くも続いているテーマだが、今回は、「Hydrogen+Fuel Cells EUROPE」というコミュニティーに所属する企業だけで300社超。それ以外の企業も含めると出展社500社弱(日経クロステック調べ)と過去最大規模になった。水素関連だけでこの出展規模は世界最大級といえる。Bosch社の個体燃料電池■水素社会実現のインフラ、サプライチェーン構築へ 会場には、「ENERGY 4.0」や「green hydrogen revolution(グリーン水素革命)」といった刺激的なキャッチコピーが目立つ。出展内容も、水素またはアンモニアやメタノールなどの水素キャリアの生産技術、その圧縮や貯蔵システム、パイプラインの敷設計画、水素の充填ステーション、そして燃料電池や燃焼システムまで、水素の様々なサプライチェーンやインフラが出そろった。 中でも人気を集めたのがドイツRobert Boschの出展や講演だ)。同社は、日本では自動車関連の部品・部材メーカーとしての印象が強いが、水素関連でもサプライチェーン・システムの多くを手掛けている。
2024.05.18
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ウツギ類やコデマリの白い花が見ごろになっている昨今ですが・・・私のブログの画像としているヤブデマリを京都府立植物園に見にいきたいのだが・・・とりあえず、昔の(12年前の)日記を復刻して覗いてみたのです。*********************************************************ドングリ国のウツギ類、コデマリの咲き具合から類推すると・・・・・京都府立植物園のヤブデマリが見頃だろう。連休が過ぎた頃、ここのヤブデマリの見頃に合わすように繰り出すのが大使のパターンなんですが、今年のこのピンポイント予想がバッチリ大当たりでした♪ヤブデマリ1ヤブデマリ2比叡山を借景にしてうっそうとした感じがいいですね。植物園1クスノキの並木もなかなか年季が入っているようです。植物園2東福寺まで足をのばして、「八相の庭」を見てきました。紅葉の名所は、この時期は若葉がきれいで人出も少ないし・・・・気分はええでぇ♪東福寺ちなみに京都府立植物園にてに、2年前のヤブデマリが見られます。
2024.05.17
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今回借りた4冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「手あたり次第」でしょうか♪<市立図書館>・南海トラフ地震の真実・映画の巨人たち リドリー・スコット・中国の論理・宇宙へ(借り出し2回目)<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【南海トラフ地震の真実】 小澤慧一著、東京新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」。ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のためにないがしろにされる科学ー。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。科学ジャーナリスト賞で注目のスクープを書籍化!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/20予約、副本?、予約44)>rakuten南海トラフ地震の真実【映画の巨人たち リドリー・スコット】佐野亨著、辰巳出版、2020年刊<「BOOK」データベース>よりSFから歴史劇まで、幅広い題材を描きながら、人間の悪意や文明論など明確なテーマ性と独自の映像美で、いまなお第一線で活躍し続けるリドリー・スコットーその魅力と本質をさまざまな角度から読み解く!<読む前の大使寸評>「ブレードランナー」「ブラック・レイン」「テルマ&ルイーズ」とくれば・・・もっとも好きな監督になるのかなあ。rakuten映画の巨人たち リドリー・スコット【中国の論理】岡本隆司著、中央公論新社、2016年刊<「BOOK」データベース>より同じ「漢字・儒教文化圏」に属すイメージが強いためか、私たちは中国や中国人を理解していると考えがちだ。だが「反日」なのに日本で「爆買い」、「一つの中国」「社会主義市場経済」など、中国では矛書がそのまま現実となる。それはなぜかー。本書は、歴史をひもときつつ、目の前の現象を追うだけでは見えない中国人の思考回路をさぐり、切っても切れない隣人とつきあうためのヒントを示す。<読む前の大使寸評>理屈のこね方・論理のパターンには日中間に違いがあると注目する著者であるが・・・深みのある洞察ではないか♪rakuten中国の論理【宇宙へ】福田和代著、講談社、2012年刊<「BOOK」データベース>より【目次】職業メンテナンスマン。仕事場は、宇宙!2031年、原田拓海は宇宙へ上がる。天に向かい、まっすぐ伸びていく“宇宙エレベーター”で。誰もが宇宙へ行ける時代の到来。夢のその先には、誰も味わったことのない未知なる“お仕事”が待っていた。 遙かなる宇宙の歌/メンテナンスマンはマタ・ハリの夢を見るか?/アストロノーツに花束を/わが名はテロリスト<読む前の大使寸評>著者は神戸市生まれの理系女性で、宇宙エレベーターに関するハードSFを書いているのがええでぇ♪rakuten宇宙へ
2024.05.17
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在138位・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、副本12、予約373)現在57位・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、副本7、予約177)現在32位・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、副本5、予約126)現在29位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在124位・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、副本?、予約?)現在3位・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、副本?、予約?)現在4位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在49位・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、入荷待ち、予約?)現在20位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在50位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在94位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在47位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)現在8位・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』 (5/14予約、副本2、予約21)<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・李琴峰『彼岸花が咲く島』:第165回芥川賞受賞作(21年)・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・西東三鬼『神戸・続神戸』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・地球の歩き方 日本・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵<予約分受取:2/27以降> ・村上春樹×柴田元幸『翻訳夜話』(2/15予約、2/27受取)・楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』(6/23予約、2/27受取)・川添愛『世にもあいまいなことばの秘密』(1/26予約、2/27受取)・呉叡人『フォルモサ・イデオロギー』(2/03予約、3/11受取) ・森見登美彦『太陽と乙女』(3/23予約、3/31受取)・Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機 (4/16予約、4/28受取)・本川達雄『ウマは走るヒトはコケる』(3/31予約、5/10受取)・南海トラフ地震の真実(10/20予約、5/15受取予定)**********************************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【墨のゆらめき】三浦しおん著、 新潮社、2023年刊<出版社>より実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説! 都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/9予約、副本12、予約373)>rakuten墨のゆらめき【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリン【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろう【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【マルクス解体】斎藤幸平著、 講談社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりいまや多くの問題を引き起こしている資本主義に対する処方箋として、斎藤幸平は、マルクスという古典からこれからの世の中に必要な理論を提示する。本書『マルクス解体』は、マルクスの物質代謝論、エコロジー論、プロメテウス主義の批判から、未来への希望を託す脱成長コミュニズム論までを精緻に語る。これまでの斎藤の活動の集大成であり、同時に「自由」や「豊かさ」をめぐり21世紀の基盤となる新たな議論を提起する書である。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(11/28予約、副本?、予約?)>rakutenマルクス解体【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。一九九〇年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【大学教授 こそこそ日記】 多井学著、三五館シンシャ、2023年刊<「BOOK」データベース>より「いくらでも手抜きのできる仕事」。現役教授が打ち明ける、ちっとも優雅じゃない生活。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/12予約、入荷待ち、予約?)>rakuten大学教授 こそこそ日記【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【アジア発酵紀行】小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊<出版社>よりアジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家) 自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>rakutenアジア発酵紀行【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.05.16
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図書館で『フランス語っぽい日々』という本を、手にしたのです。どこを開いても・・・夫の描くマンガの頁、妻の述べる説明の頁がセットになっていてわかり易くて興味深いのである♪【フランス語っぽい日々】じゃんぽ~る西×カリン西村著、白水社、2020年刊<「BOOK」データベース>より外国語を愛する、外国語に苦しむすべての人に。日仏夫婦が漫画とコラムでつづる、異文化・外国語学習・子育ての悲喜こもごも!<読む前の大使寸評>どこを開いても・・・夫の描くマンガの頁、妻の述べる説明の頁がセットになっていてわかり易くて興味深いのである♪rakutenフランス語っぽい日々海外県のフランス語が語られているので、見てみましょう。p40~41<17 海外県のフランス語 Le francais d‛outre—mer> 歌手のダニエル・バラヴォワーヌは、フランス語はよく響く言語だと言いました。その通り。フランス語は遠くまで響く言語、カナダや太平洋のど真ん中、ニューカレドニア、マルキーズ諸島やタヒチにまで響き渡る言語なのですから。海外県のフランス語に接する機会があると、愕然とすることがしばしばあります。 ラジオ・カナダで時評を担当するわたしが接する人たちは、独自の美しい表現も編み出す見事なフランス語を操るのですが、彼らのなまりやイントネーションに思わず不意を打たれ、つまり、笑いそうになってしまうことがあるのです。 ケベックのフランス語話者たちは、かなり独特な話し方をします。具体的に説明するのは難しいですが、主な特徴のひとつに、巻き舌のRがあります。半分Rのような半分Lのような発音で、日本人のそれと少し似ています。 夫とともに招待されたタヒチのサロン・ド・リーブル(ブックフェア)に訪れたときのこと。タヒチのフランス語話者たちもまた、この巻き舌のR()を使うことを知り、おどろいたのなんの。さらに彼らにはフランス語と現地の言葉を頻繁にしかも絶妙に混ぜ合わせる、一風変わった癖があります。結果、本土のフランス人であるわたしには、彼らの言うことの半分しか理解ができません。 旅先であれ、フランス国内であれ、その土地によって多少なりともなまりはあるもの。よく言われるのはマルセイユ、トゥールーズ、そしてエクサンプロヴァンスのなまり。パリジャンだって「粘ついた」フランス語を話すと言われています。 わたしはといえば、ブルゴーニュ出身、厳密にはヨンヌ県の生まれです。さて、みなさんごぞんじでしょうか。お隣のソーヌ・エ・ロワーヌ県の人たちにもある変わった特徴があるんです。それは、なんと巻き舌のRです。『フランス語っぽい日々』2:新旧のシャンソン『フランス語っぽい日々』1:言葉とは思考の方法
2024.05.16
