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ねじれた家に住む老人が毒殺された。 ねじれた家族とその犯人がわかり、何だか家族のありかたを考えました。
2020年05月31日
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※BGMと共にお楽しみください。土方さんが両性具有です、苦手な方はお読みにならないでください。「そいで、話ちゅうのは何ぜよ?」「実は・・」 喜助は、近々メリケンの内戦が終わり、最新式の西洋銃が入ってくる事を龍馬に話した。「ほぉ、そうかえ。そんな情報をおまんが何で知っちゅう?」「商人は風の動きを読むのが仕事です。」「まぁ、わしもカンパニーを始めたから、おまんの言う事はわかるのう。」「そうでしょう?」「坂本殿、そろそろ・・」「すまんのう、もっとおんしの話を聞きたいけんど、先客がおるがじゃ。」「そうですか。ほなまた今度。」喜助はそう言って龍馬に頭を下げると、部屋から出て行った。「怪しい男でしたね。」「真紀、おなんいつもしかめ面ばかりして疲れんのか?」「いえ、別に・・」「美人にしかめ面は似合わんぜよ。」「男が美人と言われても、ちっとも嬉しくありません。」「まぁ、おんしは一筋縄ではいかん性格だということはわしも知っちゅうが・・」「坂本様、わたくしに何か言いたい事があるならはっきりと言うて下さらなければ困ります。」「兄上、もうすぐお客様が来はります、うちらは護衛に戻らんと。」「そうだな、あいり。では坂本様、俺は仕事に戻ります。」「わかった。」 龍馬の部屋から出た後、真紀とあいりは意外な人物と廊下で再会した。「おや、珍しい。君達とこのような所で会うなんて。」「桂さん、お久しぶりどす。」「おや、君は確か、あの時の女中の・・」「あいりと申します。」「元気そうで安心したよ。まだ剣術は続けているのかい?」「へぇ、まだ続けています。」「そうか。真紀、後で君と話したい事がある。」「わかりました。」 龍馬との会合を終えた桂は、真紀を自分が泊っている宿の部屋へと呼び出した。「桂さん、お話しとは何でしょうか?」「真紀、君に頼みたい事がある。」「頼みたい事?」「新選組に潜入して、あいつらの動きを探ってくれ。」「それは出来かねます。俺は敵に顔が知られていますし・・」「それでも、やって欲しい。」「ですが・・」「真紀、お前は勘違いをしているようだな・・お前の主は坂本ではなく、このわたしだ。」桂はそう言って立ち上がると、真紀の胸倉を掴んだ。「何を・・」桂と揉み合っている内に、真紀の着物の片袖が破れてしまった。「真紀、その傷は何だ?」桂はそう言うと、真紀の左腕に残る醜い火傷の痕を見た。「これは、あの女・・廓の女将に折檻された痕です。」「折檻だと!?」「あそこは、幼い俺にとっては生き地獄そのものでした。あの時、桂さんに拾って頂かなければ、俺はもうこの世には居ません。」「済まない・・辛い事を聞いてしまったな。」「いえ、いいのです。もう昔の事です。」真紀はそう言うと、姿勢を正した。「桂さん、俺は桂さんに拾って頂いたこの命、無駄には致しません・・ですから、桂さんの為に、粉骨砕身の気持ちで力を尽くそうと思います。」「そうか・・」「坂本殿には、俺の方から話を・・」「いや、その必要はない。坂本君には既にわたしの方から話しておいた。」「そうですか。」「真紀、急な事で済まないが、明朝わたしと京に行ってくれ。」「はい、わかりました。」 その日の夜、真紀は龍馬とあいりの元へと戻った。「桂さんもおまんには色々と気に懸けておるのう。しっかし、敵の牙城に潜入して大丈夫かえ?」「兄上、今すぐにでもお断りした方が・・」「それは出来ぬ。」「何でどす!?京であの沖田に殺されそうになった事、もう忘れてしまったんどすか?」「忘れてなどいない・・あいつに後ろ傷を負わされそうになった時の事、一度も忘れてなどおらぬ。」真紀はそう言うと、翡翠の双眸を怒りで滾らせた。「あいり、真紀は頑固者じゃき、おまんが何を言うても聞かんぜよ。」「そうどすか・・兄上、お気をつけて行ってらっしゃいませ。」「あぁ、行って来る。」 明朝、真紀は桂と共に京へと向かった。「真紀、お前にばかり辛い役目を背負わせてしまって済まない。」「俺は平気です、桂さん。」 京入りした日の夜、真紀は桂と同じ部屋で布団を並べて寝た。 真紀が寝返りを打とうとした時、いつの間にか桂が自分の布団に入っていた。「桂さん、何を?」「夜這いをしに来た。」「そんな・・」「愛している、真紀。」 桂はそう言うと、真紀の胸に巻かれていた晒しを解くと、その下に隠されていた白い乳房があらわになった。「風の噂で、聞いた事がある。“マリア様”は、お前と同じ、男女両方の性を持つ身だという。」「それを俺に確めろと?」「そんな野暮な事は頼まんよ。」桂はそう言うと、真紀の左腕に口づけた。「あの女は、俺の裸を見た時、俺を“悪魔”と罵りました。」「お前が悪魔なものか。西洋では悪魔は両性だが、天使も両性だという。」「そうですか・・」 桂は真紀を抱きながらも、心では蒼い瞳の“マリア様”―歳三を想っていた。―第一部・完―にほんブログ村
2020年05月31日
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土方さんが両性具有です、苦手な方はお読みにならないでください。「・・まさか、泣く子も黙る新選組副長が、“マリア様”だったとはな。」「・・俺に何をするつもりだ?」「キリシタンを捕えたら、普通はそやつが転ぶ(改宗する)まで拷問漬けにするのだが、そなたはキリシタンにとって大切な存在・・特別に可愛がってやろう。」西村はそう言うと、そっと歳三のほつれた髪を手櫛で整えた。ただそれだけなのに、歳三は全身が粟立つのを感じた。「わたしについて来い。」 歳三は西村に連れられ、彼個人が所有する屋敷へと向かった。 奉行所と同じように広い造りの武家屋敷なのだが、中には全く人の気配がない。「お帰りなさい、旦那様。」 屋敷の奥からすぅっと現れたのは、小袖姿に丸髷を結った女だった。「しず、この者を着替えさせよ。」「御意。」 しずという無口な女に連れられた歳三は、彼女と共に奥の部屋へと入った。 そこには、女物の帯や袴、着物、櫛や簪などが並んだ、衣装部屋だった。「さぁ、お好きな物を選んで下さいませ。」「選べって言われても・・」「では、こちらで選ばせて頂きます。」しずはそう言うと、紫の地に御所車の模様が美しい振袖を手に取り、それを歳三の前にかざした。「肌の白さが映えて美しいこと。」「あんた、何者だ?」「わたくしは、あなた様の世話を任された、旦那様の妾です。」しずはそう言うと、歳三の手を触った。「何と美しい手・・しみひとつない。わたくしとは大違い・・」そうぶつぶつと独り言を呟くしずの姿は、薄気味悪かった。「旦那様はいずれわたくしを捨て、あなたをわたくしの後釜に座らせるのでしょうね、あぁ口惜しや・・」しずはそう呟きながら、歳三の手に爪を立てた。「あら嫌だ、わたくしったら・・少し取り乱してしまいましたわ。」しずはそう言うと、歳三の衣装選びを再開した。「旦那様、お待たせ致しました。」「おぉ、美しい・・」 西村は、美しく着飾った歳三を見てそう言うと溜息を吐いた。「おい、俺はてめぇらの遊びに付き合う程、暇じゃねぇんだ。」「遊びではない。わたしは、そなたを手に入れる。」「手に入れる、だと?」「さよう。:「旦那様、程々になさいませ。」「わかっておる。」(なんだ、こいつら・・) 「土方さんの事、近藤さんには話した方がいいよね?」「俺が文で、局長に副長の事を伝えておいた。」「ありがとう、はじめ。土方さん、奉行所で拷問とかされてないよね?」「相手は賢い、俺達が会津藩御預かりの身分である事を知っている。それ故、副長を無下に扱う事はないだろう。」