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昨日(9月15日)までに購入した本です。蜜猫F文庫9月刊。 スターツ出版文庫3点。声を失った~、後宮のガリレオ3は読了感想UP済です。早くも楽天は品切れらしく、ガリレオのリンクは電子書籍の方にしています。 ベリーズファンタジー10月刊2点。まだ先々月分も読み終えてないので、一先ずこの2点だけ購入。 マーマレード文庫10月刊2点こちらももう1点購入予定に入れてた気がしますが、このレーベルの本を数か月分積んでるんで、今月はこの2点だけで良しとします(^_^;) ベリーズ文庫10月刊3点。佐倉伊織さんは2冊同時発売です。多分内容がリンクしてると思うので続けて読んだ方がいいんだろうなぁ。ベリーズも先月の本を積んじゃってるんで拙い。ムーンドロップス10月刊西篠六花さんの最新作です。先日もちらっと書いたのですが、最近出勤時間が変わりまして中々読書時間が取れない状況です。まぁ、買って満足しちゃってる感もあるんですよね。一先ず確保してあるから安心しちゃうというか。言い訳はさておき、取り合えず明日と明後日は感想記事をUP予定です。
2026.10.16
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11月中旬 ノーチェブックス お飾り妻のはずが、 冷徹宰相様(元ストーカー)に毎夜淫らに愛されています 佐倉紫11月18日 ガガガブックスf 聖女様の飼い猫 毛布野タビ12月9日 双葉文庫 救国の乙女はなぜ死んだのか 駄犬12月10日 Mノベルスf 安心してください! 偽聖女だと私を追放した殿下の判断は正しいです 2 桜井ゆきな12月11日 ルネッタブックス 恋は二の次、だったのに 元フライトドクターの密着取材は、恋の再始動でした(仮) 麻生ミカリ パイロットの元夫になぜか迫られたと思ったら、 秘密の子どもごと溺愛してきます(仮) 白亜凛12月18日 カラフルハピネスコミックス お父さん、私この結婚イヤです! 1212月21日 一迅社文庫アイリス お飾り聖女(仮) 高岡未来12月26日 KADOKAWA単行本 暴虐皇帝の子供を孕んだけど今度こそ逃げます 無憂 灰眼の王と、偽りの花嫁 豊川夢久(敬称略)
2026.10.15
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2026年9月刊スターツ出版文庫著者:小原燈(敬称略)奏祈六家の名門に生まれながら、両親と死別した経験から声が出ず、加護の光も見えない「無能」として、虐げられてきた茜。彼女は、ある呪いによって日の光を浴びられない最強の軍人・嶺士との身代わり婚を命じられる。しかし嶺士は、茜の赤い瞳を「美しい」と全肯定して深く溺愛する。温かい愛に触れる中で、茜の閉ざされた心は優しく解きほぐされ、やがて彼女に隠された伝説の「清姫」の力、そして声を失った過去の真実が覚醒していくーー。呪われた二人が唯一無二の愛で運命を覆す、和風シンデレラストーリー。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 花宵茜=十二の年に両親と死別し、そのショックで声を失った少女。 黒鉄嶺士=影鬼を退治ずる影狩の隊長。 花宵晶子=茜の母方の従姉妹。優秀な奏祈師。 日向雅人=晶子の婚約者で、大店の後継者。 黒鉄千鶴=嶺士の母。元奏祈師。 花宵瑠璃=故人。茜の母。古来より、天音皇国では影鬼と呼ばれる異形に脅かされていた。だが、常人では到底太刀打ちできない存在にも天敵は存在する。神具と呼ばれる楽器と美しい声によって影鬼を鎮める奏祈師と加護を受けた光器で戦う影狩。花宵茜は、かつてその凄まじい力で「清姫」と呼ばれた奏祈師・瑠璃の一人娘だ。しかし、現在彼女は瑠璃の代わりに花宵の家を継いだ叔父の家の居候として使用人以下の扱いを受けている。叔父は勝手して家を出た瑠璃を花宵家の恥と嫌っていた。凡人と駆け落ちしたのならまだ許せた。だが、瑠璃が恋に落ちたのはなんと影鬼。その事実は秘匿されたのだが十数年後、屋敷の軒先に瑠璃と娘の茜が倒れており、深手を負ったらしい瑠璃は既にこと切れていた。叔父も寝覚めが悪いのか渋々茜を引き取ってくれたが、影鬼特有の赤い瞳をしており、その上、口がきけない姪を早々に持て余した。祝詞を紡ぐ奏祈師として声が出ないのは致命的だ。結局ただの厄介者のに金はかけられないということなのだろう。それでも茜は懸命に働いた。そんな彼女を忌み嫌い、こき使っているのが叔父の娘・晶子だ。優秀な奏祈師でもある晶子は瑠璃ほどではないものの、その腕を見込んで武具に加護を施してほしいと依頼が絶えない。加護付きの武具は光器となり、そのほとんどが影鬼の討伐部隊・影狩に卸され、残りは武具店で販売される。今日はその武具店の跡取りである雅人が来ているから晶子も機嫌が良い。二人は婚約しており、晶子が成人したら祝言を上げるそう。だが、茜は雅人のことが苦手だった。端正な顔立ちで貴公子のような立ち居振る舞いの彼に晶子は熱を上げているけれど、度々雅人から向けられる厭らしい目線に寒気を覚え、極力目を合わせないようにしている。あまりこっちを見ないで欲しい。でないと雅人が帰った後、嫉妬に狂った晶子に折檻されてしまうから。娘が姪に辛く当たっても叔父はいつも見てみないふり。この家で私を助けてくれる人はいない。漸く解放されて部屋代わりの納屋に戻った茜は、少ない持ち物の中から黒い石の耳飾りを耳朶に付けると再び外出。裏庭を抜けると遠くに山が見える。深く息を吸った彼女は心で母が教えてくれた祝詞を唱え、祈りを捧げた。数日後、門の雪かきをしていた茜は黒ずくめの男に声をかけられた。男は黒鉄嶺士と名乗ると当主に取り次いで欲しいという。そして身に着けていた手袋を外すと、冷たいだろう?そう言って茜の手に嵌めた。喋れないと知るや皆舌打ちをしたり面倒そうな顔をするのに・・・。彼のくれた手袋は耳飾りと同じく茜の宝物になった。翌日のこと、叔父に呼び出された茜は黒鉄嶺士に嫁ぐよう命じられた。全身黒ずくめの上顔を頭巾で隠しているなんてきっと不細工に違いない、影狩として有名な男でも結婚なんて御免だと部屋に閉じこもってしまったのだそう。どうやら、彼は昨日晶子に求婚しに来たらしい。彼女は既に婚約しているが、武具屋の跡取りと影狩の隊長では叔父としては黒鉄家に嫁がせたいと思うのは当然だ。しかし、雅人と結婚できないなら死ぬとまで言われてはなぁ。困り果てた叔父は、嶺士が花宵の娘を貰い受けたいと言っていたのを思い出し、ならお前でいいか、と思い至ったのだと。晶子からもそれがいいとせがまれてね。叔父は悪びれもせずそう言った。その夜、晶子のお下がりの振袖を着せられ、嶺士を待っていた。約束通りの時間に現れた彼は昨日のような黒ずくめではなく、影狩の制服姿だった。なんて、素敵な方・・・。彼は茜を見ると目を瞠り、その耳に光る耳飾りを見ると破顔した。もしかして君はいつもこの裏の山に向かって祝詞を唱えていないかい?何故それを?疑問に思ったが頷く、やはり君かと随分嬉しそう。話が違うと破談になってもやむなし、そう思っていた叔父は予想と違う彼の反応に困惑。本当にこの令嬢を貰い受けていいのだな?と問われ、戸惑いながらも承諾した。しかし、晶子は嶺士が美形と判るや私が行くと言い出たのでギョッとした叔父が慌てて引き留めた。その子ったら私の縁談を横取りしようとしたのよ。飽く迄悪いのは茜だと宣う晶子に嶺士はブチギレ。縋りつく晶子を振り払った。お前など彼女の足元にも及ばない。言われて、そんな無能より私が格下だというの?!さっきまでの態度はどこへやら、嶺士を睨みつける。茜、声をかけられ顔を上げた彼女に、この二人にお前の力を見せてやれと嶺士は微笑んだ。声は無かった。しかし、心で祝詞を唱えただけで茜の身体が凄まじい加護の光に包まれたのを、信じられないとばかりに叔父は唖然として見ていた。どう見ても姉以上の力なのではないか。そして晶子もまた、自分より遥かに強大な力の奔流を見て敗北感を味わっていた。悔しくなってつい、その子は影鬼との混血なのよ!と花宵家の秘密を暴露。しかし、嶺士はそれがどうしたと興味なさげな反応を見せると、茜を促し立ち去った。彼女の荷物を取りに納屋に寄った嶺士は酷い扱いを受けていたと悟って何とも言えない気持ちに。持って行くのはこの耳飾りと嶺士がくれた手袋だけでいいという茜が愛しくなり、馬で皇都に向かう。黒鉄邸に着いたのは翌日の昼。日中なのにほとんどの雨戸が閉まっていて薄暗い印象を受けた。が、外観とは裏腹に使用人の美桜は明るく、嶺士の母・千鶴は茜を歓迎した。あれから十日、買い物に出ていた茜は影鬼に遭遇、それを倒し襲われていた少女を助けたはいいが、嶺士が何故か日の光で大やけどを負ってしまった。聞けば、六年前、彼は影鬼の呪いを受け、日の光が天敵になってしまったのだという。痛々しいやけどを治してあげたくて、これは皆を癒してあげられる詞なの、母が教えてくれた祝詞を唱えた。すると見る見る火傷が治って二人はビックリ。これは呪いも解呪できるのでは?と期待したが、さすがに無理だった。やはり、その影鬼を見つけ出し倒さなければならないようだ。一方、晶子は茜の才を目の当たりにして嫉妬に狂っていた。父はもう関わるなと言うけれどこのままじゃ収まりがつかない。そんな彼女の耳に何者かが語り掛け・・・。希代の奏祈師と影鬼の混血なんて、まぁ凡人なわけないよね。晶子はそれにいち早く気付いていたので茜を虐めていたのです。それ+婚約者がちょっかい出してたのもあって面白くない気持ちも判る。この晶子の気持ちも判らないでもないんですよ。父親から瑠璃を越えろと期待をかけられ必死に努力するも、やはり清姫には程遠いと失望されてはやるせない。だからと言って虐めて良い理由にはならないのと、暗黒面を影鬼につかれて雅人と共にとんでもないことをしでかします。そして、嶺士ですが、過去に茜と会ったことがあり、あの耳飾りは黒鉄家当主に代々受け継がれているものをお守り代わりに彼女に渡していたのです。再会した時は痩せ細って大分印象が変わっていたので気付かず、花宵の娘=晶子と思い込んで求婚。当の晶子が嫌がってくれたおかげで探し求めていた茜を宛がわれたのは本当にラッキーでした。っても、大抵身代わりの方がお目当なのはデフォですから。最終的に二人の愛の力で因縁の影鬼を倒すことに成功した嶺士の呪いは解け、茜の父が突然変異の影鬼だったことが判明。このお父さんと瑠璃さんとの出会いとかちょっと気になります。評価:★★★★
2026.10.14
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2026年7月刊蜜猫F文庫著者:当麻咲来(敬称略)伯爵令嬢ベアトリスは、孤児ルチアの愛らしさに心を奪われ、彼女は自分の『推し』だと目覚める。そんなルチアを助けたことで騎士団長ユージーンと出会う。彼は王都を守る騎士団長で、縁談相手だった。やがてルチアが彼の捜していた姪だと知り、推しの幸せを願う二人は結婚をして三人で家族になることに。「貴女は俺の運命の女神なんだ」推しのための結婚のはずが、一途な侯爵様に甘く求められ蕩ける溺愛生活が始まってー!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 ベアトリス=無気力な伯爵令嬢。ルチアと出会い推し活に目覚める。 ユージーン=王立騎士団団長。ベアトリスに片思いしていた。 ルチア=孤児。後にユージーンの姪と判明し引き取られる。 ローラ=ベアトリス付きの侍女。 ナタリア=前エヴァリット侯爵夫人。ストラーゼ侯爵=信心深いことで有名な貴族。大商会を運営するダルトン伯爵家の末っ子・ベアトリスは恵まれ過ぎている環境故に夢中になれるものも無く怠惰で無気力な日々を過ごしていた。せっかく綺麗に生まれたのに勿体ない。母・ゾーイは、引きこもり気味の娘の将来が心配で堪らないらしい。もう二十歳なのだから早くお嫁に行って安心させてちょうだい。そう言ってどっさりとテーブルに積まれたのは釣書と絵姿。面倒くさい、でも確かにもう私、そろそろ行き遅れに近いのよね。とは言え、自分に母のような立派な妻になれるんだろうか。そもそも人にも恋愛にも興味がない。こんなんじゃいけないと以前侍女のローラから推し活はどうでしょう?と薦められたけれど、あまりピンと来てなかったのよね。大人気小説「恋する聖女様」のヒーロー・アレクサンドロスの大ファンで、それを生きる糧にしているローラは毎日楽しそうだ。彼女の場合は架空のキャラだけど、何を推すかは自由だそう。釣書を読むのにも飽きて、良いご縁があるようルトリス神様にお祈りしてきます。そう言うとそそくさと立ち上がった。お母様は信心深いから助かった。神殿に行くと言えば解放してくれるのではと言う目論見が当たってほくそ笑む。神殿の廊下には信者からの奉納品が飾られている。ダルトン伯爵家名義の品を観ながらふと足を止めた。ある一角から全てとある貴族の名の奉納品ばかり。相変わらず凄いわね、ストラーゼ侯爵は。財産のほとんどを寄進してるんじゃないかしら。礼拝堂に入ってルトリス神に祈りを捧げる。どうか私にも心から愛する存在が出来ますように。願ったのはそんな些細なこと。組んでいた指を離すと、隣に黒髪の騎士がいてビックリ。素敵な人・・・。思わず見惚れてしまったがあまり凝視してても失礼か、と立ち上がる。失礼します、小声で言うと頭を下げて礼拝堂を出ると神殿で飼われててるんだろうか、白い子犬がいてこちらを見ている。あら可愛い。思わず破顔すると「そなたの願いはきっと叶うだろう」急に頭に響いた声に驚いて辺りを見回す。該当者が見当たらず、気のせいかと待っていたローラと合流し、馬車止めに向かったが待機しているはずの馬車が見当たらない。