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今日のまとめ 1. ジュース市場は高成長期を終え今後成長鈍化へ 2. 乳製品市場の成長は低水準、競争は限定的 3. ビール市場は成長鈍化の中、高級品志向が強まる 4. ロシアの消費株のPERは割高ロシアのジュース市場ロシアのジュース市場は同国の消費セクターの中でもここ数年、特に急発展を見た分野です。ロシアのジュース生産者協会の統計では過去5年間で市場規模が3倍に膨れ上がりました。現在の一人当たり年間ジュース消費量は約16リッターで米国の消費量の半分程度です。但し、モスクワなど都市部での消費量はほぼ米国の水準と同じです。従って、今後の成長は地方にいかに進出するかによって決まってくると思います。ジュース市場では大手4社が激しいマーケット・シェア争いを繰り広げています。 上のグラフから読み取れるように2002年の時点でマーケット・シェア首位だったウイン・ビル・ダンはその後売り上げが頭打ちになりシェアを大きく落としました。その一方でレベドヤンスキーなどがシェアを伸ばしました。マルトンは2005年にコカ・コーラに買収されています。今後の展開としてはコカ・コーラがディストリビューション網やマーケティングを強化して攻勢に出てくることが考えられます。また、今後は昔ほどはジュース市場のパイ自体が成長しないと予想されますので、競争は一段と激化すると思われます。ロシアの乳製品市場ウイン・ビル・ダン社の試算によると2005年のロシア人の一人当たり牛乳消費量は年間約49.2リットルです。これは欧米の水準よりかなり低い数字です。この中には青空市場などで量り売りで売られる牛乳も含まれており、カートンにパッケージされてスーパーなどで売られる牛乳の消費量となるとさらに低くなります。今後のトレンドとしてはロシア国民の所得水準が上がるに従い、利便性、殺菌処理のされた牛乳を消費者が選好すると考えられるなどの点からパッケージされた牛乳のシェアが次第に増えると予想されます。一方、牛乳以外の乳製品に関してはウイン・ビル・ダン社の試算によると2005年のロシア人の一人当たりヨーグルト、デザート類消費量は年間約7.2キログラムです。これも欧米の水準よりかなり低い数字です。パッケージされたヨーグルト、デザート類はそもそもカテゴリー自体が目新しいので今後も高い水準の成長が期待できます。ロシアの政府によればミルクの消費量は年間4%程度、ヨーグルトやデザート類は6%程度で成長すると予想されています。同業界におけるマーケット・シェア・リーダーはウイン・ビル・ダンであり、牛乳分野でのシェアは31.3%、ヨーグルトおよびデザート分野でのシェアは40.7%となっています(ロススタットによる)。ロシアのビール市場ロシアの一人当たり年間ビール消費量は58.9リットルです。これは欧州の多くの国や米国と比べると低い数字ですが、日本の51.3リットルを既に抜いています。市場成長率は大体5%程度ではないかと思われます。また、所得の上昇に伴い、高級品志向が高まりつつあります。そのため、輸入ブランドならびに国内のプレミアム・ブランドのビールが市場占有率を伸ばしています。マーケット・シェア・リーダーはバルチカで2004年の市場占有率は約23%でした。同社は『0』から『9』の番号をつけたビールがその代表ブランドとなっています。2位はサン・インターブリューでシェアは約16%です。外国勢ではハイネケンが過去2年間に沢山のロシアのビール会社を買収していますので今後シェアを伸ばしてくることが考えられます。今後の展開としては家庭内での消費は頭打ちとなり、外食の普及とともに飲食店における消費が増えてくると考えられます。 ロシアの消費株の株価評価ロシアの株式市場全体の2006年の一株当り利益に基づいた株価収益率は約11倍です。これに対してロシアの消費セクターの株価収益率は平均すると17倍を超えており、割高感が強くなっています。ただ、世界的に消費関連ならびに飲料、食品の銘柄の株価収益率は高めですので、国際比較ではそれほど割高感は際立っていません。但し、気をつけないといけない点としてロシアの消費関連株は過去数年、強烈な売り上げならび利益成長を記録した銘柄が多く、投資家のエクスペクテーション(期待)が一般に高いことが挙げられます。さらに欧米の大型消費安定株の場合、景気の良し悪しに業績が左右されにくい、所謂、ディフェンシブな性格を備えている場合が殆どですが、ロシアの消費株の場合、景気後退局面でそのように業績が安定しているかどうかという点に関してはいささか心許無い気がします。