「そうだよね・・」「いつも副長につっかかる癖に、やけに副長の事を気に懸けているな、総司?」「僕は土方さんの事は嫌いじゃない、ただ近藤さんと土方さんの仲が良いのに嫉妬しているだけ。」「そうか。」「土方さんを捕えた西村って奴、何だか怪しいんだよね。」「怪しい?」「何だか上手く言えないんだけれど・・あいつ、前から土方さんを付け狙っていたみたいなんだよね。」「何だか薄気味悪いな・・」「うん、だから土方さんの事が心配なんだ。」総司はそう言うと、静かに目を閉じた。 同じ頃、長崎・丸山では、料亭で行われる会合に出席する龍馬の護衛の為、真紀とあいりは龍馬に同行した。「何や、色んな人が居てはりますなぁ。」「長崎は唯一、異国に開かれた港だからな。」真紀がそう言いながら周囲の様子を窺っていると、怪しい男が廊下を行ったり来たりしている事に気づいた。「あいり、ここを離れるなよ。」「へぇ。」真紀はそう言うと、怪しい男の背後に立った。 「貴様、そこで何をしている!?」「ひぃぃ!」 背後から真紀に声をかけられ、男は頓狂な悲鳴を上げた。「すいまへん、うちはただ・・」「何の騒ぎぜよ!?」 襖が勢い良く開かれたかと思うと、龍馬がそこからひょいと顔を覗かせた。「坂本はん、この人は・・」「すいまへん、坂本龍馬様ですか?」「そうじゃが・・おんしは?」「うちは大坂で両替屋をやっています、井上喜助と申します!坂本様と一度お話ししたくて、無礼を承知でこちらへ参りました!」「ほうかえ、わしに会いにはるばる大坂から長崎まで・・」「坂本殿、敵の罠かもしれません。」「そんなに構える事はないぜよ。それに遠くから来た客人を無下に扱う訳にはいかん。」「しかし・・」「喜助殿、はよう中へ入りや。」「あ、ありがとうございます!」「真紀、すぐに人を疑う癖、直しや。まずは人を信じる事こそが、新時代を築く基本中の基本じゃ。」「わかりました。」「まだ会合の時間までには充分ある。あいり、真紀、おんしらも同席せぇ。」「わかりました。」そう言って龍馬達と共に部屋に入った真紀だったが、何故か彼が喜助の隣に座ると、喜助は悲鳴を上げて後ずさった。「真紀、顔が怖い。」「顔が、ですか?」「美人にしかめ面は似合わんぜよ。」にほんブログ村
2020年05月31日
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人間の欲望をよく描いている作品でしたね。
2020年05月29日
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音大にまつわる陰謀が絡んだ殺人事件。内田さんの作品は、人間の性を描くのが上手いですね。
2020年05月28日
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美容整形がテーマ。湊かなえさんの作品は徐々に事件の真相に近づいていくところまでと、ラストまでが一ページも読み逃がせないところがいいです。「あの子、大量のドーナツに囲まれて死んだらしいよ」という帯に惹かれて読んでみましたが・・「うわぁ、やられた!」と思いました。テーマが美容整形なのですが、タイトルの「カケラ」と表紙の割れた鏡のイラストの意味が読み終えた時にわかったような気がします。人は見た目が9割、美男美女は得をして、それ以外の人は損をする―そんな世間の「価値観」のカケラの中に無理矢理人をはめこもうとする社会の心理が描かれていて見事だと思いました。
2020年05月28日
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あの尼崎の事件を連想させるような設定の作品でした。最初から最後まで恐ろしい場面が続いたのですが、ラストが暗闇の中で仄かに光る希望の灯火のようなシーンで少し安堵しました。
2020年05月28日
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毒親をテーマにした作品。ラストの一文が、何だか作品を読んだ読者の想いを代弁しているようにしか思えない。
2020年05月28日
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冤罪事件の裏に蠢く製薬会社の陰謀ーまるでパズルのピースを埋めるかのように事件の真相がわかり、爽快感溢れるラストまで一気読みしました。
2020年05月28日
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いいなづけのルチーアと離れ離れになるレンツォ。それぞれ互いの身に幾度もの試練が降りかかり、二人の運命を縦糸に、そして17世紀イタリアの世相を横糸に物語が次々と展開してゆき、ページを捲る手が止まりませんでした。
2020年05月24日
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東野圭吾さんが描く人間ドラマ。クスノキを通して伝わる人の念ー主人公・玲斗が成長してゆく姿と、温かいラストに胸が温かくなりました。
2020年05月24日
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ヒロインのジェイド=ワイリックが乳がんサバイバーで鮮やかなドラゴンのタトゥーを入れているというインパクト大な設定でありながらも、心は普通の女性そのもの。ヒーローは私立探偵のチャーリーは、妻アニーが若年性アルツハイマーを患い、その辛さを忘れる為に仕事に没頭する元軍人。こんな二人が少し惹かれ合うシーンが何とも素敵なのですが、事件の真相とその犯人が判るにつれ、衝撃的なラストを迎え、「これで終わりじゃないな?」と思ってしまいました。シャロン=サラさんの作品は大学生の時から読んでいますが、この作品は「癒しのシャロン=サラ」とは一線を画した作品になっていますね。昔読んで感動した「ミモザの園」も、機会があったら再読してみようと思います。
2020年05月24日
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現在、↑の本を少しずつ読んでいるのですが、一ページ捲るごとに物語に引き込まれる東野ワールド。彼の作品を初めて読んだのは「白夜行」から。「加賀恭一郎」シリーズや、「ガリレオ」シリーズも大好きになりました。ミステリーや人間ドラマみが溢れる作品が彼の作品の魅力の一つなのですが、最近読んだ本で何だか心が温まったのは、「ナミヤ雑貨店の奇蹟」と、「希望の糸」、「沈黙のパレード」ですかね。
2020年05月24日
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表紙の絵(写真?)が怖くて中々手に取る事が出来なかったのですが、恐る恐る読んでみたら余り怖くなかったです。寧ろ、人間関係―親子関係について考えさせられる作品でした。
2020年05月23日
