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表紙素材は、装丁カフェからお借りしました。「相棒」「天官賜福」「火宵の月」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。ビジネスホテルにチェックインし、部屋に荷物を置いた有匡は、ホテルの近くで弁当を買って部屋に戻ると、テレビをつけた。『現在の鎌倉市内の様子です。大雨洪水警報が発令され、山や河川の近くに住んでいる方達は、高台の方へ避難されたそうです。この大雨による交通の乱れは、今の所ありません。』(一晩ここで休んだら帰れるな。)弁当とペットボトルの緑茶という簡素な夕食を済ませ、有匡はテレビを消し、浴室でシャワーを浴びた。冷たい水が湯に変わるまで、有匡は三年前の事を思い出していた。三年前、高級住宅街の一角で、美容系インフルエンサーだった女性が殺害され、彼女の元交際相手だった当時大学生の男が容疑者として浮上し、逮捕された。男は当初、容疑を否認していたが、被害者と長年不倫関係にあり、別れ話で揉めていた事、そして何より、被害者宅から男の毛髪が発見された事により、男は被害者を殺害した事を自白し、裁判で死刑判決を受けた。その事件を、有匡は検事として担当していた。「僕は、何もやってません!」「では、何故お前の毛髪が被害者の家で発見された?」「そ、それは・・」有匡が男に被害者宅で発見された毛髪の事を話すと、彼は激しく動揺した。男が死刑判決を受け、事件は終わった。文観が新たな証拠を携えて、再審請求さえしなければ。過去の亡霊に怯えるのは、もううんざりだ。ドライヤーで髪を乾かし、念入りに櫛で梳かした後、有匡はベッドに入って夢も見ずに眠った。「凄い雨だね、兄さん。」「そうだね。」一方、謝憐と花城は、火宵グランドホテルの最上階にある大浴場の露天風呂に入りながら、雨音に耳を澄ませていた。「三郎、のぼせる前にそろそろ・・」「うん、わかった。」二人が大浴場から出て脱衣所にあるドライヤーで髪を乾かしていると、そこへ一人の男が入って来た。少し癖のある髪を乱暴に掻き上げたその男は、服を脱いでそのまま大浴場へと入っていった。(あの人、どこかで・・)「どうしたの、兄さん?」「ううん、何でもないよ。」夕方から降り出した雨は、翌日の朝にはやんだ。雨で地盤が柔らかくなった人気のない山奥で、白骨遺体が発見された。その遺体は、三年前に起きた美容系インフルエンサー殺人事件の真犯人のものだった。『鎌倉近郊の山中から発見された白骨遺体は、三年前に発生した美容系インフルエンサー殺人事件の真犯人、Sだという事が判明しました。』ホテルをチェックアウトした有匡は、フロントに備え付けてあったテレビのニュースで、その事を知った。(不味い事になったな・・)東京を発った彼が鎌倉駅に着くと、彼の前に一台の車が停まった。「また会いましたね、有匡殿。」「文観・・」「この暑さの中、高台のホテルまで歩くのは大変でしょう?ホテルまでお送りしますよ。」「わかった。」文観が運転する車で彼と共にホテルへと向かった有匡は、何か言いたそうな顔をしている文観を睨んだ。「白骨遺体が発見されたニュースはもうご存知ですか?」「あぁ。」「それは良かった、これであなたを法曹界へ引き摺り戻せます。」「お前、最初からそれが目的で・・」「あなたが法曹界から居なくなった事は、大きな痛手なんですよ。」文観はそう言うと、コンビニの駐車場に車を停め、煙草を吸った。「弁護士であるお前が、何故敵であるわたしに接触する?目的は何だ?」「あなたに会いたいからに決まっているでしょう。」「ふん、どうだかな。」有匡はこれ以上文観と同じ空気を吸いたくなくて、車から出てコンビニの中へと入った。ペットボトルのお茶と鮭のおにぎりをカゴに入れ、有匡がレジへと向かおうとした時、何処からか誰かの視線を感じた。(何だ?)「どうしましたか、有匡殿?」「いや、何でもない・・」「さぁ、行きましょうか。」コンビニから二人が出た時、またしても有匡は誰かの視線を感じた。「先生、お帰りなさい!」「火月、わたしが留守にしている間、何か変わった事はなかったか?」「はい・・あ、でも、どうしても先生に会いたいとおっしゃるお客様がいらっしゃって・・」「わたしに会いたいお客様だと?」火宵グランドホテルのロビーで有匡が火月と話していると、そこへ二人の男達が彼らの方へとやって来た。一人は、黒いジャケットに身を包んだ、切れ長の目をした男と、もう一人は彼の上司と思しき丸眼鏡をかけた男。その二人の姿を見た時、有匡は彼らが刑事だと長年の勘で解った。「あなたが、このホテルの責任者ですね?はじめまして、僕は警視庁捜査一課特命係の、杉下右京です。」「火宵グランドホテルの‟女将”・土御門有匡と申します。」「ここは人目がありますから、僕達が泊まっている部屋でお話を聞きましょうか・・わたしも三年前の事件の関係者なので。」「構いませんよ、では、行きましょうか。」「先生・・」「火月、すぐに戻るから心配するな。いつも通りにしていろ。」「はい・・」有匡は火月に背を向けると、文観達と共にエレベーターへと乗り込んだ。「今朝発見された白骨遺体の事はご存知ですか?」「ええ、テレビのニュースで知りました。まさか、三年前の事件の真犯人が死んでいたなんて、驚きました。」右京達の部屋に入った文観は、そう言いながら茶を飲んだ。「三年前の事件で、あなたは被告人の弁護を担当していたとお聞きしましたが・・」「今でも、被告の弁護を担当しておりますよ。それにしても困りましたねぇ、今更三年前の事件の犯人が別だったなんて、元検事としてのプライドが傷つくのでは?ねぇ、有匡殿?」「もう、終わった事だ。」有匡は渋面を浮かべて茶を一口飲むと、そう言って文観を睨んだ。「おやおや、負け惜しみですか。まぁいいでしょう、わたしの再審請求は裁判所に承認されましたし、後は・・」「くどい。もうこの話は終わりだ。」「相変わらずつれないですね、義兄さん。」「すいません、そろそろ仕事に戻らなければいけませんので、これで失礼致します。」有匡は慇懃無礼な口調で右京達にそう言うと、軽く着物の裾を払って彼らの部屋から出て行った。「あの、すいません、さっきの女将の事を、‟義兄さん”と呼んでいましたけれど、あなたと女将は、どんな関係なんですか?」「あぁ、わたしと有匡殿は、義兄弟なのですよ。有匡殿の妹がわたしの妻なので。」「へぇ、そうなんですか。」神戸尊はそう言うと、少しぬるくなった茶を飲んだ。「それにしても、凄腕の元検事が温泉旅館の女将とか、一体何があったんでしょうね?」「さてと、わたしもこれで失礼致します。」文観はそう言うと、右京達の部屋から出て行った。「色々と訳有りっぽいですね。あれ、右京さんどちらへ?」「捜査をして汗を流したので、大浴場へ。あ、君はついてこなくてもいいですよ。」地団駄を踏む尊を部屋に残し、右京は大浴場へと向かった。「失礼、大浴場はどちらに?」「大浴場なら、八階にありますよ。大浴場専用のエレベーターが右を曲がって突き当りにありますよ。」「どうも、ありがとう。」右京は仲居に少し礼を言った後、大浴場専用のエレベーターへと向かった。するとそこには、長身の青年の姿があった。彼は長い黒髪をなびかせ、片眼に眼帯をつけていた。『あなたも、大浴場へ行かれるのですか?』右京がそう英語で眼帯の男に話し掛けると、彼はこう答えた。『恋人が風邪をひいてしまって、何か食べる物を買おうと思ったのですが・・』『あぁ、こちらは大浴場専用のエレベーターですよ。一階へ向かう一般用のエレベーターは、あちらを左に曲がったらありますよ。』『どうも、ありがとう。』眼帯の男と別れ、右京は大浴場で温泉を満喫した。「すいません、売店はどちらでしょうか?」「売店なら三階にありますよ。」右京は、エレベーターで乗り合わせた有匡が髪に挿していた簪が無くなっている事に気づいた。「髪に挿していた簪はどうされたのですか?」「何処かで落としてしまったみたいです。」「そうですか・・」右京は、有匡の顔に誰かに殴られたかのような痣がある事に気づいた。その夜、由比ヶ浜で男の遺体が発見された。にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月31日
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表紙素材は、ヨシュケイ様からお借りしました。「相棒」「黒執事」「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。一部残酷描写が含まれます、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。‟あの日“から、100年以上生きているが、シエルはいつまで経っても飛行機という乗り物に慣れなかった。「坊ちゃん、そろそろ着陸しますから、そんな顔をしないで下さい。」「うるさい・・」 シエルの隣に座っているセバスチャンは、窓の外を見ないようにしている主を無視して、足元に置いてあるブリーフケースから、一枚のファイルを取り出した。 そこには、ここ数年世界各地で起きている猟奇連続殺人事件の概要がまとめられていた。 被害者は皆、身元が判明できぬよう顔を破壊され、殺害されて、遺体は海や川に捨てられたり、焼かれていた。(少なくとも身元が判っている被害者は五人・・彼らの共通項は、あるカルト団体に所属していた事。その団体は、穢れなき世界を目指すという目的で、この世には‟不要”なものを‟排除”している過激派の団体ですか・・) 団体名は、‟白の会”という名だった。『皆様、当機は間もなく成田空港に到着致します。シートベルトをお締めになり、ご使用になりました、背もたれ、テーブルは元の位置にお戻し下さい。』 機内アナウンスが聞こえたので、セバスチャンはファイルをブリーフケースにしまうと、シートベルトを締めた。「坊ちゃん、起きて下さい、着きましたよ。」「そうか・・」 そう言ったシエルの顔は、死人のように蒼褪めていた。 飛行機から降りたセバスチャンは、シエルを近くのベンチに座らせると、‟ある物”を手渡した。「これを。」「助かった。」 シエルは、セバスチャンから渡された‟ある物”を飲み干すと、深い溜息を吐いた。「もう、大丈夫ですか?」「あぁ。」「ほら、ついていますよ。」 セバスチャンはそう言うと、ハンカチでシエルの汚れた口元を拭いた。「もう僕は子供じゃないぞ。」「ええ。ですがわたしにとって、いつまでも坊ちゃんは、‟あの時”の坊ちゃんです。」「フン、勝手に言っていろ。」 シエルは、不快そうに鼻を鳴らし、ベンチから立ち上がった。「行くぞ、セバスチャン。」「イエス、マイロード。」(意地っ張りな所は、‟あの時”から変わっていませんね。) セバスチャンは溜息を吐くと、シエルの後を追った。 一方、‟白の会”の施設では、信者達による‟浄化”の儀式が行われようとしていた。 ‟浄化の間”の中央にある供物台には、虚ろな目をした少女が横たわっていた。「さぁ、神の子らよ、彼女を‟清め”なさい。」‟浄化の間”の天井に備え付けられたスピーカーから、‟神”の声が聞こえて来た。 信者達が供物台に一斉に近づいて来た事に気づいた少女は、悲鳴を上げて彼らから逃げようとしたが、手足を縛られて逃げられなかった。(誰か、助けて・・) 少女が絶望の余り涙を流し、目を閉じた時、己の頭上から悲鳴と怒号が聞こえて来た。 そして、己を縛る鎖が何者かに外された感覚がして、少女は閉じた目を開けた。 すると、‟浄化の間”の壁や天井が、信者達の血で赤く染まっている事に気づいた。「さぁ、こちらにいらっしゃい。」 優しい声がして、少女が、声がした方を見ると、そこには慈愛に満ちた美しい翡翠の瞳を自分に向けて微笑んでいる天使の姿があった。 少女は何の疑いもなく天使の手を取り、白亜の牢獄から逃げ出した。「これは、かなり酷いな・・」「教祖を含めた信者皆殺しとは・・」 ‟白の会”が所有している白亜の宮殿は、関東地方の人里離れた山奥にあったが、そこは炎で跡形もなく焼き尽くされ、瓦礫の山と化していた。 その瓦礫の山から、性別不明の遺体が五十体以上も発見され、地元警察や警視庁の警察官らが現場に集まり、野次馬達も集まって来たので、現場は大混乱となった。「はいはい、通して下さいね~」 黒いジャケットの裾を翻しながら、神戸尊と彼の上司・杉下右京が現場へと向かうと、そこには先客が居た。『おやおや、あなた方は警察の方ですか?』 そう言いながら二人の前に現れたのは、長身を漆黒のフロックコートに包んだ男と、彼の主人と思しき蒼銀色の髪をした少年だった。『おいセバスチャン、早くホテルに戻ろう。』『申し訳ございません、坊っちゃんがあのように申しておりますので、わたし達はこれで失礼致しますね。』 そして、男と少年は霧深い森の向こうへと消えていった。「何だったのでしょうね、あの人達?」「さぁ。それよりも神戸君、ここに来てから顔色が悪いですよ?」「そ、そうですか?」「ちょっと通りますよ~」 二人がそんな事を話していた時、丁度地元警察の鑑識職員が担架で遺体を運んでいた。 青いビニールシートの端が風でめくれ、遺体の炭化した手がダラリと垂れ下がるのを見て、尊はハンカチで口元を押さえた。「米沢さん、あなたも来ていたのですね。」「ええ。それにしても酷いですなぁ。」「一連の猟奇連続殺人との関連はあるのですか?」「ええ、実は・・」「まぁたあなたですか、警部殿!こんな片田舎の山奥に何のご用ですかねぇ!?」にほんブログ村
2025年01月30日
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Campusの方眼ノート。限定の可愛いデザインだったので、衝動買いしちゃいました!