2006年06月27日

今日のまとめ 1. ロシアの消費セクターは急成長中 2. 最終消費は今後数年に渡って少なくとも年率15%程度は成長する 3. ロシアの消費者は実力からすると中所得国に位置する 4. しかしモスクワ首都圏などでは高所得国の特徴を有し始めている 5. スウィート・スポットは食品から自動車、テレビ、レジャーに移行 6. 銘柄的には食品関連などに偏っているロシアの消費セクター今、世界の消費市場の中で最もエキサイティングな変化が起きているのがロシアです。これには幾つかの複合的な要因が起因しています。好調なロシア経済がその背景にあるのは当然として、その他にも大規模店舗の進出にロシアが比較的寛容であること、そもそもロシア人はブランド志向が強いこと、セールス・タックス(消費税)の廃止ならびに付加価値税の減税、クレジット・カードなど銀行サービスの充実、7月1日からはじまるルーブル為替の完全自由化で「マットレスの下に蓄えられてきた」いざという時の為の貯蓄があまり意味をなさなくなり、それが消費に回されているなどの要因も指摘できます。これらのことから最終消費は今後数年に渡って少なくとも年率15%程度は成長すると考えられます。ロシアの消費者を位置づけするさて、ロシアの消費者の実力はどの程度なのでしょうか?これを論ずる前に先ず一口にロシアと言ってもモスクワ首都圏に住む人々と地方に住む人々とでは大きな経済格差があることを断っておく必要があります。ロシア全体の一人当たり GDPは国家統計局の資料(2004年)によると約4000ドルですが、モスクワ首都圏は7200ドル、次に豊かなウラル地方は6300ドルとなっています。一方、地方に行くと大体、2000ドルから4000ドル程度です。なお、モスクワ首都圏の人口は1700万人、ウラル地方は1200万人、ロシア全体は1.4億人です。消費のスウィート・スポットはどこか?一般に所得の低い国や家計では支出に占める食費の比率が高いことが知られています。今、世銀は世界の人口を一人当たりGDPで(1)高所得国(1万ドル以上)、(2)中所得国(700ドル~1万ドル)、(3)低所得国(700ドル以下)と分類しています。世銀の調べでは(1)高所得国では個人消費に占める家庭内食費支出(外食を除く)は所得の16%程度、(2)中所得国では35%程度、(3)低所得国では55%程度です。ロシアは1992年の調査では年間家庭内食費支出が約400ドルで所得の38%程度でした。つまり典型的な中所得国の姿だったと言えます。これが2004年には年間家庭内消費支出は740ドルに成長しました。食品小売市場もこの間、倍以上に成長し、900億ドルを超える規模に達しています(チャート1参照)。つまり過去数年は食品にまつわる小売業が成長のスウィート・スポットにあったわけです。そこでは多くの企業が売上高で30%から40%の成長を記録してきました。食品小売市場をもう少し詳しく見てみると、昔ながらの露天商や八百屋がまだ過半数をしめており、近代的小売業者のシェアは未だ23%程度です(チャート2参照)。なお、それら近代的小売業者の中でそれぞれの店舗形態別のシェアはチャート3のようになっています。さて、上に見たような急成長は所得水準の高いモスクワ首都圏などでは今後は難しくなると思われます。なぜなら消費の中心が食べ物から自動車、テレビ、家具、レジャーなどに移ってゆくことが考えられるからです。