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今日のまとめ 1.ブラジル株ADRを現地株へ転換する際にも1.5%の投資税が課税される 2.これは10月に発表された課税措置の厳格な適用を確認した発言に過ぎない 3.ADRの乖離は拡大することが考えられるがこれは大きな不都合ではないブラジル株ADR(米国預託証券)の転換にも課税11月18日のニューヨーク市場の大引け1時間ほど前にブラジルのマンテガ財務相が「ニューヨークで取引されているブラジル株ADRに関しても現地株へ転換請求をかけた場合は1.5%の取引税を課す」とコメントしたことから大引けにかけてブラジル株が急落しました。しかしこのニュースは既に10月下旬に発表されているブラジルへの証券投資目的で外貨をブラジル・レアルに交換することに対する課税措置を厳格に適用する事を再確認したに過ぎず、追加的な課税ではありません。ADRは蚊帳の外だったブラジル株はサンパウロ取引所でも取引されていますし、大型株の多くはADR(米国預託証券)という形でアメリカでも取引されています。今回の発表でニューヨークで取引されているADR価格とサンパウロ取引所での価格が乖離した場合、「ADRを空売りして、現地株を買い戻す」という方法で鞘取りを行う業者に対してもこの取引税が厳格に適用されることがハッキリしました。この措置が与えるインパクトとは?この措置の直接的な影響は今後の両市場における鞘取り可能な価格差(プレミアム・ディスカウント)が今までの計算より更に1.5%の取引税分だけ上乗せされるということです。実際にはADRと現地株との間の鞘取りは絶えず実行されているものではなく、ニューヨークのブラジル株ADRの出来高に占める鞘取り関連の出来高はごく一部だと思われます。さらに今後はニューヨークの投資家が「鞘取りがやりにくくなったのだから、或る程度乖離が出るのはしょうがない」とあきらめるのでプレミアムやディスカウントは大きいまま放置される可能性もあります。結局ブラジルの当局の立場からするとドルをブラジル・レアルに換金されることでレアル高になることを抑えることが主眼なわけで、そのためにADRの価格形成が少々歪んでも構わないと思っているわけです。ADRが現地株に対してかなりプレミアムになる現象は比較的現地株との鞘取りに制約の大きいインド株や昔の台湾株ではしばしば見られる現象でした。従って大部分の欧米の機関投資家は「我慢できる範囲内の不都合だ」くらいに感じるのではないかと思います。
2009年11月20日

今日のまとめ 1.内需関係の経済指標は良好 2.融資は抑えられている 3.輸出、輸入は冴えない 4.人民元切り上げ観測が台頭している■出そろった中国の10月の経済指標中国の10月の経済指標が出そろいました。先ず小売売上高ですが+16.2%と先月よりペースが加速しています。これは心強い傾向です。次に鉱工業生産ですがこちらも+14.1%とピックアップしています。一方、物価に目を転ずると消費者物価、生産者物価ともに極端に落ち込んだレベルから上向き始めており、実体経済の強さを反映した動きになっています。固定資産投資に関しては行き過ぎた過剰投資については政府が警戒の目を光らせていますが、相変わらず高水準で推移していると言えるでしょう。以上、ここまでの経済指標は上出来です。その半面、懸念点が無いわけではありません。先ず人民銀行は銀行のローン・ポートフォリオの質に関してだんだん懸念を抱き始めており、将来、焦付きの問題が大きくなり過ぎないうちに問題の芽を摘んでおくという観点から融資を抑え込みにかかっています。これを反映して10月の銀行融資のペースは9月の半分でした。銀行融資のお金の少なくとも一部は不動産市場や株式市場に直行していると思われますので、この絞り込みは株式市場にとってはマイナス要因です。そして10月の輸入と輸出の数字ですが、どちらも先月に比べて下落しています。過去4年の実績で見れば10月の輸入ならびに輸出の数字は必ず9月のそれより落ち込んでいます。つまり今年の落ち込みも例年通りの季節的な要因によるものだということです。ただ来月にはちゃんとリバウンドするかどうか見極めたいところです。■人民元の切り上げの観測さて、ここ2週間ほどの間に人民元の切り上げ問題がしばしば投資家の話題に上るようになりました。11月15日からのオバマ大統領の訪中ということも関係していると思います。また中国のマクロ経済の足取りが上に見てきたようにかなりしっかりしてきているので、ここらへんが潮時だという声もあります。こうした声の高まりに対して中国政府は「国際間の資本の移動と主要通貨の変動の様子を人民元の適正レートを考えてゆく際に考慮する」と発表しています。いずれにせよ、こういう風に人民元切り上げの観測が台頭してくると、「それを先回りして、中国株を買っておきたい」という気の早い投資家は必ず出てくるものです。従って、当座の中国市場はそういう思惑先行型の相場になると考えられます。ただ上の輸入、輸出の数字を見てもわかるように中国の貿易は未だリーマン事件前の水準には戻っていません。従って外圧が我慢できなくなるまで、なるべく人民元の切り上げを先延ばしするというシナリオもあながち無いとは言えないでしょう。