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図書館に予約していた『ウマは走るヒトはコケる』という新書を、待つこと40日ほどでゲットしたのです。なんか、力学とか流体力学とかも引用しながら説明する箇所があって・・・これまでよりハード志向であり、読むほうにも覚悟が求められているようです。【ウマは走るヒトはコケる】本川達雄著、 中央公論新社、2024年刊<「BOOK」データベース>より背骨と手足を得て、脊椎動物は速く長距離を移動できるようになった。走る、泳ぐ、飛ぶと方法は異なるが、動物それぞれが素早い動きを可能にする体のデザインを持っている。ヒトはコケつつ歩くが、これがめっぽう効率が良くて速い。なぜ?鶏の胸肉はササミよりも3倍も大きい。なぜ?渡り鳥が無着陸で何千kmも飛べる。なぜ?魚やイルカには顎がない。なぜ?皆、納得のいく理由がある。動くための驚きの仕組みが満載!<読む前の大使寸評>なんか、力学とか流体力学とかも引用しながら説明する箇所があって・・・これまでよりハード志向であり、読むほうにも覚悟が求められているようです。<図書館予約:(3/31予約、副本1、予約5)>rakutenウマは走るヒトはコケる「第2章 歩く力・走る力」あたりを見てみましょう。p50~52<ヒトの2足歩行―ヒトはコケながら歩く>■ヒト、恐竜、鳥 ヒトは立ち上がって2足歩行をするようになった。2足歩行の利点として次のようなものが考えられるだろう。①手が自由になった。②高い位置から見晴らせるようになった。③脳を重くしても、真っ直ぐに経っていてその真上に脳が乗っているので、支えるのが楽。④2足でしか立っていないので体が不安定になるが、その不安定さを利用して、歩くエネルギーを節約している。⑤直射日光が当たる面積が小さくなり過熱が防げ、また体が地面から離れているため、暑さ寒さの影響を受けにくい。 2足歩行をしているものには、ヒトの他に恐竜とその子孫である鳥がいる。ただし彼らはバランスの取り方がヒトとは違う。恐竜は永くて太い尻尾をもち、胴も尾もともに水平に保ちながら、重心のある位置あたりから肢を垂直に下ろして立っていたとされる。これはT字のやじろべえの姿勢であり、バランスのとれた安定した姿勢である。 鳥の場合は体を軽くするために長い尻尾を失ったし、飛ぶための強大な筋肉を胸のところにもった。そのため体の重心は股関節よりずっと前に移動した。それでもやじろべえ方式で立つために、大腿骨を水平にして前に向け、膝をほぼ重心の位置までもってきて、その位置で膝を曲げて脛(すね)から先を垂直に下ろした。鳥の肢は一見、われわれのものとは逆向きに膝関節が曲がっているように見えるが、あれは不座ではなくくるぶしの関節である。 鳥も恐竜もやじろべえ方式の安定した姿勢を保っているが、ヒトの場合は胴を垂直に立ててしまったため、トップヘビーの極端に不安定な姿勢になった。その点を逆手にとって省エネしているというのが、ここからの話題である。■胴の形 四肢動物は2つのやじろべえが前後に並んだものと見ることもできる。1つのやじろべえは、頭+「胴の前半分」の水平の棒が、真ん中で前肢に支えられているもの、もう1つは、「胴の後半分」+尻尾の水平の棒が後肢で支えられているやじろべえ。やじろべえだから体が安定する。 さらに頭と胴が釣り合い、また胴と尻尾が釣り合っているのだから、重力で頭や胴が垂れ下がらないようにと筋肉で持ち上げ続ける必要がなくなり、省エネになる。とくに胴は重いものだから、陸の大型動物は胴が真ん中で垂れ下がらないように工夫しなければならず、これが工夫の一つである。 ここで胴の形について考えておきたい。胴はおおまかに見れば前後に長い円柱形だが、断面の形は動物群ごとに違う。魚でもよく泳ぐものたちの胴の断面は幅が狭く背腹に長い楕円形であり、これは胴のくねりで水を押す面積をおおきくしていると解釈できる。 四肢動物の胴でも断面は背腹が少々長い楕円形である。重力で前後の肢の間の腹が垂れ下がらないように脊柱をアーチ状に上に凸にし、脊柱から内臓を吊り下げた。このため横幅より背腹の方が長い。胴は建築学的に見れば梁である。梁とは水平方向の支持材のことで、垂直方向の支持材が柱。胴を梁、肢を柱と観ることができる。梁は重力のかかる方向が厚い方が下にたわみにくい。だから胴も四肢動物のように背腹方向に厚い方が力学的に強くて重力で胴が垂れ下がりにくい。『ウマは走るヒトはコケる』1:ウニの歩行
2024.05.15
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図書館で『空港時光』という本を、手にしたのです。おお 温又柔の短編小説ではないか。日本―台湾の間で出国、帰国を繰り返す台湾系ニホン語人作家の飛翔作とのこと・・・面白そうである。【空港時光】温又柔著、河出書房新社、2018年刊<「BOOK」データベース>より「出発」「日本人のようなもの」「あの子は特別」「異境の台湾人」「親孝行」「可能性」「息子」「鳳梨酥」「百点満点」「到着」…最注目の気鋭が描く、10の物語!エッセイ「音の彼方へ」併録。台湾系ニホン語人作家の飛翔作。<読む前の大使寸評>おお 温又柔の短編小説ではないか。日本―台湾の間で出国、帰国を繰り返す台湾系ニホン語人作家の飛翔作とのこと・・・面白そうである。rakuten空港時光台湾と日本を行き来しながら育ちましたより「音の彼方へ」で入国カウンターでの躊躇を、見てみましょう。p148~150<台湾> タイワン、のイントネーションについて。 日本では、タイワンと尻下がりのイントネーションで発音するのがふつうだろう。タイワンの「ワン」を、ワーン、と平らに伸ばして発音すると、途端に中国語っぽくなる。「タ」を少々濁らせて、「ダイ」と「ワン」をそれぞれ低く抑え込みながら言えば、もう立派な台湾語。(あくまでも私の個人的な感覚です) タイワーン、とダイワン。 日本生まれの妹はときおり混乱するようだが、台湾で生まれ、二歳半まで台北に住み、四歳の春に日本の幼稚園にあがるまではほぼ中国語と台湾語だけを聞いていた私は、どちらが中国語で台湾語なのか瞬時に判る。けれども私は、「台湾」が、日本語ではタイワンと発音すると知ってからは、タイワーンともダイワンとも言わないようになった。 友だちや先生といった日本人に対してはもちろん、たいわんじんである両親や親せきが相手の時も、日本風にタイワンと言うようになった。ほとんど無意識のうちにそうしていた。日本の学校に通うようになり、日本語を習得しつつあった私は、自分でも知らずしらずのうち、自分の中にある非日本的な響きを疎んじるようになっていたのである。 ・・・BR189便が台北松山空港に到着する。いよいよ「台湾」だ。今の私が、台湾、と日本語で思うとき、その「タイワン」という響きは、少なくとも三つのイントネーションを同時に秘めている。飛行機から一歩降りると、まだ建物の中にいるというのに、もう、南の匂いのする風に撫でられている気分がした。東京はあれほど冷え込んでいたのに。 これから国内線に乗り換えて、さらに南の台東へと向かう。まずは「入国」。ここでまた、エイコさんとはいったん別れなければならない。「外國人」の列の最後尾についたエイコさんに、あとでね、と手をふって、「本國人」の列へと向かう。「外國人」の列よりもそれはずっと短かった。 エイコさんや同じ飛行機に乗っていた日本人たちを何人も追い抜いて、その短い列に並ぶのは抜け駆けのようでちょっとうしろめたい。いや、堂々と振る舞えばいい。タイワン。私は、ここでは、外国人ではない。今、手にしているパスポートが、そのまたとない証ではないか。 私は、台湾(ここ)では外国人ではない。 私がそれを最も意識する場所は、空港だ。それも入国カウンターで、だ。何よりもまず、訪れた個人がどこの国家のパスポートを持っているかを問う場所。たとえ私が、どちらかといえば自分は日本人だと感じている、と主張したとしても、それがどうした。審査官は、私がナニジンであるかを私の持つパスポートによって判断する。 前のひとの審査が終わったようだ。赤い線の向こうに踏み出そうかどうか躊躇している私を、早くしろ、とばかりに審査官が見やる。そもそも一段高いところに座っているので、その視線は、どうしてもこちらを見下ろすものになる。審査する側とされる側。される側の私は、なすすべもない。それでも(それだから?)私は、明るく感じよくふるまう。『空港時光』1:出発と再入国
2024.05.15
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図書館で『空港時光』という本を、手にしたのです。おお 温又柔の短編小説ではないか。日本―台湾の間で出国、帰国を繰り返す台湾系ニホン語人作家の飛翔作とのこと・・・面白そうである。【空港時光】温又柔著、河出書房新社、2018年刊<「BOOK」データベース>より「出発」「日本人のようなもの」「あの子は特別」「異境の台湾人」「親孝行」「可能性」「息子」「鳳梨酥」「百点満点」「到着」…最注目の気鋭が描く、10の物語!エッセイ「音の彼方へ」併録。台湾系ニホン語人作家の飛翔作。<読む前の大使寸評>おお 温又柔の短編小説ではないか。日本―台湾の間で出国、帰国を繰り返す台湾系ニホン語人作家の飛翔作とのこと・・・面白そうである。rakuten空港時光冒頭の「出発」の手続きを、見てみましょう。p6~8<出発> IMMIGRATION 出国 DEPARTED 入国審査官―日本国 HANEDA A.P 12 MAR. 2002 真新しいパスポートの一頁に、出国スタンプの判が捺された。ついに、出発だ。大祐(だいすけ)の興奮は募る。搭乗券に印字された搭乗口は「G 05」。Gに続く「0」を、アルファベットの「O」と一瞬みまちがえる。「Go」と「5」で、ゴーゴーか。大祐は可笑しくなる。 搭乗時刻まではあと半時間ほど余裕があった。あたりを見渡せば、名だたるブランド店が連なっている。子どもの頃に祖母や大叔母に連れられておとずれた百貨店の風景ににていると大祐は思う。ちがうのは、そこらじゅうに「免税 duty-free」という文字が躍っているということ。そして、天井まであるガラス窓一枚隔てたむこうには、滑走路が広がっていること。 雲一つない、よく晴れた空にむかって離陸する飛行機が見える。空を斜めによぎりながら遠ざかってゆくその姿を目で追っていたら声がよみがえる。・・・あたし、飛行機は自分が乗る日にだけ飛ぶと思ってたんだ。 かのじょとは、大学一年生のとき、中国語のクラスで知り合った。初回の授業で、就職に役立てたい、とか、三国志演義が好きだから、とか、漢字なら何とか読めそうなので、などいったことを第二外国語に中国語を選んだ理由としてクラスメートたちは答えていた。大祐も自分の番がまわってくるまでに何かそれらしいことを言わなければと思い、あまり深く考えずに、ジャッキー・チェンが好きだから、と答えた。「音の彼方へ」で再入国の手続きを見てみましょう。p138~140<台湾(中国)> 私の国籍。私という個人が属していることになっている国家の名称。それについて考えるとき、私は揺れる。ボールペンを置き、傍らのパスポートを手にとる。私とパスポートの付き合いは長い。考えてみれば三十年近くの歴史がある。三歳になるかならないかの頃からずっと、パスポートは私の身分を証明してきた。私が温又柔であると保証していた。ほかでもない私自身が、お名前は? と訊かれて、オンユウジュウです、と答えることができなかった時期から。 それ以来、一度も途切れることなくパスポートを更新し続けてきた。数えたことはないけれど通算十数冊目であるはずの私のパスポートの表紙には「中華民國 REPUBLIC OF CHINA」と金色の文字が記されている。真ん中あたり(日本のパスポートなら菊の紋章に該当する位置)には、太陽の形のマークが描かれてある。 これは中国国民党の党章を基本とした「中華民國」の「国章」だそう。国章の下側には「TAIWAN護照PASSPORT」とある。以前は「TAIWAN」の表記はなかった。それが記されるようになってからまだ十年も経っていない。(中略) 中華民国(=台湾)外務省の発行したパスポート。表紙に「REPUBLIC OF CHINA」と「TAIWAN」が同時に並ぶパスポート。台湾(=中華民国)じたいが、「中国(CHINA)」と「台湾(TAIWAN)」の間で揺らいでいる。「再入国記録」の国籍蘭には、「Nationality as shown on passport」という英文が添えられている。ただ「国籍」というのであれば「Nationality」だけでいいはずだ。何故「as shown on passport」と続くのだろう。パスポートを持たない人は、どうすればよいのだろう。もちろんそんなことはありえない。「再入国記録」の記入は、(渡航先がどこであろうと)日本からの出国を前提とした行為なのだ。そして、出国には、パスポートの掲示が不可欠なのである。
2024.05.14
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図書館に予約していた『ウマは走るヒトはコケる』という新書を、待つこと40日ほどでゲットしたのです。なんか、力学とか流体力学とかも引用しながら説明する箇所があって・・・これまでよりハード志向であり、読むほうにも覚悟が求められているようです。【ウマは走るヒトはコケる】本川達雄著、 中央公論新社、2024年刊<「BOOK」データベース>より背骨と手足を得て、脊椎動物は速く長距離を移動できるようになった。走る、泳ぐ、飛ぶと方法は異なるが、動物それぞれが素早い動きを可能にする体のデザインを持っている。ヒトはコケつつ歩くが、これがめっぽう効率が良くて速い。なぜ?鶏の胸肉はササミよりも3倍も大きい。なぜ?渡り鳥が無着陸で何千kmも飛べる。なぜ?魚やイルカには顎がない。なぜ?皆、納得のいく理由がある。動くための驚きの仕組みが満載!<読む前の大使寸評>なんか、力学とか流体力学とかも引用しながら説明する箇所があって・・・これまでよりハード志向であり、読むほうにも覚悟が求められているようです。<図書館予約:(3/31予約、副本1、予約5)>rakutenウマは走るヒトはコケるBuNa第1回 ウニの世界より最終章の「第11章 ウニの歩行」あたりから食いついてみようと思う次第です。p269~271<ウニの体はまったくユニーク> 私自身が研究したことにも若干触れて本書を閉じたい。私がもっぱら研究してきたのは棘皮動物、つまりナマコ、ウニ、ヒトデの仲間で、どれもきわめてゆっくりと海底を這う。こんな逃げ足の遅い動物はたいてい隠れているものだが、棘皮動物は海底に露出して暮らし、それでも食われてはいない。そのことは沖縄の海でナマコの多さに驚き、磯焼けの海のウニの多さにうんざりすればわかる。のそのそしていても食われないのはなぜかが、そもそも私の疑問だった。 その答えは3つの手段で身を守っているから。①毒(ナマコやヒトデ)、②硬い殻と棘(ウニ)、③硬さの変わる結合組織(これは棘皮動物すべてにある) ③については説明が要るだろう。ナマコやヒトデの皮(結合組織)は緊急時に非常に硬くなって動物を守る。このような硬さのすばやく変わる結合組織を私は「キャッチ結合組織」と呼んでおり、棘皮動物独特なものである。 ウニにもキャッチ結合組織があり、やはり身を守ることに関係している。ウニの殻はちょうど栗の毬(いが)のように見えるが、栗とは違い棘を動かすことができる。棘は殻の上の小さな丸い膨らみ(いぼと呼ぶ)の上に乗っており、棘といぼの間はボールジョイントそっくりの関節になっている。関節には筋肉があり、これで棘を振り動かす。 関節には筋肉の他に靭帯があり関節の脱臼を防いでいるのは哺乳類の関節と同様だが、この靭帯がキャッチ結合組織なのである。 これは緊急時には硬くなり、棘をガチッと立てて不動にし、槍ぶすまをつくって身を守る。このキャッチ結合組織が私のライフワークだった。だからいかにして動かなくて済むかの研究をずっとやってきたことになる。そんな人間が本書を書いてしまったのだが、移動運動の研究をまったくやらなかったわけではない。 ウニの棘の根元のキャッチ結合組織は固くなって身を守るだけでなく、ふだんは棘の動きのじゃまをしないように柔らかい状態になっている。だから棘を大きく倒して狭い隙間を通り抜けることもできるし、棘を振って歩くウニもいる。大学を定年退職する前の数年間、ウニの歩行の研究をしたのでここに紹介したい。<歩帯> まずウニの体について説明しておこう。ウニの殻はちょっと上下につぶれたボール状であり、これを地球儀に見立てる。殻の頂上が北極(背中側の真ん中)で、ここに肛門がある。口は南極、つまり地面に向いている面の真ん中が口。北極と南極の中間が赤道で、ここが殻の一番太った部分。赤道より下の南半球を口側、北半球を反口側と呼びならわしている。(中略) ウニの体は球形だがやはり5放射相称で、歩帯が5本、放射状に配列している。各歩帯は南極と北極をつなぐ経線に沿って走っており、そこに管足が並んでいる。歩帯と歩帯の間が間歩帯で、ここに歩くための棘がある。ウーム、やはりちょっと専門的すぎるようで、食いつき難いのでおま♪
2024.05.14
