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今日のまとめ 1.太陽光発電関連企業の決算は苦しい 2.マカオでは『シティ・オブ・ドリームス』の開業が間近に迫る 3.ネットイーズの『WoW』計画は不明瞭 ■サンテック・パワー(STP) 中国の太陽光発電関連企業、サンテック・パワーの第1四半期決算は売上高面で市場予想を大幅に下回りました。またその売上高の「質」についても少し疑問が残りました:売上高:3.16億ドル(予想は3.51億ドル)EPS:1¢(予想は▼6¢) 売上高は去年の第4四半期に比べて▼27%下落しました。売上減少の主因はPVモジュールの平均販売単価の下落によります。また製品の出荷量の下落も影響しています。売上の低迷は第2四半期も続くと予想されます。なお今期売上高にはサンテックが筆頭出資者(86%株主)であるグローバル・ソーラー・ファンド(GSF)という投資基金の支援を受けた企業に対する売上、約1億ドルが含まれています。これは「身内」に対するセールスであると看做すべきでしょう。その大半が3月に駆け込みで成約したものである点は注意を要すると思います。 このGSFは太陽光発電プロジェクトを促進するためにサンテックが戦略的見地から組成したファンドであり、現在、イタリアのシシリー島でソーラー・パネルの設置を計画しています。そのファンディングの一部は欧州の銀行からの借入で賄われます。なおGSFの投資先企業に対してサンテックが販売活動をする際は価格や支払い条件に特別の優遇はありません。 第1四半期中、シリコン・ウエハー・コストは▼25%下落しました。コスト単価は1ワット当たり66¢と、これまでの70¢から下落しており、グロスマージン17.8%を確保することに寄与しました。一方、営業マージンは6.7%でした。第1四半期のDSO(売掛金回収に要した日数)は76日と、第4四半期の46日からジャンプしています。 なおサンテック・パワーは第1四半期の決算を発表した直後に2000万株の公募増資で約2.4億ドルを調達しました。 ■インリー・グリーン(YGE) 同じく中国の太陽光発電関連銘柄であるインリー・グリーン(YGE)も落胆すべき決算を発表しています:売上高:1.43億ドル(予想は1.94億ドル)EPS:▼9¢(予想は▼1¢) 売上高は第4四半期に比べて▼35.7%下落しました。出荷量の減少と平均販売単価の下落(約▼15%)が売上減の原因です。これにはドイツの冬が厳しかったこと、ソーラー・タリフがスペインで変更されたこと、信用市場が冷え込んだことなどが影響しています。一方、グロスマージンは第4四半期の13.2%から今期は15.3%に改善しました。これは原料のポリシリコンの価格が30%程度下落したことが寄与しています。 インリーは今年通年のPVモジュール出荷予想は450から500メガワッツを予想しています。また第1四半期がたぶん需要の大底だろうと発言しています。今後、米国、中国で、国が後押しするプロジェクトが相次いで立ち上がることから少し希望が持てます。 中国政府によるソーラー・プロジェクトで向こう2年の間に800メガワッツ程度の需要が生ずると予想されます。 足元の景況感としては、4月、5月で受注が少し戻ってきました。ディストリビューターにおける過剰在庫の整理が進捗し、ドイツを中心に需要が戻っています。この中にはドイツを経由してイタリアやフランスへ出荷される需要分が含まれていると考えられます。その一方で去年までの需要をけん引したスペイン市場の落ち込みは激しく、回復の兆しはありません。 ■LDKソーラー(LDK) LDKソーラーの第1四半期決算は売上高面では市場予想を上回りましたが、EPSは予想を大幅に下回りました:売上高:2.83億ドル(予想は2.4億ドル)EPS:▼21¢(予想は▼8¢) 第1四半期のウエハー出荷量は206メガワッツで、去年の第4四半期の254メガワッツより下落しました。平均販売単価も去年の第4四半期から▼29.4%下落し$1.54でした。グロスマージンは1.7%でした。営業マージンは▼5.7%でした。 