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「今朝出勤したら、わたしのスマホにこんな物がメールで送られてきた。」洋雄がそう言って隆雄に見せたのは、あの不倫動画だった。「お前は一番大切な時期に、何をやっているんだ!?」「申し訳ございません・・」「相手の女とは早く別れろ、いいな!」「は、はい・・」 父の部屋から飛び出した隆雄は、すぐさま明美を町外れの純喫茶。ジュリアへと呼び出した。「急に呼び出して何の用?」「俺と別れてくれないか?」「はぁ、突然何言ってんの!?あたしは・・」「君との動画が、ネット上に拡散されているんだ。」「それがどうしたっていうの?困るのはあんただけでしょう?」「あ、明美・・」「あたしは失うものなんて何もないわ。さっさと奥さんと別れてよ。」(畜生、俺はどうすればいいんだ?) 同じ頃、真珠―忍は、病室の窓から町の景色を眺めていた。「忍、調子はどうだ?」「少し良くなりました、副長。」「そうか。退院するの、あさってだったな?」「はい。」 忍は退院後、暫く学校を休んで祖母の家に滞在する事になっている。「これから、わたしはどうなるのでしょうか?」「それは、誰にもわからねぇよ。」「そうですか。」 忍はそう言うと、再び窓の外を見た。 ジュリアで隆雄から突然別れ話を切り出された明美は、そのまま車で学校へと向かった。 だが、そこで彼女を待っていたのは、突然の解雇通告だった。「突然で悪いけれど、君の後任は来週来る事になったから。」「そんな・・じゃぁあたしはこれからどうすればいいんですか!?」「そんなのは、自分で考えたまえ。」 明美が職員室で荷物をまとめていると、そこへ歳三がやって来た。「・・次の仕事、早く決まればいいですね。」「うるさいっ!」 明美はそうヒステリックに叫ぶと、そのまま職員室から出て行った。「何あれ~」「自業自得じゃんね。」 明美の後任として来た教師は、朗らかで笑顔が素敵な男性だった。「こんなゴツいけれど、僕こう見えても手先が超器用です、よろしく!」「よろしく~!」 新任の家庭教師・丸山は、男女関係なく生徒達から人気だった。「この学校には珍しいですね、あぁいうの。」「そうですか?」 職員室で歳三がそんな話をしながら事務仕事をしていると、柴田が窓の外で生徒達に囲まれている丸山の姿を見て溜息を吐いた。「何だかね、男らしくないというか・・」「今は個性を大事にする時代ですから、指導する我々も個性を大事にした方が・・」「都会から来た先生は、やっぱり言う事が違うなぁ。」柴田はそう呟くと、そのまま職員室から出て行った。「土方先生、一緒にランチしません?」「いいですよ・・」 丸山に連れられて歳三がやって来たのは、駅前近くのカフェだった。「土方先生は、この町での生活に慣れましたか?」「いやぁ、まだ・・」「ですよねぇ~、僕田舎暮らしに憧れてこの町に来たんですけれど、よくテレビでやっているのはほとんど嘘っぱちですね。」「こういう所は、陰口があっという間に広まりますから、そう言う事言わない方がいいですよ。」「そうですね、すいません。あ、そういえばもうすぐですね、祭り。」「もうそんな時期でしたっけ?」「ネットだと、“美人姉妹の巫女舞が美しすぎる祭り”って、毎年噂になっていますよ。」「そうですか・・」「この町、他の地域と比べて祭りが多いと思いませんか?」「確かにそうですね。」 丸山とのランチを終えた歳三がカフェから出ると、丁度駅前の広場では町長選挙の候補者が演説していた。「わたしは、この町の子供達に・・」「口先だけでしょう、そんなの・・」 数日後、退院した忍は暫く祖母と暮らす事になった。「よぉ来たな。」「お世話になります。」「時が解決してくれる。それまで休め。」「はい・・」 一方沖田家では、千華が隆雄と正式に離婚する事になった。「不倫の慰謝料は必ず頂きますから、そのつもりで。」「あぁ・・」にほんブログ村
2020年05月23日
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新興宗教に狂った両親と暮らすちーちゃん。 大人になるにつれて新興宗教のまやかしに気付き始めるのが、何だか切ない。
2020年05月23日
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何だか切ない物語でした。
2020年05月23日
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全てのお話が読んで清々しい気持ちになる短編集です。
2020年05月23日
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何だか主人公が散々な目に遭う作品です。 最後の最後までついていない主人公の悲壮っぷりが表紙からも感じられます。
2020年05月22日
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母、妻、そして女としていきることの難しさが描かれた作品でした。
2020年05月22日
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1870年12月24日、クリスマス・イヴ。 その日、パリの街は雪で一面白く染まり、幻想的な雰囲気を醸し出していた。 そんな中、一台の馬車が、ノートルダム大聖堂の前に停まった。 馬車の中から降りて来たのは、白貂のコートを着た美しい令嬢―千だった。『センさん、お久しぶりです。』『ありがとう。』 コートの裾を翻し、千は大聖堂の中へと入った。 美しい“薔薇窓”の下に、“その人”は立っていた。 漆黒のフロックコート姿の“その人”は、千の気配に気づくと、ゆっくりと千の方へと振り向いた。「土方さん・・」「千、やっと会えたな。」「怪我の具合はどうですか?」「大丈夫だ。」「そうですか、良かった。」千はそう言うと、歳三に抱きついた。 歳三の紫の瞳が、“薔薇窓”に照らされ、暗赤色に輝いた。―第一部・完―この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2020年05月22日
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「土方副長、お話しとは何でしょうか?」「この写真と刀を、日野まで届けてくれ。」「嫌です、俺もここに残って戦います!」「鉄、こんな事を頼めるのはお前しかいねぇ。お前ぇだけは生きて、新選組の事を後世まで語り継いでくれ。」「わかりました・・」鉄之助はそう言って歳三から彼の写真と愛刀を受け取った。 1868(明治2)年5月11日。 遂に新選組は箱館への総攻撃を開始した。「土方君、どうしても行くのかい?」「あぁ・・新選組を見捨てる訳にはいかねぇ!:歳三は孤立した新選組を救う為、五稜郭から弁天台場へと向かった。「土方さん、僕も行きます!」「千、絶対に俺から離れるんじゃねぇぞ!」「はい!」 五稜郭を出た歳三達は、一本木関門へと差し掛かった。だが、既にそこには新政府軍が待ち構えていた。「さぁ、今度こそ君の敵をその銃で撃つんだ。」「わかっているよ・・」(千尋、一緒に家へ帰ろう。) 優之が放った銃弾は、歳三の右脇腹に命中した。「土方さん、しっかりして下さい!」「安心しろ、俺はまだ、死なねぇ・・」そう言った歳三の顔は、完全に生気を失っていた。「千尋、一緒に帰ろう!」「黙れ!」 千はそう叫び、優之を一撃で斬り伏せた。 だがその直後、一発の銃弾が彼の胸を貫いた。千は歳三の上に覆いかぶさるような形で倒れ、意識を失った。―千尋、僕と一緒に帰ろう? 闇の中で、優之が笑顔を浮かべながら千に向かって手を伸ばしたが、彼は冥王の部下によって何処かへと連れ去られてしまった。―さぁ、君の願いを聞こうか?(僕の、願いは・・この人と一緒に居られる事・・)―その願い、聞き届けよう。 冥王はそう言うと、紫紺の瞳で歳三と千を見た。―さぁ、暫く休むといい。 徐々に目蓋が重くなり、千は静かに眠り始めた。この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2020年05月22日
