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2022年8月刊スターツ出版文庫著者:クレハさん晴れて正式に鬼の花嫁となった柚子。新婚生活でも「もっと一緒にいたい」と甘く囁かれ、玲夜の溺愛に包まれていた。そんなある日、柚子のもとにあやかしの花嫁だけが呼ばれるお茶会への招待状が届く。猫又の花嫁・透子とともにお茶会へ訪れるけれど、お屋敷で龍を追いかけていくと社にたどり着いた瞬間、柚子は意識を失ってしまい…。さらに、料理学校の生徒・澪や先生・樹本の登場で柚子の身に危機が訪れて…? 文庫版限定の特別番外編・外伝 猫又の花嫁収録。あやかしと人間の和風恋愛ファンタジー新婚編開幕! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 鬼龍院柚子=鬼の一族の次期当主・玲夜の「花嫁」 先日、正式に入籍を果たした。 鬼龍院玲夜=あやかしの頂点である鬼の一族の次期当主。 猫田透子=柚子の親友。猫又のあやかし・猫田東吉の「花嫁」で、数か月前に 待望の第一子を出産。 荒鬼桜子=玲夜の秘書兼側近の高道の妻で、柚子の相談相手。 片桐澪=柚子が通う調理師専門学校で知り合った同期生。 柚子を気に入り、友人になる。 成海芽衣=調理師専門学校の同期生の一人。何不自由のないお嬢様風な柚子を 妬み敵視している。 樹元仁=テレビにも出演する創作料理のシェフ。大人気ノベル「鬼の花嫁」の新章開始です。ついにヒロインに名字が(苦笑)なぜだか、ずっと柚子の名字が公開されてなかったので、今思うと元々シリーズ一冊目で終わるつもりだったのかな、と。物語は、5巻ラストの二人の挙式から一週間後から始まります。「ノベマ!」でも本編だけならば無料で読めますが、一応26日発売の書籍の為、ざっくりと。晴れて入籍を果たし、新婚ほやほやの二人。玲夜が多忙で新婚旅行にはまだいけてはいないが、柚子は幸せを噛み締めていた。そんなある日、透子と二人で招かれた「花嫁」たちが集まる『花茶会』招待客は皆、あやかしに望まれるだけあって美人揃いではあったが、輿入れして長い者ほど、不満や苦悩を抱えているようだった。あやかしの「花嫁」への愛情は一途で揺らぐことはないけれど、その分執着や束縛も激しい。最初の数年はまだ良いが、禄に外出もままならず屋敷に閉じ込められるばかりでは気も滅入ると言うもの。この集まりは、そんな「花嫁」たちの為の息抜きの場であった。確かに、玲夜もそんな一面がある。調理師学校へ通うのだって随分反対されたが、惚れた弱みか渋々許可してくれた。ので、実際たまに透子ですら愚痴っている東吉の束縛ぶりについてもあまり真剣に考えていなかったのだ。ある程度の自由があるのも偏に玲夜が柚子の考えを尊重しているから。だが、他の「花嫁」たちはそうもいかない。年に数度のこんな短時間の自由を生きる糧にしている者も多いと知って、柚子は複雑な心境になります。4月になり、自分の料理店経営のために念願の調理師専門学校に入学した柚子。一般人が多いため、龍や小鬼2人を連れた彼女は相当奇異に映っているようだ。せっかくなら新しい友人も作りたいのに。すると、片桐澪と言う女性に声を掛けられた。大学を中退して進路変更したと言う澪。その裏表無さそうな話し方や態度を柚子は気に入り仲良くなります。とは言え、澪以外の学生たちからは遠巻きにされていたけれど、一年間の間に全て身につけなければと張り切っていた。それにテレビ出演で有名になったイケメンシェフ・樹元の授業も参考になる。だが、樹元はやけに柚子を贔屓し、スキンシップが多い様な。この学校に通う条件が車の送迎と、必ず龍と小鬼達を傍に置くこと。おかげで数か月経った今も柚子は遠巻きにされている。しかも玲夜の見立てで身に着けている物が高級ブランド品ばかり。同期生の成海芽衣からは「所詮、お嬢様の道楽なんでしょ」とあからさまに敵意を向けられて居心地が悪い。龍から芽衣の悪意ある言葉や態度を玲夜は報告を受けているようで、出来れば彼の怒りを買う前に自分など無視していて欲しい。柚子は嫌味を言われるより芽衣の身が心配だった。それ以外は特にトラブルもなく過ごしていたある日、柚子のロッカーに、いつからか不審な手紙が置かれるように。ロッカー自体、鍵がかかっている上に、手紙の内容はドラマなどでよく見る所謂ストーカーが書くような文で、どうにも気味が悪い。学校にも報告して対処してもらうことになったが、以降も手紙は続いて怖くなった。当然恐ろしいのはストーカーより、これを知った時の玲夜の反応がだ。龍たちに彼には絶対に言うなと口止めし、桜子に相談の結果彼女が動いてくれることになったのだが、澪が口を滑らせたことで玲夜にストーカーの存在がバレて・・・。新章と言うことで新キャラもちらほら。子育てで忙しい透子の出番が減った分、澪が柚子の友人となって透子ポジを担っている感じ。何かと突っかかってる芽衣は何だかんだと後に仲良くなりそうな気が。透子は書き下ろし短編で主役を張っていく模様。ストーカーの正体は読んでいるとすぐ判ります。ですよねーってとこで。しっかり玲夜に報復され、この件は解決。調理師資格を取って店を持つと言う柚子の願いの為に、玲夜も随分譲歩しているようですが、それはかなり稀な対応なのだとこの巻で判ります。「花嫁」たちは夫に執着され続け自由が無い。好きで嫁いだにしても、それが死ぬまで続くとなると確かにしんどいかも。多少の自由は必要。あと、柚子の前世が神子だったこともあり、なんかまたヒロイン補正が追加されそうな予感。社に祀られている神様が相当な存在らしいから、この辺のエピソードが描かれるのが楽しみです。評価:★★★★★
2022.08.27
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2025年12月刊蜜夢文庫著者:泉野あおい(敬称略)「受け入れて。ふつうじゃない俺も全部」ストーカー気質の重い男を引き寄せてしまう愛実は「結婚するならふつうの人と」とお見合いを続けるも連敗中。そんななか、大企業の経営者一族でありかつて愛実の家庭教師だった拓斗と再会する。急に決まったお見合い相手も拓斗だったことから、運命を感じた愛実は結婚を即決。真面目で優しい拓斗との甘い新婚生活がはじまるが…。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 及川愛美=重い男にばかり好かれる社長令嬢。 烏丸拓斗=IT企業の御曹司。愛美の初恋の人。 朝雛衣織=愛美の幼馴染み。 朝雛沙織=衣織の双子の姉。 岩崎武=愛美の同僚。「君は前世で僕の恋人だったんだ!」突如そんなことを言い出した男に追い詰められて愛美は「またなの?」と嘆息した。前世ネタはこれで九回目、まったくどうしてこんな連中にばかり好かれるのか。身に覚えのない外国名で呼ばれ、さてどうやって切り抜けるか考えを巡らせた。すると「いい加減にしないか」と男の腕をねじり上げた人がいた。その人物を見て「烏丸先生っ!」と歓喜の声を上げた愛美は今までピンチだったのも忘れて再会を喜んだ。烏丸拓斗は愛美が中学三年から高校卒業までの家庭教師で、初恋の人。IT企業の御曹司で就職してすぐにアメリカの支社に行っていた。漸く帰って来たんだぁ、これはチャンスと港に着くまでの間二人でお茶をしてお互いのことを沢山話した。だが、連絡先を聞き忘れたのは痛恨のミス。でも帰り際に「またな」と言ってくれたからきっとまたすぐに会えると思っている。不動産会社社長を父に持つ愛美は所謂お嬢様だ。父はやたらと変な男たちに付け回される娘を案じ、一時はSPまでつけてくれていた。おかげで危険な目には合わずに済んでいたけれど、大学を卒業したら今度は早く結婚しろと煩い。所帯を持てば多少はストーカーも減るだろうと考えてのことだとは思うが、正直あまりうれしくない。結婚するなら先生が良い。ってか、私もう二十九回もお断りされてるんだよ?お父さんが思う程私人気無いんじゃないかなぁ。とは言え、断られる方も結構傷付くんですけど?また見合いに行って来いと言われてもう嫌だと渋る娘に、今度ばかりは大丈夫だと自信を持って断言され、仕方ないなぁと頷く。え、仕事終わったらお見合なの!?幼馴染で親友の沙織に驚かれそうなのよと頷く。横にいた沙織の双子の弟・衣織も嘘だろと姉以上に驚きその後茫然としている。うん、三十回目のお見合は来週のはずなんだけどね、お父さんが今日強引にねじ込んで来たの。どうせまたお断りされるのにねぇ。自分の体質のせいで父に心配をかけ通しだったからあまり無碍にも出来ず承諾してしまったが、正直めんどい。そうだどうせならこっちから開口一番にお断りさせてくださいって言ってみようかな。双子と別れて待ち合わせ場所のレストランに向かう最中そんなことを思う。お父さんは仕事で少し遅れるらしいからこれはチャンスと、待っていた人物に「お断り・・・」と言いかけると何と目の前にいたのは恋焦がれた人物。お断り?と聞き返され慌てて否定し、私、先生と結婚したいです!と叫んだ。かれは「そうか」と微笑み、結婚しようと愛美の手を握った。嘘でしょ、こんな幸せってある!?その後、あれよあれよという間に話は進み、新居となるマンションを決めてすぐ二人は入籍。沙織は喜んでくれたが衣織はどこか寂しそうに見えた。まったく、さっさと告白しないから。呆れたような姉の呟きに煩いよと返し途方に暮れる。やっと愛美のお父さんの許可を得て見合いの約束を取り付けたのに、その隙間に烏丸拓斗の見合いがねじ込まれるとは。愛美から耳タコになるほど聞かされていた先生が選ばれるのは当然。項垂れる弟に、だから前以て想いを伝えとけってあれほど言ったのに、あんたヘタレすぎ。姉だからこその厳しい言葉に言ったけど本気に取られなかったんだよ!と怒鳴れば、流石の沙織も黙った。でも、愛美の幸せを思うなら祝福してあげるべきじゃない?ポツリと言われ、衣織は顔を上げた。初恋の人と結ばれる、確かに幸せだろう。でもあいつの現れ方少し不自然に思わない?ずっと海外にいた奴が帰国後すぐにヒーローのように愛美の前に現れ、そう日も経たないうちに見合いとか。偶然と片付けるには出来過ぎている。何らかの根回しがあったのではないか。言われて見ればそうだけど流石に考えすぎじゃない?拓斗のことを徹底的に調べ上げるぞと息巻いている弟を宥め止めるよう説得していた沙織は、面倒なことにならなきゃいいけどとため息を吐いた。あれ?ポーチが無い。会社のロッカーで帰り支度をしていた愛美はメイク直し用の化粧品を入れたポーチが見当たらず、そう言えば先日もハンカチが無くなっていたのを思い出す。首を捻りつつ廊下に出ると中途採用ながら有望な同僚・岩崎が通りかかった。お疲れ様ですと声をかけ会社を出ると拓斗が迎えに来ていた。相変わらず変な男に追いかけられているのを知った彼が自ら申し出てくれてお言葉に甘えさせてもらっている。丁度双子とも行き会って少し会話をしていると拓斗と衣織が睨み合い。それに気づかない愛美を見て沙織はホッとする。もうほんとやめてよあんた達。笑顔で手を振る愛美に手を振り返すと衣織が「あいつはきっと仕事に都合がいいから愛美と結婚したんだ」とボソリ。調査でいくつか判ったらしいが、実際、沙織たちや愛美のような経営者の子供は政略結婚するパターンが多い。例え拓斗がそのつもりだとしても愛美は彼のことが大好きなんだし、いいのではないだろうか。てか、もういい加減にしなさいよ。諫めつつ、先日愛美から相談された夫婦の営みの回数について弟にも話すと相当ショックを受けたらしい。ふらふら去っていく姿を見て可哀想な事をしちゃったかなと思う。でも、一日三回、それも毎日挑まれているそうだから相当愛美に惚れてなきゃだろう。初恋を諦めきれない衣織が不憫だったが、いい加減吹っ切っても欲しかった。後日、拓斗から呼び出された沙織は弟のことでさり気なく文句でも言われるのかとドッキドキ。しかし、丁度いいから愛美をどう思ってるのかも聞き出してみようと思っている。だが、聞いてみて早くも後悔。やっぱりこの人相当愛美にぞっこんね。衣織が激怒していた根回しだってあっさり認めたし、この人はこの人で必死だったみたいだ。そして弟が人を使って拓斗の身辺調査をしているのにも気づかれていた。それについても探られて痛い腹があるわけでなしとのこと。まああまり気分は良くないですがというので愚弟の代わりに謝罪する羽目に。一通り話し終えると拓斗は沙織に一つ頼みがあると言う。あなたから衣織さんに愛美の部屋から持ち出した僕からのバースデーカードを返してくれるようにと。その話を聞いて沙織はポカンとしつつあいつ何やってんの!と内心大慌て。急ぎ帰宅すると丁度いい所に、と伊織が部屋から飛び出して来た。あんた何してくれたの!と怒鳴りかけた沙織に「これ見てくれよ」と差し出されたのは何の変哲もないバースデーカード。短いメッセージと誕生日おめでとうと達筆で書かれている。そこで「ん?」と気付いたのは弟が指差す箇所。少し厚みのある紙が剥がれコードと丸い小さな機械が見えた。これ、盗聴器なんだと言われギョッとする。毎年届くそれを愛美は喜び壁に貼っていた。嘘でしょ?先程の会話でこいつも結局激重勢なんだなと思い知ったばかりであったが、なんというか拓斗は群を抜いている。成程、愛美の元にあるはずのカードの一枚から衣織の声しか拾わなくて持ち出しがバレたわけか。怖っ。とにかくそれ愛美に返しなさい!叱りはしたものの、こいつ絶対愛美にばらす気だなと思うと気が気でなかった。翌朝、案の定烏丸家に特攻する衣織のストッパーとして付いて来たが、拓斗も相当な面の皮だと思う。あー、愛美の前で盗聴器のことバラすから彼女固まってるじゃない。大丈夫?と声を掛けようとしたら駆け出したので慌てて後を追う。さぞショックだったろうとごめんねあのアホのせいで、と謝れば愛美はやけに嬉しそうな表情。拓斗さん、そんなに私のこと好きだったんだ・・・。親友の反応に思わずドン引き。え、四年も盗聴されてたんだよ?気味悪くないの?恐る恐る尋ねる沙織に、全然、それだけ私が心配だったからでしょ。とあっけらかんと答えた。どうやら、一方的に自分に想いを寄せて来るストーカーにされたら気持ち悪いけど、両想いの相手なら無問題ということらしい。それどころか寧ろ嬉しいと言う。あっそ、心配して損した。あーでも、そう言えば持ち物が無くなるのってまだ続いてるの?話題を変えて最近愛美が気にしていたことの進捗を尋ねる。拓斗に負かされてトボトボやって来た衣織を捕まえ、相談に乗って欲しいと言う愛美と昼休憩を待ちランチへ。実は、と語る彼女によれば今もちょくちょく私物が消えているらしい。最初は単に家に置き忘れただけかと思っていたが、頻繁に続くと流石にのんびりしている愛美もおかしいと気付いた。それで、昨日は昼ごはん後に使う歯ブラシセットが無くなってて、と聞き双子は顔をしかめた。お前の旦那が犯人じゃね?とやけくそ発言する弟を黙らせると愛美も拓斗さんじゃないよときっぱり否定した。まぁ、やりそうではあるけれど一緒に暮らしてる相手の私物盗んでもねと容疑者から除外。けど、歯ブラシはちょっとキモイよね、と双子の権限で防犯カメラをチェック。清掃の人がよく映るのは仕方ないとして、あれこの人岩崎さん?ガタイがいいわりに気弱で礼儀正しい同僚が愛美の方に良く視線を向けている。まさかこの人が?しかも、愛美の元に拓斗と別れろと言うメールが何通も送られ始めた。拓斗とも相談し警戒を強めていた頃、愛美に襲い掛かろうとしている男が岩崎に取り押さえられ・・・。ストーカー気質の男ばかり引き寄せてしまう愛美とその初恋の人拓斗。実は拓斗こそ、どのストーカーより重くてヤバイ男だと中盤で判明するんですが、好きな人にされるなら問題なしと逆に喜ぶ愛美に親友の沙織も苦笑い。愛美が三十回近く見合いを断られてたのも拓斗が身内に頼んで手を回していたからでとんでもない執着ぶりが判ります。作中、拓斗は拓斗で元婚約者に付き纏われてたんですけど、ベタ惚れだった元婚約者も盗聴器の話を聞いてドン引き。百年の恋も冷め、離れて行くのでした。漸く邪魔者がいなくなったと思えば、愛美に忍び寄るストーカーの影が。結婚したくらいじゃ諦めないのがいたんですねぇ。岩崎さんは多分ミスリードだと思ってました。途中SPの話が出たんで、そっちかなと。で、案の定、岩崎さんは拓斗が個人的に依頼していたSPで愛美を狙うストーカーから彼女を警護していました。が、流石にロッカールームには入れないので(清掃員が犯人)後手に回りいくつか無くなっていた私物のことも拓斗に報告。脅迫メールまで来たのでそろそろ動くだろうと踏んでの事件でした。岩崎が一人取り押さえたはいいものの、実は二人いて愛美は逆上した犯人にナイフで切りかかられます。それを身を挺して庇ったのは拓斗。幸い命に別状はなく犯人も衣織の活躍もあって逮捕されたのでした。拓斗がなぜそこまで愛美が好きなのか、素手には一応理由があるんですけど事情を書くととんでもない長文になりそうなので割愛。まぁこの夫婦はお互いが大好きですからね。愛美だけでなく、主要人物それぞれの目線で話が進行するのも良かったです。個人的にお気に入りは美人で常識人の沙織ちゃん。騒動後、岩崎さんと幸せにやってるようで何より。衣織はまぁ頑張れとしか(^_^;)終始コメディ調でしたが、サスペンス風味もあって面白かったです。評価:★★★★★
2026.03.12
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2022年4月刊マーマレード文庫著者:あさぎ千代春さん芽衣子は13歳年上の旦那様・尊が大好き。だけど彼が「離婚したい」と友人に相談しているのを聞いてしまった!芽衣子は尊の心を惹きつけようと、大人な美女に変装して接近。思惑通り甘い一夜を過ごすも、尊は美女=芽衣子と気づいていないようで…?それって浮気ってこと!?と悩むが、尊は独占欲を露わにし、芽衣子への想定外の溺愛に突入して…! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 小野寺芽衣子=両親の薦めで憧れの人と結婚した大学4年生。 小野寺尊=堅物でインテリな芽衣子の夫。 牧村朔太郎=芽衣子の親友のジェンダーレス男子。 登坂平祐=尊の友人。熱心な両親の薦めで芽衣子が結婚したのは長らく憧れていた初恋の人。青天霹靂とはまさにこのことか。夫となった小野寺尊との出会いは20年近く前に遡る。彼の父親が芽衣子の父の会社で働いており、その縁で幼い頃から交流していた。13歳年上の尊は嫌な顔一つせず芽衣子の相手をしてくれて、そんな彼に好意を持つのはごく自然のこと。それから数年後、尊の父が病を患って早逝。まだ高校生だった彼が優秀ながらも経済的な理由で進学を断念せざるを得ない状況になったのを救ったのは芽衣子の父だった。会社で急遽作った奨学金制度で彼を支援し、希望大学に通えることになった彼は卒業後は外資系コンサルティング企業に入社。出世街道を驀進したが、30歳を前に尊の母が亡くなり、それを機に独立して海外コーディネーターとして起業した。現在はそちらの仕事は人に任せ、輸入雑貨を主に扱う会社を経営している。勿論こちらの方も大当たりしているそうだが、そんな頃だ、芽衣子との結婚話が持ち上がったのは。去年、芽衣子の父が入院。幸い命に係わる病ではなかったものの、もう無理は出来ないと思ったらしい。退職し母の実家がある高松に移り住むと宣言。黒字経営だったのでM&Aで会社も高く売れ、田舎で悠々と暮らすと二人はおおらかに笑っていたけれど、心配なのは娘のこと。せっかく入った大学を中退させるのは忍びない。暫く一人暮らしをさせるつもりだったが世の中何かと物騒。そこでふと思いついたのは尊くんに貰って貰ったらどうだろう、と。ダメもとで打診したら彼も是非との返答が来たので、芽衣子の意向を尋ねれば、当然断るはずもなく食い気味に即答。娘の気持ちなど両親にはすっかりバレていたのだった。とんとん拍子で話は進み、小野寺芽衣子になった彼女は大学にも近い低層レジデンスで尊と暮らし始めたのだが、どうしたわけか入籍して半年経っても彼は手すら握ってくれない。成人もしてるのに、私ってそんなに子供っぽい?如何にもモテそうな彼からしてみれば、13歳も下の女には食指が湧かないのかもしれないが、大学の同期で親友の朔太郎から、男はその気が無くても出来るもんだよの言葉に衝撃を受けた。じゃあ、どうして?もしや、恩人からの頼みで断れず嫌々結婚して触りたくもないとかだったり。ポジティブシンキングの芽衣子にしては珍しく、自分の想像で傷付いてどうすると思っていたら、そんなに気になるならズバリと本人に切り込めばと言う親友の言葉に一念発起。父が送ってくれた地元の酒を夕食時に出して酔わせて本音を聞き出そうと企んだ。が、尊さんてなんてお酒が強いの?芽衣子も酒好きで強い方だったが、彼はその比ではなく、先に酔っぱらってウザ絡みをしてしまい翌朝恥ずかしさに身もだえする羽目に。水でも飲もうと台所に向かう途中、尊の部屋から話声が。電話か、仕事の話かもしれないしと足早に通り過ぎようとしたら「もう限界だ、彼女が卒業したら離婚する」と尊が叫んでいて芽衣子は硬直。登坂と呼んでいたから電話の相手は尊の友人で部下の登坂平祐のことだろう。でもそんなことより、彼は私と別れたがっているという事実。やっぱり、お父さんからの頼みを断れなかったからなんだ。ショックで一人の胸には抱えていられず朔太郎に泣きついたものの、彼と離婚なんてしたくない。ひとしきり泣いた後、芽衣子がとある作戦の決行を打ち明け、その協力を親友に頼んだ。私を変身させてほしいと。某有名エステチェーン社長の末っ子の彼は意識高いジェンダーレス男子だ。化粧もお手の物でセンスも良い。美しくなって夫に迫り関係を持てば、堅物な彼のこと責任を取ると離婚するなんて言い出さないかもしれない。少々汚い手な気もするが背に腹は代えられぬ。こっちだって必死なんだから。数日後、朔太郎渾身の全身コーデとメイクでばっちり決めた芽衣子は、海外コーディネーターの仕事が入り、依頼主と同じホテルに詰めている夫の元へ。仕事を終え、バーでのんびりしているとSNSで確認を取ったばかり。尊の姿を見つけてさあ乗り込むぞと意気込んでいたら、若い男からのしつこいナンパに阻まれてしまった。難儀している彼女を救ったのは尊でそのカッコ良さに惚れ惚れしていると、君ひとり?と尋ねられて唖然。まさか、私だって気付いていない?思わず落胆したものの、いや、これこそチャンスかもしれない。彼女からの誘いに上手く乗っかり念願の初体験は完遂できたがなぜか虚しい。寝ている彼を残し慌てて自宅に帰った芽衣子は大泣き。律儀に結果報告した彼女に朔太郎はため息を吐き、めーちゃんだって気付かず抱いたってことはこれって浮気なんじゃ。親友の言葉に単純な芽衣子は蒼白。ど、どうしよう。一方、尊は一人残されてガッカリしながらも、昨夜の芽衣子の可愛さに想いを馳せていた。自分が年の差に負い目があって手を出せずにいたから彼女なりに考えて来てくれたのだろう。我ながら情けない。でも、せっかくだから一緒に目覚めたかった。多分照れているんだろう、意気揚々と家に帰れば昨夜のことなどなかったかのように振舞われ困惑。つい翌日登坂にどういうことだと思う?と相談してしまった。すると暫し考え込んでいた登坂から、きっとこれは奥さんが考えたゲームなんだよ、だから気付かぬふりをしてやれば?とアドバイスされ、芽衣子に対してのみガチガチな思考になる尊は素直に聞き入れてしまった。まさかこれがややこしい誤解を生じるとは夢にも思わず・・・。両片想いのすれ違いラブコメディです。ポジティブながらどこかぼんやりさんなヒロイン・芽衣子は夫となった尊のことが大好き。だから、あんなことやこんなこともしたい。なのに、歳の差婚ということに負い目を感じていた尊は、自分の想いを押し殺してでも彼女を自由にするべき?と思い悩んでいました。だから、手は出さないと決意していたものの、見事に変身した彼女に誘われその決意もどこかへ飛んでしまい、やはり手放すことはできないと芽衣子を溺愛し始めます。そんな彼を他所に、朔太郎の言葉に衝撃を受けた芽衣子は、相手が自分なのにも関わらず夫の浮気にショックを受けて一人グルグル。しかも、密かに芽衣子に想いを寄せていた朔太郎の告白で頭はパンク寸前。嫉妬した尊の本心が判らず、彼女は実家に帰ってしまうのでした。しかし、突然帰って来た娘を心配しつつ、尊の性格も熟知していた両親は、少々拗れているだけと判っていました。翌日、迎えに来た尊から実はすぐにあの夜も芽衣子だと気付いていたと白状され、浮気どころか、気持ちを自覚してからは君一筋だと大告白。単純故に芽衣子は感激し、人前でもイチャイチャ。朔太郎は失恋確定してしまいましたが、両想いだと判った時点で潔く身を引いた姿勢は良し。騒動の原因となった発言をした登坂は二人に平謝りするのでした。まぁ、確かにあの時尊は芽衣子に気づいてたと本人に言うつもりだったのに、ゲームだから知らんふりしてろと余計なこと言わなきゃ(^_^;)今ではすっかりバカップルと化した芽衣子と尊の甘いやり取りが描かれて物語は幕。終始コメディ調だったせいか、最後までニヤニヤが止まらないお話でした。お薦めです。評価:★★★★★