実際、2004年の調査では「その他小売」が初めて食品小売市場の成長率を上回っています。所得水準の低い地方では今後も食品関連消費が成長の柱になると思われます。すると販売網や小売店の展開などディストリビューション網の整備が成長の鍵になってくると思われます。これまでは人口集中度の高く、所得の集中しているモスクワ首都圏で大規模店舗を軸に需要を開拓すればよかったので関連企業の営業コストは比較的管理しやすかったと思われます。今後は地方展開にまつわるロジスティック(物流)面などでのチャレンジに直面することになるでしょう。 ルーブル為替の完全自由化と消費の関係7月1日からいよいよルーブル為替の完全自由化がはじまります。具体的にはロシア人が海外旅行する際、事前にドルに換金することなくルーブルをそのまま持ち出し、旅先でドルなどに交換できるようになります。また、外国の銀行の窓口や両替キオスクなどでは自由にルーブルがドルなどと交換できるし、ルーブル預金もできるようになります。現在、外人投資家がルーブル建てロシア国債や社債を購入する際、ロシア中銀に積まないといけない一定のリザーブも廃止されます。これらの一連の措置で一番恩恵を蒙るのはロシアの銀行セクターだと思われます。ロシア国内で退蔵されているドルによる「マットレスの下のへそくり」が銀行に預け直されることが考えられますし、外国の投資家はロシアに対する直接投資の姿勢を高めることも考えられます。その結果、ロシアの銀行が国内事業家へのルーブルによる融資などにこれまで以上に仲介するチャンスが増えると思われます。さらに消費者向けローンなども発展するでしょう。このような銀行サービスの深化は消費セクターに幅広いインパクトを与えることは間違いありません。 ロシアの消費関連株ロシアにはどのような消費関連株があるのでしょうか?以下は代表的な銘柄(抜粋)の一覧表です。 この表からもわかる通り、現在の上場銘柄の分布はどちらかと言えば食品などの生活必需分野に偏在しており、今後成長のスウィート・スポットが自動車やレジャーに移行していくとこれらの銘柄はそのトレンドに取り残される可能性があります。ただ、それはあくまでもモスクワ首都圏などでの話であり、地方ではこれらの銘柄の発展余地はまだまだ大きいと考えられます。
2006年06月26日

今日のまとめ ロシアの銀行の歴史は浅い ズベルバンクが突出した存在である ロシアの企業や国民には銀行サービスは浸透していない 銀行関連法の整備が同セクターの飛躍に寄与している 銀行セクターの成長はロシア経済全体にもポジティブな影響を与える 潜在的な問題に気を配っておく必要がある ■ロシアの銀行業界今日はロシアの銀行業界について見てみたいと思います。実はロシアの銀行株でADRとしてアメリカの証券市場に上場されている企業はありません。従って我々が直接ロシアの銀行株を売買するというのは難しいです。しかし、ロシアを代表する商業銀行であるズベルバンクはおそらく大抵のロシア・東欧ファンドに組み入れられていると思いますので勉強しておいて損はないと思います。また、ロシアではこれまで銀行業が未発達でしたので企業や消費者はあまり銀行に依存してきませんでした。それがロシア経済を理解する上で或る程度重要なポイントになります。その意味でもロシアの銀行業界を知ることは意義があると思うのです。 ■歴史の浅いロシアの銀行業界ロシアに商業銀行が登場したのはソ連崩壊後の1990年代初頭です。従って、その歴史は極めて浅いと言えます。それ以前はロシア人は銀行に不信感を抱いていて、マットレスの下にお札を蓄える、、、、それも減価の恐れのあるルーブルによる貯蓄を極力避け、米ドルでへそくりを貯めるというのが一般的な蓄財観でした。1990年以降、ロシアでは短期間に数多くの銀行が設立されました。その中で圧倒的な規模を誇るのがズベルバンクと呼ばれる銀行です。それもその筈、ズベルバンクはソ連の労働貯蓄金庫(ズベルカッサ)の顧客を引き継いだからです。このズベルバンクを除外するとロシアの商業銀行はやたら数だけ多くて(現在約1300行)事業規模は極端に小さいのです。