2026.10.05
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カテゴリ: AI小説



なかなか風邪が抜けないんだけど、風邪をひいたという人に聞いたらもっと症状がひどいみたいだから俺は大丈夫なのかもしれない。
ということで今日も会社で仕事。
帰ってきたら眠かった。

今日は何の日

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タイトル『邪神は食後にお帰りください』

僕がリタの工房で住み込みの助手を始めて三か月。まだ錬金術より鍋の焦げ落としのほうが上達している。
「完成した」
リタは、橙色に輝く小瓶を掲げた。
三日間の徹夜で髪は鳥の巣になり、薬品で穴の開いた袖から肘が出ている。それでも笑顔だけは、王立錬金術院を追放された日よりずっと晴れやかだった。
僕は作業台の椀を指さした。
「それ、夕飯に入れるやつ?」
「神を呼ぶやつ」
「夕飯の隣で作らないでくれる?」
椀には、大根と卵の煮物が冷めかけていた。
この工房では、調理台と実験台を兼用している。理由は狭いからだ。事故が起きない理由は、まだ起きていないからだ。
リタは分厚い革表紙の本を開いた。
「祖父ちゃんの遺した召喚書。やっと読めたの」
棚には、赤い眼鏡をかけた老人の肖像が飾られている。異世界から来たという彼女の祖父は、生涯、自分の職業を「接客業」としか言わなかったらしい。
「ここ。『この一滴を灯火に落とせば、飢えたるもの、戸口に至る』」
「呼んでどうするんだよ」
「願いを叶えてもらう。借金を消して、屋根を直して、錬金術院の連中に謝らせる」
「最後のが一番難しそう」
リタは蝋燭に薬液を垂らした。
炎が黒くなった。
窓の外から街の音が消えた。
そして扉が、叩かれた。
三度。
扉を開けると、夜空が立っていた。
星々の隙間に濡れた歯が並び、その奥で、見てはいけないものがゆっくり瞬きをしていた。
僕は扉を閉めた。
「出た」
「見ればわかる」
「閉めたから、もうわからない」
扉の向こうで声がした。
声というより、墓石を地面の下から引っ掻く音だった。
――招いたな。
リタが慌てて本をめくる。
「あった。注意事項。『招かれしものは、家主の許しなく帰ることあたわず』」
「こっちに有利な決まりだね。帰ってください!」
――この家の主は、お前ではない。
僕はリタを見た。
リタは少し胸を張った。
「そう。家賃を滞納しているのは私」
誇るな。
扉の下から黒いものが流れ込み、床を這い、椅子の上で人の形になった。
天井近くまである痩せた男だった。顔のあるべき場所には、深い井戸のような穴があった。
――我が名を知れば、耳が腐る。
「じゃあ名乗らなくていいです」
リタは本を読むのに忙しい。
――我が姿を見れば、心が砕ける。
「今、手が離せないので」
――我は、飢えている。
「そこは聞こえた!」
彼女は椀を男の前へ押し出した。
僕は思わず腕をつかんだ。
「何をしてるの」
「ここに書いてある。『まず温かいものを出すこと。空腹の客と話をするな』」
「それ、本当に召喚書?」
男は椀を見下ろした。
表面に浮かぶ脂が、蝋燭の光を映していた。
長い沈黙のあと、闇の中から白い指が伸びた。
卵をつまもうとしたので、リタはその手を叩いた。
音がした。
ちゃんと、ぺしん、と。
僕は生涯を終える覚悟をした。
「手。洗って」
男の顔の穴で、星がひとつ消えた。
しかし男は立ち上がり、流しへ行った。

邪神は、よく食べた。
大根を食べた。
卵を食べた。
鍋の底に残っていた肉も食べた。
リタが酸っぱい果物を絞ると、しばらく椀の中を見つめ、それから丁寧に最後の汁まで飲んだ。
工房の隅で、床板に生えていた無数の眼が閉じていく。
窓の外に街の音が戻った。
――この味を、我は知っている。
男が言った。
――かつて我を招いた者がいた。
白い指が、棚の肖像を指した。
リタは本から顔を上げた。
「祖父ちゃんを知ってるの?」
――あの男も、我に手を洗わせた。
僕は老人の肖像を見た。
赤い眼鏡の奥で、やけに楽しそうに笑っている。
リタが本を最初までめくり直した。表紙の裏に貼りついていた紙が、ぱり、と剥がれた。
その下に、薄れた文字があった。
彼女は一文字ずつ読んだ。
「……夜間食堂、常連客名簿」
工房が静かになった。
僕は光る小瓶を見た。
「じゃあ、それは」
「呼び鈴」
「召喚陣は」
「席の配置図」
「巻末の、魂を抜かれた人たちの絵は?」
「ツケを踏み倒した客の似顔絵」
男は、わずかに肩をすぼめた。
リタの指が止まった。
開かれた頁には、顔のない痩せた男の絵があった。
その下に、日付と料理名と金額が、何頁にもわたって並んでいた。
祖父は実に几帳面な人だった。
最後の行には赤い字で、こうある。
〈次に来たら、絶対に帰すな。〉
リタはゆっくり顔を上げた。
男も、ゆっくり立ち上がった。
――今宵は、よい宴であった。
扉を開ける。
出られない。
もう一度、開ける。
やはり出られない。
家主の許しなく帰ることあたわず。
リタの笑顔が、小瓶よりも明るくなった。
「お客さん」
――我は、王国を七つ滅ぼした。
「お支払いは?」
――海を干上がらせ、太陽を病ませた。
「現金で?」
男の顔の奥で、星々が落ち着きなく動いた。
――……持ち合わせがない。
リタは僕を見た。
僕は流しを見た。
三日分の食器が積まれていた。

翌月、工房は食堂になった。
料理はリタ。
会計は僕。
洗い場は、名を知れば耳が腐るもの。
彼には腕が何本もあったので、非常に助かった。
ある夜、王立錬金術院の院長が食事に来た。
かつてリタを「召喚術の才能がない」と追放した男だ。
彼は料理を気に入り、厨房を覗き、それきり動かなくなった。
泡だらけの邪神が、皿をすすいでいた。
「き、君は……あれを使役しているのか」
リタは鍋をかき混ぜながら答えた。
「完済するまでです」
院長は膝から崩れ落ち、その場で復職と研究室と多額の助成金を申し出た。
リタは少し考えた。
それから、名簿を開いた。
「まず、祖父の代の飲食代を」
院長の名前も、あった。

おわり







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最終更新日  2026.10.05 18:39:23
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