2025.02.04
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2025年4月刊こはく文庫著者:ドゴイエちまきさんアリア=メリーゼルは男爵家の一人娘。貴族でも自由恋愛が主流となってきたなかで、控えめで自分の容姿にも自信がないアリアは、華やかな女性たちを眺めては心を痛め、社交の場に出ても壁の花として一人でいることが多かった。家族はそんなアリアを温かく見守っていたが、いつまでも家族に甘えているわけにはいかないとアリアは自分を奮い立たせ、今日もまた夜会にやってきたのだった。そこへ、白い騎士服を着こなした美しい青年が声をかけてくる。多くの優秀な騎士を輩出するウェズリー侯爵家の嫡男、イグニス=ウェズリー。国中の令嬢が憧れるイグニスは、声をかけられ呆然とするアリアに「可憐だ、着ているドレスも似合っている」と告げ、ゆっくり話がしたいと屋敷に招待する。まさかの出来事に、動揺しつつも約束の当日を迎えたアリア。ところが、皆の憧れのイグニスには、とある秘密があって……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用、登場人物 アリア=男爵家の一人娘。地味で控えめな性格。 イグニス=侯爵家の嫡男。アリアを気に入り屋敷に招く。 ルーチェ=イグニスの妹。 シェーラ=イグニスの元婚約者。親友のエルザと共に参加した舞踏会で壁の花になっていたアリアは、令嬢達から絶大な人気を誇る騎士・イグニスに声を掛けられ一人パニックになっていた。今夜はエルザの恋が成就した記念すべき日。私は付き添いみたいなものだから敢えて壁際に控えていたのに。にしても本当に素敵な方ね、侯爵家の嫡男で騎士団の副団長。一番の優良物件と言われているのも判る気がする。しどろもどろになりながらもなんとか受け答えしていたアリアは、ふとイグニスの胸元に目を止め、さり気なく施された意匠を褒めた。男性はあまりレースの類は忌避されるのに、こういう使い方もあるなんてすばらしいです。素直に褒めると彼は頬を赤らめていたので驚いた。失礼な事言っちゃったかしら?オロオロしていると徐に真顔になったイグニスから屋敷に招待したいと告げられた。後日招待状を送りますと言っていたけれどきっと社交辞令よね。あれから二週間。ほらやっぱり招待状なんて来なかった。暫くドキドキして期待していた自分がバカみたいだ。こんな地味な私にあの人が興味を持つはずがない。すっかり諦めモードになっていたアリアの元にウェズリー侯爵家から招待状が届いたのは翌日のことだった。引っ込み思案なアリアのことを気に掛けていた両親はまさかの侯爵家からの招待に驚いたものの、うちの娘は世界一可愛いし美しいからイグニス様の目に留まってもおかしくないと大はしゃぎ。いや、私が美人とか言ってるのお父様たちとうちの使用人たちだけよ。恥ずかしくなりながら迎えに来たイグニスとアリアはウェズリー邸へ。侯爵家では夫人とイグニスの妹・ルーチェから熱烈歓迎されアリアは困惑。息子を末永く宜しくとか一体・・・。夫人の言葉に慌てふためいた彼から自室に案内されると、招待した理由を教えられた。先ず、親友の恋の成就を自分のことのように喜んでいたのを見てこの人ならと思ったと言う。それに舞踏会での衣装の拘りポイントに気付いてくれたのが嬉しかったそうだ。そして、イグニスは決意したように俺はレースや刺繍、花や化粧に興味があるんだと告白。世の中には色々な趣味を持つ人がいる。時には世間にあまり認められないような趣向の人も。だが、両親もそうだがアリアも一々偏見は持っていない。迷惑さえかけなければ好きにすればよいと常々思っている。きっとお化粧されたらもっとお美しくなられますね。そう言って微笑むと化粧は自分でなくて他人にしてやるのが好きなんだ!と力説。詳しく聞くにルーチェのドレスを選び、化粧を施したのもイグニスで、そういうのが好きでハマっているのだと。君みたいにすべて許容してくれた女性は家族以外では初めてだ。感動に打ち震えていたイグニスは、どうか俺に君のコーディネイトと化粧を任せてくれないだろうか!と頼まれ了承したアリアは数時間後、別人のように変身した自分の姿に驚いていた。ドレスと髪型、化粧だけでこんなに変わるもの?夫人の若い頃のドレスだそうだが、流石は一級品全く古さを感じない。あなたの方が似合うからと譲ってくれるという。それに加え、ノーチェからも褒めちぎられまんざらでもない気分になって来た。イグニスとは以来友人関係となり、あれから度々お茶している。数日後、いつものように二人でお茶得お飲んでいると彼から夜会に誘われた。そしてドレスを贈らせてほしいと。お古とはいえ、いかにも高価な夫人のドレスを戴いただけでも申し訳ないのに、彼のお眼鏡に叶うようなドレスなんて一体いくらするのやら。流石に遠慮するとこれも自分の趣味だから付き合って欲しいと頼まれ、渋々頷いた。でも貰いっぱなしは良くないから私からも何か贈らせてほしいということで話はついたのだった。数日後、彼と夜会に参加したアリアはかつてないほどモテてた。戸惑いからつい間違えて度数の高いアルコールを飲んでしまった彼女は介抱するイグニスにあなたに心惹かれていると打ち明けた。するとイグニスの方も同じ気持ちだと判り、二人は交際をスタート。昨今は政略結婚は廃れがち傾向で貴族でも恋愛結婚が主であった。おかげでトントン拍子に話は進み両家合意の元婚約者となった二人は幸せの絶頂にいた。そんな最中、アリアはイグニスの元婚約者だと言うシェーラに会った。イグニスはどの面下げてと終始機嫌が悪そうで、詳しく聞くにお互いの祖父同士が親友だったのが縁で婚約したのは良いが彼女は宰相の息子のレインと浮気をしていたそう。しかもレインはルーチェの婚約者だった。そればかりかイグニスに隠れてノーチェに嫌がらせを繰り返し、怪我を負わせたことからブチ切れたイグニスは婚約解消を宣言。非はシェーラにあるので彼女の実家も聞き入れてくれたそう。だが、シェーラの方は未練たらたらに見える。キツく睨まれたこともあり嫌な予感がした。それから暫くして、地方都市で災害が起こり騎士団が出動することが決まった。アリアは彼の無事を願いアミュレットを贈ろうとエルザと町に来ていた。だが、予想外の人混みにエルザと逸れた彼女は大柄の男に連れ去られてしまい・・・。無自覚な地味美人令嬢が令嬢人気ナンバー1の騎士に見初められたお話です。婚約者になり結婚も秒読みになっていた彼女を羨み、シェーラの手の者によって攫われてしまいます。この元婚約者、別にイグニスのことも顔と家柄だけを気に入っていたらしく、その言葉にアリアもブチキレ。言い合いになってるうちにエルザから連絡が行って助けに来てくれたイグニスが到着。シェーラは捕縛され厳しく罰せられることに。騒動後、彼はアリアにプロポーズして終わっています。お話自体は非常にシンプルで王道展開でした。なので、さらっと読みたい方におススメ。評価:★★★★☆
2025.05.08
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2026年6月刊蜜猫文庫著者:花菱ななみ(敬称略)辺境伯長女で、血の繋がった両親や妹に冷遇されていたロクサンヌ。公爵エリアンに嫁いだ初夜に「君を愛することはない」と言われて失望するも妻の義務を果たせば好きに過ごしていいと言われ気を取り直す。御者の技術を覚え馬車を乗り回し楽しむ彼女にいつしかエリアンも興味を引かれるようになる。「君を愛さずにいることはできなかった」心と体を重ね幸せを覚えるが、ロクサンヌが冷遇されたのが呪いのせいだとわかり…!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 ロクサンヌ=辺境伯家の長女だが、家族から冷遇されていた。 エリアン=国王の最側近の公爵家当主。ロクサンヌを妻に迎える。レモウィケス辺境伯の長女・ロクサンヌは、理由も判らないまま家族から疎まれ冷遇されていた。使用人のようにこき使われながらこの理不尽な扱いについて考える。もしかして私は実の子ではないのだろうか。いっそ、本当にそうだったなら諦めもつくと言うのに、彼女は両親どころか兄と妹にもしっかり似ていた。ならどうして私はあの人達から愛されないんだろう。こんなことバカげていると兄のアレクサンドルはロクサンヌを庇ってくれたが、そんな優しい兄は現在宮廷に出仕しているため屋敷にいない。跡取りの目が無い現在、結局ロクサンヌの辛い日々は続いていた。そんなある日のこと。オーベルティーブ公爵家当主・エリアンが屋敷を訪れた。シュゼットによれば、彼はこの辺境伯家との姻戚関係を望んでいるらしい。両親は大喜びでシュゼットの飾り立てに余念がない。辺境伯領の金山は近年採掘量が乏しい。裕福なオーベルティーブ公爵家からの援助を当てにしているのだろう。にしても随分と見栄を張ったものだ。まぁでも、もう結婚自体は決まったようなものだし、浮かれるのも仕方ないのかもしれない。だが、まさかエリアンがロクサンヌを妻にしたいと言い出すとは。応接間の空気が凍り付き、この子は当てつけがましくわざとこんなみすぼらしい恰好をしている聊か困った娘でして!苦しい言い訳をしている両親と、姉より私の方が相応しいですわ、とめげずに自分を売り込むシュゼット。やかましい彼らの言い分を涼しい顔で受け流したエリアンは茫然としているロクサンヌの手を取ると片膝をついてプロポーズ。私は彼女がいいのです。そう言って父に向って笑みを見せるとくれぐれも妹さんと交換なんて真似はなされぬように。有無を言わせぬ態度に背に腹は代えられぬと父は渋々承諾。文句が止まらぬ母と妹にもう決まったことだと言い含めた。その日からロクサンヌには家庭教師が付けられ、食事も家族と同じものが提供されるように。そして数か月後、王都の教会で二人は式を挙げたのだった。あの家から出られたことも嬉しいけれど、エリアンさまの妻になれたことが何より嬉しい。一目見て彼に心奪われた彼女は今最高に幸せだ。この人に精一杯尽くそう、私に出来ることならなんでもして彼を支えるのだ。そう決意したロクサンヌだったが、初夜の際、彼女は非情な宣告を受けた。「君を愛することはない。とにかくこちらが望むのは男の子二人を産んでくれることのみ」冷たい表情で告げられて、まるで冷水を浴びせられた気分だ。政略結婚なのだから、望むのは家の結びつきと跡継ぎを設けることだけ。彼の言わんとすることは実のところ尤もな意見である。なのにバカな夢を見てしまった。白い結婚を望まれるよりマシだと思わなければ。あんなことを言いながらもエリアンはロクサンヌを尊重してくれていた。不貞行為でなければ好きなことをしていいとも言われたので、今まで縁の無かった貴族らしい趣味に挑戦してみることにした。その中で唯一貴族らしからぬ趣味が馭者の真似事だった。家令も驚いていたが、馬も可愛いし馬車の扱いは難しいながらも楽しく、上手くなるとなんとエリアンがロクサンヌが操る馬車に乗ってくれた。意外に楽しいと思ってくれていたのか、以降も彼のリクエストを元にあちこち出掛けて、先日は川の上流で釣りを楽しんだ。その上、ロクサンヌは社交も手を抜かず、お茶会で仕入れた情報をエリアンに報告。使えるネタの場合は良く教えてくれたと褒められ彼女も上機嫌。今日は彼女の希望でオペラの観劇にやって来た。娯楽に全く興味を示さなかったエリアンがオペラに!?その日、たまたま観に来ていた国王も心底驚き、これも奥方のおかげだなとロクサンヌをべた褒め。国王は彼女が馭者仕事に嵌っていると知るや、自分も乗りたいと言い出し、エリアンの胸は何故かざわついていた。女性の扱いが上手い国王は妻帯者だが、女癖が悪い。彼女に興味を持ち、手を出されたらと思うと気が気でない。結局、王は単に朴念仁なエリアンに発破をかけるだけのつもりだっただけらしく、それが判って彼は胸を撫で下ろした。そして、あんなことロクサンヌに言わなければ良かった・・・。と激しく公開初夜の時に心無い言葉を告げた自分を殴ってやりたい。当時の自分は厳しい父の教えに従い、誰も信じず生きて来た。結婚も国防を担う辺境伯家と繋がりを持ちたかっただけで誰でも良かった。ただ化粧と香水臭い次女は性に合わずで、何故召使扱いされていたのか不明だが、素朴なロクサンヌならとその手を取った。一度、二人で話そう。そう決意した矢先のこと、ロクサンヌが体調不良で寝込んだ。まさか懐妊ではと沸き立つ屋敷の者たちの期待に反して医師から告げられたのはただの胃腸炎。エリアンも期待していたのではと思うとロクサンヌもガッカリ。心配かけたこと含めてきちんと報告しよう。書斎の扉をノックしかけた彼女は漏れ聞こえて来る話し声とその内容が気になりいけないと思いつつ耳をそばだてた。家令が報告していたのはレモウィケス家の実情とロクサンヌがなぜあんな扱いを受けていたのか、について。確かにずっと謎だった。一体どんな理由が。家令がレモウィケス家に長く務めたという元侍従から直に聞いたと言う話は衝撃的なものだった。百年以上前、辺境伯家の領地近くの山に魔女の集落があり、そこで金が取れると知るや欲にくらんだ当時の領主が魔女たちを襲撃、山を奪ったのだそう。多くの犠牲を出て魔女は怒り狂い、その時指揮をしていた領主の娘・エレオノーラに呪いをかけた。それが長女の呪い。レモウィケス家の長女に生まれた者は、子を成せぬというもので、実際に長女は不妊ないし出産にこぎつけないものばかり。政略結婚が主流の貴族社会でこれは由々しき事態。子を生めぬ娘は嫁に出せない厄介者になり、いつしか長女を「いない者」扱いするようになったのだと。ということはつまり、ロクサンヌは子供を産めないということか?エリアンの問いに家令は長女の呪いの通りならばと肯定。エリアンは男の子を二人産んで欲しいと強く希望していた。流行り病や事故死に備えてなのだろうが、それ以前に自分は不妊症と判ってロクサンヌは愕然。彼が家令に明日レモウィケス家当主に会うと言っているのに冷や汗が流れた。おそらく契約違反だと抗議しに行くのだろう。それも当然だ。妹はともかく、両親は呪いのことを知っていたはず。だから私を冷遇してたんだもの。なのに、シュゼットをお気に召さなかった彼がロクサンヌを希望した際、不妊という瑕疵があることを言わなかったのも問題だ。もしかしなくても離縁されるのよね、私。愕然としながらも心にはフツフツと怒りが湧いた。欲深い先祖のせいで呪いをかけられ、その弊害で私はいない者扱いを受けていた。そうよ、一言あの人達に恨み言言ってやるくらい!それと、あの人に迷惑がかかるから、私は死ぬの。とは言っても本当に死ぬわけじゃない。自殺に見せかけてどこか他の地でひっそり生活すれば、エリアンも再婚しやすくなるはず。決意した彼女は遺書に見せかけた手紙を置いて屋敷から姿を消して・・・。ザマァ系です、が意外な理由でヒロインが虐げられていたのが判ってちょっとびっくり。先祖がクズだったおかげで愛する人の側にいられないのが確定してしまったロクサンヌはついにブチギレ。そもそも、そんな重要なこと、彼に前もって言わないのは我慢ならないと実家に乗り込みますが、久しぶりの屋敷は何故か半壊していて唖然。玄関前に居た女性に気付いて一体何が?と尋ねれば、女性は兄と瓜二つ???あなたがロクサンヌ?問われて頷くと、彼女は父の庶子であると明かします。だから、この家の本当の長女は私なの、アレクサンドルの一つ上。卑怯者の当主は長女の呪いを回避するため、下町の女に手を出して娘を産ませ自分はちゃっかり貴族の女と結婚したってわけ。なのに奥さんが怖いから他所にもう長女がいるのを言い出せず、結局あんたをいない者扱いしてたのよ。呪いが解けたのを機に復讐しに来たと言うい女性は屋敷を壊しながら高笑い。クズ過ぎる父のやり口を知ってロクサンヌは異母姉・シモンに同調。この家潰すなら協力すると申し出ます。魔女に弟子入りして自力で解呪したという異母姉は頼もしく、そういえば、私は次女だから呪いにはかかってないのよね?とホッと胸を撫で下ろすのでした。とはいえ、涙を飲んで公爵家を出て来たと言うのに段々アホらしくなり、そのうち父に対しての激しい怒りが。その後、シモンの魔法で両親はいいように操られ、爵位と財産はシモンに譲ると言う証書にサインさせることに成功。ロクサンヌは例え不妊でも妻は君がいいとエリアンに説得されて無事公爵家に戻るのでした。エリアンもロクサンヌが不妊だと伝えなかった当主夫妻に怒ってたんですが、それ以前に呪いを理由に彼女を虐げたことに対しての怒りの方が強かったと言う。もうすっかり奥さんにメロメロになっていた彼は、子など産まれずとも養子を取ればいいときっぱり。あの時の最低の言葉はどこへやら、今やすっかり愛妻家になった彼が妻への想いを噛み締めている所で物語は幕。理不尽な扱いの理由があれで色々吹っ切れたヒロインの底力が凄かったお話でした。あと、終盤出て来た腹違いのお姉ちゃんとも仲良くやってけそうで何より。評価:★★★★★
2026.07.27
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背徳の婚姻【電子書籍】[ 浅見茉莉 ]楽天で購入2015年11月刊ヴァニラ文庫著者:浅見茉莉さん「おまえは俺のものだ、一生……。信じていた関係が崩れ堕ちるーー独占愛の誘惑「お前を妻にする」家族と自分は血が繋がっていないと告げられた日、ヴィヴィアンは兄と信じていたアンドリューに求婚された。「こうしておまえに触れる日を待っていた」と囁くアンドリューから与えられる、甘く激しい愛撫に夜毎蕩かされ、ヴィヴィアンは情愛と罪悪感に苛まれる。それでも、アンドリューの搦め捕るような執愛に抗うことはできなくて……。」↑楽天ブックス商品詳細ページよりあらすじ文引用。楽天の商品リンクでは発売日のせいか中古品しかなかったので電子版になっていますが、私が読んだのは文庫版です。先に電子でコミカライズ版を読んでまして、原作小説をかなり前に購入していたものの積読になってたのを思い出し、(発売日からして何年積んでた)昨夜読み終わったこともあり記憶が新しいうちに感想上げときます。が、う~~~ん色々とツッコミ所があり過ぎて今回はネタバレの方の長文は書けそうもありません(^_^;)てか、いつも長すぎですよね。でも筆が乗ってる=面白さのバロメータだと思っていただければ。読みやすさを念頭に書き方や文字の明暗、ブログデザインについても現在模索中ではあるのでご容赦を。けれどもこの調子でブログ書いていったら早々にネタ切れしてサボりがちになりそうなので、こんなタイトルも読んだよ、的な紹介もしてこうかなと。話題が逸れましたが、ここから簡単なネタバレと感想をば。社交界デビューをした日、自分が侯爵家の実の娘ではないと当主である父から告げられたヒロイン。しかも美形で頭も良い優秀な9歳上の兄が彼女を妻に望んでいるという。混乱するヒロインを尻目に両親は兄の願いに反対どころか歓迎ムード。寧ろ息子よよく言った感がありありと。まあ、政略結婚が主流の貴族社会で気の合わない令嬢を嫁に迎え入れるくらいなら、自分たちが育てた自慢の娘を息子の嫁にしてずっと傍に置いておきたいよね。でも今更兄と結婚など考えられないとヒロイン・ヴィヴィアンは思い悩みますが、自分付きの侍女を始め屋敷の使用人たちは、これが至極当然の流れとばかりに二人の仲を祝福しており、意を決して相談した親友にも彼女の悩みは理解されません。そこから何だかんだとあり、割と最初の方で強引な兄・アンドリューとヴィヴィアンは深い仲になりますが、そんな関係が続いたある日、アンドリューが彼を結婚相手にと希望してる独身令嬢達の催す集まりにばかり顔を出していることに気付いたことで新たな不安が募り、漸く兄としてではなく異性として愛していることを自覚するヴィヴィアン。折しも、最近ロンドンでは物騒なことに貴族令嬢失踪事件が頻発しており・・・。タイトルに背徳とはありますが、前述のとおり血は繋がってないので言う程背徳感はありません。狡猾で家族とヒロイン以外には腹黒なヒーローが幼い時の約束を有言実行するお話です。既に外堀は埋まりまくってるので、周りも二人が男女の仲になってからは仲いいわねぇという感じで生暖かく見守ってるので、アンドリューに浮気疑惑を持つヴィヴィアンの悩みも、彼を信じてあげなさいとしか言われない。とは言え、傍から見てもアンドリューには彼女しか目に入ってないのはもう丸わかりでしたからね。知らぬは本人ばかりなりで、せっかく彼が気を付けていたのに不安から屋敷を飛び出したヴィヴィアンが件の事件に巻き込まれるんですが、もうね、ここまでがとにかく長い。ヴィヴィアンが自覚するまでもそこそこ長かったのに、自覚してからは本当に自分と結婚してくれるのかとぐーるぐる。まあ、彼女が一応事件に巻き込まれる前フリ自体はちゃんとそこかしこに盛り込まれていたので唐突感が無かったのは良かったかな。恋のライバルとしては王家の親戚筋である公爵家の令嬢がいたものの、名前が出た程度。権力をかさに令嬢の父親である公爵が強引に婚約を進めようとしますが、当然ヴィヴィアン命のアンドリューの鉄の意志は変わらずで、それどころか例の失踪事件を調べるうちに偶然入手した公爵家の秘密をネタに撤回させるという鬼畜ぶりを披露。社交界では血が繋がっていないとはいえ一緒に暮らしてた兄妹で結婚だなんて、と陰口もありましたが、そんな噂も事故死した伯爵夫妻の娘を引き取った親友の侯爵一家の愛情という、ヴィヴィアンの身の上話が美談として語られたことで一転、祝福ムードが広がる中、二人は大々的な婚約発表パーティーを開きました、で幕。話の構成自体がちょっとアレでしたけど、この時代の小物やドレスとかもよく調べて書かれてますよね。が、よっぽどのデッドエンド入稿だったりしたのか誤字やキャラ名の間違いなどが目立ってしまい、重箱の隅と突っ込まれそうですけども、読んでてかなり気になってしまって。侍女カロリーヌの名前をヒロインの親友のシャーロットと二回も間違えてるし、おそらく変換間違いだろうなぁと思われる漢字の誤字もいくつか。もしかして校正さん入ってないのかしら。とまあ気になる点もあったものの、ヒーロー・アンドリューはキャラ的にそこそこスパダリ要素あるのでここは好印象でありました。↑個人的に結構重要ポイントページ数が限られてるせいか、挿絵担当の方が描いてるコミカライズ版の方が余計な要素をそぎ落としてて面白いのが何とも。やっぱり小説で作中やたらと導入されていたヒロインの生活描写(風呂やら寝起きやら食事やら)がテンポ悪くしてたのかなぁ。申し訳ないけど読んでて目が滑って仕方なく(^_^;)ヒーローとのエッチシーンもそれなりに多いので、本筋も内容があって無いように見えてしまうのが何とも残念です。失踪事件に関しては首謀者がヤク中&アル中の割には頭も手間も使ってるなとは思えたんですが・・・・。評価:★★★作家さんのファンの方には申し訳ないですが、私には合わなかったです。ヒーローが好みのタイプだったのが幸い。挿絵は好き嫌い分かれるかもだけど、読まれるならコミカライズ版の方をお勧めします。