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朝日の「歴史学者・網野善彦 没後20年 いま読む意義は」という記事を歴史のファイルにスクラップしたのだが・・・デジタル朝日でも「「日本」とは何か、問い続けた網野善彦 没後20年に読み直す意義」として流れているので、紹介します。また、紙とデジタルデータのダブル保管になったが・・・いつものことで(汗)*********************************************************「日本」とは何か、問い続けた網野善彦 没後20年に読み直す意義より 戦後の歴史学を主導し、新たな日本史像を描き出した歴史学者・網野善彦の死去から20年。今年3月までに主著「中世荘園の様相」と「日本中世の非農業民と天皇」(上・下)がともに岩波文庫で出版され、「無縁・公界(くがい)・楽」増補版など平凡社ライブラリーの各著作も再び注目を集める。「網野史学」の重要な舞台の一つは、被災した能登半島だ。網野と同じ日本中世史の専門家2人に、いま網野の著作を読む意義を聞いた。 ◇ 明治大教授の清水克行さん(52)は網野本人と接した最後の世代。1990年代に学生時代を過ごし、わずかに生前の網野と言葉を交わしたことがある。「誰に対しても分け隔てない豪放磊落(らいらく)な人柄が印象に残っている」 清水さんは当時を「昭和から平成へと天皇の代替わりがあり、天皇の存在をいや応なく意識させられる時代状況があった」と振り返る。「戦争責任を問う左派と戦前を肯定する保守派。そうした緊張関係のもとで網野さんは中世以来の海の民や山の民、芸能民などの非農業民と天皇の関係を論じた。天皇の歴史的なあり方を網野さんのような視点で語る人は他にいなかった」 清水さんは、網野の主要著作の時代背景には、高度成長下で起きた地方農村の衰退と生活スタイルの都市化をふまえる必要があると指摘する。 「網野さん自身、日本各地で農村の変容を目の当たりにしており、民俗学や文化人類学の発想もあった。地震に見舞われた能登半島もその舞台の一つだった」■自由な中世像 2000年代以降に転機 網野は神奈川大学日本常民文化研究所に長く籍を置いた。「古文書返却の旅」(中公新書)に記すように、網野は80年代半ばから約10年かけて、代々庄屋を務めた家に伝わる時国家(ときくにけ)文書(石川県輪島市)の調査に取り組み、独自の歴史像を確立していく。「時国家文書の中には、農民としては貧しい身分とされたが実態は裕福で、日本海側の海運で富を築いた者の姿も確認できる。非農業の営みにより初期の資本蓄積が起きていた」 石高で豊かさを示す江戸時代以来の固定観念を取り払う発想の転換が起きた。 「稲作中心の階級闘争の視点に立つマルクス主義的な歴史観の不自由さから転じた網野さんの議論に多くの読者が魅力を感じ、流動性が高い自由な日本中世像にロマンを抱いた」 高度成長期にヒッピー、バブル期にはフリーターがもてはやされた。97年には網野の影響が色濃い宮崎駿監督の映画「もののけ姫」が公開された。 2000年代に入ると、非正規雇用や格差拡大へと社会の関心が向かった。自由な中世像も転機を迎えていると清水さんは見る。「いま網野さんの著作を読めば、戦乱や飢饉が多い中世の自力救済、いわば弱肉強食の悲惨さにまず目が向かうかもしれない。こども食堂をアジール(聖域・避難所)の歴史的系譜に位置づけることもできる」 清水さんは「天皇の歴史的あり方への関心が低い、天皇を必要としないナショナリズムが浸透し、史実を軽視した物語や陰謀論が目立つ中で、日本の歴史全体を見渡す網野さんの歴史像は価値を失っていない」と見る。■原史料を丹念に 能登は原点の一つ 東京大教授の桜井英治さん(62)は、ともに通史シリーズの編集委員を務めた網野を「純真な人」と形容する。「網野さんの熱量を支えていたのは発見の喜び。売れっ子になってどんなに忙しくても、全国各地にある原史料を丹念に読み解く作業を忘れなかった。能登半島はそうした研究の原点の一つだった」 04年の死の直前まで網野が向き合った問いは「日本とは何か」だった。北方や南方の独自性、東日本と西日本の違いなど「日本」がもつ多様性を強調した。 「網野さんは講演でよく北と南を上下逆にした富山県発行の日本地図を見せた。千島から台湾まで島々が弧を描き日本海は東アジアの内海。能登はその中心に位置する。見方を変えれば辺境が中心だと伝えたかったのでは」(清水さん) 網野の歴史学は必ずしも異端ではない。中世の重層的な土地支配構造を整理した「荘園公領制」の議論は定説とも言える。 桜井さんは網野の著作を読み直す意義を強調する。「網野さんは、人類はいま壮年期にあり壮年期ならではの知恵があるはずとよく語っていた。閉塞感に満ちた時代だからこそ網野さんの言葉は若い世代の心にもきっと響くはずだ」(大内悟史)この記事も網野善彦の世界に収めておくものとします。
2024.05.13
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にぎり寿司、天ぷら、うなぎ、蕎麦など和食が頭の中に満ちてくるわけで・・・『浮世絵に見る江戸の食卓』という本を復刻して読み直してみようと思い立ったのです。*********************************************************図書館で『浮世絵に見る江戸の食卓』という本を手にしたが・・・にぎり寿司、天ぷら、うなぎ、蕎麦など現代でも愛される食文化が江戸時代に確立していたことがすごいと思うわけでおます。【浮世絵に見る江戸の食卓】林綾野著、美術出版社、2014年刊年刊<商品説明>より食のシーンは、浮世絵の世界に度々描かれてきました。鰹の初売り、夏の白玉、雪中の蕎麦屋など。そこには今もなお受け継がれる食文化があり、また失われてしまった食習慣に気づくこともあります。食を描いた浮世絵を紐解きつつ、そのレシピも紹介する一冊。<読む前の大使寸評>にぎり寿司、天ぷら、うなぎ、蕎麦など現代でも愛される食文化が江戸時代に確立していたことがすごいと思うわけでおます。rakuten浮世絵に見る江戸の食卓《園中八撰花 松》屋台で普及した、「天麩羅」を見てみましょう。p30~31<天麩羅> 今まさに食べようとしているのは、海老の天麩羅。くるっとまるまった形、衣の下にうっすら赤い海老の色が透けて見える。尻尾は落とし、薄めの衣で揚げた天麩羅だ。奥には汁を入れた青い器が見える。 天麩羅は、寛永元年に出された、36種の献立を紹介する『歌仙の組糸』に作り方が記されている。魚介に小麦粉と玉子を練った衣をつけ、油で揚げるという方法は今とあまり変わらない。『守貞マン稿』によると具材は「あなご、芝ゑび、こはだ、貝の柱、するめ」など。 魚介を揚げたものを天麩羅と呼び、野菜を揚げたものは、野菜揚げ、精進揚げなどと呼ばれた。国芳がこの絵を描いた頃、天麩羅はすっかり江戸の屋台料理で定番となっていた。 火事の多い江戸では、室内で油を使うことは禁じられていたため、屋台でまずは普及し、値段も安かった。蕎麦屋で蕎麦が一杯十六文、そこに芝海老の天麩羅を3、4つのせると三十二文。江戸の屋台や蕎麦屋で天麩羅は気軽な食べ物として親しまれたのだ《源氏雲浮世画合 桜丸女房八重》お次は家庭料理でもある白和えを見てみましょう。p68<すり鉢の恩恵 濃厚な江戸の白和え> 歌舞伎『菅原伝授手習鑑』の1シーンを描いたこの絵では、大きなすり鉢とすりこぎが存在感を放つ。桜丸の妻である八重は、ある祝宴のためにこれから料理の腕を振るうところである。微笑みながらすりこぎを手にする姿は、「さあ、これから料理しよう」という気負いを感じさせる。 江戸時代、丹波焼や堺の湊焼など、丈夫なすり鉢が出回るようになり、庶民にも普及し、料理の幅がぐっと広がった。豆腐、味噌、胡麻、それぞれをすり鉢でする白和えは、江戸で親しまれた豆腐料理のひとつ。『豆腐百珍続編』にも登場し、魚介類を和える調理法が紹介されている。普段の食材に、もう一手間かけるだけでできる気の利いた一品である。『浮世絵に見る江戸の食卓』2:『浮世絵に見る江戸の食卓』1:■2018.11.04XML『浮世絵に見る江戸の食卓』2https://plaza.rakuten.co.jp/foret/diary/201811040000/
2024.05.13
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図書館で『フランス語っぽい日々』という本を、手にしたのです。どこを開いても・・・夫の描くマンガの頁、妻の述べる説明の頁がセットになっていてわかり易くて興味深いのである♪【フランス語っぽい日々】じゃんぽ~る西×カリン西村著、白水社、2020年刊<「BOOK」データベース>より外国語を愛する、外国語に苦しむすべての人に。日仏夫婦が漫画とコラムでつづる、異文化・外国語学習・子育ての悲喜こもごも!<読む前の大使寸評>どこを開いても・・・夫の描くマンガの頁、妻の述べる説明の頁がセットになっていてわかり易くて興味深いのである♪rakutenフランス語っぽい日々カリンが新旧のシャンソンについて述べているので、見てみましょう。p78~79<35 シャンソンで Èn chanson> 外国語の学習法でつい忘れがちなものに「歌 chanson」がある・・・息子が日本語で童謡を歌っているのを聞くたびそう思います。それまでは知らなかったけれど、日本のちびっ子たちがみんな知っている節回しのおかげで自然と覚えることができた言葉が童謡にはたくさんあります。 息子は歌でアルファベットを覚え、フランス語で10まで数えることもできるようになりました。言語にはその言語固有のメロディーというものがあって、たとえ何も理解できないとしても、よく聞いてそのリズムやイントネーションを覚えることが肝要。子どもは見事にそれをやってのけます。 日本人にとって「シャンソンchanson」といえば特定のカテゴリーを思い起させます。それは、必須の作詞家や歌い手の名とともに刻まれた1940~80年代のフランスの流行歌。シャルル・トレネ、ジョルジュ・ブラッサンス、ジャック・ブレル、セルジュ・ゲンズブール、エディット・ピアフ、ジュリエット・グレコ、シルヴィ・バルタン、ジェーン・バーキン、フランソワーズ・アルディ・・・以下略。 日本にはフランス好きの小さなアマチュア歌手グループが数多くあり、みなこうしたアーティストたちのシャンソンを覚え、たがいに感染力の強い熱心さで分かち合っていることにいつも驚かされます。 想像してみてください。パリのあちこちで演歌のリサイタルを開く、何十ものフランス人集団があるでしょうか。 いっぽうで、これらアーティストの全盛期以降もフランスの歌謡曲はかなり進化しているのに、残念ながらバンジャマン・ビオレ、ドミニク・A、ブリジット、ケレン・アン、クリスティーヌ・アンド・ザ・クイーンズといった才能豊かな彼らの後継者たちは、日本ではほとんど知られていません。 バンジャマン・ビオレに「東京の椅子 Une shaise a Tokyou」という歌がありますが、最近のアーティストたちはまだまだ日本では人気の座を獲得できていません。ぜひ一度聞いてみてください。きっと耳に残るはずです。イヴ・モンタン、ジャック・ブレル、エディット・ピアフ、シルヴィ・バルタンなどをよく聞いたが・・・最近のシャンソン歌手はさっぱり知らないのです。1940~80年代以降のシャンソンについては聞く機会がなくなったのだが、メディアが取り上げないためか、フランコフォニーの意気消沈のためか?『フランス語っぽい日々』1:言葉とは思考の方法
2024.05.12
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図書館で『フランス語っぽい日々』という本を、手にしたのです。どこを開いても・・・夫の描くマンガの頁、妻の述べる説明の頁がセットになっていてわかり易くて興味深いのである♪【フランス語っぽい日々】じゃんぽ~る西×カリン西村著、白水社、2020年刊<「BOOK」データベース>より外国語を愛する、外国語に苦しむすべての人に。日仏夫婦が漫画とコラムでつづる、異文化・外国語学習・子育ての悲喜こもごも!<読む前の大使寸評>どこを開いても・・・夫の描くマンガの頁、妻の述べる説明の頁がセットになっていてわかり易くて興味深いのである♪rakutenフランス語っぽい日々カリンが「言葉とは思考の方法」と述べているので、見てみましょう。p104~105<47 言語を替える、考え方が変わる Parler une autre langue, c‛est repenser> 外国語を学ぶ、それは単に母語の単語や文を別の言語で仕立て直すだけのkとではなくて、コンピュータのOSをすぱっと変えてしまうようなもの。わたしは日本で毎日そう実感しています。言葉とはつまり思考の方法。 いえ、もちろん、翻訳でも言いたいことはそこそこ伝わりますが、それで外国の社会に溶け込むことにはなりません。フランス人にとっては日本の場合が特にそう。なぜなら日本語を深く勉強すればするほど、わかってくるのです。解釈の余地の大きい曖昧な表現や遠回しの言い方が、この言語ではどれほど好まれていることか。 非常に直截な表現もたしかに存在します。だけど公の場やテレビ、政治家の演説では、こみいった文の言い回しや「~ではないかと思います」といった否定疑問表現のほうが重宝されます。 フランス語では、俗に言う「鍋のまわりをうろうろtourner autour du pot(遠回しの言い方を)」することは少なく、「言葉をもごもごmacher ses mots(歯に衣を着せ)」もしません。フランス人の意識では、それは失礼ではなく、率直であり、大人だということです。日本では逆に、習得した社会慣習のフィルターを通さず、考えをダイレクトに表現するのは、子供にしか許さない、幼稚なふるまいとみなされます。 そんなわけで、フランス人女性が日本に来て、母語同様にズバズバ日本語でものを言うと、どこか子どもじみた印象をあたえます。いっぽう、パリに来た日本人が、自分の本心をフランス語ではっきりと言い表さなかったら、人間が未熟だと思われます。
2024.05.12
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今回借りた3冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「手あたり次第」でしょうか♪<市立図書館>・ウマは走るヒトはコケる・空港時光・フランス語っぽい日々<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【ウマは走るヒトはコケる】本川達雄著、 中央公論新社、2024年刊<「BOOK」データベース>より背骨と手足を得て、脊椎動物は速く長距離を移動できるようになった。走る、泳ぐ、飛ぶと方法は異なるが、動物それぞれが素早い動きを可能にする体のデザインを持っている。ヒトはコケつつ歩くが、これがめっぽう効率が良くて速い。なぜ?鶏の胸肉はササミよりも3倍も大きい。なぜ?渡り鳥が無着陸で何千kmも飛べる。なぜ?魚やイルカには顎がない。なぜ?皆、納得のいく理由がある。動くための驚きの仕組みが満載!<読む前の大使寸評>なんか、力学とか流体力学とかも引用しながら説明する箇所があって・・・これまでよりハード志向であり、読むほうにも覚悟が求められているようです。<図書館予約:(3/31予約、副本1、予約5)>rakutenウマは走るヒトはコケる【空港時光】温又柔著、河出書房新社、2018年刊<「BOOK」データベース>より「出発」「日本人のようなもの」「あの子は特別」「異境の台湾人」「親孝行」「可能性」「息子」「鳳梨酥」「百点満点」「到着」…最注目の気鋭が描く、10の物語!エッセイ「音の彼方へ」併録。台湾系ニホン語人作家の飛翔作。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten空港時光【フランス語っぽい日々】じゃんぽ~る西×カリン西村著、白水社、2020年刊<「BOOK」データベース>より外国語を愛する、外国語に苦しむすべての人に。日仏夫婦が漫画とコラムでつづる、異文化・外国語学習・子育ての悲喜こもごも!<読む前の大使寸評>どこを開いても・・・夫の描くマンガの頁、妻の述べる説明の頁がセットになっていてわかり易くて興味深いのである♪rakutenフランス語っぽい日々