2025年01月23日
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本当は全巻で新刊購入したかったのですが、ブックオフで全巻購入し、帰宅後すぐに全巻一気読みしました。オスカル様の凛々しさ、アンドレの献身、そしてマリーアントワネットとフェルゼンの切ない恋…名作は色褪せませんね。
2025年01月23日
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素材は、黒獅様からお借りしました。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。―火月、ごめんね・・―嫌だ、母様、僕を置いて逝かないで! いつも、火月は母と死別した夢を見る。 記憶の中に出て来る母は、火月に弱々しく微笑んでいた。 まるで、最期まで自分に心配をかけまいとしていたかのように。 そんな事をして欲しくなかった。 ずっと、傍に居て欲しかった。―ごめんね・・―母様~!「待って、母様~!」火月がそう叫んで跳び起きたのは、高原家の女中部屋の、薄い布団の中ではなく、豪奢な天蓋付きの寝台の中だった。(ここは、何処・・?) 自分が置かれている状況がわからぬまま、火月が寝台の中で呆然としていると、ためらいがちなノックの音と共に、一人の女性が部屋に入って来た。「失礼致します。」「あの・・ここは、何処なんでしょうか?」「ここは、土御門公爵家のお屋敷ですよ。わたくしはあなた様のお世話を致します、きぬと申します。」「火月です、宜しくお願い致します・・」「火月様、お粥をお持ち致しますね。」「は、はい・・」 女性―土御門家の女中頭・きぬは、火月に一礼して彼女の部屋から出て行くと、ある場所へと向かった。「若様、失礼致します。」「入れ。」きぬがその部屋に入ると、その部屋の主である土御門家の嫡子・有匡は執務机の前に座り、渋面を浮かべながら何かを読んでいた。「どうかなさいましたか、そのような顔をなさって。」「またあいつらから、矢のように結婚しろと催促されてな・・」「まぁ、それは困りましたね。」「まったくだ。」有匡がそう言ってきぬが淹れてくれた紅茶を一口飲んで溜息を吐いていると、そこへノックもなしに有匡の父・有仁が入って来た。「父上、何かご用ですか?」「用がなければここへ来てはいけないのか?そういえば、高原家との縁談は、わたしの方からお断りしておいたよ。まぁ、お前が気に入ったのは、あの高慢な妹の方ではなく、存在を消されていた姉の方だったからね。」「一体、何をおっしゃりたいのですか?」「う~ん、別に。じゃっ!」 有仁はそう言って有匡にウィンクすると、彼の部屋から嵐のように去っていった。 父のそんなマイペースな行動に振り回されながらも、有匡はそんな彼を憎めずにいた。「お粥、美味しかったです。」「あの、これを有匡様に渡して下さいませんか?」 火月がそう言ってきぬに見せたのは、有匡が自分に渡してくれた牛革の手袋だった。「はい、必ず渡します。」 きぬは火月から有匡の手袋を受け取ると、そのまま有匡の部屋へと向かった。「若様、火月様からこれを預かりました。」「そうか、そこに置いておいてくれ。」「はい。」 きぬが部屋から去った後、有匡は自室から出て火月の部屋へと向かった。「火月、入ってもいいか?」「は、はい・・」 有匡が部屋に入ると、火月は寝台の中で横になっていた。「体調の方はどうだ?」「大丈夫です・・あの、僕、ここに居てもいいのでしょうか?」「いいに決まっているだろう。お前はもう、わたしの妻なのだから。」「え・・今、何て・・」「やぁ、君が有匡のお嫁さんかい?はじめまして、わたしは有匡の父の、土御門有仁です。仲良くしてね!」「は、はぁ・・」 有仁の勢いにひいてしまった火月だったが、‟この人とは上手くいけそうだ“と、直感でわかった。「父上、彼女に何かご用ですか?」「別に。あぁそうだ、君、いつまでも寝間着姿だと大変だろう?今度、うちへ仕立屋を呼ぶから、何着か有匡に誂えて貰いなさい。」「そんな事、出来ません・・」「遠慮しなくていいよ。じゃぁまた、夕食の席で会おう。」 有仁が去った後、有匡は深い溜息を吐いた後、苛立ちを少し紛らわせるかのように、前髪を搔き上げた。「あの人は、本当に勝手なんだから・・」「でも、悪い方ではなさそうです。」「まぁな。それよりも火月、わたしは、これから高原家に行くが、お前はどうする?」「僕は・・」 火月の脳裏に、高原家で過ごした惨めな日々がよみがえり、彼女は急に息が苦しくなった。「お前はここで待っていろ。すぐに戻る。」「は、はい・・」「では、行って来る。」「行ってらっしゃいませ。」 玄関ホールできぬと共に有匡を見送った後、火月はきぬと共に土御門家の図書室へと向かった。 そこは、ありとあらゆる種類の本が天井まで届く本棚に入っていた。「この部屋には、いつでも入っても良いと、旦那様がおっしゃいましたので、好きなだけこちらで過ごして下さい。」「は、はい・・」「では、夕食が出来ましたらお呼び致しますので。」 火月は、有匡が戻ってくるまで土御門家の図書室で過ごす事にした。 一方、有匡は火月の私物と、火月の母の遺品を取りに、高原家へと向かった。「まぁ有匡様、わたくしに会いに来てくださったの!?」 有匡が玄関先に現れると、火月の異母妹・雪が耳障りな甲高い声をあげながら、彼に抱きついて来た。「そこを退いて下さい。わたしは、あなたに用はありません。」「え・・」「まぁ有匡様、わざわざおいで下さったのに、おもてなしも出来ずに・・」「火月の部屋に案内して下さい。」「は、はい・・」 佐知子に有匡が案内された火月の部屋は、日当たりが悪くて狭かった。「火月の私物は、これだけですか?」「はい。」「では、火月の母親の遺品は何処に?」「蔵に、置いてありますわ。」 高原家の母屋から少し離れた所に、その蔵はあった。(これか・・) 火月の実母・柚子の名札が貼られている長持の蓋を開けた有匡は、その中に‟ある物“が入っていない事に気づいた。「まぁ、もうお帰りになられるの?残念だわ、もっと有匡様とお話ししたかったのに。」「雪さん、そのネックレスは何処で?」「こ、これはお姉様から頂いたの・・」「そのネックレスは、火月の母親の形見ですよ。本妻の娘である貴女が、妾のネックレスを身に着けるなんておかしいですね。」「本当に、これは・・」「この際、はっきりと言っておきます。わたしがここに来たのは、火月の私物と、火月の母親の遺品を取りに来ただけです。決して貴女と下らない無駄話をする為ではありません。」「有匡様・・」「このネックレスは、元の持ち主にわたしが責任を持って返します。」「わかりました・・」 雪は震える手で首に提げていたメダイのネックレスを外すと、それを有匡に手渡した。「では、これで失礼致します。あなた方とは、もう二度と会う事はないでしょう。」 雪を冷たい目で睨みつけると、有匡は高原邸から去っていった。「お帰りなさいませ、若様。火月様なら、図書室にいらっしゃいます。」「そうか。」 有匡が図書室に入ると、火月は一冊の本を熱心に読んでいた。「何を読んでいる?」「聖書です。母様が、小さい頃に読み聞かせて下さったので、懐かしくて・・」「そうか。」 有匡は、火月にメダイのネックレスを手渡した。「あの家から、取り返して来た。」「これ・・ずっと探していた・・」 火月はそう言うと、母親の形見を握り締めながら、涙を流した。「ありがとうございます、母様の形見を取り返してくれて・・」「これからは、わたしがお前に決して悲しい思いをさせない。だから、わたしと共に生きてくれるか?」「はい・・」 有匡は、優しく火月を抱き締めた。(これからは、ずっと一緒だ。) 火月が土御門家に保護されて、一ヶ月が過ぎたある日の事、土御門家に一人の男が訪れた。『お久し振りです、ユージーン様。そちらの方が・・』『ウィリアム、紹介するよ。この子が、わたし達の新しい家族になった、火月さんだ。』にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月22日
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素材は、黒獅様からお借りしました。「黒執事」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。※シエルが女装しています、苦手な方はご注意ください。「シエル王女は何を考えているのかわからん。」「そうでしょうか?」「あぁ。双子の上に、あの薄気味悪いオッドアイも気に喰わん。和平条約の為とはいえ・・」 王宮内に用意された部屋でシエル王女の陰口を叩いている主の横顔を見ながら、セバスチャンはこんな男の元へと嫁ぐ事になったシエルが哀れでならなかった。「どうかしたのか?顔色が悪いぞ。」「少し、外の空気を吸って参ります。」 ヘンリクと離れたくて適当な嘘を彼に吐いたセバスチャンは、部屋から出て王宮内を散策した。 暫く廊下を歩いていると、シエル王女が中庭で刺繍をしていた。「シエル様、見事な刺繍ですね。」「あなたは、確か・・」「セバスチャン=ミカエリスと申します。ヘンリク王子の秘書兼騎士を務めております。」「そうですか・・セバスチャンさんは、ヘンリク様にお仕えして長いのですか?」「ええ、ヘンリク様がお産まれになる前からお仕えしております。」「ヘンリク様は、“噂”通りの方ですか?」「・・残念ながら。」 セバスチャンの言葉を聞いたシエルは、深い溜息を吐いた。「わたしは、どうすれば良いのでしょう?」「ヘンリク様には、恋人がいらっしゃいます。」「まぁ・・」「これは、わたしとあなただけの“秘密”ですよ。」「はい・・」 シエルは不安な気持ちを抱えながら、ヘンリクとの婚儀の準備に追われていた。「まぁ、素晴らしい刺繍ね。これは全部あなたが縫ったの?」「はい、お母様。」 白薔薇の刺繍が施された純白のヴェールを見たレイチェル王妃は、そう言ってシエルに微笑んだ。「そうだ、これをあなたに。」 レイチェル王妃はそう言うと、サファイアのペンダントをシエルに手渡した。「わたしからの結婚祝いよ。」「ありがとうございます、お母様。」「幸せになってね。」 レイチェルはシエルを抱き締めた。「シエル、何かあったら僕に手紙を書いて。すぐにお前を虐める奴を倒してやるから。」「ありがとう、お兄様。そのお気持ちだけで充分です。」 シエル王女とヘンリク王子の婚儀は、土砂降りの雨の中で行われた。―不吉ね・・―あの二人の結婚が、上手くいくかどうか・・ 挙式が行われている中、貴婦人達がそんな事を囁き合っていると、突然雷鳴が轟き、突風で大聖堂の扉が開いた。「シエル様!」 神の下でヘンリクと愛の誓いを交わそうとしたシエルは、扉の前に立っているセバスチャンの姿に気づいた。「セバスチャン・・」 セバスチャンは何も言わず、シエルに微笑み、両手を大きく広げた。「ごめんなさい、お父様、お母様・・」 シエルはドレスの裾を翻し、ヘンリクに背を向けた。「おゆきなさい、シエル。」(ありがとう、お母様・・) シエルは涙を堪えながら、セバスチャンの胸元へと飛び込んだ。 大聖堂から飛び出したシエルは、セバスチャンにエスコートされながら、用意された馬車へと乗り込んだ。「これからどうします?」「どうするも何も、前に進むしかないだろう。」 シエルはそう言うと、頭を覆っているヴェールを外した。「それを貸せ。」「何をなさるおつもりで?」「いいから貸せ。」 セバスチャンは急に口調や態度が変わったシエルに対して若干戸惑いながらも、腰に帯びている長剣をシエルに差し出した。 シエルは長剣を鞘から抜くと、腰下まで長く伸ばした髪を躊躇いなく切り落とした。「これで、“シエル王女”は死んだ。」「大胆な事をなさいますね。」「行くぞ、セバスチャン。」「どちらへ?」「何処へでも。」「わかりました。では行きましょうか、シエル様。」 そう言って自分に向かって差し出されたセバスチャンの手を、シエルはしっかりと握り締めた。「酷い雨ね。シエルは、大丈夫なのかしら?」「レイチェル、あの子の事が心配なのかい?」「ええ・・」「大丈夫、シエルなら何処でも生きていけるだろう。もう、あの子は“独り”じゃない。」 そう言ったヴィンセントは、笑顔を浮かべていた。にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月21日
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素材は、黒獅様からお借りしました。「黒執事」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。※シエルが女装しています、苦手な方はご注意ください。大雪が舞う中、その双つの命は産まれた。一人は美しい碧い瞳を持った兄。もう一人は、碧と紫の瞳を持った弟。弟は、そのオッドアイ故に“忌み子”とされ、乳母の手によって離宮で育てられた。双子の王子は、それぞれシエルとジェイドと名付けられた。「この子に掛けられた呪いを解くには、この子を姫君として育てなされ。」国一番の占い師は、そう言って国王夫妻にシエル王子の死を予言した。「シエル、元気で。」「必ず、迎えに来るからね。」国王夫妻は、そう言ってシエルに微笑んだ。シエルは二人の言葉を信じて、離宮で彼らが迎えに来る日を指折り数えて待っていた。そして遂に、その日が来た。「シエル。」「お父様、お母様!」両親がシエルを迎えに来たのは、彼が10歳の誕生日を迎える一週間前の事だった。「ジェイド、あなたの弟よ、挨拶なさい。」「シエル、会えて嬉しいよ。これからは、一緒に居られるね。」シエルとジェイドが共に王宮で暮らすようになってから、3年の月日が経っていた。「シエル、あなたに縁談があるの。」「僕に?」「ええ、お相手はS国のヘンリク王子よ。」「ヘンリク王子・・」シエルは、兄からヘンリク王子の“悪い噂”を聞いていたので、その名を母の口から聞いた途端、顔を曇らせてしまった。「どうしたの?」「いえ・・彼には、色々と悪い噂があるので・・」「確かに、あの方へあなたを嫁がせるのは気が進まないわ。でも、先方があなたを望んでいるのよ。」「ヘンリク王子が、ですか?」「ええ。とにかく、一度ヘンリク王子にお会いしてみたらどうかしら?」「はい・・」こうして、シエルはヘンリク王子とお見合いをする事になった。「セバスチャン、シエル王女は今いくつだ?」「シエル王女は、今年で13歳となられます。」「俺よりも5歳も下か・・まぁいい、その年なら調教のし甲斐がある。」ヘンリク王子はそう言った後、口端を上げて笑った。(反吐が出る・・)ヘンリク王子の騎士兼秘書として彼が幼少の頃から仕えていたセバスチャンだったが、ヘンリクの傲慢な性格や粗暴な言動には嫌気が差していた。己の身分が低くなかったら、今すぐにそのむかつく顔を殴ってやりたい位、セバスチャンはヘンリクが嫌いだった。シエル王女が政略結婚とはいえ、こんな男の元に嫁ぐなど、可哀想だとセバスチャンは思った。「時間だ、行くぞ。」「はい・・」ヘンリク王子と共にセバスチャンが王宮の応接間に入ると、そこには怯えたような表情を浮かべているシエル王女と、こちらを威嚇しているジェイド王子の姿があった。セバスチャンは、碧と紫の瞳で自分を見つめるシエルに、一目惚れしてしまった。シエル王女もセバスチャンの熱い視線に気づいたのか、少し頬を赤く染めた後、俯いてしまった。にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月21日
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この作品をはじめて読んだのは小6のとき。1巻だけ読んで、それ以来読んでなかったのですが、復刊されると聞いて、すぐに本屋に予約を入れました。いやぁ、この作品は面白い!4世紀頃の日本を舞台に、繰り広げられる人間ドラマ。真秀はこれからどうなるのか!?続きを読むのが楽しみです。
