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2022年7月刊小学館・キャラブン!著者:朝比奈希夜さん死神の花嫁は夫に離縁を言い渡され…!?死神・八雲の花嫁となり、人の世界とは隔絶された場所にある八雲の屋敷で暮らすことになった没落華族の令嬢、千鶴。死を覚悟しながら生贄の花嫁としてやってきた千鶴だったが、いまや八雲の愛を受けながら、家事にいそしんだり、拾われた人間の子・一之助の世話をしたりと、穏やかで幸せな日々を送っている。そんなある日、千鶴の前にひとりの女性の死神が現れる。翡翠と名乗ったその死神は、人間嫌いだった八雲が心を許したのはどんな女性なのか興味があって訪ねてきたと語り、人間同士の友のように千鶴と付き合いたいと言う。同じ死神ながら、出会った当初の八雲とはまるで違う、明るく気さくな様子の翡翠とのおしゃべりに、思わず女学生だった頃の自分を思い出した千鶴は、久しぶりに心が弾んだ。そして、女学校時代を懐かしむ千鶴を見た八雲に、かつての友人に会ってみないかと誘われた千鶴は、昔住んでいた麹町へ八雲とともに向かうことに。だが、乳飲み子を抱いた親友との再会に感動しながらも、もう普通の人間とは違う自分の立場を思い知らされる。やがて千鶴は、見えない未来に思い悩むようにーー。愛を知らない死神と生贄の花嫁の、不器用な愛の物語。第三弾! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 正岡千鶴=ヒロイン。旧華族・正岡子爵の長女だが、とある事件が切欠で爵位は 剥奪。家族の生活を支えるために奉公人として働いていた。 後に、奉公先の令嬢の身代わりとして死神の生贄とされるが、死神・ 八雲と心を交わして夫婦になる。 八雲=ヒーロー。主に小石川(東京都文京区)一帯を担当する死神。 仕事柄、人間嫌いで感情の起伏も少ない存在だったが、心根は優しく 一緒に暮らすうちに千鶴に惹かれて妻に娶った。 朝彦=八雲の従者で死神見習い。元は人間で旗本・平松家の跡取りだった。 だが、使用人のすずと身分違いの恋に落ち、その結果彼女を無残に死 なせてしまったことを悔やみ、すずを黄泉へ送った八雲と契約した。 一之助=4,5歳の人間の少年。裕福な呉服店の息子ながら、酒乱の父の暴力 によって家庭崩壊を起こし、寒空の下で死にかけていた所を八雲に拾 われた。以降、屋敷で育てられ、千鶴を母の様に慕う。 翡翠=ある日突然、八雲の屋敷を訪れた女の死神。異種族婚を果たした千鶴 に興味を持ち友人関係となる。実は死神の大主。 竹子=初老の人間の女性。数十年前に死神・和泉と結婚した。 八雲との子を望む千鶴にその苦労と覚悟を説く。「死神の初恋」、約1年ぶりの新刊です。私は、1,2巻を今年の春に入手したのでそれほど待った感は無いのだけど、ずつと発売日に購入してた方はさぞ首を長くされていた事でしょう。コミカライズ版が結構な人気らしいので、4巻はもう少し刊行ペースが速くなると思いたい。7月6日の発売の本のため、詳細バレはしませんが、こういう内容だよとざっくり目で。言い忘れていましたが、このお話はTL小説ではありません。女性向けのファンタジーノベルになります。仲睦まじい主役カップルに、これからの人生について大きな試練が、って展開です。どうあがいても、契約をして死神にならない限り、千鶴は寿命を迎えたら八雲を置いて死ぬのが運命。それを承知で結婚したけれど、だからこそ、せめて八雲との子供を欲しいと強く思うようになる千鶴。つい、文字の勉強を始めた一之助に厳しくしてしまい、何だか精神は不安定だった。久しぶりに人間界に出た際に久しぶりに再会した女子校時代の友人が結婚して子供を産んでいたと言うのも原因かもしれない。ある日、八雲と同じ死神・翡翠が屋敷を訪れ、千鶴と友人になりたいと言う。彼女は何かと千鶴の悩みや話を聞き、甘やかす。そんな時、一之助の父が心を入れ替えて酒も止め、息子を探しているらしいと朝彦が聞き及んできた。本来ならば一之助は人間界で暮らす方が良い。千鶴も彼の為を思い泣く泣く家に返したが、寂しさもあってか彼女はふさぎ込むように。益々、子が欲しいと言う思いも強くなっていた千鶴は、八雲から昔人間の女性を娶った死神がいたことを知らされた。その女性はまだ存命らしく、後日二人で尋ね話を聞いたところ、思いがけない内容を知らされて・・・。異種族婚とはやはり並大抵の苦労ではなく、結局その女性・竹子は夫の死神とは一緒に暮らせていない。この時には詳しく語ってくれなかったが、死神との子については作らない方が良いとも言われた。そんな折、父の元に戻っていた一之助は継母と折り合いが悪くストレスでボロボロになり、見かねた八雲が自らの屋敷に連れ戻した。だが、竹子の話に衝撃を受けた千鶴は一層心に傷を負って身体を壊してしまった。八雲は彼女の為にも二人は一緒にいない方が良いと離縁を持ち掛けます。お互いを思い合ってるだけにこういう決断になるのかーとモヤモヤしたものの、紆余曲折の末結局元鞘に戻ります。竹子さんの昔話(実は現在進行形)にも続きがあって、彼女が夫・和泉と一緒に暮らせていない理由も判明。まあ、結論から言うと翡翠が黒幕で結構酷いです。翡翠が千鶴に近づいたのも、八雲の子を身籠っていたから。この巻での千鶴の精神の不安定さもつわりから来るものだったのかなぁと思えば納得。待望の子供は嬉しいけれど、翡翠の魔の手からどうこの子を守るか、が次巻の内容になるのかな。ざっくりと言いつつ、結構ネタバレしてしまいましたが、和泉が竹子と一緒にいない理由や、千鶴の抱える悩みや翡翠の思惑など、その辺は実際読んでのお愉しみ。コミカライズ版もあの刊行ペースだと来年一杯でこの原作3巻の内容になりそう。取り敢えず、4巻の発売が待ち遠しいです。評価:★★★★★今回は特にじれじれも極まれりな内容なれど、やっぱりお話そのものは面白い。
2022.07.10
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2025年2月刊レジーナ文庫著者:しげむろゆうきさん身に覚えのない罪を着せられて婚約破棄された挙句、処刑されたバイオレット。ところが、気がつくと処刑の一年以上前に時を遡っていた。バイオレットは考える。どうして自分は冤罪を着せられたのか。いったいあの時、何が起きていたのか。--全ては学院に一人の男爵令嬢が入学してきたことから始まっていたことに気がついた彼女は、同じ轍を踏まないよう、そして自分を陥れた人々に復讐をするため、慎重に、そして時に苛烈に、動き出すーー ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 バイオレット=冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢。 アルダム=ネオンハート王国王太子。 フェルト=ロールアウト王国王太子でバイオレットの婚約者。 サジウス=バイオレットの兄。 ブラウン=伯爵家の二男。 ミーア=貧乏男爵家の娘。サマーリア公爵家の令嬢で王太子の婚約者でもあるバイオレットは、身に覚えのない罪を着せられた挙句に大観衆の目前で処刑された。だが、死んだはずの彼女はふと気付けば王太子フェルトのお気に入りのテラスでお茶を嗜んでいた。確かに私は断頭台に掛けられその首が落ちる瞬間を経験したはずなのに。フェルトからのあの蔑んだ眼差しは忘れられない。元々考え無しな楽天家ではあったものの、貧乏貴族の娘に入れ上げ婚約者を蔑ろにしたうえ、邪魔だからと処刑にまで追い込むなんて、ここまでボンクラだとは思わなかった。会話を交わす間に1年以上前に遡っていることが判った。まだ私は婚約者候補の一人にすぎない。神様が私を憐れんでくれたのか、それとも何者かによる力であろうか。でもそんなことはどうでもいい。私をあんな目に遭わせた者たち全てに復讐を!そう彼女は決意した。まず、フェルトとの婚約者にならないよう動いたバイオレットではあったが、その際、他二人の候補からも彼の評価はイマイチだったことに驚いていた。まぁ確かに、取り柄と言ったら外見くらいだものね、彼。それに頼られたい欲求が強く、バイオレットみたいな完璧な淑女は好みとしては範疇外。ミーアに惚れたのもその辺が原因か。にしても、この男爵令嬢、あまりにもわざとらし過ぎやしない?フェルトの目に留まるようわざと目の前で転んだり、すぐ泣いて見せたり。内心でしらけているバイオレットを他所に甲斐甲斐しくミーアの面倒を見ている彼を、周囲も呆れた目で見ていた。だが、フェルト一筋ならまだいい。後にこの女はバイオレットの兄のサジウスや、カイエス伯爵家の二男のブラウンにまで唾を付け、挙句にフェルトと結婚するため邪魔なバイオレットを罠に嵌める。まぁ、あほな二人には無理なので知恵を絞ったのは十中八九サジウスであろうが、いくら初恋とはいえ、女の為に血の繋がった妹にそこまでする!?そっちがその気ならこちらも気兼ねなくやらせてもらおう。フェルトに気付かれぬよう国王夫妻にコンタクトを取ると、彼らもまたミーアに入れ上げる息子のことで頭を抱えていたようだ。昨今は愚かな彼の方が御しやすいと王太子派が急増し、あれこれ手を貸しているらしい。国王はいざとなればフェルトではなく第二王子のエイデンを王位につけようと考えていると打ち明け監視を含めバイオレットに協力を頼んで来た。しかし、この交代劇は少々荒れるだろう。相当のしでかしでもしなければ。ふと閃いた彼女は作戦を提案。国王たちも全面的に協力すると約束した。学園ではミーアの奔放ぶりに王太子派の貴族の子女以外は眉をひそめていた。そんな彼女にバイオレットが少しでも苦言を呈するとバカトリオに噛みつかれる始末。こんな奴らに嫌われようが屁でもない。精々今を楽しんでいなさい。彼女は学長も味方に巻き込んで、ミーアたちを見張らせると事細かに記録するよう頼んだ。いざという時にバイオレットがミーアを虐めたなどという言いがかりを回避するためだ。その間に、自分が処刑確定となった事件の真相を調べ始めたバイオレットは、パーティーでネオンハート王国の王太子・アルダムと側近のダントフ侯爵令息と知り合った。彼こそ、バイオレットが毒を盛り殺したとされる人物なのだが、そもそも時間をさかのぼって漸く会えた方だ。どうして私が暗殺を謀るのよ。前の生ではお会いしたことも無いのに。本当に考えれば考える程穴だらけの企てで思わず鼻で笑ってしまう。頭だけは良い兄も恋に溺れて相当鈍ったらしい。取り敢えず、今回もまたアルダムが狙われるはず。完全に巻き込まれなのだし何とか回避しないと。幸いにもあの事件で誰が手を貸したのかは判明している。優秀なメイド・ルリアの働きもあって着々と準備が進む中、バカトリオとミーアの関係は相当深まったよう。そんな最中バイオレットが婚約者に決まったことで相当焦っているはず。そろそろ私に罪を着せるべく大胆な行動に出てくるはず。