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著 者=福岡伸一(ふくおか・しんいち)書 名=動的平衡発行所=木楽舎発行年=2009.2評 価=★★★☆☆【送料無料】動的平衡「動的平衡」の概念は、既に著作「生物と無生物のあいだ」(2007.5)で詳しく述べたにもかかわらず、本書を著すということは、筆者はつくづく二番煎じや三番煎じを気にしない人なんだと思う。内容は、まさしく生物とは何かがテーマであり、生物の本質は動的平衡システムであると説いている。加えて、生命・自然・環境、ここでの現象の核心は動的平衡ですか、なんでもかんでも動的平衡ですか。少々、うんざり。動的平衡は、単に生物の持つ生理機能であり、逆は十分条件のみであり必要十分ではない。例えば、谷間に流れる渓流は、水中の岩の凹凸によって川面が持ち上がった状態で静止しているように見えるが、同じ水ではない。同じように、富士山にかかる笠雲は、空間に静止しているように見えるが、空気の温度と湿度によってその場所に次々と現れる雲が風の流れによって移動し次々と消えていく全体を見ているに過ぎない。これらは物理的には全て動的平衡だが、誰がそれを生物と言いますか・これが自然現象の核心ですか。動物の体は、摂取した食物から(分子レベルで)できていることに、何の疑問があろうか。著者の主張の新鮮さについては、全く共感できない。文章表現や取り上げる事例は素晴らしいのに、もう少し色々なテーマで著作を重ねないと飽きられますよ・・・
2011.04.23
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著 者=ジェームズ・スロウィッキー(James Surowiecki)訳 者=小高尚子書 名=「みんなの意見」は案外正しい原 題=THE WISDOM OF CROWDS発行所=角川書店発行年=2006.1評 価=★★★★☆【送料無料】「みんなの意見」は案外正しい前々から読みたかった本でもあり、面白く読めた。特に、少数の専門家の出す結論よりも、多数の素人あるいは非専門家の平均的結論の方がより正解に近い実例を個々に取り上げる前半のくだりは、翻訳が非常にうまいこともあって引き込まれる。ただ、本書で指摘するように、みんなの意見が集団を賢くする条件として、自立性・多様性・独自の判断・適切な意見集約法が成り立たないと、正しく集団知が機能しない。現実問題として、これらの全ての条件を満たす集団の成立は非常に難しく、群集心理や情報カスケードあるいは観測コスト問題によって、簡単に「みんなの意見」が正しくない方向へ進みうる。後半では、これを発展させて専門家の知恵と集合知を対比する文脈で、企業の成績は企業トップCEOの資質とは無関係であるとか、中央集権システムより自立分散化システムの方が良いとか言う主張が続くが、本書で取り上げるくだりに説得力が弱く・論理的には信憑性が低い。おそらく真実は、その中間にあるのだと思う。結局、なぜ「みんなの意見が正しく」なりうるのか、どうすれば「みんなの意見が正しく」なるのか、どのような時に「専門家の意見の方が正しい」のか等についての、論理的分析やフレームワークは本書には存在しない。この点は消化不良として、不満が残る。ただ、なにも知らないちょっと傲慢で専門家気取りの人には、「みんなの意見が案外正しいのです」と、ちょっと言ってみたくなるフレーズではある。
2011.04.23
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著 者=ナシーム・ニコラス・タレブ(Nassim Nicholas Taleb)訳 者=望月衛書 名=ブラック・スワン [下] -不確実性とリスクの本質原 題=THE BLACK SWAN発行所=ダイヤモンド社発行年=2009.6評 価=★★★★☆【送料無料】ブラック・スワン(下)ブラック・スワン[上巻]は、もう半年以上前に読んでいたが今回、ようやく下巻を読んだ。本書で言う、ブラックスワン(黒い白鳥)とは、誰もが白鳥は白いと思っていた時に、たったの一羽でも黒い白鳥が発見されたらその常識は覆される意味の象徴で、「まずありえない事象」を意味している。筆者が徹底的に批判していることは、稀な事象の起こる可能性が全体に大きな結果や影響を及ぼさない「ガウスのベル型カーブ」すなわち正規分布である。世の中は、地震のマグニチュードの分布のような自然現象、株価の変動率・ボラティリティの分布のような経済現象、あるいは人間の保有資産のような人為的な値の分布は、ありうる非常に大きな値そのものが全体に大きな結果や影響を及ぼす現象に満ち溢れている。どうしても人は(私も含め)、ランダムな値をとる分布の形状は、なぜか正規分布であると信じていたし・そのことに何の疑問ももっていなかった。そうじゃないんだ、現実はもっと複雑であり、それは間違っていると筆者は指摘する。この点に、読後感として非常に感銘を受けた。今回の3.11東日本大震災で、地震の大きさ・津波の高さに関して、想定事象やリスク管理また不確実性の話題もあるが、そこに関連付けてはあえて触れない。ただ言えることは、みんなの意見として「原子力発電みたいなものについては、想定外の事象が発生した際にも、事前になんとか備えとくのが常識だろう、それをしていなかった企業が悪い」というのと、「想定外の高さ津波が、想定された津波の高さに備えていた防潮堤を乗り越えて甚大な被害が生じても、それは自然現象で誰も悪くない」という世の中の世論であることが分かった。本書の内容は、少々まわりくどいし訳が直訳すぎて分かりづらいのが本書の欠点ではあるが、核となる常識を覆す主張は、インパクト大であった。
2011.04.23
