2026.10.06
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カテゴリ: AI小説



今日はちょっと暖かかった。
天気予報では雨ってなってたけど、逸れたのかなぁ。
そして今日も眠い。
まだ風邪が抜けないし。

今日は何の日

国際協力の日
役所改革の日
国際ボランティア貯金の日
天むす・すえひろの日

夢をかなえる日
とくしまNAKAドローンの日
でん六の日
メディカルスパトロンの日
石油の日
登録販売者の日
どろソースの日
ドムドムハンバーガーの日
みんなで重力の謎を考える日
明治北海道十勝カマンベールの日
アトマイザーTRAVALOの日

手巻きロールケーキの日
メロンの日
世界宇宙週間
国際文通週間
古紙リサイクル週間


タイトル『邪神討伐は、保険がききますか』

 月が割れた夜、王国は勇者を召喚した。
 正確には、勇者を召喚する予定だった。
「前職を伺っても?」
「歯科技工士です」
「剣は?」
「作ったことないです。奥歯なら」
 神官は目を閉じた。
 祈っているのかと思ったら、召喚費用を暗算していた。

     *

 それから三か月。
 私は黒い外套を羽織り、浮遊都市の外れに立っていた。右手には青い結晶、左手には依頼の地図。背中には保存食と、帰れない故郷への未練。
 足元で、一つ目の魔獣が言った。
「今日こそ勇者らしい仕事だぞ、ナギ」
「前回もそう言ったよね」
「巨大な獣を救っただろ」
「入れ歯を直したの。しかも代金が干し草」
「馬としては最大限の誠意だ」
 彼の名はモク。
 私の監視役として王国から派遣され、現在は食費の主な原因になっている。
 今回の依頼書には、こうあった。
〈月の亀裂より目覚めつつある、古き神の顎を封じよ〉
 報酬は金貨三千枚。成功すれば、故郷への帰還術も研究してくれるという。
「研究って、帰れる保証じゃないよね」
「前向きな言葉だ」
「前向きに逃げ道を作ってるんだよ」
 頭上を医療飛行船が横切った。最近は毎晩、負傷した冒険者を運んでいる。
 割れた月から声がするのだ。
 聞いた者は正気を失い、山は浮き、海は空へこぼれる。
 これまで七組の討伐隊が挑み、七組とも帰還した。
 全員、両手で頬を押さえながら。

     *

 崖の下では、白衣の研究者が青い球体を観測していた。
「世界の重力異常は、月から届く振動が原因です」
 彼は私の結晶を指した。
「それが月と同じ物質。傷ついた箇所へ押し当てれば、あなたの固有スキルで修復できるはずです」
 私のスキルは〈ぴったり合わせる〉。
 折れた剣を直しても強くならない。鎧を直しても呪いは消えない。
 ただ、欠けた場所へ部品を、恐ろしく正確にはめ込める。
「つまり、月の修理?」
「王宮では、邪神封印と呼んでいます」
「予算が違うんだね」
 研究者は聞こえなかったふりをした。
 私は地図を広げた。
 月内部の通路だという。妙に滑らかな曲線が並び、奥に行くほど枝分かれしていた。
 どこかで見た形だった。
 専門学校の教科書だった気がする。
 思い出しかけた、そのとき。
 月の裂け目が開いた。
 星空の向こうに、途方もなく巨大な目が現れた。
 雲が引きつり、浮島が軋み、世界じゅうの影が一斉に同じ方向へ逃げた。
 声が降ってきた。
『し……み……る……』
 私は地図を見た。
 月を見た。
 もう一度、地図を見た。
「モク」
「なんだ」
「これ、根管だ」
「新しい魔王か?」
「歯の中の通り道」