2022.01.12
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2023年1月刊ビーズログ文庫著者:久川航瑠さん血濡れの悪鬼、首狩り皇帝ーそんな異名を持つ皇帝ユディングのもとに嫁ぐことになった十五歳の幼い姫テネアリア。しかし彼女は恐れるどころか、心の底から凶悪顔の大男を愛していた。“初めて会った”にもかかわらず。移動時には抱っこをせがみ、食事は手ずから食べさせ、笑わない男も次第に幼妻に絆されていく。けれど彼女には、秘密があって!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 テネアリア=東の島国の姫。心底ユディングに惚れている。 ユディング=テネアリアの夫。大国の皇帝で悪鬼と恐れられている。 ツゥイ=テネアリア付きの侍女。 サイネイト=皇帝補佐官。ユディングとは幼馴染。 プルトコワ=公爵。前皇帝の異母弟でユディングの叔父。 セネット=テネアリアの護衛騎士首狩り皇帝、血濡れの悪鬼など物騒な異名を持つ皇帝・ユディングに持ち上がった婚姻話。お相手は東の島国の姫君だと言う。ここ数年戦続きではあったが漸く平穏となり、サイネイトが持ち込んで来たこの話にユディングはいかにも不服そうだった。姫がまだ年若く、嫁いできたとしても怯えて逃げ出すに決まっている。皇宮で働く使用人たちまでユディングの一挙手一投足にびくついているくらいなのに。だが、サイネイトが言うにはこの姫君、高い塔に閉じ込められて育った曰く付きなのだそうだ。そんな姫君を皇帝ユディングが婚姻と言いう形で救い出したとしたら?悪名ばかりの幼馴染に英雄という異名が加わるし、世間知らずの小国の姫君ならば扱いやすかろう。色々納得はいかないが、結局のところこの結婚は決まったのだった。そして遥々やって来たテネアリアは侍女のツゥイのみを従えて帝国にやって来た。まだ15歳の彼女は体も小さく、ユディングの胸あたりまでの身長しかない。何だか話難いので思わず腕に乗せて欲しいと頼んだ時は流石に驚かれた。おまけに挙式の間中もずっと抱っこ状態だったので参列者たちも目を丸くしている。物騒な異名を持つ割に彼は乱暴者なわけではない。向かってくる敵を切り伏せただけ。それを全て承知しているとばかりに初対面から好意MAXのテネアリアにユディングは調子を狂わされていた。飲食に興味の無い彼の横に座り甲斐甲斐しく食べさせる様は長い付き合いであるサイネイトさえも驚愕させた。あの強面顔に怯まないのも驚いたが、会って間もない夫にここまで惚れこむものなのか。しかし、何かと敵の多いユディングは常に危険に狙われている。昨夜も刺客が入り込み、テネアリはかなり動揺していた。その様子と彼女がふと漏らした言葉が引っかかり、サイネイトはテネアリアがではないかと疑い、ユディングにも進言。だが、彼はテネアリアを信じていた。それから暫く経ち、テネアリアの元にプルトコワが訪れ、自分は彼女の母の「信奉者」だと告げた。そして数日後、ユディング共々プルトコワの夜会に参加したテネアリアは、夫を庇い刺客に刺され・・・。歳の差婚カップルのお話ですが、妻になったこのお姫様、どこかおかしい。あらすじだけだと実は何百年も生きてるとか?みたいなことかと思ってたんですけど、ちゃんと15歳でしたw実はテネアリアは神の愛し子なる存在で、本来の姿は精神体で精霊とも心を通わせることが出来ました。ので、肉体の方は塔にいつつも精神体であちこち好きに飛び回り、ある戦場でユディングに遭遇。酷い傷を負い死にそうなのに彼と言葉を交わすうち恋をしてしまった。その後生き延びた彼にストーカーのように付き纏い(人には見えないので)、戦となればユディングの為に敵に雷を落とすなど援護射撃。やがて戦も終わり、サイネイトがユディングの嫁探しに乗り出したのを聞きつけ、さも皇宮の侍女たちの噂話のようにこういう姫がいるらしいと吹き込んでいました。そもそも高い塔にいたのも、試練のため。彼女の母も塔から英雄に救い出されてその人と結婚しテネアリアが産まれた。でも、この体質は父に受け入れられず母は化け物呼ばわりされた挙句捨てられてしまった。こんな目に遭っても自分達は塔から英雄に救い出されなければならない。これが「試練」であり、本来ならテネアリアはそうして嫁がなければならなかった。過程を飛ばしているため、母はこの結婚を許さず「信奉者」であるプルトコワにあることを指示するのですが、顛末を書き出してもアレなので割愛します。簡単に言うと人を超越した存在であるヒロインがヒーローに惚れこみまんまと妻の座に収まるも、ちゃんと工程を踏まないと許さんよと母から試練のクリアを命じられると言うお話です。テネアリアは精神体で自由に飛び回れる他、天候を操ることもできるようで結構驚異的な存在。彼女の母共々人々から崇められるものでした。プルトコワの言う信奉者は文字通り、彼女達を神のように敬っている人達。そりゃ神(みたいな)に命じられれば希望通りに動くよね。試練と言うだけあってかなり危険な目に合ってたけど、このお母さん手厳しい。続刊があるとしたらこのお母さんが登場とかかな。評価:★★★★☆
2024.03.05
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2021年1月刊ベリーズ文庫著者:桃城猫緒さん5歳の誕生日に突然前世の記憶を取り戻したサマラ。かつてプレイしていた乙女ゲームの悪役令嬢に転生していたと気づく。このまま16歳になれば断罪エンド確定。破滅回避のためには世界最強の偉大な魔法使いである父・ディーを味方につけて守ってもらうしかない! クールで人嫌いなパパの溺愛をゲットするため、サマラは今日もいい子で頑張ります! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 サマラ=魔公爵・ディーの一人娘でゲームの悪役令嬢。 乙女ゲー大好きな日本人女性だった前世の記憶を持つ。 ディー=大陸一の魔法使いで魔公爵。サマラの父親。 レヴ=サマラが出会った正体不明の魔法使い。 リリザ=ゲームのヒロインで膨大な魔力を持つ「奇跡の子」乙女ゲーム大好きな佐藤由香がハマりにハマった「魔法の国の恋人」当然ながら全ルートコンプを達成済みでファンブック2冊も読み込んだ。だが、ネットの噂で隠しキャラルートがあるらしいと聞き及び試行錯誤したもののイベント発生条件が全く分からない。ただの噂ではと半信半疑になりながらも諦めきれずにいたある日のこと、由香は居眠り運転のトラックに轢かれ25年の人生は幕を閉じたのだった。ふと気づくと彼女はニンジン色の髪色をした幼女の姿になっていた。そして突然流れ込んで来る5年の人生の記憶。幼女の名前はサマラ。由香の記憶も相俟って彼女は悲鳴を上げた。サマラとは「魔法の国の恋人」の悪役令嬢ではないか。攻略対象の一人・魔公爵ディーの一人娘でとにかく性格が悪く、どのルートでもラスト近くに現れる魔人の暴走に巻き込まれて死んでしまう。前世で早死にしたのに生まれ変わっても16歳までしか生きられないなんて酷過ぎる!しかし、隠しルート達成はいかずともサマラである自分はこの世界を熟知している。ストーリーを改変する事になるけれど、二度目の人生順風満帆に長生きしたっていいではないか。取り敢えず、今までの我儘放題な態度は改め良い子になろう。あと、父であるディーを自分にメロメロにさせればこれ以上頼もしい味方はいない。丁度、ディーはサマラの誕生日である今日、屋敷に帰って来るから即作戦実行だ。 媚びて媚びて媚び捲くってやる。そう意気込んではみたけれど、ディーは手強かった。そもそも、サマラは彼の実子ではない。離婚したディーの妻・ナーニアが浮気して出来た子だった。しかも妻は娘を残して男と駆け落ち。ディーがサマラを遠ざけていた気持ちも判ると言うもの。そして彼女が我儘に育った原因も寂しさからであった。この辺りの事情はディーのルートやちょっとした裏話もファンブックに載っていたので承知している。だが、こっちは命がかかっている。いくらウザがられようがめげずにアプローチをし続けた。その際、一緒にやって来たディーの友人で同じく攻略キャラ・カレオが色々気を回し、仲を取り持ってくれたおかげで1ヶ月も経つと彼の態度は少しずつ軟化。最初はディーに気に入られるために始めた魔法の勉強も今後何かの役に立つかと打ち込むようになったのも要因になったようだ。才能が無いのは重々承知しているが、あるトラブルに巻き込まれた時に妖精との契約にも成功。ディーも勉強を見てくれるようになったので魔法を使えるようにもなっていた。時は流れ、サマラは16歳になり、今までの努力が実りディーが所長を務める魔法研究所に通うことになった。そこには昔、彼女を助けてくれた正体不明の魔法使い・レヴもいて、良い友人関係も築けている。しかし、問題はここからゲームのストーリーが始まると言うこと。魔力を持つのは圧倒的に貴族に多いのに、平民ながら膨大な魔力を持ち神殿に引き取られた「奇跡の子」リリザがやって来る。そんな彼女が攻略キャラにモテモテになり、面白くないサマラは嫌がらせを繰り返した挙句、魔人の暴走という貰い事故で破滅する。幸いにも、ディーとカレオは味方に出来たが用心に越したことは無い。なるべく関わらないようにすれば、リリザにも同僚の一人としかとられないだろう。そう考えていたのだが、ここにきて抑止力がかかるのか、サマラは何かとリリザが引き起こすトラブルに巻き込まれ、何度危険な目に遭った事か。その都度間一髪でレヴに助けられていた。しかし、リリザが原因で研究所とそこにいる魔法使いたちの使い魔が多大な被害を被り、サマラの堪忍袋の緒が切れた。思わず責任を問うとリリザの味方である王太子たちに睨まれ万事休す。結局、破滅ルートなんだろうか。諦めかけたその時、彼女を助かたのはディーだった。そして、ドジなだけでは済まされない数々のやらかしを理由にリリザに退所勧告を出した。トラブルメーカーがいなくなったことで研究所に平和が訪れたのも束の間、レヴが魔力暴走を起こし・・・。悪役令嬢+ゲームの世界に転生というジャンルが大流行してた頃のお話です。そのせいか、展開もかなり王道。ただ、逆ハーではありません。努力を重ね、攻略キャラ二人を味方に付けたものの抑止力とヒロイン補正でリリザにはサマラは叶わない。先ず王太子が味方なのは権力的に強いよなぁ。そんな不利な状況下、サマラが親しくなったのはゲームでは出て来なかったレヴ。ディーには及ばないが魔法の才があり、幾度となく彼女の助けになってくれていましたが、ラスト間近で彼の魔力が暴走。魔人に変化してしまいます。そう、どのルートでもサマラを巻き込み殺してしまう正体不明の災厄。そこでサマラが思い付いたのは彼こそが隠しキャラだったのでは、ということ。彼を救うには「奇跡の子」の力が必要でリリザに頼むも、この子がもうとんでもない性悪で口だけ女。いざとなったら何の役にも立たない。絶望の中、サマラはレヴへの想いを自覚したことにより奇跡が起きて、という流れ。レヴの正体が実は妻に逃げられ落ち込んでいたディーが特秘組織に唆されて自分の血で作ったゴーレムだったりします。お父さんは飽く迄リリザの攻略キャラなので味方には出来ても攻略は出来ない。そしてレヴを救い攻略できるのはサマラのみ。このお話そのものが隠しルートの物語であったというオチでなるほどー、と。書き下ろしの番外編は、まだ距離感がある5歳の頃のサマラとディーの小話でした。前述の通り、ストーリー自体が割と王道展開で変に外してこないのも良いですね。評価:★★★★★
2024.05.17
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まだまだあります。おススメSMARTOON!ってことで、第5弾。「冷血公爵の心変わり」こちらはコミックスが2巻まで発売中で、連載は完結済み。後日談含めて全133話。ピッコマでは「待てば\0」にて113話まで無料で公開されています。序盤のあらすじは画像リンクからお読みください。中盤まではコメディっぽい内容なんですが、終盤は不幸の連続。ヒーローとヒロイン二人とも亡くなってしまって唖然とした記憶が。でも、ヒロインの母の魔法によって時間が巻き戻り、前世の記憶があるヒーローがヒロインを探すという内容に。ジャンル的には回帰ものかな。「ある日、お姫様になってしまった件について」転生もの。こちらもコミックスが出ています。今7巻までかな。完結済み。私は「待てば\0」にて最後まで読めたんですけど、今後は最終話の10話前くらいから有料になる可能性も。事故死したヒロインが転生したのは生前読んでいた小説の世界。しかも、謂れのない罪で処刑される脇役のお姫様・アタナシアだった。このまま育ては、冷血の皇帝・クロード(アタナシアの父)に殺されてしまう。考えた末、宮殿の金目の物を持っていずれトンズラしようと考えていたが、ある日その現場をクロードに見つかり・・・。実はクロードにも悲しい過去があったり、アタナシアの誕生秘話など、王宮に起こる陰謀も交え希薄だった親子関係の修復のお話だったりもします。人気作なのか、SMARTOON!にしては刊行ペースが速い作品。「お兄ちゃんたちに気を付けて」時間逆行もの。完結済み。「ある日、お姫様になってしまった件について」と同じ原作者さんだそうで、ちょっとだけリンクしてます。書籍化はしておらず。公爵家の養女であるヒロインが結婚式当日の朝、目覚めると10歳の頃に戻っていた。事故死したはずの両親は健在しており、3人の兄たちとはギクシャクした関係。大人の時の記憶があるヒロインは、それを生かし、後に起こる騒動を回避しつつ、兄たちとも徐々に仲良くなって行ったのだが、両親の死は回避できず、まだ15歳の長兄が爵位を継ぐことに。あれから10年。父の友人の家に預けられていたヒロインは久しぶりに長兄と再会するも、実は長兄はヒロインを恋愛対象として見ており・・・。血が繋がっていない兄妹の恋物語でもあって、一応ハッピーエンドです。時間回帰した理由も終盤判明。「末っ子皇女殿下」コミックスは3巻まで発売。現在連載中。以前、タイトルだけは紹介したことが。魔導王国の大賢者であったヒロインが何者かの強大な魔法によって消滅し、大国・ヒペリオンの皇女エニシャに転生。冷酷な皇帝の父と、父にそっくりな気性を持つ二人の兄に溺愛されるエニシャだったが、国に繁栄をもたらすと言う皇女の誕生を良く思わない国が多く・・・。転生+陰謀ものって感じです。幼少期のエニシャが本当に可愛くて、父親と兄たちが溺愛するのも判る。今は成長して初恋の人・カヒルを追いかけるために策を巡らせている所で、話数的におそらく終盤には入っているはず。「実は私が本物だった」書籍化されていまして、3巻まで発売。現在も連載中。回帰モノです。精霊士の一族の後継者として産まれたキイラ。血のにじむような努力を重ね、精霊に選ばれる大事な儀式の日を待っていたのだが、選ばれたのは腹違いの姉の方。キィラは偽物のレッテルを貼られ世を謀った罪により投獄の末に公開処刑された。しかし、処刑の寸前に異母姉が彼女に囁いたのは耳を疑う言葉。実はあんたが本物なのよ、と。首を落とされたと思った瞬間目覚めると死ぬ1年前に戻っていた。異母姉が屋敷にやってくるまでまだ時間はある。彼女への復讐ととっつきにくくて嫌われ者だった以前の自分を払拭するため、キイラは前世の記憶を生かして行動。やがて彼女には多くの味方が付き・・・。悪女や聖女のやり直し系の王道のような内容なので、ハマる人はハマるはず。話数の割にコミックスの発売ペースは早め。「せっかく公爵令嬢に転生したんだから長生きしたい」タイトル通りのお話。書籍化はしておらず、現在連載中。小説の主人公の妹キャラに転生したヒロイン。彼女は公爵令嬢ながら継母と義妹によって虐げられ、やがて財産を狙う継母によって毒殺される運命。せっかく転生したのにこんな運命はまっぴらごめん。筋書きを知っている特権で、継母と義妹を片付けたヒロインは、偶然知り合った魔界の王子(ヒーロー)と心を通わせるが、実は展開的にもうすぐ魔界と彼女が暮らす王国と戦争が起こる。そして彼は主人公に殺される運命。悩んだ末にヒロインの選んだのは・・・。これも話数的にクライマックスに入っているかと。転生もの。「悪女を殺して」連載中で書籍化はしておらず。憑依もの。「悪役のエンディングは死のみ」と内容が被ってるので、読んでてたまにごっちゃに(^_^;)とはいえ、こちらも面白いですし、最近展開がハードモード。なのにいい所で休載。悪役令嬢に憑依したヒロイン。嫌われ者の彼女の周りは敵ばかりで婚約者である皇太子にも邪険にされている。ヒロインは現世に戻りたくて仕方なく、魔女の力を借りてなんとか帰還方法を探り出すも、条件がとにかく厳しい。悪戦苦闘するヒロインが以前と人が変わった様になったことから興味を持ち始める3人の男たち。と言う内容。皇太子がとにかく嫌な奴で今さら興味を持たれてもなぁと。「捨てられたエキストラの逆襲」連載中で書籍化はしていません。ザマァ系。皇族ながら、あるべきはずの能力が無いと虐げられていたヒロイン。しかし、クーデターにより皇宮が襲撃された際、家族は彼女を残して逃亡してしまう。使用人に間違われて命拾いしたヒロインは、市井に逃げ延び食堂を営む夫妻に引き取られて名を変えて生きて来た。それから数年経ち、漸く能力が顕現した彼女を皇族が必死に探していると言う。当然戻るつもりは無いのだが、ヒロインは初恋の人も自分を探していると知り・・・。皇族だからってどの面下げてって感じで、序盤はかなりイラつきます。きっとザマァされると思うので、それを楽しみに読んでると言っても過言ではない。「悪女のやり直し」回帰+復讐もの。連載中。性悪な妹に嵌められ、夫である皇太子と妹の暗殺容疑を掛けられたヒロインは処刑された。しかしなぜか、目が覚めて気付くと1年前に戻っていた。ヒロインは妹への逆襲のため、策を巡らすが、無関心かと思われた皇太子が彼女に興味を持ち始め・・・。これも王道展開で、妹が破滅して終わりかな。「暴君の愛着人形」回帰もの。連載中。不吉とされる黒髪で産まれた王子・レイタン。彼は後に謀反を起こし王族全てを惨殺する。腹違いの妹のヒロイン・セッツもその一人。しかし、兄に首を跳ねられたはずが、なぜか目を覚まし、子供時代に戻っていた。セッツは後に起こる惨劇を回避するため、孤独なレイタンに近付き、慕っているフリをし続けた。結果、レイタンは彼女一人を傍に置き、慈しんだのだが、それでも彼は謀反を起こし王族を虐殺。生き残ったのはセッツのみ。暴君と呼ばれながらも彼女のみを溺愛し、傍から離さないレイタンは彼女を異性として愛し始めており・・・。禁断の兄妹の愛憎劇っぽい内容ですが、どうも二人は血が繋がってないっぽい?おそらくハッピーエンドだとは思いますが、中盤がドロドロしそうで怖い(^_^;)。今回は書籍化されているタイトルを多めに入れてみました。エキストラ~はまだ連載間もないので、どうなるか非常に楽しみ。
2023.03.27