去年の第4四半期に仕掛け品在庫の評価損の計上がおおむね済んでいることから今期のグロスマージンが1.7%と低かったことは現在の価格環境の厳しさをそのまま反映した数字だと言えます。直近の平均販売単価は$1.10から$1.30あたりであり、第1四半期を〆たときより更に下落しています。平均販売単価の底入れは下半期だろうと予測しています。 今期の売掛残は売上高が減少したにもかかわらず大幅にジャンプしました。これはLDKの顧客が資金繰りに困っており、支払いをなるべく先延ばしにしようとしていることが影響しています。ただDSO(売掛金の回収に必要とした日数)そのものは55から60日であり、これは他業種などの平均から比べるととりわけ不健全ではありません。 LDKは短期の借入への依存度が高まっています。資金繰りや在庫の状況から考えてこれは好ましくないトレンドです。 ■メルコ・クラウン(MPEL) 次にマカオのカジノの株に移りますがメルコ・クラウンが第1四半期の決算を発表しています。売上高面では予想を下回りました:売上高:2.17億ドル(予想2.5億ドル)EPS:▼8¢(予想▼8¢) 今期の売上高は去年の第4四半期より▼15%下落しました。これはホールド・レート(=カジノの勝ち分)が低かったことが影響しています。因みに今期のホールド・レートは2.8%にとどまりました。去年の第4四半期は2.85%、そして去年の第1四半期は3.1%でした。但しホールド・レートはある程度上下するのが普通で、これ自体は経営の健全性の指標にはならないと思います。 一方、顧客の賭け金の額を示す指標はローリング・チップ・ボリュームと呼ばれますが、こちらの方は去年の第4四半期をボトムに改善基調にあります。毎月、ローリング・チップ・ボリュームはしり上がりに伸びてきており、第1四半期の決算を〆た後の、4月、5月にもこのモメンタムは持続しています。このことから「マカオの最悪期は脱出した」とメルコ・クラウンの経営陣は発言しています。 むしろ同社にとって重要なのはいよいよ6月1日に迫った『シティ・オブ・ドリームス』の開業です。『シティ・オブ・ドリームス』はプレミアム・マスマーケットにフォーカスした巨大な施設であり、マカオの市場のパイそのものを拡大するきっかけになると期待されています。一方、既存のカジノである『クラウン・マカオ』は改装を経て『アルティラ』という名前に変えました。 メルコ・クラウンは1.75億ドルの公募増資を敢行し、バランスシートの補強を済ましました。開業前後の資金ニーズは従って完全にカバーされています。 ■ネットイーズ(NTES) オンライン・ゲームのネットイーズの決算発表は売上高面で市場予想を下回りました:売上高:1.14億ドル(予想は1.16億ドル)EPS:47セント(予想は46セント) 主力のオンライン・ゲーム部門の売上高は1.06億ドルで去年の8140万ドルより増えています。ユーザー数などの面でも安定しています。むしろネットイーズにとって不安定要因としては新しくアクティビジョン・ブリザード社から配給権を獲得した人気タイトル、『ワールド・オブ・ウォークラフト』の運営が上手く行くかどうかでしょう。このタイトルの取得に必要とした費用は明らかにされていません。またサービスの開始時期に関しても明らかにされていません。そういう点が不透明感を増していると思います。 一方、ネットイーズのもうひとつのビジネスであるブランド広告部門のパフォーマンスは悪かったです。広告収入は600万ドルにとどまりました。これは前期の1640万ドルより大きな落ち込みとなっています。広告収入ではライバルのソーフーが今期+18%、バイドゥが+40%を記録していることからも同社の不振が目立ちます。
2009年05月25日