その理由のひとつは銀行関連法が未整備で少々胡散臭い連中でも簡単に銀行を旗揚げすることができたことによります。当然、それらのにわか仕立ての銀行の経営内容や内部管理はお粗末極まりないものでした。1998年のルーブル危機の際にそれらの零細銀行は決定的な打撃を蒙りました。当時ロシアの銀行の資産のかなりの部分はGKOなどの政府債でした。その一方で調達側ではドルやユーロなどのハード・カレンシー※建ての負債に依存していました。従って、ロシア政府がデフォルトに追い込まれ、さらにルーブル為替が暴落(逆にロシアから見ればドルやユーロは暴騰)し、利払い負担が3~4倍に増えたことでダブルパンチを喰らったわけです。このため、瞬時にして決済不能に陥る銀行が続出し、取り付け騒ぎが多発しました。一般預金者の銀行不信がいっそう強まった事は言うまでもありません。そういう歴史的経緯もあり、現在のロシアの総融資額対GDP比はかろうじて20%を超える程度です。これは比較的銀行サービスが未発達だと言われるインド(約40%)などと比べても大変貧弱な数字です。 ※ハード・カレンシー・・・国際市場で他国の通貨と自由に交換できる信用ある通貨 ■ようやく整備されつつあるロシアの銀行関連法ロシアでは2004年から預金保険法、外国為替関連法、モーゲージ債関連法などがつぎつぎに制定され、ようやく制度面でのインフラが整いました。また、国際会計基準への移行も押し進められています。これらの一連の改革は銀行業参入に際しての敷居が高くなったことを意味します。従って、今後ロシアの銀行業界は淘汰ならびにM&Aの時代に入ると考えられます。こうした刷新によりロシア国民の間での銀行に対する信頼感も徐々に向上しつつあります。昔からロシア人はたとえ銀行にお金を預ける場合でも日本で言う「定期預金」などの長期の預金を避け、短期の預金を選好しました。しかし最近では1年を超える長期の預金の比率が段々増えてきています。これは預金者のコンフィデンス(信頼感)が向上していることの証だと思うのです。■銀行サービスの黎明折からロシア経済は過去に無い好景気を経験しています。石油や天然ガスの市況高騰がその主因です。それは輸出の好調、国家の税収の好調をもたらし、ロシア全体としての「カネ回り」は良くなっています。市中金利は長期逓減のトレンドにあり、企業や消費者にとって銀行からお金を借り易くなっています。また、ルーブル為替の安定で、これまでのようにドル札でへそくりを退蔵する必要が減り、ルーブルで貯金することに対する抵抗感は減りました。これらの好循環が同時にロシアの銀行業界で起こっているのでロシアの銀行サービスはようやく開花しつつあります。下の図はロシアの家計部門の銀行預金額をGDPの規模と比較したグラフですが、これで見るとロシアの国民に銀行預金が普及しはじめていることがわかります。なお、現在の12.5%という水準は国際比較で見るととても低い水準です。 目先、小口預金は年率35%程度で成長するとみられています。安定した小口預金が集まれば銀行はそれだけ貸付に回せる原資が増えることを意味します。従って、貸付の方も成長が期待できるわけです。実際、企業向け、個人向けの貸付ともに預金成長よりかなり早いペースで成長しています。ロシアの銀行業界はこれまでもっぱら短期国債を主に運用していたのを改め、貸付を運用の柱にすべくシフトを進めています。 ■銀行サービスの経済に与えるインパクトさて、これまでロシアの銀行セクターが未発達であったということは特に中小企業にとって起業することが大変難しかったことを意味します。中小企業はサービス業や小売業などの「ソフト・エコノミー」の担い手である場合が多いですが、今後、それらの中小企業の起業が比較的楽になるということは重工業偏重型であるロシア経済のソフト化への移行に重要な役割を果たすでしょう。また、消費者にとって自動車購入ローンとか住宅ローン、高等教育の学費ローンなどが組みやすくなっています。