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2024年12月刊角川文庫著者:三沢ケイ(敬称略)運命を変えるため、グレール学園に通い、着実に一度目とは違う人生を歩み始めたアナベル。かつて彼女を守って力尽きた魔法騎士エドとも、学園生活を通じて新たな関係を築きつつあった。そんな中、悲劇の始まりの場所、サンルータ王国を訪れる日がやってくる。かつての婚約者で、自分をどん底に陥れたダニエルの立太子式のためだ。アナベルは重い気持ちで隣国を訪れるが、一度目にはなかった予期せぬ変化が起きていて…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アナベル=ナジール国第一王女。 時間逆行して人生をやり直し、エドと恋仲になる。エドワール=王宮魔術師。アナベルとの未来の為、魔法伯を目指す。 ダニエル=サンルータ王国王太子。キャリーナ=ニーグレン国第一王女 エレナ=ニーグレンで産まれた突然変異の魔女。 アロルド=ニーグレン国王太子。エドからの告白を受け入れ、彼と恋仲になったアナベル。もうすぐ16歳になる年、前世で自分を不幸に追い落とした男・サンルータ王国王子ダニエルの立太子式の招待状が届いた。当時は兄のシャルルのみ招待され、ダニエルとの初対面は私の生誕祝賀会の時だったはず。正直、顔も見たくない相手だが隣国との交友関係の場だ。兄はよほどのことが無いのならお前も出席して欲しいと言う。それもそうね、例えまたダニエル様から縁談の話が来ても受け入れなければいい話ではないの。ああ、でもダニエル様にもキャリーナ王女とも会いたくないなぁ。数日の旅程を経てサンルータ入りした一行は盛大な歓迎を受けた。飽く迄紳士的な態度を崩さないダニエルは前世と同じく、聡明でスマートな身のこなしの美男であった。ホント、確かにカッコイイ人なのよね。今はエドという恋人がいるからか心動かされることはないが、こんな人に微笑みかけられたら勘違いしてしまう女性も多そうだ。かつてのチョロかった自分を思い出して苦笑するとダニエルに微笑みかけられ、是非自慢の庭園をお見せしたいと言うので素直にエスコートを受けた。差し出された彼の腕を見るといくつもの腕輪が。不思議そうに眺めていたら、これは魔法具なのですよ。ベルにもよく見えるように袖を捲ってみせた。そう言えばここ数年、この国では彼の指揮の元、魔法研究に力を入れてるって聞いたっけ。せっかくあなたといるのに色気のない話ですが、と前置いてダニエルは研究所では主に防護に特化した研究を進めているのだと説明。是非ともその成果を試したい、と頼まれシャルルを交えどの程度の魔法まで防ぐことが出来るのか実験に付き合う羽目に。だが、自慢するだけあって防護の力自体はどれも素晴らしい出来だった。でもそこまでして身を守りたいって、ダニエル様は魔法使いから何か恨みでも買ってるのかしら?困惑する中、キャリーナと遭遇したベルは前世と全く印象の違う彼女に驚愕。天真爛漫でユーモアもあり、しかも聡明さも持ち合わせた王女。そんなキャリーナとすっかり意気投合して帰国してからも文通を続ける仲に。キャリーナはよく自国の魔女・エレナのことを話題に上げ、先日の手紙には貴方の生誕祝賀会に連れて行くから是非会って欲しいと頼まれた。エレナってもしかしてクロードが以前話してた突然変異の魔女のこと?優秀な魔術師だとあなたが自慢していたからとエドともお話したい。そう締めくくられた手紙に微笑んだ。その話をして快諾したエドが切り出したのは二人の将来のこと。実は、と先日意を決して父に結婚の許しを貰いに行ったらしい。返事が気になってつい、お父様はなんて仰ってた!?と食い気味に尋ねる。彼が聞いた話では、ダニエルを始めベルには他国からいくつも縁談の打診が来ているのだが、と考えこんでいたそう。せめて卿がラブラシュリ公爵家の後継なら・・・。だがベルも卿を好いているようだしと前置き、ならば卿が何か偉業を成し遂げて魔法伯の称号を得たらなら結婚を許可しよう。王からロングギール以上のことを成せるか?と問われ必ずやと誓いました。ただ、まだもう少しだけ時間がかかりそうなのですと彼はベルに謝罪。ロングギールが不得手としていた一時だけ別人に見せる幻術魔法は成功したものの、偉業と言えるほどではない。そうなると国に貢献できるような魔法の方が良いだろう。そこでエドは魔力が無くとも描くことのできる魔法陣を開発し、一般人もちょっとした魔法なら使えるようにしたいのだと語った。そうすれば民たちの生活の質は格段に上がる。あまり便利になり過ぎても魔法に頼り切りになってしまう。なので、多少のさじ加減は必要なれど一先ずは面倒な火起こしや、遠方に行く際に重宝する転移系は重宝されるだろう。その説明にベルも胸を躍らせた。それが実現したら絶対に彼は魔法伯になれる。陛下から2年の猶予をやると言われました。そう言ってベルを見つめ、必ず期限中に完成させるから待っていて欲しい。その言葉に彼女は力強く頷いた。それから暫く経って、ベルの誕生日を祝う祝賀会のために続々と各国からの招待客が王宮を訪れた。ダニエルは既に父から2年は娘をどこにもやらないと説明を受けたらしい。2年くらいなら私は待つよとダンスの時に囁かれたけれど、でも彼には現在ニーグレン側からキャリーナとの縁談が来ているはず。それを袖にしてまで私のことを待つって言ってるの?本来の彼は強い信念の持ち主で、この言葉も口先だけではないのは判る。だからこそ、前世で見せたあの非道ぶりが信じられないでいた。当時はキャリーナの甘言にでも乗せられたのかと思っていたのだが、実際に親交を重ねたからこそ判る、彼女はそんな悪女ではない。それに先日、サンルータから帰る間際にダニエルから貰った謎かけのような手紙に書いてあった文面。エドもチンプンカンプンですねと首をひねっていた。南の魔女に気を付けろってどういう意味?ダニエルに少し遅れてキャリーナが来訪。先触れ通りに彼女は魔女のエレナを連れていた。この子凄いのよ、一度見た魔法はすぐに覚えてしてしまうの!是非、ナジール国自慢の魔術師の腕が見せてくれとキャリーナにせがまれ、エドはエレナが好きだと言う花、マーガレットを氷魔法を応用して作って見せた。キャリーナは大はしゃぎで凄い凄いと拍手し、エレナもありがとうと照れ臭そうにしている。その時、そう言えば、あなたその瞳と髪の色どうしたの?とキャリーナに聞かれ、これはエドが編み出した幻術魔法なのと説明。私、顔が知られてるからデートもままならなくて。だから髪と目の色を変え、さっきまで町に出掛けていたと語ると、見た方が早いだろうとエドもこういうことですと念のため変えていた自身も本来の色味に戻して見せた。エレナがその様を凝視していたので、彼は禁書である魔法書を研究したものですので原理についてはオフレコで、と微笑んだ。その夜、王宮内で事件が。なんと門外不出の禁書が盗難に遭ったと大騒ぎ。警備兵の話ではエドが持ち出し、時間になっても返しに来なかったと言う。言われた当のエドは困惑。いえ、そもそも今日は借りに行っていません。でも確かにラブラシュリ様でしたと兵は言い張る。だが、その時声を上げたのはダニエルだった。ラブラシュリ卿が嘘を言っているようには見えない。皆を見回した彼は恐らく王宮の外には持ち出されていないはず。来賓も含めて全部屋くまなく捜索しようと言う案に父も兄も承諾。だがその命が下されてすぐに禁書庫から連絡が。何と禁書が戻っているというのだ。これは捜索される前に手を打たれたな独り言ちるダニエルには何か思い当たることがあったのかもしれないキャリーナに今度はニーグレンに行くからと約束し別れた後、ダニエルから少しいいか?と呼び出されたベルは「君は変な夢を見たことがあるかい?」と聞かれ目を瞠った。私はたまに見るんだ、魔女に魅了の術を掛けられ愛する人に酷い事をした胸糞悪い夢を。魔女?それってあの手紙の?頷いた彼は、もしやあれは愚かな自分の前世なのではと思っていると悲痛な表情を浮かべ、だからこそ二度と策に嵌るまいと心に誓ったんだ。その話になぜダニエルが防護に特化した魔法研究に力を入れていたのか判った。エドによれば腕輪だけでなく身に着けた装身具全てに防護の加護を込めた魔法石が埋め込まれているらしい。あそこまでガッチリ守っていれば精神干渉も受け付けないだろうと。夢の中の魔女はキャリーナの姿をしていたようだが、ベルと同じくどう考えても同一人物とは思えないとダニエルも首をひねっていた。話題を変え、君もニーグレンに招待されているんだろう?その時にまた、そう言い置いてダニエルは帰国して行った。二カ月後、エドと共にニーグレンを訪れたベルはキャリーナの兄である王太子・アロルドからエレナを診て欲しいと頼まれた。ここ一週間ほど、体調を崩して臥せっていると言う。なのに、後見人のキャリーナは心配ないと医師に診せるのを反対しているらしい。まるで妹のように可愛がっていたのに、彼女はエレナが心配ではないのだろうか?そこで、ダニエルが一役買ってキャリーナをデートに誘い出してくれることとなり、その隙にエドがエレナを診察する手はずとなった。魔女の不調なら魔術師が助けになるであろう。エレナを診たエドだったが、その症状に目を剥いた。なんだ、これは?幾つもの複雑な魔法が絡まるようにエレナに掛けられている。この短時間ではできることは限られるので早々に退室し、アロルドに報告。あのエレナは恐らくキャリーナ様ではないかと。一緒に部屋に入ったベルも最初に聞いた時は信じられなかった。だってそれって幻術魔法ってことでしょ。あれはエドが禁書を元に編み出したもの、彼以外使えない、と考え、キャリーナとの会話を思い出した。エレナは本当に天才なの、一度見た魔法はすぐに覚えて自分の物にしちゃうのよ。そうだ、あの時、エドは幻術魔法を解除しさらにもう一度変化する様を二人に見せた。まさか本当に一度見ただけでエレナはあの魔法を会得したって言うの!?得てして天才は想像もしない事をやってのけるものだ。ナジールで禁書が一時消えたのも幻術魔法でエドに化けたエレナの仕業に違いない。エドは、恐らくキャリーナに掛けた魔法も禁書から得た知識によるものに違いないこと、王女に掛けられた魔法は解呪は可能だと思うが一応覚悟はして欲しいと告げる。アロルドはまさかの事態に頭を抱えた。では今、ダニエルと出掛けているのは妹に化けたエレナだと?道理で最近人が変わったかのような振る舞いが増えたはずだ。がっくりと椅子にもたれた彼は取り敢えず解呪を頼むと頭を下げた。だが全て解けてもキャリーナは多くの精神干渉によって口封じだけでなく記憶も失った状態になっている。全力を尽くしますのでというエドと助手として付いて来た魔術師のトールに任せるしかない。真相を知ったダニエルも驚いていた。彼もまた夢の中の出来事が現実味を帯びて来たのだろう。私だって驚いている。前世でのこともきっとエレナがやらかしたことだったのだ。キャリーナもとんでもない目に遭っていて、ダニエルは魅了の術により本心でない言動をさせられていた。今となっては彼らを恨む気持ちにはならないが、エレナはどうしてこんなことをしでかしたのだろう。そして、皆の協力の元、追い詰められたエレナが語ったことは・・・。エレナも可哀想な子だったことが本人の証言で判ります。化け物という意味の名「ヒリィ」と呼ばれた過去、強力な魔力の持ち主だったことで王家預かりになったは良いが家族と引き離され寂しい思いをしたことなど。でも、これには誤解もあって決してニーグレンの王家は非道なことなどしておらず、それどころかエレナの家族に莫大な援助までしていました。本当は家族に売られていたことも知らずに、エレナは王族というものに嫌悪感を持ち、手始めにキャリーナを貶めることを画策。あんたもこのバカ王女とおんなじ、大っ嫌いよアナベル!面と向かって罵られた彼女はビックリ。何の苦労もしていないから施しも当然、私のことも恩赦してもらえるよう頼んでくれるって?あんた達みたいなお花畑に助けてなんて欲しくない!!そう叫んでエレナは自害。今わの際の彼女が見つめていたのはダニエルでした。この王子様は私を憐れんだりはしなかったな、だから私は、自嘲するような表情で息絶えたエレナをダニエルは複雑な表情で見送り、国を巻き込んだ事件は終わりを告げます。前世でのことはダニエルに惚れていたエレナが魅了と幻術の魔法を使って、アナベルを追い落としたってことなんでしょうけど、いざ事実が判るとダニエルとキャリーナも被害者なんですよね。今世も結局、ダニエルは夢で過去での行いを見せつけられ長く苦しみ、キャリーナも一部の記憶を取り戻せないまま。エレナもただでは死ななかったってことで。真相が判ったことで、ベルも自らが一度死んで蘇った事、エドから貰った魔法珠のことなど包み隠さず打ち明け彼も納得。その後一層二人の仲も近付き、期限ぎりぎりにはなったものの件の魔法陣を成功させ実用されることに。結果、目出度くエドは魔法伯を叙爵してベルを妻に迎えるのでした。二人の子供にも恵まれ、数十年後天寿を全うしたエドを見送ったベルでしたが、ふと目覚めるとサンルータの地下牢にいて・・・。このラストにはマジで驚きました。昨日のブログで不吉だなぁと書いた通り、やっぱりそういう展開になるのか~~~。でも以降、続編が出ていないからこれで幕引きで続きは好きに妄想してねと言うことなのでしょうか。これが〆だとしたら賛否別れそう。ってか、エレナ目線で読めばザマァ見ろってことなのか。う~~ん。評価:★★★★☆
2025.11.21
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2025年11月刊ベリーズファンタジー著者:火野村志紀(敬称略)多くの者に慕われてきた公爵令嬢・アデライトが、王妃の宝石を盗んだ事件の犯人として追放されたーー。王太子・エリックはアデライトとの婚約を破棄すると、すぐに愛人を新たな婚約者として迎え入れることに。愛を選び、明るい未来に想いを馳せる一方で、我儘な愛人は好き勝手し放題。次第に二人は周囲から冷ややかな目で見られるようになっていく。追放から三年後、以前よりも幸せそうなアデライトと再会すると、エリックは自身が犯した過ちを思い知らされて…? これはある才女の追放から始まった、祖国に残された者達の破滅と後悔の物語。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 アデライト=その聡明さと美貌から「青薔薇の乙女」と呼ばれた公爵令嬢。 エリック=グラード王国王太子。アデライトの婚約者。 セルジュ=大国・ヴェルタニア王国王太子。 ノエル=エリックの愛人の公爵令嬢。 モルガーヌ=アデライトの親友。 ダニエル=ステファンの息子。 ステファン=宰相。 アロルド=アデライトの父。美しく、誰からも慕われる公爵令嬢・アデライトの唯一の悩みは、婚約者である王太子エリックがいつまでも放蕩を尽くしていること。人目気にせずに愛人のノエルとイチャつき、政務も放り出して遊び歩いている姿を見て、多くの貴族達が眉をひそめた。大事なお茶会をノエルに台無しにされても、エリックはそんなことで目くじらを立てるなと聞く耳持たず。あんな方が未来の国王なんてこの国の行く末も知れています!憤慨する取り巻き令嬢を宥め、そのうち自覚をもって下さるはず、と信じていた。だが、本当はアデライトだってこの状況が良くないことくらい判っている。ノエルも公爵令嬢なことから、下手をすればアデライトの婚約が破棄される可能性もあったから。しかし、アデライトの父・アロルドは先王からの忠臣。エリックとの結婚は先王の希望だったので覆ることはないだろうと思われていた。そんなある日のこと、衝撃的な事件が起きた。なんと、王妃サフィアの宝石が盗難に遭い、その犯人がアデライトだと報じられたのだ。当然、本人は否定したが、宰相の息子・ダニエルの目撃証言により罪は確定してしまい、彼女は貴族籍剥奪の上、国外追放処分と決まった。この状況にエリックは歓喜した。美しく優秀な女だったが如何せん真面目過ぎて面白みがない。ノエルのように奔放な女の方が好みのエリックにしてみれば自らの不幸を呪ったものだ。唯一の利点は仕事を押し付けられることくらいか。これが父や宰相に知られたら大目玉だったが、アデライド自ら失脚してくれて助かった。とは言え、どう考えても彼女は無実だろう。あの真面目女がそんなことしでかすとは思えない。おそらくスタール公爵の反対派閥にでも嵌められたか。意外だったのはダニエルの証言か。あいつはどちらと言えばアデライドを慕っているように見えたが・・・。まあ、良い。アデライドには気の毒だが、これでこちらが泥をかぶることなくノエルを妃に迎えられる。そう高を括っていたエリックだったが、数か月後、いざノエルを王太子妃に迎える結婚式で多くの貴族達が欠席。自分たちの結婚が歓迎されていないと漸く思い知ることに我儘で自由奔放、甘ったれな面を気に入って惚れこんでいたノエルであったが、いざ妃に迎えるとアデライトのありがたみを自覚した。まさかマナーも碌に身に着けていないなんて!フェルモン公爵はどれだけ甘やかして育てたんだ!!あいつは一年かからずにお妃教育をマスターしたというのに、教育官の話ではあの調子では十年かかると報告を受け天を仰いだ。そりゃ、宰相がノエルとの結婚を猛反対するわけだ。おまけにいつもアデライトに押し付けていた仕事を自分でこなす羽目になり、遊びにも行けない。こうなると判れば母上に執り成してあいつの減刑を願い出たのに。減刑と考え、エリックは閃いた。そうだ、上手く行けばスタール公爵にも恩を売れるぞ。我ながら天才的な発想だと早速公爵に会いに行ったのだが、アデライトは既にこの国を出ていた。公爵のことだから娘に不自由が無いよう手を尽くしているだろうことは容易に想像ができる。そして、あろうことかアロルドはあなたには決して行き先を教えないとエリックを睨んだ。その気迫にたじろぎつつ、一切婚約者を庇わず、乗じてさっさと愛人を妃に迎えた浅はかすぎる王太子に礼儀など不要とばかりにその不甲斐なさを責められて意気消沈したまま王宮に戻って来た。行き先が無いのなら女官として雇ってやる、なんて言われて公爵が喜ぶはずもない。逆にどこまで馬鹿にするつもりだと怒られて流石のエリックも反省していると、教育官からはノエルのやる気の無さと不出来ぶりを何とかしてくれと訴えられてため息を吐いた。あれから三年、立太子式に招待されたエリックとノエルはヴェルタニア王国に来ていた。セルジュはエリックと歳が近く、何となくライバル視している男だ。登場した彼の姿を見ておざなりに拍手していたエリックはセルジュの背後にいるルイーズ王女の隣にいる女官の姿を見て目を剥いた。三年ぶりに見る元婚約者は美しさにさらに磨きがかかり、思わず見惚れてしまったがそれどころではない。どういうことかとパーティー中にセルジュに声をかけ問い質した。鼻白んでいたセルジュは、ヴェルタニア王と公爵が長年懇意にしており、たっての頼みでアデライドを保護したのだと告げた。優秀な彼女にはルイーズの教育係をして貰っていると。そもそももうグラード王国民ではないのだから関係ないだろう。そう言って睨まれたじろいだが、格の差は歴然でしおしおと会場に戻る。したら、今度はノエルがルーエストの王女とトラブルになっていて、危うく国交問題になる所になった。これには父王と宰相もカンカンで、経緯を聞いた貴族達は王家への不信感を露わにし始めた。この一件から、エリックは心を入れ替え政務にも力を入れ始め、アデライトのありがたみを益々実感してく。何とか彼女に謝罪し、戻って来てもらうことはできないだろうか。そのためにはアデライドの無実を証明するしかない。父王に相談すると王妃には内緒で調査を進めるよう命じられた。王妃は優秀過ぎるアデライドを嫌っていたから。スタール公爵にも知らせるとよろしく頼みますと返答が来て、念のためアデライドにも手紙を送る。返事を寄越したのがセルジュなのが気に入らないが協力を惜しまないとあったので真犯人が高跳びでもしていた時は頼りにするとしよう。数か月後、調査の結果挙がった容疑者は、なんと王妃とノエルの母・イザベル。その昔、アロルドに片思いしていたイザベルはフラれた腹いせをアデライドを追い落とすことで晴らそうとしたらしく、それに王妃が便乗したらしい。この顛末に父王は大層ショックを受けて後に倒れ、王家への風当たりが強い中、エリックの即位が決まった。自分の母のやらかしは棚に上げて、フェルモン公爵夫人の犯罪を理由にエリックはノエルと離縁しようと考えた。しかし、ノエルの妊娠が判明し、そんな妻を捨てるのは体裁が悪すぎると断念。その時、報じられたのがセルジュとアデライトの婚約だった。多分、彼女の冤罪が晴れるまで待っていたのだろう。道理でセルジュが返事を寄越したわけだ。図らずも彼らの幸せを後押ししてしまったとエリックはガッカリ。これも虫のいいことを考えていた報いか。自嘲しながら彼は自分で出来うる範囲で王の務めを果たそうと決意。それから十六年、アデライトを追いやった人々の破滅は未だに終わっておらず・・・。罠に嵌められた当人はひっそり暮らしていただけなのに、彼女を追いやった者たちは自業自得なことで破滅の道を辿っていきます。今作はヒロイン・アデライドの元婚約者であるエリックの目線のお話が大半で、不利な証言をしたダニエル、親友と言いながらアデライトを毛嫌いしていたモルガーヌが自分勝手な言動のせいで不運に見舞われて行きます。個人的に許しがたいのはエリックよりダニエルかなぁ。アデライドに惚れこみ、婚約破棄になれば自分が嫁に出来ると思い込み、あの証言をしたはいいものの、当然、アロルドに恨まれ求婚しても同意は得られずにイライラ。父の命でアデライドに似た令嬢を妻に迎えるもおざなりにし過ぎていたせいで妻に嵌められて事故死に至ります。クライマックスでは十六年経っていて、セルジュとアデライトは二人の子供に恵まれ傍から見ても幸せそう、片や自分の所は・・・。ノエルは男遊び、息子のレイモンはかつての自分によく似た放蕩息子。結局、彼は妻と息子のやらかしによって国王でさえもいられなくなるのですが、アロルドが差し向けた暗殺者からも逃れた後は、しがない男爵として荒れた領地を何とかしようと四苦八苦している、と示唆され物語は幕。公爵の恨みが凄まじいことになってたのには驚きましたが、エリックがそれを回避できたのはアデライドのアドバイスのおかげ。それをエリックが気付いたのは良かったと思います。まぁ、あっさり殺されるより生きていく方がキツイだろうから、アデライドはそうは思っておらずとも結果的にこれもまた報いなのかなと。内容的に主役はアデライドではなくエリックですね。セルジュはヒーローながら出番自体は少な目。評価:★★★★☆
2026.01.07
