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January 15, 2015
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フランスのテロ事件の衝撃も冷めないままに、イスラム国の少年兵の映像が流れました。
憎み合うことの対極にあるのが愛です。こちらの短編集のタイトルも愛。

ノーベル賞作家アリス・マンローの短編集を紹介します。

愛の深まり
The Progress of Love
アリス・マンロー

ある日、父から母の死を知らされた私は、母との過去を回想する。それは同時に、母が怒りで祖父の遺産の紙幣を全て燃やした過去にも繋がっていた。ところが、ある日訪ねてきた叔母は、母とは違った祖母の行動を話し始めて…。

 表題作は、
父が母の死を告げる現在

母の話に登場する祖母が取った行動―遠過去
の三層構造になっており、遠過去のわだかまりが近過去の事件を引き起こし、更にそれが語り手である私の人生にも影響してくる。母が紙幣を燃やしたせいで、貧乏な暮らしを強いられた私は進学を諦めた過去があった。もしこの物語が長編なら、叔母によって根拠が揺らいだ転部から、家族それぞれの葛藤―母への怒りから許しへと向かう心理過程―をじっくりと描くところだが、短編である本作では、この過程はさほど引きずらず、


愛も恨みも内にこもり、もはや両者の区別がつかないくらい深く根を下ろし、やがて人々は錯覚する。大昔からずっとこんなふうだったのだ、と



という達観した現在の私の感想で、あっさりと流されている。

 かと思えばひきずる思いもある。『コケ』では女性スーザンの元に、元夫ディヴィッドが現在の恋人キャサリンを連れてくる。ところが彼はスーザンに「実は今気になる子がいて、その子の写真をキャサリンに見せるとマズイから預かってほしい」と頼む。ディヴィッドのことが、実はまだちょっと好きなスーザンは、彼の今カノ候補ディナの写真を見て「コケみたい」と言うが、ディヴィッドは全くスーザンの気持ちに気付いていない。スーザンの視点からはディヴィッドが「恋多きチョイ悪男を気どっていい気なもんだ」と思えるが、挿入されるディヴィッド視点の物語では、実は新しき恋がまだ彼の一人相撲でしかない事が読者にだけ明かされる。ディヴィッドが置いて行った写真をじっと見つめるスーザンで終わっているラストは、まだここから少し波風が立ちそうな予感が漂う。

 人生山あり谷ありだ。とはいいつつも、いつも深い谷と高い山ばかりではない。時々ふっと現れる水たまりや、思いがけない曲がり角もある。ある時は人はそこを避け、ある時はその中に飛び込む。そしてその時、その時、彼等は何かを感じている。だが、人の心にはルールはない。人によって、感じるポイントも深さも違う。しかし、長い年月が経ってしまうと、それらのわずかなでこぼこは、山や谷に比べて印象は薄く、あった事すら忘れられてしまう。ましてや、どう思ったかなど、はるか記憶のかなただ。けれど、確かにその瞬間はあって、その積み重ねで私たちの人生はできている。そんな、忘れられてしまったかもしれない、瞬間と、その時の気持ちを、写真のように切り取って、わかりやすい文章に載せてはいどうぞ、と差し出された本編を手に取れば、あなたも、どこか既視感がある瞬間を味わえるかもしれない。


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最終更新日  January 15, 2015 12:03:54 AM
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