こうした銀行サービスの介在は消費経済の隆盛にとって不可欠な要素です。その意味で最近のロシアの銀行業界の飛躍は心強い現象であると言えるでしょう。■問題点さて、次に懸念材料について述べると、先ずロシアの銀行業界は歴史が大変浅いことから、与信審査能力などの基本的スキルに欠けていることが危惧されます。今のように預け入れも貸付もどんどん伸びている状況、つまり銀行のバランス・シートの両端が急成長している局面では思慮に欠ける融資が沢山なされてもその綻びはなかなか数字には現れてきません。このことを英語では「ローンのシーズニング」と言います。現在の総融資に占める焦げ付き比率は1.5%程度であり、これは至って健全な数字ですが、だからといって潜在的に問題が無いとは言い切れないと思うのです。また、融資がぐんぐん伸びている局面ではぼんやりしていると自己資本比率が低くなり過ぎる危険もあります。
2006年06月21日
今日のまとめ 1. ヴィンペルの問題点は大株主が反目していること 2. 2.そのため経営の大方針が決められなくなっている 3. 3.固定電話市場は投資対象として魅力薄ヴィンペルの問題点前回までに見てきたように足元の決算ではヴィンペル(VIP)の決算内容の方がモバイル・テレシステムズ(MBT)より勝っています。しかし、そのヴィンペルにも問題があります。それは同社の大株主が同社の経営方針を巡ってことごとく対立し、それが同社の経営に影を落としている点です。同社の筆頭株主はロシアの財閥グループであるアルファ・グループであり、ヴィンペル株の32.9%を所有しています。一方、ノルウェーのテレノア社も去年の年末の時点でヴィンペルの株式を26.6%所有していました。最近の新聞報道ではテレノアはさらにヴィンペル株を買い増しており、直近での持ち株は29.9%であるとされます。ヴィンペル社の定款では重要決議事項の採択に関しては同社の有効投票権のうちの75%以上の賛成が必要であると定められています。つまり、アルファもテレノアもおのおの相手の提出した株主投票決議事項を阻止できるだけの株数を支配しているわけです。さらにアルファもテレノアもそれぞれ役員会に自分の息のかかった代表を2名送り込むことができるだけの投票権を保持しています。事業計画の優先順位の決定、経営戦略の策定、買収や部門売却、年間予算やビジネス・プランの承認などはヴィンペルの9名の役員のうち最低でも8名の賛成を必要とするので、ライバル・グループの提出した案をことごとく却下することができるわけです。実際、このことがアダとなって、最近のヴィンペルは大事な方針がしばしば決められず言わば舵を失った船のように「漂流」を余儀なくされています。 ウクライナ戦略の迷走テレノアとアルファとの確執を示す例としてヴィンペルのウクライナに於ける事業展開の迷走が挙げられます。ウクライナは人口4700万と旧ソ連圏ではロシアに次いで第2位です。携帯電話の普及率は約50%であり、これもロシアに次いで2番目に高い数字です。そうした点から魅力ある市場と言えるのですが、ここでのヴィンペルの事業展開はモバイル・テレシステムズの後塵を拝しています。ヴィンペルは比較的規模の小さいURSの株式を100%買収し完全子会社化しました。しかし、この買収にはテレノア側から反対の声があがっています。それはテレノアが同国第2位のキエフスター社の過半数株式を支配しており、 URSが余り積極的に事業展開するとキエフスターのビジネスにとってマイナスだからです。現在のヴィンペルのCEO、アレクサンドル・イゾシモフは西側の機関投資家にもウケの良い辣腕経営者ですが、上記のアルファとテレノアとの間の反目に嫌気がさして、任期いっぱい(今年の9月末)でCEOの座を去りたいという意向を表明しています。 固定電話についてこれまではロシアの携帯電話市場について論じてきましたが、一応、参考までにロシアの固定電話市場についても言及しておきます。残念ながらロシアの固定電話市場は投資対象としての魅力には欠けると言わざるを得ません。