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「おい島田、俺はもう、“副長”じゃねぇだろう?」「すいません、昔の癖で・・それに、今の役職名は呼びづらくて・・」「それはそうだな。」「何だかこうして副長と話していると、京都に居た頃の事を思い出しますね。」「あぁ、そうだな・・」そう言った歳三は、何処か遠くを眺めているかのような目をしていた。「副長?」「いや、何でもねぇ・・そろそろ会議の時間だったな?」「はい。」「島田、後はよろしく頼む。」「わかりました。」 1869(明治2)年3月25日。 宮古湾に於いて、旧幕府軍は新政府軍の主力艦である甲鉄の奪取作戦を実行した。「おい、あれは・・」「敵艦か?」「いや・・」 新政府軍は悪天候の中、望遠鏡の中で辛うじて見えるアメリカ国旗を掲げる戦艦を見て一瞬安堵したが、その旗が日章旗に変わった途端に罠だと気づいた。「アボルタージュ!」 激しい波飛沫と衝撃音と共に、敵艦から旧幕府軍が甲鉄に乗り込んで来た。 奇襲作戦には成功したが、新政府軍が装備していたガトリング砲から放たれた弾丸の犠牲となる兵が多かった。(あいつだ・・土方歳三!) 混乱の最中、優之は「回天」へと撤退しようとしている歳三に狙いを定めた。(あいつさえ居なくなれば、僕は千尋を・・) しかし優之が拳銃の引き金を引こうとした時、一人の男―野村利三郎が彼の前に現れた。「土方さんを殺すなら、まずは俺が相手だ!」「邪魔をするなぁ!」激昂した優之は野村の胸に銃弾を放った。こうして、旧幕府軍の奇襲作戦は失敗に終わった。 1869(明治2)年4月13日、二股口。 蝦夷地に上陸した新政府軍を、歳三達は雨の中迎え撃った。一時は新政府軍を退かせたものの、4月28日、兵力を増した新政府軍は、箱館へと進軍した。 そんな中、鉄之助は歳三の部屋に呼び出された。この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2020年05月22日
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「どうしたんだい、そんなに落ち込んで?」「千尋が、僕を拒絶した・・」「何だ、そんなことか。」 新政府軍の本陣へと戻った優之の様子がおかしい事に気づいた鈴江がそう尋ねると、そんな答えが返ってきたので、彼は拍子抜けして笑ってしまった。」「君にとっては大した事ではないかもしれないが、僕にとっては一大事なんだ!」「はいはい、わかったよ・・それで、君の敵は撃てたのかい?」「いや、まだだ。」「旧幕府軍は私達より早く蝦夷地(北海道)へと渡り、蝦夷共和国というものを樹立したそうだ。まぁ、そこが奴らの墓になるだろうね。」鈴江はそう言うと、タブレットの画面に表示された一枚の写真を優之に見せた。「君の敵は、この写真の中に居るかい?」「あぁ・・こいつだ。」優之はそう言って、迷いなく歳三を指した。『失礼、話し声が聞こえたから、気になって様子を見に来たんだが、邪魔だったかな?』そんな断りの言葉と共に二人の前に現れたのは、マッケンジー大尉だった。『いいえマッケンジーさん、どうかお気になさらず。』『この男、前に港で会った事があるな。』マッケンジー大尉はそう言うと、歳三の写真を指した。 『まぁ、それは奇遇ですね。』『色々とあってね・・それよりも、彼は君の知り合いかい?』『まぁ、そんなところです。それよりもマッケンジー大尉、一刻も早く母国に帰りたいのでは?』『はは、そうだね。』『何の因果か、あなたの甥御さんが敵側におられるとは・・しかもその甥御さんが、レイノルズ伯爵家の正当な後継者だとは、さぞや大尉としては口惜しいのでは?』『あぁ。父があの忌々しい遺言など残さなければ、こんな極東の島国など来ずに済んだものを!』マッケンジー大尉はそう言うと、唇を噛み締めた。『落ち着いて下さい、大尉。やがて甥御さんとあなたが雌雄を決する時が来ます。その時まで耐えて、力を蓄えておかなければ・・』『そうだな。』 同じ頃、蝦夷地へと渡り、「蝦夷共和国」を樹立した旧幕府軍は、その役職を「入札(選挙)」で決める事になった。 その結果、総裁が榎本武揚、陸軍奉行が大鳥圭介、そして陸軍奉行並が歳三に決まった。「何だか、覚えにくい役職ですね・・」「確かにそうだな・・」「副長、こちらにいらっしゃったのですね?」そう言って巨体を揺らしながら歳三達の元へやって来たのは、京都時代からの新選組隊士・島田魁だった。この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2020年05月22日
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「前に土方さんにお話ししましたよね、うちの複雑な家庭環境のこと。」「あぁ、知ってる。お前ぇとその兄貴は、確か両親が違うんだったよな?」「はい、そうです。父―義理の父は僕に良くして下さったのですが、兄とは全く話をした事がありませんでしたし、向こうも離したくないような感じだったし・・」「そうか。」 これ以上他人の家庭問題に口を出すのはまずと思ったのか、歳三はそれ以上何も言ってこなかった。「もし義兄と刺し違える事になっても、僕は義兄を斬る事は躊躇(ためら)いません。」そう言った千の瞳には、迷いがなかった。「それでは、お休みなさい。」「あぁ、お休み。」 歳三の部屋から出て、自分の部屋へと向かおうとした千は、その途中で中庭の方から何かが蠢(うごめ)いている影に気づいた。(何だろう・・) 恐る恐る彼が中庭の方へと近づくと、その蠢く影は黒い着物姿の子供だった。 どうしてこんな所に子供が―そう思いながら千が子供に声を掛けようかどうか迷っていると、俯いていた子供がゆっくりと顔を上げ、千の方を見た。 子供には、日本人には珍しい紫の瞳を持っていた。―ヤットミツケタ。 子供はそう言うと、千の腕を掴んだ。「ひぃっ!」「また会えたな、少年。」「あなたは?」千は自分の背後に立っている男の存在に気づき、怯えた。「その様子だと、わたしの事がわからないようだな?」男はそう言うと、千を見た。「我は冥王、死を司る神だ。我はそなたにある事を伝えに来た。」「ある事?」「以前そなたは、我と契約したな?そなたとそなたの愛しい人の命を永遠のものにしてくれと・・その契約は、受け入れた。」「あの、それは断る事は出来ないのですか?」「当然だ。」 男―冥王はそう言うと、黒い翼を羽搏(はばた)かせながら去っていった。(何だったんだろう、今の・・) 千がそう思いながら部屋に入ると、布団の上には漆黒の羽根が置かれていた。この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2020年05月21日
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1868(明治元)年9月23日、会津は新政府軍に降伏した。「では皆さん、今までお世話になりました。」「千様も、今までお城で頑張ってくれて感謝してもしきれねぇ。」「どうか、千様もお元気で。」千は会津の国境で山本八重と彼女の家族達と別れると、一路仙台へと向かった。今まで新選組と共に旅をしてきた千にとって、これが初めての一人旅だった。歳三が旅の足しになるよう、金を多めに持たせてくれた為、千は滞りなく仙台までの旅を終える事が出来た。「土方さん。」「無事に合流出来て良かった。」「土方さん、荻野さんは・・」「斎藤からの文で、あいつが戦死した事はもう知ってる。」「そうですか・・」「長旅の疲れもあるだろうから、今日はゆっくり休め。」「わかりました。」「土方殿、こちらにおられたのですね!」 千が宿の玄関先で歳三と話していると、そこへ新しく彼の小姓となった市村鉄之助と田村銀之助がやって来た。「荻野さん、長旅お疲れ様でした。」二人はそう言って千に向かって頭を下げると、奥の部屋へと向かった。「土方さん、夕食の後話したい事があるんですが、いいですか?」「わかった。」 宿の大広間で千達が夕食を取っていると、伝習隊の隊士達が居る方から視線を感じた。(何だろう?) 伝習隊の隊士達が自分と歳三に変な視線を向けて来た理由は、夕食後にわかった。「ねぇ土方君、改めて聞くけれど・・」「何だ大鳥さん、もったいぶってねぇで早く言え。」「荻野君とは念友なのかい?」 襖越しに歳三が茶を噴き出す音を聞いた千は、慌てて彼の部屋に入った。「土方さん、大丈夫ですか?」「あぁ、大丈夫だ・・大鳥さん、あんた変な勘違いしているようだが、こいつとは何の関係もねぇぞ!もしかしてあんたか、俺と千が念友だって噂を流したのは!?」「ごめんね、変な事聞いて。」大鳥はそう言うと、部屋から出て行った。「千、俺に話したい事とは何だ?」「実は・・」 千は千尋を殺したのは自分の義理の兄である事を話すと、彼は眉間に皺を寄せた。「おめぇの兄貴が、敵側に居るって事か・・」「えぇ、そうです。僕はあの人の事を兄だとは思っていません。」「そうか・・」この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2020年05月21日