ミーアからのお望みで大々的に私を貶めに来るだろうから、やはりことを起こすのは終業式のパーティーかしらね。案の定、フェルトは大勢が見守る中、バイオレットに婚約破棄を言い渡してきて・・・。悪役令嬢ものです。最近では割と定番な、ヒロインの方が悪役という展開で、ミーアは転生者でした。生前ハマっていた乙女ゲームのヒロインに転生した未亜は、一番好きだったハーレムエンドを達成すべく3人同時攻略に勤しみます。最初は完璧美女のライバル・バイオレットを消すことに成功するも、何故かその後は不幸に見舞われ死に至り、気付くとフェルトたちに出会う前に時が戻っていました。ならもう一度攻略するまで。バカトリオの攻略はなんてことなかったけれど、バイオレットがどうにもしぶとい。前は嫉妬に狂ったげくうまい具合に罠にはまって勝手に自滅してったのに。味方がアホしかいないミーアと違って持ち前の頭脳と周囲から信頼されているバイオレットにとって彼女は脅威とは成り得ず。今回も彼らはアルダム暗殺を謀ったことで罪に問われることに。そこで色々明かになる余罪に国王たちも茫然。フェルトは直接手を下したわけではないものの、国庫の使い込みなど諸々しでかしていたことで責任を問われ、皆と処刑が決まるのでした。復讐を終えたバイオレットはアルダムといい雰囲気に。そして、時を戻したのはとあるアイテムと彼に流れるネオンハート王家の血によるものと知ります。どうして彼が時を戻すに至ったかは、色々複雑なので気になる方は読んでみてください。おまけの番外編はバイオレットの死後、愚かな行いを続けていたことで反乱がおこり、結局フェルトたちも処刑されていたというエピソードでした。文庫版の書下ろしは、あちこちで迷惑をかけている転生者を監視する組織を作ろうとしているバイオレットのお話。この頃には彼女はアルダムの元に嫁ぎ皇后となっています。悪役があまりにも馬鹿なので、冷静になったハイスペ令嬢の完全勝利なのも当然。評価:★★★★☆
2025.03.28
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10月30日 ガブリエラブックス ツンデレ公爵様、悪役の姉にデレすぎです! 百門一新11月5日 ポプラ文庫ピュアフル 忌部家の娘と龍神の契約婚 麻生ミカリ11月6日 小学館文庫キャラブン! 後宮のモグラ寵愛はこりごりにつき、ご遠慮いたします 一ノ瀬千景 魔王に見初められた悪役令嬢は、王子と婚約破棄しない 宮野美嘉11月10日 レジーナ文庫 婚約者を想うのはやめました かぐや 私を追放したことを後悔してもらおう 2 ~父上は領地発展が私のポーションのお景と知らないらしい~ ヒツキノトウカ11月28日 新潮文庫nex 完璧な淑女のふしだらな契約 六ツ花えいこ12月4日 悪党のお父様、私と結婚してください 61月9日 ツギクルブックス 公爵令嬢は忠告をきかない ~未来の悪役令嬢は異世界転生メイドに我がままを貫く~ 有沢ゆう 嘘ばかりの婚約者様、どうぞ愛する人とお幸せに 風見ゆうみ1月12日 蜜夢文庫 寡黙なボディガードは箱入り令嬢を守り抜く(仮) 西篠六花
2026.10.06
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2026年3月刊スターツ出版文庫著者:緋村燐(敬称略)結界の糸を作る巫女として高い霊力を持っていた藤花は、親友の緑子と優しい婚約者に恵まれていた。しかし、妖魔に襲われたことで一変する。顔に残った痣のせいで「毒巫女」と虐げられ、藤花の婚約者はいつしか緑子のものに。絶望の中、最強の結界師・巽に糸を見初められ「俺が痣も絶望もすべて消し去ってやる」と求婚される。子を成せば痣が消えると知り花嫁となった藤花。愛なき結婚のはずが、巽から宝物のように扱われ愛を注がれて…。懐妊し幸せな藤花を許せない緑子は、流産させようと画策するがーー!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 志島藤花=妖魔に襲われ、毒巫女と蔑まれていた少女。 黄賀巽=帝都の結界を護る御三家の一つ・黄賀家の嫡男。 勝田緑子=勝田侯爵家の令嬢。藤花に敵意を持っている。 志島朱梨=藤花の妹。帝都を護る結界師が使う糸を紡ぐ「糸練りの巫女」高い霊力を持ち、優れた巫女として持て囃されていた藤花は決して驕ることなく、心優しい娘だった。巫女たちの育成機関つむぎ舘の館長・遠原節子の一人息子の孝志との婚約も決まり、幸せな日々を過ごしていた。そんなある日のこと、姉のためにと清水を汲みに山に入った朱梨が夜になっても帰らないと騒ぎに。親友の緑子から霊力の高いあなたなら見つけられるかもと言われ、子供の時に見知らぬ少年から貰った守護珠を握りしめた。私にはこれがある、だからきっと大丈夫。そうして山に分け入った藤花は無事に妹を見つけたが、妖魔に襲われ負傷。ほんの少し頬をかすめただけだというのに陰の気は彼女の身体を蝕み、美しかった顔には醜い痣が浮かんでいた。しかも、陰の気は藤花の霊力にも影響を及ぼし、紡ぐ糸は赤く染まっていた。あれから二年、藤花は毒巫女と呼ばれ、皆から虐げられていた。孝志は早々に藤花を見限り、今は緑子と婚約。あれほど藤花を持て囃していた節子や他の巫女たちも蔑みの目を向け聞こえよがしな悪口で彼女を貶めた。親が村長なのもあって追い出されはしなかったが毎日が針の筵のよう。こんな日々が一体いつまで続くのか、疲弊した彼女の耳に燥ぐ巫女たちの声が聞こえる。どうやら帝都から結界師がつむぎ舘の見学に来るらしい。しかも花嫁探しも兼ねてのことらしく、皆が騒がしいのも頷けた。まぁ、私には関係のない事だけど・・・。作業を終えて宛がわれている小屋に向かうとその前に一人の青年が立っていた。手には藤花が紡いだ赤い糸が。不吉だから捨てろと節子に怒鳴られても捨てられずにいたものをどうしてあの人が。それ、私のです返してください。声をかけると振り返った青年は驚き、これほど俺の霊力に馴染む糸は初めてだと感動している。そして「俺と結婚してくれ」の言葉にビックリ。彼こそが御三家・黄賀家の嫡男の巽と聞いてさらに驚いたが、それ以上に驚愕したのは村の住人と巫女たちだった。その娘は毒巫女で、と節子が止めるのを巽は一睨みで黙らせ、藤花を覗き込むとその痣、俺なら消してやれるぞと囁いた。その言葉を聞いて色々限界だった藤花は彼からの申し出に頷いていた。突然決まった藤花の結婚、面白くないのは緑子だった。高位貴族の娘であってもここでは何一つ藤花に叶わなかった。姉にコンプレックスを持っていた朱梨を唆し藤花を妖魔に襲わせ毒巫女に堕としたまでは良かったが、損なわれていなかった霊力が巽の目に留まるとは!巽を見た後では孝志が途端に色褪せて見えて緑子は歯噛みした。黄賀家に嫁いだ藤花は当初、義母に良く思われていなかった。いくら霊力が高くとも顔に妖魔に付けられた痣がある嫁など、毛嫌いされて当然だ。だが、巽と結ばれたことで身体に陽の気が満ち、数日もしないうちに痣は綺麗に消えていた。そんな彼女に義母は心から謝罪し、今は良い関係を築けている。そうこうするうちに藤花の妊娠が判り、黄賀家は喜びに包まれた。特に巽が大喜びで、忙しいながらも妻を気遣った。そんな折、妊娠の報せを受けてお祝いの品を持たされた朱梨が来訪。だが、妹はどこか荒んでいて、藤花が妖魔に襲われたのは緑子の画策であり自分も手伝ったのだと暴露。あの事件以降、態度が急変した緑子にはショックを受けたけれど、そこまで嫌われていた事実に衝撃を受けた。しかも、緑子は朱梨だけでなく他の巫女たちにも藤花の悪評を広めていたらしい。道理で皆が冷たかったわけだ。色々納得がいって嘆息すると怒り心頭な表情の巽が入って来て朱梨を咎め追い出した。コンプレックスを刺激されてつい手を貸してしまったとはいえ、冷遇されていた期間を思うと妹を許す気にはなれなかった。だがもっと許せないのは緑子だ。巽の妻になり、早々に妊娠して地位も安泰な藤花を思い相当妬んでいる事だろう。何かしでかさないと良いが。嫌な予感は的中、数か月後、緑子から嘘を吹き込まれていたと知った朱梨が再び来訪。心からの謝罪をし、緑子に気を付けろと忠告して帰って行った。それから暫く経って、藤花は産み月に。だが、間の悪いことに巽が皇居の結界張り直しを依頼され・・・。黄賀夫婦は仲睦まじく、その絆によって紡がれた糸は強固な結界になる。その評判を聞きつけたお上が皇居の結界を依頼。しかし、臨月に入った藤花はいつ産気づいておかしくない状態。大量に必要となる糸もそう多くは紡げない状態でした。なのに、この状況下で緑子は藤花憎しである騒動を起こし、彼らは危機一髪。まぁ、これはまたしても夫婦の絆で乗り切るんですけど、緑子の執念深さが凄まじい。他人の評価なんて気にしなきゃいいのに。自分は自分と思っとく方が世の中平和な気がします。でも悪い事は出来ないもので、緑子は後に捕縛され懲役刑に。その前につむぎ舘の方もとある理由で罰を受けているあたり、テーマの「ご懐妊×ざまぁ」部分はしっかりと回収されています。取り敢えず、妹がきちんと改心してくれて良かった。評価:★★★★
2026.04.20
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2016年6月刊プランタン出版・ティアラ文庫著者:蒼磨奏さん「君を見ていると襲いたくなる」無骨な手で乳房を揉まれ、下腹部を這う舌に、蕩ける身体。夫に抱かれると、胸が痛くなる。従姉を名乗り、冷静沈着な警官の宵と結婚した鈴。ぎこちない新婚生活だったけれど、不器用な優しさを見せる彼に惹かれていく。愛した男性から別名で呼ばれる切ない日々。そんなある日、真実を知られ一緒に暮らせないと飛び出した鈴に伝えられた言葉とは!? ↑楽天ブックスより、あらすじ文引用発売時にイラスト買いしたお話ですが、よくよく本棚を見たら蒼磨先生の作品を結構購入してたんだなぁとしみじみ。タイトル通り、大正時代が舞台の身代わり婚モノです。ここからネタバレと感想。ヒロイン・神無月鈴は老舗呉服屋の一人娘でありながら、両親を亡くして以来店の経営を引き継いだ叔父夫妻に使用人同然にこき使われて過ごしている。そんな生活の中、叔父夫婦の娘で鈴の従姉妹の美弥子だけは彼女を庇い、自分の分として着物やお菓子等を態と大目に買ってもらい、鈴にこっそり分けてくれていた。おかげで美弥子は近所では浪費家の娘と噂されていたが、当の本人は気にしていないようだった。鈴もそんな従姉妹の気遣いに感謝しつつも、食べ物はともかく、叔父達から外出を厳しく禁じられている身ではせっかくの着物をこっそり着ることも出来ないのであった。美弥子は神無月家の居候で書生の祥太郎と恋仲で、同じ屋根の下に暮らしながらも鈴を通して文のやり取りをする二人が微笑ましくもあり、ロマンチックだなと少し憧れてもいた。