2024.05.11
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在145位・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、副本12、予約373)現在64位・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、副本7、予約177)現在34位・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、副本5、予約126)現在33位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在130位・南海トラフ地震の真実(10/20予約、副本?、予約44)現在2位・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、副本?、予約?)現在3位・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、副本?、予約?)現在4位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在51位・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、入荷待ち、予約?)現在22位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在50位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在95位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在47位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・李琴峰『彼岸花が咲く島』:第165回芥川賞受賞作(21年)・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・西東三鬼『神戸・続神戸』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・地球の歩き方 日本・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』<予約分受取:2/04以降> ・絲山秋子『御社のチャラ男』(1/27予約、2/04受取)・村上春樹×柴田元幸『翻訳夜話』(2/15予約、2/27受取)・楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』(6/23予約、2/27受取)・川添愛『世にもあいまいなことばの秘密』(1/26予約、2/27受取)・呉叡人『フォルモサ・イデオロギー』(2/03予約、3/11受取) ・森見登美彦『太陽と乙女』(3/23予約、3/31受取)・Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機 (4/16予約、4/28受取)・本川達雄『ウマは走るヒトはコケる』(3/31予約、5/10受取)**********************************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【墨のゆらめき】三浦しおん著、 新潮社、2023年刊<出版社>より実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説! 都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/9予約、副本12、予約373)>rakuten墨のゆらめき【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリン【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろう【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【南海トラフ地震の真実】 小澤慧一著、東京新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」。ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のためにないがしろにされる科学ー。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。科学ジャーナリスト賞で注目のスクープを書籍化!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/20予約、副本?、予約44)>rakuten南海トラフ地震の真実【マルクス解体】斎藤幸平著、 講談社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりいまや多くの問題を引き起こしている資本主義に対する処方箋として、斎藤幸平は、マルクスという古典からこれからの世の中に必要な理論を提示する。本書『マルクス解体』は、マルクスの物質代謝論、エコロジー論、プロメテウス主義の批判から、未来への希望を託す脱成長コミュニズム論までを精緻に語る。これまでの斎藤の活動の集大成であり、同時に「自由」や「豊かさ」をめぐり21世紀の基盤となる新たな議論を提起する書である。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(11/28予約、副本?、予約?)>rakutenマルクス解体【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。一九九〇年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【大学教授 こそこそ日記】 多井学著、三五館シンシャ、2023年刊<「BOOK」データベース>より「いくらでも手抜きのできる仕事」。現役教授が打ち明ける、ちっとも優雅じゃない生活。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/12予約、入荷待ち、予約?)>rakuten大学教授 こそこそ日記【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.05.11
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<男の友情、女の友情・・・2本立て館>久々にくだんの2本立て館に繰り出したが・・・・今回の出し物は「カラオケ行こ!」と「テルマ&ルイーズ」であり、館主の設けたテーマは「男の友情、女の友情」となっています。「テルマ&ルイーズ」を映画館で再度(4回目)観るために、「カラオケ行こ!」の方はオマケの映画として繰り出したのですが・・・なるほど、館主は「男の友情、女の友情」としてこの2作品を選んだのか♪、と感心したのです。【テルマ&ルイーズ】リドリー・スコット監督、1991年米制作、2024.5.9観賞<Movie Walker作品情報>より旅の途中での偶発事件をきっかけに、鮮やかに自己を解放していく女性2人を描いた女だけのロードムービー。監督は「ブラック・レイン」のリドリー・スコット。製作はスコットとミミ・ポーク、脚本はカーリー・クォーリ、撮影はエイドリアン・ビドルが担当。出演はスーザン・サランドン、ジーナ・デイビスほか。〈ストーリー〉アーカンソー州の小さな町に住む、子供のいない専業主婦テルマ(ジーナ・デイビス)と、ウェイトレスとして独身生活をエンジョイするルイーズ(スーザン・サランドン)の2人は、退屈な日常に別れを告げドライブヘ出掛けた。夕食を取るためカントリー・バーへ立ち寄るが、悪酔いしたテルマは調子に乗り、店の男ハーランと姿を消す。行方を追い駐車場へ向かったルイーズは、レイプされかかっているテルマを発見、ハーランに銃弾を撃ち込んだ。週末旅行から一転、逃避行へと化したものの有り金がない。仕方なくルイーズは恋人のジミーに助けを求めた。一方テルマは夫のダリルに連絡を入れるが、身勝手な夫は一方的に責めるばかり。<大使寸評>レイプされかかっているテルマのエネルギッシュなシーンもあったり、ルイーズのために理由も聞かずに大金を届けるジミーの優しさもあったり、悪化する状況にもかかわらずこの2人の逃亡犯を信じてやまないハル警部など・・・ルイーズが死を選ぶ際の潔さはやや短絡的に思ったりもするが、よくできたシナリオだと思うのです。Movie Walkerテルマ&ルイーズYouTube『テルマ&ルイーズ』90年代ロードムービーの金字塔この映画館ではいつもは幕間にお昼の弁当を食べるのだが・・・・今回は時間帯の関係で、入館前に立ち食いうどんで済ませました♪【カラオケ行こ!】山下敦弘監督、2024年公開、2024.5.9観賞<Movie Walker作品情報>より歌が上手くなりたいヤクザと真面目だけど毒舌な合唱部部長の男子中学生の奇妙な友情を描く和山やまの人気同名漫画を実写映画化。監督を『味園ユニバース』の山下敦弘、脚本を「MIU404」の野木亜紀子が務める。ヤクザの成田狂児を『亜人』の綾野剛が、合唱部部長の岡聡実をオーディションで選ばれた齋藤潤が演じる。〈ストーリー〉合唱部部長の岡聡実は、突然見知らぬヤクザの成田狂児からカラオケに誘われ、歌のレッスンをしてほしいと頼まれる。狂児がいる組のカラオケ大会で最下位になった者には恐怖の罰ゲームがあり、それを回避するため上手くなりたいという。聡実は嫌々ながらも、狂児の勝負曲であるX JAPANの「紅」の歌唱指導を行うことになるが、いつしかカラオケを通じて2人の関係に変化が訪れる。<大使寸評>カラオケの出来が悪いと、手の甲に入れ墨を入れられたり小指を切られたりするヤクザ社会のシーンが描かれる、ビックリ仰天のオマケ映画はスタートするわけで・・・途中で出ようかとも思っていたのだが、脚本、監督の意欲に圧倒されたというか、結局、最後まで観た次第です。館主は「男の友情」映画と捉えたようだが・・・言えてるかも。Movie Walkerカラオケ行こ!音楽が人生を変える・・・2本立て館あなたがいない世界を・・・2本立て館:「テルマ&ルイーズ」3回目パルシネマ上映スケジュール
2024.05.10
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季刊マンガ誌「COMICばく」が刊行されていた当時、この雑誌を見たことはなかったのだが、つげ義春をメインに据えた純文芸誌的スタンスがいいではないか♪・・・ということで以下のとおり復刻して読み直してみましょう。*********************************************************図書館で『「COMICばく」とつげ義春』という本を、手にしたのです。マンガ界における純文芸誌ってか・・・執筆者につげ兄弟、杉浦日向子、林静一らのビッグネームも見える凄い雑誌やないけ♪ほとんど独力で、この雑誌を出版した著者も凄いけど。【「COMICばく」とつげ義春】夜久弘著、ベネッセコ-ポレ-ション、1989年刊<「BOOK」データベース>より1984年に創刊され、87年までの4年間に15号刊行された季刊マンガ誌「COMICばく」は、強烈な個性をもった作家をずらりと並べた〈マンガ界における純文芸誌〉として、熱狂的ファンの支持をうけた。その「COMICばく」の看板ともいえたのがつげ義春で、寡作をもって鳴る彼が毎号(!)作品を発表するということ自体、重大事件と呼んでも決しておおげさではなかった。本書は、ほとんど独力で雑誌を作りつづけた著者が、創刊からやむなく休刊にいたるまでの迂余曲折を綴った、「もうひとつのマンガ史」である。<読む前の大使寸評>マンガ界における純文芸誌ってか・・・執筆者につげ兄弟、杉浦日向子、林静一らのビッグネームも見える凄い雑誌やないけ♪ほとんど独力で、この雑誌を出版した著者も凄いけど。rakuten「COMICばく」とつげ義春『ばく』最終号あたりを、見てみましょう。p206~210<ついにギブアップ> 1987年9月18日、ぼくはつげ義春と調布の深大寺にいた。 『ばく』最終号に掲載するためのインタビューを行なうためだった。つげ義春は3ヶ月前に14号に掲載する原稿を手渡し、ギブアップを宣言していた。 「今までなら、不安神経症で自分が悩んでいても、女房は夜久さんと同じで原稿描け描けと尻を叩くんだけど、今は休めっていってるんですよ。今回はそれぐらい症状が重いのね」 ぼくは奥さんにならったわけではなかったが、もう引き留めようとは思わなかった。『ばく』を出すことに、ぼく自身も疑問をもちはじめていたところだった。 つげ義春は終始『ばく』に苦しみつづけていた。日本文芸社も『ばく』の存在が重荷になっていた。そしてぼくもはっきりいえば苦しかった。みんなそれぞれの立場で懸命になって苦しんでいたのだ。 もうみんな苦しみから解放されてもいいんじゃないだろうか、そういう時期に来ているんじゃないだろうか、ぼくはそう思った。 2時間余にわたるインタビューを終えて、つげ義春とぼくは駅へ向かった。 「終わりましたね」 「そうね」 そんなことばをかわして、ぼくらは、ただ黙々と歩きつづけた。<夢の終わり> ぼくは、最終号の編集後記を次のようにしめくくった。 ☆…空を飛ぶ夢をよく見ます。小高い丘のような場所から、地を蹴って体を水平にすると、ふんわりと自分が宙に浮くのです。意志を働かせれば、思い通りに中空を遊泳できます。無重力、浮遊感を味わうのはなかなかの快感です。 ときどき恐いことが起こります。いつのまにか自分はとてつもなく高所に舞い上がっているのです。こんなところから落下したら、ひとたまりもないぞ、思うと同時に自分の体は地上に向かって急降下を始めています。ビルや道路や樹木がどんどん大きくなって眼の前に迫ってきます。ああっ! ぼくは声にならない声をあげ、8割がた観念をする。残りの2割に現実の意識が入りこむ。「これは夢なんだ、やがて覚めてしまう夢なんだ」…と。(中略) ☆…街を歩けば、あちらこちらにその日に発売されたマンガ誌が捨てられています。ぼくの女房がいいました。「マンガ誌なんて、ああやって読み捨てにして惜しくない値段、だからマンガ誌なのよ」たぶん、それは現実に見合った正解なのだろう。だとすれば、正反対の条件を持ち合わせた『ばく』の苦戦は自明の理で、敢えて存在を世に問うこともなかったのかもしれない『ばく』最終号について、くだんのフォームで紹介します。【『COMICばく』第15号休刊最終号】季刊雑誌、日本文芸社、1987年 <ヤフオク☆おすすめポイント>より 『COMICばく』は1984年から1987年までの4年間に、わずか15号巻のみ刊行された伝説の季刊マンガ誌の最終号です。強烈な個性をもったガロ系作家をずらりと並べ、マンガ界における純文芸誌として、熱狂的ファンの支持をうけた漫画雑誌で、こちらは休刊となる最終号となります。最終第15号には、創刊のきっかけともなったつげ義春先生の希少な写真付きロングインタビューが掲載されております。発行部数も限られたシュールでコアな漫画誌の最期の発刊部ですので、お探しの方にオススメの一冊です。 <読む前の大使寸評>【ご注意】ヤフオクは1987円で終了しています。yahoo『COMICばく』第15号休刊最終号『「COMICばく」とつげ義春』1:杉浦日向子の登場『「COMICばく」とつげ義春』2:「石を売る」の原稿を受けとった『「COMICばく」とつげ義春』3:在庫はゼロになったけど