どうやら指示の行き違いで帰ってしまったらしい。まぁ、歩けない距離でも無し、たまには歩こうと大通りに歩を向けた。民たちの活気的な様子に思わず笑みが浮かぶ。そんな中目に留まったのは四、五歳くらいの女の子が街頭に立ってパンを売る姿。なんてかわいい子なの!?顔立ちは整ってるし声も愛らしい。感じたことのない胸の高鳴りに戸惑った。もしやこれが推しを見つけたってこと?女の子に近づき、中腰になるとおススメを二つ貰える?と声をかけていた。砂糖とバターたっぷりのパンを一つ受け取ると一つは女の子に手渡す。飲み物を買って来てくれたローラに礼を言い、パンにかぶりつく。美味しい。ルチアと名乗った少女は相次いで両親を亡くし、孤児になったのを見かねたパン屋の女将が面倒を見てくれているそう。恩返しのためにこうして手伝っているのだと聞いてその健気さに身震いする。やっぱり可愛い、屋敷に連れて帰りたい。が、ローラに止められ我に返った。ならせめて、とルチアの籠に入っていたパンを全て買い取ると明日店にも行くわと約束する。受け答えがしっかりしてるし、きっと母親の躾がいいのだろう。漸くローラの気持ちが判ったわ。自分にも推しができて初めてベアトリスの心は満たされたのだった。ふと見るとルチアが売り上げの入った皮袋を忘れている。慌てて追いかけると、ルチアが黒づくめの男たちに腕を引かれ、大きな麻袋に入れられそうになっいぇいる。ルチアっ、そう叫んで間に入ったベアトリスは身に覚えのない力を使っていた。何もかも止まっている。まさかこれって時間停止?そんなことより、と我に返って我に返り、犯人からルチアを奪い取ると脱兎の如く走り抜ける。しかし、引きこもり生活の弊害か、あっという間に息が上がって立ち止まってしまった。絶対体力つけよう。ゼーハゼーハーと呼吸しているうちにいつの間にか魔法が切れたのか、男たちが迫って来た。危機一髪のところ、助けてくれたのは先程の騎士。あっという間に賊を叩きのめすと大丈夫ですか?と声をかけられた。彼の話では最近、ルチアくらいの年齢に子供の誘拐が増えているらしい。じゃあ、今のも?そう思うとゾッとする。パン屋で暮らしているそうだけどまた狙われたら大変だ。念のため警備が厳重な伯爵家で預かると進言。ユージーンと名乗った騎士はパン屋の女将に言伝を部下に頼むと、呼び寄せた馬車に三人を乗せた。ゾーイはルチアの可愛らしさに大興奮し世話を買って出て、今は風呂に入らせると浴室に連れて行った。が、数分もしないうちにルチアを伴い戻って来て、握りしめていたものをユージーンに渡した。兄君・エリオット様ですよね?ルチアが首から下げていたネックレスはロケットになっていて、中には小さな絵姿が入っていた。黒髪の青年と茶色の髪の女性はルチアの両親だろうか。ロケットを見て、ユージーンは「兄です」と言って項垂れた。お母さんはどうした?片膝をついてルチアに目線を合わせ尋ねると、既に亡くなってるという答えに彼女を抱き寄せた。君は俺の姪だ、君だけでも生きていてくれて本当に・・・。そう言って声を詰まらせる彼の姿に胸が痛んだ。ユージーン・エヴァレット侯爵。王立騎士団団長でもある彼にはエリオットという兄がいた。しかし、爵位を継ぐ前にメイドのタニアと恋仲になって駆け落ち。彼は必死に二人を探したけれどようとして見つからずでやっと手がかりを見つけた時にはエリオットは流行り病で亡くなっていたという。ならせめてタニアとその娘だけはと探し続けたが、まさか偶然助けた子が姪だったとは夢にも思わず。ありがとうございます、ベアトリス嬢と感謝された。ゾーイはエヴァレット侯爵家とも親交があったからエリオットに気付けたのだ。多分、自分だけなら全く気付かなかったはず。自分はただパンを買い、救出の手助けをしただけ。ほとんどがユージーン自身の手柄ではないか。そのやりとりを見ていた母はなんて運命的な出会いなんでしょうと大はしゃぎ。実はエヴァレット侯爵家からの釣書もあったの気付いてた?ゾーイの言葉に、え!?探してみると三冊目に彼の名前と絵姿が。ユージーンは妙に嬉しそうだし、もしかしなくても本当にあれって神のお告げだったの、とオロオロ。大層乗り気の彼から後日求婚書が届いて、二人の結婚が決まった。ルチアはユージーンが引き取ることになり、ベアトリスも喜んだ。手続きは済んでいるので入籍後は二人の子として侯爵家で暮らすことになる。五か月後、挙式の日に漸く前侯爵夫妻に対面したベアトリスは、義母に当たるナタリアの態度に色々納得がいった。お義父様は温厚で優しそうな人なのになぁ。気位ばかり高いいけ好かない女性。それがナタリアの第一印象だ。そりゃ、ユージーンが会わせたがらないわけだわ。うちのことも下賤な商人風情と見下してたし、なんでかユージーンのことも馬鹿にしてたのが気になる。後に聞いた話によれば、エヴァレット侯爵家はバリバリの文官家系で、騎士になった次男を疎み野蛮人と疎んでいるらしい。元々、長男贔屓だったのもあって親子仲も良くないと。ルチアも母に任せたら大変なことになりそうで、そう言って険しい顔をした彼に同意する。推しと暮らせるのだし、彼の決断はよくやったとしか思えない。どちらにしても、私もお義母さまと仲良く出来そうもないから。そうして始まった新婚生活。ゾーイの教育の賜物か、ルチアもちゃんと貴族令嬢に見える。義父には悪いが、碌でもない事をしそうなので義母を領地に連れ帰って貰った。まったく、タニアさんの悪口をルチアに言うなんてどういう神経してるんだか。おかげで烈火のごとく怒り狂ったユージーンに追い出されたのよね。あれには自分も腹が立ったからよくやったと夫を褒めたい。なんてったって、彼もルチアの大ファンだものね。推しの幸せは自分の幸せと同義。同担と結婚出来て本当に嬉しいわ。ルンルン気分のベアトリスは、実はユージーンから熱烈に惚れられ、姪をだしに求婚されたのだとは夢にも思っていなかった。それから暫く経った頃、巷では未だに子供の誘拐事件が頻発。どれも神殿近くで起こっていたのと目撃証言から神殿関係者の犯行ではと思われているが、捜査協力を頼んでも断れまくりで一向に進展しない。しかも、パン屋の女将の話によると何度かルチアの行方を聞かれたらしく、あまりにのしつこさに騎士団長が引き取ったと言ってしまったという。だがまぁ、犯罪者がわざわざ騎士団長の家に乗り込んでくることは無いだろう。パン屋の女将が口を噤んで害されたらルチアが悲しむ。一方、その頃、二人の留守中の屋敷にナタリアが訪れ、ルチアが連れ出されたと連絡が入り・・・。子育て+聖女ものです。神のお告げ通り、トントン拍子に結婚が決まり、推しである義娘を溺愛していたベアトリス。そのうち、夫のユージーンからも想いを告げられ、かつてない幸福を味わってました。実は子供の失踪事件は、聖女捜索と関係していて、それを指示していたのは莫大な寄付によって神殿を思うまま支配していたストラーゼ侯爵。しかし、神殿は神の御告通り聖女を探してたのに、ストラーゼ侯爵は単なるロリコン。この身にドンピシャなルチアを我が物にせんとしていました。そんな男にナタリアが手を貸したことでルチアはローラ共々連れ去られてしまい大ピンチ。こうなったら神さまから貰ったこの力で、と意気込むベアトリスはユージーン共々神殿に乗り込みます。やがて二人は黒幕と対峙し、という展開です。あの姑、やっぱりやらかしたか~。まぁ当然、ユージーンの怒りを食らい、ストラーゼ侯爵共々厳しい罰を受けることになるのですが、本当に聖女だったルチアを精神的に追い詰めたり、罰が当たって当然。無事救出されたルチアの願いは早く弟か妹が欲しい。無邪気に笑う彼女の横には神の使いである神獣・フェリルウが寄り添う姿が描かれて物語は幕。ファンタジー味の強い内容でしたが、今まで無気力だったヒロインが推し活にハマってどんどんアグレッシブになっていく様が共感も出来て面白かったです。評価:★★★★☆
2026.10.13
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2025年7月刊レジーナブックス著者:美杉日和。(敬称略)我が家はいつでも可愛い妹を中心に回っていた。両親はいつも妹を優先し、妹はなぜか私のものばかりを欲しがった。大好きだった人形や誕生日のプレゼント、そして今度は私の婚約者。幼い頃からの婚約者アレン様を妹が寝取り、彼の子を身ごもった。妹は私に婚約者を譲るよう迫り、両親たちも了承した。ただ彼らは知らない。アレン様が自身の領地運営を全て私に任せていたことを。その領地は破綻寸前であることも。そう、彼の資産も性格も、全てにおいて不良債権だったのだ。今更いらないと言われても、モラハラ男なんてお断り! 婚約解消した後は自由自適に暮らすつもりだったのに、なぜか幼馴染の冷徹宰相に婚約を申し込まれて……!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 オリヴィア=節約上手の才女。婚約破棄されたのを機に家を出た。 マルク=宰相。オリヴィアに片思いしている。。 ユノン=オリヴィア付きの侍女。 アレン=オリヴィアの元婚約者の顔だけ男。 シーラ=オリヴィアの妹。本当にあんなクズ男と結婚されるつもりですか?身支度を手伝いながらぼやく侍女・ユノンの言葉にオリヴィアは苦笑した。自分でもわかっている。だが、貴族の婚約は謂わば「契約」だ。相手がどんな性格破綻者だろうが、相手は侯爵。格下のこちらからは婚約の解消はできない。それにもう、挙式は三か月後に迫っている。そんなことより、アレン様も所帯を持つのだからいい加減しっかりしてくださらないと。義母に当たるラルド前侯爵夫人に頼み込まれて侯爵家の仕事を手伝わされている身としては、今後もこんな生活が続くのかと思うといささかうんざりしている。ただでさえ、このサルート男爵家のことも父はオリヴィアに丸投げ。おかげで毎日大忙しだ。どうしてこう私の周りの男たちは自分の仕事もできないのっ!なのに、彼らはオリヴィアに感謝一つしない。特に両親は次女のシーナを猫可愛がりして、オリヴィアのことは放ったらかし。完全なる姉妹格差で育った身としては家族への情も薄れつつあった。アレンの方は見目と侯爵という地位のせいで自他ともに認めるプレイボーイ。一時に何人も相手にしているらしくそのうち刃傷沙汰になるのではと気が気でない。ユノンが心配するのも当然なのだ。ユノンは元々冒険者だった。しかし、依頼をこなしている最中に大怪我を負い仲間に捨てられた。死にかけの所をオリヴィアに拾われ怪我が治った後は侍女として働いている。腕っぷしも強いので護衛代わりにもなるし、彼女のさばさばした物言いも気にいっているオリヴィアとは主従というより親友に近い。ユノンにしてみれば恩人が不幸になるのが判るだけに不安なのだろう。挙式間近になってもこうして意思確認してくるのだ。そんなある日のこと。いつものように仕事をしていると珍しくシーナがやって来て、アレンを譲れと宣った。またいつものおねだりか・・・。いくつになっても何かと私のものを欲しがって。呆れて大きく溜息を吐くと、アレン様はぬいぐるみやアクセサリーじゃないのよ。そう簡単にどうぞ、とはあげられないの。妹の頭でもわかるように噛んで含めるように諭すと、だって私、アレン様の子供を妊娠してしまったのだもの。と見下すように微笑んで見せた。お父様とお母様に話したらお姉様に譲ってもらいなさいってぇ。続く言葉にオリヴィアは頭を抱えた。そういうことか、最近仲良さげだなと思ったのよ、この二人。私に仕事を押し付けて妹と浮気とか、正気なの!?あの男!!妹の口ぶりでは両親は本当に婚約者を挿げ替えるつもりなのだろう。となれば、こちらが何を言おうと状況は覆らない。やってくれたわねぇ、ホント。その翌日、アレンから正式に婚約破棄された。正直言えば好きでも何でもないので別段ショックもない。ユノンに言わせれば、良かったじゃないですか、あんなクズ男にお嬢様は勿体ないです。と上機嫌。まったくもってその通りで、これを機に祖母から相続したオリヴィア名義の領地に引っ越すことにした。でもその前にグラン宰相にお詫びして招待状を送った家に新婦が変わる旨手紙を送っておかなければ。それにしても、お嬢様が出て行ったらこの男爵家とラルド侯爵家は大変でしょうねぇ。容易に想像がつくのかユノンは愉快愉快と大笑い。夜会の日、グラン宰相に会うべく早めに会場入りしたオリヴィアは目当ての人物を見つけて少し時間を取ってもらった。マルク・グランはグラン公爵家の嫡男で、今年新しい宰相になった。オリヴィアとは幼馴染であり、その縁で王家御用達の教会の使用まで手配してくれた。なのにこんなことになってしまって・・・。本当に申し訳ないけれど、と前置き結婚がだめになったことを告げた。婚約破棄されたの、私。そう告げるとマルクは驚愕して、一体どうして!?と掴みかかった。経緯を話すと、あいつ・・・!!と怒りの表情を見せた。少しすると落ち着いたのか教会の方はこちらでキャンセルしておくといい、これからどうするつもりなんだ?と尋ねた。祖母の遺してくれた領地に移り住む旨話すと、考え込んでいた彼は頼みたいことがあると言う。取り敢えず、僕の話に合わせて欲しいと言われ、頷いたがまさかこんなことになるなんて。どうして私も乗せてくれなかったの?用があるから先に出ると言っておいたのに、周囲に意地悪な姉と印象付けたいのかシーナはオリヴィアを責めた。横にいるアレンも身重な妹に対して酷い女だ。まだ根に持っているのかい?と完全に悪者扱い。続く悪口に呆れているとオリヴィアの後ろに控えていたマルクが前に出て、婚約者の妹と浮気したくせに随分な物言いだなとアレンを睥睨。婚約破棄の原因が完全にアレンの瑕疵だったと判り、周囲の貴族達も最低ね、とヒソヒソ。だが、婚約を破棄してくれてありがとう。これで僕はオリヴィアにプロポーズできる。そう言って目の前に跪くマルクを見つめてオリヴィアは茫然。