2025年01月20日
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・この小説は、平井摩利先生の「火宵の月」ヴィク勇パラレルです。・原作と若干違う設定にしております。・オリジナルキャラ多めです。・勇利が両性具有設定です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。注意事項を無視して読んで気分が悪くなった等の苦情は一切受け付けませんので、ご了承ください。樹里にそう言いながらも、勇利はヴィクトルに会いたくて堪らなかった。「追い掛けよう、ユウリ!」「今から?」「今から追い掛ければ、間に合うよ!」勇利と樹里はヴィクトル達を追い掛け、彼らと共に城責めに加わった。「え~、俺行けないの!?」「もしユウリに何かあったら、お前が唯一の雌候補だ。言っている意味、わかるな?」「うん・・」「じゃぁ、行って来る。」樹里は城へと入って行くJJ達を見送った。「結界に侵入者・・あいつら、人質を奪いに来た。」「兵を早く集めよ!」「心配ねぇよ。俺の結界は誰にも破られねぇし。」(馬鹿な奴ら、俺の結界から逃れられねぇし。)ユーリがそう思いながら笑っている頃、ヴィクトル達は迷路の中に居た。「なぁ、ここおかしくねぇ?」「そうだな・・」(何だ・・まるで・・)ヴィクトルがそう思いながら鏡の中を覗き込むと、突然それに大きなひびが入った。「うわぁ~!」「皆、大丈夫か?」「あぁ・・」謎の空間に巻き込まれ、ヴィクトル達は謎の黒い霧に包まれた。JJ達の様子が少しおかしい事に、ヴィクトルは気づいた。「どうした?」「シラクチヅル・・猫族だけに効く麻薬よ。」そう言ったJJ達は、何かに怯えていた。「どうした?」「嫌、来ないでっ!」勇利が突然怯えたので、ヴィクトルは祭文を唱えた。「飲み込め、少しはマシになる。」勇利はヴィクトルから渡された護符を飲み込むと、幻覚を視なくなった。「世話が焼ける連中だ。」ヴィクトルはそう言うと、ユーリの結界を破った。「結界が破られた・・」「な、なんですと!?」(こいつ、未分化か・・丁度いい。)「ちょっと、行って来る。」(僕、どうしてここに?さっきまで、みんなと・・)「おいお前、そこで何をしている!?」「白の塔から抜け出して来たな、来い!」兵士達に連れられて勇利がやって来たのは、人質が監禁されている白い塔だった。そこには、麻薬で魂を奪われ、涙を流す雌と子供達の姿があった。(何、ここ・・) シラクチヅルの、黒い霧に包まれた勇利は、気を失った。終わらない悪夢の中で、勇利は涙を流していた。そんな中、ヴィクトル達は、“白の塔”へと辿り着いた。「何だ、これ・・」「ユウリ!」ヴィクトルは、何を流している勇利の頬を叩いたが、反応は無かった。(おかしい、まるで、“壁一枚”隔てているかのような・・)ヴィクトルは、勇利の“精神内”に潜入し、勇利を救い出した。「ヴィクトル様・・」「ユウリ?」(まさか、記憶が戻っ・・)「お前か、俺の結界を破ったのは?」そう言ってヴィクトルを睨んだのは、一人の少年だった。「誰だ、てめぇ?」「ユーリ=プリセツキー、今はこの城の全権を預かっている。ていうか、人の遊び場にズカズカ入ってくんじゃねーよ。」「遊び場ぁ?」「ま、退屈しのぎには良かったぜ。」「テメェ~!」少年の言葉に激昂したJJは、少年に向かって妖火を放ったが、彼はすぐさまJJに反撃した。「ここ、俺の結界内だって忘れてねぇ?」そう言ったユーリの髪は、赤くなっていた。「お前、人間じゃ・・」「人間なんて、こっちを怖がるか利用する事しか知らねぇ、下等動物さ。」ユーリがJJにそう得意気に話していると、ヴィクトルがユーリを抱き上げた。(こいつ、俺の結界を、まるで自分のものみたいに・・)ユーリは、ある事に気づいた。「お前・・俺と同じ“匂い”がする。」「ユーリ様、大変です!南の離宮に・・」「クソが。ここはひとつ貸しだ。」「お前、妖狐か?妖狐は普通、魔界に棲むと聞くけど?」「半端なんだよ、半分人間だから。お前と同じでな。」無事人質達を救出したJJ達は、南の離宮へと向かうユーリの龍を見た。「あれは・・」「妖狐族は生まれつき龍と契約できる力を持っている。元々は龍族だったという言い伝えがある。」「へぇ。」雌達が戻り、紅牙の村に活気が戻った。だが―「いい加減、機嫌直せよ、ユウリ!俺が抱いてやるから、いいだろう!」「バカ、ユウリはね、ヴィクトルじゃなきゃ駄目なのっ!それ位わかってやれよっ!」樹里はそう言うと、JJの顔に蹴りを入れた。「ユウリ、俺だ、開けてくれ。」「畜生~!」「ユウリは、ヴィクトルしか見ていないんだからさぁ、諦めろって。」「でもよぉ~」「多分、ヴィクトル気づいちゃってるよ、自分の気持ちに。」「ヴィクトル様、これ・・」「証だ、専属契約更新の。」ユウリの事が大好きだって事にね。唐土から遠く離れた京では、ある男がヴィクトルへの復讐にその胸を滾らせていた。「う・・」「僧正、また発作ですか?」「放っておけ。」ヴィクトルから呪詛返しを受け、男―オタベックは法力を失った。(おのれ・・ヴィクトル・・)「オタベック、法力は戻ったか?」「いえ・・」「朕はお主を頼りにしているぞ、オタベック。一刻も早く、法力を取り戻してくれ。」「はい、主上・・」オタベックは、そっと額の傷に触れた。それは、ヴィクトルによってつけられたものだった。(俺は、あの男を許さない・・あいつが、血の涙を流すその日まで。)その頃、唐土ではちょっとした騒動が起こっていた。「はぁ、伴侶になる?お前とユウリが?」「そうだよ、ナイスカップルだろ!」「どちらが雄になるの?」「じゃんけんで決める!」樹里とユウリの言葉を聞いたJJとヴィクトルは、同時に笑い出した。「ヴィクトル様、真面目に聞いて・・」「好きにすれば?でも、俺は男とは寝ないからね。」「ヴィクトル様~!」にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月14日
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・この小説は、平井摩利先生の「火宵の月」ヴィク勇パラレルです。・原作と若干違う設定にしております。・オリジナルキャラ多めです。・勇利が両性具有設定です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。注意事項を無視して読んで気分が悪くなった等の苦情は一切受け付けませんので、ご了承ください。「落ち着け、ユウリ!俺がわからないのか!?」「嫌~!」 勇利は、己の名さえ忘れてしまっていた。「なぁ、冗談だよな?」「猫族の言葉、しゃべってみな?」「んと・・えと・・」 言葉がたどたどしい勇利を見た紅牙族の雄達は、困惑した。「これは・・」「マジでヤバイぜ・・」「ねぇユウリ、ヴィクトルの事、わからないの?あんなにヴィクトルの事、大好きだったじゃん!」「わかんないよ・・」 厩で樹里と馬の世話をしながら、勇利が樹里とそんな事を話していると、JJが厩に入って来た。「樹里、長が呼んでる。」「わかった。」 勇利は馬の世話をしながら、自分の名前を思い出そうとしていた。「名前・・僕の・・」「ユウリだ。」 厩に、銀髪の男が入って来た。「お前の名だ。」 男―ヴィクトルは、鋭い刃物のような“気”を纏いながら、勇利の腕を掴んだ。 ヴィクトルは、数時間前に長と話した内容を思い出していた。「俺がユウリと結合したから、ユウリが記憶を失ったって!?」「あんたは呪術師だ、我々にはわからない術を使う。それに、死者が蘇生された時、生前の記憶を失うという。」「何だって・・」(俺が、ユウリを・・)「長は、俺がお前を蘇生させたとさ。今ここに居るユウリは、俺が知っているユウリじゃないって。」(怖い、この人・・)「お前の記憶は、俺が・・」(怖い!) 恐怖の余り、勇利は黒豹に姿を変え、厩から逃げ出した。「うおっ!?ユウリ、どうした?こいつに何かされたか?」「お前と一緒にするな、ユウリ、こっちへ来・・」 ヴィクトルがそう言って勇利を見ると、勇利はJJに抱きついた。「あ、こいつお前が怖いんだよ。」 暫く勇利は、JJ達と同じ部屋で寝る事になった。「何だかわかるような気がするなぁ、あいつの“気”、刃物みたいに鋭くて怖いもん。」「陰陽師なんざ、俺達妖にとっては天敵そのものだからなぁ。」 JJはそう言いながら、自分に抱きつく勇利を見て嬉しそうな顔をしていた。(ガキの頃から手なづけて来たっていうのに、あいつにとっちゃきついよなぁ。) 勇利が記憶喪失になってから、一月が過ぎた。「いいか、今日は俺とお前の関係を話す。」「か、関係?」「お前と俺は、約二十年前に出会い、長い空白期間を経て、再会した・・おい、何で逃げる!?」「だ、だって、追い掛けて来るから・・」勇利は恐怖の余り、木の上に登ってしまった。「降りて来い、ユウリ!話を聞けと言っているだろう!」「い、嫌だっ!」 勇利は足を滑らせて木から落ちたが、そのまま逃げてしまった。 その日から、勇利とヴィクトルの“追いかけっこ”が始まった。「まぁた、酷い顔してんなぁ。」 JJはそう言うと、顔に勇利の爪で引っ掻かれた傷があるヴィクトルを見て、ニヤニヤと笑った。「いい加減諦めろよ、記憶を取り戻すのは至難の業だって、お前にもわかっているんだろう?ま、同族の俺達がユウリの面倒を見てやるから安心しな。あ、それともユウリなしで寝るのは辛いってか?」「うるさい!」「で、どうやってユウリの記憶を取り戻すんだ?」「ユウリの“精神内”に潜る。」「そ、そんな事、成功すんのか!?前は、成功したけどよぉ・・」「やってみないと、わからないだろう?」(自分でも、良くわからないけどね。) ヴィクトルは、城攻めについて紅牙族の雄達と揉め、城攻めに加わる気がない事を彼に話した。「あ~あ、誰かさんに冷たくされて、いじけちゃったんだろうな。」 JJはそう言ってヴィクトルにあてつけるかのように、彼の前で勇利とキスをした。 ヴィクトルはJJの頭を壁にぶつけた後、そのまま人気のない湖へと向かった。「あいつ、こっちの気も知らないで・・」 そんな事を思いながらヴィクトルが独り言を呟いていると、そこへ勇利がやって来た。「僕の所為で、ごめんなさい・・」「俺は、昔からこの力の所為で利用されたり、怖がられたりした。それに、沢山失ったものが多い。」「そ、そう・・」 勇利はそう言ってヴィクトルに背を向けて歩き出そうとした時、誤って凍った湖に落ちてしまった。「ユウリ!」―馬鹿、暴れるな、人が助けてやっているのに!「わぁっ!?」 洞窟の中で目を覚ました勇利は、ヴィクトルと自分が裸である事に気づいた。「まだ動くな。」「あの、それ・・」「お前に引っ掻かれて、毒が少し躰に回って来た。」「毒?」「猫族の爪には毒があるんだ。お前との追いかけっこで慣れたが、凍死寸前の躰にはきつい。」「あの、どうすれば・・」「中和してくれ。」「中和?」「傷口に口をつけるんだ。出来ないなら、いいさ・・」「やる・・ユウリの所為だから・・」 ヴィクトルは、勇利にキスをして、勇利の”精神内“に潜ろうとしたが、失敗した。 それから、JJはヴィクトルが城攻めに加わる事を知り、驚いた。「どんな心変わりなんだよ、あいつは?」「もしかして、ユウリが頼んだのかも。」 湖で助けてくれた日から、勇利はヴィクトルの事が気になってしまった。 そして、城攻めの日が来た。「じゃぁ、行って来るぜ。」「留守番なんてつまらないよ、一緒に連れて行ってよ!」「駄目だ、村で大人しく待ってな。」 JJと樹里がそんな話をしている頃、勇利はヴィクトルと話をしていた。「それ・・」「お前の耳飾りだ。なくさないように身につけた。行って来る。」 ヴィクトル達が紅牙の村を発った頃、城では大臣達が南の離宮から帰って来た一人の呪術師を迎えた。「これはこれは、ユーリ=プリセツキー殿、随分とお早いお帰りで・・」「城の“気”が乱れてるな。俺に隠し事なんて無駄なんだよ、ばぁか。」 そう言って大臣達の前に現れたのは、金髪に美しい翡翠の瞳をした少年だった。「これの所為だろ?」 ユーリはそう言うと、城内に残っていた残留思念を呼び出した。 すると、二人の男がユーリの前に現れた。 一人は、紅牙族の雄。 だがもう一人の男は・・「どうしたの、ユウリ?ヴィクトルの事が、気になる?」「そんなんじゃないよ・・」にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月14日
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・この小説は、平井摩利先生の「火宵の月」ヴィク勇パラレルです。・原作と若干違う設定にしております。・オリジナルキャラ多めです。・勇利が両性具有設定です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。注意事項を無視して読んで気分が悪くなった等の苦情は一切受け付けませんので、ご了承ください。「ユウリ・・」「部屋、かりるぜ。」 ヴィクトルは、部屋の中へと入っていくJJと勇利を、黙って見送る事しかできなかった。「あ、ごめん・・」 勇利は、とうにJJに抱かれる覚悟をしていたのに、彼の唇を噛んでしまった。「いいって事よ。」 その時、ヴィクトルが部屋に入って来た。「ユウリは、お前にしか抱かれたくないってさ。はぁ~、50年も片想いしてきて、キツいよなぁ。」 JJはそう言うと、ヴィクトルと勇利を見た。「ユウリの命を助けたいっていうのなら、他にも方法があるぜ。」「え?」「唐土に・・紅牙族に代々伝わる不死の妙薬がある。」「不死の妙薬?」「あぁ、紅牙族の雌の涙―紅玉さ。嫌なら、いいぜ。」「僕、行きたい。」「ユウリ・・」「僕、“ふるさと”を知りたいんだ。紅牙族の村がどんなものなのか、見てみたいし。」「そうか・・」 こうして、ヴィクトルと勇利はJJと共に唐土へ向かう事になった。「ここが、唐土?」 強い雪と風で周りが見えず、勇利は寒さで死にそうになった。「おい、村にはいつ着くの?」「もう着いているぜ。」「え・・この焼けた廃墟が?」 勇利達の眼前に広がっているのは、“村”だったものだった。「助けて!」 焼けた村の跡地で、一人の子供が兵士と思しき男達に囲まれていた。「樹里、大丈夫か?」「JJ、帰ってたの!?」「こいつらは?」「政府の役人じゃないよ。村を焼いたのも、こいつらだよ。」「へぇ~、紅牙狩り再開って訳か?じゃぁ、ここで殺しても誰も文句言わないよな?」「やめて、JJ!」 男達を殺そうとしたJJを、ヴィクトルが止めた。「JJ、どうして早く帰って来なかったんだ!」「雌と子供達は?」「人質に取られた。」「JJ、そちらの客人達は?」 紅牙族の長がそう言って勇利とJJを指した先に、紅牙族の雄達がどよめいた。「な、何だ!?」「雌(おんな)か!?」 唐土の服に着替え、ヴィクトルと勇利は紅牙族の雄達と共に食卓を囲んだ。「JJ、あの男は誰だ?」「あいつか・・あいつは、日本幕府お抱えの呪術師様さ。」「お前、何を考えて・・」「まぁ。こっちにも色々と考えがあるんだよ。血を流さずに、人質を取り戻す方法をな。」 JJがそんな事を長と話している間、勇利は酒を飲み過ぎてしまった。「おい、順番な!」「わかってるって・・」 紅牙族の雄達がそう言いながら酔い潰れた勇利を運ぼうとしていると、彼らの前にヴィクトルが立ちはだかった。「な、何だテメー!?」『類友だな、まさに。』 ヴィクトルはそう言うと、薄笑いを浮かべた。『それに触るな、妊娠する。』「あのさぁ、俺らやる事やらねぇと溜まる訳よ、わかる?」 紅牙族の雄がそう言ってヴィクトルの胸倉を掴んだ時、勇利が彼に噛みついた。