とは言え、叔父達に家を乗っ取られる十歳までしか学校に通えなかった彼女は学が無く、文字もひらがなしか読み書き出来ないので恋文のやり取りなど夢のまた夢。ある日、鈴は叔父から美弥子に縁談が来ていると聞くが、寝耳に水なことで祥太郎もショックを受けていた。明日この屋敷で顔合わせがあるようだが、相手は華族でこそないものの由緒正しい名家らしく叔父はこの縁談に大層乗り気だった。どうやら先方から是非神無月家のお嬢さんと結婚したいとの申し出だったらしい。気の強い娘のこと、騒ぎになりそうだからと叔父は美弥子には内緒にして事後承諾で進めるつもりのようだ。そんなやりとりをしていると丁度近くを通ったからと件の見合い相手・桐生宵(しょう)が来店したと、叔母が叔父を呼びに来た。悶々としていた祥太郎はこっそり相手を見に行こうと鈴を誘い物陰から覗き見ると、長身で凛々しく端正な顔立ちの青年で鈴は思わず見とれてしまった。宵は何故か店内を見回すと徐に、叔父夫婦に神無月家の娘は美弥子さん一人だと聞いているが相違ないかと尋ねた。面食らった叔父が間違いないと答えると、思案顔をしていた宵は叔父夫婦のお茶の誘いにも乗らずに店を辞した。夕方帰宅した美弥子に見合いのことを話すとやはり彼女は何も知らされていないようで、顔も知らない男に嫁ぐなんて絶対に嫌だと泣き崩れた。鈴は先ほど預かった祥太郎からの文を彼女に渡すと、どうやら東北にある彼の実家に一緒について来て欲しい旨書かれているようだ。叔父も祥太郎の出身地まで詳しく知らないから駆け落ち先には打って付けの所だという。鈴は優しい従姉妹のために一肌脱ぐことを決意し、二人を逃がした後は知らないふりを決め込んで時間稼ぎをすると申し出たのだが、美弥子は父達による彼女の普段からの扱いを思うと、自分たちのせいで手酷い折檻をされそうで気が気ではなかった。そんな従姉妹を自分は大丈夫だからと説き伏せ、美弥子は祥太郎との駆け落ちを決意したのだった。美弥子は去り際、父たちは強欲だからこの縁談を必ず纏めたいはず。もしかしたら鈴を代わりに嫁に出そうとくらいはしそうだから、ここを出て自由になるためにも桐生家に嫁ぐのも手かもしれないと鈴に言い含め、明け方に祥太郎と旅立って行った。翌朝、叔父は激怒し白を切る鈴を張り飛ばしたが、叔母の方は大分冷静なようでそれより見合いをどうするか相談し始めると美弥子の読み通り、二人は鈴を美也子に仕立てるつもりのようだ。碌な教育を受けていない鈴は身代わりなど無理だと拒否するが、この縁談自体もう断れないものらしく、見合いというより今日は結婚前の顔合わせの場らしい。かくして鈴は美弥子として場に引き出された。宵は仕事の都合で少し遅れるとのことで姑になる桐生夫人が先に到着していたが、夫人は鈴の容姿にケチを付け、随分な浪費家だという噂の真意を聞いてきた。鈴は普段の美弥子の物言いを真似ることで何とか乗り切ったが、丁度宵が現れたためそれ以上言及されることは無かった。二人は改めてお互い自己紹介をしたが、仕事場から駆け付けたと言う宵は警官の制服姿で、鈴はトラウマになった幼い頃の記憶を思い出したのだった。数日後、二人は祝言を挙げたのだが、出席した制服姿の警官たちを見ると鈴は気分が悪くなった。十年前、懇意にしていた政府高官が収賄容疑で逮捕され、父母が経営する呉服屋にも嫌疑がかかり屋敷にも家宅捜査が入った。父母は事実無根だと主張したが土足で上がり込んだ数十人の警官たちは、神無月邸を捜査と称して散々荒らし、押し入れに隠れていた鈴も引っ張り出された恐怖は忘れない。荒らすだけ荒らしておいて結局証拠も見つからずに疑いは晴れたのか警官たちは引き上げて行ったが、そう言えば最後に残った警官が何度も自分たちに頭を下げ謝罪していたっけなと思いつつ、鈴は以来警官が苦手だった。夫になる人が代々警察官の家系の一人息子だと知った時の衝撃も然るものだったが、宵は横暴な警察官らしからぬ人で、初夜の際も鈴はまだお互いをよく知らないからと思わず拒否してしまった。その代わりに親睦を深めるべくした趣味や好きなものについての質問の応答を、体に触れながらするという何とも恥ずかしい夫婦生活の始まりだった。翌日から鈴は率先して家事をこなし、その手際の良さは使用人たちにも目を見張るものだったそうだが、昨夜、鈴の手があかぎれだらけだったことと、顔合わせの際の殴られた跡の残る頬など、お嬢様育ちと聞いているのに宵はどうにも腑に落ちない。妻と噂の美弥子とはどうにも人物像が違い過ぎるのだ。その日、桐生美弥子宛に差出人の無い手紙が届いた。開くと美弥子からのもので、すべてひらがなで書かれたそれは鈴の身を案じる言葉が綴られていた。だが、道中路銀を盗まれて足止めを食らって、今金を工面するべく仕事を探しをしているらしい。最後の文面に少し心配になったものの、二人とも元気にやってるようではあった。祝言から2週間ほど経ち、宵がいつも読んでいる書物を何気なく捲っていた鈴は読めない漢字を飛ばして音読していると、いつの間にか後ろに立っていた宵に漢字が読めないことを知られてしまった。女学校に通っていたはずが、漢字が読めないとは。宵の不信感が更に募ったが、彼は鈴に漢字を教えると告げると、それから毎晩厳しい授業が続き、鈴は無愛想ながら何かと気遣ってくれる宵の為人と、その生活にも慣れて行くのだった。妻帯者の部下に妻の喜ぶことをしてやった方がいいとアドバイスされた宵は休日に鈴を誘い、街中を歩いてデートをした。欲しいものを買ってやるとアレコレ薦めてはみたものの、物欲の無い鈴は幼い頃の思い出らしい金平糖を欲しがった程度だった。こんな彼女のどこが浪費家なのか、疑惑は深まるばかり。アドバイスをもらった際に、部下に神無月呉服店の調査を頼んだが、その時部下は嫌な噂のある店だとも言っていた。上司の妻の実家なので言い出しにくかったとのことだが・・・。デートで初めての接吻を交わしたその夜、二人は祝言から延び延びになっていた初夜を迎えた。行為の最中に、美弥子と呼ばれることが苦しくなり、事実を言えないもどかしさに思わず泣き出した鈴に、嘘をつかれるのは嫌いだと、過去親友に裏切られ挙句その親友が目の前で自殺した過去を語った宵だったが、泣き止まない彼女にどうしたら泣き止むか何か望みは無いのか?と尋ねると、鈴は恋文が欲しいと告げるのだった。漢字が読めるようになったら男性から恋文を貰うのが夢だったと言う彼女に筆不精なんだがと前置きした彼は期待せず待っててくれと約束するのだった。桐生家の生活にも慣れ、定期的に美弥子から近況を知らせる手紙が届いており、今回は祥太郎が実入りのいい仕事を見つけてそろそろ路銀も溜まりそうだとの報告であった。二人は今、下町の貧しい貸家住まいをしているらしいが幸せそうだ。それを思うとあんなに良くしてくれている宵に嘘をついている自分に嫌気がさして来るが、ふと見ると自分宛ての手紙がもう一通置いてあり、約束していた恋文であると判った。筆不精というだけあって恋文というより日記のような内容ではあったが、鈴は恋文というものは貰うとこんなに嬉しいものだと知るのだった。とは言え、宵を好きになればなるほど鈴は罪悪感に圧し潰されそうになっており、宵もまた秘密を抱えているらしい妻に対してもどかしく思っていた。ある日彼は、机に置かれていた妻宛の手紙を見て定期的に差出人不明の手紙が届いていることを使用人が話していたことを思い出し、悪いと思いつつその手紙を読んでしまった。そして内容から二人の入れ替わりがバレてしまうのだった。文面に書かれている鈴とは誰だ?鈴はどれだけ宵に責められても喋らなかったが、翌朝もうこれまでだと身一つで桐生家を飛び出してしまった。だが、実家にも帰れず、雨が降り出しても行く当てのない彼女を見つけたのは宵であった。鈴は観念し、これまでのことを宵に包み隠さず話し謝罪した。黙って聞いていた彼はもっと早く相談してくれていればと苦い表情だったが、事態を受け入れてくれたようだ。折しも、しまい忘れた手紙は美弥子から助けを求めるものだった。どうやら祥太郎は違法の賭場で働いていたらしく先日ガサ入れの際に逮捕されてしまったらしい。違法就労者扱いなら大した罪状ではないので口利きと多少の金で釈放されると聞き、宵が手を回してくれることになった。一先ず大事にならずに済みホッとした鈴に、仲直りをするべく昼間から事に及ぼうとした宵を庭から怒鳴りつけたのは、助けを仰ぎに東京に帰って来た美弥子であった。鈴が席を外しているうちに宵は美也子に以前から疑問に思っていたことを尋ねた。不審な点が多いため、妻の実家を調べたのだと悪びれず言った宵は鈴が両親と共に死亡扱いになっていることを知っているか?と。そして、三人分の保険金を叔父夫婦が受け取っており、その他にも叔父夫妻が経営を携わってからあの店はきな臭い噂で持ちきりだった。脱税や収賄などかなりの数の罪状だと聞き、美也子は詳しいことは分からないが強欲な両親ならやりそうだとあっさり言ってのけた。思えば、鈴を外に一切出さず閉じ込めていたのは保険金詐欺で死亡届を出していたためだと納得がいく。宵は戸籍を直させて改めて神無月鈴と籍を入れ直すつもりだが、美弥子はこの7年の間両親がしてきた鈴への仕打ちを訴え彼女を幸せにしてやって欲しいと告げるのだった。数日後、神無月邸へ家宅捜査が入った。鈴の父の時は濡れ衣だったため無罪放免となったが、叔父夫婦は保険金詐欺含め罪状が多すぎてそうはいかないだろう。再び荒らされる我が家を離れて見ていた鈴を捜査の指揮していた宵が気遣うが、彼女は最後まで見届けると決めていた。そんな鈴に同じ制服姿の男性が声を掛けて来た。彼は宵の父であり、あの時家宅捜査を担当した一人だと告げた。鈴は義父があの時一人詫びてくれた人物だと知り驚くのだった。義父は怯えながらも自分を睨みつけて来た彼女の気概を気に入り、是非宵の嫁にと考え縁談話を進めたのだが、まさかの事態に困惑したのだと言う。色々あったが、これからも息子を宜しく頼むと残し、義父はその場を後にした。その後、叔父夫妻は逮捕され、今後美弥子が祥太郎と共に呉服屋を継ぐつもりだと聞いた。鈴は毎日宵に弁当を作り、甘いもの好きの彼のために甘味と文を添えていた。そんな彼女への返信を書く宵の様子で、了。不遇ヒロインものですが、叔父夫婦は相応の報いを受けたようで良かった。罪状的にここら辺が落としどころかなぁ。美弥子は結局駆け落ちを終了し、両親の代わりに呉服屋の経営をするそうだけど、この子が携わった方が色々上手く行きそうな気がする。家を離れていた間に世間にも揉まれたろうし。宵は割と最初から鈴に好感触だったおかげで両想いになってからはラブラブになるのも早かった。初めての恋文の文面は読んでて思わず泣けてきてしまった。この縁談が、実は鈴との縁談を望んだ宵の父によるものと判った時は、やっぱりねと思いました評価:★★★★★不遇ヒロインもの好きなら絶対におススメです。
2022.02.16