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2026年3月刊スターツ出版文庫著者:緋村燐(敬称略)結界の糸を作る巫女として高い霊力を持っていた藤花は、親友の緑子と優しい婚約者に恵まれていた。しかし、妖魔に襲われたことで一変する。顔に残った痣のせいで「毒巫女」と虐げられ、藤花の婚約者はいつしか緑子のものに。絶望の中、最強の結界師・巽に糸を見初められ「俺が痣も絶望もすべて消し去ってやる」と求婚される。子を成せば痣が消えると知り花嫁となった藤花。愛なき結婚のはずが、巽から宝物のように扱われ愛を注がれて…。懐妊し幸せな藤花を許せない緑子は、流産させようと画策するがーー!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 志島藤花=妖魔に襲われ、毒巫女と蔑まれていた少女。 黄賀巽=帝都の結界を護る御三家の一つ・黄賀家の嫡男。 勝田緑子=勝田侯爵家の令嬢。藤花に敵意を持っている。 志島朱梨=藤花の妹。帝都を護る結界師が使う糸を紡ぐ「糸練りの巫女」高い霊力を持ち、優れた巫女として持て囃されていた藤花は決して驕ることなく、心優しい娘だった。巫女たちの育成機関つむぎ舘の館長・遠原節子の一人息子の孝志との婚約も決まり、幸せな日々を過ごしていた。そんなある日のこと、姉のためにと清水を汲みに山に入った朱梨が夜になっても帰らないと騒ぎに。親友の緑子から霊力の高いあなたなら見つけられるかもと言われ、子供の時に見知らぬ少年から貰った守護珠を握りしめた。私にはこれがある、だからきっと大丈夫。そうして山に分け入った藤花は無事に妹を見つけたが、妖魔に襲われ負傷。ほんの少し頬をかすめただけだというのに陰の気は彼女の身体を蝕み、美しかった顔には醜い痣が浮かんでいた。しかも、陰の気は藤花の霊力にも影響を及ぼし、紡ぐ糸は赤く染まっていた。あれから二年、藤花は毒巫女と呼ばれ、皆から虐げられていた。孝志は早々に藤花を見限り、今は緑子と婚約。あれほど藤花を持て囃していた節子や他の巫女たちも蔑みの目を向け聞こえよがしな悪口で彼女を貶めた。親が村長なのもあって追い出されはしなかったが毎日が針の筵のよう。こんな日々が一体いつまで続くのか、疲弊した彼女の耳に燥ぐ巫女たちの声が聞こえる。どうやら帝都から結界師がつむぎ舘の見学に来るらしい。しかも花嫁探しも兼ねてのことらしく、皆が騒がしいのも頷けた。まぁ、私には関係のない事だけど・・・。作業を終えて宛がわれている小屋に向かうとその前に一人の青年が立っていた。手には藤花が紡いだ赤い糸が。不吉だから捨てろと節子に怒鳴られても捨てられずにいたものをどうしてあの人が。それ、私のです返してください。声をかけると振り返った青年は驚き、これほど俺の霊力に馴染む糸は初めてだと感動している。そして「俺と結婚してくれ」の言葉にビックリ。彼こそが御三家・黄賀家の嫡男の巽と聞いてさらに驚いたが、それ以上に驚愕したのは村の住人と巫女たちだった。その娘は毒巫女で、と節子が止めるのを巽は一睨みで黙らせ、藤花を覗き込むとその痣、俺なら消してやれるぞと囁いた。その言葉を聞いて色々限界だった藤花は彼からの申し出に頷いていた。突然決まった藤花の結婚、面白くないのは緑子だった。高位貴族の娘であってもここでは何一つ藤花に叶わなかった。姉にコンプレックスを持っていた朱梨を唆し藤花を妖魔に襲わせ毒巫女に堕としたまでは良かったが、損なわれていなかった霊力が巽の目に留まるとは!巽を見た後では孝志が途端に色褪せて見えて緑子は歯噛みした。黄賀家に嫁いだ藤花は当初、義母に良く思われていなかった。いくら霊力が高くとも顔に妖魔に付けられた痣がある嫁など、毛嫌いされて当然だ。だが、巽と結ばれたことで身体に陽の気が満ち、数日もしないうちに痣は綺麗に消えていた。そんな彼女に義母は心から謝罪し、今は良い関係を築けている。そうこうするうちに藤花の妊娠が判り、黄賀家は喜びに包まれた。特に巽が大喜びで、忙しいながらも妻を気遣った。そんな折、妊娠の報せを受けてお祝いの品を持たされた朱梨が来訪。だが、妹はどこか荒んでいて、藤花が妖魔に襲われたのは緑子の画策であり自分も手伝ったのだと暴露。あの事件以降、態度が急変した緑子にはショックを受けたけれど、そこまで嫌われていた事実に衝撃を受けた。しかも、緑子は朱梨だけでなく他の巫女たちにも藤花の悪評を広めていたらしい。道理で皆が冷たかったわけだ。色々納得がいって嘆息すると怒り心頭な表情の巽が入って来て朱梨を咎め追い出した。コンプレックスを刺激されてつい手を貸してしまったとはいえ、冷遇されていた期間を思うと妹を許す気にはなれなかった。だがもっと許せないのは緑子だ。巽の妻になり、早々に妊娠して地位も安泰な藤花を思い相当妬んでいる事だろう。何かしでかさないと良いが。嫌な予感は的中、数か月後、緑子から嘘を吹き込まれていたと知った朱梨が再び来訪。心からの謝罪をし、緑子に気を付けろと忠告して帰って行った。それから暫く経って、藤花は産み月に。だが、間の悪いことに巽が皇居の結界張り直しを依頼され・・・。黄賀夫婦は仲睦まじく、その絆によって紡がれた糸は強固な結界になる。その評判を聞きつけたお上が皇居の結界を依頼。しかし、臨月に入った藤花はいつ産気づいておかしくない状態。大量に必要となる糸もそう多くは紡げない状態でした。なのに、この状況下で緑子は藤花憎しである騒動を起こし、彼らは危機一髪。まぁ、これはまたしても夫婦の絆で乗り切るんですけど、緑子の執念深さが凄まじい。他人の評価なんて気にしなきゃいいのに。自分は自分と思っとく方が世の中平和な気がします。でも悪い事は出来ないもので、緑子は後に捕縛され懲役刑に。その前につむぎ舘の方もとある理由で罰を受けているあたり、テーマの「ご懐妊×ざまぁ」部分はしっかりと回収されています。取り敢えず、妹がきちんと改心してくれて良かった。評価:★★★★
2026.04.20
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2021年9月刊スターツ出版文庫著者:クレハさん柚子の神力がどんどん強まり…初代・鬼の花嫁の秘密が明らかに!?玲夜からとどまることなく溺愛を注がれる鬼の花嫁・柚子。そんなある日、龍の加護で神力が強まった柚子の前に、最強の鬼・玲夜をも脅かす力を持つ謎の男が現れる。そして、求婚に応じなければ命を狙うと脅されて…? 「俺の花嫁は誰にも渡さない」と玲夜に死守されつつ、柚子は全力で立ち向かう。そこには龍のみが知る、過去の因縁が隠されていた…。あやかしと人間の和風恋愛ファンタジー第四弾! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 柚子=ヒロイン。あやかし・鬼龍院玲夜の「花嫁」 祖母の実家が一龍齋の傍系だと判明した。 玲夜=ヒーロー。鬼の一族の次期当主。 透子=柚子の親友。猫又一族の次期当主・東吉の「花嫁」 千夜=玲夜の父。鬼の一族の現当主。 サク=柚子の前世。霊力を持っており、数百年前、鬼の一族の当主に嫁いだ。 龍=サクを守護していたが、彼女に横恋慕した男の策略により無理矢理引き 剥がされた。現在は柚子を守護している。 優生=柚子の祖母方のはとこ。 昔から柚子に執心しており、距離を置かれていたが再び彼女の前に現れ た。シリーズ四作目で、三巻にて匂わされていた柚子の前世・サクの因縁話。大学三年生になった柚子は、数年ぶりにはとこの優生と再会し一抹の不安を覚えます。透子や祖母は人当たりの良い彼を気に入っていたようだが、柚子にしてみれば一緒にいると怖気が走る感覚がどうにも嫌で距離を置いていた人物でした。玲夜も優生に嫌なものを感じるらしい。くれぐれも柚子に気を付けるよう促し、護衛も増やした程だ。そんな最中、ある夜、龍から彼が守護していたサクの話を聞いた柚子と玲夜。数百年前、サクは鬼の一族の当主に妻にと請われて嫁ぎ、跡取りたる男子を産んだ後、以前から彼女に懸想していた一龍齋の先祖に奪われたのだと言う。厄介なことに男は類まれな霊力を持っていて強かった。龍ですら力及ばないほどに。でなければ鬼が易々と妻を奪われるはずは無い。その際、龍は無理矢理サクから引き剥がされ、一龍齋の先祖の妻にされた彼女は後に男との間に子を成した。龍と一心同体の様な存在だった事もあり心身に大ダメージを負ったサクは日に日に弱り、最後は助けに来た鬼の当主と彼との子に看取られて亡くなった。彼女は一龍齋の男を恨み死んだ。だが、龍によれば最近また忌々しいあの男の気配を感じてどうにも落ち着かないらしい。サクが長い年月を経て柚子として生まれ変わった様に、あの男も転生しているとしたらまた彼女を奪うべく狙っていてもおかしくない。龍の話を聞いてふと思い当る人物が一人。もしや、最近いきなり柚子にコンタクトを取って来た優生は・・・?サクの悲しい人生を知り、触発されたのか夢で柚子はサクと出会います。執念の塊と化した一龍齋の先祖の霊を消す方法をサクから教えられた柚子。しかし、優生に取り憑いた男は柚子を自分の妻にすべく透子に呪いをかけるという強硬手段に出て来て、彼女は選択を迫られることに。猶予は無いとサクが伝授した儀式を執り行う玲夜と千夜。かくて、一龍齋の先祖の念は消滅し、透子の呪いも解けたのでした。優生は一龍齋の傍系で子孫だったため、いいように使われていただけのようだが、介抱もされずにほっぽり出されてたのが気の毒。まあ、操られていただけとは言え、玲夜にしてみれば柚子に付き纏っていた過去があるだけに良い印象無いよね。中盤、龍と会話していた千夜が数百年前の鬼の当主は玲夜の前世なのでは?と問いかけるも、はぐらかされます。明言はされずとも恐らくそうなんだろうなって気が。最後は更に絆を深めた柚子と玲夜のラブラブなやり取りで幕。評価:★★★★☆いつにも増してファンタジー色の濃いお話でした。序盤のほっこりシーンである、龍の加護が付いた柚子が宝くじで十億当てたエピソードは何とも羨ましい。
2022.05.04
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穴埋め記事です。ここ1,2年韓国マンガにもハマってまして先が読みたくて結構課金してます。とは言え、何でもかんでも読んでるわけでもなくロマンス色の濃い作品が多いかな。そんなわけで、個人的におススメしたいSMARTOON!を紹介。このブログでもちょこっと感想を上げた「悪女は砂時計をひっくり返す」ピッコマではついに復讐完了したので、そろそろ本編は終了かな。時間回帰+復讐モノです。「公爵夫人の50のお茶レシピ」外伝含め、完結済。コミックスは現在3巻まで発売されています。多分全15巻くらい行きそう。異世界の人間との精神入れ替わりと言う一風変わった設定で、現代人ならではの知識で成功していくというお話。「お父さん、私この結婚イヤです!」現在2巻まで発売してます。読んでいた小説の悪役令嬢に転生しまったヒロインが生き残るために奮闘する話。上記3点は王道というか、人気作なので内容をご存じの方も多いかも。以降は、現在連載を読んでいて更新を楽しみしている作品です。「今世は当主になります」 時間回帰+陰謀+恋愛と3拍子揃った名作(だと思ってる) 第1話の冒頭を見るにおそらく最後ヒロインは第二王子と結婚するんだろうな。 絵が綺麗なのもポイント高し。「デイジー~公爵の婚約者になる方法~」 こちらはコミックスも発売されています。まだ3巻くらいのはず。 時間回帰モノです(好きなんです)。恋人に裏切られて殺されたヒロインが幸せになるために暴 君と言われる侯爵を公爵にしてあげると契約結婚を持ち掛けると言うお話。 婚約者になる方法と言いつつ、既に結婚しています。 途中作画の方が変わったので新作作画に慣れるまでが辛かった(^_^;)「アイリス~スマホを持った令嬢~」 転生+時間回帰モノ。100話以上連載してる割にはまだコミックスになっていません。 ヒーローの一途な願いにて亡くなる1年前に回帰したヒロインが、自分を陥れた者たちに復讐し ていく話。スマホについては実際に読んでもらった方が早いかも。 「悪女は砂時計をひっくり返す」が好きな方におススメ。「悪女は2度生きる」 こちらも話数の割にまだ書籍化されていません。 時間回帰+陰謀+恋愛の3拍子漫画なれどかなり壮絶です。謀略の天才であるヒロインが異父兄 を皇帝位につけない様策を巡らすという内容。 愛など不要と思いつつ、契約結婚した夫からの愛情に戸惑いつつも冷静に事を進めるヒロインが とにかくカッコイイ。「悪役のエンディングは死のみ」 異世界転移モノ。 乙女ゲームのハードモードのヒロインである悪役令嬢に憑依してしまった主人公。寄りにも寄っ て攻略対象の親密度が低すぎると必ずバッドエンドルートへ行ってしまうと言う、かなりの詰み 状態で、生き残るために悪戦苦闘するお話。 主人公も悪役令嬢もかなりの苦労人で、序盤は読んでてかなり辛いです。「あなたの後悔なんて知りません」 夫婦関係の修復話になるのかな?+シークレットベビーもの。 ループも転生もしませんが、やり直しが効かない分、夫を思ってのヒロインの選択が切ない。 夫の元カノとその親の謀略によって離婚してしまうんですけど、その際ヒーローの優柔不断ぶり に腹が立ちました。でも結局何だかんだで、よりを戻しそう。「エンジェリック・レディ」 時間回帰モノ+復讐+恋愛 序盤の作画は正直下手だった(失礼)ものの、最近はかなり綺麗になりました。 父の友人の娘が天涯孤独となり、彼女を屋敷に引き取り親切にしていた侯爵令嬢が、その娘によ って破滅させられ、とある力により娘が来る前に回帰。父と自分を殺した娘に復讐を図ります。 復讐しつつ、回帰したことでとある人物といい雰囲気になります。多分、ヒロインはその人とく っつくんじゃないかと予想。以上、絞りに絞っての10作品です。概要は書きませんが、その他にも「レディーメイドクィーン」「もうこれ以上愛さない」「もう見てみぬふりはしない」「悪女の駄菓子屋へようこそ」「ベアトリーチェ」とかも楽しみにしているんですが、こちらの紹介はまた追々。「かりそめの公爵夫人」や「末っ子皇女殿下」も勿論まだまだハマってます。ただあまりにも回帰モノばかりだったので、今回は敢えて除外。
2022.10.10
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2026年6月刊スターツ出版文庫著者:クレハ(敬称略)家族にないがしろにされ育ってきた平凡な高校生・柚子は、あやかしの頂点に立つ鬼・玲夜の花嫁になり、幸せな毎日を過ごしていた。そんな運命の二人が出会う以前の軌跡を辿っていく物語ーー。千夜と沙良の馴れ初め話。(『沙良と千夜』)その他、若き玲夜の孤高の青春。(『玲夜の学生時代』)花梨の幼少期から現在。(『花梨と瑶太』)そして、初めて“花嫁”となった女性について。(『最初の花嫁』)本編では語られなかった、短編4つを収録! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 鬼龍院柚子=鬼のあやかし・玲夜の「花嫁」 鬼龍院玲夜=鬼の一族の次期当主。 鬼龍院千夜=玲夜の父で鬼の一族の現当主。 鬼龍院沙良=玲夜の母。 花梨=柚子の妹だが現在は絶縁状態。 狐月瑶太=妖狐のあやかし。 一龍齋サク=「始まりの花嫁」で柚子の前世。「鬼の花嫁」の短編集です。オムニバス形式の短編三本と、「花嫁」の始まりの物語るを描いた正に「エピソード0」が収録されています。千夜さんと沙良さんの馴れ初めもなるほどなーって面白かったですが、個人的にその後の花梨についてのお話が良かったです。本編ではいけ好かないいかにもな悪役ムーブな子だった花梨。しかし、本音はお姉ちゃん大好きっ子で、瑶太と別れてからいかに自分の親が最低だったかを思い知ります。地方の旅館で住み込みで働きながら姉・柚子への申し訳なさと瑶太への想いを断ち切れずにいました。そんな彼女の元に瑶太が現れ・・・。という内容。そもそも柚子は花梨を憎んでいなかったので、許すも何もって感じで撫子の提案を受け入れ、花梨が再び瑶太の「花嫁」に戻るのも反対しませんでした。まぁ悪いのは完全にあの毒親ですからねぇ。あの人達も今どうしてるんだか。この花梨のお話は新婚編五巻で撫子さんが語っていた瑶太の話の顛末になります。花梨も本来の優しい子に戻ったし、いずれは姉妹の再会も見られると良いなぁ。そして、サクの心情が描かれた「最初の花嫁」には、あやかしが何故「花嫁」を求めるのか、その経緯が描かれていました。本編の続きは多分アニメ放映時期と合わせて七月かな、と予想。評価:★★★★☆
2026.03.29
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2016年5月刊ジュリアンパブリッシング・フェアリーキス著者:小桜けいさん「俺以外にそういう声、聞かせないでくれ」こんな形で手に入れた花嫁。だがもう手放せないほど、貪欲に、自分だけに微笑んで欲しい。独占欲は止まることなく、甘く喘ぐ花嫁を己が欲望で深く突き上げて……。【旦那様は、花嫁に骨抜きのご様子!? 君への恋煩いは重症なんだ。】人嫌いで常に仮面を被っている、そんな評判の辺境伯ジェラルドのところに、継母の策略で嫁ぐことになったクリスタ。妻ではなく跡継ぎが欲しいと冷たく言い放つジェラルドだがーー「君は、俺をおかしくする」彼もまたクリスタの優しさに触れて次第に心を開き始めていた。《信じてる、そして愛してる》ふたりの心が通い合った矢先、ジェラルドの秘密を巡って思わぬ事態が!? ↑楽天ブックスより、あらすじ文引用kindle unlimited会員向けの読み放題にて読了。電子書籍版にはショートストーリーが付いています。イラスト担当の方によるコミカライズ版がピッコマの恋愛ものジャンルにて長らくトップ10入りしているので、そちらを目にされた方は多いかも。TL小説ながら少しファンタジー色があるお話になります。ここからネタバレと感想。フェルミ子爵の長女・クリスタは病床の父の代わりに領主代行を務めていたが、ある日異母妹のステファニアに婚約者のミケーレを寝取られ、彼との婚約の解消を迫られた。しかも、自分が留守の間に領主印まで持ち出して継承権を破棄する旨の証書まで作成されており、一瞬のうちに彼女は全てを失ってしまったのだった。それを画策したのは継母のデボラと、自分の元婚約者のミケーレ。彼らは奔放な異母妹を担ぎ上げいいように利用しているようだが、もはや自分には何の力も無い。領主代行としてこの5年間頑張って来たと言うのに、デボラ親子は財産を食い潰しただけでは飽き足らず、この領地まで思い通りにするつもりかと思えば悔しくて仕方がない。しかも、そんなクリスタにデボラは新しい結婚相手を用意してあげたのだと、ベルヴェルグ辺境伯に嫁ぐよう命令して来たのだった。跡継ぎを産む道具が欲しいと言う辺境伯は彼女が嫁いで来るならば、その見返りとして毎年かなりの額の支援金を約束してくれたらしい。ただし、輿入れの際は侍女の類は連れずにクリスタが単身で来ること、待遇に不満を言わないこと、結婚式は挙げないと言う条件付きであったが。デボラ達の浪費癖は最早病気で治りそうも無く、使用人達への給料も相場より安くていつも申し訳なく思っていた。それに領地にもまだまだ金がかかるのを思えば、莫大な支援金を出してくれると言うベルヴェルグ辺境伯に嫁ぐしか道は無かった。クリスタは自分の目が届かずとも使用人達に無体な真似をしない事、これ以上領民の税率を上げない事を条件に出した。破られれば辺境伯に事の次第を訴えると。デボラは了承し、クリスタもまたこの婚姻を承諾したのだが、婚約者を蔑ろにする男が妻を大事にするとは思わないので、ステファニアを気にかけてやってくれと忠告するのだった。翌朝、まだ明け方なのに使用人全員が見送りに来てくれた。彼らはクリスタを慕い、彼女がいたから安い給料でも辞めずにいた忠義に厚い者達ばかり。クリスタは彼女を不憫に思い泣いていたメイド頭にデボラに証書で使用人達へ無体を働かないよう約束させたから、心配はいらないと慰め、もしデボラが約束を破ったり、何か問題が起きたら辺境伯邸に手紙を寄越すよう言い含めた。ベルヴェルグ領とフェルミ領は隣に位置するため、馬車で数時間もあれば辿り着く距離だが、嫁ぐための道のりだと思えば感慨深い。ジェラルド・ベルヴェルグ辺境伯はいくつもの鉱山を有する富裕だそうだが、偏屈で人嫌いなだけでなく常に顔半分を覆う仮面を付けていることで有名な人物だった。そんな人の妻になることに一抹の不安を覚えたが、餞別のつもりかメイド頭の末娘に渡された「宝石人」の絵本を捲り、離れたばかりの故郷に思いを馳せたのだった。異母妹は単にいいように使われてる感ありますが、継母と元婚約者がクソ過ぎる。直系で優秀なヒロインを体よく屋敷から追い出したつもりでしょうが、当然最後に報いを受けます。ベルヴェルグ辺境伯邸に着くと、使用人全員に出迎えられて既に奥様扱いなことにクリスタは驚いた。執事を務めると言うダンテに挨拶されたが、領主であるジェラルドは所用で席を外していると言う。一先ず、自分の部屋付きとしてメイドのアンバーとルチルを紹介され、自室に着くと二人はこの結婚に喜び、はしゃいでいた。ジェラルドは確かに噂通り人嫌いではあるが、無愛想でも思いやりある主人らしい。召使の子供が大病を患った時もわざわざ良い医者まで呼び寄せてくれたのだとか。彼らは皆そんなジェラルドを好いていたが同時に心配もしていた。今年で26歳になると言うのに未だ浮いた噂の一つも無い。まだ焦る年齢でもないがこんな調子では一生独り者なのではと思っていたら、先日急に婚約したと言い出した。驚きはしたけれど皆とても喜んでいるのだと言う。しかもこんなに美しい方で、とアンバーに言われ、デボラに容姿を貶され続けて育ったクリスタはピンと来ていなかったが、取り敢えず使用人達からは歓迎されていることは判った。夕食にもジェラルドは姿を見せず、就寝時間になって初めてクリスタの部屋に彼はやって来た。ジェラルドは噂通りに仮面を付けた姿で、クリスタの顔を見るなり結婚の条件を述べ始めた。跡継ぎを産んでもらうことが大前提だが節度さえ守ってもらえるならば多少の遊びも目を瞑るし、金銭もある程度は自由に使って構わないとは随分と太っ腹だが、その代わり領主夫人としての役目は求めていないと言う。社交の場に出る必要も無いともなれば本当に妻ではなくただのお飾りだ。明け透けに言われて屈辱に震えるクリスタを突然目隠しで覆ったジェラルドは寝台に押し倒すと早速子作りに挑もうとしているようで、彼女はせめて目隠しは外してくれと懇願したが聞き入れられなかった。ジェラルドはクリスタを結婚相手として紹介して来たミケーレに、彼女はその美しさで男遊びが激しく金遣いが荒いのだがそれも領主代行の責務のストレスからなので気のいい娘だと聞かされており、行為に慣れていると思っての行動だった。性急に手酷く抱いてしまったものの、クリスタが処女だったと知るや彼は慌てふためき、逃げ出してしまった。しかも、何故か彼女の手が酷く荒れていたことが気になるのでした。初体験時に勘違いから無理矢理事に及ぶヒーロー。TL小説あるあるですね。翌朝、事の経緯をダンテに話したジェラルドはネチネチといびられ、頭を抱えていた。実は昨日クリスタが門から入ってきた時窓から盗み見ており、彼は彼女のあまりの美しさに一目惚れしてのだが、ミケーレから聞いた話による先入観で大失態を犯してしまった事に彼は自己嫌悪に陥りどツボにハマってしまったのだ。彼女にどう謝ろうと考えつつ、取り敢えずダンテに至急クリスタの身上調査を頼むと、ジェラルドはまだ部屋にいた彼女に手荒れによく効く軟膏を手渡した。当のクリスタは突然ジェラルドに軟膏を手渡され内心驚いていた。フェルミ領に居た時は領主仕事だけでなく農作業にも精を出していた彼女の手は酷く荒れていたので、そう言えば昨夜彼は行為の最中に手荒れの理由を聞いていたなとぼんやり思い出した。クリスタに侍女を連れて来ないよう命じたそうだけれど、長年ジェラルドは好奇の視線にさらされており、使用人の募集にも興味本位で応募してくる手合いが少なくないらしい。例え妻になる人の召使でも当人以外は願い下げになってしまうのは仕方ないのだと主人を庇うアンバーに相槌を打ちつつ、昨夜は多少誤解もあったようだけどアンバーたちの言う通り、ジェラルドは思いやりのある人なのかもしれないとクリスタは思うのだった。クリスタが屋敷に来てから数日後、ジェラルドがあの夜のことを詫びに来て、これからは一緒に食事を採らないかと提案して来た。最初は黙々と食べるだけだったがやがて一言二言交わすうち、今では大分会話が弾むようになった。