合わせてくれって、こういうことだったのね。彼の真意は不明だが、ここは従っておこう。プロポーズを受けると大きな拍手が起こり、その中にいつのまにやら国王までいてびっくり。やっと相手を見つけたのか、とこういう楽しい事が大好きな国王は喜んでいたが、マルクから約束通り、陛下も婚約者をお選びになって下さいねと進言。分が悪いと思ったのか、国王はそそくさと戻って行った。数年前即位した王にはまだ妃がいない。派閥とか色々あるから決めるのも難しいんだろうけど、いつまでも独身なのも拙い。それでマルクと約束したのが年下である彼が婚約したら自分も結婚に本腰を入れるというもの。事情を聴いてオリヴィアは聊かガッカリ。でもまぁ、彼には迷惑かけたわけだし偽の婚約者役も甘んじて引き受けよう。そう思っていたのだが、彼は本気だった。大衆の面前で恥をかかされたアレンが何か仕掛けてくるかもしれないと早々に領地に引き上げた彼女はユノンに呼ばれて玄関に赴くとグラン公爵家から大量の荷物と使用人たちがいて仰天。全てマルクからの贈り物だそうで、午後には本人も来ると言う言伝が。当人から実はずっと好きだったと言われて戸惑ったが、その気持ちが嬉しかった。しかし、今後起こるであろう問題を思うと気が重い。父が反省するならばこの手は使うつもりはなかった。だが反省の意志は感じられずでついに彼女は家族を見限った。身の程をわきまえずにこさえた借金、全て領地を担保にしてると知ったらどうするでしょうね。到底返せる額ではないから父は全ての領地を失うはず。それでも足りるかどうか。そうなれば家は没落、領地も無いので爵位返上になるだろう。今更後悔しても遅いのよ、お父様。愚かな家族の先行きを思うと苦しくなったけれど、爵位返上ともなれば娘のオリヴィアも平民になるということ。いわばこれは諸刃の剣だ。マルクとも結婚は出来なくなる。静かに涙を溢す彼女をユノンが慰め、こういう時はパーッと美味しいものでも食べに行きましょうと誘った。目いっぱいおめかしをしたのはその足でマルクに会う為だ。彼とちゃんと話し合わなきや。しかし、道中、二人の乗った馬車はアレンとその手下たちの襲撃を受け・・・。ザマァ系です。全部捨ててスッキリしたかと思いきや、オリヴィアの価値を今更ながら痛感したアレンが今更ながら悪あがき。とんでもないブラック案件な終身雇用契約書を作って、ユノンの命と引き換えにオリヴィアにサインを迫ります。どこかに捕まっているらしいユノンは早々殺されることは無いはず。とオリヴィアは時間を稼ぎますが、暴力を振るわれ意識は朦朧。それでも必死に抵抗しているとマルクが騎士団を率いて飛び込んで来てアレンを取り押さえ、オリヴィアは救出されるのでした。アレンはこの件でマルクから多額の慰謝料を請求され、これまでの女遊びがこれまた大問題に発展。積み上がった慰謝料で丸裸にされるくらい何もかも持っていかれる羽目に。シーラは没落した家にも戻れず渋々アレンに嫁いだことが語られます。オリヴィアは一時平民になったものの、過去にとある功績を上げていたことで、その褒賞として国王から一代限りですが爵位を賜ることに。おかげでマルクとの結婚も成り、元々アレンと挙式するはずだった教会で式を挙げる二人の様子が描かれて物語は幕。内容としては、よくあるテンプレ展開。あと才媛な貴族令嬢の割にはフランクすぎる言葉遣いが少々気になりました。評価:★★★☆
2026.10.12
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2026年9月刊スターツ出版文庫著者:野口ひよら(敬称略)科学オタクの転生女官・麗麗は、美貌の宦官・冥焔と共に後宮の謎を解く毎日を送っていた。そんなある日、隣国から新たな妃・甜甜がやって来る。彼女はなんと、麗麗と同じ転生者だった。愛らしい容姿と笑顔、そして巧みな話術を持つ甜甜は、瞬く間に後宮の人気者に。しかし、なぜか麗麗だけを執拗に敵視する甜甜。影で巧妙に嫌がらせを行い、あたかも麗麗が悪いかのように悪評までを立てる始末。さらに同時に、後宮内で不可解な事件が多発し始め…。冥焔と共に調査を行う麗麗は、事件の裏にはいつも甜甜がいることに気づきーー。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 麗麗=後宮の下級女官。科学オタクだった前世の記憶を持ち、冥焔と共に後宮 で起きる怪事件の謎を解き明かしていく。 冥焔=麗麗とコンビを組んでいる宦官。 その正体は、早逝したと言われている先帝。 甜甜=焱国の従属国・霜からやって来た仙術使い。後に徳妃になる。 瑛琳=麗麗の主で四夫人の一人。 恩雲=焱国皇帝。麗麗に「ガリレオ」という称号を授けた 雪梅=瑛琳妃宮の女官の一人。わざわざ冥焔が呼びに来たということはまた怪異か。連れて来られたのは尚儀局にある仏殿。そこに設置されている仏像が血の涙を流し、焦った女官が皇帝に国の一大事と進言。どうやら自分が呼ばれたのは本当にそれが凶兆なのか審議しろと言うことらしい。しかし、いざ実況見分をしてみればなんのことはない、数々の偶然が重なった自然現象と判った。血涙の正体は塗料を補強するため塗られていた蝋が溶けて流れたもの。偶然か故意かは不明なれど蝋が赤く染められていたから血のように見えたのだろう。遠目で見たら血に見えない事も無いので驚かれて当然だ。それに元々それっぽい言い伝えの詩があるそうで、深読みした女官が取り乱したのも仕方ない。一先ず、入り口や窓に日光を遮断する布を付けるようアドバイスして殿を出た。後宮への帰り道、冥焔から従属国の霜から朝貢のため使節団が来訪すると聞かされた。一応、従属国の形を取ってはいるものの、昔から色々因縁がある国らしい。所謂招かれざる客ってことか。含みある話に麗麗は納得した。従属国らしく貢物を持参したという名目で痛くもない腹を探られるのは業腹だ。だから、あの手の騒動は早めに解決したかったとも。確かに凶兆が出たなんてのは折り合いの悪い国に知られたくないだろう。わざわざこんな寒い時期に来なくても・・・。元々、霜は雪国で雪深くなる前にとの判断なのかもしれないが、遥々数十日もかけてご苦労な事で。慣れない巫の衣装を着せられた麗麗は冥焔共々、皇帝の後ろに控えていた。霜一の仙術使い・甜甜の使うのが本当に仙術なのか見極めろと命じられたが、挨拶代わりにと披露されたそれはどちらかと言えばマジックに近い。ある程度器用で薬品に詳しければ可能。あの煌びやかな衣装も手元に注視されないための目くらましだろう。でもまぁ、見慣れない焱の者たちには充分仙術に見えているはず。それにしてもあの甜甜が妃として主上に献上されるとは。現状、空席となっている徳妃としてどうか、と霜の使節団の責任者にゴリ押され、受け入れないわけにはいかない。皇帝に代わって「ありがたく」と答えた冥焔はどことなく不機嫌に見えた。実のところ、甜甜を徳妃に、という打診は霜から前以てされていた。しかも、あの歓迎の宴では、もうじき奉納祭でございましょう?ならばこの甜甜は必ずお役に立つはずとまで言って来た。徳妃の不在と奉納祭、なぜ霜はそうまで焱の後宮に詳しい?これはもしかしなくてもあの男の入れ知恵か・・・。恩雲と冥焔の叔父に当たる玄策は大罪人でありながら逃亡し現在行方知らずになっている。恐らくどこかの国に潜んでいるはずだ。それが霜だとしたら?甜甜もきっと何か言い含められているだろう、仙術使いと言うのも厄介なのに妃に迎えねばならないとは。麗麗の検分によりあれは手妻(奇術)だと報告されているとはいえ、何か他に隠し玉を持っているかもしれない。恩雲は、霜から付いて来た女官は全て帰国させ、麗麗を甜甜の宮に送るよう指示した。しかし、冥焔はそんな危険な宮に、と反対したが、あの女の見張りには麗麗が最適解なのと、何より主上の命だ。聞き入れないわけにはいかなかった。女官が全て帰国してしまったので甜甜が賜った宮には世話をする者がいない。なので、他の宮から数名ずつ一時的に派遣されることになった。瑛琳妃の所からは麗麗と雪梅。ムードメーカーの雪梅は頼もしい先輩だ。冥焔からの命で自分は仕事をしっつ甜甜の監視もこなさなければならない。この人、ちょっと得体が知れないんだよなぁ。あの宴の帰り道、冥焔が立ち去った後、宮の前で待ち伏せされていきなり「あなたも転生者なのでしょう?」と話しかけられて面食らったものだ。でも、冥焔をイケメンと称してた辺り、本当に彼女も自分と同じ転生者なのかもしれない。一先ずしらばっくれてみたけれど、ふとした会話によってバレてしまった。しかし、それを機に甜甜からの嫌がらせが始まった。自分から水を被り、私が麗麗を怒らせてしまったからとさも被害者のようにふるまう。やられた、と気付いても後の祭り。以来、何かと自分のせいにされてすっかり宮で浮いた存在に。雪梅が居なければ完全に孤立する所だった。時を同じくして後宮では霜製の丸薬が流行。広めたのは当然、甜甜だ。頭痛、疲労に効果ありと大層な人気で、出所が出所だけにもしやヤバイ薬ではと心配になる。冥焔もそう思ったのかとっくに成分を調べさせていた。結果はシロ。原材料は葛粉と特に害のない生薬が少々。人間の脳は案外単純だ。話題の仙術使いから頭痛や疲労に効くと言われれば、それを飲めば治ると思い込む。結果本当に頭痛が治まったりするから侮れない。正に「病は気から」と言う奴だ。だが、近頃宦官が勝手に部署変更してしまうという騒動に始まり、女官同士による刃傷沙汰、女官の集団自殺未遂など見過ごせない事件が次々起こっている。どう考えても怪しいのは甜甜だ。彼女が後宮に棲み始めた途端に起きたことなのに、なぜか誰も疑わず、それどころか人気は鰻登り。それにこの宮の女官たちの様子も段々おかしくなってきていた。プロらしからぬ怠慢さ、というか。女官にも先輩風をふかしてやりたくない仕事は後輩にさせるなんてのはままあるが、まったく仕事をしないなんてことはない。ましてや、臨時の助っ人できているのだからサボっていれば自分の主人の評判に傷がつく。だからこそ雪梅はひとしきり張り切っていた。なのに、皆、甜甜に心酔して仕事も投げ出すなんて。しかし、唯一の砦であった雪梅の様子までおかしくなり麗麗は焦った。すぐさま冥焔に報告したものの、彼の態度はいつもと違っていて・・・。シリーズ三作目です。従属国でありながら焱国に何か含みがある霜国。そこには恩雲と冥焔の叔父であり最大の敵である玄策が潜んでいました。彼の入れ知恵により、とある目的をもって妃として入り込んだ甜甜は麗麗と同じく転生者でした。しかし、仲間意識はなく、どこか麗麗を敵視している態度。度重なる嫌がらせにさすがの麗麗もグロッキー気味だった頃、後宮では事件が相次ぎます。いつもなら冥焔が先導して麗麗と事件解決に乗り出すはずが、何か理由があるのか遠ざけられ、彼女は戸惑います。雪梅の豹変など、ダメージはマシマシ。心が折れかけていた頃、秘密裏にコンタクトを取って来た冥焔の心情を知って麗麗はある決意をして、という展開です。彼女の行動は見事甜甜と霜の思惑を打ち破ったものの、実は霜にはもう一つの目論見があって麗麗はピンチに陥るんですけど、冥焔が間に合って事なきを得るのでした。漸く、明確なる敵が姿を見せて来た感じですかね?恩雲と冥焔も決して気を抜いてるわけじゃないんですけど、敵側のやることが姑息。甜甜も実はそこまで悪人ではなくて、これはもう産まれた国のせいとしか。彼女が霜で受けていたらしい仕打ちを思うと色々歪んでしまったのも判るような。焱に産まれていれば麗麗とも仲良くなれたのかも。今回は逃げられてしまったので再登場はありそう。それと予想以上に麗麗に惚れていた冥焔と、ちょっと恋心を自覚し始めた麗麗。結婚まで行き着くのには道のりが険しそうだけど、恋愛方面も取り敢えず進んでいて良かったです。評価:★★★★★
2026.10.11
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12月3日 アース・スター文庫 銀狼陛下と無能の花嫁 マチバリ 大正帝都トロイメライ 予知夢の乙女と契約結婚 汐屋キトリ ヴァニラ文庫 悪女と呼ばれた死に戻り令嬢ですが、 堅物の大公殿下に溺愛されて契約婚をやめられません 百門一新 ヴァニラ文庫Miel 幼なじみのレスキュー隊員と子育て婚はじめました ~片想いだと思っていたら彼の愛が熱すぎます~ 木登12月5日 ベリーズファンタジー ちびっこ花嫁はビンボー公爵家を改革中 たちばな立花 前世で何もできなかった分、今世は何でも挑戦したい ~冷遇令嬢の万能フリーランス生活。 困るのは私を追い出した実家の方でした~ 雨宮れん12月10日 ベリーズ文庫 不運続きはずだったはずがスパダリ御曹司との偽装婚で最愛妻になりました 若菜モモ 極上のギャップ男子シリーズ タイトル未定 にしのムラサキ 天才外科医の密かなる執愛 ~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~ 伊月ジュイ 脅迫婚?! ~悪い噂の絶えない社長が、 実は誠実で一途だったなんて信じられません!~ 蓮水ちま ベリーズ文庫with バツイチだけど恋をしてもいいですか きたみまゆ マーマレード文庫 わたくし悪徳夫人ですから、 お飾りをやめて実家に帰らせていただきます~(仮) あさぎ千代春 天敵同期の爽やか貴公子は策士な御曹司でした ~恋人のふりさえ仕組んだ彼は、激重愛で逃がさない~(仮) 田崎くるみ12月18日 ヴァニラ文庫Miel 金融界の帝王が政略妻の私に5年越の愛を注いできます(仮) 御厨翠(敬称略)やはり12月期は多いですね
2026.10.10