2024.05.10
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図書館で『地図で見るロシアハンドブック』という本を、手にしたのです。この本は2022年のウクライナ侵攻前に発刊されているが・・・2014年のクリミア半島侵攻には触れているので借りた次第です。【地図で見るロシアハンドブック】パスカル・マルシャン著、原書房、2021年刊<「BOOK」データベース>よりロシアの現状が一目瞭然でわかるアトラス!ウクライナ危機、国境の変化、世界の新たな均衡など、今日のロシアの地政学的利益が一目でわかる。<読む前の大使寸評>この本は2022年のウクライナ侵攻前に発刊されているが・・・2014年のクリミア半島侵攻には触れているので借りた次第です。rakuten地図で見るロシアハンドブック「ロシアの地政学的利点」から「極東のロシア」を、見てみましょう。あくまでもフランス人著者の見方ですが。p176~179<空白地域を管理する> エニセイ川より東の極東と東シベリアでは、1000万平方キロメートルの面積に1550万人の住民しかいない。1989年には1670万人だった。大多数を占めるロシア人は西に戻っていく傾向があり、数少ない先住民族はあまり多産ではない。この空白地域に隣接するのが、人口13億人の中国をふくむ世界でもっとも人口密度が高い地域である。 中国人移民はアメリカやヨーロッパ、アフリカなど、もっと温暖で実入りのいいところへの移住を好むので、ロシアへはほとんど入ってこない。 1990年代にはイルクーツク、ノヴォシビルシク、コムソモリスク・ナ・アムーレにあるスホーイ社の工場が、インドなどアジア諸国に作戦機を大量に輸出した。西部にある工場ではおこなわれなかった近代化がなされたのである。 現在、航空機産業の復興はこれらの工場にかかっている。最新型の戦闘機(Su—34、Su—35、Su—57)や、ソ連崩壊後に設計された民間旅客機、スーパージェット100やイルクートMS—21の製造がおこなわれている。 ロシア政府は2006年にヴォストチヌイ宇宙基地の建設をけっていした。2020年にはロシアのほとんどすべての有人飛行を担うことになるだろう。ロシアの民間船舶建造の刷新は、とくに韓国からの技術移転がおこなわれることになっているヴラジオストクのズヴェズダ造船所に託されている。将来のロシア製砕氷船の製造もうけおっている。(中略)<国境紛争> アムール川とウスリー川に沿った現在のロシアと中国の国境は、1858年のアイグン条約で定められたものだ。この条約は19世紀にヨーロッパの列強に押しつけられた「不平等条約」と中国がよんでいるもののひとつである。1969年には、ウスリー川流域でロシアと中国との軍事衝突が起こった。その後、国境が画定され、承認された。 中国は、東シベリアの豊富な鉱物資源に触手を伸ばしたいという気持ちはあるかもしれないが、これほど広大で過酷な地域の管理コストを負担するのは避けたいところだろう。いずれにしても、この地域からの販路としては中国や東アジアしかない。(中略) いっぽう、ロシアと日本の領土問題は数世紀前から続いている。千島列島は1644年から日本地図に描かれている。日本人は列島南部を支配し、ロシアのロシアのアザラシ猟師たちは北部にやってきていた。 1855年の下田条約(日露和親条約)で、列島北部はロシアに、列島南部は日本に割りあてられた。国境線は択捉島とウループ島(得撫島)のあいだを通っていた。 1875年のサンクトペテルブルク条約(樺太・千島交換条約)で、日本は千島列島すべてを獲得し、ロシアは樺太(サハリン)の統治権を得た。1905年にロシアが敗北したとき、ロシアは樺太北部の領有権を保持し、日本が樺太南部の支配権を得た。 1945年、ソ連軍が千島列島と樺太を占領した。樺太については日本から意義は唱えられなかった。1946年、ソ連は千島列島全体を併合し、南の4島に住んでいた1万7000人の日本人を追放した。1951年、サンフランシスコ講和条約により、日本は千島列島北部を放棄したが、南部の4島(歯舞、色丹、択捉、国後)はそうではない。 両国のあいだにはいかなる平和条約も結ばれていない。 2019年はじめ、日本の報道機関は、安倍晋三首相の発言にもとづいて、返還合意が間近にせまっていると報じた。このうわさは、ロシアのモスクワや、千島列島が属するサハリン州で抗議運動をひき起こした。『地図で見るロシアハンドブック』1:2014~19年のウクライナ
2024.05.09
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図書館で『地図で見るロシアハンドブック』という本を、手にしたのです。この本は2022年のウクライナ侵攻前に発刊されているが・・・2014年のクリミア半島侵攻には触れているので借りた次第です。【地図で見るロシアハンドブック】パスカル・マルシャン著、原書房、2021年刊<「BOOK」データベース>よりロシアの現状が一目瞭然でわかるアトラス!ウクライナ危機、国境の変化、世界の新たな均衡など、今日のロシアの地政学的利益が一目でわかる。<読む前の大使寸評>この本は2022年のウクライナ侵攻前に発刊されているが・・・2014年のクリミア半島内戦には触れているので借りた次第です。rakuten地図で見るロシアハンドブック「ウクライナⅡ」で2014~19年のウクライナを、見てみましょう。p133~136<クリミア半島> 14世紀から19世紀にかけて、クリミア半島はクリミア・タタール人の手中にあった。彼らのたえまない襲撃は、1571年にはモスクワにまでおよび、数百万人のスラブ人がオスマン帝国で奴隷となった。その後、[彼らのクリミア・ハン国は]ロシア皇帝エカチェリーナ2世の軍勢に征服され、タヴリダ県としてロシア帝国に組みこまれた。 おもにロシア人が住むクリミア半島は、1924年にボリショヴィキが「共和国」(主権をもたない)からなる連邦を結成したとき、ウクライナ・ソヴィエト社会主義共和国ではなく、ロシア・ソヴィエト社会主義共和国にふくまれていた。 1954年、自身もウクライナ人であるフルシチョフは、「ウクライナ」(実際には当時はドニエプル地方のみ)とロシアの連合300周年を機に、クリミア半島をウクライナにゆずることを決めた。おもにロシア人であるクリミア半島の住人は、同じソヴィエト連邦の国にとどまっていたので、ほとんど反発はなかった。1992年にウクライナが独立したとき、クリミア当局と住民はロシアへの帰還を求めた。ロシア議会はこれを受け入れたが、エリティンは拒否した。1990年代を通じて、クリミアとキエフの関係はきわめてむずかしいものとなった。スターリンによって中央アジアに強制移住させられた少数民族のタタール人は、この10年のあいだに自分たちの土地にもどってきた。 2014年2月21日にキエフでクーデターが起こったあと、新政権に抵抗する住民の反乱が最初に起きたのは、クリミアだった。ロシア軍の支援のおかげでこの反乱は成功をおさめる。クリミアは住民投票をおこなって3月11日に独立、16日にロシア領への編入を宣言した。ウクライナ東部のドンバスでも反乱が起こった。2014年6月、ウクライナで内戦が勃発する。<2014年の危機とモスクワとの段階的な関係凍結> 2014年6月に前倒しでおこなわれた大統領選挙(EUの調停による2月21日の合意でまもられたただひとつの点だ)では、ペトロ・ポロシェンコが第1回投票で過半数を得て当選した。危機の中にあって、対立する両陣営と話すことができる唯一の指導者だった。西部でも東部でも、内戦の広がりをおそれていた国民は彼に信頼をよせた。 しかしウクライナは、厳しい経済状態にあった。ソ連から受け継いだ軍需産業では、まだ20万人近くが働いており、ロシアの軍需産業とも密接な関係をたもっていた。ところが、ウクライナ政府がNATOとつながりを持つ可能性があるというだけで、ロシアは共同プロジェクトをすべて中止したのである。 ウクライナのユージュノエ(設計局)=ユージュマシュ()グループは、ロシアの新型ICBM「トポル」の製造に協力することになっていたが、その計画はすぐにロシアの工場に移管された。このグループはソ連の3つの大型打ち上げロケットのひとつ、「ゼニット」も設計・製造していた。だがバイコヌール宇宙基地にも立ち入れなくなった。予定されていたブラジルとの協力関係も、資金不足から2015年に解消された。ウクライナの花形産業は壊滅させられた。 ソ連のアントノフ設計局を前身とする航空機メーカー、アントーノウは、2014年にすでに困難な状況にあった。2010年から2012年にかけて,6機しか販売していなかったのだ。(中略)<2019年、窮地> 2019年4月、ウクライナ政府は新たなロシアからの輸入禁止、ロシア語の使用を制限する措置、ロシアのおよそ10の出版社のウクライナでの販売禁止などを決定したのである。これに対してロシアは、ウクライナからのパイプライン管の輸入および、ロシアからウクライナへの輸出の70パーセントを占めている石油製品(40億ドル)と石炭(15億ドル)の輸出を禁止することを決定した。選挙前夜には緊張関係が頂点に達していた。 だがペトロ・ポロシェンコは2019年の4月の大統領選挙で、政治経験のないコメディアンに敗北した。ウォロディミル・ゼレンスキーは、支持政党をもたず、相手候補を支持する現行議会にはばまれながらも、73パーセントの票を獲得して大統領に選ばれた。 彼は議会を解散し、2019年7月にウクライナ最高議会選挙をおこなうことを決め、勝利した。しかし、選挙で大きなテーマとして掲げていた反汚職を実現できるかについては、懐疑的な見方をされている。 彼はきわめて悪化した経済状況を受け継いだ。モスクワとの対立は、とくにウクライナの経済にダメージをあたえている。2019年5月20日にゼレンスキー氏が大統領に就任したが、そのあたりのことがコメディアンから「戦時下の大統領」にで見られます。また、ロシアによるゼレンスキー氏暗殺計画を阻止、「スパイ」2人逮捕という気になる報道も出ています。
2024.05.09
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図書館で『外国人記者が見た平成日本』という本を、手にしたのです。どこを開いても・・・外国人記者による見慣れない視点が出て来るわけで、興味深いのである♪【外国人記者が見た平成日本】ヤン・デンマン著、ベストセラーズ、2018年刊<出版社>より現代日本に蔓延している悪性のニヒリズムはいったいどこから来ているのか? これほどまでに高まっている「不信感」はどうすればよいのか? 『週刊新潮』の名物コラム「東京情報」の執筆者で自称オランダ人記者ヤン・デンマンによる珠玉の平成日本の比較文化論。<読む前の大使寸評>どこを開いても・・・外国人記者による見慣れない視点が出て来るわけで、興味深いのである♪rakuten外国人記者が見た平成日本「第5章 日本のジャーナリズムの弱点」で反捕鯨カルトを、見てみましょう。p324~327<イルカをめぐる雑音> 世界動物園水族館協会(WAZA)がイルカの追い込み漁を残酷だと問題視し、それを受けて日本動物園水族館協会(JAZA)が、和歌山県太地町産のイルカの入手を禁止したという。先日S・P・I本社に送った記事をもとに、一人の外国人特派員の立場からこの問題を考えてみたい。 食文化は、宗教と密接にかかわるものだ。ご存じのように、イスラム諸国では豚を食べることはない。彼らからすれば、日本のトンカツは論外である。日本でも仏教の影響で、明治までは四つ足のものは口にせず、たんぱく質は豆腐や納豆などで摂っていた。 中国は儒教の影響が強く、タブーがないので、なんでも食べる。「四つ足で食べないものは机だけ」と言われるように、犬や猫も食べる。 それではキリスト教諸国はどうか。 日本の捕鯨に一部の欧米人は文句を言うが、これも完全に宗教問題である。聖書の「ヨブ記」には、神がヨブに様々な試練を与える様子が描かれている。そこにクジラが登場するが、「神はクジラを遣わした」との記述がある。つまり、「神の遣いを獲ってはならない」というわけだ。 もっとも、欧米人は長年にわたり捕鯨を続けていた。その言い訳はすでに用意されている。メルヴィルの小説『白鯨』にはこうある。「我々はクジラを殺して、その油を絞る。その油はランプの灯となり、各家庭の中で、その光で神の言葉を読むのだ」<「恵比寿信仰」> 日本の捕鯨やイルカ漁も宗教と深い関係がある。 イルカ漁は和歌山だけでなく、熱海や能登、千葉でも行われてきた。ただし、必要最小限の量を捕獲し、その場で消費する。 私は取材した漁師から「恵比寿信仰」を教えてもらった。 釣竿を持ち鯛を掲げる恵比寿様は、漁師の神様でもある。その信仰においては、自分たちの浦に流れ着いたものは、神からの恵みであり、ありがたく頂かなければならない。 日本ではイルカもクジラも神の贈り物とされてきたのである。伊勢神宮の遷宮の際に使われる御物のひとつにクジラのひげがある。欧米が日本の捕鯨にケチをつけるのは、伝統文化への侵略に他ならない。 若い頃からクロード・レヴィ=ストロースの思考に馴染んでいた私は、自分たちと異なる風習を「野蛮だ」と切り捨てる態度がいかに野蛮なものであるか、身にしみて感じていた。 宗教により食文化が異なるのは当然であり、他国に口を出すのは慎むべきである。 私は日本でイルカやクジラを食べることに、それほど抵抗はなかった。千葉の九十九里に住む友人は、子供の頃、「イルカのタレ」というおやつがあったという。イルカの肉をしょうが汁に漬けて臭みをとり、しょうゆに漬けて天日干ししたものだ。これを炙れば酒の肴にもなる。 クジラも旨い。日本人は肉、骨、ひげ、皮にいたるまで、目玉以外はすべてを活用してきた。先述の友人によれば、戦後の給食でクジラは定番のメニューだったという。クジラのベーコンは今では高級食材だが、当時は安い弁当に入っていた。日本人にとって、クジラは思い出の味なのだ。 実はわれわれ欧米人にもクジラ好きは多い。渋谷のクジラ料理屋に行けば、欧米人も舌鼓を打っている。一部の反捕鯨カルトに、むやみに譲歩するのはナンセンスである。<エコ・テロリスト> 反捕鯨、反イルカ漁の背後には、グリーンピースやシーシェパードなどの環境保護を唱えるテロ集団が存在する。いわゆるエコ・テロリストだ。彼らがクジラやイルカに執拗にこだわるのは、ニューエイジ思想の影響である。 60年代のアメリカでは反ベトナム戦争のヒッピー文化が発生した。彼らはやがて「ガイア思想」、つまり地球は一つの生命体であるという思想に取り憑かれるようになる。瞑想により意識のレベルを高めることで地球と一体化するというオカルトだが、その教祖が脳科学者のジョン・カニンガム・リリーだ。彼は脳神経に電極を通す研究を行い、FBIなどの政府情報機関の洗脳に悪用されることもあった。また、法律で規制される前には、LSDを使って人体実験を行っていた。 LSDを使ってトリップすれば、動物、地球と一体化し、神に近づくことができるという荒唐無稽な発想である。(中略)『ザ・コーヴ』という映画がある。太地町のイルカ漁を隠し撮りした映画だが、監督のルイ・シホヨスは、インタビューで「ジョン・カニンガム・リリーとは友達だ」と言っていた。 結局、カルトは連鎖する。 テレビドラマの『わんぱくフリッパー』や映画『イルカの日』により、イルカは知能が高く、アシカやオットセイを食べるシャチのような獰猛な生物ではないというイメージが振りまかれた。しかし、イルカは別に平和的な動物ではない。弱い仲間をいじめて殺すこともあるし、気晴らしのためにアザラシを食べる前にいたぶることもある。 大体、人間に近いということは、残虐であるということではないか。『外国人記者が見た平成日本』1:文庫文化
2024.05.08