「ヴィクトルをいじめるな!ヴィクトルは、僕の大切な人なんだから!」「え、じゃぁ、こいつがあんたの伴侶?」「そうだよ~」「酒乱め!」 ヴィクトルはそう言って勇利の唇を塞ぐと、長から用意された部屋に入った。「よ、飲むか?」「あぁ。」 ヴィクトルは、JJから雌の紅玉が入手出来ないと知った時、微かに手の痺れを感じた。「貴様、はめたな。」 JJは王と交渉する為、ヴィクトルを連れて都にある城に来ていたが、王は南の離宮で休暇中だった。上手く交渉が出来ると思っていたJJだったが、ヴィクトルと共に彼は牢に繋がれてしまった。「馬鹿だな。」「うるせぇ!」 何とか牢から脱出した二人だったが、雌と子供達の命を盾にとられ、なす術がなかった。「畜生・・」「目を閉じていろ。」 ヴィクトルは、“神風”を起こし、城から脱出した。「ねぇユウリ、大丈夫?」「うん、大丈夫・・」 JJ達が雌の救出作戦を考えている間にも、勇利の容態は徐々に悪化していった。「樹里、シーツ換えておいて。」「ねぇ、ヴィクトルに頼めばいいじゃん、そうしたら・・」「駄目。ヴィクトル様には心配かけさせたくないんだ。」「でも・・」「お願い。」 樹里と勇利がそんな事を話していると、渋面を浮かべたヴィクトルが部屋に入って来た。(うわぁ、機嫌悪そう・・)「ヴィクトル様、どうされたんですか?また、JJが失礼な事を?」「あいつは存在自体が迷惑だからな。」 ヴィクトルは、そう言うと勇利を見た。「ユウリ、いつまで意地を張っているつもりだ?俺が言っている意味、わかるな?」「え・・」「ユウリをいじめるな!」 樹里はそう言ってヴィクトルの部屋から出ると、自分とJJの部屋へと入った。「俺、わかんない!何でヴィクトルはユウリを抱いてやんねーの?」「色々と複雑なんだよ、大人ってのは。」「ガキ扱いすんなっ!」 その日の夜、ヴィクトルは悪夢を見た。 子供の頃、父に殺されかけた悪夢を。「ヴィクトル様?」「お前は俺に、何を望みたいの?」「僕は、ヴィクトル様と一緒に居たい・・それだけです。」 翌朝、勇利は意識不明の状態に陥った。「もう、このまま・・」“お父さん、しっかりして!” 目の前で父を喪った悲しみ。 大事な存在を失った苦しみ。 そんな思いを、二度としたくない。「ユウリは誰にも渡さない。」 その時、JJはヴィクトルの髪が紅く染まるのを見た。「最初から、こうすれば良かったね、ユウリ。俺は、絶対にお前を失いたくないんだ。」 ヴィクトルはそう言うと、勇利の上に覆い被さった。 ヴィクトルと結合した勇利は、その七日後に意識を取り戻した。 だが、勇利は記憶を失っていた。にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月14日
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・この小説は、平井摩利先生の「火宵の月」ヴィク勇パラレルです。・原作と若干違う設定にしております。・オリジナルキャラ多めです。・勇利が両性具有設定です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。注意事項を無視して読んで気分が悪くなった等の苦情は一切受け付けませんので、ご了承ください。(ユウリ、なのか・・?)「あなたが、京からいらっしゃったという方・・」 勇利と瞳の色は違えども、琥珀色の瞳にヴィクトルは魂を吸い込まれそうになった。「俺・・わたしを、知っているのですか?」「ええ。わたくしの従兄のオタベックから、京に居た頃色々とお話を聞いておりましたのよ。」「オタベック・・」 以前、宮中で顔を合わせた事がある、ギオルギーの異母弟。「あなた、京から何故、逗子に?」「あなた様の事が忘れられず、こうして参りましたの。」「わたしを?」「ええ。」(おかしい・・どうして、俺は・・) 勇利と瓜二つの顔をした姫君―椿に、ヴィクトルは次第に溺れていった。(遅いなぁ・・ヴィクトル様。) ヴィクトルが出張から帰って来たのは、ヴィクトルが逗子へと向かってから七日後の事だった。「ヴィクトル様、お帰りなさ・・」「まぁ、あなたが勇利様?本当に、わたくしと瓜二つの顔をなさっているのね。」 ヴィクトルに抱きつこうとした勇利は、彼の背後に立っている椿を見て動揺した。(この人・・)「ヴィクトル様、この方は・・」「初めまして。わたくし、帝の護持僧・オタベックの従妹の、椿と申します。」こうして、椿は暫くニキフォロフ邸に滞在する事になった。「ねぇ、何なのあの女?」「もしかして・・」「まさかぁ、殿に限ってそんな事・・」 突然の恋敵の出現に、勇利と和紗達は激しく動揺した。「一体どうなさるおつもりなのかしら?」「さぁねぇ~」(ヴィクトル様とお似合いだったな、椿様・・) 自分と同じ顔をしていても、椿は女だ。 中途半端な自分とは、全く違う。 その日の夜、ヴィクトルが自室で寝ていると、渡殿から強い妖気が自分の方へと近づいて来ている事に気づいた。(何だ、この妖気は?)「何者!?」「あら、驚かせてしまったみたいで、申し訳ないわね。」「椿殿・・」「あなたともっと、お話したくて・・構いませんこと?」(吸い込まれる・・) 翌朝、勇利がヴィクトルの部屋へと向かうと、そこで御簾越しに裸で抱き合うヴィクトルと椿の姿を見てしまった。「まぁ、勇利様・・」「失礼します!」 居た堪れなくなった勇利は、その場から逃げ出した。「ユウリ!」「ヴィクトル様、ここはわたくしが。」 勇利は、人気のない塀の近くで泣いていた。(そうだよね、僕みたいのよりも、ヴィクトル様は・・)「見つけたわぁ。」「つ、椿様・・」 勇利は、自分を見つめている椿の全身から凄まじい殺気を感じた。「あなたには、消えてくれないと・・」(ヴィクトル様、助けて・・)「ユウリ、何処だ、ユウ・・」 ヴィクトルは、“何か”の中へと沈む勇利と、それを眺める椿の姿に気づいた。(強い妖気、こいつ・・)「何者だ!?」「ちぃっ、勇利と同じ顔をして化けてお前を油断させる気でいたけど、甘かったようだね!傀儡師のあたしもヤキが回ったもんだ!」「ユウリを、どこへやった!?」「あの子なら、もうこの世には居ないさ。あたしが魔界に堕としちまったんだもの。」「魔界だと・・?」「勇利を取り戻したかったら、あたしに協力するんだね。」 椿はヴィクトルに、鶴岡八幡宮に祀られている頼朝を調伏するよう目地た。「さぁ、早くおし!」「魔界へ行くなら、このJJに任せな。」「は?お前が、魔界に?」「次元通路なんざ一発で開けるからな。勘違いするな、俺は勇利の為を思って・・」「いいだろう。」 魔界へ逃げた椿を追う為、JJとヴィクトルは魔界へと潜入し、勇利を発見した。 勇利は、魂を喰われてしまった。「あぁ、そんな・・」「おい、女が逃げたぞ!」「許さない・・ユウリを、返して貰う!」 ヴィクトルはJJと協力して椿を倒し、彼女の中から勇利の魂を救い出した。「この役立たずが、失敗しただと!?」「申し訳ありません、主上・・」 オタベックはそう主に詫びながら、ヴィクトルの弱点が勇利である事に気づき、勇利を攫う事を企んだ。「え、どういう事ですの、それ!?」「件の呪術師殺しが殿の仕業だと密告した者が居ると!?」「あぁ。その者が“誰”なのか、見当がつくけど。」(間違いない・・あいつだ・・) 呪術師殺しの疑いをかけられたヴィクトルは、勇利をギオルギーの部下によって攫われてしまい、その途中で呪力を失った。「ヴィクトル様、ごめんなさい・・」「謝るな。」 勇利はヴィクトルがオタベックに狙われている事を知り、その身を挺して彼からヴィクトルを守ろうとした。 矢を受け倒れた勇利の姿を見たヴィクトルは、オタベックの企みを挫き、その額に醜い傷を刻んだ。「おのれ、ヴィクトル・・」 呪術師殺しの疑いが晴れたヴィクトルと勇利は、再び共に暮らす事になった。 勇利の身体に異変が起きたのは、冬の訪れを告げる木枯らしが吹いた頃だった。 その頃ヴィクトルは仕事で多忙を極め、職場に泊まり込む事が多くなり、勇利と顔を合わさない日も多くなっていった。「久し振りのご帰宅かよ、陰陽師サマ。」「何だ、お前まだ居たの?」 ヴィクトルは勇利の為に屋敷周辺に強い結界を張り巡らし、勝手に勇利が外に出られないようにしていた。 その所為で、JJは勇利に会う事が出来ず、日に日に苛立ちが募っていった。「勇利をほったらかしにして、平気なのかよ?あいつは今・・」 JJがそう言ってヴィクトルに詰め寄った時、屋敷の中から何かが倒れる音がした。「ユウリ?」「あ、ヴィクトル様、お帰りなさ・・」 そう言ってヴィクトルを出迎えた勇利は、激しく咳込んだ。 その足元に、血が滴り落ちた。「ユウリ!」 勇利は、そのまま床に臥せってしまった。「全部テメーのせいだ、ヴィクトル。変化期に抱かれなかった未分化は、そのまま血を吐いて死ぬんだ。」「けれど、俺は・・」「JJ、僕の相手をしてくれる?」「ユウリ・・」「あぁ、わかった。」にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月14日
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・この小説は、平井摩利先生の「火宵の月」ヴィク勇パラレルです。・原作と若干違う設定にしております。・オリジナルキャラ多めです。・勇利が両性具有設定です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。注意事項を無視して読んで気分が悪くなった等の苦情は一切受け付けませんので、ご了承ください。「JJ、いつまで居るの?」「それは、お前を嫁にするまでだ、勇利!」「またそんな事を言って・・」 JJ―かつて同じ時を過ごした幼馴染の言葉を聞いた勇利は、何度目かわからぬ程の溜息を吐いた。「僕は、ヴィクトル様以外とは・・」「何言っている、勇利?あいつは、自分のようなガキを作りたくないから、お前を抱かないんだろう?要するに、あいつは・・」「俺が、何だって?」 氷のように冷たいヴィクトルの声に、二人が背後を振り返ると、そこには出張から帰って来たばかりの彼が、眉間に皺を寄せながら立っていた。「お帰りなさい、ヴィクトル様!」「俺が居ない間にこいつと浮気したの、ユウリ?」「え、そんな事は・・」「へっ、よく言うぜ!てめぇは姫君達に囲まれて嬉しそうに鼻の下を伸ばしていたくせによぉっ!」「え?」「お前の目は節穴か、JJ?婆共に囲まれ、その上子供達に纏わりつかれて嬉しいもんか。」「ヴィクトル様・・」 勇利がそう言いながらヴィクトルに抱きつこうとした時、彼のつけた香とは違うものが彼から漂っている事に気づいた。「あ・・」「気にするな。」 ヴィクトルはそう言うと、恋文を直衣の袖の中から出した。「風呂に入って来い、あちこち泥だらけだぞ。」「はい・・」(こいつ、勇利の気も知らねぇで・・) JJは、湯殿へ向かう前、勇利が泣いていた事に気づいた。「なぁにむくれてんのよ、この子は。」「むくれてなんかないよ!」 湯船に浸かりながら、勇利はヴィクトルに恋文を送った女性の事を想っていた。 きっと彼女は美しくて、教養があって、ヴィクトルの妻に相応しいのだろう。中途半端な自分とは違って。(有能だし、養子とはいえ貴族だし、ヴィクトル様綺麗だし、それに比べて・・)「勇利ちゃん、まだお風呂に入って・・きゃぁ~!」 和紗が中々風呂から出て来ない勇利を心配して湯殿の方を見ると、勇利は湯船の中で気絶していた。「風呂でのぼせるなんて、全く・・」「まぁ殿、どちらへ?」「俺の部屋に決まっているだろう。」「まぁ、そうですの。」“殿、もしかして・・”、“きゃ~、それ以上言うのは野暮よ~”と言う式神達の声を聞きながら、ヴィクトルは舌打ちして自室の中に入った。「ったく、ユウリは俺が少しでも目を離すと、こうなんだから。」 勇利を御帳台の中に寝かせると、ヴィクトルは彼と共に横になった。「ん・・」 翌朝、勇利が寝返りを打つと、何かが指先に触れた。 それは、ヴィクトルの長く、美しい銀髪だった。「え、えっ!?」「そんなに驚くな、ユウリ。」「どうして、僕・・」「ユウリ、お風呂でのぼせちゃって、俺が自分の部屋まで運んで来たんだよ、憶えてない?」「え、あ、わぁ・・」 勇利はパニックになり、暫くヴィクトルに抱きついたまま離れようとしなかった。「勇利ちゃん、おはよ・・きゃぁ~!」 ヴィクトルの式神達がヴィクトルの部屋で見たのは、抱き合っているヴィクトルと勇利の姿だった。「もぅ~、二人共狡いわよ、抜け駆けなんて~」「ち、違うって、おねーさん達っ!」「あらぁ、さっきの様子だと、殿も満更でもなかったようなだけど?」「ね~」「もぉ~、ヴィクトル様に言いつけてやる!」「残念でした、ヴィクトル様ならお仕事へお出かけになられたわよ。」「そ、そうなんだ・・」「あら、元気ない。そんなにヴィクトル様が恋しいの?」「そりゃぁ、共寝した仲だもんね~」「お、おねーさん達、いい加減に・・」「一体、何の話だ、勇利?」「あ、JJ・・今の話・・」「俺は、認めないぞ!」 JJはそう叫ぶと、勇利に抱きついた。「ぎゃ~!」「あ~、また出たわ。」「殿、早く追い出してくれないかしら?」「無理よぉ、最近呪術師殺しが多発していて、殿はその捜査に追われているんだもん。」「それにしても、被害者がみんな雷で焼き殺されるなんて怖いわよね~」(ヴィクトル様、大丈夫かな?) 式神達の話を聞きながら勇利がヴィクトルの身を案じている頃、ヴィクトルは執権に命じられ、逗子に住むある貴族の姫君を警護する仕事に就いていた。(全く、何だって俺がこんな事を・・) そんな事を思いながら、ヴィクトルは自分が警護する姫君と御簾越しだが会う事になった。「お初にお目にかかります、ヴィクトル=土御門=ニキフォロフと申します。」「まぁ、あなたが・・」「姫様、なりません!」 ヴィクトルが俯いていた顔を上げると、自分の前には勇利と瓜二つの顔をした姫君の姿があった。にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月14日