今日のまとめ 1. これまでに発表された各企業の決算はまちまち 2. マインドレイの苦戦が目立つ 3. シートリップは上海万博に期待 ■ウーシー・ファーマテック(WX) 中国のウーシー・ファーマテックは世界の製薬会社の新薬研究開発作業を引き受ける企業です。今回発表された第1四半期の決算は売上高、EPSの両方で市場予想を上回りました。また、今後の見通しも好転しつつあります。【第1四半期】売上高:5910万ドル(コンセンサス5845万ドル)EPS:20¢(コンセンサス8¢)【2009年ガイダンス】売上高:2.65~2.75億ドル(コンセンサス2.67億ドル) 新薬研究開発のアウトソーシング事業はこのところ製薬会社やバイオテクノロジーの会社の予算が切り詰められていた関係で厳しい状態でした。このためウーシー・ファーマテックの業績見通しに関しても厳しい見方をするアナリストが多かったですが、今期の決算は懸念されたほど悪くはありませんでした。売上高でも事前予想を上回っていますが、とりわけEPSの数字が良かった点が市場関係者から注目されました。これはコスト削減努力が効いてグロスマージンが改善したことが原因です。 通年の売上高ガイダンスはこれまでの予想数字が維持されました。ラボ・サービスの売上成長は下半期に集中しています。これは大きな契約が下半期に計上されるためです。また低分子薬の製薬アウトソース契約も下半期に集中しています。競合他社の中には未だ予想数字を引き下げているところが多いですが、ウーシーは新しいサービスが顧客に受け入れられはじめているとして強気なコメントを出しています。 ■グーシャン・エンバイラメンタル(GU) 中国でレストランなどから出る廃油をバイオディーゼルに精製する事業を展開しているグーシャン・エンバイラメンタルの決算は予想より悪かったです。今後の業績に関しても不透明な要因が多いです。【第1四半期】売上高:3990万ドル(コンセンサス4544万ドル)EPS:1¢(コンセンサス1¢) 第1四半期の売上高が去年に比べて▼18.1%下がったのはバイオディーゼル価格が急落(▼27.4%)したことによります。因みにボリュームは去年より+22.3%増えています。第1四半期のバイオディーゼルの出荷量は6.3万トン(1890万ガロン)でした。一方、コストの方はバイオディーゼルの販売価格ほどは下がらなかったので、結果としてグロスマージンは去年の31.8%から今期は10.2%まで下がりました。 3月に北京工場の拡張工事が終わり、5万トンの生産能力が追加されました。この結果、第1四半期の時点での総生産能力は34万トン(1.02億ガロン)になっています。今年の年末までに総生産能力を45万トンに持って行くという計画には変更はありません。 グーシャンは中国の景気後退の影響をもろに受けて精製マージンの圧迫を受けていますが、原料コストを上手く下げることができなかった点にアナリストから不満の声が上がっています。 ■エイコーン・インターナショナル(ATV) 中国で直接販売事業を展開しているエイコーンの決算は予想より良かったです。また、今後の見通しもかなり上方修正されました。【第1四半期】売上高:9070万ドルEPS:28¢(コンセンサス0¢)【2009年ガイダンス】売上高:3.1~3.5億ドル(コンセンサスは2.45億ドル) エイコーンは英語学習装置や姿勢矯正装置など、オリジナル商品の開発ならびに販売に力を入れており、今期の決算ではそれが実って良い数字が出せました。携帯電話の販売の事業は相変わらず値引き競争に晒されています。しかし全体的にはエイコーンの直接販売の事業はかなり立ち直ってきた観があります。今後の事業展開としてもオリジナルの化粧品の販売とか、部屋のお掃除の際、環境にやさしい洗剤など、他では買えない差別化された商品を消費者に訴求していきたいと考えています。 エイコーンのキャッシュフロー管理、支出管理は厳格で、財務的には危なげない内容です。バランスシートには1.65億ドルのネット・キャッシュが載っており、一株当たりに換算すると5.5ドルになります。これは場でついている株価より大きい金額です。従って目先はこのキャッシュが株価の下支えになると考えられます。 ■チャイナ・デジタルTV(STV) 中国でテレビ放送のデジタル化のためのシステムを販売するチャイナ・デジタルTVの決算はほぼ予想通りでしたが、来期の予想が大幅に下方修正されました。【第1四半期】売上高:1440万ドル(コンセンサス1420万ドル)EPS:13¢(コンセンサス13¢)【第2四半期ガイダンス】売上高:1450~1550万ドル(コンセンサス1750万ドル) 第1四半期のスマートカードの平均販売単価は去年の第4四半期に比べて▼2.0%下がりました。