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2026年9月刊スターツ出版文庫著者:小原燈(敬称略)奏祈六家の名門に生まれながら、両親と死別した経験から声が出ず、加護の光も見えない「無能」として、虐げられてきた茜。彼女は、ある呪いによって日の光を浴びられない最強の軍人・嶺士との身代わり婚を命じられる。しかし嶺士は、茜の赤い瞳を「美しい」と全肯定して深く溺愛する。温かい愛に触れる中で、茜の閉ざされた心は優しく解きほぐされ、やがて彼女に隠された伝説の「清姫」の力、そして声を失った過去の真実が覚醒していくーー。呪われた二人が唯一無二の愛で運命を覆す、和風シンデレラストーリー。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 花宵茜=十二の年に両親と死別し、そのショックで声を失った少女。 黒鉄嶺士=影鬼を退治ずる影狩の隊長。 花宵晶子=茜の母方の従姉妹。優秀な奏祈師。 日向雅人=晶子の婚約者で、大店の後継者。 黒鉄千鶴=嶺士の母。元奏祈師。 花宵瑠璃=故人。茜の母。古来より、天音皇国では影鬼と呼ばれる異形に脅かされていた。だが、常人では到底太刀打ちできない存在にも天敵は存在する。神具と呼ばれる楽器と美しい声によって影鬼を鎮める奏祈師と加護を受けた光器で戦う影狩。花宵茜は、かつてその凄まじい力で「清姫」と呼ばれた奏祈師・瑠璃の一人娘だ。しかし、現在彼女は瑠璃の代わりに花宵の家を継いだ叔父の家の居候として使用人以下の扱いを受けている。叔父は勝手して家を出た瑠璃を花宵家の恥と嫌っていた。凡人と駆け落ちしたのならまだ許せた。だが、瑠璃が恋に落ちたのはなんと影鬼。その事実は秘匿されたのだが十数年後、屋敷の軒先に瑠璃と娘の茜が倒れており、深手を負ったらしい瑠璃は既にこと切れていた。叔父も寝覚めが悪いのか渋々茜を引き取ってくれたが、影鬼特有の赤い瞳をしており、その上、口がきけない姪を早々に持て余した。祝詞を紡ぐ奏祈師として声が出ないのは致命的だ。結局ただの厄介者のに金はかけられないということなのだろう。それでも茜は懸命に働いた。そんな彼女を忌み嫌い、こき使っているのが叔父の娘・晶子だ。優秀な奏祈師でもある晶子は瑠璃ほどではないものの、その腕を見込んで武具に加護を施してほしいと依頼が絶えない。加護付きの武具は光器となり、そのほとんどが影鬼の討伐部隊・影狩に卸され、残りは武具店で販売される。今日はその武具店の跡取りである雅人が来ているから晶子も機嫌が良い。二人は婚約しており、晶子が成人したら祝言を上げるそう。だが、茜は雅人のことが苦手だった。端正な顔立ちで貴公子のような立ち居振る舞いの彼に晶子は熱を上げているけれど、度々雅人から向けられる厭らしい目線に寒気を覚え、極力目を合わせないようにしている。あまりこっちを見ないで欲しい。でないと雅人が帰った後、嫉妬に狂った晶子に折檻されてしまうから。娘が姪に辛く当たっても叔父はいつも見てみないふり。この家で私を助けてくれる人はいない。漸く解放されて部屋代わりの納屋に戻った茜は、少ない持ち物の中から黒い石の耳飾りを耳朶に付けると再び外出。裏庭を抜けると遠くに山が見える。深く息を吸った彼女は心で母が教えてくれた祝詞を唱え、祈りを捧げた。数日後、門の雪かきをしていた茜は黒ずくめの男に声をかけられた。男は黒鉄嶺士と名乗ると当主に取り次いで欲しいという。そして身に着けていた手袋を外すと、冷たいだろう?そう言って茜の手に嵌めた。喋れないと知るや皆舌打ちをしたり面倒そうな顔をするのに・・・。彼のくれた手袋は耳飾りと同じく茜の宝物になった。翌日のこと、叔父に呼び出された茜は黒鉄嶺士に嫁ぐよう命じられた。全身黒ずくめの上顔を頭巾で隠しているなんてきっと不細工に違いない、影狩として有名な男でも結婚なんて御免だと部屋に閉じこもってしまったのだそう。どうやら、彼は昨日晶子に求婚しに来たらしい。彼女は既に婚約しているが、武具屋の跡取りと影狩の隊長では叔父としては黒鉄家に嫁がせたいと思うのは当然だ。しかし、雅人と結婚できないなら死ぬとまで言われてはなぁ。困り果てた叔父は、嶺士が花宵の娘を貰い受けたいと言っていたのを思い出し、ならお前でいいか、と思い至ったのだと。晶子からもそれがいいとせがまれてね。叔父は悪びれもせずそう言った。その夜、晶子のお下がりの振袖を着せられ、嶺士を待っていた。約束通りの時間に現れた彼は昨日のような黒ずくめではなく、影狩の制服姿だった。なんて、素敵な方・・・。彼は茜を見ると目を瞠り、その耳に光る耳飾りを見ると破顔した。もしかして君はいつもこの裏の山に向かって祝詞を唱えていないかい?何故それを?疑問に思ったが頷く、やはり君かと随分嬉しそう。話が違うと破談になってもやむなし、そう思っていた叔父は予想と違う彼の反応に困惑。本当にこの令嬢を貰い受けていいのだな?と問われ、戸惑いながらも承諾した。しかし、晶子は嶺士が美形と判るや私が行くと言い出たのでギョッとした叔父が慌てて引き留めた。その子ったら私の縁談を横取りしようとしたのよ。飽く迄悪いのは茜だと宣う晶子に嶺士はブチギレ。縋りつく晶子を振り払った。お前など彼女の足元にも及ばない。言われて、そんな無能より私が格下だというの?!さっきまでの態度はどこへやら、嶺士を睨みつける。茜、声をかけられ顔を上げた彼女に、この二人にお前の力を見せてやれと嶺士は微笑んだ。声は無かった。しかし、心で祝詞を唱えただけで茜の身体が凄まじい加護の光に包まれたのを、信じられないとばかりに叔父は唖然として見ていた。どう見ても姉以上の力なのではないか。そして晶子もまた、自分より遥かに強大な力の奔流を見て敗北感を味わっていた。悔しくなってつい、その子は影鬼との混血なのよ!と花宵家の秘密を暴露。しかし、嶺士はそれがどうしたと興味なさげな反応を見せると、茜を促し立ち去った。彼女の荷物を取りに納屋に寄った嶺士は酷い扱いを受けていたと悟って何とも言えない気持ちに。持って行くのはこの耳飾りと嶺士がくれた手袋だけでいいという茜が愛しくなり、馬で皇都に向かう。黒鉄邸に着いたのは翌日の昼。日中なのにほとんどの雨戸が閉まっていて薄暗い印象を受けた。が、外観とは裏腹に使用人の美桜は明るく、嶺士の母・千鶴は茜を歓迎した。あれから十日、買い物に出ていた茜は影鬼に遭遇、それを倒し襲われていた少女を助けたはいいが、嶺士が何故か日の光で大やけどを負ってしまった。聞けば、六年前、彼は影鬼の呪いを受け、日の光が天敵になってしまったのだという。痛々しいやけどを治してあげたくて、これは皆を癒してあげられる詞なの、母が教えてくれた祝詞を唱えた。すると見る見る火傷が治って二人はビックリ。これは呪いも解呪できるのでは?と期待したが、さすがに無理だった。やはり、その影鬼を見つけ出し倒さなければならないようだ。一方、晶子は茜の才を目の当たりにして嫉妬に狂っていた。父はもう関わるなと言うけれどこのままじゃ収まりがつかない。そんな彼女の耳に何者かが語り掛け・・・。希代の奏祈師と影鬼の混血なんて、まぁ凡人なわけないよね。晶子はそれにいち早く気付いていたので茜を虐めていたのです。それ+婚約者がちょっかい出してたのもあって面白くない気持ちも判る。この晶子の気持ちも判らないでもないんですよ。父親から瑠璃を越えろと期待をかけられ必死に努力するも、やはり清姫には程遠いと失望されてはやるせない。だからと言って虐めて良い理由にはならないのと、暗黒面を影鬼につかれて雅人と共にとんでもないことをしでかします。そして、嶺士ですが、過去に茜と会ったことがあり、あの耳飾りは黒鉄家当主に代々受け継がれているものをお守り代わりに彼女に渡していたのです。再会した時は痩せ細って大分印象が変わっていたので気付かず、花宵の娘=晶子と思い込んで求婚。当の晶子が嫌がってくれたおかげで探し求めていた茜を宛がわれたのは本当にラッキーでした。っても、大抵身代わりの方がお目当なのはデフォですから。最終的に二人の愛の力で因縁の影鬼を倒すことに成功した嶺士の呪いは解け、茜の父が突然変異の影鬼だったことが判明。このお父さんと瑠璃さんとの出会いとかちょっと気になります。評価:★★★★
2026.10.14
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12月3日 アース・スター文庫 銀狼陛下と無能の花嫁 マチバリ 大正帝都トロイメライ 予知夢の乙女と契約結婚 汐屋キトリ ヴァニラ文庫 悪女と呼ばれた死に戻り令嬢ですが、 堅物の大公殿下に溺愛されて契約婚をやめられません 百門一新 ヴァニラ文庫Miel 幼なじみのレスキュー隊員と子育て婚はじめました ~片想いだと思っていたら彼の愛が熱すぎます~ 木登12月5日 ベリーズファンタジー ちびっこ花嫁はビンボー公爵家を改革中 たちばな立花 前世で何もできなかった分、今世は何でも挑戦したい ~冷遇令嬢の万能フリーランス生活。 困るのは私を追い出した実家の方でした~ 雨宮れん12月10日 ベリーズ文庫 不運続きはずだったはずがスパダリ御曹司との偽装婚で最愛妻になりました 若菜モモ 極上のギャップ男子シリーズ タイトル未定 にしのムラサキ 天才外科医の密かなる執愛 ~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~ 伊月ジュイ 脅迫婚?! ~悪い噂の絶えない社長が、 実は誠実で一途だったなんて信じられません!~ 蓮水ちま ベリーズ文庫with バツイチだけど恋をしてもいいですか きたみまゆ マーマレード文庫 わたくし悪徳夫人ですから、 お飾りをやめて実家に帰らせていただきます~(仮) あさぎ千代春 天敵同期の爽やか貴公子は策士な御曹司でした ~恋人のふりさえ仕組んだ彼は、激重愛で逃がさない~(仮) 田崎くるみ12月18日 ヴァニラ文庫Miel 金融界の帝王が政略妻の私に5年越の愛を注いできます(仮) 御厨翠(敬称略)やはり12月期は多いですね
2026.10.10