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・この小説は、平井摩利先生の「火宵の月」ヴィク勇パラレルです。・原作と若干違う設定にしております。・オリジナルキャラ多めです。・勇利が両性具有設定です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。注意事項を無視して読んで気分が悪くなった等の苦情は一切受け付けませんので、ご了承ください。(すっかり遅くなってしまったな・・) 執権の館で開かれた宴に渋々と顔を出したヴィクトルは挨拶だけして帰ろうとしたが、執権がなかなか彼を帰さず、ヴィクトルは執権を酔い潰して漸く執権の館から出たのは、空に月が浮かぶ頃だった。(ユウリ、今頃俺の事が恋しくて泣いているのかな・・) そんな事を思いながら馬から降りて自宅へとヴィクトルが向かっていると、勇利が見知らぬ男と抱き合っている姿を彼は見た。「やめて、離してよJJ!」「そんなに恥ずかしがることはないだろう、ユウリ!」「やめてよ!」 JJの拘束から逃れようとした勇利だったが、体格差があるJJから勇利はなかなか逃げられなかった。「君、俺のユウリに何をしているの?」「ヴィクトル・・」 勇利が背後を振り向くと、そこには冷たい碧い瞳で自分とJJを見つめるヴィクトルの姿があった。「ユウリ、こいつは誰だ?」「君こそ一体誰?そして俺のユウリに何故抱きついている?」ヴィクトルは全身から殺気を発しながら、JJにそう尋ねると、彼は舌打ちして勇利から離れた。「俺は、ユウリの許婚のJJだ!今夜ここに来たのは、ユウリを抱く為だ!」「抱く?君が、ユウリを?」 JJの言葉を聞いたヴィクトルの周囲の空気が、突然冷えていくように勇利は感じた。「ああ。今ユウリは子を孕める大事な時期だからな!」「ユウリ、一体どういうことなのか、俺にもわかるように説明して?」 その場から逃げ出そうとした勇利の肩を掴んだヴィクトルはそう言って彼に微笑んだが、目は全く笑っていなかった。「鶴岡八幡宮で、僕最初に説明したよね?僕は両性体で、伴侶と契りを交わした後、雄と雌、どちらにもなれるって。」「そんなの初耳だよ。酷いよユウリ~、何で俺に黙ってた?」「黙っていたも何も・・その説明を僕がしようとした時、ヴィクトルが勝手に襲って来たんじゃないか!」「そのことは今でも悪かったと思ってるよ!ねぇユウリ、あの男はユウリとは一体どういう関係なの?」「えっと、JJとは幼馴染みたいなもので、それ以上でもそれ以下でもないっていうか・・」「酷いなユウリ!子供の頃一緒に寝ていたじゃないか!それに水浴びだって・・」「一緒に寝た?水浴び?」「ヴィクトル、JJが言ったことは真に受けないで!JJ、用がないならもう唐土に帰ってよ!」「嫌だ、お前を俺の嫁にするまでは帰らないぞ!」「君、俺に殺されに来たの?」「ヴィクトル、落ち着いて~!」 唐土に帰れと言う勇利と、彼を嫁にするまで唐土に帰らないと言い張るJJに困り果てたヴィクトルは、暫くJJが自宅に滞在することを許した。「ユウリ、まだ夜はこれからだぞ~!」「ひっつかないでよ、JJ!」「ユウリから離れろ、この変態!」 JJがヴィクトル邸に滞在するようになってから数日が経ち、JJは隙あらば勇利を襲おうとしているので、ヴィクトルはJJに対して全身から凄まじい殺気を放ちながら彼を睨みつけていた。「ねぇ、あれいつまで続くのかしら?」「さぁね。」 勇利を抱き締めたまま離そうとしないヴィクトルの姿を廊下から見ながら、彼の式神たちはそんな話をした後溜息を吐いた。にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月14日
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・この小説は、平井摩利先生の「火宵の月」ヴィク勇パラレルです。・原作と若干違う設定にしております。・オリジナルキャラ多めです。・勇利が両性具有設定です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。注意事項を無視して読んで気分が悪くなった等の苦情は一切受け付けませんので、ご了承ください。(ヴィクトル様、今日も帰りが遅いなぁ・・) 巷を騒がしている野猫族を退治したヴィクトルは、そのまま勇利とのんびりと休めると思っていたのだが、有能な陰陽師を逃がしたくない執権は、何かにつけてヴィクトルに仕事を依頼し、その結果彼は職場に連日泊まり込む位多忙な日々を送ることになってしまった。 そして今夜も、勇利が待つ自宅に帰って来なかった。あの時―野猫族から身を挺してヴィクトルを勇利が庇い、生死の境に彷徨っていた時、ヴィクトルが自分の耳元で囁いた言葉が忘れられなかった。“ユウリ、俺の元へ戻っておいで・・俺の愛しい紅玉。” その言葉を聞いた時、ヴィクトルは自分を幼い頃に助けてくれたあの少年だと言う事を、勇利は思い出した。 野猫族を退治した後、傍に居てもいいかとヴィクトルに勇利が尋ねると、彼はいいと言ってくれた。(僕は、ヴィクトル様のお傍に居てもいいんだろうか?)「あら勇利ちゃん、どうしたの?またそんな所で殿の帰りを待っているの?」「うん、そんなとこ・・ねぇお姉さん、僕はヴィクトル様に相応しいと思う?」「あら、どうしたのよ。そんな事をあたしに聞いてどうするの?」和紗はそう言って袖口で口元を隠しながら笑うと、勇利は深い溜息を吐いた。「ヴィクトル様は男の僕から見ても綺麗で、ヴィクトル様の隣に立つのは僕じゃなくて綺麗な女の人がふさわしいじゃないんかなぁって・・」「まぁ、殿はモテるからねぇ。独身で仕事が出来て、その上イケメンだと、出自なんて関係ないって思っちゃう女の方が多いわよね。」 和紗は苦笑しながら、ヴィクトルが女性から恋文を毎日のように貰って来ていることを思い出した。「何だか僕、自信失くしちゃうなぁ。」自分がヴィクトルの“一番”だと思っていた幼い頃、勇利は彼と離れ離れになった時、悲しくて寂しくて辛い日々を送った。 だからヴィクトルと再会した時、これから彼の傍にずっと居られるのだと、一人ではなくなるのだと勇利は嬉しく思った。 だが、勇利の夢は、厳しい現実の前に儚く散った。大人になって美しく、そして凛々しく成長したヴィクトルは、“自分だけのもの”ではない事に勇利が気づいたのは、数日前の夜、ヴィクトルが久しぶりに職場から帰宅した時の事だった。「お帰りなさい、ヴィクトル様!」「ただいま。」 いつものようにヴィクトルに抱きついた勇利は、彼の身体からいつも彼がつけている香とは違う香りがすることに気づいた。「ヴィクトル様、これ・・」カサリという音を立てて勇利の前に落ちた物は、女性からヴィクトルに宛てた恋文だった。「ああ、これか・・俺は結婚するつもりは全くないよ。もし結婚するとしても、ユウリを傍に置くつもりでいるから、安心して。」―そんな言葉なんて欲しくない。 勇利はそうヴィクトルに向かって叫びたかったが、出来なかった。(僕は、ヴィクトル様の恋人に相応しいのかな?) そんな事を思いながら勇利が再び溜息を吐いていると、突然茂みの中から一人の青年が飛び出して来た。「会いたかったぞ、ユウリ!」 青年は勇利の顔を見るなりそう叫ぶと、逞しい両腕で勇利の華奢な身体を抱き締めた。「JJ、どうしてここに?」「決まっているだろう、お前を俺の嫁として迎える為だ!」にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月14日
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・この小説は、平井摩利先生の「火宵の月」ヴィク勇パラレルです。・原作と若干違う設定にしております。・オリジナルキャラ多めです。・勇利が両性具有設定です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。注意事項を無視して読んで気分が悪くなった等の苦情は一切受け付けませんので、ご了承ください。 昨夜は悪夢を見た所為で、一睡も出来ずにいた。「・・トル殿、ヴィクトル殿?」「何か?」 誰かに呼ばれたことに気づいてヴィクトルが振り向くと、そこには意地の悪い笑みを浮かべた男が立っていた。「ここ最近、野猫族が大人しくしているようですなぁ。やはり雨の所為で奴らの動きが鈍ったのでしょうね。」「そのようですな。他に話がないのなら、俺はこれで失礼いたします。」ヴィクトルがそう言って男に背を向けた後、“愛想のない奴だ”と、先程の男が仲間に向かって陰口を叩いているのが微かに聞こえた。 昔から“愛想がない”、“可愛げがない”などと言われるのはもう慣れている。他人と馴れ合うつもりも、親しくなるつもりもないのだから、いい加減放っておいて欲しいものだ―ヴィクトルがそんな事を思いながら帰宅すると、式神の和紗が何やら慌てた様子で自分の方へと駆け寄って来た。「ヴィクトル様、大変です!勇利様が・・」「ユウリが、どうかしたのか?」「先ほど、勇利様にお会いになりたいという客人が来て、断ったら急にその男が勇利様を連れて行かれてしまったのです!」「何だって・・」 和紗の言葉を聞いたヴィクトルは、自分の顔から血の気がひくのがわかった。他人の結界内、敏腕陰陽師として名を馳せているヴィクトルの強固な結界を容易に破る者など居ない。 もしそのような者が居るとしたら、ヴィクトルと同等の、またはそれ以上の呪力を持っている同業者―呪術師しか居ない。「ユウリを探せ、今すぐに!」(ユウリ、どうか無事でいてくれ!) 何処かでカラスがヴィクトルを嘲笑うかのようにしわがれた声で鳴いていた。 ピチョン、と水滴が落ちる音で、勇利は閉じていた両目をゆっくりと開いた。「ん・・」辺りを見回すと、今自分が居るのは何処かの洞窟のようだった。「目が覚めたか?」闇の中から突然ぬぅっと男の顔が現れたので、勇利は思わず悲鳴を上げてしまった。「驚かせてしまって済まない。お前がユウリだな?」「はい、そうですが・・貴方は?」「わたしはギオルギー。ヴィクトル無き今、わたしが宮中の権力を全て掌握していると言っていい。」そう言った男―ギオルギーは、欲望に滾った瞳で勇利を見た。「僕を、どうするつもりなのですか?」「ここでお前を殺し、わたしは不老不死の力を手に入れる!」ギオルギーは勇利を睨みつけてそう叫ぶと、彼の上に馬乗りになった。(助けて、ヴィクトル!)「そこまでだ、ギオルギー。」「ふふ、来たなヴィクトル。漸くお前と互角に戦える時が来た。」「俺と互角に戦えるだって?ふざけた事を言うね、ギオルギー。」 ヴィクトルはそう言って口元に冷笑を浮かべると、ギオルギーを衝撃波で吹き飛ばして彼を気絶させ、勇利を優しく抱き上げた。「怪我はない、ユウリ?」「ごめんなさい、ヴィクトル、心配を掛けてしまって・・」「無事だったから、ユウリが俺に謝ることはないよ。」「ヴィクトル・・」「勇利、探したぜ。まさかお前がこの陰陽師様とデキていたとはなぁ?」二人の背後から嘲るような冷たい声が洞窟内に響いたかと思うと、数頭の黒豹が洞窟内へと入って来た。 彼らは巷を騒がせている野猫族だと、ヴィクトルは勘で解った。「君達、俺に何か用?まさか、俺の呪力欲しさに俺を殺しに来たとか?」「へへ、まぁそんな所かな!」野猫族達はそう言うと、一斉にヴィクトルに飛びかかった。「ヴィクトル様、危ない!」ヴィクトルを庇った勇利は、胸を野猫族の爪に切り裂かれた。「しっかりしろ、ユウリ!」「やっと会えた・・ヴィクトル様・・」苦しそうに喘ぎながら、勇利はそう言うとヴィクトルの頬を撫でた。「けっ、ザマァねぇな。まぁ、これでこいつを殺す手間が省け・・」「お前達がユウリに手を出す前に、俺がお前達を殺す!」 全身から怒りのオーラを発しながら、ヴィクトルは碧い瞳で野猫族達を睨みつけ、祭文を唱えた。「業火招来!」野猫族達の身体はあっという間に紅蓮の炎に包まれ、彼らは断末魔の悲鳴を上げながら息絶えた。「ユウリ、俺の元へ戻っておいで・・俺の愛しい紅玉。」ヴィクトルは祭文を唱えた後、自分の気を勇利に吹き込むため、彼の唇を塞いだ。「ヴィク・・トル様・・?」「さぁユウリ、俺と共に家に帰ろう。」「はい。」ヴィクトルに抱きかかえられながら、勇利は彼と共に洞窟を後にした。「ねぇユウリ、俺が一番好きな色が何か、知ってる?」「いいえ。」「俺は、紅が一番好きなんだ。お前の瞳の色の様な、綺麗な紅が。」「ヴィクトル様、もしかして僕の事を思い出してくれたんですか?」「俺がお前の事を忘れる訳がないだろう。」ヴィクトルはそう言って勇利に微笑むと、彼がつけている紅玉の耳飾りに触れた。「ヴィクトル様、ずっと貴方のお傍に居てもいいですか?」「勿論だ。」 月が優しく、睦み合う恋人達の姿を照らしていた。にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月14日
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・この小説は、平井摩利先生の「火宵の月」ヴィク勇パラレルです。・原作と若干違う設定にしております。・オリジナルキャラ多めです。・勇利が両性具有設定です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。注意事項を無視して読んで気分が悪くなった等の苦情は一切受け付けませんので、ご了承ください。「気が付いたか?」「あの・・僕・・ここは、何処ですか?」「俺の邸だよ。お前、名前は?」「勇利といいます。」青年の名を聞いたヴィクトルは、驚きのあまり顔が強張ってしまった。「どうかなさいましたか?」「いや・・その耳飾りは何処で手に入れた?」「ああ、これは昔、大切な人から贈られた物です。」青年―勇利はそう言うと、紅玉の耳飾りを指先で触れた。「大切な人?」「はい。昔僕が幼い頃、仲間からいじめられて谷底へと突き落とされた時、助けてくれた人から贈られたんです。」 勇利の言葉を聞きながら、ヴィクトルは彼が昔飼っていた愛猫“紅玉”であると確信した。「その大切な人は、今どうしているの?」「知りません。随分昔に、生き別れになったから・・でも、もし生きているのなら、会いたいです。」 勇利はそう言って両膝の間に顔を埋めた。「怪我が治ったら出て行け。」「はい・・」(少し、冷たくしてしまったかな・・) その日の夜、ヴィクトルがそう思いながら寝返りを打っていると、廊下から控えめな足音が聞こえて来た。 誰だろうと思いながらヴィクトルが再び寝返りを打とうとすると、胸の上に温かい感触がした。(何だ?) ヴィクトルがゆっくりと目を開けると、そこには自分の上にのしかかっている勇利の姿があった。「お前、何をしているの?」「え、あの、それは・・夜這い・・です・・」勇利はか細い声でそう言うと、頬を羞恥で赤らめながら俯いた。「君、大人しそうな顔に似合わず大胆な事をするね。俺が誰なのか知っていて夜這いしに来たんだ?」「すいません・・」「謝らなくてもいい。」ヴィクトルはそう言うと、勇利を抱き寄せた。「え、あの・・」「どうした、俺を誘惑するんじゃないのか?」 至近距離でヴィクトルから見つけられた勇利は、顔を赤く染めながら慌てて彼の傍から離れた。「すいません、忘れてください!」耳飾りをシャラシャラと言わせながら、勇利は慌ててヴィクトルの部屋から飛び出して自分の部屋へと戻ってしまった。(本当に、妖らしくないな・・まぁ、それが可愛いけれど。) ヴィクトルはクスクスと笑いながらそんな事を思った後、ゆっくりと目を閉じた。―・・めて また、あの夢を見た。―やめて、お父さん、苦しいよ・・自分の細い首に絡みつく父の指。そして、耳元で囁かれる呪詛の言葉。“子供など、作らなければよかった。”にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月14日