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2026年8月刊ベリーズファンタジー著者:別所燈(敬称略)王太子の婚約者として国に尽くしてきた侯爵令嬢・セフィリア。突然の婚約破棄&追放宣言に気を失うも、次に目が覚めた時には晴れやかな気分だった! 「これからは好きに生きるわ!」さっそく追放先の未発展な辺境領の環境改善や改革を進め、念願の快適ライフを満喫! 次第にセフィリアを頼って多くの人が流れ込んできて…? 一方王家では、王都から人が離れていくことに焦りを覚えていた。彼らは忘れていたのだ、国の実務を担っていたのはセフィリアだったことをーー。役立たずの無能令嬢はお役御免ですよね? 隠れ才女の痛快セカンドライフ、開幕! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 セフィリア=もう用済みだと婚約者に捨てられた侯爵令嬢。 複数属性の魔法を使える稀有な存在で前世の記憶を持つ。 イアン=黒竜を討伐した魔法騎士団長。王命でセフィリアと結婚する。 リナ=セフィリア付きのメイド。 エドガー=セフィリアの補佐をしていた官吏。 カシアズ=王太子。セフィリアの元婚約者。 この国の王家はつくづく腐っている。大切な主であるセフィリアを散々利用した挙句、身勝手な理由を付けて婚約破棄したあのバカ王子めっ!王宮から持ち出されたセフィリアの荷物はあまりにも少なく、大人二人でも悠々座れるスペースがあった。セフィリア様がいないならこんなところに未練はない。偶然にも同じ気持ちだったらしい元官吏のエドガーと向かい合い、元王宮メイドのリナは国王一家への恨み言を言い合っていた。こんな酷い事って有り得る?誰の努力でこの国が回っていたと思うの!?鼻息荒く吐き捨てたリナにまるっと同意すると、ホント、最低だよ、あの王家は。セフィリア様を追い出した上に僕まで退職したんだから、一週間もしないうちに大混乱だろうなぁ。容易に想像がついて二人は人の悪い笑みを浮かべた。リナとエドガーが乗る小さな馬車の前には四頭立ての貴人用の馬車が走っている。乗っているのはこの度辺境伯位を賜った魔法騎士団長イアンとディアール侯爵令嬢セフィリア。二人は王命により結婚したばかり。これからイアンが領主を務めるノルディア地方に向かうのだ。まったく、どうかしてるわ、あの人達。国のために黒竜討伐を果たしたいわば英雄への褒賞が私との結婚と魔物が蔓延るノルディア地方の統治だなんて。彼が倒した黒竜が住んでいたノクス・モルティス山はノルディア領にある。黒竜が死んでもその影響で魔物が大量発生していると聞く。それに作物が育てにくい土地らしく、これは早急に金策を考えないと領民諸共飢え死にだ。イアンは黒竜討伐の報奨金を使うと言っているけれど、それだって数年もすれば底をつく。イアンは平民ながらその才能だけで魔法騎士団長にまで登り詰め、数々の強力な魔物を討伐して来た。彼を支援する貴族も多く、国民からは絶大な人気を誇る。まぁ、それが気に食わなかったんでしょうね。王族のくせにやることが姑息なのよ。イアンが気にしたらいけないので、なんとか溜息を堪えつつ忌々しいカシアズの顔を思い出し、怒りに震えた。先王によって取り決められたセフィリアとの婚約をカシアズは死ぬほど嫌がっていた。お前のような金髪が誇り高き赤い髪の王家に混ざるなど!そう言って彼女を遠ざけた。ある時期から王宮の一室に閉じ込めると本来王族がするはずの書類仕事を丸投げ。社交の場にも一切出さず、食事も薄いスープと固いパンだけと言う質素を通り越したメニューに給仕するメイドのリナはいつも嘆いていた。セフィリアの生家・ディアール侯爵家は数年前、魔物の襲撃により領地に多大な被害を出した。それを婚約者の実家の窮状だからと王家が援助してくれた。当然、その返済のため両親も頑張ってくれているけれど、利子代わりに働けと命じられたなら従わなければならない。閉じ込められたのはその頃からだ。補佐をしてくれたエドガーがこんなのおかしいですってと憤慨するのを、仕方ないのよ、そう言って寝食の時間も惜しんで働き続けたのだ。だが、状況が変わったのは三日前のこと。珍しく謁見室に呼ばれたセフィリアはカシアズから唐突に婚約破棄を突きつけられたのだった。理由は侯爵家からの返済が滞っているから。それと複数属性の魔法の使い手ながらどれも中途半端で役に立たないから。自分への批評はともかく、返済が滞っているという話に疑問符が。実家の面々は皆仲が良い、借金のカタに娘が王宮に連れて行かれた際は、両親は泣きながら懇願してくれたのだ。お前を連れ帰るために頑張るから、そう言っていた父が約束を破るはずない。とにかく、そういうことだ。ショックで茫然としているセフィリアに声をかけ、もう次の婚約者は決まっている。だからその指輪を返せ。未練など無いので素直に外して指輪を返すと不思議な感覚が襲い、彼女は眩暈を起こしてその場に昏倒したのだった。熱に浮かされている間に奇妙な夢を見た。観たこともない建物に不思議な乗り物。セフィリアは黒髪の女性の姿でこれまた不思議な魔道具を忙し気に叩いていた。そんなある日、彼女は倒れそのまま亡くなった。これは私の前世だ。漠然とそう思った。目を覚ますと会社員だった頃の知識が流れ込んで来る。その影響か今まで大人しく従っていたのが馬鹿らしくなる。前世の自分の死因はまさしく過労死。ブラック企業で能無しの上司にいいように使われて死んだ。正直、あのままこき使われてたらセフィリアもヤバかったと思う。何とか無事だったのはリナとエドガーのおかげね。なんと自分はこの国の英雄・魔法騎士団長イアンと結婚するらしい。婚約破棄された令嬢は所謂傷物と同義の存在だ。本当ならマルグリット王女と結婚するはずだったのに、平民と結婚なんて御免と駄々をこね、結局不要になったセフィリアを押し付けられてしまったのだ。申し訳なさ過ぎて居た堪れない。ってか、用済みなら実家に返してくれればいいのに、約束を破ったのだから会うのは禁止だなんて!無愛想だが、イアンは良い人だった。もう爵位持ちになったのに、セフィリアに敬意を払い恭しく接してくる。もしよければご両親が住む王都にタウンハウスを買うのであなたはそこで過ごされては?と気を遣われて慌てて固辞した。禁止されてるのに近所になんて棲んだらあいつらに何を言われるか。それに家族にも迷惑をかけてしまう。なのでこのままノルディア領に連れて行って欲しいと懇願した。願いを聞いてくださるならリナとエドガーを辺境伯家でも雇って欲しいと言うことだけ。あなたにとって不本意なら白い結婚でも構わない。そう言うと一瞬不満そうな表情をしたイアンは、それについては追々考えましょうとそっぽを向いた。流石は辺境、一週間ほどかけてやって来たノルディア領は聞きしに勝る枯れた地だった。多分、土が酸性なのね。これじゃあ麦が育たない。それでも過去には領主もいたのだから特産品みたいなものはあったはず。城に歴代領主の日誌が残ってればいいんだけど・・・。イアン共々魔法騎士団の団員たちもこちらに越して来たので、領民たちと協力して城を大掃除。何とか厨房と食堂を使えるようにして賄いを振舞った。皆貧しい生活を強いられていたのだろう、賄いは大好評で多くの民たちが手伝いに訪れ数日で生活空間は確保できた。イアンと団員たちは生活を脅かす魔物退治に精を出し、そのうち周辺の魔物の出現は格段に減った。キラービーを倒してくれたおかげでやっと本業に戻れます。メアリーと名乗った中年女性がお礼にと持ってきたのは大量のハチミツだった。聞けば、この地は養蜂が盛んだったそう。実のところ、魔法騎士団の維持費など出費がかさみ魔物を倒すと出て来る魔石を売って収入にしようと思っていた。だが、ハチミツも貴重な甘味料。貴族にも人気があり、蜜蠟で作る蝋燭は高く売れる。キラービーも蜂を大きくしたような魔物で生体は蜂そのもの。メアリーによればキラービーの巣からも良いハチミツが取れるそう。ならばとイアンに魔石だけでなく、キラービーの場合は巣も持ち帰ってくれるよう頼んだ。魔石とハチミツは隣のシエロ領で高く売れ、その収益で宝の持ち腐れだった大浴場の修理もできた。平行してセフィリアは土魔法を生かし、畑を耕してみた。何とか酸性の土を中性にできたのでまずは料理にも使えるハーブを育て、その葉で淹れたハーブティーはイアンも大層気に入ったようだ。彼の副官のカイルがこの土なら蕪もいけるんじゃ、と案が出て試しに植えたらかなりの収穫量になった。でも、なんでこんなに実りが早いの!?実は奥様は土魔法の天才なのでは?と真顔のカイルに言われたけれど、カシアズの指摘通り、中途半端で使い物にならなかったのに・・・。と言うより、魔力が上がっているような。以前と現在、変わったことと言えば王宮を出たこと、それと指輪?まさか、ね。王宮から届いた元同僚からの手紙を読んでエドガーはほくそ笑み、リナにもそれを伝えた。セフィリア様と俺がいなくなったから仕事が回らなくててんやわんやだってさ!あのバカ王子が仕方なしに指揮してるらしいけど無理無理。官吏に無理難題押し付けて退職者続出らしいと聞いてリナもいい気味ねぇ、と嬉しそう。その後イアンに多分今ならセフィリア様がご実家とコンタクト取れると思いますよ、と進言。イアンの飼っている魔鳥に手紙を託して漸くセフィリアは返事を受け取ることが出来た。しかしその内容は驚くべきもの。何と借金は返し終わっていたと言う。それで、接触を禁じたのね。婚約破棄の理由も嘘。しかも私の瑕疵にして実家に慰謝料まで請求していたなんて。ワナワナと震える彼女をイアンは気遣い、これからも好きな時に手紙のやり取りをしていいと言い、落ち着いたら王家にバレないようご家族をここに招待しようと言ってくれた。厚意に甘え、それから家族と連絡を取り合っていると色々面白い事が判った。今王家は赤字続きで裕福な貴族に税を上げると通達しており、猛反発を食らっているらしい。そもそも赤字の原因は彼らの無駄遣いのせいなのだから苦しいなら宝石でも売ればいいのに。しかもカシアズが入れあげていた伯爵令嬢が散々貢がせておきながら王家が危ないと知るやトンズラ。今必死で行方を捜しているとも。ディアール侯爵家は事業が当たり、今は商会を運営しているそうだ。なら、ハチミツや蜜蝋の蝋燭を売ってもらえないかしら。産地を伏せれば上手く行くだろう。その思惑は大当たり、魔石もかなり売れて来たし、セフィリアの魔法のおかげで土も生まれ変わりかつてない程の豊作でノルディア領はかなり潤って来た。イアンとの関係も変わり始めた頃、度重なる失態により王家への信頼は地に落ちた。貴族からの支援も無くなりいよいよ焦ったカシアズはセフィリアの有能さを今更ながら痛感。そこで、彼はセフィリアを連れ戻すため、卑劣な手段に打って出て・・・。ザマァ系です。身勝手な王太子が嫌った元婚約者はとんでもなく優秀で、追い出したことを死ぬほど後悔します。ってか、セフィリアが有能だったことなんてカシアズが一番わかってたはずなんですけどね。実はプレゼントと称して嵌めさせていた指輪は、嵌めている者の魔力を吸収して溜める魔道具でした。最初からセフィリアの魔力の高さに目を付け搾取していたわけです。ついでに借金のカタに仕事を丸投げ。でも好きな女が出来たから用済みとポイ捨てしつつ、借金返済が滞ってると嘘を吐きそれを瑕疵として慰謝料要求とかセコ過ぎて草。そんな得難い娘をむざむざ目障りだった英雄に嫁がせたら、追いやった辺境の地は見る見る発展。王家よりそっちを頼ろうと人々はノルディア領に向かいます。やがて貴族からも見放され、慌ててセフィリアを呼び戻そうと一計を案じ、ノルディア領で騒ぎを起こすのですが、これが拙かった。このカシアズの行動はセフィリアをマジギレされることになり、という展開です。結局、彼らは墓穴を掘ることになり王家の者たちは皆投獄され、身分は剥奪。新たな王として国民に支持されたイアンが就き、妻としてセフィリアが支えると約束して物語は幕。才女を怒らせると怖い、と言うか悪役がアホ過ぎると言うか(^_^;)前世の記憶と知識はおまけみたいなものです。評価:★★★★☆
2026.10.09
