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June 29, 2012
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みなさん、こんばんは。
先ごろ新作が発表された中国人でアメリカ在住の作家、ハ・ジンの作品を紹介します。
『待ち暮らし』
Waiting
ハ ジン
土屋 京子 訳
早川書房


全米図書賞&PEN/フォークナー賞ダブル受賞作。
毎夏、軍医の孔林は妻を離婚しようとして帰省しては失敗していた。妻、淑玉には愛情を感じたことはなく、いまや林は看護婦の呉曼那を愛している。そのため、離婚を申請しに人民法院へ出向くのだが、淑玉は裁判官の前に立つと最後の最後に なって考えを翻すのだった。だが軍規により、別居が18年を過ぎれば、相手の同意がなくても離婚が成立する。


主人公孔林を一言で説明するならば、「人は悪くないのよ。」そして必ず「だけどね…」がついてくる。その「だけど」につづく言葉は優柔不断である。妻に愛情を感じてないのなら、なりふり構わず離婚して結婚を選べばいい。でも、やっぱり地位は捨てたくないし、血を分けた娘は可愛いから、離婚を押し通せない。つまりはどちらも捨てたくないから、一番長くかかる方法を選んでしまう。そんな彼に比べれば、呉曼那の方が、よっぽど思い切りがいい。見切りをつけて2度程見合いもするのだが、これは相性が合わず失敗。結局ずるずると彼の優柔不断につきあわされてしまう。まあ優柔不断の裏返しは優しさだから、曼那にとっては彼を非難一辺倒という目では見ていない。
現状に不満のない妻を単純に善とするならば、自分達だけの幸福を追求しようとする曼那と孔林は文句無しにヒール(悪役)だ。でも計算高かったり、自己中心的であっても、根は真面目で妙に不器用な所がある二人を、そう単純に悪を振り分けられない。所謂人間臭さをふんだんに持っているので、ちょうど全否定・全肯定の真ん中を浮遊しているのだ。但しこの二人、最初は結婚する事=手段と幸せになる事=目的がイコールだったのだが、途中から両者の関係が変容してくる。いざ目的を果たし結婚したら、ちっとも幸福なんかではなかったのだ。そうなると、幸せになる手段は使ってしまったのに、目的だけが果たせてない。だから二人は、取り戻せない年月や我慢という犠牲と相殺するために、一生懸命に目的=幸福な状態に、現状を合わせようとする。でも、これは初めから無理だ。理屈では解りきっていながらも、この無理を通そうと四苦八苦する状況は、当人にとっては悲劇であり、周囲にとっては喜劇(ファルス)となる。そんなファルスは、結局18年間幸福を待っていたはずの二人が、いつのまにか幸福を追い越してしまっていたという、やや辛口の結末を迎える。
それにしても、文化大革命の真ん中を突っ切っていたのに、これほど巧妙に批判を避けた本も珍しい。





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最終更新日  December 28, 2020 11:42:04 PM
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