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今日のまとめ 1.過去5年の世界の粗鋼需要は驚異的な成長を記録した 2.中国が世界の粗鋼需要の約3割を占めている 3.ブラジルの鉄鋼業は世界第9位である 4.中国は鉄鉱石の輸入依存度を高めている 空前の好況今日からブラジルの鉄鉱石ならびに鉄鋼のセクターについて論じてゆきます。ブラジルにおけるこれらのセクターの置かれた状況を見る前に、今、世界の鉄鋼業界で起きている大きなトレンドを先ず押さえておきたいと思います。過去5年間に世界の粗鋼需要は年率平均7.2%で成長しました。これは驚くべき成長率で、これほどまでに世界の粗鋼需要が伸びたのは1950年から1974年の時期(当時の年平均成長率は5.6%)まで遡らないと類例はありません。これとは対照的に1974年から2000年までの四半世紀での年平均成長率はたったの0.7%でした(*)。現在の異常とも言える粗鋼需要の伸びの原因は主に中国にあります。1999年には世界全体に占める中国の需要の比率は17.5%に過ぎませんでした。しかし現在は31.1%を占めるに至っています。なお、下のグラフでも分かるとおり石油やアルミなど、他のコモディティーの品目に比べて鉄鋼ならびにその関連素材である鉄鉱石や石炭の中国のシェアは突出しています。この旺盛な需要に合わせて中国の鉄鋼の生産キャパシティーも年々増えてきました(下図)。この結果、主要国の粗鋼生産を見ると中国が他を圧倒する存在となっています。なお、ブラジルの粗鋼生産は世界第9位(世界シェア2.8%)で年間3160万トンです。鉄鉱石鉄を作る際の2つの主要な原料は鉄鉱石とコークスです。このうちコークスはブラジルではあまり産出しませんので今回の議論では言及しません。一方の鉄鉱石に関して見てみましょう。実は中国は世界でも屈指の鉄鉱石の産出国です。2004年の中国の鉄鉱石の生産量は3.36億トンでした。次いでブラジルが2.71億トン、オーストラリアが2.35億トン、インドが1.21億トンです。しかし中国の鉄鉱石は品質が悪く、自動車向けの鋼板など付加価値の高い製品の原料としては不適です。さらに中国の鉄鉱石の産出に際してはブラジルの場合より10倍もの土砂を動かす必要があり、採掘コストが高くつきます。これらの理由から中国は年々鉄鉱石を輸入に頼る度合いが増えています。 2002年から2005年にかけての国内の鉄鉱石の消費成長(水色)は年率13%成長、一方、同時期における輸入成長(緑色)は年率35%でした。この結果、現在では中国の消費に占める輸入分が国産鉄鉱石を上回ってきました。なお、鉄鉱石の輸出市場は大手の寡占状態になっており、オーストラリアのBHP(ティッカー:BHP)、ブラジルのCVRD(ティッカー:RIO)、英国のリオティント(ティッカー:RTP)の3社が圧倒的な存在となっています。今、中国の製鉄業を見た場合、特徴的なことは零細な業者がひしめいている点です。中国の高炉の平均容量は日本のそれの3分の1に過ぎません。これは日本と中国の産業政策の違いも影響していると思います。日本の場合、歴史的に資本集約的基幹産業では通産省の行政指導などによりスケール・メリットの確保が優先されました。これとは対照的に中国の場合、地方の利害が産業振興の際の主な意思決定要因となる場合が多いです。中国最大の鉄鋼メーカーである上海宝山製鉄ですら、同社の鉄鋼生産量の中国全体の生産量に占める割合は6.5%に過ぎません。 この結果、中国の製鉄業は国際水準の事業規模に届かない零細業者が乱立し、激しい過当競争に晒されています。それはマージン圧迫要因になります。このことは下の過去の業績のグラフを見ても明らかです。従って、中国の鉄鋼消費の伸びを株式市場で投資に生かす方法としてはむしろ鉄鉱石の生産者の株を買ったほうが良いという考え方もあります。
2006年10月23日

今日のまとめ 1.ブラジルの通信株は一般に低評価に甘んじている 2.ブラジルの携帯電話業界は過当競争である 3.ビボは沢山の問題を抱えている 4.テレミグは規模が中途半端すぎる 株価評価今日は先ずブラジルの通信業界の株価評価について考察してみたいと思います。ブラジルの携帯電話会社の中には現在未だ先行投資の負担が大きくて利益が出せていない会社もあります。このため株価収益率(PER)を使って比較するのは困難です。そこでEV対EBITDA比率を使って比較することにします。EVとはEnterprise Valueの略で、或る会社の時価総額と負債総額を合算したものです。