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一川 誠(千葉大学教授)
失敗は記憶に残りにくい
皆さんは充実した人生を送っていますか。どのように時間を使って充実した人生を送るのか、そのヒントにしてほしいと、近著『「時間の使い方」を科学する』を出しました。
この
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年間、何をしてきたか、覚えているでしょうか? その記憶が多く残っている方のほうが、何をしてきたかを意識できた分、自己評価が高くなるからです。
どのような人生を過ごすのか。何を主な目的とするかは、個人の価値観によって異なります。経済活動を重視するとか、家族との時間を大切にするとか、人生の目的はいろいろです。
ただ、与えられた目的を受動的に受け入れるより、自分で能動的に決めていった方がいい。自分で選択したことで、自己肯定感も強まり、記憶に残りやすくなるからです。結果的に、充実した時間を過ごしたように感じるものです。
与えられた仕事でも、命令されてやるのではなく、自分で決めること。すべてを自分で決められなかったにしても、だれとやるとか、いつやるというように、部分的にでも積極的に関わったという痕跡が重要です。
積極的になることで責任が生じることもあります。しかし、たとえ失敗したとしても、失敗は記憶に残りにくい。「自我防衛機制」と言い、失敗は記憶に残りにくく、都合よく記憶されたり、記憶が書き換えられたりしますそもそも悪いことに関しては注意が向きにくいため、認識されないのです。また、失敗の後に成功すれば、その記憶だけが残ることになります。
一方、生存するためには現状維持を求めるという「現状維持バイアス」が働きます。環境に大きな変化がない時には現状維持した方が生きやすいということから、獲得されたときうせいだと考えられます。
身体のリズムと仕事内容
現代日本の時間感覚は、本来、人が持っている時間と、大きくずれているように感じます。
例えば、電車などの交通機関。時間通りに通行されていることで有名で、その正確さに外国人がびっくりするほど。数分遅れただけで「遅れて申し訳ありません」とアナウンスされることも。
実は、現代日本の交通機関のように、
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分、
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秒にこだわるような、時間との付き合い方というのは、人類史上でも非常にまれな状態なのです。もちろん社会生活を送る上で、決められた時間を守ることは大切です。でも、定時運行を守ろうとするあまり、ルールを無視し注意を怠って大事故を起こしてしまう危険性があるのです。
時間感覚には個人差があり、体調や代謝のリズムによって、一日の中でも変化します。同じ作業を行っても、なかなかはかどらずにミスやエラーが起きやすくなる時間帯があります。その一方で最適な時間帯もあります。そんな人の時間感覚に、物理的な時間を合わせられた効率的です。
例えば、スマホやアプリに自分の体温と運動するような時計があったらどうでしょうか。基準として 24 時間を正確に刻む時計は必要です。とともに、身体の状態に合わせてスピードが変化するような時計があったら。今の自分の状態はこんなリズムと分かればいい。すると、今は仕事がはかどるかどうか、休憩をした方がいいとかの判断もしやすくなるでしょう。
現代社会では、最適な身体のリズムや状態から外れて生活している人がほとんどです。そんな状態でだらだらと仕事を続けていても、かけた時間にくらべ成果は少ないはずです。早く休んだ方が効率的です。
論理的判断や計算能力は午前
10
時から午後
2
時に高まり、短期記憶や筋運動に基づく作業は代謝の高進する午後
4
時から同
8
時に高まります。
人間が本来持っているこうしたリズムに合わせた生活のほうが、生活の質を高めるためには有効です。時間的な特性を理解して、時間と上手に付き合ってもらえればと思います。=談
【文化】聖教新聞 2016.10.14
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