「第三の鳩の伝説Die Legende der dritten Taube」(籠碧 訳)は聖書に登場する第三の鳩が主人公だ。え、そんなのいた?と思う人はノアの箱舟を読み返すべし。ノアは三回鳩を飛ばしている。一度目は鴉と一緒に飛ばして鳩だけが戻ってきたので「地上がまだなく、鳩が降り立つ場所がなかった」とノアが考える二度目は鳩がオリーブの葉を口に咥えて戻ってきたので大洪水が終わった事を知る。そして三度目に飛ばした鳩が戻ってこなかったことで、ようやくノアは上陸を決断する。三度目の鳩は大洪水を経て浄化された地に住むはずが、途中で争いが起こり、今度は安住の地を失ってしまう。第一次大戦中は反戦活動を行い、第二次大戦中はロンドンへの亡命を皮切りに世界を巡り、妻と共に自殺したツヴァイクは、つまりはオリーヴの葉を置き損ねた第三の鳩である。
さて、二つ哀しい話が続いた後の残りの二つは希望がキーワードだ。「バベルの塔Der Turm zu Babel」(宇和川雄訳)は、こちらも有名な、神が起こって人間の作った塔を壊したら皆ばらばらの言葉を話し始めた塔の事だ。ストーリーはそのままだが、いつか再びバベルの塔が築かれることを期待して終わる。