EBITDAとはEarnings Before Interest Payments, Tax, Depreciation and Amortizationの略で、利払い・税金・減価償却前利益のことを指します。EV/EBITDAはPERの考え方と同じで倍率が低ければ低いほど割安に評価されていることになります。 上のグラフで格子模様になっている企業は地方電話会社、それ以外は携帯電話会社です。一般に携帯電話会社のほうが成長率が高いですから、携帯電話会社は携帯電話会社同士で比較すべきですし、地方電話会社は地方電話会社同士で比較されるべきです。なお、オレンジ色はメキシコ、赤色はチリの株です。このグラフを下の各社の売り上げ成長予想のグラフと対比して見てください。今、売り上げ成長率で言うとティム(ティッカー:TSU)が一番急成長ですが、株価評価ではアメリカ・モバイル(ティッカー:AMX)の方が高くなっています。一方、地方電話のグループではテレマー(ティッカー:TNE)が一番売り上げ成長率が高いのですが、株価評価ではメキシコのテルメックス(ティッカー:TMX)やチリのチリ・テレコム(ティッカー:CTC)の方が高くなっています。このようにブラジルの通信会社の株はその売り上げ成長率に比べて一般に低評価に甘んじていると言えるでしょう。ブラジルの通信セクターの投資リスク次にブラジルの通信セクターをめぐる投資リスクに関して見てみましょう。ブラジルの携帯電話市場を見ると全てのライセンス地域に3社ないし4社の競合企業がひしめいており、しかもそれらの企業のどれひとつを取っても圧倒的マーケット・シェア・リーダーというものは存在しません。この「どんぐりの背比べ」のような競合状態が過当競争を招いていますし、各社が適正な事業規模を達成するのを困難にしています。しかも首位のビボが特に競争力の弱い寄せ集め企業であることから、例えば中国ならば中国移動、タイであればアドバンスト・インフォメーション・サービセズのように「リーダーの株を買っておけばまず間違いない」という先入観はブラジルの場合通用しません。 次に財務管理リスクに関してですが、ティムなどの各社はサルベインズ・オックスレー法に基づいて内部管理の見直し中であり、その過程で財務管理の脆弱性が指摘されています。また通信会社は一般に借入れが多く経済の環境の変化で利払いの困難に陥る危険性があります。実際、過去に一部の電話会社は融資条件のコヴェナントに抵触した経緯があります。また企業によっては多額のドル建て負債がありますから若し極端にリアル安となった場合負債の返済に窮する可能性があります。さらに若しインフレが激しくなった場合、ネットワークの維持コストの上昇を招きますし、顧客の生活が苦しくなると電話料金の滞納の増加などのリスクがあります。 次に個別企業のリスクを見てみましょう。先ずビボですが、既存の同社のCDMA/アナログ・ネットワークは全国をカバーするデジタル・ローミング、さらに海外デジタル・ローミングなどが出来ず、ユーザーの離反を招いています。またネットワークに対するハッキングも多数発生しており顧客情報の漏洩などの問題がありました。これらのことからビボは近年マーケット・シェアを他社に奪われており成長率の面でも見劣りします。この問題を解決すべく同社は既存のCDMA/アナログ・ネットワークの上にGSM/EDGEネットワークをオーバーレイする作業を進行中です。これに10億リアルに上る設備投資費用を注ぎ込んでおり、先行投資負担が業績の足を引っ張ると予想されます。なお、同社のEBITDAマージンは縮小傾向にあります。それから同社の場合、電話料金の滞納も多く出ています。2006年第2四半期決算では回収不能売掛金1.62億リアルの特別引き当てを計上しました。 テレミグは規模的に中途半端なこと、サービスの質に問題があることなどから売り上げが伸び悩んでいます。独立企業として存続するためには事業規模が小さすぎるのではないか?という懸念があります。同社のEBITDAマージンも縮小しています。また、同社の本拠地であるミナス・ジェライス州ではアメリカ・モバイルの参入で競争が激化しています。
2006年10月16日

