1940年4月初旬、ひと組の家族がメキシコからアメリカへ入国した。ドイツ人エンジニアのクルト・ミュラー、その妻のサラと3人の子供だ。サラの実家はワシントンD.C.にある名家で、亡くなった父ジョシュア・ファレリーは最高裁判事を務め、未亡人のファニーは息子のデイヴィッドと多くの使用人を抱えて広大な屋敷に暮らしていた。サラたちが来る少し前から、その屋敷には欧州から戦火を逃れて居候となっていたふたりの人物がいた。ルーマニアの貴族ブランコヴィス伯爵とその妻マーサだ。資産をほとんど失ってしまった伯爵は、ドイツ大使館に入り浸って賭博で生計を立て直すことを考えている自堕落な男であり、デイヴィッドと幼馴染同士であるマーサは愛想を尽かして、離婚とデイヴィッドとの再婚を考えていた。18年ぶりに家族と再会したサラたちにクルトは昔話を語り、その過去に反ファシスト的な疑惑を感じた伯爵は、ワシントン見物に出かけた留守に、鍵がかかっていたクルトの鞄を開けて、23000ドルという大金と拳銃、それにMFの字が刻まれた勲章を見出す。「この頭文字は、レジスタンスの大物であるマックス・フライダイクと関係あるのでは」と判断した伯爵は、ドイツ大使館にいるナチス協力者ブレカーに報告に行く。ファニーとデイヴィッドに、クルトは「自分はレジスタンスのメンバーである」と真相を語り、大使館から戻った伯爵は「フライダイクは強制収容所に入れられているので、助けたいと思ったら1万ドルと引き換えにクルトの身元を明かさない」と語る。ファニーは自分たちがその金を出す、と提案し、それに対してクルトは異議をとなえ、伯爵を銃殺する。その屋敷からひとり立ち去ることにしたクルトは、家族たちに別れを告げ、同志フライダイクを助けるため欧州に戻る。ファニーは「We've been shaken out of the magnolias.モクレンの季節は終わった」とつぶやく。その年の冬、クルトの長男ジョシュアは、父親のたどったであろうシュトットガルトへの道を地図でなぞり、母親に、自分も父と同じ生き方を選びたいと語る。サラはジョシュアを抱きしめて涙を流す。