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素材は、黒獅様からお借りしました。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。少女は膝を抱えながら蔵の中で泣いていた。(かあさま、会いたいよぉ・・)少女―火月は、亡くなった母と共に、鎌倉で暮らしていた。決して豊かではなかったものの、母との暮らしは幸せそのものだった。しかし、母が肺結核で亡くなり、火月は父親の元へと引き取られた。そこには父の本妻と、自分の異母妹である雪が居た。“気味が悪い子ね。”継母・佐知子は、そう言うと火月を冷たい目で睨んだ。金髪紅眼の火月は、その人とは違う容姿故に周囲から虐められ、孤独な日々を送っていた。そんな中、火月は運命の出逢いをした。それは、朝から大雪に見舞われた冬の日の事だった。「何しているのよ、愚図!」「すいません・・」「今日は雪お嬢様の大切なお客様がお見えになるんだからね、少しでも粗相をしたら、この家から追い出してやるからね!」「はい・・」火月はそう言って俯くと、割れた食器を片づけ始めた。「そこはいいから、外で雪かきをしておいで!」「はい・・」「まったく、辛気臭い子ね。」女中頭・トキは、そう言って火月を睨んだ。寒さで悴んだ手を擦りながら火月が雪かきをしていると、一台の車が彼女の前で停まり、中から一人の男が出て来た。長身を軍服に包み、射干玉の如き美しく艶やかな黒髪をなびかせた彼は、切れ長の碧みがかった黒い瞳で火月を見つめた後、徐に己が嵌めていた牛革の手袋を外し、それを火月に手渡した。「これを。」「そのような高価な物、頂けません。」「いいから、取っておけ。」男はそう言って半ば強引に火月に手袋を手渡すと、高原邸の中へと入っていった。「あら、ようこそいらっしゃいました、土御門有匡様。」「高原殿、お久し振りです。本日はお招き頂きありがとうございます。」「いえいえ、有匡様にいらして下さり、光栄ですわ。」「ええ、本当に。」高原家の三人から歓待を受けた男―土御門有匡は、“ある事”に気づいた。「失礼ですが、こちらにもう一人、娘さんがおられると聞きましたが・・」「えっ・・」有匡が三人に玄関先で会った娘の事を話すと、彼らは一斉に気まずそうに俯いた。「どうさました?」「あ、有匡様、お姉様は・・」「火月でしたら、自分の部屋で休んでおりますわ。あの子は恥ずかしがり屋で・・」「そうですか。」邸の中で父達がそんな話をしている事など知らず、火月は寒さに震えながら雪かきをしていたが、雪掻きをしたところからまた雪が積もってゆくので、中々終わらなかった。邸の中からは時折、楽しそうな父達の笑い声が聞こえて来て、何故だが火月は泣きそうになった。(さっきの人と、何処かであったような気がするな。)時折夢に現れる、自分に優しく微笑んでくれる、“誰か”の姿。あぁ、“彼”と出逢ったのは、こんな冬の日だったっけ。(僕、一体何を・・)―僕、あなたの子供を産みたいんです。闇の中から聞こえる、“誰か”の声。「今日は、本当においでいただきありがとうございました。」「有匡様、またいらしてくださいね。」高原邸から出た有匡は、雪の中で何かが光っている事に気づいた。(何だ?)紅い月が、雪の中に倒れている少女―火月を優しく照らした。―僕、あなたの子供を産みたいんです。火月の耳に光る紅玉の耳飾りを見た有匡の脳裏に、一気に“前世”の記憶が流れ込んで来た。「やっと会えたな、火月。」「まぁ有匡様、その子の事は放っておいて下さいな。」「彼女を、わたしの妻として貰い受けます。」有匡は冷え切った火月の躰を外套で優しく包むと、車に乗り込んだ。にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月10日
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画像は、てんぱる様からお借りしました。「FLESH&BLOOD」二次小説です。 作者様・出版社様とは一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。 幼子の泣き声が聞こえ、ラウルが気怠そうな様子で庭の方を見ると、そこには泣き叫ぶ我が子の姿があった。 クン王子は、転んで膝を擦り剥いていた。「母上・・」「英蘭、この子を部屋へ連れて行きなさい。」「はい!」 泣く我が子をあやしたり抱き締めたりする事なく、ラウルは冷たく侍女にそう命じると、その場を後にした。「そなた、クン王子に冷たくないか?」「ええ、わたくしは敢えてあの子に冷たくしているのです。無駄に甘やかしては、あの子の為にはなりませんもの。」「それはそなたの経験談か?」「ご想像にお任せ致しますわ。」 妓楼の一室で、ラウルはそう言うとかつて自分に懸想していた男にしなだれかかった。「ここは、君にとっては懐かしい場所だろう?」「雷様、意地悪な事をおっしゃらないで。」 ラウルは静かに酒を煽りながら、かつてここに売られて来た日の事を思い出していた。「早く歩け!」 ラウルが生まれ育った国は、一夜にして滅びた。 貴族の娘として何不自由ない生活を送っていたラウルは、両親を殺され、最下層の奴隷として生きる事になった。 王都の近くにあったこの妓楼へと売られ、ラウルは辛酸を舐める日々を送った。 いつか、自分を虐げた者達に復讐してやるー内に激しい憎悪の炎を燃やしながら、ラウルは妓女としてその名を馳せた。 やがて、その噂を聞きつけた皇帝が妓楼に入り浸り、ラウルを後宮に入れた。―蛮族の女を後宮へいれるなど・・―世も末だ。(何とでも言えば良い。) 皇帝を骨抜きにしたラウルは、やがてクン王子を授かった。 クン王子は、ラウルに似て病弱で、良く熱を出して寝込んでいた。 ラウルはそんなクン王子の教育を全て乳母に任せ、皇帝の子を授かろうと躍起になっていたが、中々授からない。 焦りをラウルが感じている中、自分と対立していた青天君が、妃を迎えた。 自分よりも若くて、美しい妃を。(もしあの妃が陛下の子を宿したら・・わたしは・・)「どうした、浮かない顔をして?」「いいえ・・」「そういえば、余り食べていないではないか?」「ええ、少し胸焼けがして・・」 ラウルは、この頃月のものが二月程来ていない事に気づいた。「すぐに医者を呼びましょう。」「雷様・・」 妓楼時代からの知人・雷によって呼ばれた医師の診察を受け、ラウルは妊娠している事がわかった。―麗妃様がご懐妊ですって?―まさか、陛下の御子なのかしら?「貴妃様、いかがされました?」「ねぇ、麗妃様が懐妊したというのは本当なの?」「ええ。陛下は、大層お喜びのようで・・」「そうなの。じゃぁ、産まれて来た子が、皇太子になる事はあるの?」「それは有り得ませんわ。呉妃様がいらっしゃる限り。」 海斗は後宮の人間関係や権力構成などに疎い為、わからない事は春桃に聞いていた。「呉妃様が一番後宮で偉いの?」「はい。後宮の全権は呉妃様が握っておられます。呉妃様がご存命している間、あの麗妃様でさえ貴妃様には手出しできません。」「そうなの。」「それよりも、婚儀を明日に控えたご感想は?」「そんな事聞かれても、実感が何だか湧かないというか・・」 海斗が春桃とそんな事を話していると、そこへ何処か慌てた様子の女官がやって来た。「申し訳ありません、こちらにクン王子がいらっしゃいませんでしたか?」「クン王子?見ていないけど・・」「わたくし達が目を離している隙に、居なくなってしまったのです。」 海斗は、麗宮殿の女官達と共に、姿を消したクン王子を捜した。 クン王子は、冬宮殿で呉妃から刺繍を習っていた。「クンは、筋が良いのう。」「ありがとうございます。」 クン王子が懸命に針を動かしていると、そこへ海斗達が駆け付けて来た。「クン王子、ご無事でよかった!」「心配かけて、ごめんなさい・・」 クン王子を海斗達が麗宮殿へと連れて行くと、ラウルはクン王子の頬を平手で打った。「母上・・」「さっさと自分の部屋に戻りなさい。」「今のはあんまりではないですか?」海斗がそう言いながらクン王子を守ろうとすると、ラウルに蹴られた。 「誰に向かって口を利いているんだ、お前!」「一体、何の騒ぎだ?」「いいえ、何も。貴妃様がわたくしに無礼な口を利いたので、懲らしめてやっただけですわ。」「陛下、わたしが悪いのです。わたしが・・」「クン・・」「クン王子、さぁお部屋へ参りましょう。」 クン王子の乳母・香蘭はクン王子を抱き上げると、その場を後にした。「クン王子が可哀想。」「麗妃様は、クン王子を自分が権力を持つ為の、“切り札”にしか思っていないのです。」 腹を痛めて産んだ子を蔑ろにするラウルの冷淡さを目の当たりにした海斗は、クン王子の事が気になって一睡も出来なかった。 ジェフリーとの婚儀を終え、海斗は後宮に入って初めて、彼と一夜を共に過ごした。「貴妃様、おはようございます。」「ん・・」「昨夜は、“お楽しみ”だったようですわね?」 海斗の首筋から胸にかけて広がる薔薇色の痣を見た春桃は、そう言って新婚夫婦の寝室を後にした。「クン王子は、どうして乳母に育てられているの?」「体型が崩れるからと、麗妃様はクン王子に母乳をお与えになりませんでした。その頃、香蘭が我が子を死産し、クン王子の乳母として雇われました。香蘭は、麗妃様と幾度もクン王子の育児方針で対立していました。結局は、麗妃様がクン王子を手放してしまいましたけれど。」「そう・・」「クン王子は、とても良い子ですよ。ただ、病弱なだけで。」 実の親を知らない海斗だったが、紅家の令嬢として大切に育てられた彼女は、ラウルがどうしてそこまで実の子に冷淡になるのかがわからなかった。「そういえば、ジェフリーのお母さんは?」「とてもお美しい方だったと・・でも、青天君が三歳の頃にお亡くなりになられました。とても、惨い殺され方をされたと、噂では聞いております。」「そんな・・」「青天君は、貴妃様がいらっしゃってからは良く笑われる様になられました。青天君と貴妃様の間にお子様がお産まれになられたら、とても愛らしいお子様がお産まれになられるのでしょうね。」「そんなの、まだ先だよ。」 ジェフリーと一夜を共にしてから二月が経った頃、海斗は謎の吐き気と倦怠感に悩まされていた。「貴妃様、お粥をどうぞ。」「ありがとう・・」 海斗が粥を一口食べようとした時、彼女は激しい吐き気に襲われた。「貴妃様!?」「何でもない・・」「ですが・・」 海斗は椅子から立ち上がろうとした時、貧血がしてよろめいてしまった。「誰か、薬師を!」 何処からか、泣き声がした。 海斗が泣き声のする方へと向かうと、そこには金髪碧眼の男児が居た。―どうしたの、坊や?―かあさまを、捜しているの。―じゃぁ、一緒に捜そうか?―ううん、もう大丈夫。 男児はそう言うと、海斗に抱き着いた。「カイト、大丈夫か?」「ジェフリー・・」「貴妃様、ご懐妊おめでとうございます。」 医師はそう言うと、海斗に微笑んだ。「本当に?」「はい、間違いありません。」 海斗の妊娠を知った呉妃は、大層喜んだ。「余り無理をするでないぞ。大切な時期だからな。」「ありがとうございます。」 月満ちて、海斗が産んだのは元気な男児だった。 それと同時期に、ラウルも男児を産んだ。「可愛いのう。」「寝ていれば、可愛いのですけれどね・・」 そう言った海斗の両目の下には、隈が出来ていた。「赤子は泣くのが仕事じゃ。と、言うても疲れが溜まるであろう。偶には王子を妾に預けて息抜きをするがよい。」「ええ。それよりも、麗妃様は・・」「彼女は、レイ王子にかかりきりだと聞く。レイ王子には、クンには与えなかった乳をやっているとな。妾は、クンが哀れに思うのじゃ。」「呉妃様・・」「青天君は、そなたが来てから変わった。どうか、これからも青天君を支えてやっておくれ。」「はい!」 冬宮殿から春宮殿へと戻った海斗の元に、ジェフリーが何やら慌てた様子で駆け寄って来た。「どうしたの?」「さっき、こんなものが庭に投げ込まれていた。」 ジェフリーがそう言って海斗に見せたものは、紙に包まれた石だった。 その紙には、『王子を殺す』と書かれてあった。「一体、誰がこんな事を?」「それはわからない。ただ、警備の者を増やすように言おう。」 ジェフリーはそう言うと、海斗と息子を抱き締めた。「陛下、申し上げます!国境付近にて敵軍が・・」「何だと!?」「陛下、青天君を国境へ向かわせては?」「ならぬ。あやつは、余の・・」「陛下、青天君にも武功を立てて貰わなくては、民があの者を皇帝として認める事が出来ましょうか?」「うむ・・」 ラウルに言いくるめられた皇帝は、ジェフリーに出陣を命じた。「そんな、リン王子が産まれたばかりだというのに・・麗妃様も酷な事をなさる。」「だが、民の心を掴むには、青天君が戦場で武功を立てねば、あの方が・・」 海斗は、王子をあやしながらジェフリーが生きて自分達の元に帰って来てくれる事を祈った。「カイト、そんな顔をするな。必ず帰って来る。」「本当?」「あぁ、約束だ。」「これを、俺だと思って持っていて。」「わかった。」 海斗から簪を受け取ったジェフリーは、それを大切そうに懐にしまった。「リンを頼む。」「うん・・」 出陣の日の朝、海斗はジェフリーと口づけを交わした。「待っているから。」 ジェフリーが出陣してから数日後、春宮殿の女官達が皇帝の軍に捕らえられた。「彼女達をどうするつもりなのです?」「彼女達は、陛下に対して謀反を企てたのですよ。これは、許されぬ事ではないわ。」「あなたが・・あなたが仕組んで・・」「あらぁ、何の事?わたくしを疑うなんて、酷いわぁ。」 ラウルはそう言うと、海斗を見た。「そうそう、ひとつだけあなたに伝えておきたい事があるの。次の皇帝になるのは、あなたの夫ではなく、わたくしの息子だとね。」「そんな・・」「貴妃様、申し上げます!呉妃様が、お倒れになられました!」 海斗が冬宮殿へと向かうと、女官達のすすり泣く声が聞こえて来た。「呉妃様は?」「先程、息を引き取られました。」「そんな・・」(これで、わたくしの邪魔者は居なくなった。) 呉妃の訃報を受けたラウルは、眠っているレイ王子を寝台から抱き上げた。(安心しなさい、この国はいずれお前のものとなる。) レイ王子が父親に似た蒼い瞳でラウルを見つめた時、彼女の部下が部屋に入って来た。「青天君を殺しなさい。」「どのような方法で・・」「戦場では、怪我がつきものよ。」「かしこまりました。」にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月09日
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画像は、てんぱる様からお借りしました。「FLESH&BLOOD」二次小説です。 作者様・出版社様とは一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。(誰、この人?) 海斗がそう思いながら見知らぬ女人を見ると、彼女は開口一番、こう言った。「あなたが、生贄ね?」「え?」「まぁ麗妃様、こちらにいらっしゃったのですね!」「陛下がお呼びですよ!」「では、わたくしはこれで。」 女人はそう言うと、風のように去っていった。「あの人は・・」「あぁ、あの女は、帝の寵妃さ。」 ジェフリーは素っ気ない口調でそう言うと、木の幹に刺さっていた矢を引き抜いた。 その矢には、こんな文がくくりつけられていた。『皇太子の座をクン王子に譲れ。』 ジェフリーは文を破り捨て、溜息を吐いた。 クン王子は、帝の寵妃・麗妃が産んだ子で、まだ三歳になっていない。 その王子の後見人、即ち摂政として権勢を振うつもりなのだろうが、そうはさせない。「あの人、変な事を言っていたけれど・・」「気にするな。」「うん・・」 ジェフリーは、海斗が髪に挿している簪を見た。 それは蓮を象ったもので、美しい真珠が簪の先についていた。「その簪は?」「これは、実母の形見です。」 海斗は、そう言うと自分の生い立ちを話し始めた。 海斗は、生まれてすぐに紅家の正門前に捨てられていた。 紅夫人は、海斗を我が子同然に育て、教育を受けさせた。 しかし、海斗はずっと自分の居場所を探していた。 自分が居るべき場所はここではないと、いつしか思うようになっていた。「実の母親に、会いたいと思った事は?」「わかりません。」「そうか。」「失礼致します、皇太子様。麗妃様から、お手紙を預かりました。」「ありがとう。」 ジェフリーは麗妃付の女官から手紙を受け取ると、そこには今夜七時に開かれる宴に出席せよというものだった。「宴って、俺も出ていいの?」「あぁ。」(あの女が一体何を考えているのかはわからないが、何か起きた時にはこの子を守ってやらねば。)「宴に出るといっても、お前は何が出来るんだ?」「琵琶と箏が出来ます。」「そうか。」「いずれ後宮に上がる日が来るかもしれないからと、義母に専属の家庭教師をつけて貰いました。」「それは良かった。」 ジェフリーと海斗がそんな話を春宮殿でしている頃、麗妃―ラウルは琵琶を奏でながらあの赤毛の娘の事を思い出していた。(あの娘、何処かで見たような・・)「麗妃様、どうかなさいましたか?」「いいえ、何でもないわ。それよりも、今夜の宴が楽しみね。」「はい。」 その夜、ラウルが住まう麗宮殿で、華やかな宴が開かれた。 宴に集まった美女達は、それぞれ歌や舞で貴族達を楽しませていた。「麗妃様、今日はあの方はいらっしゃらないのですか?」「ええ。