今日のまとめ 1.ビボは最大手だが競争力の低下が著しい 2.テレマーは安定した地方電話のビジネス+急成長中の携帯事業を展開 3.ティムは携帯電話専業で上手く経営されている 4・アメリカ・モバイルは南米最大の電話会社である テレフォニカ・グループスペインのテレフォニカ(ティッカー:TEF)はブラジルで積極的に通信事業を展開しています。携帯電話市場ではブラジルでのマーケット・シェア・リーダーであるビボ(ティッカー:VIV)を持っています。下のグラフは携帯電話加入者数を示しています。 このグラフでわかるとおり、ビボは加入者数ではブラジルで最大です。しかし同社は最近加入者の減少を見ていることが読み取れます。ビボはCDMA(注1)に基づいたネットワークを展開しています。サンパウロやリオ・デ・ジャネイロなどの大都市圏のライセンスを所有しており、主に裕福層をターゲットとして事業展開してきました。しかし隣のミナス・ジェライス州にはデジタルのシグナルが届かず、サンパウロやリオ・デ・ジャネイロから週末に別荘に行くユーザーはアナログ・モードに切り替えないといけないという不都合があります。これに愛想を尽かした裕福なユーザーがテレマーをはじめとする他社のサービスに乗り換えているのが加入者減の一因です。さらにハンドセットの品揃えが悪いことなども人気凋落の原因となっています。テレフォニカ・グループは地方電話ではサンパウロ・テレコム(ティッカー:TSP)を所有しています。同社は地方電話のマーケット・シェアで32%を占有しており、テレマーに次いで第2位の位置につけています。 テレマーテレマー(ティッカー:TNE)は携帯電話市場では比較的参入が遅く、3年前に参入したばかりです。同社のサービスはGSM(注2)です。同社の地域はブラジルで最も平均所得の低い北部が中心です。従ってマーケティング戦略もヴァリュー志向を前面に出したものとなっています。同社はマーケット・シェアの伸張に重きを置いていますから場合によってはSIMカード(注3)の販売だけでも喜んで引き受けます。この場合、ユーザーは中古のハンドセットをどこかで手に入れてきてカードだけを差し替えるわけです。ヴァリューを前面に打ち出したテレマーの営業戦略はARPU(顧客単価)にも表れています。テレマーは北部が中心なのですが、そのライセンス地域の南端にはリオ・デ・ジャネイロとそれに隣接するミナス・ジェライス州が含まれており、この両地域では先述のようにビボからかなり顧客を奪っています。現在の同社のマーケット・シェアは13%にしか過ぎませんが、成長率という点ではブラジルの大手携帯電話会社中、最も速く成長している携帯電話会社です。 テレマーの地方電話事業は市場占有率で38%とブラジルでナンバー・ワンの地位にあります。ここでも同社の担当地域は北部が中心です。 ティムティム(ティッカー:TIM)はテレコム・イタリア・モバイルの略称です。同社は携帯電話のみに特化したプレーヤーです。同社はGSMとTDMA(注4)によるサービスを展開しています。現在のマーケット・シェアは24%でビボの後塵を拝していますが最近どんどん追いつきつつあります。同社のサービスは電波のカバレッジの信頼度が高い点にあります。 ティムは直近の第2四半期決算ではEBITDA(利払い・税・減価償却前利益)で見ると上のグラフのようにビボを抜いてブラジルの携帯電話会社の中で最も儲けている企業に躍り出ています。一方、EBITDAマージンでは遥かに規模の小さいテレミグを除けばブラジルの携帯電話会社の中で最も利益率の高い部類に属します。 ティムは総合的に見て上手く経営されていると評することが出来ると思います。 ブラジル・テレコムブラジル・テレコム(ティッカー:BRP<持ち株会社>およびBTM<営業会社>)は地方電話および長距離電話を主体とした企業です。同社のサービスはGSMです。地域的には内陸部が中心です。同社の主力は地方電話部門で、ここでの市場占有率は業界3位の25%です。地方電話は同社の売り上げ高の約50%を占めており、30%が長距離通話、11%がデータ通信からの売り上げです。携帯事業に関しては自前でGSMのネットワークを立ち上げ始めているわけですが、未だ初期投資の段階ですから上のEBITDAマージンのグラフに見られるとおり今は赤字が先行しています。 アメリカ・モバイル アメリカ・モバイル(ティッカー:AMX)はメキシコのテルメックス(ティッカー:TMX)系の携帯電話会社ですが、ラテン・アメリカ各国で幅広くモバイル事業を展開しています。 アメリカ・モバイルのブラジルに於ける携帯電話事業はクラーロ(Claro)というブランドで展開されています。同社のサービスはTDMAとGSMです。加入者数ではビボ、ティムに続いて第3位、マーケット・シェアで言うと23%です。アメリカ・モバイルの他国でのパフォーマンスに比べるとブラジルに於ける携帯事業は今ひとつ冴えませんが、ブラジル国内の競合他社との比較という点においては平均的なパフォーマンスであると言えるでしょう。 アメリカ・モバイルは固定電話事業ではエンブラテル(ティッカー:EMT)を所有しており、同社はブラジルの代表的な長距離電話会社です。 テレミグ テレミグ(ティッカー:TMB)はミナス・ジェライス州を中心とした携帯電話会社です。同社のサービスはGSMとTDMAです。