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2024年5月刊富士見L文庫著者:みちふむさん大正時代の函館。旧華族の清子は顔の痣により冷遇されて育った。そんな彼女は、金のため顔も知らぬ実業家に嫁ぐように命じられる。清子が出向いた屋敷には、商才あふれる美貌の青年・朔弥がいた。しかし彼の目は不自由になりつつあり、これまでの縁談への苛立ちから彼女を拒絶。それでも清子は真摯に接し、朔弥も、その育ちゆえに真心で人を見る彼女に心惹かれ、互いにかけがえない存在に。だが、痣を知った岩倉本家は彼女を追い出そうとしてーー。彼と生きるため、清子はその人柄と聡明さで懸命に試練に向き合い……? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 伊地知清子=名家の娘ながら、生まれつき顔に大きな痣があることから家族に虐 げられていた。 岩倉朔弥=資産家の長男で清子の見合い相手。目が不自由で気難しい性格。 近藤正孝=朔弥の秘書。 岩倉哲嗣=朔弥の弟で岩倉家の次期当主。旧華族の流れを汲む伊地知家の長女・清子は、顔にある大きな青痣のせいで家族、特に母から疎まれて使用人以下の扱いを受けていた。毎日こき使われてくたくたではあったが、そんな彼女にも楽しみな事が一つ。家族の誰もが面倒がっていた先祖の寺供養を押し付けられた清子を住職夫婦が気にかけ、有名女学校出だという奥さんが勉強を教えてくれるようになったのだ。小学校しか出ていない清子は、おかげで色々な事を学べたし、奥さんが紹介してくれる繕い物の内職で幾ばくかの現金を手にする事が出来た。息子たちのお下がりだけどと貰った本と読み終わった新聞を貰い帰宅すると、珍しく父から呼び出しが。恐る恐る出向くと叔母が来ており、母と優子も揃っていて、自分に縁談が来ていることを知らされた。お相手は貿易商を営む岩倉家の長男・朔弥。裏では成り上がりと陰口を叩かれつつも、社長は商才がありかなりのやり手らしい。当初、両親は優子を嫁に出す気だったようだが、直前で勿体ないと考え直し清子に変更すると叔母に話すと、後日岩倉家に行くよう命じた。色々ショックではあったが、もし嫁いで上手くいかなかったらうちの寺で暮らせばいいと奥さんから励まされ、何とか覚悟はできた。数日後、朔弥が暮らすと言う岩倉家の別邸へやって来た清子は、半日近く待たされた挙句、見合いをすっぽかされてしまった。しかし、根気よく待ち続けていると夜半に帰宅した朔弥はビックリ。結婚なんてしないと、屋敷の使用人の瀧川が止めるのも聞かず、雨の降る中彼女を追い出した。このまま帰ったら父に何と言われるか。母からの折檻も恐ろしい。とぼとぼ歩いていると瀧川が追い付いて、岩倉邸に戻ることに。あの後、自分の乳母を務めていた瀧川に叱られた朔弥は清子を連れ戻すよう命じていた。だが、雨に当たったせいか彼女は熱を出して寝込んでしまい、医師に診てもらうと栄養失調だと判った。名家の娘が栄養失調?不思議に思いながらも彼は暫く屋敷で養生させると、秘書の近藤に伊地知家を調査するよう頼んだ。何とか回復した清子に、朔弥はある提案を持ちかけた。生まれつき視力が弱く不自由な生活をしてはいるが、頭が良く専務として働く彼には縁談がひっきりなしに申し込まれているのだそうだ。そこで、実家に戻り難いのであれば許嫁のフリをして自分の身の回りの世話をして欲しいと。新聞を読むことができるのも助かると話す彼に、清子は自分ばかりが得してないかと気にはしていたが、提案に応じた。彼は全く見えないわけではないものの、輪郭や色が多少わかる程度でやはり常人とは違い介助が必要な場合も多い。着替え等は瀧川が手伝い、おさんどんや瀧川の補助、そして毎朝新聞を3紙ほど読み聞かせるのが清子の仕事となった。朔弥は自分に歯がゆく思うことがあるのかよく癇癪を起し、気難しい性格だ。だが、優しい面もあって瀧川から聞いたのだろう、荷物の少ない清子の為に色々用立て、聡明な彼女を褒めた。彼女が新聞で得た昨今の情勢から読み解いて出した案は、いくつも当たって随分儲けさせてくれた。人柄も洞察力が高いのも気に入った。この頃にはフリではなく、本当に自分の妻になってほしいと朔弥は思い始めていた。瀧川の話では彼女の顔にはかなり目立つ青痣があると言う。本人も気にしているようだが、朔弥には見えないし、それがなんだと思う。しかし、当の伊地知家が今になって清子を嫁に出すのを渋り始めたのだ。調査により、家族で彼女を蔑ろにしていたのは知っている。だが、いなくなって初めて清子の重要性に気付いたのだろう。最近詐欺に遭って事業も上手くいってないようだし、取り戻せないなら結納金を多く請求してきそうだ。多少は色を付けてもいいが、ずっと援助を期待されても困る。そこで後日、上手い話と脅しも付け加えて結婚の許可を迫ると、当主は渋々承諾。問題は朔弥の家族か。案の定、母は痣のある娘なんてと反対しているようだったが、実力主義の父は、これまでの清子の功績を話すと随分と気に入ったようだ。弟の哲嗣も手放しではないが一応祝福してくれている。清子もホッとしたようではあったものの、どうも父たちに会った日から様子がおかしい。父母は面と向かって彼女に何か言ったようには見えなかった。となると哲嗣の方か。案の定、哲嗣は清子の容姿について兄がかわいそうだと彼女を責めていて・・・。兄のことが大好きな哲嗣はこの結婚を反対していました。お人好しだが気立てが良く、頭も良い清子を朔弥は自分のことのように自慢に思っており、弟にも彼女の良さをどう判ってもらおうか模索。一方、伊地知家は所有していた貸物件が阿片の闇取引会場にされていたことにより、あらぬ疑いを掛けられたせいで見る見る没落。優子も学校を辞めざるを得なくなり屋敷を売却し、町を去ることに。これはもう完全に娘を虐げていた罰ですね。その頃、朔弥たちも所有する鉱山で暴動が起きて危機に陥っていた所、清子の活躍で鉱山を管理させていた社員達が横領していたせいだと判り事態は収束を向かえます。朔弥はこの件で一層清子に惚れ直し、哲嗣も蟠りは残しつつも彼女の優秀さを認めるのでした。その後、朔弥と清子は結納を交わし、正式に婚約者となって幕。清子さんの才媛っぷりだけでなく、その人となりなんかも良く描かれていて、これは人嫌いさえも惚れさせるわと納得。続編もあるそうなので次は朔弥の溺愛も見られるんでしょうかね。評価:★★★★★
2024.06.30
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2025年7月刊アルファポリス文庫著者:加藤伊織(敬称略)帝都の片隅で、母娘つましく暮らしていた美緒。しかし母の死を機に、父の借金のかたとして売り飛ばされてしまう。そんな彼女を救ったのは、南条蒼真。彼は、帝都を魔性から守る六家のひとつーー名家南条家の当主であった。美緒の亡き母も六家の生まれであり、美緒もまた特別な血筋なのだという。蒼真は美緒の血統を理由に、婚約をもちかける。恩に報いるべく受け入れた美緒だったが、ともに過ごすうちに互いに惹かれ合っていき……? 薄幸の少女と愛を知らない青年の大正恋愛奇譚。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 中村美緒=魔性を浄化する力を持つ少女。 南条蒼真=南条子爵家の当主。 伊倉辰巳=美緒が暮らしていた長屋のお隣さん。北大路鞠子=美緒の母方の従姉妹。長屋で母と二人で暮らしていた美緒は、数日前に突然死した母の骨壺を前に一人途方に暮れていた。夫の暴力に耐えきれず、幼い娘を連れてこの長屋に逃れて来た母は、身を粉にして働いて美緒を育ててくれた。決して楽な暮らしではなかったけれど、父がいないだけで天国だった。しかし、長年の苦労が祟って母はあっけなく逝ってしまった。貧しくて葬儀も出来なかったがお隣さんの千鳥のおかげで何とか荼毘に伏すことが出来た。これからどうしよう。奨学金で女学校には通えていたものの、美緒一人の稼ぎでは生活も立ち行かない。母を亡くしたショックから憔悴しきっていた彼女は突然無遠慮に玄関の引き戸を開けて入って来た男の姿を見て驚愕。十年ぶりに会った父はあの頃より不健康そうで意外にも母の遺骨を抱いて号泣している。この男なりに母を愛していたのかもしれないが今更悔いても遅い。しかし、泣いていたかと思えば今度は美緒の手を引くと一緒に来いと言う。まったく、方々探し回らせやがってと愚痴る父は遅れて入って来た長身の男・滝助にこれで借金はチャラになりますよね?とへらへらしている。こいつは母親譲りの別嬪だから。そう言い募る父・武松はどうやら賭場でかなりの借金を重ねていたらしい。総額二千円と聞いて目を剥く美緒にあんたは借金のカタとしてこいつに売られたんだと滝助が説明。当然、売られる先は遊郭。気の毒そうにしながらも腕を引っ張っていく滝助に必死に抵抗していた美緒は丁度帰宅したらしい千鳥に助けを求めた。するとなんと彼と千鳥は顔見知りのようだ。父には横柄な態度だった滝助が千鳥を辰巳の兄貴と呼んでへコヘコしている。千鳥は滝助から事情を聞くと、その子は俺の妹分なんだと言い、どうにか見逃しちゃくれないかと頼んでくれた。だが、借金の額が大きすぎて自分の立場ではどうにもできないと滝助も困り顔。兄貴の方から親分に頼んでくれ等やり取りをしていたが、埒が明かないと千鳥はお前を助けてやれる奴に心当たりがあるから少しの間滝助の言う通りにしていてくれと出掛けて行った。兄貴に頼まれたからとまだ遊郭には連れて行かれなかったが、こうした事情で売られて来た娘たちを閉じ込めておくらしい座敷牢のような所に入れられた。千鳥がヤクザの身内であったのには驚いたけれど、今は家を出て自由に暮らしたまに情報提供の仕事だけ手伝っているのだと聞いた。そんな彼が身内ではなく誰に助けを求めに行ったのだろう。比較的高給取りと言われている仕事だって月給四十円のご時世だ。ポンと二千円を出してくれる人なんて・・・。ここに入れられて数時間。途中滝助からの差し入れを貰い、それから少し経った頃、何だか部屋の向こうが騒がしい。すると滝助が追いすがる中、一人の青年が彼女は私の婚約者です、父親がこさえたという借金は私が払いましょうと側にいた老齢の従者に指示をしていた。誰?品の良いスーツ姿の男性は南条蒼真と名乗り、滝助もあの退魔六家の!?と慄いている。この国を守護する退魔の力を持つ六つの家のことを退魔六家と呼ぶのを子供でも知っている。言葉の通り全額小切手で支払われ美緒は晴れて自由の身に。千鳥こと伊倉辰巳は蒼真の先輩なのだそうだ。同じく六家の一つ・北大路家の血を引く十和子の娘がクソ親父のせいで遊郭に売られそうになっていると辰巳から連絡を貰い、急いで駆け付けてくれたのだとか。まさか母がそんな大層な家のお嬢様だったなんて。なのにある日武松と駆け落ちして行方知らずになり、後に娘を産んでいた。どうして母はあんな父に惚れて駆け落ちまでしたのだろう。蒼真は人は変わると言っていた、良くも悪くもと。確かにそうなのかもしれない。駆け落ちまでしてついて来たのに父は悪い方に変わってしまったのだ。やるせなくなるも、それよりこれから私はどうなるのかと不安が押し寄せた。彼は先程連れ出す際に言っていたようにあなたには退魔の力がある。六家の人間も力を持たない者が増え、断絶の危機。そうならないためにあなたを私の妻に迎えるつもりですとキッパリ。なので今日から南条家で暮らしてもらうと言う言葉に借金を肩代わりしてもらった以上、自分に拒否権は無いのだと悟った。南条家での暮らしは正直かなりきつい。ここは西洋かぶれですからねと話す古参の使用人の緒方とキヨの言う通り、生活様式や食事に如実に表れていた。先ずパンとハムエッグなんて朝食に馴染みが無いし、テーブルマナーもチンプンカンプン。じっくり味わえて美味しいと思えたのは食後に出されたミルクティーくらい。