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2026年9月刊ベリーズ文庫著者:にしのムラサキ(敬称略)ランチクルーズに参加した栞奈はテロ事件に遭遇。助けてくれたのは居合わせた警察官・啓人だった。お礼をしたいと言うと偽の婚約者を演じて欲しいと頼まれる!二つ返事で引き受けるが、気づけば硬派で実直な彼を好きになっていた。しかし、その矢先に「形だけの夫婦になりたい」と言われて…。実は凄腕SAT隊員だった啓人。囲い込んだ栞奈を屈強なカラダで翻弄し、秘めていた激愛を刻み込んでいき!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 竹田栞奈=多趣味な会社員。事件に巻き込まれた時に忍野に助けられた。 忍野啓人=エリート機動隊員。栞奈に偽装婚約者役を頼む。親友とランチクルーズをするはずが、二日酔いで寝坊した友人は遅刻して乗船できず。仕方なく一人で参加することになった栞奈は、忍野と名乗る男性と知り合った。彼もまた友人が二日酔いで寝坊し、乗船に間に合わなかったらしい。カップルや夫婦など、一人での参加者は彼と自分だけ。明らかに浮いていて気まずいのだろう。良ければ下船までご一緒しませんかと誘われ、栞奈は笑顔で頷いた。ここはワインが美味しいのだと聞き、早速貰いに行くと悲鳴が聞こえた。何事かと振り向けば、ナイフを持った男が船長らしき男性を羽交い絞めにしている。傍には抜き身の日本刀を構えた男もいた。目出帽を被って黒い繋ぎ姿をした二人は、とある死刑囚の名前を挙げると船長を助けたければすぐに釈放しろと喚いた。膠着状態の中、海上警備隊と上空からヘリが近づく音が聞こえる。すぐに人質を解放するよう警告され、犯人は逆上。固まる栞奈に目を付けるとこいつも人質に、と恐ろしい相談をしていた。すると、側にいた忍野が手を挙げ、僕の妻なんです。代わりに僕が人質になりますので、そう申告すると手招きされるまま船長の隣に正座した。そこに一瞬の隙が産まれた。目の前に黒服の男たちが降りて来たかと思うと素早く忍野が立ち上がり、ナイフを持った男を取り押さえた。ドラマの撮影かと思う程、彼と男たちの動きが凄かった。難を逃れた栞奈を心配し寄り添ってくれていた中年女性が「あれ、きっとSATよ」と呟く。SATって、テロを扱った洋画でよく出て来る機動隊のことだろうか。そう言えば犯人達が釈放を要求した死刑囚も確かテロリストだったはずだ。あっという間に制圧された犯人二人は捕縛され、警備隊の船に乗せられていく。それを見送っていると栞奈は船長ともども保護され念のため診察を受けたあと、事情聴取を受けた。こういう経験をすると後にPTSDを発症することがあるらしい。異常を感じたらすぐに精神科を受診するよう言われ、栞奈の土曜日は終わった。その夜、一緒に行くはずだった千鶴から電話が来てめちゃくちゃ謝られた。無事だったんだから気にしないでと逆に慰める羽目になりなんだかなと思う。話題は変わって、千鶴から彼氏が出来たと報告を受け驚く。いやー、その彼氏、土門さんって言うんだけどその人も遅刻して乗船できなかったって聞いて~~。要は港に置き去りにされた者同士意気投合したってことね。お互い酒好きなのもあって居酒屋で盛り上がり、交際することになったのだそう。でもあれ、もしかして土門さんって・・・。今も傍にいると言うので千鶴に忍野さんのご友人ですかと聞いてもらうと知らないと言われ首を捻った。でも彼は確かに。自分にしては珍しく気になる異性に巡り会えたと言うのに、再会できるあてがないとは、つくづく恋愛に縁がないんだなぁ。ちょっぴり残念に思いながら、明日の釣りのための準備を始めた。三か月後、披露宴の受付役を頼まれ席に着いた栞奈は、隣に座った新郎側の友人を見てビックリ。彼もまたお久ぶりですと会釈し、あの後大丈夫でしたかと尋ねられた。元気に頷いた栞奈は多趣味なおかげで忙しくて思い出す暇もなかったと答えると、良かった、そう言って微笑まれた。今日は千鶴と土門の結婚式だ。スピード婚になってしまったのは所謂デキちゃったからで、報告された時は相変わらずカッとんでるなと思う。でもなんだ、やっぱり土門さんの友人なんじゃないの。まぁあの夜は二人ともかなり飲んでたみたいだからなぁ。ちょっぴり恨めしく思いながらもおかげでこうして再会できたのだラッキーと思っておこう。それはそうと結局お礼を言えず仕舞いだった。披露宴の後、改めてあの日のお礼を言うと仕事ですからと予想外の答え。実は警察官なので、人質の交代を申し出るのは当然なのだと。だから気にしないで欲しい。そうは言うけれど、もしSATが来るのがもう少し遅かったら?でも本当に何かお礼を。そう言い募ると、ならと彼に頼まれたのはなんと婚約者のフリ。親代わりの祖父母から結婚をせっつかれてまして・・・。しかし、見合いを強要されるのも面倒、交際相手も今はいないので困っていると言う。そこで仕方なしについ、もう結婚間近の彼女がいると嘘をついてしまったらしい。早く紹介しろと休みの前になると電話が来て今更嘘だと言うわけにも行かず困っているのだと。一日だけでいい、俺の婚約者のフリをしてくださいと頭を下げられ、それでお礼代わりになるなら。そう言って栞奈は快諾。翌週末、迎えに来た忍野の車に乗って最終的な打ち合わせをした。お互い敬語では怪しまれる、あと名前で呼び合おうと決めていざ「栞奈」と呼ばれるとドッキドキ。フリと言うのがチト残念ではあるけれど、ボロが出ないよう頑張ろう。しかし連れて行かれた忍野家はとんでもない豪邸で早くも腰が引ける。忍野の祖父母は年齢の割に矍鑠としており、栞奈を見ると祖母は大喜び。お祖父さんはちょっと頑固そうだけど気になって妻共々玄関まで迎えに来る辺り、やっぱり孫が可愛いんだろうなとホッコリ。早速こんな素敵なお嬢さんがいながらいつも仕事仕事なんでしょ?夫人のお小言が始まり、隣で忍野氏も無言で頷いている。いやまぁ、SATならしょうがないですよ。表面上はニコニコしながら心の中で呟き、忍野に同情した。彼は警察官だと言っていたが、あの身のこなし、彼もSATなのではと予想している。SATはテロリストの天敵なので狙われないよう身内にさえ素性を明かさないと聞いた。赤の他人の栞奈に明かさないのは当然のことで、たまたま気付いてしまったからと言っても確認しようとは思わない。今は彼の婚約者役を精一杯勤めよう。だが、多趣味故に付いた知識により栞奈は予想外に忍野の祖父母に気に入られてしまった。あああぁぁ、実はベランダだけじゃガーデニングも張り合いがないとかつい言っちゃったら、ならうちの裏庭で好きなものを植えたらいいとまさかの答え。でも、お祖父さまは園芸が趣味らしく、良い土なんだよなぁ。大根とか白菜とかここでなら育てられる・・・。いいんですか?つい尋ねてしまい、しまった!と思わず忍野を見ると肩をすくめられた。こうして毎週末、栞奈は忍野邸に通うことになったのだった。出来る限り送迎する。そう言って、なんかすまない、と忍野に謝罪されたが、これは自分のせいでもあるのだ。いえいえ、私もベランダではできない野菜を育ててみたかったし、友人が出来たみたいで嬉しいですと微笑んだ。そうして、忍野邸の一角を借りて始まった畑仕事はやっぱり楽しい。栞奈が来れない平日は二人で世話してくれているらしい。収穫出来たら鍋にしようと約束し、土産に自宅で栽培している椎茸を持参した日は七輪で焼いてもらって大満足。椎茸ってマンションで育てられるのか?忍野は驚いていたけれど、キットを買えば一本で三回は収穫できる。説明すると忍野の祖父母からもさすがだと喜ばれた。そうだ、今度の釣りでブリが釣れたらブリしゃぶにするのもいいかもね。畑があるので最近あまり行けてないけれど、祝日前夜に釣り仲間から久しぶりにと夜釣りに誘われている。元々、興味を持ったものに嵌ってしまう性質だったのもあって、最初は謎解きだけだった趣味もそこから推理小説、読書全般、更に派生してガーデニング、釣り、魚を捌けるようになったら料理と、増える一方で大忙し。恋愛などせずとも栞奈は充分満ち足りて幸せだった。そこに忍野という気になる存在が現れ、こうして婚約者のフリを続けているが、自分が本当の恋人でないことにモヤモヤするようになっていた。それに優しい老夫妻に噓をついているのが辛い。あの子、今日も仕事なの?考え事に気を取られていた時にふいに夫人から尋ねられ、そうみたいですと水やりを再開する。訓練か任務なのか、彼は時々一週間か十日ほど音信不通になる。送迎できなくてすまないと謝られたけど自転車でも通える距離だし、そちらの方が大変だろうにと心配になる。忍野氏の話では彼の両親はアメリカのテロで亡くなったのだそう。忍野はその時十歳でしばらくふさぎ込んだ後、警察官になりたいと打ち明けたのだとか。忍野夫妻は最初反対したが彼の決意は固く、結局許さざる他なかったと言う。念願の警察官になっても啓人はいつもピリピリしていた。でも栞奈さんをここに連れて来てからそれが無くなったんだ。家内と二人、それが嬉しくてね。あとがとう、栞奈さん。忍野氏に感謝され、それが本当ならこんなに嬉しいことはないと思う。三人で和気藹々とお茶していると仕事を終えた忍野が帰って来た。まったく、お前はいつも栞奈さんを放ったらかして!くどくど続くお説教に、仕方ないだろとうんざりした様子の彼に業を煮やした夫人は、投資用に買ったマンション、あなた達の新居にしなさいととんでもない発言を。婚約してるんでしょ?もう入籍しなさいよ。夫人の言葉にまたもや無言で頷く忍野氏を何とか説得し帰路に着くと忍野はずっと黙っていたが、栞奈さんさえ良ければ結婚しないかとまさかの言葉。確かに、全部嘘でしたと打ち明け二度とあの屋敷に行かないと言うのも手だ。でもそうなると二人は大層悲しむだろう。それに私も忍野さんのこと・・・。一旦、返事は保留にしたが、何度考えても答えは同じ。プロポーズ、お受けします。そうして二人は数日後には入籍、忍野邸近くのマンションで新婚生活が始まった。これは所詮は契約結婚。君に他に好きな人が出来たなら離婚に応じる。と彼は約束したけれど、自分の想い人は彼なのだから栞奈が離婚を切り出すことは無いだろう。しかし、その頃から忍野の仕事が忙しくなり、帰ってこない日が増えた。そんなある日、栞奈は出先で仕事中のはずが彼が外国の美女とホテルから出てくる姿を見てしまい・・・。好きなのは自分だけ、と思い込んでいたらまさかの不倫現場(?)を見てしまい、栞奈は思い悩みます。と言っても、これは完全なる勘違いで、ホテルとは言っても出て来たのはラブホとかではなく高級ホテル。折しも国際会議間近だったので、要人のボディガードもおり、その女性はとある国の要人の護衛でした。たまたま、釣り仲間の経営する居酒屋に出向いた、栞奈はそこで先輩隊員とともにいる忍野と遭遇。ぎくしゃくしていたのを先輩隊員に気付かれ、詳しくは言えないが、こいつは奥さんにベタ惚れだ浮気はあり得ないから信じてやってくれと弁明。後にテレビで美人過ぎる護衛、とあの美女が紹介されて漸く不倫疑惑は晴れ、二人は仲直り。しかし、後日、ボランティアで謎解きイベントスタッフをするため出掛けた栞奈が立てこもり事件に巻き込まれ、という展開です。ヒーローがSATと言うこともあってやはりこの手の事件が起こりましたが、いやーやっぱりカッコいい。そりゃ、恋愛に興味なかった栞奈も惚れちゃうよ。実は栞奈もかなり美人なハイスペック女子なので、忍野も彼女に一目惚れし、何とかコンタクトを取りたがっていたり、瓢箪から駒とばかりに結婚に持ち込んでガッツポーズしてたりと天然な彼女と違い結構な策士でありました。事件から数か月後、どうしても栞奈の花嫁姿が視たいとの希望で、結婚式を挙げる二人のやり取りが描かれて本編は幕。おまけの番外編は後日談で、第一子・空の誕生と、その一年後、忍野の両親の墓参りをするというエピソードでした。ラブコメ要素の強いお話ながら、忍野の心情やSAT隊員のシビアな日常などシリアスな場面も。程よく緩急があって面白かったです。評価:★★★★★
2026.10.08
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2026年7月刊小学館文庫キャラブン!著者:朝比奈希夜(敬称略)王室を追われた元王妃セリーナは、彼女に忠誠を誓い続けた騎士エイベルとともに辺境の地を立て直し、やがて王国の歴史を変えた。主従の関係を超えて結ばれたふたりは、いまや領主夫妻となり、領地の再建に奔走している。前王に虐げられてきたセリーナとかつて竜族として差別されていたエイベル。誰よりも過酷な過去を生きてきたふたりは、今では誰もがうらやむ仲睦まじい夫婦だ。だが、そんな中、旧王族派である貴族たちが不穏な動きを見せはじめてー。無垢な愛で結ばれた元王妃と騎士のロマンス・ファンタジー、第二弾! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 セリーナ=ヒースター王国元王妃。エイベルと再婚し領地繁栄に尽力する。 エイベル=竜族の末裔でセリーナの夫。 ハンナ=セリーナの補佐をする政務官。フォルカー=ゼノビア帝国皇帝。前国王イドリスが討たれてヒースター王国はタルブ王国の統治下におかれた。王室は解体され、今はヒースター領となり、イドリスの首を取ったエイベルが侯爵位を賜り統治している。季節は巡り、ヒースター領では小麦の収穫も終わり、セリーナは新たなギルド創立のため毎日忙しくしていた。青のドレスは今やこの領地の顔だ。独自の染色技術によって生み出された青い布地から作られるドレスはタルブ王国の貴族達に大人気。注文が殺到して染織工房ギルドはてんやわんやだと言う。しかしおかげで職を得た者も多い。裁縫が得意なおかげでこんなにお給料が貰えるなんてと女たちに感謝された。エイベルはヒースターのもう一つの資金源であるアビス鉱山に向かい、鉱夫たちに労働環境の改革を伝えた。危険度の高さからイドリスの時からも鉱夫は他の仕事よりも給金は高い。エイベルが提案したのは所謂保険制度で、毎月給金から一定額徴収し運営費に充てると説明。多少でも今より給金が減ることに鉱夫からは不満も出たが、怪我で働けない間の生活が保障されると聞いて渋々ながらも応じた。それにこれからは休憩や休暇もしっかり取れる上環境も良くなるらしいし、なによりいつも難儀していた地下水のくみ上げのため水車も設置してくれると言う。初期費用はタルブ王から貰った褒賞金からの持ち出しだが、効率も上がれば採掘量も増える。あとはなかなかなり手がないと聞く金細工職人たちの店をセリーナと回って、こちらも小規模ではあるがギルド化計画が進んでいる。修行中の生活に必要な支援があれば名乗りを上げる者も出るはず。あの繊細な細工は蒼のドレスに映えるから今度の集まりでは合わせて付けてみよう。令嬢や婦人たちの反応を想像してセリーナの胸は躍った。それから暫くして令嬢たちの社交界デビューの日・デビュタントが執り行われた。タルブ王の代わりに領主のエイベルがデビューする令嬢一人一人に声をかけて行くのを見守っていると、「君はこの場に相応しくない」一人の令嬢に厳しく接する彼の姿に驚く。あの令嬢は・・・。セリーナが入場した時に聞こえよがしな陰口を叩いていた娘だった。侍女のマリーは憤慨し、殴りに行きそうだったのを慌てて止めたのだが、エイベルの耳にも入っていたのね。先王から乗り換えて領主の妻に収まった女。イドリスの悪行のせいでセリーナまで悪し様に言われるのは仕方ない事だ。諦めの境地で気にしないようにしていた。この政権交代劇は多くの者たちから感謝されたけれど、イドリスに従い甘い汁を吸っていた一部の貴族達にとっては面白くない事だった。