東日本大震災 石巻市南浜町 父母を亡くして
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今、歌を習いに月に一度横浜まで行っている。 震災がなければ、 こんなこともしなかっただろう。 いつかやってみたいな、 そのうちできるかな、 「いつか」 とか 「そのうち」 っていうのは、 私の好きな黒か白かで言ったら、 限りなく黒に近いグレーなんだ。 私はグレーが嫌いだから、 すなわち、黒なんだ。 なんてこと考えてフェイドアウトしていくのかと思いきや、 歌の力はすごかった。 これ、動画やCDでは伝わらない。 個性的すぎる先生と、 それを慕って集まる生徒と、 その空気が織りなす楽譜のないコーラス教室。 笑顔が素敵だったあの人も、 いつもみんなに手作りお菓子を配るために大きなリュックを背負っていたという、 お話ししてみたかったあの人も、 まだお若いのに、突然病気でお亡くなりになった。 もう、いつか、そのうちなんてないんだ、 今なんだと思えた。 東京から向こうは、電車の乗り方なんてよくわからなくて不安だけれど、 あんなに人がたくさんいる都会だもん、 誰かに聞けば誰かが教えてくれるよね? 音楽にもアートにも、 カタストロフの前にはなんの力もないのでは? という問いがあるけれど、 実はあるんだよね。 この音楽家と出会えたのも、 あのシンガーソングライターと出会えたのも、 あの若い柔らかな心を持った学者と出会えたのも、 そして、その人たちに私の魂が救われたのはまぎれもない事実。 医者でも、ボランティアでも、私に届かなかった救援物資の力でもない。 お腹が痛くなるくらい笑ったのって、 最近いつですか? 音楽が心にしみて、自然に涙が流れたのは、 最近いつですか? 昨日歌った曲に、「風になれ」という曲がある。 発表会のために何を歌いたいかみんなにアンケートをとって決まった曲だとのこと。 私は初心者なので、そのアンケートには参加していないけれど、 見る見る間に、単調なメロディーが、 混声三部合唱につくりあげられていく。 音程を決めて、 先生のアイデアにみんな答えて、 無理なら音を下げて、 わからなければすぐに手を上げて聞く、 それを、録音録画して、 それぞれが自主練してくる形。 でも、その時の出来栄えや先生の気持ち、 会場の雰囲気で、前奏が変わったりする、 だから、「感じ」なければいけない。 みんなそれを心得ていて、阿吽の呼吸で紡ぎ出されていく。 4番の歌詞は 「あなたになれ」ではじまる。 「誰かの忠告は少し聞いて、あなたになれ」 自分の期待するあなたには、相手はなかなかなってくれない。 相手に対する自分も同じこと。 思うように行かずに、落ち込んだり、ちょっと苦しんだり、 でも何かをしなければいけない人に、 届けたい歌だ。
2018年11月15日
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