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図書館で『外国人記者が見た平成日本』という本を、手にしたのです。どこを開いても・・・外国人記者による見慣れない視点が出て来るわけで、興味深いのである♪【外国人記者が見た平成日本】ヤン・デンマン著、ベストセラーズ、2018年刊<出版社>より現代日本に蔓延している悪性のニヒリズムはいったいどこから来ているのか? これほどまでに高まっている「不信感」はどうすればよいのか? 『週刊新潮』の名物コラム「東京情報」の執筆者で自称オランダ人記者ヤン・デンマンによる珠玉の平成日本の比較文化論。<読む前の大使寸評>どこを開いても・・・外国人記者による見慣れない視点が出て来るわけで、興味深いのである♪rakuten外国人記者が見た平成日本本を予約する際には、新刊本か文庫本かを選ぶことになるのだが・・・文庫本文化が語られているので、見てみましょう。p278~281<豊饒なる文庫文化> 2017年、文藝春秋の社長が全国図書館大会で「図書館で文庫を貸し出すのはやめてください」と発言した。それが文庫市場の低迷に影響している可能性があるとし、読者に対しては「文庫は借りずに買ってください」と訴えた。 アルバイトの小暮君が資料を配る。「文庫市場は2014年以降、年率約6%減と大幅な縮小が続いています。文庫は文藝春秋社の収益の30%強を占める最大の収益事業で、『週刊文春』などの雑誌事業を上回っているそうです。だから、文庫本の売り上げ低迷は死活問題なんですね」 もっとも、図書館の本の貸し出しは、出版物販売に負の影響を与えてはいないという研究結果もある。 フランス人記者が顎髭を撫でた。「オレは文藝春秋の社長の意見に賛成だ。そもそも文庫は、単行本として刊行された作品を、より広範な読者に対し、手に取りやすい価格で提供するものだろう。出版社からすれば、同じ作品を半分以下の値で売るわけで、たくさん売れなければ採算が取れない」<貧乏学生でもカントを買える> たしかにそうだ。図書館は、個人で入手するのが困難な本を、知識へのアクセスが社会にとって重要であるという理由で無料で貸し出している。高価な学術書や専門書の出版も、図書館の買い上げが生命線になっている。 しかし文庫は、そもそも誰もが容易に知にアクセスできるようにつくられたものだ。今の図書館は、誰もがいつでも買えるものを無料で貸し出し「市民のニーズに応えている」と勘違いしているのではないか。 イギリス人記者が同意する。「民間がやるべきことと公の機関がやるべきことの区別がついてないんだな。貸し出し数が多ければ市民サービスの要求に応えたと思い、貸し出し数が少ないと税金の無駄だと勘違いする。だが、税金の正しい使い道は、民間の論理では成り立たないサービスを公の論理で提供することなんだ。公務員が民間と同じ論理で動くのは、民業圧迫以外の何物でもない」 先輩ジャーナリストのY氏が頷く。「誰も借りないような難しい本を所蔵するから図書館は価値があるんです。文庫を無制限に貸し出すのは、文化の破壊につながると思いますよ。文庫は日本の読書文化の中核です。貧乏学生でもカントの『純粋理性批判』を買うことができる。図書館は無料だから、一見、貧乏学生に優しいようですが、肝心の版元がダメージを受けるなら、良書の出版が妨げられることになりかねません」 文庫の最大の魅力は、気軽に古典に触れられることだろう。文庫がなくなり新刊本ばかりになったら、薄っぺらい世の中になる。世界を見ても、古典を持たない国はバカにされている。一方、イタリアのように豊饒な文化、古典を持つ国は、経済的に停滞していようが一目置かれる。 日本には古事記、万葉集、源氏物語、平家物語などの古典があるが、われわれ西欧人が日本を重視する理由はまさにここにある。 小暮君が鞄から岩波文庫の『存在と時間』を取り出した。「僕は今、ハイデガーを読んでいるんです。岩波文庫は日本で最初の文庫ですよね」 Y氏が首を振る。「いや、新潮文庫のほうが先です。でも、休刊して、岩波文庫ができた後に復活している。岩波文庫の巻末に有名な『読書子に寄す』という創刊の辞があります。その中に、『吾人は範をかのレクラム文庫にとり』という一節がある。岩波はドイツのレクラム文庫を真似したのですね」 資料によると、レクラム文庫の創刊は1867年なので、明治維新の頃だ。岩波文庫の創刊は1927年、第一次新潮文庫は1914年である。 小暮君が身を乗り出す。「なるほど、文庫という形態は日本独自のものではないんですね」<似て非なるペーパーバック> フランス人記者が唸る。「だが、レクラム文庫の位置づけは、日本の文庫とは少し違う。ドイツは職人文化が根強いので、18歳で中等教育を終えてそのまま大学に進むのは一部のエリートだけだ。日本人はドイツと聞くとカントやヘーゲル、マルクスを思い出すのかもしれないが、レクラム文庫でそんなものを読むドイツ人はごく少数だ」 イギリス人記者はベトナム戦争を取材している。「アメリカのペーパーバックも文庫に似ているが、やはり位置づけが違う。通俗小説が中心だし、読み捨てを前提にしているので、非常に安い紙を使っている。日本の文庫は非常にいい紙を使っているだろう。ベトナムでは基地間の移動のため軍用ヘリに乗ったことがある。その待合所に、大量のペーパーバックが並んでおり、何気なく1冊を手に取ったら、面白くて移動中に大方読み終えた。移動先の待合所に置いてきたが、兵隊たちもそうしていたようだ。日本の文庫より、あらゆる意味において“軽い”のがペーパーバックの魅力だろう」
2024.05.08
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先日『宇宙はなぜこんなにうまくできているのか』という本を紹介したが、同著者でよく似たタイトル『宇宙はなぜ美しいのか』と言う本を以下のとおり復刻して紹介します。*********************************************************図書館に予約していた『宇宙はなぜ美しいのか』という新書を、待つこと7ヶ月ほどでゲットしたのです。 ぱらぱらとめくってみると、カラー画像も多くてビジュアルであり、解説もわりと物理学的でかつ、美しくなっているのが、ええでぇ♪【宇宙はなぜ美しいのか】村山斉著、幻冬舎、2021年刊<「BOOK」データベース>より夜空を彩る満天の星や、皆既日食・彗星などの天体ショー。古来、人類は宇宙の美しさに魅せられてきた。しかし宇宙の美しさは、目に見えるところだけにあるのではない。これまで宇宙にまつわる現象は、物理学者が「美しい」と感じる理論によって解明されてきた。その美しさの秘密は「高い対称性」「簡潔さ」「自然な安定感」の3つ。はたして人類永遠の謎である宇宙の成り立ちを説明する「究極の法則」も、美しい理論から導くことができるのか?宇宙はどこまで美しいのか?最新の研究成果をやさしく解説する知的冒険の書。<読む前の大使寸評> ぱらぱらとめくってみると、カラー画像も多くてビジュアルであり、解説もわりと物理学的でかつ、美しくなっているのが、ええでぇ♪<図書館予約:(7/14予約、副本2、予約19)>rakuten宇宙はなぜ美しいのか「第1章 宇宙はこんなに美しい」からブラックホールの撮影を、見てみましょう。p53~55<ブラックホールの写真を撮ることに成功!> ブラックホールは入ってしまうと光も出ないので、直接見ることができません。ですが、2019年、初めてブラックホールの「写真」を撮ることに成功しました。 先ほど出てきたM87銀河は、私たちの銀河系の10倍ほど星がある大きな楕円銀河です。この銀河では、中心から高速で高エネルギーのガス「ジェット」が噴き出しています。何かとてつもないものが中心にあるに違いありません。 考えられるのは「超大質量のブラックホール」です。太陽の何十億倍もの重さのあるブラックホールの周りをガスがぐるぐる回り、落ち込むものもあれば噴き出すものもあるのだと考えられています。 大きさが太陽と地球の距離の120倍もある巨大なブラックホールですが、なにせ5350万光年先。よほど小さいものが見える望遠鏡でないと、その姿を写真に撮ることはできません。小さいものを見るには光景が大きな望遠鏡が必要です。しかもM87銀河の中心には星や塵がたくさんあり、ふつうの光は届きません。 このような観測で使われるのが電波望遠鏡です。 車でラジオを聞いていると、FMは建物の陰に入ると聞こえなくなりますが、AMは大丈夫。波長の長い電波は障害物を回り込んで届くからです。これと同じで、電波を使うと星や塵を回り込んで、銀河の中心からでも信号が届きます。 電波を使って天体を見る電波望遠鏡は、地球上のいろいろなところにあります。それらをつないでひとつの地球サイズの望遠鏡として使えれば、計算上、M87の中心のブラックホールのような小さいものも見える。私の視力の0.3に比べたらはるかに目がいい、視力1.4億が実現できるはずです。 そんな野心的なプロジェクトが始まり、日本も大きな貢献をしました。日本、アメリカ、カナダ、ドイツ、フランス、オランダ、スペイン、メキシコ、中国、台湾、韓国という、文字どおり地球サイズの国際協力プロジェクトです。 プロジェクトの名前は「イベント・ホライズン・テレスコープ」といいます。ブラックホールの周りの、出てこられるところともう決して出てこられないところの境目を「事象の地平線」といいます。英語ではイベント・ホライズンです。 「地平線」とは、たとえば山の上から海を見ると、地球が丸いために、あるところから向こうは見えない、この境目のことです。「事象」というのは、何かしら起きている現象のことです。「事象の地平線」とは、この境目の内側で起きたどんな事象も見ることができない境目のことです。そのイベント・ホライズンを見るテレスコープ(望遠鏡)というのが、このプロジェクトの触れ込みです。 こうして撮ったブラックホールの写真が写真[1-29]です。[1-29]M87の中心のブラックホールのシャドウ 周りの明るいところがブラックホールの周りを回るガス、真ん中の黒いところの縁は光がブラックホールの周りを公転してしまって出てこられなくなる「光子リング」、光子リングの内側の半径3分の2ぐらいのところに「事象の地平線」があります。写真の下半分はガスが私たちの方を向いているので明るく、上半分はガスの運動が遠ざかっているので暗く見えています。2019年、日本を含む国際研究チームの観測によって、ブラックホールが初めて視覚的に証明されました。2019/04/11ブラックホール初撮影 5500万光年先を直接観測 日本など国際チームより あらゆる物質をのみ込む巨大ブラックホールの撮影に、国立天文台などの国際研究チームが世界で初めて成功し、10日発表した。世界6ヵ所の望遠鏡で同時に観測して解像度を飛躍的に高め、真っ黒な穴を捉えた。ブラックホールの存在を直接裏付けたことになり、銀河の成り立ちの解明につながる。 撮影に成功したのは、地球から約5500万光年離れた銀河「M87」にあるブラックホール。 ブラックホールは重力が極めて強く、光も吸い込んでしまう。光が脱出できなくなる境界は「事象の地平線」と呼ばれる。巨大ブラックホールは宇宙に無数ある銀河の中心にそれぞれ存在すると考えられているが、誕生の仕組みなどはわかっていない。これまでは、周囲を回る星の動きなどから、間接的に存在を確認していた。 研究チームは、宇宙空間のちりなどに吸収されにくく、地球まで届きやすい電波「ミリ波」に着目。ブラックホールに吸い込まれる際に周囲のガスが発するミリ波を観測し、画像に変換することを試みた。 2017年4月、南米・チリのアルマ望遠鏡や米ハワイ、南極など世界6ヵ所、計八つの電波望遠鏡を使って計5日間、M87と、天の川銀河の中心にある「いて座A*(エースター)」のブラックホールを観測した。 最大約1万キロ離れた望遠鏡のデータを合成することで、解像度を月面に置いたゴルフボールを地球から見分けられるほどに高め、わずかな電波を捕捉。約2年かけ解析した結果、M87の画像では、ガスの光に包まれた黒いブラックホールの姿が確認できた。質量は太陽の約65億倍に相当することがわかった。いて座A*については解析中という。 研究チームで日本の代表を務める国立天文台の本間希樹(まれき)教授は会見で「写真はアインシュタインの相対性理論以来初めて、ブラックホールを視覚的に証明するもの。銀河の真ん中にブラックホールが存在することを決定づける意味のある一枚だ」と話した。(石倉徹也、小宮山亮磨)『宇宙はなぜ美しいのか』3:ブラックホールの撮影『宇宙はなぜ美しいのか』2:星の誕生『宇宙はなぜ美しいのか』1:「はじめに」『宇宙はなぜこんなにうまくできているのか』(復刻)もお奨めです。この記事も『ブラックホールを見たいR3』に収めるものとします。
2024.05.07
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図書館で『習近平の敗北』という本を、手にしたのです。表紙のコピーに「中国の危機」とあるように・・・かなりの中国ウォッチャーでなないかと思ったのです。【習近平の敗北】福島香織著、ワニブックス、2019年刊<「BOOK」データベース>より無能でも皇帝になれる共産党体制、すさまじい牢獄国家で暮らすということ、日本は中国とどう向き合うべきか!-政変、動乱、分裂…中国を襲う9の厄災。<読む前の大使寸評>表紙のコピーに「中国の危機」とあるように・・・かなりの中国ウォッチャーでなないかと思ったのです。rakuten習近平の敗北「第六章 軍靴の足音」で米中の軍事プレゼンスを、見てみましょう。p216~227<中国は苦しい時ほど戦争を仕掛ける> 中国がどこかで戦争をするかもしれない。そういう予感はこの数年、ずっと漂っています。 中国は国内が不安定化すると対外戦争を行って国威発揚し、中国共産党の軍権掌握と人民の愛国心やナショナリズム高揚効果を狙う、と同時に軍内の不穏分子を戦場に送り出す、というようなことを実際にやってきました。 記憶に残るのが1979年の中越戦争です。結果的に中国はズタボロに負けるのですが、国内では大勝利を宣伝し、文革によって求心力が落ちた中国共産党の威信を取り戻す効果がありました。またその敗戦の責任を文革中にはびこった扱いづらい軍内左派の軍幹部に負わせて排除し、替わりに自分に忠誠を誓う将校を出世させ、軍権の掌握を勧めました。 実戦を通じて解放軍の弱点を理解した鄧小平はその後、大規模な軍制改革や、軍の近代化を勧めました。 この軍の近代化の成果を試す意味もあり、また1979年の敗北の雪辱を晴らすためにも1884年に再び中越国境紛争を起こします。実際は苦戦を強いられ多大な犠牲を払いましたが、やはりこれも大勝利と国内で宣伝され、鄧小平のカリスマ的地位を確立することになりました。(中略)<半島有事> この原稿を書いているとき、おりしも2回目の米朝首脳会談(2019年2月)がハノイで行われ、何の進展もないまま会議は決裂しました。両首脳は予定よりも2時間も早く会談を切り上げてランチもとらずに早々にホテルに帰ってしまったそうです。 この決裂の原因は、北朝鮮側が「制裁解除を先にせよ」と要求し、米国側は「寧辺以外の全核施設の廃棄や保有するすべての核弾頭の提出などが先で、それが終わってから制裁解除だ」ということで、米朝双方の主張が根本的に対立しているので合意できないのですが、実質進展がないものの、もう少し双方が取り繕って、基本的合意だとか、覚書きのような文書を出すこともできたわけです。そうせずにトランプが席を立って会議を決裂させたのは、同席したボルトン大統領補佐官の振り付けのようです。 半島問題の専門家、重村智計さんから聞いた話ですが、北朝鮮との話し合いは「交渉すると負け」なのだそうです。先に席を立って、北朝鮮側に追いかけさせて、北朝鮮に譲歩させるのが北朝鮮との正しい交渉術。ボルトンはそれを熟知していたので、トランプに交渉しないで帰るようにアドバイスしたのかもしれません。(ここで6ページほど中略) 北朝鮮には常に軍事クーデターの危険性が潜んでいますが、もし軍事クーデターが起きるとしたら、ほぼ必ず中国解放軍の協力があるでしょう。逆にいえば解放軍がその気になれば北朝鮮でクーデターを起こせます。解放軍、特に旧瀋陽軍区は朝鮮族も多く、軍事物資や資源の密輸入共謀関係があり、心情的にも利益供与的にも絆は深いのです。 