あの方は、気分が優れないようで・・」「まぁ・・」 ラウルが取り巻き達とそんな話をしていると、突然池の方から美しい笛と琵琶の音色が聞こえて来た。 池に浮かんでいる舟には、青天君と紅貴妃の姿があった。「あの方が・・」「素敵な方ね。」(やってくれたわね、ジェフリー。わたくしに逆らうつもりなのね!)「素晴らしい演奏だったわ。皆さん、ご紹介するわね。こちらの方が、春宮殿に本日入られた紅貴妃様よ。」 ラウルの言葉を聞いた宮女達の視線が、一斉に海斗へと向けられた。(え・・)―まぁ、何て事・・―春宮殿ですって?―あの・・「皆さん、そんなに睨まないであげて、紅貴妃様が怯えているでしょう?」「ですが紅貴妃様が・・」「黙りなさい。」「申し訳ありません・・」「さぁ皆さん、宴の続きをいたしましょう。」 ラウルはそう言って手を叩いた。 宴は深夜まで続いた。「貴妃様、お帰りなさいませ。」「ただいま。」 海斗の侍女・春桃はそう言うと、海斗の髪を優しく梳いた。「ねぇ、春桃は後宮に入って長いの?」「ええ。もう十年になります。」「宴の時、皆俺の方を見ていたけれど・・何か、ここにはあるの?」「春宮殿は、呪われているという噂がありますわ。」「呪われている?」「ええ・・」 春桃が言うには、その昔帝から深い寵愛を受けた妃が居たという。 だがその妃は、美しく聡明であったが故に、他の妃達から嫌がらせを受け、池に身を投げたのだという。 それから、春宮殿に嫌がらせをしていた妃達が次々と謎の死を遂げた。「へぇ・・」「その妃の魂が、今も彷徨っているという噂です。」「そうなの。」 海斗が寝室で眠っていると、外から女の泣き声が聞こえて来た。 だが海斗は気の所為だと思い、そのまま眠った。「おはようございます、貴妃様。」「おはよう。」「昨夜、不気味な女の泣き声が聞こえていませんでしたか?怖くて堪らなくて眠れませんでした。」「そう?やっぱり、あれ気の所為じゃなかったんだ。」「恐くないのですか?」「幽霊よりも生きている人間の方が怖いじゃん。」「まぁ、そうですわね。」「ねぇ、俺はこれから何をしたらいいの?」「今日は余り忙しくないので、好きな事をゆっくりなさって下さい。」「わかった・・」 そう言ったものの、海斗は何もする事がなくて春桃が去った後、溜息を吐いた。 琵琶を中庭で奏でていると、茂みの中で何かがまた動いた。「そこに誰か居るの?」「申し訳ありません!」 茂みの中から出て来たのは、一人の少年だった。 みすぼらしい服装をした彼の手足には、赤黒い痣のようなものがあった。 彼は、海斗に英明と名乗った。 英明は、宮城の外にある街で暮らしており、幼い弟妹達の腹を満たす為に、宮城へ盗みに入ったのだという。「春桃、この子に食べ物を持たせてやって。」「貴妃様、ですが・・」「哀れみはいりません。おいら、金は自分で稼ぎます。」「英明、あなたはこれからどうしたいの?」「おいら、来月には十になるんだけれど、何処の工房も雇ってくれないんだ。縫い物は女の仕事だから、男は駄目だって。」 そう言って英明は、唇を噛んだ。「あなたは、裁縫が得意なの?」「はい。死んだ父さんが、腕の良い職人だったんです。」「春桃、筆と硯と紙を持って来て。」「かしこまりました。」 海斗は紙に、紅家の知人で都一の工房の名を書くと、それを英明に渡した。「この工房の主は、性別だけで職人を選ばないわ。一度行ってごらんなさい。」「ありがとうございます!」 英明はそう言った後、海斗に頭を下げて春宮殿から出て行った。「あれで、良かったのかな?」「それは、わたくしにもわかりません。」「そう。」 数日後、英明から文が届き、海斗が紹介してくれた工房で働き始めた事、親方や先輩達が優しくしてくれている事などが書かれていた。「良かった。」 海斗は、安堵の溜息を吐いた。「貴妃様、呉妃様がお呼びです。」「わかりました。」 海斗が冬宮殿へと向かうと、そこには一人の少年の姿があった。「貴妃よ、彼の事を憶えておるか?そなたの宮に忍び込み、生きる術を見つけた者じゃ。」「英明、元気そうで良かった。」「貴妃様のお陰で、おいらは道を踏み外さずに済みました。」 そう言った英明の顔は、輝いていた。「婚礼、ですか?わたくしと、青天君様の?」「そうじゃ。」「わたくしは、お嬢様の代わりで後宮入りしたので、そんな・・」「そなたの貴妃としての地位を確かなものにする為、皆にお披露目せねばならぬ。」「はぁ・・」 呉妃は完全に乗り気のようで、断れる雰囲気ではなかった。 そして、呉妃の下、海斗の婚礼の準備が進められた。―まぁ、貴妃様が?―それは、本当なの?―青天君様の妃になられるなんて・・「麗妃様・・」「放っておきなさい。」「ですが、このままでは・・」「放っておきなさいと言っているでしょう。わたくし達が騒いだりしたら、呉妃様に睨まれるのはわたくし達の方ですよ。」「はい・・」(やってくれましたね、呉妃様・・この借りは、必ず返しますよ。) 麗妃は、静かに笑うと、枯れた菊を花鋏で切り落とした。「貴妃様、失礼致します。」「どうしたの?」「婚礼衣装をお届け致します!」「まぁ、ありがとう。」 英明から受け取った真紅の婚礼衣装は、美しい鳳凰の刺繍が施されていた。「素晴らしいわ。」「初めての仕事だから、四日も寝ずに頑張りました!」「それはいけないわ、すぐに休みなさい。」「はい。では、おいら・・わたしはこれで失礼致します、貴妃様。」 英明はそう言って頭を下げると、春宮殿から去っていった。「貴妃様、呉妃様からお祝いの品が届きました。」「まぁ、呉妃様から・・」 海斗は、美しい螺鈿細工が施された琵琶を撫でると、それを爪弾き始めた。「誰か、誰か来てぇ~!」「池から、死体が・・」「誰か~!」 海斗が、騒ぎが起きている池の方へと向かうと、そこには一人の宮女の遺体が浮かんでいた。「一体、どういう事なの?」「貴妃様・・」「あの子が、足を滑らせてしまって・・」 宮女の遺体は、すぐさま衛士達によって池から運ばれていった。「呉妃様、このような事が起きたので、婚礼は延期した方がよろしいのでは?」「ならぬ。」「まぁ、死んだのはわたくしの侍女ですのよ。それなのに、弔いをわたくし達にさせないなんて!」 そう叫んだ麗妃は、袖口で顔を覆ってわざとらしい声を出しながら泣き始めた。―なぁに、あれ?―みっともないわねぇ。「そなたが何を言おうと、婚礼は予定通りに行う。」 呉妃は有無を言わさぬ口調でそう言うと、そのまま去っていった。(このままでは、済ますものですか!)にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月09日
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画像は、てんぱる様からお借りしました。「FLESH&BLOOD」二次小説です。 作者様・出版社様とは一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。 シャラシャラと、風に揺れる度に花嫁を乗せた輿に飾られた宝石が揺れた。「大層立派な花嫁行列だこと。」「そりゃぁ、なんていったってあの紅家の輿入れ行列だからねぇ。」「紅家って?」「あんた、知らないのかい?紅家って今や飛ぶ鳥を落とす勢いの名家だよ。」「それじゃ、輿に乗っているのは、紅家のお姫様かい?」「まぁね・・」 花嫁を乗せた輿は、やがて宮城の中へと入っていった。(もう、後戻りは出来ない。) 花嫁―海斗は、後宮に入る一月前の事を思い出していた。「海斗、奥様がお呼びよ、早く来なさい!」小鳥の囀る声を聞きながら海斗が眠い目を擦り自分の部屋から出ると、廊下には紅家の長女・愛齢の姿があった。「あら、お前もお母様に呼ばれたのね?」「ええ・・「ふん、相変わらず可愛げのない子。まぁいいわ、お前が嫁いだらその鬱陶しい顔を見ずに済むのかと思うとせいせいするわ。」「え・・」「まぁあなた、何も知らないのね。」 愛齢はそう言って意地の悪い笑みを浮かべると、自分の部屋へと戻って行った。「来たわね。」「はい・・」 紅夫人は、ジロリと海斗を睨みつけると、次の言葉を継いだ。「急な話だけれど、お前にはあの方の元へ嫁いで貰うわ。」「あの方?」「青天君よ。」 青天君―この国でその名を知らぬ者は居ない。 穢れを背負った皇太子にして、狂人。 青天君の元にはこれまで何人もの娘が嫁いだが、皆生きて故郷に戻って来る事はなかった。 そんな恐ろしい彼の元に、何故自分が嫁ぐ事になったのか―海斗がそんな事を思った時、紅夫人は茶を一口飲んだ後、こう言った。「青天君が、お前をお望みなのよ。」「わたしを、ですか?」「えぇ・・」 紅夫人は、愛齢が皇太子妃と周囲から期待されていたのだが、青天君が選んだのは、海斗であったのだと彼女は話した。「どうして、俺が・・」「あなたを、見初めたのですって。」「見初めた?青天君が、俺を?」「打毬大会で、あなたの勇姿を見たんですって。」 紅夫人の言葉を聞いた海斗の脳裏に、ある記憶が甦って来た。 それは、海斗が十五になった時の事だった。「打毬大会?」「ええ、あなたも参加して欲しいの。」「わかりました。」 愛齢が打毬大会に出場する筈だったのだが、大会当日彼女は熱を出してしまった。 彼女の代役として、海斗が大会に出る事になった。「俺に上手く出来るでしょうか?」「大丈夫よ、自分を信じて。」 その大会で、海斗は優勝した。 競技中、海斗は天幕の中から誰かの視線を感じた。 美しい金髪が時折、天幕から少し垣間見えていたが、もしかしてその持ち主が青天君だったのだろうか。「お義母様・・」「海斗、許しておくれ、わたしは・・」「今まで血が繋がらないわたしを育てて頂き、ありがとうございました。」 紅夫人は、涙を流しながら海斗を抱き合った。 こうして、海斗は青天君の元へ嫁ぐ事になった。「まぁ、素敵!」 鮮やかな真紅の婚礼衣装を身に着けた海斗を見て、侍女達はそう言って溜息を吐いた。 紅家は都に屋敷を構えていたので、海斗の花嫁行列は、すぐに終わった。「お待ちしておりました。」 海斗が輿から降りると、彼女の前に数人の宦官達が現れた。「何ですか、あなた方は?」「わたくし達は、皇太后様の命で参りました。」 海斗は侍女達と共に、皇太后・呉妃が住まう冬宮殿へと向かった。「お前が、紅家の養女か。美しい髪をしているね。」「ありがたきお言葉、光栄にございます。」「堅苦しい言葉遣いは止せ。妾もそなたと同じ炎の髪を持つ身。仲良くしようぞ。」 そう言って呉妃(エリザベス)は、海斗に優しく微笑んだ。「ここが、紅妃様がお暮しになられる春宮殿です。」 宦官達に海斗が案内されたのは、美しい朱色の宮殿だった。―あれが、紅妃・・―禍々しい赤毛・・―あんな子が何故、青天君様の妃に?(これから俺、後宮でやっていけるかな?) 海斗からそんな事を思いながら蝶が舞う美しい庭を眺めていると、そこへ一匹の猫がやって来た。「お前、何処から来たの?」 海斗がそう猫に尋ねると、猫は小さい声で鳴いて海斗に擦り寄って来た。「ブラッキー、何処に居るんだ?」 その時、庭の向こうから、若い男の声が聞こえて来た。 美しく鮮やかな金髪、そして蒼い宝石のような瞳。「あなたは・・」「お前が・・」 青天君―ジェフリーはそう言って海斗を見つめると、海斗を抱きしめた。「何すんだ、この・・」「大人しくしろ。」「え?」 ジェフリーがそう言って海斗を抱き締めて身を屈めると、木の幹に一本の矢が突き刺さった。「ひっ・・」「あらぁ、ごめんなさい。お怪我、ありませんでしたか?」 そう言いながらサラサラと衣擦れの音を立てながら現れた女人は、金色の瞳でジェフリーと海斗を見つめた。にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月09日
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甘じょっぱい味付けで、歯ごたえがあって美味しかったです。
2025年01月08日
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素材は、てんぱる様からお借りしました。「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。「鬼が、来るわ・・」「姫様?」大納言家で行われている管弦の宴の最中、一人の女童がそう言って誰も居ない空間を指した。「まぁ、おかしな事を言う子ね。鬼なんて来やしないわよ。」「ううん、来るわ。」「早くこの子を部屋へ連れて行きなさい。」「は、はい・・」女房に連れられた娘は、突然彼女の手を振り払うと、母親に抱きついた。「母様、今夜は一緒に寝て!」「えぇ、わかったわ。すぐに行くから待っていてね。」だが、母親は娘の元に行く事は出来なかった。彼女は夫とその一族と共に、邸に潜入して来た賊によって殺害されたからだ。「母様、どこ~?」漆黒の闇の中で、母を喪った幼子の泣き声が響いた。時を同じくして、歳三は突然自宅にやって来た水干姿の少年と直衣姿の青年を睨みつけていた。「弟子にさせて下さい、だぁ?」「はい!俺ずっと土方さんに憧れていました、だから・・」「悪ぃが、俺は弟子を取るつもりはねぇ。わかったら、さっさと諦めて・・」「俺を弟子にして下さい!」「やめないか、鉄!土方様が困っているだろう!」直衣姿の青年―市村辰之助はそう叫ぶと、弟の鉄之助の頭を殴った。「辰兄ぃ~!」「突然こんな夜中に押しかけて来てしまって申し訳ありません。後でわたしが弟に良く言って聞かせますので・・さぁ、帰るぞ!」「辰兄ぃ~、待ってくれよ~!」嵐のようにやって来て、嵐のように市村兄弟が去った後、歳三は溜息を吐いた。「人騒がせな奴らだぜ・・」そう言った彼の顔には、疲労の色が滲んでいた。「大納言家の者達が、賊に皆殺しにされたとか・・」「生き残った者の証言によれば、賊は皆鬼の面をつけていたとか・・」「あぁ、恐ろしい・・」歳三が宮中に参内すると、貴族達が大納言家で起きた惨劇の事を話していた。「土方様、今日は早いですね?」「これは伊東殿、あなたがわたしに話しかけるなんてお珍しい。」「まぁ、わたしの顔を覚えてくださっているなんて嬉しい。」伊東はそう言うと、歳三にしなだれかかった。ゾワリと鳥肌が立ち、彼は慌てて伊東から離れた。「では、わたしはこれで・・」「つれないわね、ふふ・・」慌てて陰陽寮へと向かう歳三の背中を見送りながら、伊東はそう呟いた後笑った。「・・余りしつこくすると、嫌われてしまいますよ?」「まぁ斎藤さん、あなたいつから居たの!?」「あなたが土方殿に言い寄って来たところからです。」「あら、全て見られていたのね、恥ずかしいわ。」伊東はそう言うと、口元で扇を隠しながら笑った。同じ頃、後宮では一人の姫君の入内についてある噂が飛び交っていた。「ねぇ、本当にあの方が入内なさるの?」「嫌だわぁ、あんな方が・・」「鬼憑きの姫君なんて、恐ろしい・・」「後宮に災いを招くのかもしれないわ・・」弘徽殿女御は、女房達はそんな囁き声を聞きながら、膝上で眠っている我が子の頭を撫でた。この子は、自分にとって希望そのものだ。自分達親子を邪魔するものは、何があっても排除してみせる。それが、たとえ鬼憑きの姫であったとしても。一方、その鬼憑きの姫―総司は、琵琶を自室で奏でていた。「姫様、お館様がお呼びです。」「わかりました、すぐに参ります。」衣擦れの音を立てながら総司が寝殿へと向かうと、そこには何処か険しい表情を浮かべている父の姿があった。「父上、どうなさったのです?」「総司、今すぐ京を離れろ、鬼に喰われる前に。」にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月08日