エイベルには賄賂の類が一切通じないし、第二夫人を娶ってはどうかと薦めてもセリーナ一筋なので割り込む隙も無い。それでもまぁ、陰口程度なら可愛いものだ。問題は明らかに反抗の意を示している者たちである。エイベルに追い出された令嬢が泣きながら去っていくのを気まずい思いで見送っているとそこに招かれざる客が。アリオット伯爵とその息子、セリーナの父と兄だった。結婚するまでセリーナは父からよく殴る蹴るの暴行を受けていた。イドリスの嫁いでからも状況はあまり変わらなかったが、よくもまぁ顔を出せたものだ。二人はニヤニヤとエイベルを見るとあの子汚い竜の子せがれが立派になったものだと嘲笑い、私たちも城に呼ぶべきだろうと偉そうな態度。だが、セリーナに殴る蹴るの暴力を振るっていたあなた達を厚遇する気などないときっぱり言われて途端に狼狽えた。セリーナも肯定したことで、参加者たちは普通娘を拳で殴る?とヒソヒソ話し始める中、そう言えばとエイベルが副官に命じて持って来させた書類を広げた。タルブ王から速やかに規定の税を治めるよう命令書が来ていますよ、とニヤリ。払えないなら屋敷を売れ、それでも無理なら貴族位は剥奪だそうで。大方、娘夫婦から金を搾り取る算段だったのだろう。しかし、まさか王から最後通牒までされるとは夢にも思わなかった二人は嘲笑される中、アタフタと逃げ出していく。これに懲りてもうこちらには関わって来ないと良いのだけれど。エイベルに寄り添うセリーナの姿を、エイベルの統治をよく思っていないゴーベール伯爵とグリッサン男爵が忌々しげに見つめていた。その後、セリーナの希望で孤児たちを預かる慈愛院が設立。この施設はセリーナのたっての希望により建てられたもので、彼女は積極的に運営に携わった。職員たちも寡婦や夫や家族からのDVで家にいられなくなった女たちが多く、ここが新たな居場所になればと思っている。彼女たちはかつての自分を想起させる。施設の前に置き去りにされていたらしい赤子のミヤを見ていると無事産んであげられなかった我が子を思い出す。子が出来にくい身体になったのもあり、エイベルの子も産めるかどうか。そんな最中、多忙なセリーナの補佐役としてハンナという女性が雇用された。役職は政務官。まだ若いのにかなり優秀で、おかげで仕事も大分楽になった。故郷は隣国・ゼノビア帝国との国境近くの村だそうだけれど、あまり良い思い出が無いのか過去を話したがらなかった。アビス鉱山の採掘量も上がり、その収益で農業にも力を入れ始めた。が、農耕地のほとんどがあのゴーベール伯爵の領地であるため、あまり協力は得られていない。農民が望んでも領主があれではね。取り敢えず地道に説得して行くしかない。それから暫く経った頃、ゼノビア帝国皇帝フォルカーから招待状が。数日後の夜会に招待すると言う内容ではあるが、嫌な予感しかない。紅蓮の玉座、世間でのフォルカーの二つ名だ。彼はイドリスよりも横暴で血気盛んな男だ。反対意見など言おうものなら即座に首を跳ねられ、玉座が紅に染まったというのが二つ名の由来だ。相当ヤバイ男なのか?エイベルの問いに肯定すると困ったような顔をされた。しかし、この地の領主として赴かなければならない。うんざりしつつも急ぎ支度し、翌日の朝には隣国に旅立った。数年ぶりに顔を合わせたフォルカーは相変わらず高慢な態度だった。案の定、上手く取り入ったなと嫌味を言われ怒りを堪えるエイベルに寄り添う。その態度に鼻白んだ皇帝はなんとアビス鉱山が欲しいと言う。我が国の鉱夫も大勢いるのだ、労働力はほぼこちらの者たちによるものなのだから権利はあるとなんとも強引な言い分。指摘道理に確かにゼノビア人も多いけれど大半ではない、ほとんどがヒースター領の者たちだ。カチンと来たので思わず状況を説明し、それほどいうならかかった費用全てそちら持ちで返却くださるならと返答するとやはり逆ギレ。いや、どうしてタダでもらえると思ってるの!?近年、帝国は大赤字だと聞いている。その上、自国の鉱山は年々採掘量が落ちているのでは気が気でないのだろう。それにしたって聞けない話だ。丁重に断ってから下がると拙い事になったと皆で座を囲む。タルブ王国を敵に回すのはあちらも得策ではないと流石に判っているはず。このまま引き下がってくれれば良いけれど。しかし、やけにこちらの事情に詳しいのが気になる。まさか内通者がいるのだろうか。モヤモヤした気持ちが晴れない中、ゼノビア帝国からの密偵がハンナだと判り・・・。綺麗に終わってたので一冊で終わりかと思ってました。この二巻目ではエイベルに支えられ更に強くなったセリーナの心の成長も描かれており、様々な試練に見舞われつつも愛のパワーで打ち破って行く二人。信じていた人に裏切られて落ち込みつつも、ハンナには苦しい事情があったのでした。ったく、あの皇帝、人質取るとか汚すぎる。でも、エイベルは普段は人型でも本当の姿は竜。四面楚歌の状況下、彼の活躍は帝国を翻弄するのでした。にしても竜形態から人型に戻る際、服が元に戻ってるのはどういうからくりなんだろう。そこはツッコんじゃいけないところ?エイベルによってフォルカーは討たれ、ゼノビア側に加担していた伯爵と男爵、セリーのの父兄も捕縛された上、流刑に処されます。人質になっていたハンナの妹・モーリーも救出され、大団円で幕。スパダリ過ぎるエイベルがとにかくやたらと輝いていたお話だと思います。愛の力ってやっぱり凄いな。評価:★★★★☆
2026.10.07
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10月30日 ガブリエラブックス ツンデレ公爵様、悪役の姉にデレすぎです! 百門一新11月5日 ポプラ文庫ピュアフル 忌部家の娘と龍神の契約婚 麻生ミカリ11月6日 小学館文庫キャラブン! 後宮のモグラ寵愛はこりごりにつき、ご遠慮いたします 一ノ瀬千景 魔王に見初められた悪役令嬢は、王子と婚約破棄しない 宮野美嘉11月10日 レジーナ文庫 婚約者を想うのはやめました かぐや 私を追放したことを後悔してもらおう 2 ~父上は領地発展が私のポーションのお景と知らないらしい~ ヒツキノトウカ11月28日 新潮文庫nex 完璧な淑女のふしだらな契約 六ツ花えいこ12月4日 悪党のお父様、私と結婚してください 61月9日 ツギクルブックス 公爵令嬢は忠告をきかない ~未来の悪役令嬢は異世界転生メイドに我がままを貫く~ 有沢ゆう 嘘ばかりの婚約者様、どうぞ愛する人とお幸せに 風見ゆうみ1月12日 蜜夢文庫 寡黙なボディガードは箱入り令嬢を守り抜く(仮) 西篠六花
2026.10.06
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2025年11月刊レジーナブックス著者:千紫万紅(敬称略)我儘な妹ばかりを優先する両親に嫌気がさして、生家を飛び出した令嬢・マリアベル。第一王子レオナルドの侍女として王宮で働く彼女は今日も大忙し。というのも、三ヶ月後に迫った結婚式の準備に追われているのだ! そんなある日、マリアベルは婚約者のオズワルドに呼び出され、婚約破棄を告げられてしまう。--それも、妹のリリアンがオズワルドの子を授かったという理由で。衝撃の裏切りによって、幸せ真っ只中からどん底人生になることを覚悟したマリアベル。しかし、そんな彼女を周囲の人間が放っておくはずがなくーーどん底どころか、幸せがどんどん舞い込んでくる!? 虐げられ令嬢の逆転爽快ファンタジー、開幕! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 マリアベル=王子付きの侍女。 結婚間近だったが妹に婚約者を寝取られ破談になった。 クロヴィス=マリアベルに想いを寄せている公爵令息。 レオンハルト=ネムス王国第一王子。 リリアン=マリアベルの妹。 オズワルド=マリアベルの元婚約者。 エレノア=アウラ王国女王。ネムス王国王宮で第一王子付きの侍女として働くマリアベルは、数か月後の挙式を楽しみにしていた。お相手はラフォルグ侯爵令息オズワルド。片田舎出身の子爵令嬢の自分など到底受け入れられないと思っていたが、レオンハルト王子のお気に入りの侍女であると知るや、侯爵夫妻から大歓迎された。しかも夫人は大切な思い出のウエディングドレスまで譲ってくれて先日仕立て屋にサイズ直しを頼んだばかり。でも、まさかオズワルドから婚約破棄されてしまうなんて・・・。お前みたいにつまらない女より、リリアンの方が美しくて気が利く。初めて会った時はその生真面目さがいいんだと仰って下さったのに、奔放だが明るく社交的な妹に目移りした挙句、深い関係になり何と妊娠までさせていた。ごめんなさい、お姉さま。オズワルドの腕に張り付いて謝罪するリリアンの表情には罪悪感の欠片も見受けられない。またか、マリアベルは妹の性質を思い出し大きく溜息を吐いた。両親とそりが合わず、早々に家を出たので失念していた。リリアンはいつも大して興味もないものでも姉の物を欲しがり強請った。妹ばかりを猫可愛がりしている両親は当然ながら妹の味方で、意地悪しないでリリアンに上げなさいとマリアベルを窘めた。妹のこの自信ありげな様子からして、この一件、きっと両親も関わっている。いや、普通有り得ないでしょう。式までもうあと三ヶ月だっていうのに、こんな時迄リリアンの我儘を聞き入れるなんて。愚かな身内たちの浅はかな行動に眩暈を覚えつつ、オズワルドへの気持ちが急速に冷めて行くのを感じる。こんな最低な男、結婚する前に本性が判って良かったのかも。判りました。お好きにどうぞ、そう告げてさっさと仕事に戻ったけれど、やはりいつもと様子が違ったらしい。レオンハルトに何かあったのかい?と問われた彼女は元婚約者と家族から受けた仕打ちをぶちまけた。有り得ない、僕の可愛いマリアベルにふざけた真似をっ!そうは言いつつもレオンハルトにはちゃんと本命がいる。ルーホン公爵令嬢エリザベスだ。そのエリザベスもマリアベルを姉のように慕っているため、これが耳に入れば烈火のごとく怒り狂うことだろう。一先ず数日休みたまえ、主に勧められ一週間ほどの休暇を貰った。その間に一度実家に戻って婚約破棄に伴うと続けをしておかなければ。案の定、両親はリリアンがそう望んだからだとあっけらかんとした態度。姉なんだから譲ってあげなさい、とか、婚約者は本でもアクセサリーでもないのよ!とはいえ、言ってもどうせ堪えやしない。流石に悪いと思ったのか、オズワルドから相場よりかなり上乗せした金額がマリアベル宛に送られて来た。田舎なら土地付きのそこそこ大きな屋敷が買える額ではあるけれど、腹いせにパーッと使う気にはなれなかった。まぁ、どこかで必要になることがあるかもしれないから・・・。トランクに詰めて他の荷物と共に王宮からの迎えの馬車に積み込む。今回の件で文句があるなら出ていけ、と父に言われたもののもう既に出ているし仕事もしている。では絶縁ということで。きっぱり告げると振り返らずに馬車に乗り込んだ。仕事に復帰するとやたらと独身貴族に声をかけられ、その度にレオンハルトや友人のクロヴィスが撃退している。やれやれこうなると思っていたよ、嘆息したレオンハルトは、さっさと告白しないとずっと続くぞ。その忠告に腹を決めたのか、翌日クロヴィスから求婚されてビックリ。四つ下の彼のことは好ましく思っているけれど正直、そういう対象として見ていなかったから。実は初めて会った時から好きだったと言われてポカン。オズワルドと婚約が決まった時もマリアベルが幸せならと一度はあきらめたらしい。だが、今回の件でもう諦めないと言う。クロヴィスはあの最低男とは違う、でもまた婚約して裏切られたら?有り得ないと思いながらどうしても怖くなって、まだ婚約は出来ないけれどお付き合いならとクロヴィスの告白を受け入れた。マリアベルは美人で頭も良く、厳しいと評判の侍女長お墨付きの優秀な侍女だ。しかももうすぐ立太すると噂のレオンハルトのお気に入りの侍女。婚約破棄された経験があるとしても相手の不貞が原因だし、妻にするメリットは充分ある。レオンハルトもエリザベスもそれを懸念しており、躍起になっている独身貴族に先を越されるなとクロヴィスに釘を刺したのだった。そうこうしているうちに侍女長がマリアベルを養女にしたいと名乗り出てくれて、手続きが済めば彼女は伯爵令嬢になる。公爵家に嫁いでも問題ない家柄だ。なんだかどんどん外堀を埋められている気がするわ。嫌ではないのだが、本人を蚊帳の外にしているのが問題だ。そう言えば、本来なら今日が挙式だったのよね。あれから色々あり過ぎて瞬く間に三ヶ月経っていた。気晴らしにとクロヴィスに誘われブラブラしていると、教会の前で大騒ぎしている人々が。え?オズワルド様とリリアン?それにハインツ子爵夫妻とラフォルグ侯爵夫妻の姿も見えて、クロヴィスと二人、事の成り行きを見守った。まさかあの人達、私が予約していた教会をそのまま使えると思っていたの?しかも、婚約破棄したことを侯爵夫妻には内緒にしていたらしい。この娘は誰なの!?と捲し立てる侯爵夫人に茫然としている侯爵。呆れたように見物している民たちの視線が痛い。そのうち、リリアンに見つかってお姉さま、何とかしてよ~と泣きつかれた。オズワルドからは予約してるのになんで教会から締め出されたんだと掴みかからんばかりの所をクロヴィスに制止され、どうして破談になったのにそのままここが使えると思われたんです?しら~っと言い返すマリアベルに睥睨されてオズワルドはしどろもどろ。元々ここは私の結婚式ならと枢機卿様のご厚意で特別に使わせてもらえることになってたんです。その説明に漸く合点が行ったと彼は項垂れ、ここ使えないの~!?と泣きわめくリリアン。お腹の子に触るからとその背をさすりながら、なんで私がこの子の面倒を、とバカらしくなった。見ると枢機卿が表に出てきていて慌てて立ち上がり挨拶すると笑顔を向けられた。が、オズワルド達には厳しい目を向けこの件は国王に報告するときっぱり。