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秋葉原にあるメイド喫茶のメイド・あすかが何者かに拉致される。事件の真相がわかり、ファンっていうのは怖いなぁと思いました。ラストの一文が何とも言えませんでした。
2020年05月20日
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一気に読みました。アイドルとは何なのか、SNSの怖さなどが描かれていて、読了した後に見るこの表紙の怖さが伝わってきました。
2020年05月20日
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新政府軍の砲撃に晒された鶴ヶ城内では、連日怪我人や病人で溢れ、千達はその看病や手当に追われていた。「土方さん、お話しとは何ですか?」「大鳥さんから、会津から撤退するよう命令された。」「そうですか・・」「どうするのかは、お前達で決めろ。」「・・わたくしは、会津に残ります。」千尋はそう言うと、歳三に向かって頭を下げた。「副長、今までお世話になりました。」「仙台で待ってる。」「はい・・」 歳三と共に千が仙台へと発つ数日前、彼は千尋と共に食糧の調達をする為、城から出て近くの農村へと向かった。「まだ敵の姿はありませんね・・今の内に食糧を調達して城に戻りましょう。」千尋がそう言った時、背後から大きな砲声が聞こえて来た。「まさか、こんな近くに敵が・・」「あなたは先に城へ戻っていなさい。ここはわたしが食い止めます。」「でも・・」「早く行きなさい!」 千は食糧を風呂敷に包むと、農村を出て城へと向かった。だが運悪く、彼は敵に見つかってしまった。「こいつ、土方の小姓だ!」「殺して、その首を桂さんへの土産にしちゃる!」下卑た笑みを浮かべた敵兵の首がその身体から離れ、残された胴が地面に転がった。「早く逃げなさいって言っているでしょう!」「こなくそ!」千尋は間髪入れず、もう一人の敵を斬った。「今の内に、早く!」千は千尋に背を向けて再び城へと向かって走り始めた。「千尋・・」 あと少しで城に着くという時に、千は思わぬ人物と再会した。「義兄さん、どうして・・」「千尋、今ならまだ間に合う。また兄弟仲良く・・」「冗談はやめてくれ!今まで僕の事を邪魔だと思っていた癖に!」「そんな事はない!」「退け、さもなくば斬る!」「千尋、お前は・・」 千に刃を向けられ、優之はショックを受けた後、拳銃を彼に向けた。「お前だけは・・信じていたのに!」 千は目を閉じ、襲い掛かってくる激痛を覚悟した。だが目を開けると、そこには優之の銃弾を胸を受け倒れている千尋の姿があった。「しっかりして下さい!」「土方さんを・・頼みましたよ。」 千尋はそう言った後、静かに息を引き取った。この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2020年05月20日
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「皆さん、早くお城へ避難して下さい!」 新政府軍の銃声が遠くから聞こえてくる中、千は藩士の家族を城まで避難誘導していた。「千君、このままだと君も危ない!早く君も城の中へ!」「わかりました。」 千が城へと向かっている途中、彼は何処からか呻き声が聞こえて来る事に気づいた。(何だろう?) 声が聞こえて来たのは、立派な門がある武家屋敷だった。「お邪魔します・・」 恐る恐る千が屋敷の中へと入ると、そこは不気味な程静まり返っていた。 もう中の住人は城へと避難したのだろうか―千がそう思いながら屋敷から出ようとした時、再び呻き声が聞こえて来た。「誰か、誰か居ませんか!?」千はそう言いながら、屋敷の奥へと向かった。 その部屋の襖を開けると、中は一面血の海だった。 死装束姿の老人、子供、赤ん坊に至るまで、中に居る者は皆もう生きていなかった。その血の海の中で、懐剣を握り締めた女が苦しそうに呻いていた。 「・・て。」 女は血塗れの手を千に向かって伸ばした。 恐らく彼女は、自害に失敗したのだろう。 城下に残っていた老人や女性、子供達が足手纏いにならぬよう、自害した事を千は現代に居た時に歴史書で読んで知っていた。「殺して・・」 千は腰に提げていた刀の鯉口を切ると、その白刃で女の胸を貫いた。女は一瞬身体を大きく震わせた後、息絶えた。「千、遅かったな。」「はい・・」「疲れているだろうから、向こうで休め。」歳三は、千の服に返り血がついている事に気づいた。「どうなさったのです?」「何でもないです。」「あなたは、嘘を吐くのが下手ですね。」千尋はそう言うと、千の隣に座った。「僕は、この手で初めて人を殺しました。」「やむをえぬ状況だったのならば、あなたがそれを悔いる事は出来ません。」千尋はそう言うと、瓜二つの顔をした親友の肩を優しく叩いた。 新政府軍が会津の総攻撃を開始したのは、それからすぐの事だった。この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2020年05月20日
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「鈴江さん、あなたは一体何を企んでいるんだ?」「企んでなんてないさ。」鈴江はそう言って笑うと、優之(まさゆき)にしなだれかかった。「まだこの期に及んで、弟を取り戻したいのかい?」「取り戻したいに決まっている!血が繋がらなくても千尋は俺の弟だ!」「そう・・」鈴江は優之の手からタブレットを奪うと、その画面を食い入るように見つめた。「この箱は、わたし達にとって有利なものとなる。ただ一つ欠点なのは、その使い方が君にしかわからないという事だ。」「使い方は教える。」「そうだ、君に贈り物があるんだった。」「贈り物?」「あぁ、そうだ。」鈴江はそう言うと、優之に拳銃を手渡した。「これで、君の弟を奪った敵を撃て。」「そんな事・・」「出来ないと?全く、君はとんだ根性無しなんだな。」そう鈴江に面罵されても、優之は何も感じなかった。彼が言う通り、自分は臆病者なのだから。「鈴江君、余り優之君をいじめないでやってくれないかい?」「桂さん、これからどうなさるおつもりで?」「会津攻めには、薩摩が協力してくれる事になったよ。」「それは頼もしい事で。」「会津攻めは、中止しないのですか?」「勿論だ。わたし達は今まで、会津に散々煮え湯を飲まされてきた。会津は、一人残らず殲滅(せんめつ)させる。」そう言った桂の声音は、何処か氷のように冷たかった。 1868(慶応4)年7月29日。「二本松城が陥落した!?それは確かなのですか?」「あぁ。二本松城に籠城していた者達は皆城に火を放ち、自害したそうだ。」「そんな・・」「これから、どうなるのですか?」「新政府軍が会津へやって来るのは時間の問題だ。」(戦争の恐ろしさなんて、今まで知らなかった・・いや、全然知らなかったんだ・・) 母方の祖父母から幾度も戦争の話を聞いたが、戦争の記憶が完全な“過去”のものとなってしまったので、千は全く実感が湧かなかった。 だがこうして戦場に身を置いていると、母方の祖父の気持ちが理解できるようになった。 1868(慶応4)年8月21日、会津・母成峠。 旧幕府軍800に対し、新政府軍の兵力2,200。 大鳥圭介の伝習隊を中心に、会津藩白虎隊士中二番隊などが懸命に戦ったが、彼らが扱う銃は旧式で、新政府軍が使う最新式のものにはかなわなかった。1868(慶応4)年8月23日。新政府軍は遂に、会津若松城下へと侵攻した。この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2020年05月16日