これは大口顧客の一括購入によるボリューム・ディスカウントで単価が下がったためです。なお同時期の単位コストの方は▼1.7%下がっています。 カンファレンス・コールで問題となった個所は第2四半期のスマートカードの出荷に関するガイダンスであり、会社側の予想は235~255万ユニットです。これは去年の実績に比べて少ない数字です。会社側の説明では去年はオリンピックの前に受注が高水準だったということでした。しかし実際には去年の受注状況はオリンピックの前から受注が止まり始めたので、アナリスト達はこの説明に余り納得しませんでした。このように第2四半期のスマートカード出荷予想が下がったにもかかわらず、通年では良い数字が達成できると会社側が考えている理由は: 1. 下半期は季節要因で受注が増える 2. 顧客企業のデジタル化計画の内容から判断して受注が増えることが予想されることによります。これまでの同社のトラックレコードでは予想が外れるケースが多かったので、下半期で後れを取り戻すという会社側の意見には疑問を挟むアナリストが多いです。 ■マインドレイ・メディカル(MR)中国の医療機器メーカー、マインドレイ・メディカルの決算は売上高面で予想を下回りました。また今年の通年のガイダンスも引き下げられています。【第1四半期】売上高:1.34億ドル(コンセンサス1.45億ドル)EPS:27¢(コンセンサス25¢)【2009年ガイダンス】売上高:去年に比べて10%成長(コンセンサスは16%成長)マインドレイは去年の第4四半期に続いて今回も厳しい決算内容でした。売上予想がどんどん下がっているので、こういう状況では株価は上がりにくいと思います。先ず海外市場ですが新興国の売上は世界的な景気後退の影響を受けてもう一段と冷え込んでいます。大体、16%程度落ち込みました。一方、中国国内市場は今年25~30%程度成長すると見込まれています。これは良い数字には違いないのですが、去年中国市場は50%近く成長していたので、ここでも成長率は大幅に鈍化しているわけです。今期のDSO(売掛金の回収に要した日数)は前期の40日から60日にジャンプしていますが、これは売掛金の絶対額が急増したからではなく米国のデータスコープ社を買収した後、計算のベースが変更されたことによります。 ■シートリップ(CTRP)中国の旅行予約ポータル、シートリップの決算は予想を上回りました。また来期のガイダンスも引き上げられています。【第1四半期】売上高:5900万ドル(コンセンサス5390万ドル)EPS:26¢(コンセンサス21¢)【2009年ガイダンス】売上高:6010~6290万ドル(コンセンサス5973万ドル)シートリップの第1四半期決算ではレジャーの旅客数が増えていることが確認されました。その一方でシートリップの顧客の多くはビジネス客で、こちらの方は引き続き世界的な景気後退の影響を受けています。またシートリップが受け取る予約サービスの手数料はチケット価格のパーセンテージであり、航空運賃自体が少し安くなっているので予約手数料のレートも下がりました。2010年の上海万博へは7000万人の来場が予想されており、万博期間も180日とオリンピックより長いことから旅行業界にとっての恩恵はオリンピックより数段大きいと見られます。(注:因みに北京オリンピックの入場券は680万枚で全て売り切れましたが実際の来場数はそれより少なかったと思われます。)現在、シートリップは万博の入場券を扱えるよう、主催者側と交渉中であり、また万博向けのパッケージ・ツアーの企画も準備中です。海外からの上海万博への観光客の訪問はその時点での世界の景気に左右される度合いが大きいので余り期待はしていません。因みに2009年の海外から中国への観光客の訪問はかなり落ち込むと見られています。ホテルの予約のビジネスの方では地方のエコノミー・ホテルの成長に期待しています。これまでは三ツ星以上のホテルを中心にカバーしてきましたが、エコノミー・ホテルに対する顧客の満足度は高く、地方へのビジネス旅行が増えるにつれてエコノミー・ホテルもちゃんとカバーしないとシートリップの予約サービス全体としての利用価値が落ちるため、それらの新しい市場にも力を入れることにしています。
2009年05月20日