しかし、それ以上に頭を悩ませていたのが将来の夫になる蒼真の朴念仁ぶりだ。根は悪い人ではないのは判っている。余程女という存在が気に食わないのか、ここで暮らすに当たってキヨたちにお嬢様の衣装も用意して差し上げませんととアドバイスされ、外商を呼んでくれたのは良いが人の意見も聞かずにちゃっちゃと買い物を済ますとこれで文句ないだろうと言わんばかりの態度に聊かムッとした。婚約者に相応しい装いをしてくれという意見には従うつもりだったのに、何だかやりきれない。数日後、母の実家に蒼真を伴い北大路邸にやって来た美緒は力を失くすまでは退魔の任務にも付いていたと言う従姉妹の鞠子の指導を受けることに。鞠子の母の文子が蒼真の母・照子の姉だそうで遠慮のない二人のやり取りに納得がいった。その際、言い合いになった二人がヒートアップしてしまい、つい口が過ぎてしまった彼は鞠子どころか美緒のことも傷付ける物言いをしていたため文子がブチ切れ水をぶっかけられていた。それで聊か頭が冷えたのか一応謝罪はしてもらったものの、美緒さんにまであんな言い方するなんてと鞠子も大層な怒りっぷり。彼女は美緒が気に入ったのか丁寧に退魔法を教えてくれて、更にはお気に入りだと言うクッキーも土産に持たせてくれて、蒼真への対応の仕方も伝授してくれた。毅然として嫌なことはちゃんと言いなさい。そうでもしなきゃあいつは気付かないから。後日、同じく退魔六家の一つ西垣内家の長男・輝邦が屋敷を訪れ、あいつとは幼馴染なんだと蒼真のことをあれこれ教えてくれた。そしてあいつはあいつで良かれと思ってやってるんだ、と言う。とにかくクソ真面目で、出て行った母親のことで女性全般に対して厳しくてね。だからムカつくことも多いとは思うけど。先日の北大路家でのことを聞いてそう話す輝邦に頷くも、どうにも自分と蒼真との間に分厚い壁が立ち塞がっている気がしてならない。あれから一度、蒼真に付いて退魔の仕事に出掛けた。少々苦戦したけれど、無事に浄化に成功したものの、北大路特有の力は美緒を疲弊させた。なのに、鞠子のアドバイスを受け彼に百貨店に連れ出された彼女は相変わらずな言動に早くもげんなり。でも憧れだったパーラーでクリームソーダをご馳走してくれたのには素直に喜び、珍しくはしゃぐ美緒の様子に彼もまんざらでもない様子。それから暫く経った頃、学校帰りに武松に待ち伏せされていた彼女は金を無心された挙句暴力を振るわれると言う事件が起きた。美緒を屋敷に引き取り婚約者にしたのは武松が接近してこない様だった。だが、遊郭には売れないが金持ちの家に嫁ぐならと美緒に金の無心をしてくる父に怒りが湧いたが、連絡を受けて飛んできた蒼真が手切れ金を払って接近禁止を言い渡してくれた。とはいえ、金蔓を早々諦めるはずがない。また付き纏われても困ると秘密裏に手を打つ蒼真。当初に比べて二人の仲はかなり近づいてきたのだが、ふとした行き違いと精神が不安定になっていたことで美緒は北大路家に行ってしまい・・・。中盤までの蒼真の言動が読んでて「なんだ、こいつ」って感じだったんですけど、美緒の方も結構好き嫌い分かれそうな考え方してるかも。良い子なんだけどやはりどうしても卑屈になっちゃうからなんですかねぇ。お父さんの件で精神的ストレスから一時力が使えなくなっちゃったり、思い悩むことが増えていた彼女を勇気づけたのは鞠子さんでした。どうせなら北大路家の養子になりなさいよと文子にも誘われ、あれから父も急死していたこともあり美緒はその提案を承諾。自分の言動を猛省した蒼真との手紙のやり取りで漸く彼女も彼と生きることを決意します。かの有名な八百屋お七との霊との対話での彼女の心の成長は著しく、その能力の才能が垣間見れる一幕だったと思います。その調子でいつか蒼真の母親の照子さんとの仲も取り持ってほしい気も。それにしてもいつの間にか死んでたあのクソ親父、やはり始末させたのは蒼真なんでしょうか。この頃には美緒にベタ惚れだったし、やりかねないヒーローだからなぁ。評価:★★★★☆
2025.10.08
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2025年12月刊スターツ出版文庫著者:クレハ(敬称略)玲夜そっくりな鬼のあやかしによる襲撃が落ち着き、ひと段落した柚子と玲夜。しかし、息をつく間もなく、今度は天狗のあやかし・烏羽家が鬼龍院家に襲い迫る。過去の因縁から鬼への復讐を企んでいた烏羽家だったが、その事情は大きく変わる。「柚子は俺の花嫁だ」なんと、柚子は烏羽家当主の”花嫁”でもあったーー。本気で柚子を求める恋敵に、玲夜の柚子への独占欲と愛はさらに加速し…。「柚子は俺の花嫁だ。なにがあろうとな」天狗と鬼、二人のあやかしが花嫁を奪い合う、天狗編開幕。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 鬼龍院柚子=鬼の一族の次期当主・玲夜の「花嫁」 鬼龍院玲夜=柚子の夫。強大な力を持つ鬼のあやかし。 猫田透子=猫又一族の次期当主・東吉の「花嫁」で柚子の友人。 烏羽朝霧=天狗一族の当主。鬼龍院本家で起こった襲撃事件。犯人は玲夜の父・千夜の異母兄・夜斗であった。先代当主を裏切り、天狗の一族・烏羽家に身を寄せていた夜斗の母は早くに亡くなり、夜斗は虐げられて生きていたそう。そんな彼が腹いせで神器を持ち出しそのまま出奔。玲夜にそっくりな容姿から数多の女に取り入りヒモ生活を送っていたと聞き、少し前にSNSを賑わせたスキャンダル画像は夜斗のやらかしだったと判り玲夜は激怒した。はじまりの花嫁であるサクを巡って鬼と天狗は未だに仲が悪い。そんな関係性で烏羽家で一人置かれていた夜斗が歪んでしまったのは仕方ない事なのかもしれない。しかし、神器を使っての事件や鬼龍院本家の襲撃事件は情状酌量されたとしてもかなり厳しい処分を受けることだろう。そして、夜斗の証言によって、裏で糸を引いていたのが烏羽家当主と知って目を瞠った。まさか柚子に懐いていた朝霧が当主とは。変化の術で幼児に化けて警戒されないよう彼女に近づいた朝霧は交流するうちに柚子が自分の「花嫁」と認識してしまった。サクの生まれ変わりで神の巫女である柚子なら違うあやかしの「花嫁」に選ばれても不思議はない。再び天狗と相対することになるだろうと玲夜は柚子を守るため気を引き締めた。知り得た情報を柚子に伝えると彼女はやはりショックを受けていた。出来れば警備が万全な屋敷に閉じこもっていて欲しいが、調理専門学校をかなり休んでいることもあり、いい加減登校したいのだと頼まれて玲夜も渋々承諾。だが、久しぶりに会った芽衣から今後のことについての認識の甘さを指摘された上に説教され、自覚がある彼女は思い悩むように。芽衣の言葉を噛み締め、透子に相談してみると彼女も芽衣と同意見。いくら調理師資格を取ったとてあの高級住宅街に開店するとか正気か?と思ってた。ズケズケ言ってくれるのは親友を思ってのことだろう。でも、確かに透子と芽衣の言う通りだ。なんかもう、皆が美味しいと言ってくれたってだけで店を持ちたいとか、猛省する柚子を見て言い過ぎだと東吉が諫めたが、けどね、そのくらいの我儘言ってもいいんじゃない?と透子は微笑んだ。実の家族に虐げられていた柚子は傍で見ていても辛そうで我儘の一つも言えなかった。まぁ、料理学校出てすぐに店を出すと聞いた時はバカなの!?と玲夜に意見したいくらいだったそうだが、彼と会って以来いい方向に変わっていったから良かったと喜んでくれていたらしい。透子なら芽衣や澪とも仲良くなれそうと今度連れてきていいかと聞いて快諾を貰い、店については撫子や沙良、桜子にも意見をきくことにした。「花嫁」たちの集い・花茶会にて、柚子はせっかく取った資格や趣味が結婚して以来出来ずにいる「花嫁」たちの話を聞き、あの店舗をワークショップにしようと提案。鬼の一族の護衛達も付くので安全面は確か。フラワーアレンジメント教室をしたり、お菓子作りなど、宝の持ち腐れになっていた特技を生かし、交流の場にする。花茶会を息抜きにしている「花嫁」も多いのに、開催数が少ないのを気にしていたので我ながらいいアイデアだと思う。柚子の話に耳を傾けていた者たちは大喜びで撫子たちの許可も得て柚子はワクワクしていた。そして、撫子から聞いたのは瑶太と花梨のこと。両親の悪影響を受けていた花梨は柚子が玲夜の「花嫁」に選ばれたのを妬んでやらかした事件。柚子本人よりも妖狐一族の撫子の怒りが凄まじく、二人の婚約は解消。花梨は両親共々地方に追いやられていた。だが、反省の色を見せずにいた両親と違い、頭も冷えて目が覚めたのか花梨は独り立ちしたと聞いていた。少し前に撫子から花梨をどう思っているかと聞かれ、色々思う所もあるけれ恨んではいないと答えていた。撫子によれば、花梨の反省を確認した上でまだ二人が思い合っていることからついに接近禁止を解いたそうだ。そして花梨を瑶太の「花嫁」として認めると宣言。瑶太が早速花梨に会いに行ったと知って柚子は胸を撫で下ろした。花梨とは今後、会合などで顔を合わせることもあるだろうが、その時はその時だ。帰宅途中、心配する小鬼たちを宥めていた時、柚子の乗る車が何者かの襲撃を受け・・・。約一年ぶりの本編は新章に。度々名前は出て来ていた烏羽家が動き出し、狙いが柚子と判り玲夜たちは彼女の守りを固めます。その裏で柚子は漠然と考えていた未来予想図がとんでもない甘い考えだったと思い知らされ、悩み始めます。まぁ確かに調理学校出たての子が店を出す立地じゃないよね(^_^;)玲夜は客は俺だけでいいだろう、みたいなこと過去に言ってましたけどそんな道楽上等みたいな店を出したいわけじゃないからっ。そこんとこちゃんとわかってた?と透子や芽衣に指摘された彼女は、「花嫁」たちの憩いの場としてあそこを使えばいいと提案。撫子たちからも賛同を得て、企画を考えウキウキしていた柚子は何者かの襲撃を受けるも龍の奮戦によって無事に屋敷に帰りつきます。しかし、そこで再び襲われて、といった展開です。キリがいいからと続きは次巻へ。来年はアニメも始まるし、さすがにあのラストからまた一年空くとかは無さそう。多分、コミックスの9巻と同時期発売だと思います。書き下ろしの番外編は透子目線の過去バナと、柚子目線でのスピンオフ作品に通じるお話の二本。「鬼姫~運命の契り~」の冒頭の試し読みが収録されています。凄く久しぶり本編、四巻の内容すっかり忘れてました。続きが楽しみです。評価:★★★★☆
2025.12.30