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※BGMと共にお楽しみください。 その日は、風が気持ち良い日だった。 「風が気持ち良いねぇ、福。」 総司はそう言って、自分の胸の上で寝ている福の頭を撫でると、それは氷のように冷たかった。 福を千が拾って家族にしてからそろそろ二年になろうとしていた。 いつか来ると思っていた日が、こんなに呆気なく来るなんて思わなかった。 「福、今までありがとう。」 総司はそう言って福の亡骸を中庭に埋めた。 寝床へと戻ろうとした時、彼は激しく咳込んでその場に蹲った。 その掌は、真紅に染まっていた。 ―あぁ、遂に・・ 自分にも、“その時”が来たのか。 何故か死の直前になっても、総司は妙に落ち着いていた。 “総司。” 風に乗って、勇の声が聞こえて来た。 総司が振り向くと、そこには勇と平助、山南の姿があった。 “福が俺達をお前の所へ連れて来てくれたんだ。” 勇はそう言って総司に向かって手を差し出した。 “さぁ、逝こうか。” “はい。” ―土方さん、あなたを置いて逝くのは辛いけれど、一足お先に近藤さん達の元へ行って来ますね。 総司と福の魂は、風に乗って天へと昇っていった。 「土方さん、どうしたんですか?」 「・・いや、今総司に呼ばれたような気がしたんだが、気の所為か。」 「そうですか・・」 1868(慶応4)年5月30日、沖田総司死去。享年25歳。 「江戸から文が届いています。」 「ありがとうございます。」 千は江戸からの文を受け取ると、すぐさま歳三の部屋へと向かった。 「土方さん、江戸から文です。」 「そうか・・」 「僕、少し外へ出ますから、何か必要なものがあったら言って下さいね。」 「わかった。」 千が歳三の部屋を出て宿から出ると、彼は一人の少年とぶつかった。 「ごめんなさい!」 「大丈夫ですか?」 「・・その肩章、もしかしてあなた、新選組の方ですか!?」 「はい、そうですけれど・・」 この作品の目次はコチラです。 にほんブログ村
2020年05月16日
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超能力を持つ3人の女性の物語。未来を予見できる智子、火を操る事が出来る淳子、人の心を読むことが出来る貴子・・淳子が主人公の「クロスファイア」は現在読んでいる最中なのですが、この「燔祭」が「クロスファイア」の序章的なお話しなのかと、読み終わった後わかりました。超能力ってなんだかすごいなぁっていうイメージでしたが、人とは違うものを持つ苦しみが、特に淳子から感じました。
2020年05月15日
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何だか切ない話でした。
2020年05月15日
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最近コロナウィルスの所為で何もかも自粛自粛と叫ばれるようになりましたが、各自治体のガイド欄を守って営業している飲食店に対して投石や「自粛しろ、さもなくば警察を呼ぶ」といった脅迫めいた張り紙を貼る「#自粛警察」が、ツィッター上で話題となっています。 そのハッシュタグを見て思い出したのが、エマ=ワトソン主演の映画「ザ・サークル」。 映画はGyaoで観たのですが、序盤から少し飽きてきて観るのを止めました。 原作小説は読み返したのがこれで三度目ですが、SNSで世界を広げようという会社「サークル」に潜んだ同調圧力の強さ、そして誰も反対意見が述べられないという恐怖政治・・まるで、今の現状とリンクしているかのような恐ろしさが伝わってきます。 今はSNSで誰かがデマを簡単に広めたり、他人の個人情報を拡散出来たりできたりする時代。 この小説の中で起きる事が、そう遠くないように思えますね。 ザ・サークル [ デイヴ・エガーズ ]価格:2860円(税込、送料無料) (2020/5/16時点)楽天で購入
2020年05月15日
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戦時下に生きる人々、そして戦場で戦う兵士達を描いた長編小説。市井の人々の目から見た戦争の悲惨さとその現実が、まるで手に取るようにページを捲るたびにわかりました。戦争は二度と起こしてはならないと思いました。
2020年05月15日
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久しぶりに後味の悪い作品を読みました。最近「素敵な田舎暮らし」をテーマにした番組が放送されていますが、ああいうのはごくまれに上手くいっているケースで、限界集落や過疎地での田舎暮らしはかなり大変です。交通の便も悪いし、人間関係が濃密で、全て自分の私生活が筒抜け。まぁ、この本の舞台の集落が滅びるのは自然の流れなのではないかと思いました。
2020年05月14日
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バレエカンパニーで起きた主演ダンサーの失踪。複雑な人間関係の糸が絡まり合い、衝撃的な結末を迎えるまで、一気に読みました。この人のミステリーは、まさしく「イヤミス」ですね。
2020年05月14日
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20世紀初頭インド、カルカッタで起きた殺人事件の真相を解く英国人刑事とインド人刑事。事件の背景には差別などが描かれており、植民地支配下のインドや周辺諸国の事情が少し垣間見えたような気がしました。
2020年05月14日
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天然痘の脅威に晒される京。混乱に乗じて疫病が治るという霊感商法詐欺や、疫病は新羅が持って来たという偏見が描かれていて、今の世情をあらわしているなと思いました。いつの時代も、デマなどが出回るのですね。
2020年05月14日