それはロシアの場合、固定電話会社がスケール・メリットを享受できるだけの事業規模に達する前に携帯電話が普及してしまい: 1. 携帯電話会社に顧客を奪われたこと 2. その結果、一般に売上高成長率が芳しくないこと 3. 主に電話料金の引き上げに成長を依存する体質になっていること 4. 一般に固定電話企業は非効率経営なこと などの問題を抱えているからです。同業界の先行きに関しては各社の企業努力というよりもロシア政府による再編成の采配ひとつにかかっていると言えるでしょう。固定電話会社は長距離電話のロステレコム(ティッカーROS)と8つの地方電話会社に分類できます。長距離電話に関しては今後ライセンスが自由化され、新規参入が予想されます。それはロステレコムにとって好ましくないシナリオであることは言うまでもありません。地方電話会社、長距離電話会社の他にゴールデン・テレコムとコムスターに代表されるCLEC(コンペティティブ・ローカル・エクスチェンジ・キャリアー=新規参入の地域電話会社のこと)があります。会社名時価総額(百万ドル)株価収益率(2006年予想)ウラルスヴャジインフォーム1,42015倍ヴォルガ・テレコム1,10015倍シベリア・テレコム1,13015倍サウス・テレコム490NAセンター・テレコム95050倍ノースウエスト・テレコム89020倍ファー・イースト・テレコム37040倍MGTS1,64010倍ゴールデン・テレコム(CLEC)89012倍コムスター(CLEC)2,20015倍ロステレコム(長距離)3,70024倍モバイル・テレシステムズ(携帯)11,19010倍 ヴィンペル(携帯)8,96011倍 (出典:コンテクスチュアル・インベストメンツ)一般論としてこれらの固定電話各社は業績見通しの面でもコーポレート・ガバナンスの面でも携帯電話各社に劣ると思います。しかし、株式市場における株価評価は決して割安ではないと考えられます。
2006年06月13日

今日のまとめ ロシアの携帯市場は上位3社の寡占 激しい首位争いで値引き合戦が続いている 設備投資は依然高水準 利益重視の経営への移行ができていない 前回はロシアの通信セクターがエネルギー・セクターに次いで大きなセクターであること、その中でも携帯電話セクターが重要な位置を占めていること、ロシアの携帯電話の普及率は既に先進国並みであることなどを概観しました。今日はその携帯電話セクターに焦点を絞ってもう少し詳しく見ていくことにしましょう。■シェア争いについてロシアの携帯電話市場はモバイル・テレシステムズ(ティッカー:MBT)、ヴィンペル(ティッカー:VIP)、メガフォン(非上場)の3社による寡占です。去年の末の時点でのマーケット・シェア(加入者ベース)は次のようになっています。 なお、過去数年のマーケット・シェアの推移を見ると首位のモバイル・テレシステムズは徐々に占有率を落としており、第2位のヴィンペルと第3位のメガフォンのシェア伸長が目立っています。上位3社の通信方式はGSM900/1800ならびにGPRSです。一方、CDMAではスカイリンクという業者が先行していますが、マーケット・シェア的には大変小さいです。なお、スカイリンクは持ち株会社AFKシステマの所有する企業であり、同じAFKシステマ傘下のモバイル・テレシステムズとは同じ系列に属します。ニューヨーク市場に上場されているモバイル・テレシステムズとヴィンペルの売上高の推移を次に示します。 このグラフからも判るとおり、首位を巡ってデッドヒートが展開されているわけです。 ■価格競争さて、前回見たようにロシアの携帯電話の普及率は去年既に80%に達しており、今年は100%に達すると見られています。この最後の僅かな顧客を巡ってシェア争いはますます激しくなっています。値引き合戦による収益性の悪化が懸念されます。事実、各社のARPU(Average Revenue Per User=顧客単価)の推移を見ると、数年前まではマーケット・シェアで断然首位に立っていたモバイル・テレシステムズは常にヴィンペルなどより遥かに高い価格設定でした。