習近平政権が命じてそうした北朝鮮有事をたきつけなくとも、解放軍内の不満や不安がそういう形で暴発することはありうるでしょう。旧瀋陽軍区は、汚職で失脚させられた軍長老・徐才厚の部下がまだ多くおり、不満をくすぶらせています。 また習近平サイドが、旧瀋陽軍区内のアンチ派を粛清する口実にするつもりで、軍内で何か問題を起こさせる、ということもあるかもしれません。北朝鮮政府内部がいつ倒れてもおかしくないほど求心力を失ったとき、ロシアも狙っている羅津、清津といった重要港はなんとしても先に抑えたい港ですから、どんな手を使ってもおかしくはないでしょう そう考えると、半島情勢は、韓国の文在寅が夢見ているような“お花畑”のようなものではなく、いつ引火爆発を起こしてもおかしくないガスが充満しているようなものといえるでしょう。<南シナ海有事> 南シナ海はどうでしょう。オバマ政権の8年間の間に、中国は南シナ海の領有権問題でフィリピンやベトナムらと争う岩礁島の実効支配を次々と固めていき、軍事拠点化を進めてきました。 具体的にはスビ礁、ファイアリー・クロス礁、クアテロン礁、ミスチーフ礁、ヒューズ礁、ジョンソンサウス礁、ガベン礁の7つの岩礁島を埋め立てて人工島にしているだけでなく、造りあげた島を基地化しています。このうち、スビ、ファイアリー・クロス、ミスチーフの3島には3000メートル級の滑走路ができています。また軍艦が着けられそうな港湾施設、レーダー施設なども設置されているようです。 ファイアリー・クロス、ジョンソンサウス、クアテロン、スビ、ミスチーフには灯台が造られ、中国の交通運輸部が運用しています。気象観測所も造られ、軍人だけでなく民間人(あるいは民兵)も常駐するようになってきています。 ロイターの安全保障専門家の見解をもとにした報道によれば、特にスビ島は解放軍海軍陸戦隊数百人が常駐することを目的に400以上の建物が建てられ、ちょっとした街がけいせいされているといいます。米国の民間衛星写真をみれば、バスケットコートや練兵場が並び、解放軍基地らしきものが確認できます。 1974年のベトナムとの西沙海戦で実効支配を奪ったウッディー島には、2700メートルの滑走路があり、2018年には爆撃機の離着陸テストが行われ、地対空ミサイル発射台が配備されるなど軍事拠点化が進んでいます。(中略) 2018年6月初め、シンガポールで開催されたシャングリラ会合ことアジア安全保障会議では、ジェームズ・マティス米国防長官(当時)は演説で、中国が南シナ海の人工島で、ミサイル配備や電波妨害施設の設置、新型爆撃の離着陸テストなどを行っていることは周辺国への「脅迫と威圧」であると断言しました。 かつて習近平国家主席が「南シナ海を軍事拠点化する意図はない」と言ったことに反していると批判し、「必要なら断固とした措置をとる」と軍事オプションを臭わせました。 このとき、台湾の台湾の防衛能力強化のために米国が装備面で積極的に協力していくことで、「南シナ海における中国の軍事的脅威に対抗する」とも発言しており、南シナ海有事が台湾有事とも連動する可能性をほのめかしています。(中略) 中国と岩礁島の領有を争うフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領はこうした米中の軍事的緊張が、自国が領有を主張する岩礁島が含まれる海域で急激に高まっていることについて、米中紛争に自国が巻き込まれる懸念を言い出しています。フィリピンは岩礁島を中国に実効支配され、その国際海洋法違反をハーグの仲裁裁判所に提訴して勝訴していますが、中国はこれを公然と無視しています。『習近平の敗北』1:習近平政権の変節
2024.05.07
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図書館で『習近平の敗北』という本を、手にしたのです。表紙のコピーに「中国の危機」とあるように・・・かなりの中国ウォッチャーでなないかと思ったのです。【習近平の敗北】福島香織著、ワニブックス、2019年刊<「BOOK」データベース>より無能でも皇帝になれる共産党体制、すさまじい牢獄国家で暮らすということ、日本は中国とどう向き合うべきか!-政変、動乱、分裂…中国を襲う9の厄災。<読む前の大使寸評>表紙のコピーに「中国の危機」とあるように・・・かなりの中国ウォッチャーでなないかと思ったのです。rakuten習近平の敗北「第二章 嫌われ習近平に漂う政変のにおい」で習近平政権の変節を、見てみましょう。p73~77<毛沢東ばりの対外強硬路線> また習近平の外交政策は毛沢東的対外強硬路線に近くなりました。鄧小平は「外国に学べ」とスローガンをうち、改革開放経済を進めた国際協調路線を打ち出してきました。これを「韜光養晦」、つまり、いつか大国として復活しようという野心を隠して、実力が不足している時代は、国際社会のスタンダードに自ら沿う姿勢をアピールし、外国から吸収できることはできるだけ吸収していく戦略でした。 この結果、米国や日本の資本や技術を呼び込んで中国の高度経済成長時代を実現し、WTO(世界貿易機構)にも加盟し、世界の向上として安価な労働力を使った低廉な中国製品によって世界市場を圧倒することができました。また豊かになってきた中国巨大市場は、世界から新たな消費市場のフロンティアとして垂涎の的となりました。江沢民、胡錦涛政権の外交路線もこれを受け継ぐ形で多極外交が基本でした。 ですが、習近平は、こうした野心を隠して「学ぶ姿勢」「国際スタンダードに寄っていく姿勢」の鄧小平的多極外交から、「中華民族の偉大なる復興」という野心を高らかに掲げ、世界が中国のスタンダードや秩序に合わせていくべきだという、中華思想的な大国外交路線に切り替えていきます。 米国に対しても、いずれ中国が米国と並ぶ大国になるのでそのように扱えとばかりに「米中新型大国関係」を提案しました。南シナ海の領有権を他国と争う岩礁島を実効支配していき、国際法廷(常設仲裁裁判所)で違法行為だという判決が出ても、「そんなものは紙切れだ」と完全に無視しました。 これはちょうど米国のオバマ政権がレームダックを迎え始め、EUの矛盾やほころびも顕在化してきたのに比して、中国は五輪(2008年の北京オリンピック)を経験し、リーマンショックを切り抜け、国際社会で評価が高まってきたので、国家として自信を持ってきたということも関係しているのでしょう。 ですが、中国をグローバル経済の牽引国と認め、責任ある大国に成長すると期待していた国際社会は西側の普遍的価値(〇)を完全否定して、中華秩序、中華的価値を受け入れよ、という中国の主張を受け入れるはずがありません。 習近平はコンプレックスが強く小心者ですが、ものすごく自信過剰で傲岸不遜なところがあります。 文革期に思春期を過ごし、ろくに勉強もせず、毛沢東の政治のやり方、権力闘争のやり方を脳裏に刻み付けていることから“文革脳”と呼ばれています。若い時代に海外留学経験もない彼は、国際情勢や国内情勢を読み違えたのだと私は思います。 結果として、あれほど親中的だったオバマ政権を怒らせることになります。米国はアジア太平洋リバランス政策をとって対中強硬姿勢に転じてきました。改革開放以来ずっと中国に対して一衣帯水の隣国として支援し、天安門事件後の国際的経済制裁のときにもいち早く中国との関係を正常化させた日本とも厳しい対立関係に入りました。 これまでの中国は、米国とちょっと関係が悪くなると日本と関係を良くするようにし、日本に対して強硬になるときには米国との関係を融和的にするというふうに、バランスをとってきました。そうすることで日米両国とも経済関係は良好にいじするという合理的な判断に基づく多極外交を行ってきたのですが、習近平体制になってからの中国は周辺諸国すべてに対して傲岸不遜で、攻撃的な姿勢になりました。 この延長線として、米国にトランプ政権が誕生し、米中冷戦構造に向けた西側世界の対中包囲網が開始されることになったのです。<クーデター未遂に脅えて大粛清> 鄧小平が作り上げた中国共産党の集団指導体制()を破壊し、毛沢東のような独裁者になりたがっている危険な指導者、それが習近平であると、中国共産党内の右派も左派も気づき始めました。 鄧小平路線や胡耀邦の信望者たち、つまり改革派、自由派、民主派の党内知識人は習近平を嫌い、彼のやり方はまずいと考えます。鄧小平システムが破壊されるということは、再び、動乱を利用した文化大革命や天安門事件のような血生臭い権力闘争が起こるかもしれません。 新左派、保守派も、習近平を危険視するようになりました。習近平はあたかも毛沢東のようになろうとしているけれど、習近平に毛沢東の後継を名乗るようなカリスマ性はひとかけらもありません。また中国共産党の規約にある個人崇拝の禁止を堂々と侵す習近平に社会主義国家指導者としての資質を疑う人も多いのです。
2024.05.06
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図書館で『写真で見る満州全史』という本を、手にしたのです。この本には、なんかデジャビュの感があるが・・・二度借りてもまあいいかということでチョイスしたのです。(帰って調べると、やはり借りていたので、この記事を(その4)とします。)【写真で見る満州全史】太平洋戦争研究会, 平塚柾緒著、河出書房新社、2018年刊<「BOOK」データベース>より日本は大陸で何をしようとしたのか?…「幻の帝国」の前史から崩壊後まで!満鉄・関東軍・満州事変・満州国誕生・日本人街・開拓移民団・帝国崩壊・シベリア抑留・負の遺産…私たち日本人が今知るべき歴史!【目次】消えた帝国を歩くー現在も姿をとどめる「満州」残影/第1章 満鉄と関東軍/第2章 満州事変/第3章 関東軍の満州支配/第4章 日本人が住んだ街/第5章 満州帝国の繁栄と崩壊<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくってみると・・・まさにタイトルにあるとおり写真が満載のビジュアル本となっているのが、ええでぇ♪rakuten写真で見る満州全史どこから読んでもいいのだが、「第5章 満州帝国の繁栄と崩壊」から満州開拓移民団あたりを見てみましょう。p154~156<百万戸・五百万移民計画>■武装試験移民からスタート 満蒙開拓団、あるいは満州開拓団は当初は「移民」と呼ばれた。最初の移民は満州国を成立させてほぼ1年後の昭和8年(1933)3月である。東北・北関東11県の在郷軍人会が募集した、独身男性だけの集団で約500人。全員が小銃や手榴弾を携行し、機関銃も何挺か装備しており、武装移民と呼ばれた。 入植地は吉林省チャムスの南約60キロの樺山県永豊鎮で、満州に着いてからの引率者は東宮金男だった。いうまでもなく張作霖爆殺の実行部隊指揮官だった大尉で、行政処分で予備役編入になっていた。そして、この当時は「関東軍付・吉林軍顧問」という肩書だったから、東宮の背後には関東軍が控えていた。 彼らが入植した永豊鎮は未開の原野ではなく、百戸ほどの農村で、当時は匪賊の跳梁で七十戸ほどに減っていた。東宮はそこの老若男女に、一人当たり五円を支給して追い払った。五円という価値は政府が移民隊員一人当たりに支給した1ヶ月の食事補助額に等しく、もちろんそれで1ヶ月は食べられない額である。東宮は「民有既耕地七百町歩人家百十四戸を全部移民隊のものとする計画に対しては、満州人がかわいそうになりやや躊躇せざるべからず」と日記に書き記した(『満州武装移民』教育社)。 永豊鎮で確保した土地は既耕地七百町歩だけではなく全体で四万五千町歩あり、今の横浜市や金沢市ほどの広さである。この地は「弥栄村」と名づけられ、満州開拓の宣伝のために大いに利用された。 二回目の武装移民(五百名余り)はやはり吉林省で、依蘭県七虎力に入ったが、これはのちに地振村と命名された。 この土地は第一次武装移民のあとに設立された東亜勧業㈱が強制買収したものだった。同社は関東軍をバックにして吉林省やそこに隣接する黒龍江省の各県で強制買収を行い、全体として可耕地の約六割を獲得したという。 これほどの横暴に対して、追い出された農民たちが黙っているはずはなく、同地の徳望家・謝文東をリーダーに戴き、武装闘争に転じた。日本では抵抗発祥の地の名をとって土竜山事件と呼ばれるは、「兵力」は約1万人だった。 関東軍は一個連隊(約2500人)を投入して鎮圧につとめたが、途中で連隊長が襲撃されて死亡するほど激しいものだった。七虎力から湖南営にさがった第二次武装隊を3ヵ月にわたって包囲、関東軍もそれに対して討伐隊を繰り出し、各所で激戦が展開された。農民側は約五千人が殺されたという。 武装移民は昭和11年(1936)11月まで断続的に第五次まで続いたが、これが試験移民と呼ばれるものである。第四次からは在郷軍人会は募集から手を引き、武装もしなかった。■百万戸・五百万人の「満州開拓団」計画 本格的な移民は「満州開拓団」と呼ばれ、当初は「五ヵ年・二万戸移住」計画のもと、一開拓団が千戸規模に拡充された。ところがこれが実現されないうちに、昭和11年(1936)6月、広田弘毅内閣は「二十カ年・百万戸・五百万人」移住の政策を打ち出した。これからが本格的な満蒙開拓団の時代に入るのである。『写真で見る満州全史』3:皇帝・溥儀と満州帝国p102~103『写真で見る満州全史』2:「関東軍」の登場>p26~27『写真で見る満州全史』1:ラストエンペラー・溥儀p102~103
2024.05.06
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図書館予約していた『Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機』という雑誌を、待つこと12日でゲットしたのです。このところ、毎日、円安のニュースにさらされて意気消沈気味であるが、この日本の危機に日本政府はどう対応しているんだ!・・・と叫んでも虚しいのだ。【Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機】雑誌、ウェッジ、2024年刊<商品説明>より■【特集】霞が関の危機は日本の危機 官僚制再生に必要なことかつては「エリート」の象徴だった霞が関の官僚はいまや「ブラック」の象徴になってしまった。官僚たちが疲弊し、本来の能力を発揮できなければ、日本の行政機能は低下し、内政・外交にも大きな影響が出る。霞が関の危機は官僚だけが変われば克服できるものではない。政治家も国民も当事者だ。激動の時代、官僚制再生に必要な処方箋を示そう。<読む前の大使寸評>このところ、毎日、円安のニュースにさらされて意気消沈気味であるが、この日本の危機に日本政府はどう対応しているんだ!・・・と叫んでも虚しいのだ。<図書館予約:(4/16予約、副本?、予約1)>rakutenWedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機泉房穂・前明石市長SPECIAL INTERVIEWで泉房穂・前明石市長の提言(続き)を載せているので、見てみましょう。p48~49<悪循環の日本 最大の要因は「時代」> そうこうしているうちに、日本の国力は低下し続けている。 私は、その最大の要因は「時代」だと考えている。「右肩上がりの時代」から「右肩下がりの時代」になったということだ。 右肩上がりの時代には、財源が増えるので、これまでやっていた10のことをやりつつ、新しく1のことをやることができた。しかも、財源は11どころか、12、13・・・と増えていった。 だが、今やそんなことは不可能になった。右肩下がりの時代には、問題が増える一方で、使えるお金は減っていく。11のことをしなければならなくても、財源は10ではなく9、8、7・・・と減ってゆく。何が必要かといえば、これまでの10を見直すことだ。「何を続け、何をやめるか」という方針転換が、政治家には一段と求められている。 ところが、今の政治家は、時代の変化を直視せず、「魔法の杖」なんてないのに、いまだに右肩上がりの時代感覚でシステムを維持しようとしている。それでいて国民を救うという「情熱」もなく、不必要な政策をやめるという「方針転換」も決断せず、「責任」を取ることからも逃げ続けている。