しかも、あまりにもに持ち込んだ荷物の少ない彼女のためにドレスや宝飾品を贈り、思ってもみなかった気遣いに対してジェラルドに礼を述べるクリスタ。それから一ヶ月ほど経ち、彼女がとある事情で木登りをして彼に心配をかけてしまってから随分と二人の距離は縮まったと思う。ジェラルドは人嫌いではあるものの、偏屈ではなかったし話題も豊富だった。何故仮面を付けているのか気にならないと言えば嘘になるが、無理強いするつもりも無い。とは言え、自分はまだ彼に心から信用されていないのだと思うと寂しくもあった。ある日、領地内の鉱山で問題が起きたそうで、ダンテを連れてジェラルドが10日ほど留守にすることになった。二人はあの夜以外寝室を共にしておらず、性的な触れ合いもしていなかったのだが、なるべく早く帰ると告げた彼はつい彼女を抱きしめキスしてしまっていた。そんな彼と離れがたく思っていたクリスタもいつしかジェラルドに惹かれていたのでした。ジェラルドが向かったのは銀が豊富に取れる鉱山なのだが、ここ最近いくら掘っても出て来ないのだと言う。さすがに異常事態と見て副責任者が領主に連絡を入れたのだそうだ。ジェラルドは鉱山内で岩肌に手を当てると物思いに耽るような仕草をし、それを数回ほど続けるとダンテがその位置に印をつけていく。作業を終えると鉱山内の地図にも同じく印をつけ、翌日からはここを掘るようと指示するのだった。ジェラルドは数百年ほど前まで存在していた宝石人という性質を持った人間だった。宝石人は額に宝石を戴き、それは5年に一度生え変わる。普通の宝石に比べ宝石人から剥がれた石は美しく希少価値からかなり高額で取引されていた。それ故、金に目の眩んだ者たちによりその存在は狙われ、遺伝せずに突然変異で産まれる彼らは今ではもうほとんど残っていない。ジェラルドが産まれた時、その額に宝石があるのを見て両親は嘆き悲しみ、考えた末、幼い彼に仮面を付けさせた。それも嫌がって外せないよう鍵付きの物を。5歳になった時、お忍びでダンテを伴い遊びに出た際出会った旅芸人に、丁度宝石の生え変わり時を見られてしまい浚われかけたが、ダンテが大けがをしてまで助けてくれた。その時彼は仮面を付けていたのに、あまりの痛痒さに仮面を外したいと無意識に願い金属製の仮面のカギがひとりでに外れた故のことだった。この事件が切欠でジェラルドには金属を自由に操る力があると判明したのだが、ダンテの頭部に痛々しい傷跡が残ってしまったのは苦い思い出でもあった。しかし、この力のおかげで壊れたオルゴールなんかも直せるし、こうして鉱山で鉱脈を探ることも出来るようになった。ジェラルドが希少な宝石人と世間に知れれば、彼の身は危険にさらされ続けるだろうし、信用していないわけではないけれど、まだクリスタには話せていなかった。帰りの馬車にてダンテは愛しているなら包み隠さず話せと言うが、決心がつきかねるジェラルドだった。同じ頃、クリスタは先代領主と執事が眠る墓が暴かれたと管理している司祭から連絡を受けていた。恐らく遺品目当ての物取りの仕業と思われたが、幸い盗まれたものは無いようで棺の鍵も取り換えが済んだと言う。これから慰霊の儀を行う為領主に来て欲しいとのことだが、生憎ジェラルドは不在。ならば代わりに奥様が来てくださいとしつこく請われた。ジェラルドとの約束で自分は奥方業に携わってはいけないと言われているが、亡くなった義両親の慰霊の為と言われれば行かないわけにもいかず、代行としてクリスタが参加することになった。儀式は滞りなく終わり、屋敷に帰ろうとしていると何やら出口が騒々しい。ルチルが無理矢理推し通ろうとする男に必死に抵抗し、手を上げられそうな所でクリスタが止めに入ると、男はフィリポ・ベルヴェルグと名乗った。ジェラルドの伯父らしい。フィリポは甥の結婚を聞きつけ、クリスタに会いに来たのだそうで、是非ともお近づきになりたいのだと厭らしい目つきで見て来た。彼は、ジェラルドの素顔を見たか?と煽ってきたが、クリスタは素顔を見せてもらえないのはそれなりの理由があるのだろうと毅然と答えた。そこを丁度屋敷で話を聞き駆け付けたジェラルドも耳にし、無礼な伯父を追い払うのだった。フィリポは先代ベルヴェルグ辺境伯の長男でありながらも素行の悪さから勘当されており、ジェラルドの父が後を継いだことが気に入らず、父が存命中はしょっちゅう金をせびりに来ていた。金蔓の両親が亡くなると、葬式の最中に抜け出して屋敷の宝飾品や絵画を盗み出そうとしていた所をジェラルドに見つかり、以来出入り禁止になっていたそうだ。今日は甥が留守にしているのを耳に挟み、新妻なら御しやすいかと思ったのだろう。ジェラルドは伯父に毅然と言い返していたクリスタに益々惚れ直し、仮面を付けている理由を話し素顔を見せると、彼女を愛していると告げ、クリスタも同じ気持ちだと答えるのだった。漸く両想いになった二人だけど、ファンタジー要素もあるせいか結構長いお話です初夜をやり直した二人は蜜月期に入り、クリスタは領主の仕事も手伝うようになった。フィリポもあれ以来姿を見せず、穏やかな日々を過ごしていたある日、当初ジェラルドは式はしないと言いはしたが、フェルミ子爵家の体裁もあるし婚礼式を挙げようと言ってくれた。そんな折、子爵家のメイド頭から手紙が届いた。何でもステファニアが今になって結婚にケチを付けゴネているらしく、まだ式を挙げていないのだそうだ。なのにミケーレが夫面して屋敷に入り込んで来たのだと言う。手紙の内容やジェラルドが吹き込まれた話と言い、子爵家の乗っ取りに関して主導権を握っているのは、どうやらデボラではなくミケーレだとクリスタは気付くのでした。そんなある日、先ぶれも無くデボラが訪ねて来た。継母の話では具合が悪かった父が危篤らしく、死に目にクリスタと合わせてくれないとステファニアに継承権はやらないと言っているそうだ。正直、母が存命中にデボラを愛人にした挙句ステファニアをもうけ、フェルミ家をめちゃくちゃにした原因である父に蟠りが無いわけではないが、死に際に自分に会いたがっているなら話は別だ。留守にしているジェラルドに言伝を頼むとクリスタはフェルミ家へ向かうのだった。だが、道中何故か馬車が止まり、クリスタは薬を嗅がされて昏倒。目覚めるとフェルミ邸の屋根裏部屋だと判った。しかも、両手を縛られている彼女の縄をほどこうとステファニアが奮闘していた。異母妹は領主を継ぐ気などさらさら無く、ただ出来の良い異母姉から婚約者を横取りできただけで満足だった。クリスタは出て行く際にこんな自分を気遣ってもくれていたし、ミケーレはどうにも信用できない男だと判ったから、あいつらの鼻を明かすためにもクリスタを助けるのだと。だが、そんな思いも空しく、ミケーレに早々にバレてステファニアも薬で眠らされてしまった。驚くことにミケーレはデボラだけでなくフィリポとも手を組んでいたようで、クリスタを軟禁したのも狙いは宝石人のジェラルドだった。どうやら先代ベルヴェルグ夫妻の墓を暴いたのはフィリポで、執事の棺に納められた彼の日記により甥が宝石人だと知ったらしい。それでクリスタに素顔を見たのか尋ねたわけだ。彼らはジェラルドを生け捕りにして宝石を作るためだけの人形にするつもりのようだが、そんな彼は呼び出しに応じてこの場に来てしまっていた。鉄の錠を彼に嵌め、ミケーレは勝利を確信したのだが、ジェラルドの秘めた力が発動し、屋敷中の金属たちが真の主であるクリスタを救うためミケーレ達に襲い掛かり彼らは一網打尽となった。その騒ぎの中、父はクリスタこそが次の領主であると書き残して静かに事切れており、そんな父の最後に彼女は涙したのだった。その後、ミケーレ達は逮捕となり、誘拐と恐喝罪でミケーレとフィリポは流刑の末に過酷な労役が課せられた。デボラは終生修道院送りになったが、途中脱走して事故に合い崖から落ちたと聞く。死体は見つからなかったがおそらく死亡したのだろうとのことだった。ステファニアは妊娠したと嘘をついただけで計画に加担していないと判断されて罪を免れ、デボラの両親の元へ行くことになったと言う。そりの合わない異母妹ではあったが、今までよりずっと気軽に話せるようになったと思う。ステファニアには借りがあるから困った事があれば連絡してと告げると二人はいつか再会することを約束して別れたのだった。この誘拐事件を機に、ジェラルドは素顔を晒すことを決意した。下手に仮面をしているから興味を引くのであっていっそオープンにしようと言うのがクリスタとダンテの言い分で、よくよく思えばと当人も納得してのことだった。案の定、ジェラルドは話題の人物になったが、宝石人の悲劇を誇張した噂話を広めたダンテの計略によって、それを耳にした国王夫妻が同情心を煽られ何とも好意的なのが良い追い風になりそうだ。クリスタが正式にフェルミ子爵を継ぐことが決まったものの、彼女はもうベルヴェルグ辺境伯夫人の為、いずれジェラルドとの間に二人以上子供が出来て、それぞれの家を継げる年齢になるまで厳選した人物を領主代行として置くことになった。そして、クリスタの父の喪が明けてから二人の婚礼式が執り行われたのだのだが、彼女が着けるジェラルドの亡き母の形見のティアラには彼の額から剥がれ落ちた件の宝石が輝いていたのだった。本編はここで終わり。特典のSSはベルヴェルグ家と懇意にしている侯爵夫妻のルビー婚の祝賀会に呼ばれた二人の帰りの馬車でのやりとりが描かれています。7年近く前のお話のせいか、割と初期テンプレな貴族もののTL小説って印象ですね。その中にファンタジー色も加味して、上手く内容を膨らませていたと思います割と序盤からジェラルドがクリスタに惚れてたせいか、思いが通じ合うまでの間悶々としてる様が面白い。外見は凄くクールなのにw悪人達の落とし所としてはこんなとこかなぁと。最後の最後でデボラの生い立ちが明かされたけど、女優の夢破れて苦労した挙句に金の亡者になったっぽいって補足は特に要らなかった気も(^_^;)死体は見つかってないから、案外しぶとく生きてたり。異母妹は思ってたより悪い子じゃなかったんで、新しい地で幸せになってほしいですね。評価:★★★★☆設定といい、読み応えあるお話でした。
2022.02.19
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2024年9月刊ロイヤルキス著者:イチニ(敬称略)「僕は前世で君を殺したんだ」父親が詐欺に遭い、家族が路頭に迷いかけた男爵令嬢・サラは、自らの結納金に一縷の望みをかけ、結婚を決意する。結婚相手を探しに出かけた夜会で、眉目秀麗だけれど冷淡だと有名な伯爵・フェリクスと出会う。初対面にもかかわらず、彼は涙ながらに前世の夫だと言って求婚してきて……。戸惑うサラに「どうか今世で罪を償わせてほしい」と懇願してくる。結婚生活が始まってもなお、彼の話を信じられないサラだったが、やがて想像を越える「前世」の全貌を知ることになって……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 サラ=男爵家の長女。家のために結婚を決意した。フェリクス=伯爵家の跡取り。サラを見初め求婚する。カチェリア=サラの前世。悲劇の王妃と呼ばれている。アンドレイ=ラーグリマ王国国王。フェリクスの前世。 モラン=サラが家庭教師をしていた令嬢の父親。 ニコラ=サラの歳の離れた弟。男爵令嬢のサラは、ある決意をもってバイヤール伯爵家の夜会に参加していた。彼女の目的はズバリお金持ちの独身男性を射止めること。結納金を弾んでくれて実家に援助してもらえるなら容姿は問わない。とはいえ、暴力を振るうような輩は遠慮したいが、それ以外は目をつぶる。そう意気込んで来たのは良いものの、サラの生家・タンジェ男爵家が詐欺に遭いかなりの負債を抱えているのは社交界に知れ渡っている。彼女の美しさに惹かれ声を掛けて来る者もそこそこいたが、その人気に嫉妬したのかとある令嬢に難癖を付けられた挙句突き飛ばされたサラは見るからに高級そうなワイングラスをいくつも割ってしまい顔面蒼白。これ、もしかして弁償しなきゃいけない?内心パニックっていたサラは騒動を聞きつけて現れたバイヤール伯爵の一人息子のフェリクスに助け起こされたが、彼は何故かサラを凝視している。あの?と声をかけるとすぐに我に返った彼に別室に連れて行かれたサラがグラスの件を謝ると実は私にもやり取りが聞こえていたのであなたに非が無い事は判っていますとキッパリ。逆にあの令嬢、永遠に社交界に出られないようにしてやると恐ろしい事を呟いていたので慌てて止める羽目に。それにお金目当てで結婚相手を探していたのは本当ですから。そう呟くとサラの家の事情に思い当たったのか、フェリクスはなら私と結婚しましょうとプロポーズ。勿論、結納金も弾むし、負債も全てうちが払いますと続いた話に、正気ですかっ!?と堪らずツッコんだ。すると妻の実家の危機を助けるのは当然ですと涼しい顔。しかし、すぐにこれくらいじゃ、前世の償いにもならないけれどと悲しげな表情を浮かべた。僕はね、前世の罪を償いたいんです。かつて僕は妻を不幸にした挙句若くして死なせてしまった。今夜偶然にもカチェリアの生まれ変わりであるあなたに会えたのはきっとそのためでしょう。滔々と語るフェリクスには悪いが、この人頭大丈夫?妄想と現実を混同しちゃってるのね、きっと。だが、正直この妄想に付き合いさえすれば爵位返上もせず屋敷と工場も手放さずに済むのだ。顔は美形だし貿易商を営むバイヤール伯爵家は王国有数の資産家だ。上手くすれば援助も見込めるかも。少々罪悪感はあるものの、求婚に応じたサラだったが。翌朝目覚めるとあれは都合の良い夢だったのではと思う。素面っぽい顔をしてたがフェリクスが酔っぱらってなかったとは断言し難い。期待して式はいつにしましょうかと尋ねて何のことだと追い出される可能性も。無駄な期待をさせても申し訳ないと家族には黙っていたのだが、昼前にフェリクスが直々に婚約の誓約書を携えて現れたので屋敷は騒然。両親からは前もって言いなさいと怒られはしたものの、彼からの申し出で工場を畳まずに済んだだけでなく借金の肩代わりをして貰えることを申し訳なく思いつつもホッとしていた。詐欺に遭ったのはお父様のせいじゃないのに、ずっと気に病んでいたから。そういえば、私がお嬢様の家庭教師を務めていたからってお父様のモラン伯爵が困ったことがあればと何かと気に掛けてくれていたっけ。口さがない者たちも実際多いが世の中捨てたもんじゃないと思う。その後、話はトントン拍子に進み、フェリクスの希望でひと月後にはサラは彼と結婚し、バイヤール伯爵家で暮らしていた。その頃には義父は病を理由に息子に家督を譲り、現在義両親は領地で悠々自適の生活を送っている。必然的に女主人として屋敷の采配を振るうことになったわけだが、頑張ろうと思っていた矢先フェリクスから君は君らしく自由でいてくれと言われ何もさせてもらえない。暇を持て余した彼女は読書にも飽きて、侍女の一人と庭の散策に。離れにあった先々代のコレクションルームに案内されるとそこにあったのはカチェリア・ラーグリマという、今は亡き王国の王妃の肖像画。古参らしい侍女は、その絵は旦那様の初恋なんですよ。と微笑ましく語っていたが、そうか、この人がカチェリア。よくフェリクスが私に彼女の思い出を語っていたけれど、全然私に似てないじゃない。その夜、フェリクスにカチェリアの絵を見たと話せば、何か思い出した?と逆に質問され被りを振った。絵を見て確信したのは彼が度々贈ってくれるドレスや帽子は私ではなく銀髪のカチェリアの方が似合うものばかり。フェリクスが見てるのはいつもカチェリアなんだと。僕は君に愛されなくても仕方ないのだと彼は言う。だって僕がカチェリアを殺したんだから。どういうことなんだろう。こんなに愛していた奥さんを殺したって。これはラーグリマ王国の歴史を徹底的に調べた方がいいかもしれない。確か、20年ほど前に統合されて無くなった国だったはず。彼の前世というアンドレイ国王とその妃のカチェリア。彼女が何故悲劇の王妃と呼ばれるようになったのかその理由を知らなければ。結婚して一ヶ月経った頃、実家の執事から父が病だと手紙が届き、見舞いのため出掛けた彼女は、馭者の裏切りにより、見知らぬ屋敷に軟禁された。そこにいたのはモラン伯爵。サラがフェリクスに出会う数か月ほど前に夫人の不貞が原因で離婚していたモランは、自分も傷心だろうに娘に良くしてくれたからと男爵家の窮状を聞きつけいつでも力になると言ってくれていた。その時は好意的に受け止めていたのだが、なんと彼はサラとの再婚を望んでいたらしい。金が要るなら私でも良かったろうと悔しがっている姿に唖然とした。そしてフェリクスと離縁して私と結婚しようと詰め寄って来たので恐怖を覚え逃げ回ってると侍女から話を聞いたのか不審に思ったフェリクスが乗り込んで来て事なきを得た。実家で働いていた馭者を金で抱き込むとは質が悪い。多少疑念を持っていても信じてしまうだろう。用意周到なやり口に怒りをあらわにするフェリクスに詐欺事件もお前の仕業だなと問い詰められたモランはすぐにボロを出し、真相を知ったサラは彼以上に憤った。どうやら男爵家を追い込み、どうしようもない所で手を貸せばサラが自分に惚れると思い込んでいたらしい。あまりにも幼稚な考えに開いた口が塞がらない。あなたみたいに卑怯な人、どんなに謝罪されたって好きならない!そう断言するサラの言葉にショックを受けたのはモランだけでは無かった。あの事件からフェリクスの様子がおかしい。侍女や使用人たちにサラを見張らせていたのは周知の事実ではあるが、報告だけ受けて当人には会いに来ないのだからいい加減妄想だと気付いたのか。あれからラーグリマ王国のことを調べていたサラは、実家にもそれなりに歴史書があったのを思い出し久々に男爵家を訪れていた。弟のニコラはまだ10歳だが聡明で博識だ。進めてくれた本のおかげでそれなりに判ったことも。カチェリア王妃は30年ほど前に戦争状態にあった隣国の捕虜となり、そこで獄死している。そしてアンドレイは妻の後を追うようにその5年後に病死。そもそもカチェリアの死はアンドレイのせいではないように思う。なのに、どうして彼はあそこまで自分を責めているのか。王妃を助けに行けなかったから?でも戦争中なら仕方なかったはず。一方その頃、サラの「どんなに謝罪されたって好きにならない」という言葉に落ち込んでいたフェリクスは前世を思い出していた。小国の王太子としてチヤホヤされていたアンドレイは、過保護な母親に反発してみたくなり、母お気に入りの公爵令嬢ではなく勝ち気でおしゃまな令嬢・カチェリアを婚約者に選んだ。結婚してからの彼女は姑である王太后のいびりにも耐え、義母より目立ってはいけないといつも地味な装いをしていた。出会った当初のカチェリアの勝ち気な性格が気に入って選んだのに、所詮は王妃になりたいだけのつまらない女だった。キナ臭い隣国の動きに警戒し、日々政務に追われるアンドレイは王太后から不妊を責められる妻の心情など思いもよらなかった。数年後、隣国との戦争の最中、急にスノーボールの花が見たいから旅行に行きたいと言い出した彼女に呆れつつ許可を出したアンドレイは、その数日後カチェリアが隣国の兵に捕らわれたと聞いて驚愕。恐らく王妃の命と引き換えに降伏宣言を出させるつもりだろう。国民のためにも降伏は出来ない。アンドレイは密偵を送り妻に自決を命じていた。ああするしかなかった。しかし自分が彼女を殺したのは間違いなく、戦争に勝利しても心には穴が開いたまま。やがてアンドレイはカチェリアの日記を見つけ、彼女が妊娠していたのを知る。そんな彼女に私は自決を命じたのだ、母から酷いいびりを受けていたのも見ないふり、話を聞いてもやれなかった。しかし、日記からカチェリアを唆して旅行に連れ出した者の名も判り処罰は出来た。それでも悔やんでも悔やみきれず、やがて肺を患った彼は従兄弟に王位を譲ったのちに亡くなり、フェリクスに転生。彼の祖父が購入したカチェリアの肖像画を見て前世の記憶を思い出したのだった。アンドレイのしたことは謝っても到底許してもらえることではない。なのに、彼女の生まれ変わりのサラにいくら尽くして謝罪の言葉を言おうが好きになってくれるはずが無いのだ。あの日からサラの顔がまともに視れず思わず避けているのはそのせいで、それを不満に思われているのも知っている。だが、どんな顔をしたらいいのかわからない。その夜、帰宅したサラはフェリクスの部屋を尋ねると、私たちもっと互いのことを話しましょうと口にしていた。ニコラが言ってたんです。ちゃんとお互い知ろうとしなければ誤解を生むだけですよって。私もその通りだと思うし、言いたいことがあるならためらわず言って欲しい。彼女の言葉に君に聞いて欲しい事があるんだと、フェリクスは前世での罪を語り出し・・・。転生ものです。前世で非業の死を遂げた王妃とその夫である国王が生まれ変わって巡り会い夫婦になるも、夫の方は前世の記憶を覚えていてその罪の重さに苦しみます。愛しい妻の生まれ変わりに会えたのはいいけれど、自分は彼女に愛される資格はあるのか。ストーカー紛いのモラン伯爵の卑怯な手に憤っていたサラの言葉はフェリクスにも刺さるもので、思い悩んでいた彼でしたが、ニコラの言葉に後押しされたサラの方から歩み寄ってくれたことで、彼はアンドレイの罪を包み隠さず語って聞かせます。資料では知り得なかった事実は想像よりも残酷でしたが、それでもカチェリアはアンドレイが好きだったし恨んでなかったと思いますよ。そうサラに言われて漸く彼の気持ちは晴れ、相変わらずのサラ大好きっぷりに周りを呆れさせながら幸せな日々を送っていました。半年後、久しぶりの夜会に夫婦で参加したサラは酷い靴擦れに。応急処置をしてくれたフェリクスの姿を見てカチェリアとアンドレイの出会いの場面が脳裏に浮かんだと思ったら彼女の脳裏に次々とカチェリアの記憶が。想像でしか無かったはずの彼女の想いは私の思う通りだった。フェリクスに告げると彼は涙をこぼし、産まれるはずだった子もどこかで生まれ変わっているといいなと呟いて物語は幕。前世のカチェリアの日記の件とか読んでる時点で結構泣けてしまう内容だったんですけど、ラストでまたしても( ;∀;)でも多分これねぇ、カチェリアのお腹にいた子はとうに生まれ変わっていて、それがニコラのことだと思うんですよ。二人が仲直りできたのもこの子のアドバイスのおかげだし。そう思うとまた泣けちゃうんですけど、とにかくいい話でした。ゲームとか本に転生のチート物より好きな内容かも。評価:★★★★★
2025.08.25