ところが2004年の後半あたりからモバイル・テレシステムズはマーケット・シェア死守の為にアグレッシブに価格を下げ始め、ヴィンペルもそれに応戦する形で価格競争に突入しました。業界3位のメガフォンはそれを静観する戦略を採った為、今ではメガフォンの方が逆にARPUが高くなっています。このことは当然、各社の収益にも影を落としており、特にモバイル・テレシステムズの収益性の悪化が顕著です。 ■成長の段階と設備投資との関係さて、ロシアの携帯電話市場は既に成熟期に入りつつあるわけですから、本来であれば各社は設備投資を絞り込み、販売管理費を抑え、英語で言うところのミルキング(先行投資の果実を刈り取ること=牛のミルクを絞るところから来ている)の段階に入るべきです。ところが一旦、2004年に絞り込まれた売上高対設備投資比率は、最近はまた増加傾向にあります。無意味なシェア争いがその背景にあることは間違いありません。一方、追加設備投資に対するリターン(ここでは新規加入者の獲得ベース)をみると漸減傾向にあり、財務戦略面からはこの経営判断が間違いであることが伺えます。 なお、ヴィンペルは最近の決算発表に際してのカンファレンス・コールの中で今後は無益なマーケット・シェアの追及を控え、利益の極大化に努めることを発表しています。
2006年06月07日

今日のまとめ 1. 通信業界はエネルギーに次いで重要なセクターである 2. 固定電話ではなく携帯電話が株式市場では重要な位置を占めている 3. ロシアの携帯電話普及率は既に成熟市場の域に達している■通信セクターの株式市場における重要性今日からロシアの通信業界について見ていきたいと思います。ロシアの株式市場に於いては、携帯電話と固定電話から成る通信セクターは天然ガス/石油業界に次いで2番目に重要なセクターです。下に掲げたグラフはBRICsの4つの株式市場をひとまとめにし、これを100とした場合、それぞれの国の個々のセクターがBRICs全体の時価総額にどれだけ貢献しているかを百分率で示しています。これで見るとロシアの場合、青で示した通信セクターがエネルギー(赤)の次に大きいことがわかります。■通信セクターの株式市場における重要性今日からロシアの通信業界について見ていきたいと思います。ロシアの株式市場に於いては、携帯電話と固定電話から成る通信セクターは天然ガス/石油業界に次いで2番目に重要なセクターです。下に掲げたグラフはBRICsの4つの株式市場をひとまとめにし、これを100とした場合、それぞれの国の個々のセクターがBRICs全体の時価総額にどれだけ貢献しているかを百分率で示しています。これで見るとロシアの場合、青で示した通信セクターがエネルギー(赤)の次に大きいことがわかります。さらにロシアの携帯電話市場は(1)モバイル・テレシステムズ、(2)ヴィンペル、(3)メガフォンの3社による寡占ですが、このうち最も規模の小さいメガフォンは株式は公開されていません。■ロシアの携帯電話市場ロシアの携帯電話市場は意外なほど高度に発達しています。実際、携帯電話の普及率は去年の末の時点でほぼ80%を超えています。つまり、ロシアの携帯電話市場はこれまでの急成長局面を終え、既に低成長局面に入っているわけです。なお、ロシアの携帯電話の普及率を論じる際にSIMカード(これを差し替えることによりハンドセット全部を取り替えなくても別の利用者として使える)の数をどう捕捉するかによって数字が大幅に異なってきます。一人で数枚もSIMカードを保有する場合があるからです。統計資料によってはロシアの携帯普及率が100%を大幅に超えているケースがあるのはこのためです。次にロシアの携帯電話市場の規模を国際的な比較で見てみましょう。こと加入者数で見る限り、ロシア最大の携帯電話会社、モバイル・テレシステムズはNTTドコモにほぼ匹敵する加入者数を誇っていることがわかります。
2006年06月02日
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