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素材は、てんぱる様からお借りしました。「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。ヒタヒタと、“アレ”が忍び寄ってくる気配がする。「・・けて・・」やがて、“アレ”が自分の首を絞め上げた時、女は苦しそうに喘ぎながら助けを呼んだが、誰も来なかった。「あ、あぁ・・」」絶望にまみれながら、女は死んでいった。―愚かな女・・冷たい骸と化した女を冷たく見下ろしながら、“ソレ”はそのまま夜の闇に紛れて姿を消した。「おい、どうしたのだ!?」「申し訳ありませぬ、牛が何かに怯えてしまって・・」ガタンと牛車が大きく揺れた後、牛がピクリとも動こうとしない事に気づいた従者達は何とか牛を動かせようとしたが、牛は全く動こうとしない。「えぇい、早く牛を動かさぬか!」「しかし・・」「それならば、わたしがこの牛を動かしてみせましょう。」そう言って貴族の男の前に姿を現したのは、直衣姿の男だった。「出来るのか?」「・・はい。」男は、地面に向かって祭文を唱えると、牛を怯えさせていた“何か”の気配が消え去った。すると牛は、漸く動き出した。「・・やっと、動いたか。」「どうぞ、お気をつけてお帰り下さいませ。」貴族の男を乗せた牛車が見えなくなった後、直衣姿の男―土方歳三は、深い溜息を吐いて家路に着いた。「お帰りなさいませ、殿。」「お帰りなさいませ。」主である歳三の帰りを、彼の式神達が出迎えた。流行病で亡くなった両親が遺してくれた広大な邸に、歳三は一人で暮らしていた。色白で少し渋味のある端正な顔立ちに、琥珀のような美しい黄金色の瞳を持った歳三は、陰陽師として類稀なる才も併せ持っているからなのか、女人にはよくモテた。だが歳三は、自らの生い立ち故に、結婚など一度も望んだ事はなかった。彼の生い立ち―それは、人間の父親と妖狐の母親との間に生まれた半妖だという事である。己の中に流れる“血”の所為で、歳三は幼い頃から謂れのない誹謗中傷に耐えてきた。その所為で、歳三は、恋愛はするが、結婚には全く興味がなかった。(俺は一生、一人でいい。)そんな事を思いながら歳三が寝所で眠っていると、突然甲高い少年の声が門の向こうから聞こえて来た。「すいませ~ん、誰か居ませんか!」「鉄、やめなさい!」歳三が門を開けると、水干姿の少年と直衣姿の青年が立っていた。にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月08日
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表紙は、湯弐様からお借りしました。「刀剣乱舞」二次小説です。制作会社とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。清光が女体化しています、苦手な方はご注意ください。「綺麗よ、清光。」「ありがとう、姉様・・でも、俺これから宮廷でうまくやっていけるかな?」「それはあなた次第よ。」 櫻子は、そう言って不安がる妹の肩にそっと手を置いた。「あなたはきっと、幸せになるわ。鏡で自分の姿をご覧なさい。」清光が鏡の中にのぞき込むと、そこには幸せな花嫁の姿がそこにはあった。「皇太子妃様、そろそろお時間です。」「わかりました。」(俺はこれから、髭切様と幸せになるんだ・・大丈夫だ、何も不安がる事なんてない。) 王宮内にある聖堂の中に入った清光は、そこで各国の王族や貴族達に見つめられ、一瞬祭壇の方へと歩む足を止めそうになった。だが、そんな彼女の気持ちを察したかのように、祭壇で待っている髭切が優しい笑みを彼女に浮かべ、その手を彼女に向かって差し伸べた。 それを見た清光は、再び祭壇の方へと歩き出した。 式を取り仕切る司祭の顔をヴェール越しに見た清光は、彼があの時汽車で見た男の顔に瓜二つだという事に気づいた。「清光、どうしたの?」「いいえ、何でもありません・・」「そう・・」 新郎新婦から少し離れた場所から、勲章で飾られた漆黒の軍服に身を包んだ膝丸の姿があった。「すべて、汝の意思である事に間違いないか?」「はい。」 清光がその言葉を口にした途端、何処からか自分を嘲笑う声が聞こえたような気がした。(気のせいだよね・・) 結婚式の後、王宮の大広間で皇太子夫妻の結婚披露を兼ねた舞踏会が開かれた。「皇太子妃様は、お美しいわね。」「あの艶やかな黒髪をご覧になって。皇太子様の金髪と対になっているかのような美しさだわ。」「そうね・・」 扇子の陰で交わされる令嬢達の囁きを聞きながら、膝丸は眉間に皺を寄せていた。 最初から―あの見合いの場から、膝丸は清光の事が気に入らなかった。気難しい性格の兄の心を一瞬で奪っただけではなく、兄の心が清光で徐々に満たされていくのを見るのが嫌だった。「随分と、怖い顔をしていらっしゃるのね?」 ワルツを踊る新郎新婦の姿を眺めていた膝丸の前に、一人の女が現れた。その女は豊満な肢体を漆黒のドレスで包み、口元に婀娜っぽい笑みを浮かべながら膝丸を見つめていた。「貴様、何者だ?」「わたくしは魔女ですわ、膝丸様。一曲わたくしと踊りませんこと?」膝丸はその女の魔力に惹かれるかのように、彼女の手を取った。にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月08日
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表紙は、湯弐様からお借りしました。「刀剣乱舞」二次小説です。制作会社とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。清光が女体化しています、苦手な方はご注意ください。 一ヶ月後、膝丸の厳しいお妃教育に耐えた清光は、晴れて皇太子妃として宮廷入りする日を迎えた。「毎日手紙を書くわ、姉様。」「健康には気をつけるのよ、清光。」 別れ際、清光は実家の前で桜子と別れの抱擁を交わした後、髭切と膝丸が待つ馬車へと乗り込んだ。 三人が乗せた馬車は、やがて駅へと向かった。「清光、僕の腕に掴まって。」「は、はい・・」 馬車から降りる前、清光は頬を赤らめながら婚約者の腕に掴まりながら彼と共に馬車から降りた。「皇太子殿下、万歳!」「皇太子妃様、万歳!」 二人が馬車から降りると、馬車の前に集まってきた群衆から歓声が沸き起こった。「清光、顔を上げて堂々として。君は僕の妻なのだから。」「は、はい・・」 群衆から祝福されながら馬車から降りる兄とその婚約者の背中を恨めしそうに見つめながら、膝丸は二人の後に続いて駅舎の中へと入った。 清光達は駅員の案内で、王室専門の御用列車に乗り込んだ。 車窓は長閑な田園風景から、工場が立ち並ぶ工業地帯へと移り変わっていった。初めて見る外の風景に、清光は暫し心を奪われていた。「もうすぐ着くよ。清光、これからは僕が君を守るからね。だから、僕を信じて。」「はい、髭切様。」 この人となら生涯を共に出来る―この時、清光はそう信じていた。 やがて三人を乗せた列車が、王都へと到着しようとする時、突然列車は激しく揺れ、清光は悲鳴を上げた。 悲鳴、怒号、衝撃音―全ての騒音が消え去った後、清光は一人で暗闇の中に取り残された。「髭切様?膝丸様?」 清光は婚約者とその弟の名を呼んだが、返事はなかった。「誰か、助けて!」「俺を呼んだか?」 闇の中から、すっと一人の男が清光の前に現われた。「其方は、あの時の・・」男の、美しい蒼の瞳の中に月が踊っている事に、清光は気づいた。「あんたは・・俺を知っているの?」「ああ、知っているとも。其方を童の頃から知っていた。」 男は黒の皮手袋に包まれた手で、清光の血に濡れた頬に触れた。「また会おうぞ、我が妻よ。」「待って!」 清光が男に向かって手を伸ばそうとすると、全てが暗転し、彼女の前には心配そうに自分の事を見つめる髭切と膝丸の姿だった。「よかった、漸く目を覚ましたんだね。」「髭切様・・」 三人を乗せた列車が無政府主義者によって襲撃を受けたこの事件では、奇跡的に死者・負傷者は出なかった。 宮廷入りした清光は襲撃事件から数週間後、髭切と華燭の典を挙げた。にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月08日
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表紙は、湯弐様からお借りしました。「刀剣乱舞」二次小説です。制作会社とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。清光が女体化しています、苦手な方はご注意ください。 清光が髭切の求婚を受け入れ、正式に彼の婚約者として宮廷から発表されてから数日が経った。「また脇を開けているぞ、清光!」「すいません・・」 清光が宮廷入りする一ヶ月までの間、彼女は髭切の双子の弟・膝丸から厳しいお妃教育を受けていた。 もともと兄の嫁には清光よりも品行方正で淑女である彼女の姉を望んでいた膝丸なだけに、彼は清光に対しては厳しく、テーブルマナーや髪型、化粧の仕方など、些細な事でも清光には駄目出しをした。「やぁ清光、少し顔色が悪そうだね?また膝丸から何か言われたの?」「いいえ。膝丸様は俺に苛立つのは、俺が至らない所為なのです。」清光はそう言って髭切に弱々しく微笑んだが、その笑みは少しひきつっていた。「あの子は僕と違って、生真面目で几帳面で、少し神経質なところがあるからね。全て君の為を思っての事だから、僕に免じてあの子を許してやってくれないかい?」「はい・・」「清光、周りがどんなことを言おうと、僕の后は君だけだ。それを忘れないで。」「ええ。」久しぶりに髭切と二人きりの時間を持てた清光は、彼を遠乗りに誘った。 この数週間、屋敷の中に引き籠っていたので、久しぶりに外の空気を吸った清光は爽快な気分になった。「君は馬に乗っている姿が一番生き生きとしているね。」「乗馬は俺が一番好きな趣味なんです。髭切さんの趣味は何ですか?」「そうだねぇ、乗馬も好きだけれどヴァイオリンを弾くのも好きかな。君は?」「ヴァイオリンは弾けませんけれど、ピアノなら弾けます。これでもレディとしての嗜みは幼い頃から両親や家庭教師の先生達から厳しく叩き込まれましたので。」「そう。こうして君とお互いの事を話したのは今日が初めてだね。」髭切がそう言って清光に微笑むと、彼女は頬を羞恥で赤く染めた。「そうですね・・何だか、恥ずかしいです。」「焦ることはないよ、これからもお互いの事を知っていこう。そのための時間は充分あるんだから。」「はい。」「そろそろ屋敷に戻ろう。遅れたらまた弟から小言を言われるからね。」 二人が仲良く連れ立って遠乗りから帰るところを、膝丸は屋敷の窓から何処か恨めしそうな顔で見ていた。「女の嫉妬は醜いですが、男の嫉妬も醜いものですよ?」「いつからそこに居たのです?」「貴方が余りにも大きな声でお兄様をお探しになさるので、気になって貴方の後をついてきてしまいましたわ。」 桜子の言葉を聞き、膝丸は何処かムッとした表情を浮かべた。「妹を余り虐めないでやってくださいませ。あの子とわたくしは全く違う人間です。ですから、妹とわたくしを比べることは絶対にしないでください。ただ、それを貴方に言いに来ただけですわ。」では失礼、と言って自分の前から辞した桜子は最後まで膝丸に笑顔を浮かべていたが、目は全く笑っていなかった。 一見虫を殺さぬような顔をしているが、彼女は自分の兄と同様、恐ろしいのかもしれない―膝丸はそう思いながら、兄と清光を出迎える為玄関ホールへと向かった。「兄者、今まで何処に行っていたのだ?」「清光と遠乗りに行っていたんだ。今日は良い天気だから、たまには外の風を感じないとね。そうだ、お昼はピクニックでもしようか?」「いいですね、それ。膝丸さんも、ご一緒に如何ですか?」「俺は遠慮しておこう。」 仲睦まじい様子の兄と婚約者に背を向け、膝丸はギリギリと無意識に唇を噛んでいた。(やはりあの娘、気に入らぬ・・)にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月08日
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表紙は、湯弐様からお借りしました。「刀剣乱舞」二次小説です。制作会社とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。清光が女体化しています、苦手な方はご注意ください。「あの、貴方様の妻に相応しいのは、俺・・じゃなかった、わたしではなく姉の方だと思いますが・・」「僕の言葉を聞いていなかったの?僕は、君以外の女性を妻に迎える気はないと言ったんだ。」 見合い相手である本人を前にして、髭切はそう言った後清光に微笑んだ。「清光、どうか僕の妻となってくれ。」「すいません、少し時間をください・・」 突然の事で頭が混乱した清光は、自分の手を握っている髭切の手をそっと外すと、そのまま部屋から出て行った。(何なんだ、あいつ!どうして姉様じゃなくて俺の方を選ぶんだよ!)「清光、待って!」「姉様、ごめんなさい、俺・・」「いいのよ、謝らないで。」 清光が涙で濡れた顔で姉の方を見ると、彼女は清光に笑顔を浮かべた後清光を抱き締めた。「髭切様は貴方を選んだのよ。きっと、貴方なら髭切様と幸せになれるわ。」「姉様、姉様はそれでいいの?」「いいのよ。清光、わたしに負い目を感じることはないわ。」桜子はそう言うと、清光の手を握った。「髭切様と、幸せになりなさい。」 同じ頃、膝丸は兄が桜子ではなく清光を花嫁として選んだ事に対して憤慨していた。「兄者、何故あのような娘を妻に迎えるのだ!彼女の姉ならば皇太子妃として相応しいが、あの娘は姉とは何もかもが違い過ぎる、一度考え直した方が・・」「膝丸、お前はこの兄が決めた事が不満なの?」「兄者・・」普段自分の名を呼んでくれない兄が珍しく自分の名を呼ぶ時がどんな時なのか解っているので、膝丸は恐怖に震えた。「お前に何と言われようと、僕は清光を妻に迎えるよ。それだけは覚えておいてくれ。」「解った。」「ねぇ膝丸、これだけは言っておくけれど、もし清光を虐めたらこの兄がただではおかないよ。」「そのような事、俺がする筈がないだろう。安心してくれ兄者。」「そう・・お前を信じるよ。だってお前は、僕の可愛い弟だもの。」兄の甘い声が、膝丸の神経を麻痺させる。「兄者・・」「膝丸、他人に嫉妬しては駄目だよ?これから清光と仲良くしておくれ、いいね?」 兄の言葉に、膝丸は静かに頷いた。「先ほどは失礼な事をしてしまい、申し訳ありませんでした。」「いいよ、気にしないで。それよりも清光、君の返事を聞かせて?」「皇太子様・・いいえ髭切様、これから宜しくお願い致します。」「こちらこそ宜しく、清光。」 髭切はそう言うと、清光を抱き締めた。「君を絶対に幸せにしてみせるよ。だから僕を信じて。」にほんブログ村二次小説ランキング
2025年01月08日
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この前買った、ZEBRAのリントというシャーペン。0.3と0.5を色違いで買いました。大切に使おうと思います。
2025年01月04日
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近所のダイソーに売っていたので買いました。中に入っていたのはうさぎでした。
2025年01月03日
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新年明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願い致します。2025年元日 千菊丸
2025年01月01日
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