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2024年5月刊スターツ出版文庫著者:クレハさんあやかしの本能を失った玲夜だったが、柚子への溺愛っぷりは一向に衰える気配がない。しかしそんなある日、柚子は友人・芽衣から玲夜の浮気現場を目撃したと伝えられる。驚き慌てる柚子だったが、その証拠写真に写っていたのは玲夜にそっくりな別の鬼のあやかしだった。その男はある理由から鬼龍院への復讐を誓っていて…!?花嫁である柚子を攫おうと襲い迫るが、玲夜は「柚子は俺のものだ。この先も一生な」と柚子を守り…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 鬼龍院柚子=玲夜の「花嫁」 入籍後は将来の夢の為に調理師専門学校に通っている。 鬼龍院玲夜=あやかしの頂点・鬼の一族の次期当主。 鬼龍院千夜=玲夜の父。鬼龍院家の当主。 狐雪撫子=妖狐一族・狐雪家の当主。夫との関係に悩み、謎の人物から預かったあやかしの本能(花嫁への執着)を消し去る・神器で見事離婚を成し遂げた「花嫁」の穂香。彼女は神器で玲夜をも刺し、結果彼もあやかしの本能を失うことに。だが、玲夜の柚子への想いは本能など無くとも揺らぐことなく、二人は離婚の危機を乗り越えた。神器はあやかし・烏羽一族が管理していたそうだが、何者かに持ち出されていた。そこで神子・サクの生まれ変わりである柚子によって神の元に丁重に返還することになった。事件はこれで終息したように思われたが、気になるのは穂香の証言で、神器をくれたのは玲夜そっくりの青年だということ。同じ頃、玲夜の側近の一人・桜河は女性秘書からのタレコミで玲夜の浮気を示唆され、首を捻っていた。良くも悪くも今は柚子一筋の主が不倫するなど有り得ない。だが、主の名誉のために桜河は調査に乗り出した。一方、柚子は調理師専門学校の同期で友人の芽衣からショッキングなものを見せられていた。それは、玲夜らしき人物が女とイチャつき、ホテルに入って行く姿の画像。離婚調停になった時に有利を取れるようにとわざわざ何枚も撮影してくれたようだが、確かに似てるし、親しい人でなければ本人と勘違いしそうだが、柚子には一目で別人だと判った。紅い瞳もしているしあやかしなのは間違いなさそうではあるけれど、服のセンスといい雰囲気もやはりどこか玲夜とは違う。そして、穂香の証言を思い出した柚子は芽衣に頼み画像を自分のスマホにも送ってもらった。後日、最近起きた事件と神器の取り扱いについてを公表するため、大規模なパーティーが催された。千夜によって事件が一応解決したこと、そして柚子が神子であることが明かされ、一気に注目された時は冷や汗を掻いたが、未だに鬼龍院の分家筋の一部から彼女は玲夜の妻として認められていない。千夜によればそんな柚子が神と意思を通わせる稀有な存在だと知らしめることが重要だと言う。話を聞き、古参の側近達に自分が気に入られないのは人間だからではなく、「花嫁」だからではないかと漠然とだが感じ始めていた。なのにここに来て玲夜の本能が消えた。反対派にしてみれば好機だろう。彼らがただの人間の娘など不要だと騒ぎ出す前に千夜が手を打ってくれたことに柚子は感謝した。そして、撫子も交えて穂香が起こした事件について話し合った。例の画像を穂香に見せた所、間違いないと証言したらしく、この人物が関わっているのは確かなようだ。しかも、桜河の調査によれば、現在ネットでも玲夜の不倫を匂わせる画像がわんさか出て来たらしい。早々にもみ消したが、これだけ似ていれば勘違いされるのも無理はない。元の神器の管理者である烏羽家が沈黙を貫いているのも気になるが、同じ御三家ながら鬼龍院家とは徹底的に仲が悪く、撫子の方から探りを入れることになった。そもそも、今回の件、バックに烏羽家が関わっている可能性が高い。あの青年はもしかして烏羽家の者ではなかろうか。そんな最中、撫子の息子で次期当主の藤史郎の「花嫁」菜々子が、夫婦関係に悩み、神器を貸してくれないかと柚子の元を訪れ・・・。柚子LOVEの玲夜の様子を見て、夫の真意を確かめたくなった菜々子さん。まろとみるく、二匹の神獣たちにより神器は奈々子に貸与された後、柚子たちを交え、藤史郎との話し合いに臨みます。そこで知った夫の本音に「花嫁」だからではなく、愛しているという言葉を聞き、無事狐雪家次期当主夫妻は元鞘に。本能が消えたとして本当に愛し合っているならば不幸にはならないはず。でも一難去ってまた一難。屋敷に訪れたのは玲夜そっくりの5歳くらいの少年・朝霧。余りにも似ているので最初は玲夜の隠し子かと一瞬疑ったものの、有り得ないと本人が否定し、一先ず本家預かりとなります。その子供を見て千夜の母・玖蘭が語ったのは自らの夫であった先代当主のこと。実は先代当主の妻は「花嫁」であったこと、妻に執着し溺愛していた彼は後にその「花嫁」から捨てられ精神を病んでしまったこと、その後に玖蘭が嫁いで生まれたのが千夜であると明かされ、一同は騒然。柚子は「花嫁」に対して嫌悪感を持つ一部の古参幹部たちの心情を知るのでした。「花嫁」は所詮は人間であり本能に縛られない。実はこの手の裏切りも珍しくは無い様で、義祖父が被害に遭ってたという事実に胸を痛めます。そして、玲夜そっくりの人物の正体も明らかに。義祖父の子を身籠ったまま烏羽の当主の元に行った「花嫁」がそこで産んだ子、千夜の異母兄だと判ります。鬼龍院家と烏羽家が犬猿の仲なのが納得の因縁話でありました。最後ではその人物が柚子に会いに来たエピソードも有ったり、朝霧も恐らくこの人の子じゃないかなーと予想してますが、どう決着をつけるのやらって感じで次巻へ続く。書き下ろしの短編は引き続き、本編では出番が少なくなった透子とにゃん吉のお話です。秋にコミカライズ版の6巻が出るらしいから、こちらも早ければ同時で発売かな。評価:★★★★★
2024.05.30
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2025年4月刊こはく文庫著者:ドゴイエちまきさんアリア=メリーゼルは男爵家の一人娘。貴族でも自由恋愛が主流となってきたなかで、控えめで自分の容姿にも自信がないアリアは、華やかな女性たちを眺めては心を痛め、社交の場に出ても壁の花として一人でいることが多かった。家族はそんなアリアを温かく見守っていたが、いつまでも家族に甘えているわけにはいかないとアリアは自分を奮い立たせ、今日もまた夜会にやってきたのだった。そこへ、白い騎士服を着こなした美しい青年が声をかけてくる。多くの優秀な騎士を輩出するウェズリー侯爵家の嫡男、イグニス=ウェズリー。国中の令嬢が憧れるイグニスは、声をかけられ呆然とするアリアに「可憐だ、着ているドレスも似合っている」と告げ、ゆっくり話がしたいと屋敷に招待する。まさかの出来事に、動揺しつつも約束の当日を迎えたアリア。ところが、皆の憧れのイグニスには、とある秘密があって……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用、登場人物 アリア=男爵家の一人娘。地味で控えめな性格。 イグニス=侯爵家の嫡男。アリアを気に入り屋敷に招く。 ルーチェ=イグニスの妹。 シェーラ=イグニスの元婚約者。親友のエルザと共に参加した舞踏会で壁の花になっていたアリアは、令嬢達から絶大な人気を誇る騎士・イグニスに声を掛けられ一人パニックになっていた。今夜はエルザの恋が成就した記念すべき日。私は付き添いみたいなものだから敢えて壁際に控えていたのに。にしても本当に素敵な方ね、侯爵家の嫡男で騎士団の副団長。一番の優良物件と言われているのも判る気がする。しどろもどろになりながらもなんとか受け答えしていたアリアは、ふとイグニスの胸元に目を止め、さり気なく施された意匠を褒めた。男性はあまりレースの類は忌避されるのに、こういう使い方もあるなんてすばらしいです。素直に褒めると彼は頬を赤らめていたので驚いた。失礼な事言っちゃったかしら?オロオロしていると徐に真顔になったイグニスから屋敷に招待したいと告げられた。後日招待状を送りますと言っていたけれどきっと社交辞令よね。あれから二週間。ほらやっぱり招待状なんて来なかった。暫くドキドキして期待していた自分がバカみたいだ。こんな地味な私にあの人が興味を持つはずがない。すっかり諦めモードになっていたアリアの元にウェズリー侯爵家から招待状が届いたのは翌日のことだった。引っ込み思案なアリアのことを気に掛けていた両親はまさかの侯爵家からの招待に驚いたものの、うちの娘は世界一可愛いし美しいからイグニス様の目に留まってもおかしくないと大はしゃぎ。いや、私が美人とか言ってるのお父様たちとうちの使用人たちだけよ。恥ずかしくなりながら迎えに来たイグニスとアリアはウェズリー邸へ。侯爵家では夫人とイグニスの妹・ルーチェから熱烈歓迎されアリアは困惑。息子を末永く宜しくとか一体・・・。夫人の言葉に慌てふためいた彼から自室に案内されると、招待した理由を教えられた。先ず、親友の恋の成就を自分のことのように喜んでいたのを見てこの人ならと思ったと言う。それに舞踏会での衣装の拘りポイントに気付いてくれたのが嬉しかったそうだ。そして、イグニスは決意したように俺はレースや刺繍、花や化粧に興味があるんだと告白。世の中には色々な趣味を持つ人がいる。時には世間にあまり認められないような趣向の人も。だが、両親もそうだがアリアも一々偏見は持っていない。迷惑さえかけなければ好きにすればよいと常々思っている。きっとお化粧されたらもっとお美しくなられますね。そう言って微笑むと化粧は自分でなくて他人にしてやるのが好きなんだ!と力説。詳しく聞くにルーチェのドレスを選び、化粧を施したのもイグニスで、そういうのが好きでハマっているのだと。君みたいにすべて許容してくれた女性は家族以外では初めてだ。感動に打ち震えていたイグニスは、どうか俺に君のコーディネイトと化粧を任せてくれないだろうか!と頼まれ了承したアリアは数時間後、別人のように変身した自分の姿に驚いていた。ドレスと髪型、化粧だけでこんなに変わるもの?夫人の若い頃のドレスだそうだが、流石は一級品全く古さを感じない。あなたの方が似合うからと譲ってくれるという。それに加え、ノーチェからも褒めちぎられまんざらでもない気分になって来た。イグニスとは以来友人関係となり、あれから度々お茶している。数日後、いつものように二人でお茶得お飲んでいると彼から夜会に誘われた。そしてドレスを贈らせてほしいと。お古とはいえ、いかにも高価な夫人のドレスを戴いただけでも申し訳ないのに、彼のお眼鏡に叶うようなドレスなんて一体いくらするのやら。流石に遠慮するとこれも自分の趣味だから付き合って欲しいと頼まれ、渋々頷いた。でも貰いっぱなしは良くないから私からも何か贈らせてほしいということで話はついたのだった。数日後、彼と夜会に参加したアリアはかつてないほどモテてた。戸惑いからつい間違えて度数の高いアルコールを飲んでしまった彼女は介抱するイグニスにあなたに心惹かれていると打ち明けた。するとイグニスの方も同じ気持ちだと判り、二人は交際をスタート。昨今は政略結婚は廃れがち傾向で貴族でも恋愛結婚が主であった。おかげでトントン拍子に話は進み両家合意の元婚約者となった二人は幸せの絶頂にいた。そんな最中、アリアはイグニスの元婚約者だと言うシェーラに会った。イグニスはどの面下げてと終始機嫌が悪そうで、詳しく聞くにお互いの祖父同士が親友だったのが縁で婚約したのは良いが彼女は宰相の息子のレインと浮気をしていたそう。しかもレインはルーチェの婚約者だった。そればかりかイグニスに隠れてノーチェに嫌がらせを繰り返し、怪我を負わせたことからブチ切れたイグニスは婚約解消を宣言。非はシェーラにあるので彼女の実家も聞き入れてくれたそう。だが、シェーラの方は未練たらたらに見える。キツく睨まれたこともあり嫌な予感がした。それから暫くして、地方都市で災害が起こり騎士団が出動することが決まった。アリアは彼の無事を願いアミュレットを贈ろうとエルザと町に来ていた。だが、予想外の人混みにエルザと逸れた彼女は大柄の男に連れ去られてしまい・・・。無自覚な地味美人令嬢が令嬢人気ナンバー1の騎士に見初められたお話です。婚約者になり結婚も秒読みになっていた彼女を羨み、シェーラの手の者によって攫われてしまいます。この元婚約者、別にイグニスのことも顔と家柄だけを気に入っていたらしく、その言葉にアリアもブチキレ。言い合いになってるうちにエルザから連絡が行って助けに来てくれたイグニスが到着。シェーラは捕縛され厳しく罰せられることに。騒動後、彼はアリアにプロポーズして終わっています。お話自体は非常にシンプルで王道展開でした。なので、さらっと読みたい方におススメ。評価:★★★★☆