     *

 この世界の月は、月ではなかった。
 世界の外側にいる巨大な神が、こちらの宇宙へはみ出させている奥歯だった。
 月の満ち欠けは、唇の動き。
 月食は、何か食べている。
 流星群については、深く考えないことにした。
「じゃあ、古文書の『天を砕く咆哮』は……」
「歯痛」
「『神々すら触れ得ぬ深淵』は……」
「神経」
「『いずれ闇がすべてを吞み込む』は……」
「口を閉じるんじゃない?」
「急に予言が生活感を出してきたぞ」
 私は飛行船を借りた。
 船長は乗船を拒んだが、「行かないと今夜、この世界が痛いほうで噛まれる」と説明すると、驚くほど迅速に出航してくれた。
 月面へ近づくにつれ、私の頬まで痛くなった。
 討伐隊が受けていたのは呪いではない。
 神の痛覚が、漏れていたのだ。
 私は伝声器を握った。
「聞こえますか。直せるかもしれません」
 巨大な目がこちらを向いた。
『勇者か』
「技工士です」
『殺しに来たのか』
「噛まないでいてくれたら、違います」
 神は少し黙った。
『前の者たちは、痛いところを剣で刺した』
「それは怒っていいです」
 裂け目の縁には、聖剣が三本、伝説の槍が二本、刺さっていた。
「モク、回収して。持ち主に返すから」
「売れば金貨三千枚くらいにはなるぞ」
「返すから」
「勇者らしさを出す場所が細かい」
 まず研究者の装置で、神と世界をつなぐ痛覚の振動を止めた。
 次に、裂け目へ青い結晶をあてがう。
 必要な形が、頭の中に浮かんだ。
 剣でも、封印の楔でもない。
 あまりに懐かしい、奥歯の詰め物の形。
 私は笑ってしまった。
「異世界まで来て、これかあ」
 〈ぴったり合わせる〉。
 結晶が光を放つ。
 ひび割れを青い光が走り、やがて月は、見事な満月になった。
 浮島が静まった。
 海が元の高さへ戻った。
 神が、恐る恐る顎を動かした。
『……痛くない』
 星々が震えた。
『痛くないぞ』
「舌でずっと触らないでくださいね」
『わかった』
 三秒後、月面を巨大な何かが舐めた。
「聞いてました?」

     *

 帰還した私は、王宮で報酬を断られた。
「依頼は邪神の封印です。あなたは邪神を治療し、むしろ元気にしてしまった」
 大臣はそう言った。
 モクが机へ飛び乗った。
「世界は救われただろ!」
「契約上の問題です」
 私はしばらく考えた。
「わかりました。では、ご本人に請求します」
 大臣が笑った。
「神に、人間の金など払えるものか」

     *

 その晩。
 王都の上空に、巨大な目が開いた。
『保険証が見つからなかった』
 声だけで、大臣のかつらが飛んだ。
『全額、私が払う』
 雲間から金貨が一枚、落ちてきた。
 直径は王城の三倍だった。
 私は慌てて受け取りを辞退し、代わりに故郷への道を開いてもらった。
 神にとって、隣の宇宙へ穴を開けることは、歯に挟まったものを取るより簡単らしい。
 青く光る門の向こうに、懐かしい駅前が見えた。
 モクが私の外套をつかんだ。
「帰るのか」
「うん。まず、歯科医の先生を連れて戻る。あれ、応急処置だから」
「……戻ってくるんだな」
「そのあと、ちゃんと相談しよう」
 モクは鼻を鳴らした。
「土産は、やわらかい菓子にしろ」
 私は笑って、門をくぐった。

     *

 翌朝。
 王国から緊急の手紙が届いた。
〈至急戻られたし。新たな月が出現〉
 添えられた写真を見て、私はコーヒーを吹いた。
 空いっぱいに、月。
 丸いもの、尖ったもの、黒ずんだもの。
 その向こうから、無数の目が、期待に満ちてこちらを覗いていた。
 モクの走り書きがあった。
〈あいつ、近所に紹介しやがった〉
 続いて、昨日の神からも手紙が届いた。
〈腕のいいところを知っていると言ったら、みんな来た。予約は要るか〉
 私は机に突っ伏した。
 帰還より先に、言っておくべきことがあった。
 技工士は、歯医者ではない。
 そして何より——
 この世界は、待合室ではない。

おわり







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最終更新日  2026.10.06 19:31:25
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