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カテゴリ: 丸山真男について

前回 に引用した文に続けて、丸山は次のように書いている。

第二のグループは、われわれがみんなそれに属するのですが 、インテリは日本においてはむろん明確に反ファッショ的態度を最後まで貫徹し、積極的に表明したものは比較的少なく、多くはファシズムに適応し追随はしましたが、他方においては決して積極的なファシズム運動の主張者ないし推進者ではなかった。むしろ気分的には全体としてファシズム運動に対して嫌悪の感情をもち、消極的抵抗をさえ行っていたのではないかと思います。

「いわゆる 『消極的抵抗』 の過大評価に導きかねない」 として一定の留保を加えているかのようにも見えるが、「ナチ型のファシズムと対比する限りにおいて、本文の分析は必ずしも誤っていないと信ずる」 と書いており、基本的には変更されていないと思われる。

 戦争終結後に続々と 「戦争抵抗者」 が現れたことに、丸山より年少で純然たる戦中世代にあたる吉本隆明が、そんな者らが存在していたとはまったく知らなかった、と皮肉混じりに批評したのは有名だ。徳田・志賀のようないわゆる非転向者や、神山のような偽装転向者の他にも、知識人層の中には、一定の程度、戦争に批判的・懐疑的な者がいたのは確かだろう。

 しかし、戦後の 「近代文学」 の同人との座談会で、 「僕は政治的には無智な一国民として事変に処した。黙って処した。それについては今は何の後悔もしていない」 と言い放った小林秀雄や、戦争を賛美する詩を書いた高村光太郎、 「近代の超克」 を主張し 「大東亜戦争の世界史的意義」 を説いた、西田哲学系統の多くの哲学者たち、彼らは皆ヨーロッパの文化にも精通した、当時の日本を代表する 「本物のインテリゲンチャ」 ではなかったのだろうか。

 そのように見れば、丸山のインテリ論の一面性は明らかだろう。彼は 「日本ファシズム」 を推進した知識人の存在を故意に無視しているのか、でなければファシズムに対する嫌悪という自己の心情と、インテリとしての自己の矜持のために、そのような存在が実際に見てても見えていなかったのか、のどちらかであろう。そこにあるのは、本物のインテリであるならば、ファシズムなんかにいかれるはずはないという、先験化された単なる心情に過ぎないように思える。

 社会学者の宮台真司氏が 「丸山真男問題」 なるものを指摘している。氏によれば、これは 「丸山の戦後啓蒙がなにゆえ今日この程度の影響力に甘んじるのか」 ということらしいが、私の考えでは丸山の啓蒙なるものは一貫して、戦後社会を表面的に覆っていた知的な上層部分と、上昇主義的に知に憧れ 「論壇雑誌」 などを定期的に購読する部分にしか受け入れられてこなかったのだ。

 彼らにとっては、東大法学部教授としての丸山は、なによりも知の位階制の頂点に位置する権威であった。今日、「丸山」 的なものが凋落してしまったとすれば、それは宮台の言うような 「東大法学部教授を頂点とするアカデミック・ハイラーキーの中で、絶えず 『煮え湯を飲まされる』 存在」 である 「三流学者どものルサンチマン」 (『諸君』『正論』や 「新しい歴史教科書をつくる会」 に集うような学者は、まあ、確かに三流ではあるだろうが) などのせいではなく、単に丸山自身と、また丸山のような知識人を支持してきた社会層が、知的権威を失ったことの結果であるに過ぎないだろう。

 丸山は先に引用した箇所の先で、次のように言っている。

実際に社会を動かすところの世論はまさにこういう所 (丸山の言う亜インテリ層のこと ー 引用者) にあるのであって、決して新聞の社説や雑誌論文にあるのではないのであります。ジャーナリズムの論調が日本ではともすれば国民から遊離するのは何故であるかといえば、それがもっぱら第二範疇の中間層 (丸山の言う真のインテリ層のこと - 引用者) によって編集され、従ってその動向を過大視するからであります

 この言葉は、まさに丸山に代表される 「戦後民主主義」 や 「進歩的知識人」 の運命を自ら予言したかのように受け取れる。それはつまり、丸山自身が一兵卒として体験したあの戦争から、結局なにも学ばなかったことを意味しているのではないだろうか。






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Last updated  2009.05.19 04:22:29
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