2009年11月12日

今日のまとめ 1.ブラジル市場は予想通り浅い調整の後、リズムを取り戻している 2.個別企業の決算発表はおしなべて好調である■早くも出直るブラジル株式市場海外からの投機資金を抑制するための「投資税」の発表以来、小さな調整局面を迎えていたブラジル株式市場が早くも反騰しはじめています。ボべスパ指数は10月中旬の67500の高値からちょうど10%調整した後、再び騰勢を強めています。私の考えは「今回の調整は浅いので押し目は強気で臨みたい」というものでしたが、これまでのところはその作戦が当たっているように思われます。■企業レベルで起こっていること私がブラジル株式市場に強気であるマクロ(巨視的)レベルでの説明は第189回のレポートに書きました。そこで今日は個々の企業のレベルで起こっていることを少し紹介したいと思います。■バーレ(VALE)バーレはブラジル最大の鉄鉱石の生産者です。同社は10月末に決算を発表しています。EPSは31¢と、コンセンサスの28.7¢を上回りました。とりわけ鉄鉱石の出荷量の多さがアナリストを驚かせました。第2四半期に比べると鉄鉱石ならびにペレットの出荷は+35.5%でした。EBITDA(利払税金償却前利益)は第2四半期に比べて75%も伸びています。そのうち価格上昇の寄与度は約7割、出荷量増加の寄与度は約3割でした。バーレはリーマン事件以降、一旦休止を決めた鉄鉱石のプラントを再開する決定を下しています。同社がこのように強気姿勢を表明した背景にはグローバルな景気後退が思いのほか早く終息したという確信をバーレ経営者が持つに至ったからだという説明がされました。実際、グローバルな鉱工業生産は急速に反発していますしアルミニューム、銅、ニッケルの価格も軒並み上昇しています。バーレの考えでは今後、景気復活のペースそのものは鈍化するだろうけど、もう一度景気がつんのめる(=ダブル・ディップ)リスクは減少しているとのことです。■ナショナル・スチール(SID)ナショナル・スチールはブラジルの老舗の製鉄メーカーです。CSNという名称で呼ばれることもあります。同社の第3四半期決算発表は純利益6.59 億ドルと、こちらもバーレ同様市場予想を上回る好決算でした。売上高は前期比で18.4%、ボリュームは前期比で39.3%も増えています。営業マージンは29%で、これは極めて高い利益率であると言えるでしょう。なお純利益は前年同期の28倍にもなっていますが、これは同社の鉄鉱石部門、ナミサの一部を日本の鉄鋼メーカーなどからなるコンソーシアムに売却した特別利益を含んでいるからです。またブラジル・レアル高で利払い負担が軽減されたことも増益の原因です。ナショナル・スチールは今年中にも鉄鉱石の子会社、カーサ・デ・ペドラをIPOする予定であり、これは同じ鉄鉱石のバーレが既に株式市場で人気銘柄となっていることから考えて注目度の高いディールになると予想されます。■ブラデスコ(BBD)ブラデスコはブラジル第3位の銀行です。同社の第3四半期の純利益は18.1億レアルで、市場予想とほぼ同じでした。去年の同期は19.1億レアルであり、前年同期比ではマイナスになったわけですが、これは焦付きローンに対する引当金を積み増したことが原因です。下のグラフはブラジルの主要銀行各行の遅延ローン比率です。景気が戻ってきているので焦付きの見通しもここへきてある程度安定化していると言われています。従って引当金を積み増す必要は近い将来下がって来ると考えられます。なお、上のグラフに見られるようにブラデスコはそもそもライバルのサンタンデール・ブラジル(ティッカー:BSBR)やイタウウニバンコ(ITUB)などより遅延ローン比率そのものが低い点に注目して下さい。貸付の資産の劣化が止まれば再び融資を積極的に拡大してゆけると思われます。ブラデスコはライバルのイタウ銀行とウニバンコ銀行が合併したことで規模的にはこのイタウウニバンコの後塵を拝する立場になりました。