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「エリウス、アウルの姫の様子はどうだ?」「変わりない。だが、あの男が何者なのかが気になる。」「あの男について調べてみるか。」エリウス達はそんな話をした後、森の中へと消えていった。 同じ頃、ルチアはアレクサンドリアウ母の病の事を告げようかどうか迷っていた。「ルチア様、王妃様がお呼びです。」「わかったわ。」 ルチアがリリアの部屋に入ると、そこにはユリシスとミハイル、そしれレオンの姿があった。「お母様!」「ルチア、わたくしはもう永くはないわ・・だから、今貴女に伝えたい事があるの。」「何、お母様?」「・・自分が為すべき事を為さい。後悔しないように、選択を間違ってはいけないわ。」「はい、お母様・・」「肉体が滅んでも、魂は貴女と共にあるわ・・」リリアはそう言うと、ルチアの髪を優しく梳いた。「レオン、ルチアの事を頼むわね・・」「はい、王妃様・・」「あなたには、ルチアを頼めるわ・・」リリアはそう言うと、静かに目を閉じた。「お母様!?」「リリア、しっかりしろ!」「王妃様!」 リリアは最愛の夫と子供達に見守られながら、静かに息を引き取った。 「お母様、お母様ぁ!」 母の棺に取りすがって泣く弟の姿を、ルチアは遠くから眺めていた。「ルチア様・・」「アンダルス、来てくれたのね。ガブリエルも。」「この度は、お悔やみ申し上げます。」「ありがとう。」 葬儀には、エステア王国夫妻が参列した。「ルチア、余り気を落とさないでね。」「ありがとうございます、伯母様。」「アレクサンドリアとあなたの結婚だけれど、一年延期した方が良いわね。」「えぇ・・」「今はゆっくりと休みなさい。」「わかりました、伯母様。」 こうして、ルチアとアレクサンドリアの結婚は一年延期する事となり、アレクサンドリアは両親と妹と共にエステア王国へと戻って行った。「今度会う時は、結婚式ですね。」「えぇ・・」「ルチア様、早く王宮の中へ入りましょう。」「わかったわ。」 アンダルスがルチアの肩を抱いて王宮の中へと入ると、黒雲に覆われた空の隙間から激しい雨が降り出した。「俺はルチア様についているから、ガブリエルは先に帰って。」「わかった。」 土砂降りの雨の中、ガブリエルが馬車でホテルへと戻ろうとした時、黒衣の男が馬車の前に立ち塞がった。にほんブログ村
2020年05月14日
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アンダルスは、何度目かの溜息を吐いた後、針箱から刺繍糸を取り出した。「どうなさったのです、アンダルス様?溜息など吐かれて・・」「いや;あ、何だかルチア様とアレクサンドリア様がさぁ、余り上手くいってないような気がするんだよねぇ。」「どうしてそうお思いになるのです?」「昨夜の夜会で、アレクサンドリア様はルチア様が辛そうなお顔をしているのに、それに気づこうともしない。」「あの方は、今まで甘やかされて育って来ましたから、人の気持ちが慮る心などお持ちではないでしょう。」「ミランダ、貴女って時々毒を吐くんだね。」「わたくしだって言いたい事は言いますわ。」ミランダはそう言うと、刺繍を続けた。「何だかねぇ、あの方は本当、周りを苛立たせる天才だよ。妹のマリア様とは大違い。」「いくら同じ母親の腹から生まれた兄妹といっても、価値観や性格は全く違うものですわ。わたくしにも二つ違いの兄が居ますけれど、兄は自由奔放な性格で、度々放浪癖がある所為でわたくし達家族を困らせてばかりいましたわ。」「へぇ、そうなの・・お兄さんの名前は、何というの?」「ミカエルですわ。兄は作家として大成功を収めましたから、彼の放浪癖が作品の肥やしとなったと思えばいいですわ。」「ミカエル・・もしかしてあの、冒険小説家のミカエルが、ミランダのお兄さんなの!?」「えぇ。兄の事をご存じですの?」「知っているも何も、お師匠様と彼の作品をよく読んでいたよ。恥ずかしい話、お師匠様と会うまでほとんど読み書きができなかったんだ。だからミカエルの作品で読み書きを学んだよ。」「まぁ、その話を兄が聞いたら喜びますわ。兄は貧困層の子供達への学習支援を行っているんです。」「へぇ、そうなの。」「あぁそうだ、今週末に読書会を兄の家で行うんです。よろしければ、アンダルス様も参加なさいませんか?」「いいの!?」「兄にはアンダルス様が兄の作品のファンだと伝えておくわ。」「ありがとう、ミランダ!」「アンダルスお嬢様、ガブリエル様がいらっしゃいました。「わかった、すぐ行く!」「慌てん坊ですね、全く。」 ミランダは部屋から出て行くアンダルスの背中を見送りながら苦笑した。「ガブリエル、少し痩せた?」「まぁな。それよりもアンダルス、王妃様の事は本当なのか?」「うん、王妃様が肺病を患っておられるのは本当だよ。」「ルチア様は、お辛いだろうな。」「そうだと思うよ。それなのにあいつったら・・」「あいつ?」「アレクサンドリア様だよ。何だかこの結婚、上手くいかなそうな気がする。」「それはわたしもそう思っている。」「ねぇ、ホテル暮らしはどうなの!?」「快適だが、独りは寂しいな。」「じゃぁ俺が毎晩一緒に寝てやろうか?」「冗談でもそんな事を言うな、はしたないぞ。」「あはは、ごめんごめん・・」「お二人共、紅茶とクッキーをどうぞ。」「ミランダ、ありがとう。」 ガブリエルと談笑しているアンダルスの姿を、遠くの木の上からエリウスが見ていた。にほんブログ村
2020年05月14日
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今日は久しぶりに近所の大型書店に行きました。併設している映画館は休業中ですが、書店は人が多かったし、レジは並んでいましたが、「三密」状態ではありませんでした。「鬼滅の刃」全巻品切れと、書店のコミック棚に張り紙が。ステイホーム状態でみんな活字の良さに目覚めたのかなあ?電子書籍はかさ張らないでいいですが、紙の本にしかないな良さがありますからね。
2020年05月13日
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※BGMと共にお楽しみください。 どうやら真珠は、階段から落ちて頭を打った後、前世の記憶しか思い出せないようになってしまったようだった。「先生、妹はこれからどうなるんですか?」「それは、まだわかりませんね。いつ妹さんの記憶が戻るのかどうかは、今後の経過を見ないと・・」「そうですか。」 千華は歳三と共に診察室から出ると、突然眩暈に襲われてその場に蹲った。「おい、大丈夫か!?」「はい、突然の事で驚いてしまって・・」「学校は暫く休ませた方がいいだろう。」「そうですね・・」 千華が病院の前で歳三と真珠の事を話していると、そこへ一台の黒塗りのリムジンが停まり、中から隆雄が降りて来た。「千華、またその男と一緒に・・」「ごめんなさい、あなた・・帰るぞ!」千華は隆雄に肩を抱かれながらリムジンの中へと乗り込んだ。“また連絡します。”千華は唇だけ動かしてそう言うと、隆雄と共に病院から去っていった。「あなた、後で話があります。」「何だ?」「わたしと、離婚して下さい。」「・・あの男に唆されたのか?」「今まで家の為にあなたの暴力に耐えて来ましたが、もう限界です。」「黙れ!」激昂した隆雄はそう叫ぶと、千華の顔を殴ろうとした。だがその前に、千華は彼の腕を掴んで、それを背中側にねじり上げた。「わたしがこのままあなたの言いなりになると思ったら大間違いです。」「俺に逆らったら、実家がどうなっても知らないぞ!」「あなたの方こそ、これをネットに拡散されたらどうなるのかしら?」千華はそう言うと、明美と隆雄の不倫動画を見せた。「わたしは家族を守る為だったら何でもするわ。この動画を世間の人にバラされたくなかったら、離婚して下さい。」「考える時間をくれ。」隆雄はそう言うと、奥の自室へと引っ込んだ。「若奥様、食事はいかがなさいますか?」「わたしが適当に作るから、あなたはもう帰っていいわ。」「はい・・」家政婦を帰らせた千華は、自室に入ると机の前に座り、ノートパソコンの電源を入れた。「若奥様、大旦那様がお呼びです。」「わかりました、すぐ行きますとお義父様に伝えて頂戴。」「はい・・」 千華が沖田家当主・洋雄(ひろお)の部屋へと向かうと、そこには彼の愛人であるエミの姿があった。「お呼びでしょうか、お義父様?」「君の妹が学校で事故に遭ったそうだな?」「はい・・幸い軽傷で済みました。」「そうか。」「洋ちゃん、この人に例の話をしたら?」「あぁ、そうだったな・・」 洋雄はそう言って煙草の吸い殻を灰皿に押し付けてその火を消した後、千華をジロリと睨んだ。 「千華さん、あんた最近東京から来た土方先生とやけに親しいようだな?」「えぇ、それが何か問題でも?」「余所者と親しくせん方がいい。」「エミさん、あなた近々海外に行くのですって?」「そうよぉ。」「お義父様、エミさんの留学費用、何処から出ていらっしゃるのか、わたくしが知らないとでも?」「わたしを脅しているのかね?」「いいえ。少しご忠告申し上げただけですわ。」」千華はそう言うと、舅の部屋から出て行った。「何あれ、おっかない。」(わたしはもう、誰からも虐げられたりはしない!) 千華は、ノートパソコンに保存していた動画のデータを、ネット上にアップした。 翌朝、いつものように出勤しようとした隆雄は、先に出勤していた父親から呼び出された。にほんブログ村