観念した侯爵は覚悟を決めたようで、息子の襟首をひっつかむと馬車に放り込み、夫人と共に帰って行った。リリアンは身重なので、くれぐれも気を付けてやるよう子爵家のメイド達に託すとクロヴィスと共に王宮に戻った。この件は王と王妃をとてつもなく怒らせた。ラフォルグ侯爵にはオズワルドの廃嫡と降格処分が言い渡されたが、元々病気で退職したとはいえ、侯爵は騎士として王家に貢献していたこともあり、その程度の処分で済んだのは僥倖と言える。ハインツ子爵家は貴族位剥奪。リリアンは子供が生まれたら修道院行きが妥当だろうと沙汰が下された。しかし、マリアベルとクロヴィスとの婚約は許可されなかった。本当なら彼女にはもっといいお相手をと王妃は考えていたが、まぁ息子の補佐になる子ならいいでしょうと後押しをしてくれていた。なのに、王は隣国アウラの大使・キルデリクと結婚させると言って譲らない。隣国からのゴリ押しですか?愛してやまない王妃に詰められ、王が渋々語ったのは二十年前、アウラ王国で起こった悲劇。誘拐され行方不明になっていた第一王女・シャンタル。それがマリアベルなのだと聞かされ王妃は茫然。二年前、キルダルクが自国の女王に瓜二つのマリアベルを見て気が付いたらしい。しかし、未解決事件ではあるし、王女は死亡と処理されている。なので、輿入れと言う形でアウラに返還するよう密書が届いたと言う。ハインツ子爵はマリアベルの正体を知っていたのですか?その問いに王は否定した。金を貰い養育を引き受けただけだそうだ。だが曰く付きの子だとは気付いていたと。教会の騒動だけで貴族位剥奪は少し重い罰だと思っていたが、なるほど知らなかったとはいえ王女の誘拐事件に関与していたのだ。実のところ甘い処分だったわけか。クロヴィスと結婚させるわけにはいかないというのはそう言うわけだ。一緒に聞いていたレオンハルトも天を仰いでいたが、なら未来の王配として彼もアウラに行かせればいいでしょう。そういって王に剣を向けるや、そろそろ引退されますか?と脅した。どう見ても本気な息子に恐れを無した王は発言を撤回、今後のことはエレノア女王と話し合うことになった。そんな折、隣国から使節団が訪れ、キルデリクがマリアベルの返還を求め・・・。婚約破棄されたら、ヒロインに次々と幸運(?)が訪れたお話。マリアベルの味方が凄い人達ばかりで、実はクズだった婚約者と離れたことで家族とも縁が切れます。この家族も犯罪に片足突っ込んでいたのが発覚し、とんでもない最期を迎えるわけですが、この人達も実の琴分け隔てなくマリアベルを愛していれば将来安泰だったろうに。ホント、バカ。婚約者も救いようのない愚か者でこの後再び事件を起こし、巻き添えで首一枚繋がっていたラフォルグ侯爵家はお取り潰しに。侯爵夫妻は悪人だったわけではないだけに気の毒でしょうがない。その後、マリアベルは実の母・エレノアと対面し、これからのことを話し合い、結果アウラの次期女王になるのを決めます。クロヴィスは王配として婿入りを決め、暫くはネムス王国に留まり、レオンハルトの腹心を育てるため尽力することになります。マリアベルは後々罪が暴かれ、処刑されたハインツ子爵夫妻に代わり、リリアンの面倒を引き受け、どこででも生きて行けるよう教育。オズワルドからの慰謝料で王都に屋敷を買い、そこで暮らせばいいと手配します。こんな妹でも見捨てられないマリアベルはお人好しだなぁと思いましたが、まぁあのスパルタ教育を見るに、リリアンも大変そう。最後はちょっとコメディ要素もあったり、ザマァ展開に容赦もなくて面白かったです。評価:★★★★☆
2026.10.05
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2026年8月刊スターツ出版文庫著者:湊祥(敬称略)養女の香穂は、本家の実娘であり天才と称される義姉・春妃から召使いのように扱われ、学園でも“役立たず”と嘲笑されていた。だが誰も知らなかった。彼女には、最強の雷神の力が宿っていることをーー。春妃と風神の婚儀の日、その運命が暴かれる。「俺の番は、お前だけだ」 雷神・珠莉から突然求婚された香穂は、初めて無条件に大切にされる喜びを知る。しかし義姉の執念が二人を引き裂こうとしていてーー。これは、最底辺の少女が最強の神に愛され、運命を覆す和風シンデレラ物語。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 東条香穂=貴族家の養女。無能の役立たずと蔑まれていた。 珠莉=雷神。香穂を番として雷神領に連れ帰る。 東条春妃=香穂の義姉。颯矢の番に選ばれる。 颯矢=風神。珠莉を敵視している。 麒麟=香穂の式神。 晶魔=子供の姿をしたあやかし。秋津国風神領の名家・東条家で暮らして十三年。養女として引き取られたはずなのに、新しく家族になった東条家の人々は冷たかった。特に義姉の春妃は香穂を虐めてストレスを発散している節があり、何度理不尽な目に遭った事か。それでも義姉は美しく優秀で取り巻きも多い。外面の良さも相俟って人気者ではあるものの、一たび春妃に目を付けられたら最後、私に逆らったらあんたの親の会社を潰すわよ。そう言って土下座を強要する。義姉の常とう手段だ。実は義姉よりも優秀なのではと陰で噂されている静子が、春妃に向かって土下座し額を地面にこすりつけているのが見えて香穂はため息を吐いた。ただ、お義姉さまより大きな霊獣を召喚したから。負けず嫌いで、尚且つ風神・颯矢の番の座を狙っている春妃は静子が選ばれたら大変と、こうして出る杭を打ち、決して自分より目立つなと言い含めた。可哀想に・・・。できれば助けてやりたいが、香穂も東条家では使用人以下の最底辺の人間。自分が止めに入っても春妃とその取り巻き達は屁とも思わないだろう。にしても相変わらずやり方が姑息ね。家業を潰すと脅されたら大抵のものは従わざるを得ないのに。とにかく、今後は私より目立とうとしないことね。そう言い含めると高笑いをして去って行った。その姿が遠くなると香穂は慌てて静子に駆け寄ったが、土下座の姿勢から起き上がろうとしない。図らずも見て見ぬふりをしていた自分が慰めても辛くなるだけか。香穂はポケットから取り出したハンカチを静子の側に置くと黙ってその場を立ち去った。屋敷に戻るとすぐさま義姉にこき使われた。あんたは無能のクズなんだから、こんなことくらいしか役に立たないでしょ、それが春妃の言い分で、家族は止めようともしなかった。娘の憂さ晴らしのためだけに私は引き取られたのだろうか。香穂は四歳までの記憶がない。船舶事故の生き残りと聞いているけれど、私は一体何者なのだろう。それから暫く経った頃、春妃が颯矢の番に選ばれた。静子のことを思うと胸が痛む。婚姻の儀式のためにその日は朝から婚姻の儀式を執り行う万象神殿の掃除を言いつけられてへとへとだ。お前は親族の席には座らせないとまで言われてなんだかもう諦めも付いた。春妃には申し訳ないけれど、嫁いでくれれば静子も自分も平穏に暮らせる。とにかくどやされないよう必死に床を磨き、立ち上がった香穂は背の高い男性にぶつかった。目に入った容姿で雷神の珠莉と判って香穂は平謝り。しかし彼は、掃除してたところをすまなかったねと逆に謝罪すると、突然ハッとしたように香穂の手首を取った。お前、雷神領の者だろ?何で風神領にと驚いている。名前はと問われ「東条香穂です」と答えると、やっぱり香穂、と驚愕の表情を浮かべた。香穂、俺の番になれ。そう宣言するや、どうせなら俺たちもここで儀式をしようと会場に連れて行かれそうになって必死に手を振りほどく。なんとか撒いたけれど義姉の儀式を見ていないと何を言われるか。使用人席の末席に着くと今日の主役二人の側に珠莉と火神、水神が見えた。四神が揃うのは婚姻の儀式くらいのもので壮観だ。参列者たちも感動していると、窓を突き破ってあやかしたちが乱入してきた。四神にとって有象無象のあやかしなど敵ではない。しかし、数が多かった。身を護る術のない使用人たちが狙われ、咄嗟に香穂は自らの式神・麒麟を呼んだ。人型の式神を使役できるのはごくわずか。無能と言われ続けていた香穂がまさか人型を呼び出すとはと春妃も義両親も激しく動揺。香穂は無能ではない。ただ風神の力が使えないだけだ。皆を守って戦う香穂の姿を見て珠莉は歓喜した。十三年前、船の事故で家族諸共死んだとされていた幼馴染で番候補の少女。まさか風神領にいたとは、そりゃ見つからないわけだ。使用人扱いされてたみたいだし、一刻も早く連れ帰らねば。あやかしが片付くと、俺の番が見つかった。そう言って肩で息をしている香穂を引き寄せた。炎神と水神も彼女の活躍を見ていたので反対はせず、颯矢も軽口を叩きつつ認めた。面白くないのは春妃で、こんな無能が雷神様の番!?有り得ないと髪を掻きむしっている。そんな彼女を颯矢があの強さなら選ばれて当然だよ、仕方ないと宥めている。有言実行、とばかりに珠莉は簡易ながらも儀式を済ませると香穂を雷神領に連れ帰った。実は四歳までの記憶がないのだと打ち明けると珠莉はショックを受けていた。香穂の態度からしてその可能性が高いかと思ったがやはりか・・・。雷神領の名家生まれの彼女は幼いながらも優れた力を持っていた。お互い子供だったけれど将来の約束を交わして少ししてからのこと、家族旅行に出掛けた香穂は事後に合い帰ってこなかった。それでも彼女の遺体だけは上がらず、もしかしてと探し続けていたのだが、風神領の貴族の養女になっていた。どうも臭い、そもそも香穂たちは狙われていたのではないだろうか。珠莉の番になられては困ると思う者の企て。一番怪しいのは風神だ。昔から何かとこちらに因縁を付けてくる風神とは犬猿の仲だった。降りかかる火の粉を振り払ううちに段々エスカレートしている。今回の婚姻の儀式での騒動もまさか颯矢が?一方、その頃、風神の館では春妃が癇癪を起していた。本当に性格の悪い女だ。うんざりしながらも、まぁこういう手合いの方は扱いやすいかとほくそ笑む。にしても、生きてたんだ、あの娘。亡き先代が差し向けた者の手により、家族は殺せたが肝心の娘は雷神の加護で生き残ったと聞く。暗殺も叶わず、何処かの家に預けられたそうだがそれが東堂家だったとは。しかも、珠莉は見事に彼女と再会して番とした。あまり優秀な番を持たれるとやり難いんだよねぇ。そう独り言ちたあと、怒りが収まらない様子の妻に語り掛けた、二人で香穂に痛い目を合わせてやろう、と。囁く声に春妃は笑みを浮かべた。一月後、神器の儀のために珠莉と万象電を訪れた香穂は風神の神器・風袋を故意に壊したと言う嫌疑をかけられ・・・。架空の国の守護神とその番のラブストーリーです。無能が実は最強だったというある意味テンプレ展開ではあるものの、今作のヒロインは本当にチート系。そりゃ、風神も脅威に思うよなぁと。自業自得で春妃は厳しい処罰をうけたものの、颯矢の方は小賢しくて証拠は一切残さない。過去の事件は彼の父の仕業としても魔族と組んだ春妃を焚き付けたり結構やらかしてます。トカゲの尻尾切で全部春妃に責任をおっかぶせてホント、卑怯な奴です。機会があれば火神、水神の話も、と後書きで言ってらしたので、あやかしとの戦いの行方もシリーズで描かれそうですね。とにかく、颯矢が痛い目に逢いますように。評価:★★★★☆
2026.10.04
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2026年3月刊新潮文庫著者:蒼磨奏最悪の政略結婚から始まる。大正ロマンラブストーリー。北小路家の娘・綴(つづり)は、妾(めかけ)の娘として使用人以下の生活を強いられていたが、軍門の名家・東堂家次男の征司と政略結婚が決まっていた。しかしそれは言いがかりによって一方的に破棄されてしまう。全てを奪われ失意の綴の前に数年後、彼は新進気鋭の作家・壬生冬青(みぶ・とうせい)として現れる。再び自分と婚姻を結ぶように、と。以前と別人のような征司に不審を抱く綴だが、彼には驚くべき秘密があった。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 北小路綴=家族の分家当主の妾の子として冷遇され続けていた。 壬生冬青=本名・東堂征司。一度婚約破棄したはずの綴に結婚を申し込む。 東堂崇明=征司の兄。弟の放蕩ぶりに手を焼いている。北小路礼子=北小路家の正妻。綴を虐げていた。 東堂征司=綴の元婚約者。 黒上鞠=綴の実母。故人。華族の分家である北小路家に産まれて二十二年、妾の子ということで綴は使用人以下の生活を強いられていた。毎日くたくたになるまでこき使われ続け、最近では足の衰えた先代当主夫人・初枝の介護を丸投げされいい加減体力の限界だ。食事も貰えるのは小さい握り飯を三つだけ。それでも母が存命中は当主の目もあったので多少はマシな生活を送れていたと思う。元々、母は花街で人気の娼妓だった。それを北小路家の当主が身請けし屋敷の離れに住まわせると翌年綴が産まれた。面白くないのは正妻の礼子とその子供たちだろう。母と二人、いびられ続け、我慢の限界だったのか七年前、母は自ら命を絶った。悪い事は続くもので、それから暫くして当主は病で入院。あれから屋敷には戻って来ていない。以降、礼子が家を取り仕切るようになり、綴の辛く苦しい日々が始まった。そんなある日のこと、母屋に呼び出された綴は大田原という男と引き合わされた。年齢は五十代後半と言った所か。珍しく機嫌が良さそうな礼子は、くれぐれも粗相のないようにと言い含め、後はごゆっくりと出て行った。大田原は多少行き遅れではあるが美しい娘じゃないかと舌なめずりせんばかりに厭らしい視線を向けて来る。私の家に来れば不自由はさせないよ、と押し倒されかけ堪らず綴は悲鳴を上げた。するとドスドスと力強い足音が響き、スパーンと襖があけられ固まる二人。畳に転がる綴に「北小路綴だな?」と入って来た男に声をかけられ頷くと、話がある、そう言ってひょいと抱え上げられた。