今日のまとめ 1. これまでの決算発表は余り良くない 2. 中国の建設セクターの回復に期待が寄せられている 3. ブラジルのクレジット・トレンドには要注意 ■BRICsの企業の決算が出始めている BRICsの企業の決算が続々出ています。ここまでの決算では大体、全体の4割程度が決算を発表していますが、そのうち売上高面、若しくはEPSのどちらか一方でコンセンサス予想を下回る、いわゆるネガティブ・サプライズを出した企業は55%程度に上ります。2008年の第4四半期の決算ではBRICs全体の4割程度の企業がネガティブ・サプライズを出したので、決算の内容は引き続き厳しいと言えるでしょう。2008年第4四半期の決算ではネガティブ・サプライズもさることながらガイダンス(=今後の会社側予想数字)を引き下げる企業が続出しました。従って今回の第1四半期決算はハードルが低くなっていた筈です。それにもかかわらず多くの企業が目標を達成できませんでした。以下は主な企業の決算ならびにカンファレンス・コールのニュアンスです: ■バイドゥ(ティッカー:BIDU)売上高:1.19億ドル(予想1.16億ドル)EPS:86¢(予想76¢) バイドゥは市場予想を上回る決算を出し、今後のガイダンスも引き上げられました。旧正月明けから広告主の活動が活発化しているという発言がありました。同社は去年、中国政府に承認されていない医薬品を販売する闇業者の広告をブロックせずに掲載したことが咎められ、苦しい立場に立たされました。その際、「そもそもバイドゥの検索結果はスポンサーの広告なのか、検索結果なのか、紛らわしい」という指摘が出て、サイトのデザインを改善するよう勧告されました。バイドゥはこれにすぐに応え、怪しい業者を一掃するなど改善に取り組みました。今回の決算で広告主の数が前期より減っているのはそのためです。 中国のネット関連企業は政府による規制強化をきっかけに長期に渡って業績を落とす企業が多いですが、バイドゥは即座に断固とした経営改善に取り組み、いち早く立ち直った観があります。 ■ソーフー(SOHU)売上高:1.16億ドル(予想1.13億ドル)EPS:$1.20(予想99¢) ソーフーは市場予想を上回る決算を出し、今後のガイダンスも引き上げています。同社はネトゲとウエブ・ポータルの2つの事業を展開していますが、主にネトゲの好調が業績のけん引役となっています。しかしネトゲ事業は値上げが続いていた顧客単価がそろそろ頭打ちとなると予想されることから今後は以前ほどの成長は期待できないと思います。一方、ブランド広告部門は中国企業の広告宣伝活動をうかがい知るうえでとても貴重なデータ・ポイントを提供してくれます。ソーフーは自動車会社がとりわけ積極的に広告を増やしているとコメントしていました。しかしそれ以外の業種の広告主は依然、様子見を決め込むところが多く、金融業界、IT業界、不動産業界などからの引き合いは低調です。 ■バーレ(VALE)売上高:54.2億ドル(予想59億ドル)純利益:13.6億ドル(予想15億ドル) バーレは先週からティッカー・シンボルがVALEに変更されました。これは今までCVRDとか、リオドセとか、いろいろな名称で同社が呼ばれていたのが投資家にとって紛らわしかったという反省から、会社名もティッカーも全部バーレで統一するというブランディングの見地からなされた改変です。なおティッカーは4文字になりますがこれまで通り、ニューヨーク証券取引所で取引されます。(普通、ティッカーが4文字だとナスダック) バーレの売上高は世界的な景気後退を反映して去年の第1四半期より▼32.6%下落しました。純利益も同じく▼32.6%の下落となっています。バーレの場合、ブラジルが欧州や米国市場に比較的近いことから普段なら中国への依存度はオーストラリアのライバル各社に比べて高くありません。しかし先進国の景気後退で比較的元気の良い中国への依存度が急激に高まりました。またここへきて中国が極めて積極的に鉄鉱石を輸入していることが指摘されました。 中国が積極的に鉄鉱石を輸入している背景には中国政府の発表した景気刺激策を受けて今後建設セクターが忙しくなるだろうという読みがあるからに他なりません。中国で消費される鉄鋼の実に51%が建設業によって占められています。 