2020年05月12日
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暴君が治めるオリシャ国。魔力を持つ「魔師」と、魔力を持たない「コスィダン」という、異なる二つの民族。その魔師の生き残りの少女・ゼリィと王女・アマリの出逢いから壮大な物語が幕を開ける。魔師であるだけで兵士達から嫌がらせを受けるゼリィやその仲間達の姿を読みながら、全米で多発しているアフリカ系アメリカ人に対する白人警官への過剰防衛、そして根が深い人種差別問題が背景に描かれていて、読みごたえがありました。強さと反抗心、そして生きる力を持つ少女ゼリィや、世間知らずだったがゼリィと旅するうちに逞しく成長する王女アマリなど、個性的な登場人物が織りなすファンタジーにあっという間に夢中になりました。気になるところで終わりましたが、続きが楽しみです。
2020年05月12日
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最初から最後まで目が離せない展開が続き、ページをめくる手が止まりませんでした。 ハードボイルド小説は血なまぐさい描写が多いですが、大沢さんの作品は何故かそれを気にせずに読めました。
2020年05月12日
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スカー・ワイルドと、若き画家・ビアズリーとの愛憎劇。 ラストが衝撃的でした。
2020年05月12日
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※写真は電子版です。 映画はハチャメチャでしたけど、小説も結構下ネタ満載だけれど面白かったです。 ラストが切ないです。 沖田総司が女っていう設定は斬新ですね。
2020年05月12日
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キリシタン迫害の歴史と、信徒たちの懸命にいきる姿を描いた作品。信仰とはなにかを考えさせられました。
2020年05月10日
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※BGMと共にお楽しみください。土方さんが両性具有です、苦手な方はお読みにならないでください。「はぁ!?俺が妊娠だと!?そんな事ある訳・・」「ねぇとは完全に言い切れねぇよ。何せお前ぇさんの身体は、稀有なものだからな。」「俺は、男として生きてきたんだ。それなのに、今更女として生きられるか!」「どっちを選ぶのかは、お前ぇさん次第だぜ。」松本法眼はそう言うと、副長室から出て行った。「トシ・・」「済まねぇが勝っちゃん、暫く一人にしてくれねぇか?」「あぁ、わかった・・」 勇と総司が副長室から出て行き、一人となった歳三は、そっとまだ目立たぬ下腹に触れた。 もし、この身に小さな命が宿っているとしたら、この命を無事に産み育てられるだろうか? まだ新選組は小さい組織だ。これから組織を大きくするには、自分が頑張らなきゃならない。(俺は、この子を産めるのか?新選組の鬼副長として・・)「ねぇ近藤さん、さっきから何書いているんです?」「あぁ、これはだな・・」 総司は文机の前で何かを熱心に書いている勇の肩越しに彼が書いているものを見ると、それは男女それぞれの名前だった。「“恵”、“誠”、“愛”・・男女の名前なんて書いて、どうするんですか?」「いやぁ、俺とトシの子かぁ・・」「なぁにニヤけているんですか?まだそうだとは決まった筈じゃないでしょう?」「だがなぁ・・」「まぁ、近藤さんの気持ちもわからなくはないですがね。」総司はそう言いながら、松本法眼から妊娠を告げられた時の、歳三の動揺した顔が妙に気にかかっていた。「土方さん、入りますよ?」「総司か、入れ。」「失礼します。」総司が副長室に入ると、歳三は溜息を吐きながら下腹に手を当てていた。「これから、どうするつもりなんですか?」「それは、俺にはわからねぇよ・・」「近藤さんは、土方さんの身体について何処まで知っているんです?」「俺が勝っちゃんに話した。」「僕も土方さんの秘密を知ったから、近藤さんの“仲間”ですね。」「総司・・」「大丈夫です、秘密は誰にも口外しませんよ。」総司はそう言うと、歳三の隣に座った。「さっき近藤さん、局長室で何してたと思います?真剣な顔をして、土方さんと自分の赤子の名前を書いていたんですよ。しかも、決まって三文字。」「なんだそりゃぁ・・」「笑えるでしょう?」 この幸せが、続きますように―歳三は総司と笑い合いながらそう思った。 同じ頃、新選組の屯所からそう遠く離れていない場所で、キリシタン達が秘密のミサを行っていた。 「天におられるわたし達の父よ、御名が聖されますように、御国が来ますように。御心が行われる通り、地に行われますように。わたし達の日ごとの糧を今日もお与えください、わたしたちの罪をお赦し下さい。わたし達も人を赦します。わたし達を誘惑に陥らせず、悪からお救いくだしさい、アーメン。」 キリシタン達が祈りの言葉を唱えていると、蔵の扉が開かれ、揃いの装束を纏った役人達が中へ雪崩れ込んで来た。「キリシタン共を一人残らず生け捕りにしろ!」 西村は部下達にそう指示しながら、キリシタン達に“マリア様”の姿を探したが、何処にも居なかった。「“マリア様”は何処に居る?」「知りませぬ・・わたくしは何も。」「そなた、酷い顔をしておるな?どれ、顔を洗ってやろう。」西村はそう言うと、一人の信徒の顔を水が入った盥(たらい)の中に突っ込んだ。「もう一度聞く、“マリア様”は何処に居る?話せば、そなたの家族と仲間は見逃してやろう。」「“マリア様”の名は・・」「そうか。」「本当に、わたし達を見逃して下さるのですか?」「武士に二言はない。」西村はそう言うと、部下達を率いて新選組屯所へと向かった。「新選組副長・土方歳三、疾くこの門を開けられよ!」「何だ一体・・何で奉行所が土方さんに会いに来てんだよ!?」「良く見ろ、新八。あいつらは土方さんを捕まえに来たんだ。」「捕まえにって・・土方さんが一体何したって言うんだよ!?」「それは、俺にもわからねぇよ。」「畜生、近藤さんが大坂に出張中の時に限って、こんな事が・・」「どうします、左之さん?あいつらみんな斬っちゃいましょうか?」「それは駄目だろ、総司。ここは俺達が何とか時間を稼いで土方さんを逃がさねぇと・・」「その必要はねぇ・・」「土方さん、まさか・・」「その“まさか”だ。大丈夫、すぐ戻って来るから。」「そんなの、無謀ですって!殺されたりしたらどうなるんです!?」「総司、俺は必ず戻ってくる。だから近藤さんには俺は大丈夫だ、必ず戻ってくるから心配するなと伝えてくれ。」「必ず伝えます・・」「頼んだぞ。」歳三はそう言って総司に微笑むと、彼の涙を手の甲で優しく拭った。「では、行って来る。歳三はそう言って屯所の門を開けると、刺叉(さすまた)を持った役人達が彼を取り囲んだ。 その中からすっと現れた西村は、歳三の蒼い瞳をじっと見つめた後、こう呟いた。「・・やっと会えたな、“マリア様”。」にほんブログ村
2020年05月10日
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