そこに「征司っ!」と追って来たのは三十代くらいのガタイの良い男性。あれ、この方、東堂家の・・・。四年前の苦い記憶が蘇り、自分を荷物のように抱えるもう一人の男をまじまじと見つめた。随分印象が変わっているけれど、東堂征司、かつての自分の婚約者ではないか。「文豪の花嫁に相応しくない」散々綴をこき下ろした挙句、一方的に婚約破棄を宣言した征司は、付添人の崇明が止めるのも聞かず出て行った。母のことまで馬鹿にされ怒りに震えながらも綴は何も言い返せなかった。礼子からもせっかくの縁談がお前のせいでとカンカン。しかも征司はあちこちに綴の悪評をバラまき、綴を貶めた。恐らく婚約破棄の理由付けのためだろう。礼子からの当たりが一層きつくなったのは言うまでもない。こっちはえらい目に遭ったって言うのにどういうつもり?でも、四年でここまで印象って変わるものかしら・・・。正直言えば、軍属の崇明のガッチリ体型と違い、作家だという征司は所謂優男風だった。なのに、今は細身ながらも筋肉質なのが判る。それに身長も今更こんなに伸びるなんて有り得ない。ん?もうすぐ夕刻、崇明と礼子たちの話し合いには加わらず、綴と庭で待っていた征司の影に尻尾が見えた。しかも、耳っ!?どう見ても狐のそれに、昔母が教えてくれた「異界を覗く窓」を指で形作り征司を見た。が、当人に「やめろ」と手を押さえられてしまいパチクリ。「やめろ、戻れなくなるぞ」人間が異界に囚われれば抜け出せなくなる。焦った様子の彼は綴を心配して止めてくれたらしい。やはり、四年前の征司とはまるで別人のようだ。話し合いが終わったようだ、礼子と崇明に呼ばれて応接室に入ると、お前の結婚が決まったと告げられビックリ。征司さまがお前を娶ってくれるそうよ、身一つで構わないから明日にでも来て欲しいと。今夜中に準備をしておきなさいと命じられたが何が何やら。崇明は、あの時は本当にすまなかったと謝罪し、今回はそんなことにはならないからと征司を見た。横柄に頷く彼を見るとやはり違和感が強くなる。翌日、指定された住所に着くと壬生と表札が出ていた。<壬生冬青>、それが征司のペンネームだ。初枝が読書好きだったのもあり、新書が発売される度に作家問わず書店から買い入れていた。その中に冬青の著作がいくつかあり、その面白さに夢中になったものだ。こじんまりとした二階建ての一軒家で一階は書庫替わりなのか蔵書が溢れ、二階二間を住居にしているらしい。冬青の仕事場兼私室の隣を貰い、彼から仕事中は声をかけるなと言われたので先に通いの家政婦だと言うトミに挨拶した。人の良さそうな笑顔に蔑む態度は見えなかったことに安心する。夕食の支度が終わるとトミは自宅に帰って行き、いよいよ冬青と対面となった。あの影のこと、本当にあなたは征司さんなのか聞きたいことは山ほどある。結果、やはり彼は征司ではなかった。俺はあやかしだ、こともなげに言われて内心驚いたけれどやっぱりとも思った。狐の?と尋ねるとそうでもあるしそうでもない、俺は色々混じっているんだ。そう言って変化の術を解くと本来の彼が姿を現した。なるほど、確かに見た目は狐のあやかしだが、右の額に角がある。それ以上は言いたくなさそうなので話題を変え、何故征司のフリをしているのかを尋ねた。彼の話では、あの婚約破棄騒動後から暫くして征司は花街で騒ぎを起こし、挙句車に撥ねられ死んだのだそう。東堂家の放蕩息子らしいと言えばらしい最後だが、家名に傷が付く。征司の死は身内と近しい者たち以外にはかん口令を敷き、伏せられた。しかし、彼も小説家のは端くれ、いつまでもごまかすのは困難。冬青が一時世話になっていた僧侶が崇明の知人で作家をしており、それを真似して小説を書いていたのも条件に合った。崇明の頼みで征司の身代わりを務めたのだと言う。話を聞いてそれで色々と合点が行った。人が変わったようだったのも気のせいではなく、小説がヒットしたのも彼に才能があったから。綴と結婚したのは東堂家の男がいつまでも独り身では困ると泣きつかれたそうで、それで丁度崇明からお前に可哀想な事をしてしまったと聞き、じゃあお前でいいかと。エライ言われようではあるものの、彼に悪気は無いように思う。自分があやかしだと知っても態度の変わらない綴が気に入ったのか、肝の据わった娘だと感心している。まぁ、形だけの夫婦になるが、と最初に釘を刺されてしまったがあのまま北小路家にいたらまたどこぞの金持ちの後添えか妾に出されていただろう。執筆作業を邪魔しなければ好きに過ごしていい、そう言い置くとまた仕事に入ってしまった。今回は初めてのジャンルなんだ。万年筆を握りながらなんで俺が、とぼやいている。後に聞いた話によれば恋愛ものだそう。冬青は実体験を生かしているのか怪奇小説ばかりを刊行している。それが当たるから編集部も好きに書かせていたみたいだが、新たな層を開発したいらしい。とは言え、恋愛などしたこともない冬青に男女の機微など判るはずもない。だが、待てよ、ふと自分の現状と綴の存在を思い出し、これは行けるかもしれない。そうして書き始めた小説は仮初夫婦を題材にしたもので・・・。タイトル通りの内容ではあるんですが、その文豪があやかしだったら?何事にも一生懸命で心優しく、達筆な綴に段々と気を許していく冬青。彼は執筆業とは別に軍の依頼でこの世と幽世を繋ぐ境界の見回りをしていました。新婚旅行のついでに出掛けた地で綴はとあるあやかしに目を付けれ、以降つけ狙われる羽目に。何の気なしに使った異界を覗く窓は、次々と綴に災難をもたらし、と言った展開です。その度に奮闘する冬青がカッコよく、そりゃ綴も意識しちゃうよなぁと。あと、彼女の母親・鞠さんの死がどうにも臭い。自殺じゃないんじゃないの?あれ。綴を狙うあやかし・蘇芳にも逃げられちゃったし、多分続編あるんだろうなぁって感じの終わり方でした。色々気になる伏線てんこ盛りだったので、続きを楽しみにしています。評価:★★★★☆
2026.10.03
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10月下旬 レジーナブックス 侯爵令嬢ソフィアの結婚 今野綾11月4日 キキ文庫 身代わりで冷徹王子に嫁げと命じられましたが、癒しの歌のおかげで無敵です 瀬王みかる11月26日 ジュエルブックス 1行で死ぬモブ令嬢ですが、 死亡フラグ折ったら、冷徹王子の執着寵愛が始まりました!? すずね凛 いちゃいちゃクエスト 女勇者からパン屋に転職したら、 魔王の胃袋を掴んでしまい離してもらえません! 葉月エリカ11月30日 KADOKAWA 夫を正しく捨てる方法について 余命わずかな宝石令嬢は、冷酷公爵から逃れられない 芦永12月1日 角川ビーンズ文庫 最弱の辺境へ嫁がされたので、 前世100年分の知識で領地を育ててみせます 景花1月22日 蜜猫f文庫 闇堕ち皇帝は恋に容赦がない 陛下、私のために隣国を滅ぼそうとするのはやめてください 当麻咲来 身代わり姫ですが、 二度目の結婚を諦めなかったら溺愛されました 熊野まゆ(敬称略)もう1月の予定が・・・(^_^;)
2026.10.02
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2026年6月刊レジーナ文庫著者:屋月トム伽(敬称略)孤児院出身の聖女・ミュスカは、教会の物置小屋に居候し、他の聖女たちから仕事を押し付けられる毎日を過ごしていた。ある大雨の日、びしょ濡れで立ち尽くす一人の男性に出会った彼女は、全財産である金貨一枚を貸してあげることに。数日後、教会にやってきた彼はなんと辺境伯のレスターだった。レスターに領地まで連れてこられたミュスカは、金貨のお礼としてご馳走、豪邸の一室、箱いっぱいの金貨を与えられ、果てには結婚まで申し込まれてしまい…… 文庫だけの書き下ろし番外編も収録! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 ミュスカ=聖女。いつも貧乏くじを引かされていたが、心優しき行動によりレ スターに見初められる。 レスター=辺境伯。ミュスカに一目惚れして求婚する。シャーロット=伯爵令嬢で聖女。レスターに惚れている。 ディビット=聖堂騎士。ミュスカに想いを寄せている。オースティン=第一王子。レスターの従兄弟。割り充てられた大量のアミュレットに祝福を与え終り、町に両替に行っていたミュスカは念願の金貨を握りしめルンルン気分で家路を急いでいた。すると教会の前にぽつねんと立ち尽くす青年の姿が。どうやら有り金全部を教会に置いて来てしまい、帰りの旅費が無いらしい。それは大変、ミュスカは迷いなく握っていた金貨を差し出すと青年の手を取り握らせた。これだけあれば遠方であっても足りるはず。青年は必ず返すから、と感謝し幾度も振り返りながら立ち去った。身形が良かったから貴族の方かしら・・・。ならお金が帰って来る確率は高い。まぁ、金額的に持ち逃げされる可能性も無きにしも非ずではあるのだが、それでもミュスカは信じたいと思った。この国には聖なる力を持つ聖女たちが結界を張り、魔族の侵攻から民たちを守っている。アミュレットに護りの祝福を付与したり、作物の実りが良くなるよう祈ったりその仕事は多岐に渡る。雀の涙のような給金が出るには出るが、ほとんどが家賃や食費として教会に持っていかれてしまい、手元に残るのは僅かばかり。それでもこつこつ貯金して漸く金貨に両替出来た時は感無量だった。なけなしの金なので、できれば返して欲しい。教会の敷地の片隅に立つ物置のドアを開けるとまたもやどっさりとアミュレットが積まれている。どうせまたシャーロットたちの分だろう。どうして貴族である私たちがそんな仕事をしなければならないの?それが彼女の持論だ。そんなものは平民で孤児のあの子にやらせておけばいい、神父もそれを真に受け、仕事のほとんどをミュスカに丸投げ。まぁこういう手仕事は嫌いじゃないからいいのだけど、かといって彼女達は騎士団と魔族討伐に行くこともしないのだ。同じ聖女でありながら、あの人達はどんな仕事なら出来るんだろう。数日後、いつものようにせっせとアミュレットに祝福を与えていたミュスカは、シスターに呼ばれて礼拝堂に赴いた。そこには先日の青年が。彼はミュスカを見るなり微笑むと約束通りヴォルフガング領に連れて行く、と神父を見据えた。彼は、ミュスカに向き直るとレスター・ヴォルフガングと名乗り、ミュスカを迎えに来たと言う。シャーロットを始め、他の聖女たちの嫉妬の視線を感じながらも神父から早く準備をしなさいと促され、物置に戻って荷造りを始めた。くっついてきたレスターはすきま風が入るそこに眉を潜め怒りを露わにしている。ボストンバック一つだけ持った彼女の背に手を回し、後程彼女の扱いについて審議させると宣言して神父たちをビビらせた。数時間ほどかかって辿り着いたのはヴォルフガング領のスノーブルグ。雪深い所であり、作物の実りがあまり良くない地だ。昨年までは常駐の聖女がいたが、年齢を理由に引退。先代聖女の豊穣の祈りの力がまだ残っているのを期待しつつやはり効果は弱い。そこで新しい聖女を派遣してもらうため先日教会に依頼しに来たらしい。だが、君に会えた。そう言ってレスターは彼女の手を握り、ずっとスノーブルグに、俺の側に居て欲しいと懇願。いや、仕事なのですから喜んでさせていただきますけれど!何だか求婚されているような雰囲気にミュスカは困惑。あの金貨もちゃんと返してもらい、その輝きに頬ずりしたくなる。でも、五倍の額は返しすぎですよ、辺境伯さま。こんなにいただけませんと固辞しても、これは気持ちだからと譲らず結局受け取ってもらえず、皮袋に入れられたまま机の引き出しに仕舞われている。にしてもこの部屋の豪華さは一体・・・。クローゼットにはドレスや靴がずらり。既製品で申し訳ありませんと家政婦頭のスペンサーに謝罪されもう何が何やら。レスターから仕立て屋を呼ぶよう言われていると聞き、必死に断った。先程到着早々に豊穣の祈りを捧げて来たけれどそのお布施にしたってバグっているとしか思えない。でも、とっても良い人たちなのよね。日中はスノーブルグの教会で怪我人の手当てやアミュレット作りを手伝い、それ以外は辺境伯邸で過ごす。護衛宜しくわざわざレスターが送り迎えしてくれるものだから変に意識してしまう。そうこうしているうちに、二人の距離はぐんぐんと縮まり、レスターからの猛アタックの末、ミュスカは彼の求婚を受け入れた。実は一目惚れなんだ、と呟き、面映ゆそうな彼がかわいく思えてくるあたり、私もこの人を好きになってしまったんだなと思う。それから暫く経ってスノーブルグの冬まつりの日、シャーロットがこの地を訪れた。私だって聖女なんだからと、元々ミュスカに依頼されてた仕事を横取りして、隣の領地に向かったシャーロットの祈りはレスターが見る限りダメダメだ。惚れた欲目もあるがやはりミュスカの聖力は凄い。最近、王都で販売されているアミュレットの評判が良くないのも、ミュスカが作ってないからだ。彼女のお手製のアミュレットは今はスノーブルグでしか買えない。これは向こうも相当焦っているだろう。おまけに聖堂騎士のデイビットはレスターと言う婚約者がいるのを知りつつミュスカにしつこく迫っていて気が気でない。もう少し護衛を増やすべきか。そう思っていた矢先、教会で仕事をしていたミュスカが何者かに攫われ・・・。不当な扱いを受けていた聖女が辺境伯に見初められ幸せになるお話すです。テンプレ通り過ぎる展開だったので先の予想はついてしまうんですが、変に奇をてらってない辺り読み易かったです。あとヒロインがチートすぎないのもいい。実はとんでもない力があってどうこう、ってのは無く、ヘイトキャラたちが勝手に自滅して行くさまが滑稽過ぎて・・・。評価:★★★★
2026.10.01
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