「政治家のフリをしている政治家」があまりにも多いのだ。 時代の変化について、私が心配していることの一つに少子化問題がある。今の日本が特にしんどい状況にあるのは、大きな時代の転換点に直面しているのに、この問題にうまく対応できていないことにある。 私はかつてフランスの少子化対策を学んだが、93年に出生率が1.66にまで落ち込み、「このままでは国が滅びる」との危機感から国家を揚げて「方針転換」し、一気に子ども施策に重点を置いた。それは国民の気持ちをも変える大転換であった。 日本も同様の「方針転換」ができなければ、これまで築き上げてきた社会構造が坂道を転げ落ちるように崩れる可能性がある。 国家予算も膨張し、税・保険料の国民負担も増えるばかりだ。社会を運営していくためにどうしても必要な予算や負担なら理解できる。しかし、今の政治家から「なぜそれが必要なのか」という納得のいく説明は聞こえてこない。国民の負担を減らすために何かをやめる、何かを諦めるといったことも一向に示されず、選挙対策として、必要性が疑わしい公共事業などがいまだに続けられている。 30年間給料は上がらず、経済成長もせず、国民負担は増えるばかり、おまけに昨今は物価高も直撃している。国民の不満はマグマのようにたまっており、いつ大噴火してもおかしくない状況だ。 まさに、「今の3対1」から「本来のあるべき3対1」の関係性への大転換が求められている。 それには、官僚自身が変わらなければならない点も多々ある。だが、そもそも官僚は選挙で選ばれているわけではなく、各省庁に就職している公務員である。政治家とは異なり、責任の取りようがない。さらに、政治家が官僚に責任をなすりつけようなことが横行すれば、官僚は委縮し、合理的な判断ができなくなる。これでは、官僚の良いところまで失われてしまう。 だが、政治家が本気になって覚悟を示し、大きな決断に基づき「私が責任を取るから、思い切りやってほしい」という覚悟を示せば、多くの官僚たちは国民のために懸命に業務を遂行するものだ。これは断言してもいい。『Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機』3:泉房穂・前明石市長の提言『Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機』2:PART 1 未完の公務員制度改革 『Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機』1:INTRODUCTION
2024.05.05
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『宇宙はなぜこんなにうまくできているのか』という本を再度読み直したいわけで・・・以下のとおり復刻します。*********************************************************図書館で『宇宙はなぜこんなにうまくできているのか』という本を、手にしたのです。朝日新聞の連載コラム「村山斉の時空自在」を3年間も続けた村山博士である。難しい事象を読みやすい筆致で面白く書くことにかけては、天下一品でんな♪【宇宙はなぜこんなにうまくできているのか】村山斉著、集英社、2012年刊<商品説明>よりこれほどやさしい宇宙論の本はなかった!なぜ太陽は燃え続けていられるのか。なぜ目に見えない暗黒物質の存在がわかったのか。なぜ宇宙はこんなにも人間に都合よくできているのか・・・宇宙の謎がよくわかる、村山宇宙論の決定版。<読む前の大使寸評>朝日新聞の連載コラム「村山斉の時空自在」を3年間も続けた村山博士である。難しい事象を読みやすい筆致で面白く書くことにかけては、天下一品でんな♪rakuten宇宙はなぜこんなにうまくできているのか「第7章 宇宙の未来はどうなるのか」で、宇宙のインフレーションを見てみましょう。p168~173<膨張の後押しする暗黒エネルギー> 宇宙には目に見える星や目に見えない暗黒物質を含めて、たくさんの物質が音在します。その量は変わらないので、宇宙が膨張すれば密度は薄まるのはわかりますよね? たとえば宇宙の大きさ(二点間の距離)が二倍になれば、体積は(タテ×ヨコ×高さですから)その三乗の八倍になります。体積が八倍になれば、その中にある物質の密度は八分の一に薄まるわけです。 そうやって物質の密度が薄まれば、空間内部のエネルギーも薄まるでしょう。そのエネルギー宇宙を押し広げているのですから、宇宙が膨張するにつれて速度は遅くなっていくはずです。 ところが、その膨張が実は加速していました。つまり、膨張するにつれて薄まるはずのエネルギーが、逆に増えているわけです。こんなに不思議な話はないでしょう。いわば、時間が経てば冷めていくはずのコーヒーが、どんどん温度を上げていくようなものです。どこかから謎のエネルギーが加わっているとしか考えられません。 この謎のエネルギーを、研究者たちは「暗黒エネルギー(Dark Energy)」と名付けました。暗黒物質と同様、とにかく正体がさっぱりわからないので、とりあえずそんなふうに呼んでおくしかありません。暗黒エネルギーは、宇宙が広がるたびにどこからともなく増え続け、放っておけば減速してしまう膨張をぐいぐい後押ししているのです。 その暗黒エネルギーが宇宙全体に占める割合は、2003年にわかりました。それを調べたのが、第5章に登場したウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機WMAPです。その観測結果も、宇宙研究者を大いに驚かせました。 宇宙にある物質をエネルギーに換算すると(E=mc2を思い出しましょう)、原子でできている通常の物質は。たったの4.5パーセントにすぎません。物質の五倍もある暗黒物質も、宇宙全体から見れば約23パーセント。そして、残るおよそ73パーセントを暗黒エネルギーが占めているのです。 エネルギーという観点から考えれば、宇宙は大半が暗黒エネルギーでできているといっても過言ではありません。その正体がわからなければ、宇宙のことを理解したとはとてもいえないでしょう。日本でも、直径8.2メートルの鏡を持つ世界最大級のすばる望遠鏡を使って暗黒エネルギーの正体を暴こうという「すみれ計画」を進めているところです。(中略) およそ100年も前に、暗黒エネルギーの存在を予見していたかのように思える計算をしたアインシュタインには驚かされます。彼が遺した宇宙定数は、宇宙論を研究するすべての科学者に与えられた宿題のようなものだといえるのではないでしょうか。<インフレーション宇宙論> もちろん、超新星の観測で加速膨張の事実がわかって以来、多くの研究者が暗黒エネルギーの謎に取り組んでいます。まだ何もわかっていないに等しい状態ではありますが、その研究の中で、ひとつ大きな疑問が生じました。暗黒エネルギーそのものが大きな疑問ではあるのですが、実はその量が少なすぎると思われるのです。 これを本気で説明すると例の量子力学から始めることになるので、ごく簡単にお話しします。細かいことはさておき、ともかく「真空」にエネルギーがあると思ってください。ふつう、真空とは空気も何もないカラッポのように見えるところでも、粒子と反粒子が対生成と対消滅を繰り返しています。対生成を起こすにはエネルギーが必要ですから、何もないと思われている真空からエネルギーを「借りている」としか考えられません。その「借金」を、対消滅のときに生まれるエネルギーで「返済」しているのです。(中略) そして、この「真空のエネルギー」は、膨張して体積が増えると、その分だけ大きくなります。ならば当然、暗黒エネルギーは真空のエネルギーではないかと思いますよね? 実際、その可能性は高いでしょう。実は誕生直後の宇宙も、この真空のエネルギーによって凄まじい勢いで膨張したと考えられます。 これは「インフレーション宇宙論」と呼ばれる考え方で、30年ほど前に、東京大学名誉教授の佐藤勝彦先生とアメリカの物理学者アラン・グースがほぼ同時に発表しました。宇宙誕生の10のマイナス36秒後から10のマイナス34秒後というほんのわずかな時間に、宇宙が倍々ゲームで急膨張したとする理論です。 これは、いわゆるビッグバンではありません、一般的には「宇宙の始まりは」だと思われていますが、宇宙論でいうビッグバンは、このインフレーションが終わってから「真空のエネルギー」が熱に変わり、熱い宇宙になったもの。急膨張が済んでからビッグバンが起こり、そこからは膨張速度がゆっくりになったと考えられています。ウーム 論旨明瞭だけど、意味不明ですね・・・それだけ難しいところなんでしょう。2012年発刊のこの本では、まだヒッグス粒子(2012年に発見)に触れていません。そのヒッグス粒子についてネットを巡ると最後の素粒子「ヒッグス粒子」の発見はさまざまな謎の解明のスタート台がヒットしました。『宇宙はなぜこんなにうまくできているのか』5:宇宙のインフレーション『宇宙はなぜこんなにうまくできているのか』4:宇宙の晴れ上がり『宇宙はなぜこんなにうまくできているのか』3:暗黒物質『宇宙はなぜこんなにうまくできているのか』2:ブラックホール『宇宙はなぜこんなにうまくできているのか』1:太陽系は「新興住宅地」?『宇宙はなぜこんなにうまくできているのか』(復刻)
2024.05.05
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図書館で『日本の映画産業を殺すク-ルジャパンマネー』という新書を、手にしたのです。著者は経済産業省主導のクールジャパン政策を厳しく問い詰めているが・・・「成長戦略の柱」などのごまかしや官僚の限界を見てみようではないか。【日本の映画産業を殺すク-ルジャパンマネー】 ヒロ・マスダ著、光文社、2020年刊<「BOOK」データベース>より「日本再生のカギ」「成長戦略の柱」などと叫ばれ、国を挙げて推進されてきたクールジャパン政策。映画産業に関しては「ハリウッドで日本映画を作る」と気炎が上がっていた。ところが、実際は全く成果を上げられないどころか数十億~数百億円の赤字を垂れ流す、壊滅的な状況となっている。巨匠ヴィム・ヴェンダース監督からの言葉をきっかけにクールジャパン政策の問題点を長年追いかけてきた映画プロデューサーが、すべての元凶である経済産業省の不正や非常識を徹底的に暴くとともに、世界各国の成功例を基にした、クリエイター支援のあるべき姿を考える。<読む前の大使寸評>著者は経済産業省主導のクールジャパン政策を厳しく問い詰めているが・・・「成長戦略の柱」などのごまかしや官僚の限界を見てみようではないか。rakuten日本の映画産業を殺すク-ルジャパンマネーなにはともあれ「はじめに」の冒頭から、見てみましょう。p3~8<はじめに> ここ数年、「日本再生のカギ」「成長戦略の柱」などと叫ばれ、国を挙げてクールジャパンが推進されてきました。映画、テレビ、アニメ、ゲームなどのクリエイティブ産業もクールジャパンの具体例とされ、これまで1000億円以上に上る莫大な額の税金や、国の借金を原資とした財政投融資の公的資金が投じられています。 しかし、これらの「クールジャパンマネー」は1円たりとも、日本のクリエイティブを支える「人」に向けられることはありませんでした。 これはクールジャパンを批判することありきで、大げさに言っているわけではありません。本来ならばクールジャパンを推進する上で重要な役割を担うはずである、日本の制作現場には、巨額予算が文字どおり1円たりとも使われてこなかったのです。 では、クールジャパンの名の下に投入された1000億円以上のお金は、一体何に使われたのでしょうか? また、それは誰が、どのように運用してきたのでしょうか? クールジャパンをめぐる動きを見ると、その数々の事業を所管する経済産業省が主導的な役割をなした法律と制度濫用が横行しています。そして、こうした暴走を許す背景には、クールジャパン政策が始まる前から巧妙に仕組まれた、公的資金を搾取する「カラクリ」が存在しています。 クールジャパンの制度的、および組織的な腐敗の顕著な例として、本書が扱う「官民ファンドを使った事業」と「間接補助金を使った事業」が挙げられます。 これらの巨額クールジャパン事業は、税金、公的資金で賄われています。それにもかかわらず、官民ファンドは「民間企業」、間接補助金は「民間事業」と位置付けられるため、「民間の正当な利益を損なうおそれが認められる」等の理由で情報開示を免れられる、政府にとって都合のいい制度に設計されています。その結果、事業の中で流れている公金の流れは不透明になっています。 さらに、それらの事業がどれほど合理性に欠け、非効率で、日本のクリエイティブ産業の発展を妨げる「無駄事業」であったとしても、事業が適切であったか否かについて、私たちは「そこで何が行われたか」だけでなく、「なぜ巨額の損失を招いたのか」という失敗の原因すら知ることができません。 もちろん、「官民ファンド」「間接補助金」ともに、公平、公正に運用するための法律やガイドラインが存在します。しかし、そうしたルールすらも初めから、政府が自分たちに都合よく作っているため、国民の財産をチェックしたり安全な運用を担保したりする機能は果たせていません。 そればかりか、妥当性や必要性が疑われる事業においても、重要部分の情報を隠すことにより、政府は何の根拠もなく、それらを全く問題のない「適法」な投資、事業にすることができます。 この状況を例えるなら、監督官庁である経済産業省が、悪質な反則行為を目撃しても決して笛を吹かない「八百長審判」になっているだけでなく、反則チームと事前に打ち合わせているようなものです。 本書では、クールジャパン行政のこうした反則行為によって、合わせて40億円以上の税金と公的資金が消失した事業令として、産業革新機構(現:産業革新投資機構)が作った官製の映画会社「株式会社Àll Nippon Èntertainment Works」(以下、ANEW)と、民間の広告代理店も関わっている「ジャパン・コンテンツ ローカライズ&プロモーション支援助成金(J-LOP)」による搾取の裏側を明かしたいと思います。(中略) 私は決して、最初から「クールジャパン政策をターゲットにしよう」と思いたって調査してきたわけではありません。また、多くのクールジャパン事業を所管する経済産業省に私怨を抱き、重箱の隅をつつくように粗探しをしたわけでもありません。 きっかけは10年前、映画監督からのある一言でした。 私は当時、『パリ、テキサス』でカンヌ国際映画祭パルムドーム(最高賞)受賞などの経歴を持つ、ドイツの巨匠ヴィム・ヴェンダース監督の新作品に、脚本と共同プロデユースで関わっていました。その映画は日本の小説を原作にしており、日本での撮影を予定していました。 映画を作るにあたって、日本ではどのような支援策があるのかを調べ始めました。するとわかったのが、日本には本当の意味で変化を生むことのできる施策が存在しないという事実でした。効率的で有効な、ビジネス面から見て常識的な施策は全くなかったのです。 さらに調べていくうちに、産業支援の観点からあってはならない、不適切な事業に巨額の公金が流れている実態も判明しました。その背景をちょうさすると、ことごとく姿を現したのが「クールジャパン」であり、「経済産業省 商務情報政策局 文化情報関連産業課」だったわけです。 六本木のホテルでヴィム・ヴェンダース監督に会った時のことです。「なぜ日本には、こんなに有効な産業施策がないのですか?」 ヴェンダース監督は日本での企画を諦め、次回作を政府支援が潤沢なカナダで撮影すると話していました。その後実際に『誰のせいでもない』(原題:Èvery Thing Will Be Fine)をカナダで撮影しています。 私はヴェンダース監督に「今の日本の産業支援制度の状況は変えないといけません。今回の経験から、この問題に取り組んでいきます」と話しました。ヴェンダース監督には「あなたがこの状況を変える一人になれますよ」と言われました。
2024.05.04
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