しかし経営の質という点では現在でもブラジルでNo.1であることには変わりありません。銀行セクターを巡るリスクとしては未だADRがアメリカに上場されていないブラジル最大の銀行、バンコ・ド・ブラジルが近くアメリカでのADRのIPOを果たすべく水面下で動き始めているというニュースが出ている点です。現時点ではこのIPOが一体、どのくらいの規模になるのかはぜんぜん見当がつきませんが、先のサンタンデール・ブラジルのIPOが70億ドルという巨大なスケールだったことを考えると、かなりまとまった金額になると予想されます。まとめるとブラジルの株式市場は大型の資金調達や「投資税」の導入などの悪材料で調整を余儀なくされました。しかしこれらのネガティブ要因にもかかわらず相場が早くも出直っているのは、そもそも歴史的に見て現在のブラジル株式市場のPERが余り高くない(向こう12カ月の予想EPSに基づいて12倍 →これは過去10年の同国市場の平均PERと全く同じ水準)ことに加えて、上に述べたように企業収益が極めて好調なことが原因だと考えられます。
2009年11月10日

今日のまとめ 1.インド準備銀行はそろそろブレーキを踏むことを考え始めている 2.焦付きに対する引当比率の引き上げ指導が開始された 3.銀行側は積極的な経営姿勢を維持している■次々にバブル防止策を打ち出すインド準備銀行春先の総選挙で与党連合が圧勝して以来、世界の事業会社や機関投資家はインドに熱いまなざしを向けています。選挙結果が判明した翌月曜日の立ち合いでムンバイ市場は+18%もの暴騰を演じたにも関わらず、その後も押し目らしい押し目も無いままにずっと堅調な相場が続いてきました。しかしここへきてそうしたインド・ブームも少し不都合な事の方が大きくなり始めています。そのひとつは為替です。インド・ルピーは去年のリーマン・ショックの後のリパトリエーション(資金引き揚げ)現象、ならびにサティヤム・コンピュータの粉飾決算事件などの影響で基調としてはルピー安だったのですが、3月を境にルピー高に転じており、ITアウトソーシングをはじめとする輸出企業にとって頭痛の種となっていました。また過度の融資の成長はバブルの種を蒔くことになります。そこでインド準備銀行は財政出動による景気刺激策は維持しつつも、その一方で銀行に対し、リザーブ・リクワイヤメントの引き上げ、ならびに焦付きローンへの引当比率の引き上げを通じてバブルを未然に防ごうとしています。■銀行の資産内容現在のインドの銀行各行の遅延ローンの金額は下のグラフのようになっています。もちろん、規模の大きい銀行も、小さい銀行もいっしょくたにして比較することは出来ません。そこで現在の各行の焦付きローンの引当比率を示したのが次のグラフです。インド準備銀行の新しい指導では引当比率を来年秋までに70%に持って行くようにというガイドラインが示されました。上のグラフを見ると例えば HDFC銀行のように既に現時点で70%の引当率をクリアしている銀行も散見されます。しかしその一方でICICI銀行のように引当率が50%程度のところもあります。そこで新しいガイドラインに沿った形で引当率を引き上げるとして、不足額が幾らかを計算したのが次のグラフです。ステート・バンク・オブ・インディアとICICI銀行の不足額が大きいことがわかります。これをおのおのの銀行の税引き前利益の額と比較するとステート・バンク・オブ・インディアの場合、利益の約27%が、ICICI銀行の場合、利益の約34%が吹っ飛ぶ計算になります。このような一連の指導の目的はいざという時の備えを積み増すということに加えて、過度の融資などによるバランスシートの膨張を抑える意図があります。インド準備銀行の作戦は上手く行くでしょうか?先日決算発表したICICI銀行のチャンダ・コーチャーCEOの決算インタビューを聞く限りでは同行はアグレッシブな融資経営拡大路線を修正する意図は無いように聞こえます。ICICI銀行は今期焦付きの目立った無担保小口貸付に関してはローン残高を圧縮する予定ですが、住宅、自動車、企業向けローンはどんどん拡大してゆくとコメントしていました。また、これはICICI銀行のみではなく、インドの、とりわけ地方の銀行に顕著な傾向なのですが、近年、庶民の間でようやく銀行に預金を預けるという習慣が定着しはじめ、その結果、小口預金から構成されるコア・デポジットが増加しつつあります。コア・デポジットは低コストで、かつ安定的な貸付原資になりますので、これが増えることは貸付利鞘の点でも銀行経営の安定という点でも朗報だと思います。銀行監督当局からの引締めにもかかわらず銀行側が積極姿勢を維持している理由は銀行サービスの地方への浸透と、それによる預金増というポジティブなトレンドを見届けているからに他なりません。