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2025年11月刊ベリーズファンタジー著者:秘翠ミツキ(敬称略)「君を抱くつもりはない」--初夜にそう告げられた伯爵令嬢エーファ。完璧な姉と比べられ、出来損ないと蔑まれてきた彼女は、姉の死後、姉の夫だった公爵令息マンフレットの後妻となる。愛のない結婚と割り切り、最低限妻の役割を果たそうとするエーファだったが、夫は予想外の行動にでてーー!? さらに姉の死の隠された真実が明らかになると、エーファを虐げていた家族は転落の一途をたどることに…。一年後には出ていくお飾り妻なので、あなたの愛は求めません! 不遇令嬢がまさかの幸せを掴む、白い結婚から始まる愛され大逆転ファンタジー! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 エーファ=姉の死によって初恋の人の後妻になった伯爵令嬢。 マンフレット=次期公爵家当主でエーファの夫。ブリュンヒルデ=エーファの姉。故人。 レクス=マンフレットの友人。 リューク=マンフレットの弟。才色兼備の姉と跡継ぎの弟ばかりを可愛がり、いつも両親から除け者にされて来たエーファ。そんな彼女の結婚が決まった。お相手はヴィダル公爵家の跡取りのマンフレット。姉・ブリュンヒルデの夫だった人だ。実は、結婚半年で姉は不慮の事故に遭い亡くなっていた。両親はあんなに姉を可愛がっていたのに利用価値がなくなったと知るやその死を悼むことなく、ヴィダル家からの援助が打ち切られてしまうと大慌て。数日後、まあお前でもいいか、と気を取り直した二人は状況を飲み込めないままのエーファをヴィダル邸へと送り付けた。公爵夫妻も承諾しているらしく、本人の意思関係なく進められたこの再婚にマンフレットは不機嫌さを隠しもしなかった。初夜の際、彼はエーファにこの結婚が不本意なものであること、そして「君を抱くつもりはない」ときっぱり。自分が家督を継いだら離縁してもらうとも言われやるせない気持ちに。マンフレットさまは姉を溺愛していたと聞くから私をお気に召さなくても当然ね。多少は面影があるからきっと受け入れられるはず、とにかくお前は不興を買わないよう誠心誠意尽くせと母に言い含められているけれど、努力したってどうにもならない事がある。きっと今でもお姉さまのこと忘れられないのね。話は終わったとばかりにさっさと自室に引き上げて行く彼を見送ったエーファは知らず涙をこぼしていた。とんでもない姉妹格差で育てられたせいか、姉とはあまり交流もなかった。それでも幼い頃は両親に蔑ろにされていたエーファを気遣い、姉がこっそり髪飾りをくれたこともあった。しかし、母にエーファが盗んだと誤解され酷い折檻を受ける羽目になり、以降、姉から話しかけられることは無くなった。今思えば、それも姉の気遣いだったのだろう。下手に施しをすれば妹の方が怒られると。姉妹だと言うのに遠い存在となり数年後、その姉がエーファの初恋の人に嫁ぐと決まった時は悲しくて一晩中泣いたものだ。顔も悪けりゃ頭も悪い出来損ない。公の場に出る度に話のつまみのようにエーファをけなす両親のせいでたまに表に出ると謂れのない悪評が立っていた。マンフレットは、そんな噂を鵜呑みにしない稀有な人物で、令嬢達に虐められている時、間に入って助けてくれた。その毅然とした態度と美しい顔に恥ずかしくも一目惚れしまったエーファの遅い初恋であった。あの方は覚えてもなかったけれど・・・。きっと家族揃っての恥知らずと思われているはずだ。いくら公爵夫妻の了承があったとて、ブリュンヒルデが亡くなってすぐ代わりにと妹を寄越したんだもの、嫌われて当然。せめて一年後の離縁くらい潔く受け入れなくては。数日後、何だか朝から騒がしい。何事かとここに来てから親身に世話をしてくれている侍女のニーナを呼び止め事情を聞くと何と屋敷で風邪が流行り使用人の半分以上が寝込んでいるのだそう。厨房もてんやわんやでニーナも手伝いに行くところだったと言う答えに「私も行くわ」と腕まくり。寝込んでいるシェフの代わりに手際よく料理を仕上げていくエーファを見て皆もビックリ。実家にいた頃は両親があんななので使用人からも軽んじられていた。自分でやらなければ食事も出ない日もあったりで自然と料理の腕も上がっていた。何とか先にマンフレットの朝食を出してもらい、次は自分含め使用人たちの食事作りに取り掛かる。寝込んでいる者たち分の粥も作り終えると尊敬のまなざしで見られている。邪魔でなければ皆が復帰するまで手伝うと告げると大層喜ばれた。一方、マンフレットは大嫌いなニンジンがやけに多く入っている朝食に眉をひそめた。当然、シェフなら心得て入れないはずの食材に執事のギーにどういうことかと尋ねるとシェフを含め使用人たちの半数以上が寝込んでいると言う。その上、今回の朝食は奥様が作られましたと信じられない答えにマンフレットはギョッとして伯爵令嬢が料理!?と目を剥いていた。相当な手際の良さだったそうですよと褒め称えたギーは勿論残すなんて真似なさいませんよねと圧を掛けて来たので、仕方なく口に運ぶ。予想よりは食べやすかったが何でこんな目に。綺麗に食べ終えた皿を片付けながらの「奥様は他の仕事も手伝いたいと仰るのでお願いいたしました」ギーの言葉に再び驚き、席を立ったマンフレットは慌てて部屋を出て行く。その行動をギーに微笑ましく思われているとも知らず、廊下を走っていた彼は厨房から明るい笑い声が聞こえて思わず身を潜めた。侍女やメイド、厨房の下働きたちに囲まれたエーファが楽しそうに笑っている。ブリュンヒルデが女主人だった時、彼らはこんなに人懐こかったろうか。そもそもマンフレットは仕事にかまけて妻と接していなかった。結果、ブリュンヒルデを追い詰め、愚かな行動に走らせてしまったのは自分自身なのだと思い知らされただけ。そっとその場を離れ黙々と仕事をこなす主人に何か言いたげのギーを無視しているとお茶の時間だと執事が差し出したのは見たことのないケーキ。これも奥様のお手製のキャロットケーキです。にっこり微笑む執事に唖然。旦那様はニンジンが大好物だとお伝えしたので、毎食取り入れると張り切っておられました。という報告を受け、勘弁してくれと頭を抱える。ヘタレな主人に業を煮やした執事の意趣返しに辟易としつつも、ふと疑問を覚える。ギーによれば掃除の手際も良く、洗濯もお手のもの。庭仕事も説明を受けるとすぐ覚えたと言う。ブリュンヒルデは令嬢の中の令嬢と言った雰囲気だったが、その妹のエーファが家事全般得意とは。違和感を覚えた彼はそれとなく本人に探りを入れるかと考えていた。その機会は案外早く訪れた。ある日の夜、エーファは一匹の子ネコを保護。怪我をしており親にも見放されたようだから飼わせてほしいと頼まれ、マンフレットは俺の前をちょろちょろさせないならいいと許可した。そう言えばブリュンヒルデが嫁いですぐのこと、メイドが同じくネコを保護し飼いたいと彼女に頼んだが、そのまま同じところに置いて来いと厳しい命を下していた。近くに親ネコがいるかもしれないからという理由は尤もでマンフレットも同じ判断を下したはず。当時のことを思い出し、姉妹でも随分違うんだなと呟く。子ネコはエメと名付けられ手当てを受け十分な栄養を採るとすぐに元気になった。あれほど言ったのにあちこちウロチョロしているエメにため息を吐きつつ、エーファが楽しそうだからいいかと思う。苦手のニンジンを克服しつつあるのをギーが喜んでいるのも癪だが、最近エーファのことが気になって仕方ない。悪友のレクスが彼女に興味を持ちしょっちゅう入り浸っては話をしているのを苦々しく思い、いい加減にしろと釘を刺して追い出した。それから二ヶ月ほど経って、懇意にしている侯爵家の夜会に夫婦同伴で参加した日のこと、エーファが姉を殺して公爵夫人の座を奪った悪女という根も葉もない噂を耳にしてマンフレットはブチキレ。同じく参加していたレクスも何一つ真実を知らないバカ者どもと憤っていた。エーファは姉の死の真相を何も知らされていない。両親はお前には関係ないの一点張りだったから。でも、こんな風に世間では思われていたなんて。暫く元気のない彼女のためになるべく食事を共にしていたマンフレットはエーファのテーブルマナーがおぼつかない事に気付いた。見ていられなくて少し手ほどきをしてやり、照れもあってこの程度できない様ではと余計な一言まで口走ってしまった彼は失言してしまったとすぐに気付いて青ざめた。後ろに控えている使用人たちの冷たい視線に戸惑い、ギーにマナー講師の手配を頼んだ。数日後、屋敷に現れたのはレクスでばっちり覚えてあいつをギャフンと言わせようと張り切っている。マナーだけでなくダンスも教えてくれてここ数か月でかなりのことを覚えた。その成果を見せたくて久々に食事を共にしたら、マンフレットに褒められ笑みがこぼれる。レクスには感謝してもしきれない。その席でそう言えばとレクスが切り出したのはエーファの誕生日のこと。ご褒美に奮発するからと希望の品を聞かれ、マンフレットも耳をそばだてた。すると「ただおめでとうと言って欲しい」という意外な答えに二人とも目を丸くする。マンフレットの部屋に呼ばれたレクスはさっきの話どう思うと聞かれ、兼ねてから考えていたことを口にした。ブリュンヒルデ嬢の誕生日は毎年派手に祝われていたし何度か招待されたことがあるものの、エーファの誕生日については耳にしたことが無いと。そもそも両親が次女を悪し様に吹聴してるのもあってブリュンヒルデの死と今回の結婚に関しても世間でのエーファの印象は頗る悪い。なんであそこまで見下すかねぇ。彼女はあの女よりよっぽど出来が良いのに。レクスが言うにはエーファはとにかく物覚えが良く、理解力もすこぶる高い。もはや天才の域だと。出涸らし扱いしていた次女の方が実は逸材だったと気付かないソブール伯爵夫妻の目はとんだ節穴だ。取り敢えず、ブリュンヒルデの件はお前だけが悪いんじゃない。エーファを大事にしてやれとレクスから発破をかけられ、誕生日がチャンスと策を練った。そして誕生日当日、幾人ものアドバイスを受けエーファをデートに連れ出し、屋敷ではパーティーの準備を進める。この席で彼女にプレゼントを渡し、離縁の話は撤回して改めてプロポーズしよう。そう決心していた束の間、レクスから花束を受け取る彼女を見て嫉妬したマンフレットはまたしても失言をしてしまい、エーファは泣きながら飛び出してしまった。ニーナとギーが宥めて今は落ち着いて部屋にいるようだが閉じこもって出てこない。呆れ顔のレクスからまぁ俺も悪かったよと謝罪され、彼もまたエーファに惚れていたこと、とっくの昔にフラれていたと白状した。本当ならじっくり時間をかけて謝り誤解を解きたいところだが、爵位継承式が近づきその準備のため一度領地に帰らねばならない。このままひと月も屋敷を開けて大丈夫だろうか。ドア越しに謝罪と共に領地に行くことを告げ、ギーに渡せなかったネックレスを託した。一方、エーファは離縁の日が近い事もあっていい加減この態度は良くないと漸く部屋から出て来た。ネックレスを受け取って首に掛けると荷物の整理を始める。そんな最中、屋敷にマンフレットの弟・リュークが訪れた。ギーがあなたはこの屋敷を出禁になっているはずですと追い返しているのを見て、疑問に思っているとエーファの顔を見たリュークが初めまして義姉さん、とギーを押しのけ入って来る。ずっと会ってみたかったと微笑まれると追い返すわけにもいかず、応接室に招き入れた。それからというもの二、三日おきに屋敷を訪れ数時間居座って行く。何か言いたげなギーを不審に思いどうしたのか尋ねれば私の口からはと押し黙ってしまう。ただ、マンフレットに使いを出したので返事が来るまでの辛抱とのこと。そしてくれぐれもリュークには気を付けて欲しいと忠告を受けた。だが、マンフレットが戻るまであと一週間に迫った日、リュークはエーファを連れ出し・・・。ドアマットヒロインの健気さにコロっと絆されるヒーローのお話です。不器用過ぎる性格のせいで前妻とも上手く行かず、両親の命令で後妻を迎えるもその子がいい子過ぎて戸惑います。そしてさほど時経たずに彼もヒロインに想いを寄せるようになるんですが、朴念仁な彼は失言の連続で不本意にも彼女を傷付けてしまい周りがヤキモキする中、彼は一時屋敷を離れることに。その間、エーファはマンフレットの気持ちも知らぬまま、時が来たら屋敷を出て行けるよう荷物を纏め始めていました。そんな最中現れたマンフレットの弟・リューク。人懐っこい彼とすぐに打ち解けたけれど、ギーを始め使用人たちはリュークに思う所がある感じ。この状況にマンフレット宛に使いを出し返事を待っていたら、手を打たれるのを察知してリュークは行動に移します。そこはかつて彼がブリュンヒルデとの密会に使っていた場所。なんとリュークとブリュンヒルデは不倫をしていたのです。朴念仁な夫に不満を持っていたブリュンヒルデは明るい性格のリュークに安らぎを求め、いつしか人目もはばからず屋敷でもいちゃつき始めていました。マンフレットが留守中のことだったので妻が死ぬまで彼は気付いてなかったようですが、そりゃ弟は出禁になるわ。しかも、ブリュンヒルデはリュークの子を身籠っており、彼女に結婚を迫られたリュークは駆け落ちの話に不承不承頷きます。が、彼は待ち合わせの場に行かず、向かっていたブリュンヒルデの乗っていた馬車は事故で転落してしまうのでした。ことの顛末に公爵夫妻はカンカン、評判の令嬢と聞いたから嫁に迎えたのに!とソブール伯爵たちを責め、リュークのことは謹慎扱いに留めていました。援助を打ち切られたら立ち行かないと代わりに差し出したのがエーファで、マンフレットは彼女を気の毒に思っていました。離縁を言い出したのはエーファのため。まぁ結局惚れてしまったので撤回する気満々でしたけどw元々リュークは出来の良い兄を妬んでいて、ブリュンヒルデを唆したのも腹いせでした。なのにまた嫁を貰ったからそいつも横取りしてやろうと機会を窺がい決行するも、エメの活躍で時間稼ぎができて急ぎ帰って来たマンフレットが間に合い事なきを得ます。追い詰められて真相を暴露したリュークがブリュンヒルデを顔だけのバカ女と罵ったのでエーファがガチギレ。お姉さまを馬鹿にしないでとリュークを張っ倒すのでした。その後、リュークは公爵達にも見限られて知り合いの工房に下働きとして放り込まれ、エーファは姉のことも追い込んでいた両親と絶縁。新たに当主となったマンフレットはソブール家への援助を打ち切るのでした。騒動後に、彼はエーファに真摯に詫び自らの想いを打ち明けて本編は幕。おまけの番外編はエメに降りかかった災難という小話でした。一応ザマァ要素もあったのでそれぞれ痛い目に遭って良かったです。物語の功労者はレクスとエメかなぁ。今回はフラれちゃったけど、彼にもいい出会いがありますように。評価:★★★★☆
2026.01.04
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2026年5月刊ムーンドロップス文庫著者:このはなさくや(敬称略)突然獣人の国に迷い込んだ小百合は、自分を助けてくれた男と衝動的に一夜を共にし、やり捨てられてしまう。その後小百合の妊娠が発覚、白虎の子どもを出産する。三年後、リリーと名を改めた小百合は、隣人たちの助けを借りながら、一人で息子のブランを育てていた。そんなある日、ブランの父親であるムスタが再びリリーの前に現れて…。孤独なふたりがすれ違いを乗り越え本当の家族になるまで。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 水瀬小百合=突然異世界転移してしまった社畜OL。 リリーの名で宿屋の食堂で働きながら息子を育てている。 ムスターファ=金色級の冒険者で白虎獣人。ブランの父親。 ブラン=ムスタとリリーの息子。ダリ&カミーラ=宿屋「クマル亭」を営む熊獣人の夫婦。 イスハーク=ムスタの二番目の兄。 ルウルウ=ムスタの従姉妹。獣人国エゴンの辺境にあるグランノットにある宿屋「クマル亭」の食堂で働くリリーは女手一つで息子を育てるシングルマザーだ。獣人国で数少ない人間の彼女は目立つ。素性の知れないリリーに職を与えてくれたのはこの宿屋の経営者夫婦のダリとカミーラであった。今日は朝から忙しく少々残業になってしまったと詫びられ、ブランに食べさせてやんなとミートボールを持たせてくれた。いつもありがとうと礼を言い、急いで向かった先はアパートのオーナー・フランソワの家。ただいま、ブラン、と声をかけると元気いっぱいの息子が元気に駆け寄ってくるのを抱きしめ、いい子にしてた?と微笑む。ご機嫌のブランは舌足らずながら今日あったことを話し、ご機嫌なのか頭部にちょこんと虎耳が現れる。いつ見ても可愛い。ブランの頭を撫で、フランソワに礼を言って近くに建つアパートへ。この世界に突然飛ばされて来て四年になる。ブラック企業に勤めていた水瀬小百合が珍しく早く帰れた日、横断歩道を渡っていたら信号無視の車が突っ込んで来た。咄嗟に横を歩いていた塾帰りらしい小学生を突き飛ばすとそのまま意識はブラックアウト。気付くとそこは森の中。見渡しても人っ子一人おらず、茫然としていると野生の獣に襲われ逃げ惑った。そこを救ってくれたのは通りがかりの獣人の冒険者・ムスタ。状況が理解できず、小百合はムスタを頼り誘われるがまま宿屋へ。抵抗したものの妙な感覚を覚えて初めてだと言うのにそのまま彼を受け入れてしまった。その際、やたらと名前を聞かれた気がする。しかし、水瀬小百合だと何回か教えたのに段々彼の機嫌が悪くなっていき、腹いせなのか項をきつく噛まれた。目覚めるとムスタは既にチェックアウトしており、自分はやり捨てられたのだと茫然。この宿こそ「クマル亭」で事情を話すとダリとカミーラはムスタに対して最低だと激怒していた。そして行く宛てが無いのならとうちで住み込みで働かないかい?と誘ってくれたのだ。妊娠に気付いたのはそれから暫く経ってからのこと。幼い頃に両親を亡くし、孤独だった自分に出来た初めての血を分けた家族。人間が獣人の血を引く子を生むのは命がけではあったが実際ブランを産んだ時、難産で彼女は死にかけた。それでも我が子は可愛い。銀髪に青い目を見る度にムスタの面影が蘇るけれど、自分一人ででも立派に育ててみせる。幸いにもカミーラたちやフランソワのおかげで何とか食べていけている。心配なのはブランが希少な白虎だということ。白もちと言われる獣人は金になると誘拐の危険があるそう。絶対に一人で歩かせるなと口を酸っぱくして注意され、働いている間はフランソワの好意で預かってもらえて助かっている。それに、まだ三歳だというのに流石は虎。走り出したらもう小百合の足では追い付けないし、暴れられたら抑えることも難しい。先行きの不安が彼女の頭を悩ませていた。そんなある日、王都からイスハークと名乗る騎士がやって来た。なんでも人間の女性への聞き取り調査に来たらしい。獣人同士は子供が出来にくく、跡継ぎ問題が深刻化しているそう。だが、人間の女性ならば獣人の子を妊娠しやすいのだと言う。そこに目を付けた人身売買組織が各国から若い女性を攫っているらしい。被害者ならば保護するから、リリーにも話を聞きたいんだってさ。カミーラの言葉に眉を潜めるも、正直に事情を話せばいいよと励まされ彼女は頷いた。翌日宿屋に訪れたイスハークを見てあの人に似てる、漠然に思った。彼も虎獣人だからだろうか。聞き取り調査は簡単なものだった。自分は攫われて来たのではない、ここから遠いニホンという国から来たと話せば事件性は無いと判断したらしい。日暮れだったから送ってくれるというので戸惑いつつお願いする。途中、息子を引き取ると道中彼はブランと遊んでくれた。甥っ子たちの世話で慣れていると微笑む姿はやっぱりあの人に似ていた。イスハークはブランを見つめて、白持ちは本当に珍しいとしみじみ語った。聞けば彼の弟も白持ちなのだと言う。それで放っておけなくなったのか、失礼ですが、と前置きこの子の父親は?と尋ねた。躊躇いつつも余計な疑念は抱かせない方が良いと判断してこの子を授かった経緯を話すとイスハークは激怒していた。虎獣人は家族と恋人を大事にするそうで、ムスタの行いは一族の恥だと息巻いている。もしよければ王都に来ませんか?意外な言葉に驚いていると、いずれこの子はあなたの手に負えなくなる。虎族は群れの習性から他人の子どもも自分の子のように接し教育するのだと言う。あなたのことも一族で保護するとも。王都は遠い、カミーラたちと離れてこの人達の所へ赴くのは決心がつかない。お気持ちはありがたいのですが・・・。断った彼女にイスハークはいつでも頼って欲しい。そう言って帰って行った。一週間後、フードを被った冒険者らしき出で立ちの男が来店。席に案内しようとしてリリーは息を飲んだ。慌てて厨房に駆け込み、あの人が現れたと報告するとカミーラはどの面下げてと眉を吊り上げいつのまにやら入り口に立っていた彼に猛抗議。間の悪いことにフランソワに連れられたブランまで顔を見せ、正に万事休す。その子が、感慨深そうな彼に一層怒りが湧いたが、ここで騒ぐのは拙い。カミーラが臨時休業にしてくれて店の奥まったテーブルに腰かけ今更現れた言い分を聞くことに。兄から聞いて・・・。やっぱり、似てると思ったのよね。どうやらイスハークはムスタの兄らしい。訳あって家を出ている彼は騎士団から管轄外の仕事も請け負っていると言う。いつものように御用聞きに向かうとイスハークから烈火のごとく怒られた。何事かと問えば、お前が求婚印を付けたクセにポイ捨てした女性がその時授かった子供を一人で育てていた、最低な事をした自覚はあるかと責められ愕然としたのだそう。決め手はブランの容姿と父親も白持ちということ。そして求婚印から漏れ出る魔力。その時は言及されなかったが、イスハークは確信があったのだろう。それ以前に自分が求婚印とやらを付けられていたとは。その印は所謂マーキングで、白持ちの魔力はすさまじい。後からカミーラに聞いたらあれがあったら番のいる獣人以外は怖くて近寄れないらしい。何故かやたらと若い男性客から遠巻きにされていた理由が判ってガックリ。まぁ、恋人が欲しいわけじゃなかったからいいけど、勝手にそんなものつけておいて放っておくとか酷くない?どうやら彼なりに事情があったみたいだが、それならそれで何か一言位あってもいいはず。彼女の怒りは尤もで、平謝りのムスタはどうか俺の実家に来て欲しいと頼んだ。ブランは白持ちだけでなく虎の姿にも変われる更に希少種らしく、相応の教育が必要なのだとか。虎のことは虎族が担う。彼の両親も責任を取らせてほしいと懇願しているようで、困り果てた彼女はカミーラたちを見た。彼らも私らは熊獣人だから確かに虎の習性は判らないからねぇと肩をすくめる。一先ず、あちらで暫く暮らしてみたらどうだい?とアドバイスされ渋々頷いた。数日後、リリー親子とムスタは王都へ旅立った。兄から彼女の状況を聞いてからというものムスタはひたすら後悔している。侯爵家の息子で白持ちの彼との結婚を望む一族の女性のせいでエライ目に遭った彼は他人を信用できなくなり、心配する家族に迷惑をかけたくなくて家を出た。そして冒険者になって十年、彼は運命の番である小百合と遭遇。見たことのない服装にかかとの高い靴。まさか自分の番が娼婦だなんて、どこか静かな所で休みたいのだと誘われ、浮かれていた気持ちが見る見る萎んでいく。それでも大事な番、こうなったらすぐにでも印をとその儀式に必要な名を尋ねれば水瀬小百合なんて偽名を名乗る始末。腹が立って印だけ強引に付けて翌朝彼女を置いて来てからモヤモヤしていた。兄からどうして印をつけて置いて行ったのだと責められ娼婦だと思ったのだと答えれば兄は天を仰いで、お前がこれほど愚かだとはと心底呆れている。彼女は別の国から来たばかりでただ戸惑っていただけだと聞かされムスタは茫然。勘違いを含めて彼女と息子をこの家に置いて欲しいと頼んだら父はもっと怒っていた。とにかく、リリーさんに許しを貰ってからよ、母にも厳しく言われなんとか王都に来ることだけは承諾してもらった。後は自分の過ちを何度でも詫びて誠意を見せるしかない。数日の旅を経て実家に着くと家族総出で二人は出迎えられ、手厚い歓迎を受けるとリリーは戸惑っていた。長兄の子供たちとすぐさまブランは仲良くなったので虎族の習性については遊びながら学んでいくことだろう。反省しているのが伝わったのか暫く経つとリリーの態度も軟化してきたように思う。しかしそんな最中、噂を聞きつけて屋敷を訪れた従姉妹のルウルウがリリーに敵意を向けて・・・。異世界転移してすぐに危機に陥った小百合を救ったのは銀髪の獣人・ムスタ。しかし、やり捨てられた上に後に妊娠が判明し、周囲の人々の助けを借りて女手一つで息子を育てていました。時は流れ、とある偶然から一人の騎士と知り合いそれがなんとムスタの兄。イスハークの話で自分はとんでもないことをしてしまったと猛省した彼は番になった彼女との結婚を望むも小百合はムスタを許すことが出来ずにいました。まぁ、状況からしてこれは当然。ぶっちゃけムスタのあの時の行動は人でなしすぎますもん、なので親子を見守っていたカミーラたちや、ムスタの家族もおいおい何てことしてくれたの、と彼を厳しく叱責。小百合の方にも誤解される要素があるにしても依然として悪いのは99%ムスタの方です。なのでもうひたすら謝るしかないわけです。そんな中現れたのは昔からムスタに惚れていた彼の従兄弟のルウルウ。皆の留守中、白持ちの母ならもっと体力つけないとだめよ、と訓練に誘いハプニングを装って小百合に大けがを負わせてしまいます。ルウルウはポーションがあるから死にやしない、治ったら怖くなって逃げだしてくれれば御の字と目論んでいましたが、小百合は異世界人の弊害かポーションが効かない体質でした。出血多量でぐったりする彼女を見てムスタは暴走し、という展開です。番ならではの効果で小百合も生還しムスタの暴走もおさまるんですが、何してくれてんのこの娘。騒動が落ち着いた頃、ルウルウは厳しい罰を受ける羽目に。意識が無い間、小百合は夢を見ていました。両親が存命中、熱を出した彼女に二人が看病してくれた。その時、母が呼んだ名前は・・・。実は水瀬小百合というのは遠縁に引き取られてから付けられた名で、それも自分の娘がユリというからという理不尽な理由。四歳までの名は白石ゆり。それこそが彼女の本当の名。それを思い出した彼女はだからあの時ムスタが釈然としていなかった理由に思い当たり、彼に本当の名を告げるのでした。この名前への言及が作中何度かあったので、おそらく何かあるんだろうなと思ってたらなるほど~~。誤解が解けたのもあり、ゆりも結婚に承諾して〆。おまけの番外編ではユリはか弱いからとやたらと過保護に接するウルド家の人々にゆりが辟易するというエピソードでした。そりゃ、虎の獣人に比べれば人間の女性はか弱く見えるよね。微笑ましいお話で最後の最後で漸く仲の良い二人の様子が読めて良かったです。評価:★★★★★
