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March 27, 2016
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カテゴリ: 心理学
茂木●「しんどさ」というのに僕はものすごく興味がありまして。というのは、われわれでも、たとえば理論を考えるときに、この理論を考えるのはしんどいなぁ、というときがあるんですよ。でもそれがなんか意外と価値あることだったりして。
そのとき、右の前頭葉のこの部分が、しんどさをモニターしているらしいというような研究もあるんですけども、でもそのしんどさを通り過ぎないと、価値あるものをつかめないところもあるわけであすね。
むずかしい数学の問題を解いているときとかももちろんそうなのであすが、生きるうえで、あの種のしんどさというのがあって、そこを通り過ぎないとやっぱりいけないところって、きっとあるんですよね。

河合●ええ、ええ。

茂木●そういうのって、精神分析のなかでどんな扱いになっているんですか、苦しさというのは、べつにその苦しさを取り除くことがいいことではないと思いますが。

河合●違ういい方をすると、苦しんでいる人がこられたら、苦しみをとるんじゃなくて、苦しみを正面から受け止めようにしているのが僕らの仕事やと思っています。

茂木●逃げちゃいけないということですか。

河合●逃げない。まっすぐ受ける。
だいたい、まっすぐに受けてない人が多いんです。たとえば「私、困ってるんですよ。だいたい、うちの家内が……」とかいって奥さんの悪口ばかりいってくる人を、ふつうの人はまっすぐ受けないんです。「問題はこの人の奥さんか」と思いながら、さっと逃げてるわけですね。

そのとき、「うちの家内が……」と悪口を始めても、「いや、奥さんのことはほうっておいて、あなたはどうなんですか」とは、絶対にやってはだめです。そういうと、反発されるだけです。

茂木●そのようなときは、どうやってうまく向き合わせるんですか?

河合●向き合わせないんですよ。向き合わせないで、奥さんの悪口を始めたら、それを一生懸命聞いたらいい。それをふつうの人は、「また、奥さんの悪口いうてはる」と思うでしょう。だから聞くほうも半身で聞いているんです。
僕らはその奥さんの悪口を完璧にまっすぐ聞くわけです。まっすぐに感心して、「はぁ~」と聞いていると、その人の視線がまっすぐになってくる。

茂木●ああ、そうですか。

河合●はい。だからほとんど僕の場合は、話を聞いているだけのことが多いです。できるかぎり、まっすぐ聞こうと思っています。でもやっぱりね、できるかぎりといっても、なかなかまっすぐ聞けないですよ。わかるでしょう。くるたびに奥さんの悪口ばっかりいってたら、「お前、ええかげんにせい。お前はどうや」といいたくなる(笑)。それを何回きて何回奥さんの悪口をいわれても、できるかぎりまっすぐ聞く。なかなかできませんけれど、その修練を僕はしてきたんじゃないかなぁと思ってますね。

茂木●そうすると、本当に自分の問題に向き合えるようになってくるわけですか。

河合●なってくるんですね。その人。不思議ですねぇ。

茂木●不思議ですね。

【こころと脳の対話】河合隼雄・茂木健一郎著/新潮文庫





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Last updated  March 27, 2016 06:38:23 AM
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