2009年11月04日

今日のまとめ 1.やっと押し目が来たBRICs株式市場 2.株価水準は適正 3.インフレは未だ大丈夫 4.成長見通しは明るい 5.先進国から新興国へのマネーの流れは今後も続くやっと来た調整局面新興国市場が調整局面を迎えています。 今年の高値10月末調整幅%ブラジル・ボべスパ指数6750061519.31-8.86ロシアRTS指数1480.921348.54-8.94インド・センセックス指数17457.2615896.28-8.94中国上海総合指数3123.462995.84-4.09BRICs各市場はこれまでに最近の高値から4~9%近く調整しています。既にインドのセンセックス指数はテクニカル指標のひとつ、RSI(レラティブ・ストレンクス)で「売られ過ぎ圏」である30まで到達しています。その一方で他の3つの市場はRSIが50近辺であり、この尺度から判断する限り調整は十分ではありません。しかし、この押し目は強気で臨みたいと私は考えています。今日はその理由を整理してみます。株価評価先ず各国の向こう12カ月の収益予想に基づいた株価収益率(PER)を示すと下のグラフのようになります。青で示したのが過去10年間の平均株価収益率であり、赤が現在の数字です。なるほどブラジルを除いては各国とも過去10年の平均値より割高になっているのですが、その度合いはひどくありません。株価のバリュエーションを考える場合、そのときの金利水準を考慮する必要があります。なぜならば投資理論の世界では株式は債券などの確定利付き証券の金利と競争関係にあり、債券の利回りが高ければわざわざリスクを冒して株式に投資する投資家の数は減ると考えられているからです。言葉を換えて言えば、インフレは株式価値をぶち壊す、投資家の敵なのです。その点、現在の新興国のインフレは下のブラジルとインドのインフレ率のグラフに見られるように安定した水準にあり、2008年の上半期のように各国が慌てて利上げを繰り返した状況とは程遠いです。成長見通し次にBRICs各国の今後の成長見通しを考えた場合、その見通しには極めて明るいものがあります。先日、中国の第3四半期のGDP成長率が前年同期比8.9%だったことが発表されました。インドの場合、来年3月に〆る会計年度のGDP成長率は6~6.5%と予想されています。しかしマンモハン・シン首相は向こう2年くらいの展望を考えた場合、年率で9~10%程度のGDP成長率も夢ではないと考えているそうです。ブラジルの今年上半期の GDP成長率は若干のマイナス成長でした。しかし来年には鋭角的に戻し、年率で5~5.5%程度で成長できると大方のエコノミストが考えています。このように原油価格に左右される度合いが高く、経済指標的にも他のBRICs諸国に比べて少し見劣りするロシアを除けば成長見通しは概ね良好なのです。不確実要素についてさて、好材料の揃っているBRICs諸国ですが不安材料がないわけではありません。その最大のものが新興国通貨が強すぎるという問題です。急速な通貨の上昇は輸出部門の競争力を低下させます。これは去年上半期に見られた状況と似ているのです。春の総選挙で与党連合が大勝し、欧米企業の直接投資意欲が高まっているインドやリオデジャネイロ五輪の招致成功でポートフォリオ資金が大量に流入したブラジルなどは黙っていてもどんどんホットマネーが飛び込んできます。各国の中央銀行はそういう状況に神経を尖らせているのです。ブラジルが投資目的でブラジル・レアルに換金しようとする外人マネーに対して2%の課税を発表したのは懸命な「冷やしオペレーション」なのです。先進国の緩和的金融政策との関係しかし新興国がどれだけ市場をけん制しても、「先進国から新興国へ」というお金の流れは中長期的には変わらないと思われます。その理由はアメリカをはじめとする先進国はまだ「病み上がり」の身であり、せっかく持ち直しかけた景気の失速を防ぐために当分の間、緩和的な政策を続ける必要があります。また財政収支の内容は悪く、通貨は健全ではありません。その一方で新興国は相対的に健全財政であるばかりでなく、利回り水準的にも魅力があります。このように基本的に先進国の経済の基礎要件が新興国のそれに比べて大幅に見劣りする以上、ある時点で新興国市場が再びアウトパフォームしはじめると考えるのが自然ではないでしょうか?
2009年11月02日
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