2026.07.21
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昨日(7月22日)までに購入した本です。ヴァニラ文庫6月刊 蜜猫文庫6月刊2点。オパール文庫7月刊そう言えば、この作家さんの5月刊を未だに買えてない(^_^;) ベリーズファンタジー7月刊2点。7月のこのレーベルはまだあと1,2点買うはずのものがあったような。レジーナ文庫7月刊マーマレード文庫7月刊 ベリーズ文庫&ベリーズ文庫with7月刊3点。講談社タイガ 7月刊購入だけはしてるんですが、積読消化してたのもあって溜まってます。傷モノの花嫁は、なるべく早めにとは思っているもののいつになるやら。
2026.07.24
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※作者様方のお名前は敬称略にて失礼します。1月下旬 レジーナブックス 愛のない結婚を後悔しても遅い 離縁を望まれたスパダリ令嬢、 溺愛の限りを尽くしたら孤独な公爵令息に懐かれすぎています 空橋彩 アルファノルンコミックス 訳あって、あやかしの子育て始めます 2 日巻メイト/朝比奈希夜2月6日 一迅社ノベルス わたしの創った千年王国2 天才魔術師の自由気ままな転生無双 クレハ2月14日 富士見L文庫 朧の花嫁 五 みちふむ3月2日 TOブックス 聖女に全てを奪われた私の、リベンジライフ 瀬尾優梨4月1日 TOブックス 悪役令嬢グロリア・フォン・コードウエルの断罪と復讐 上、下 万丸うきこ4月10日 マーマレード文庫 たとえ生まれ変わってもあなたに恋をする ~前世で旦那様だった氷の御曹司からの溺愛で、初恋をやり直します~ 滝井みらんもう4月の書籍情報が出ていることにビックリ。
2026.01.06
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2025年4月刊ティアラ文庫著者:真波トウカ(敬称略)転生先で皇帝ラーシュから突然求婚されたシルヴィア。娘に『悪女教育』をしろと言われ戸惑うけれど、彼女が前世に読んだ小説の悪役令嬢だとわかり!?断罪の未来を阻止すべく、奮闘していたら「愛するつもりはない」と冷徹だった夫に変化が…?「お前の蕩けた顔もかわいい」優しく気遣われながらの愛撫。奥深くまで繋がれば、幸せに満たされー。孤独な氷の皇帝の雪解け愛! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 シルヴィア=王子を誑し込んだ悪女として国外追放になった男爵令嬢。 ラーシュ=ローガイル帝国皇帝。シルヴィアを妃に迎える。 アリス=ラーシュの義娘。アンジェリカ=ラーシュの妹。公爵家に降嫁した。 カミラ=アリスの教育係。第一王子の誕生日祝いのパーティーの夜、ルースト男爵令嬢・シルヴィアは国外追放を言い渡された。どうやら私は第一王子を誑し込み、かなりの額を貢がせていたらしい。そんな姉を快く思っていないシルヴィアの弟・スチュアートの告発によって彼女の罪は詳らかにされ、大ピンチ。国外追放なんて、当然家からも勘当されるのよね。それは拙いわ、だって私、ここがどこかも判らないんだもの。中世ヨーロッパ風の装いの人達、シルヴィアと呼ばれた自分も豪華なドレスを身に着けている。もしかしてこれも王子に強請って買ってもらったのかしら。しかも、手玉に取っていたのは王子だけではないらしい。弟の証言によれば他数名からも貢がせその見返りにただならぬ関係を続けていたのだと。森野舞子だった頃は奥手で初めて出来た彼氏も深い関係になる前にフラれていた。そんな自分が恋多き悪女とは。とにかく、私は異世界転生とやらをしてしまったらしい。見覚えのない罪で裁かれるのは悲しいけれど、国外追放で済んだだけマシだと思わなければ。この断罪劇で初めて自分が騙されていたと知った王子はさめざめ泣いていて、足元には彼が用意していたらしい大粒のダイヤモンドの指輪が転がりシャンデリアの明かりを受けてきらめいていた。なんか、ほんとごめんなさい。兵士の一人がシルヴィアの手を引き連れ出そうとしていると、それを止める声が。彼女は我が国へ連れ帰る。そう宣言したのは大国ローガイル帝国皇帝ラーシュだった。しかも、なんと彼はシルヴィアを自分の妃にするつもりらしい。必死に止める宰相の言葉に効く耳持たず、なんと彼は王子がショックを受けて落としたあの指輪を拾い上げ、シルヴィアの左手薬指に嵌めるとニヤリと笑んだ。数日後、シルヴィアはローガイル帝国皇宮にいた。あの指輪の件と言い、どう考えてもシルヴィアに惚れて求婚したとかでないのは判る。一体何のつもりでこんな悪女を迎え入れたのか。初夜なのでこの部屋で待つよう言われたがあの調子じゃ来ないかもね。それならのれで気楽でいいとベッドに寝転がっているとドアが開いてギョッとする。ガウン姿の彼を見て、まぁ一応するつもりはあるのね。内心がっくりしながら身体を固くしていると。その前に話があると言う。ラーシュが告げたのは娘の教育をシルヴィアに任せたいのだそう。しかし、皇女ならば専門の教育係がいるはず。一介の男爵令嬢に教えられることがあるとは思えない。疑問に思っていると、お前に教えて欲しいのは悪女のたしなみだととんでもないことを言い出した。とにかく娘には図太く強かになってもらいたい。その内容にシルヴィアはポカン。この人正気?だが、その顔は至って本気モードで本心で言っているのが判ってシルヴィアは怒りに震えた。おまけに報酬としてお前に世継ぎを産ませてやる。あのバカ王子を篭絡したんだ、それが目的だったんだろ?と押し倒され、ついに彼女はプッツン。シルヴィアの正拳がラーシュの頬に炸裂していた。しまったと思っても後の祭り、あの夜以来ラーシュとは顔を合わせていない。そんなある日、彼女は庭園で皇女・アリスと遭遇。その容姿と名前で、漸くここが前世で愛読していた「恋と情熱のセレナーデ」の世界だと把握。でもこの子が。年齢を聞いたらまだ十歳だと言う。物語のアリスは十七歳だったから、物語の始まる前の世界か。でもこの子、こんなに大人しいのに七年後にはヒロインを虐めその恋を邪魔する悪役キャラになるのよね。しかも色々やり過ぎて処刑されてしまう。もしや、シルヴィアの悪女教育のせい!?ラーシュの依頼でそのまま悪女たらんと教え込まれた結果があの最後なら可哀想すぎる。全く何考えてんのよ、あの男。可愛い娘が死んでもいいわけ?一層怒りを募らせたシルヴィアはアリスの手をガッシリと握ると先日輿入れして来た皇妃よ、仲良くしてねと微笑んだ。中庭から聞こえる笑い声に目線を向けるとシルヴィアとアリスが楽しそうにおしゃべりしている。仲良くなったのはいいが悪女教育しているようには見えない。男爵令嬢風情が多くの高位貴族達と関係を結び、第一王子まで篭絡していたと聞いて正直驚いたが、その強かさは大したものだと思う。その図太さがアリスにも備わればあの子もビクビクすることはなくなるだろう。シルヴィアを皇妃に迎えたのはそれだけの理由だ。まぁ、見返りとして国母に位はしてやってもいい。そう提案したら最低だと拳で殴られた。全く何が気に入らないんだ。アリスを懐柔してどうするつもりだかしらないが、警戒するに越したことはない。幼少時に毒殺されかかってからというもの、ラーシュは他人を一切信じられなくなっていた。少し厳し過ぎやしないかしら。教育係のカミラは皇女と言えど容赦しなかった。皇族は強大な魔力を持つ者が多く、ラーシュとアリスは氷魔法を使う。自在に使いこなせるよう習うのは当然の授業だが、問題は教え方だ。口出ししないと言う約束で見学しているシルヴィアはイライラ。同じ授業を受けているアリスの従兄弟イクセルばかり褒められて彼女は落ち込んでいる。そのあとお茶の時間にアリスが自主練したいというので付き合い、なら自分もとわずかに使える土魔法の練習を始めた。おかげで簡単なアレンジ法も覚えてご満悦。数日後、今日も二人で自主練に向かうと訓練場が妙に暑い。不思議に思いつつ、足を踏み入れると火柱が上がり二人を包み込んだ。何とか土魔法でドームを作りその中に逃げ込んだものの、アリスを庇いシルヴィアはあちこちにやけどを負った。ドームを維持するため魔力を使い過ぎ眩暈を起こしたシルヴィアは倒れ込む寸前誰かに抱き留められていた。目を覚ますと自室のベッドでラーシュが付き添っていた。なんと自分は数日間眠っていたらしい。ラーシュの話によれば酷い火傷を負ったが治癒魔法が効いて暫くすれば完治するそう。失神したのは魔力が枯渇したから。どうやら火柱を発見した彼が氷魔法で火を鎮圧。アリスとシルヴィアを救出したのもラーシュだった。素直に礼を言えば、その前に謝らせてほしいと彼は立ち上がるといきなり土下座した。呆気に取られていると、君のおかげで兄の大事な忘れ形見を守ることが出来たのだと、自らが産まれてからと言うもの、この皇室で起きた事件を語った。元々、この皇族は暗殺が多かったのだそう。かくいう自分も毒殺されかけ、毒見後以外の食事は受付なくなり家族にも気を配った。だが、ラーシュの兄である先帝とその妃が毒殺された。犯人は料理人夫婦ですぐに逮捕され処刑になった。一人になったアリスを養子にし、迂闊に他人を信じるなと教え込んだ。図太くしたたかに生きろと。彼に話を聞いてなるほど、悪女になれってそういう意味だったのねとシルヴィアも納得。でも、それじゃダメなのよ、ラーシュ。確かに強さも必要だろう、でもまずはアリスを信じ愛してあげなきゃ。素直に意見を述べれば彼は理解不能と言った表情。だが、君のことなら信じられる。そう言って俺はこれから君を心から愛そうと思う。またなんか変なこと言い出したよ、この人。信用してくれるのはありがいが、何か極端なのよねこの人。今もおかゆを手ずから食べさせようとシルヴィアに口を開けるよう促している。仕方なく口を開け受け入れ、犯人に心当たりはあるのかと尋ねれば、渋い表情で降嫁した妹かもしれないとポツリ。ああ、イクセルを王位に就けるため?教育係のカミラの態度からして、秘密裏にそう言い含められているのかも。氷の大地を炎の力で切り開いたと言う建国神話があるこの国には炎魔法使いの皇族が皇位を継ぐべきと主張する赤のイニティウム教団がある。そこがラーシュの妹・アンジェリカを焚き付けていたとしたら?アリスの為にも、シルヴィアは自分も調査に協力すると申し出て・・・。悪女に転生した主人公と他人を信用できない皇帝のお話です。子育てものでもあるので、人気ジャンルのいいとこどりの内容になってます。そんなヒーローとヒロインが、とある教団の調査に乗り出します。果たして本当にラーシュの妹は教団と結託してアリスを狙い、実の兄をも殺そうとしているのか?しかし、調べが進むうちに意外な事実が判明して、という展開です。結果的に、ラーシュの身内は全員シロだったわけですが、モブかと思ってたキャラが内通者で先帝夫妻の殺害にも関与していたのが判ってビックリ。正直、このキャラは数ページの出番かと(^_^;)色々ハプニングに見舞われながらラーシュを意識し始めるシルヴィアは最後は彼を受け入れ、エピローグではすっかりラブラブ夫婦に。子どもも授かり、アリスを交えた皇帝一家の日常が描かれて物語は幕。大筋は結構シリアスなんですけど、コミカルなやり取りも多く面白かったです。評価:★★★★☆
2026.07.20
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2024年8月刊角川ビーンズ文庫著者:花宵(敬称略)魔力がないため虐げられてきた伯爵令嬢リフィアは、父の命で呪われた仮面公爵オルフェンに嫁ぐ。王国一の魔術師ながら忌避される彼と心を通わせるうち、少しずつ呪いが解けていきー「大好きな君を、この手でずっと抱き締めたかった」甘く幸せな新婚生活の陰で、『聖女』の資質に目覚めたリフィアに迫る魔の手。そこには衝撃の真実が隠されていて…!?愛を知った薄幸令嬢が残酷な運命を断ち切り、本当の幸せを掴む物語。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 リフィア=魔力を持たないからと家族から虐げられていた伯爵令嬢。オルフェン=呪いを受け隠遁生活を送っていた公爵。リフィアの夫。 アスター=ヴィスタリア王国王太子。 セピア=リフィアの妹。 ラウルス=オルフェンの元部下の魔導騎士。ファルザン=人気のヴァイオリン奏者。火属性魔法の家系・エヴァン伯爵家の長女・リフィァは、魔力を一切持たずに産まれた。魔力無しの証拠であるその白い髪を両親、特に母は忌み嫌い彼女を遠ざけた。お前のせいで不倫を疑われたと酷い暴力を受け、死にかけたこともあるけれどいくら理不尽な目に遭ってもリフィアに恨みも怒りの気持ちも無かった。屋敷の奥深く、亡き祖父の私物置き場になっている物置部屋に閉じ込められても、エヴァン家の守護女神ヘスティアに今日も恙無く過ごせたと感謝の祈りを捧げる。数年後、リフィアが十七歳になったある日のこと。珍しく父の書斎に呼び出された彼女はオルフェン・クロノス公爵との結婚を命じられた。黒の賢者の称号を持つ優秀な魔術師だが、五年ほど前、バジリスクからの攻撃から王太子を庇い呪詛を受けて以来、あまり表には出て来ていない人物だ。呪詛の影響で顔と腕に鱗が浮き出ているらしい。それを隠すため仮面をしていることから仮面公爵とも呼ばれている。私の結婚相手がクロノス公爵様・・・。十五歳の誕生日、本来なら社交界デビューするはずがリフィアには人前に姿を見せることすら許されなかった。しかし、世間体を気にしてお披露目をしないわけにもいかず、当日は本人の体調不良を言い訳に両親は舞踏会だけを開催。華やかな世界に多少なりとも憧れのあったリフィアはこっそり部屋を抜け出し、寒空の下、外から会場内を盗み見ていた。そんな彼女に自らの上着をかけてくれたのがクロノス公爵で、その上着は今でも大事に取ってある。あの時のお礼も言えることがただ嬉しかった。呪われた仮面公爵に嫁ぐのに何をへらへら笑っているの!?妹のセピアは信じられないと言う表情。父の説明では近年、公爵は呪詛の影響で体調を崩し魔術師団長の座も辞して領地に引き籠っていると言う。前公爵夫人が不憫な息子のため嫁探しをしていたそうで、うちの娘で良ければと父はその話に乗ったのだそう。多額の支度金を貰っているから戻って来ることは許さん。父の言葉に母も頷き、厳しい顔でリフィアを見据える。唯々諾々と従う娘に早々に興味を失くし、その金で新しいドレスを買ってくれと母が父に強請るのを横目に、セピアだけは何か言いたげな目で姉を見ていた。二週間後、迎えの馬車に乗り込んだリフィアはクロノス公爵邸にやって来た。実家とは違い、無能の象徴たる白髪を見ても公爵邸の人達は誰も軽んじる様子はなかった。姑のイレーヌからも歓迎されて自分のような娘を迎え入れてくれた旦那様とお義母さまのためにも精一杯尽くそうと心に誓った。が、肝心のオルフェンは姿を見せない。不思議に思っていると最近は起き上がれない日が続いているのだとイレーヌが顔を曇らせた。せっかく来てくださったのに申し訳ないと謝罪する義母に気にしないで欲しいと笑顔を見せたリフィアは、せめて自分に旦那様の看病をさせてもらえないかと頼んだ。案内されたオルフェンの私室では具合の悪そうな彼がベッドに横たわっていた。間違いない、やはりあの時の方だ。呪詛は徐々に彼の身体を蝕んでいるらしい。その苦しそうな姿に胸を痛めたリフィアはオルフェンの手を握るとどうか少しでも良くなるよう祈った。すると、苦しそうだった呼吸が落ち着き彼が目を覚まし自分の手を握る少女を見てギョッとしていた。オルフェン自身もどうして急に楽になったのか見当もつかないながら名を聞かれリフィアと名乗ると、そうか君が・・・。こんな死にかけの男に嫁がされて迷惑だったろう?と自嘲する彼の言葉に食い気味で否定する。あの舞踏会の夜でのことを話すと彼も覚えていたらしい。以降、リフィアは献身的にオルフェンの世話を焼き、彼が良くなるよう女神に祈りをささげた。暫くするとオルフェンの身体を蝕んでいた鱗が段々と薄れていき、そのうち起き上がれるように。それでもまだ右手と額には残っていたが、歩けるようになるとリフィアを伴い庭園を散歩するのが日課になっている。その仲睦まじい姿にイレーヌは涙を流して喜び、息子にちゃんと彼女を籍に入れようと提案。これまで三度ほど妻を迎え入れたが、皆数日持たず屋敷を立って行った。最後の希望がリフィアであり、その彼女のおかげでオルフェンは持ち直した。当時は彼の体調からもう長くはないかもと入籍を先延ばしにしていたけれど、きっともう大丈夫。数日後、無事署名を済ませたリフィアはクロノス公爵夫人になった。半年後、見舞いを兼ねて夫人を紹介してくれと王都から王太子・アスターが屋敷を訪れた。迷惑そうなオルフェンを他所に、アスターは奥ゆかしいリフィアを気に入り上機嫌。そんなアスターにオルフェンは前以て依頼していた鑑定をしてくれるよう促すと、はいはい、と彼が取り出したのは大きな石のついたペンダント。それをリフィアの首に下げさせると鑑定魔法の呪文を唱える。すると石が金色に輝き、これは間違いないねとオルフェンに向けてニヤリと笑った。大方予想は付いていたのか、オルフェンはやはりと言った表情でリフィアに向き直ると、君には聖女の資質があると告げた。フィアは魔力が無いよね?それは元々聖力を持っているからなんだよ。いきなり勝手な愛称で呼び始めた王太子を睨みつつ、オルフェンもその説明に頷く。何故自分が持ち直したのか、しかも彼女が手を取り祈りを捧げてくれる度に回復していくのでこれは聖力なのではと思い当たったそう。鑑定してみた結果、大聖女に匹敵するほどの聖力の持ち主だと判り、アスターからこの世界を支えている世界樹に定期的に聖力を注いでほしいと頼まれた。ここ数百年、世界樹の老化が進み、各貴族家が奉納する魔晶核の力で延命していた。しかし、聖力とは比べるべくもない。これで世界樹も生気を取り戻すはず。だが、世界樹は魔物を脅かす。聖女に出て来られては困るとリフィアは狙われる危険性がある。お前も復調したなら奥さんを死ぬ気で守れよ。そう言ってアスターはオルフェンに発破をかけた。そうこうしているうちに国王との拝謁も済ませた彼女は定期的に世界樹に力を注ぐという、忙しい日々を過ごしている。オルフェンとの関係も一層深まる中、娘の噂を聞きつけたエヴァン伯爵がそうと判っていればと歯噛みしていた。そしてやがて明らかになる伯爵家の過去と聖女誕生に纏わる秘匿事項。父の罪の巻き添えを食ったリフィアは危機に陥り・・・。王道のシンデレラストーリーです。実はヒロインは聖女でした、と判明してから話は意外な方向に進んでいきます。ただ、旦那様と静かに暮らしていきたいだけなのに周りは許してくれず、その上、実父のやらかしのせいで彼女は父に恨みを持つある人物に攫われ命の危機に。加えて明らかになる聖女に纏わる闇の話。この一連の内容は読んでて正直ゾッとしました。まさに一人の犠牲で皆が助かるなら、とか言う胸糞理論で概要を知るアスターの苦悩も。でもそんなのくそくらえ、なのがオルフェンで愛しい妻のため、彼は決められた運命すらも覆して見せるのでした。エヴァン伯爵は過去の罪で裁かれ、夫人はとんずら。結局伯爵家はセピアが相続すこととなり、姉妹は和解。というかそもそも悪いのはあの毒親たちだったのであいつらがいなくなれば仲良くなるのは当たり前。セピアも想い人のラウルスに想いが通じて良かった。色々予想外な展開もあって面白かったです。評価:★★★★☆
2026.07.23
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