これらのことからバーレは鉄鉱石価格の見通しに関して概して強気でした。しかしこれについてはもう少し用心深い見方をする企業もあります。例えばギリシャのバラ積み船の会社、ダイアナ・シッピング(ティッカー:DSX)は1・2月の中国の鉄鋼生産は+2.4%成長にとどまっており、鉄鉱石輸入の増加ペースとちぐはぐな動きになっているので、中国の港にはどんどん鉄鉱石の在庫が積み上がりつつあると警鐘を鳴らしています。 ■ブラジルのクレジット・トレンドは悪化している 最後にブラジルの大手銀行、イタウ・ウニバンコ(ティッカー:ITU)とブラデスコ(ティッカー:BBD)が決算を発表しています。決算の詳細は省略しますが両行ともに不良債権比率が上昇しているのが目を引きました。今後注意を払う必要があると思います。
2009年05月11日

今日のまとめ 1. アメリカ企業の決算発表はほぼ終わった 2. ADRはこれからが本番 3. アメリカの投資家は久し振りに積極姿勢 ■アメリカ企業の決算は概ね出揃った アメリカ企業の2009年第1四半期決算発表はこれまでのところ全体の67%程度の発表が済みました。ウォール・ストリート・ジャーナルが伝えるところではそのうちの60%の企業がEPSでは市場予想を上回りました。しかし売上高面では僅か38%の企業しか市場予想を上回っておらず、今期の決算は主に費用を圧縮するなどの自衛努力から捻出されたものであることが伺えます。 ■ADRはこれからがピーク さて、アメリカ企業の決算発表は既に峠を越えたわけですが、ADR(米国預託証券)を出している海外の企業の決算発表はこれからが山場を迎えます。ADRの決算が注目されるひとつの理由は決算の〆のタイミングの関係で本国企業の決算発表のタイミングよりひと足早く直近の経営内容が伺い知れる場合が多いことが挙げられます。これに加えて今回の第1四半期決算シーズンは特別重要です。その理由はアメリカの機関投資家がここへきて新興国の株式市場へ高い関心を示しているからです。下は最近の『バロンズ』が行った機関投資家意識調査の結果です。 ■米国個人投資家の積極的な参戦が見られる 但し最近のADRの売買は主に個人投資家が主役となっています。これは低位の小型株をアグレッシブにトレーディングするのは個人投資家の方が動きやすいからだと思います。このようにアメリカの投資家が新興国のADRに積極参戦するのは久し振りのことです。既に決算発表日が確定している銘柄のリストを掲げておきます。決算発表日銘柄ティッカー売上(予)EPS(予)5月6日ブラデスコBAKNA▼26¢5月6日コパCPA3.06億ドル93¢5月6日ダイアナDSX6060万ドル46¢5月6日メルカドリブレMELI3290万ドル10¢5月6日テナリスTS25億ドル68¢5月7日バンコロンビアCIBNA71¢5月7日CTCメディアCTCM9570万ドル5¢5月7日ゴールドフィールズGFINANA5月7日ランドゴールドGOLD8280万ドル19¢5月7日ホーム・インズHMIN7290万ドル5¢5月7日タムTAM12.3億ドル22¢5月7日WNSWNS9620万ドル29¢5月11日シー・トリップCTRP5370万ドル21¢5月11日51ジョブスJOBS2650万ドル3¢5月11日マインドレイMR1.45億ドル25¢5月11日ナムタイNTE1.1億ドル▼1¢5月12日チャイナデジタルSTV1420万ドル13¢5月13日コンゾンKONG2770万ドル3¢5月14日ATAATAI391万ドル▼7¢5月14日ガフィーザGFA2.59億ドル42¢5月14日ナインタウンズNINENANA5月14日ペルディゴンPDANANA5月14日サディアSDANANA5月15日アングロゴールドAU10.5億ドル54¢5月15日ヴォトランチンVCP2.5億ドル▼8¢5月18日エアメディアAMCN3167万ドル2¢5月19日チャイナ・テックフェイスCNTFNANA5月26日CNインシュアーCISG3213万ドル15¢;(出典:ヤフー・ファイナンス、会社ウエブサイト)
2009年05月07日
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