加入者数で見るとブラジル・テレコムに次いで少なく、携帯事業を専業とする企業としてはいかにも中途半端な事業規模です。ただ、携帯免許を受けている地域が他社にとって比較的魅力的な地域であるため、M&A期待で同社株は買われることが多いようです。ただ、競争が激しい地域でもあり、チャーン(顧客の離反率)が高いことが懸念要因です。 (注1)CDMA:Code Division Multiple Access=符合分割多元接続方式 (注2)GSM: Global System for Mobile Communications=第二世代携帯電話の方式 (注3)SIMカード:Subscriber Identity Module Card=携帯の利用者を特定するICカード (注4)TDMA:Time Division Multiple Access=時分割多元接続方式
2006年10月10日

今日のまとめ 1.テレブラスの分割で13社がひしめく過当競争が生まれた 2.現在は業界再編成で会社数が半減する途上にある 3.ブラジルの携帯電話市場は早くも頭打ちの兆候を見せている歴史 もともとブラジルには2000を超える零細な電話会社が存在しました。ブラジルの軍事政権は国益上の理由から通信事業を国営化する目標を立て、1972年に国営電話会社、テレブラスを設立します。テレブラスは零細な業者を次々に買取り近代的な国営の独占企業体となりました。当初はこの体制で社会のニーズを満たすことが出来たのですが、時間の経過とともに官僚制の弊害が目立つようになり同社は非効率の見本のような存在になってしまいました。1990年代に民営化の波がラテン・アメリカ諸国にも押し寄せ、電話事業も分割民営化の対象とされました。ブラジル政府は改革を断行するため政府とは独立した通信監督当局、アナテルを設置します。アナテルの主な仕事は通信事業の新規事業の決定やサービスの廃止の決定権限を持つほか、周波数帯域のライセンスの管理や各種サービス料金の承認、当事者企業同士の係争の調停などです。アナテルの最初の大きな仕事はテレブラスの解体でした。1998年にテレブラスは8つの携帯電話会社、3つの地方電話会社、1つの長距離電話会社に12分割されました。 業界再編成上の表の「分割直後の名称」で挙げられた12社が旧テレブラスの分割後の姿です。これに独立系のCRTセルラーを加えて全部で13社がひしめく形となったわけです。しかし他の国と比べてみてもブラジルの場合、中途半端な規模の携帯電話の会社が乱立している観は否めませんでした。これではスケール・メリットを享受することは出来ません。そこで2004年8月のテレ・ノルデステ・セルラーとテレ・セル・スルの合併によるティム(ティッカー:TSU)の誕生を皮切りに業界の再編成の大きなうねりが起こりました。今年の2月にはテレスプ・セルラー、テレ・セントロ、テレ・レステ・セルラー、テレ・スーデステの4社が合併してビボ(ティッカー:VIV)が誕生しています。なお、ビボはスペインのテレフォニカ(TEF)が親会社で、テレフォニカの傘下の地方電話会社、サンパウロ・テレコム(TSP)とは同じグループに属します。そして3つめの統合の動きとして現在はテレ・ノルテ・レステがテレマー(ティッカー:TNE→10月の或る時点から新ティッカーKOIに移行予定)という社名の下で関係会社の持ち株構成を整理統合する作業が進行中です。この一連の再編成の後のブラジルの携帯電話市場の勢力図は下のようになります。 また、再編成後の地方電話会社の市場市場占有率は下のようになります。踊り場を迎えるブラジルの通信市場さて、ブラジルの通信市場を論ずるにあたって先ず最初に言及されるべき特徴は特に携帯電話の市場に於ける市場そのものの成長が早くも頭打ちの局面に入った観がある点です。下のグラフはエマージング各国の携帯電話普及率を示したものですが、ブラジルだけが明らかに成長鈍化の傾向を示しています。ブラジルの普及率は49%と、未だ50%にも達していませんから他国における実績から考えて今の水準が飽和点だとは思えません。ただ、モメンタムの鈍化は誰の目にも明らかであり、折からブラジルは他の国に比べて中途半端な規模の携帯電話会社がひしめく構造ですから、今後一層お互いの顧客の奪い合いが激しくなることが予想されます。 一方、地方電話の普及率にも言及しておくと、こちらの方は2002年に23%の普及率(ここでは一人当たりの回線数)に達したところで頭打ちになり、それ以降加入者は漸減しています。携帯電話の普及が固定電話の顧客を奪っていることは間違いありません。
2006年10月03日
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