2025.05.08
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2025年7月刊レジーナブックス著者:美杉日和。(敬称略)我が家はいつでも可愛い妹を中心に回っていた。両親はいつも妹を優先し、妹はなぜか私のものばかりを欲しがった。大好きだった人形や誕生日のプレゼント、そして今度は私の婚約者。幼い頃からの婚約者アレン様を妹が寝取り、彼の子を身ごもった。妹は私に婚約者を譲るよう迫り、両親たちも了承した。ただ彼らは知らない。アレン様が自身の領地運営を全て私に任せていたことを。その領地は破綻寸前であることも。そう、彼の資産も性格も、全てにおいて不良債権だったのだ。今更いらないと言われても、モラハラ男なんてお断り! 婚約解消した後は自由自適に暮らすつもりだったのに、なぜか幼馴染の冷徹宰相に婚約を申し込まれて……!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 オリヴィア=節約上手の才女。婚約破棄されたのを機に家を出た。 マルク=宰相。オリヴィアに片思いしている。。 ユノン=オリヴィア付きの侍女。 アレン=オリヴィアの元婚約者の顔だけ男。 シーラ=オリヴィアの妹。本当にあんなクズ男と結婚されるつもりですか?身支度を手伝いながらぼやく侍女・ユノンの言葉にオリヴィアは苦笑した。自分でもわかっている。だが、貴族の婚約は謂わば「契約」だ。相手がどんな性格破綻者だろうが、相手は侯爵。格下のこちらからは婚約の解消はできない。それにもう、挙式は三か月後に迫っている。そんなことより、アレン様も所帯を持つのだからいい加減しっかりしてくださらないと。義母に当たるラルド前侯爵夫人に頼み込まれて侯爵家の仕事を手伝わされている身としては、今後もこんな生活が続くのかと思うといささかうんざりしている。ただでさえ、このサルート男爵家のことも父はオリヴィアに丸投げ。おかげで毎日大忙しだ。どうしてこう私の周りの男たちは自分の仕事もできないのっ!なのに、彼らはオリヴィアに感謝一つしない。特に両親は次女のシーナを猫可愛がりして、オリヴィアのことは放ったらかし。完全なる姉妹格差で育った身としては家族への情も薄れつつあった。アレンの方は見目と侯爵という地位のせいで自他ともに認めるプレイボーイ。一時に何人も相手にしているらしくそのうち刃傷沙汰になるのではと気が気でない。ユノンが心配するのも当然なのだ。ユノンは元々冒険者だった。しかし、依頼をこなしている最中に大怪我を負い仲間に捨てられた。死にかけの所をオリヴィアに拾われ怪我が治った後は侍女として働いている。腕っぷしも強いので護衛代わりにもなるし、彼女のさばさばした物言いも気にいっているオリヴィアとは主従というより親友に近い。ユノンにしてみれば恩人が不幸になるのが判るだけに不安なのだろう。挙式間近になってもこうして意思確認してくるのだ。そんなある日のこと。いつものように仕事をしていると珍しくシーナがやって来て、アレンを譲れと宣った。またいつものおねだりか・・・。いくつになっても何かと私のものを欲しがって。呆れて大きく溜息を吐くと、アレン様はぬいぐるみやアクセサリーじゃないのよ。そう簡単にどうぞ、とはあげられないの。妹の頭でもわかるように噛んで含めるように諭すと、だって私、アレン様の子供を妊娠してしまったのだもの。と見下すように微笑んで見せた。お父様とお母様に話したらお姉様に譲ってもらいなさいってぇ。続く言葉にオリヴィアは頭を抱えた。そういうことか、最近仲良さげだなと思ったのよ、この二人。私に仕事を押し付けて妹と浮気とか、正気なの!?あの男!!妹の口ぶりでは両親は本当に婚約者を挿げ替えるつもりなのだろう。となれば、こちらが何を言おうと状況は覆らない。やってくれたわねぇ、ホント。その翌日、アレンから正式に婚約破棄された。正直言えば好きでも何でもないので別段ショックもない。ユノンに言わせれば、良かったじゃないですか、あんなクズ男にお嬢様は勿体ないです。と上機嫌。まったくもってその通りで、これを機に祖母から相続したオリヴィア名義の領地に引っ越すことにした。でもその前にグラン宰相にお詫びして招待状を送った家に新婦が変わる旨手紙を送っておかなければ。それにしても、お嬢様が出て行ったらこの男爵家とラルド侯爵家は大変でしょうねぇ。容易に想像がつくのかユノンは愉快愉快と大笑い。夜会の日、グラン宰相に会うべく早めに会場入りしたオリヴィアは目当ての人物を見つけて少し時間を取ってもらった。マルク・グランはグラン公爵家の嫡男で、今年新しい宰相になった。オリヴィアとは幼馴染であり、その縁で王家御用達の教会の使用まで手配してくれた。なのにこんなことになってしまって・・・。本当に申し訳ないけれど、と前置き結婚がだめになったことを告げた。婚約破棄されたの、私。そう告げるとマルクは驚愕して、一体どうして!?と掴みかかった。経緯を話すと、あいつ・・・!!と怒りの表情を見せた。少しすると落ち着いたのか教会の方はこちらでキャンセルしておくといい、これからどうするつもりなんだ?と尋ねた。祖母の遺してくれた領地に移り住む旨話すと、考え込んでいた彼は頼みたいことがあると言う。取り敢えず、僕の話に合わせて欲しいと言われ、頷いたがまさかこんなことになるなんて。どうして私も乗せてくれなかったの?用があるから先に出ると言っておいたのに、周囲に意地悪な姉と印象付けたいのかシーナはオリヴィアを責めた。横にいるアレンも身重な妹に対して酷い女だ。まだ根に持っているのかい?と完全に悪者扱い。続く悪口に呆れているとオリヴィアの後ろに控えていたマルクが前に出て、婚約者の妹と浮気したくせに随分な物言いだなとアレンを睥睨。婚約破棄の原因が完全にアレンの瑕疵だったと判り、周囲の貴族達も最低ね、とヒソヒソ。だが、婚約を破棄してくれてありがとう。これで僕はオリヴィアにプロポーズできる。そう言って目の前に跪くマルクを見つめてオリヴィアは茫然。合わせてくれって、こういうことだったのね。彼の真意は不明だが、ここは従っておこう。プロポーズを受けると大きな拍手が起こり、その中にいつのまにやら国王までいてびっくり。やっと相手を見つけたのか、とこういう楽しい事が大好きな国王は喜んでいたが、マルクから約束通り、陛下も婚約者をお選びになって下さいねと進言。分が悪いと思ったのか、国王はそそくさと戻って行った。数年前即位した王にはまだ妃がいない。派閥とか色々あるから決めるのも難しいんだろうけど、いつまでも独身なのも拙い。それでマルクと約束したのが年下である彼が婚約したら自分も結婚に本腰を入れるというもの。事情を聴いてオリヴィアは聊かガッカリ。でもまぁ、彼には迷惑かけたわけだし偽の婚約者役も甘んじて引き受けよう。そう思っていたのだが、彼は本気だった。大衆の面前で恥をかかされたアレンが何か仕掛けてくるかもしれないと早々に領地に引き上げた彼女はユノンに呼ばれて玄関に赴くとグラン公爵家から大量の荷物と使用人たちがいて仰天。全てマルクからの贈り物だそうで、午後には本人も来ると言う言伝が。当人から実はずっと好きだったと言われて戸惑ったが、その気持ちが嬉しかった。しかし、今後起こるであろう問題を思うと気が重い。父が反省するならばこの手は使うつもりはなかった。だが反省の意志は感じられずでついに彼女は家族を見限った。身の程をわきまえずにこさえた借金、全て領地を担保にしてると知ったらどうするでしょうね。到底返せる額ではないから父は全ての領地を失うはず。それでも足りるかどうか。そうなれば家は没落、領地も無いので爵位返上になるだろう。今更後悔しても遅いのよ、お父様。愚かな家族の先行きを思うと苦しくなったけれど、爵位返上ともなれば娘のオリヴィアも平民になるということ。いわばこれは諸刃の剣だ。マルクとも結婚は出来なくなる。静かに涙を溢す彼女をユノンが慰め、こういう時はパーッと美味しいものでも食べに行きましょうと誘った。目いっぱいおめかしをしたのはその足でマルクに会う為だ。彼とちゃんと話し合わなきや。しかし、道中、二人の乗った馬車はアレンとその手下たちの襲撃を受け・・・。ザマァ系です。全部捨ててスッキリしたかと思いきや、オリヴィアの価値を今更ながら痛感したアレンが今更ながら悪あがき。とんでもないブラック案件な終身雇用契約書を作って、ユノンの命と引き換えにオリヴィアにサインを迫ります。どこかに捕まっているらしいユノンは早々殺されることは無いはず。とオリヴィアは時間を稼ぎますが、暴力を振るわれ意識は朦朧。それでも必死に抵抗しているとマルクが騎士団を率いて飛び込んで来てアレンを取り押さえ、オリヴィアは救出されるのでした。アレンはこの件でマルクから多額の慰謝料を請求され、これまでの女遊びがこれまた大問題に発展。積み上がった慰謝料で丸裸にされるくらい何もかも持っていかれる羽目に。シーラは没落した家にも戻れず渋々アレンに嫁いだことが語られます。オリヴィアは一時平民になったものの、過去にとある功績を上げていたことで、その褒賞として国王から一代限りですが爵位を賜ることに。おかげでマルクとの結婚も成り、元々アレンと挙式するはずだった教会で式を挙げる二人の様子が描かれて物語は幕。内容としては、よくあるテンプレ展開。あと才媛な貴族令嬢の割にはフランクすぎる言葉遣いが少々気になりました。評価:★★★☆
2026.10.12
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