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著 者=スティーヴ・ジョーンズ(Steve Jones)訳 者=岸本紀子、福岡伸一書 名=Yの真実 危うい男たちの進化論原 題=Y:THE DESCENT OF MEN発行所=化学同人発行年=2004.8評 価=★★★☆☆男だけが持つ染色体Yを巡る本である。Y染色体は、アダム遺伝子と呼ばれその遺伝学上の歴史を辿れることから人類(の男)がどこからやってきたのかの指標となったり、男はどうして男になるなのかを科学的に解明する手法となったりする。これらは、「人類の足跡10万年全史」(スティーヴン・オッペンハイマー)や「できそこないの男たち」(福岡伸一)に詳しい。本書は、その魁あるいはネタ本と言える本である。ただ、本書はサイエンスものというよりも、男に関する個別の様々な話もあり、もう少し下品である。具体的には記述しないが、書けば文章コードに引っ掛かりそうな話題も満載である。そういった意味で、男そのものを扱う先駆けとなる本ではあるが、あまり世に出てこなかった理由も分かる。
2011.04.10
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著 者=水月昭道(みづき・しょうどう)書 名=ホームレス博士 派遣村・ブラック企業化する大学院発行所=光文社、光文社新書479発行年=2010.9評 価=★★★☆☆【送料無料】ホームレス博士前作「高学歴ワーキングプア」の第2弾の本である。といっても、内容・主張は前作とほとんどかわりない。前作がインパクトがあった分、2番煎じ感はゆがめない。少し自分自身の処遇の事など具体的な実例が増えた気はするが、相変わらず信憑性のある具体的数字が乏しく、勢いだけで書かれているように見えるのも大変気になる。表題のホームレス博士も売らんがためのインパクトを込めた「受け狙い」のように思える。なにか資格を取得したからといって職が舞い降りてくるわけではなく、同じように大学院卒・博士という資格・学歴だけで自動的に職が手に入れるはずもなく、もはや主張は「犬のとうぼえ」に近くなっている。このままでは、結局、筆者は「終わった人」で、本書は「残念な本」になりさがってとしまうだろう。
2011.04.10
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著 者=福岡伸一(ふくおか・しんいち)書 名=世界は分けてもわからない発行所=講談社、講談社現代新書2000発行年=2009.7評 価=★★★★☆【送料無料】世界は分けてもわからない名著「生物と無生物のあいだ」や「できそこないの男たち」の作者による著作である。著者は、本職は分子生物学者なんだろうが、本当は恐らく作家、特に本格的な教養と医学的知識を身に付けた一般向けのサイエンスライターを志しているのであろう。そんな作者の気概が、文章構成や文体に随所で見受けられる、挑戦的かつ実験的な作品である。一見脈絡のない個人的な体験やその場所で感じた思い・筆者の主張を章ごとに紡いでいく文章構成方法は、既にサイエンスライターあるいはエッセイスト大家である故スティーヴン・ジェイ・グールドやリチャード・フォーティと似通った手法である。もちろん、その域に達するのは幾多もの困難があるとは思うが、売れたら駄作でも何でも良いと考えている勝間和代のような著者とは全く違って、応援したくなる気持になる。途中で取り上げる話題も時としてとても新鮮だ。最初の人間は視線を感じることができるかどうかもそうだし、中段のES細胞の特徴の説明として比較する人間の性向としての「マップラバーとマップヘイター」の話も面白い。結局は、後段の章の「癌化メカニズムの解明」(リン酸化カスケード)をめぐるどろどろとした科学者の性(サガ)に全ての話題はつながってゆくのだが、文章構成はみごとと言えよう。ただ、本当に表題が「世界は分けてもわからない」が最適なのかは疑問だ。筆者は、複雑なメカニズムは因果関係も複雑なので単純に構成要素に分けても分からないとの主張だが、さりとてではどうすればよいのかの答えはない。複雑な現象を構成要素に分けることそして因果関係を追及する手法をとることは、自然科学でも人文系学問でもどのような学問でも共通である。例えば、経済学の市場メカニズムでも、経営学の企業戦略でもそうだ。自然科学では、宇宙物理もそうであるし、理学・医学・工学でも同様だ。だた、「雲の発生メカニズム」や「意識するという脳のメカニズム」、「地震発生メカニズム」がよく分からないといって、分けてもわからないというあきらめや思考の中断の気持ちに近い感覚を持つ科学者はいないのではないだろうか。広く識者にも共感を呼ぶ意味でも、もう少し進めて表題を考えて欲しかった。
2011.04.10
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著 者=田沼靖一(たぬま・せいいち)書 名=ヒトはどうして死ぬのか 死の遺伝子の謎発行所=幻冬舎、幻冬舎新書180発行年=2010.7評 価=★★★☆☆【送料無料】ヒトはどうして死ぬのか表題の「ヒトはなぜ死ぬのか」という問いかけは、本書においては哲学的な問いではなく、純粋な生化学的問いである。その答えは既に一般的に知られているが、アポトーシスと名付けられた生物の細胞のDNAにプログラミングされる細胞死が存在するためで、これは生命が遺伝情報を子孫に伝達する方法として、単なる細胞分裂でなく、互いのDNAを交換する「オス」・「メス」という性を遥か昔に採用したことから始まったとしている。確かにもっともだと思うが、受精・発生の緻密な生命のメカニズムについて、人類が分かっていることがあまり多くない事実がある中で「死の遺伝子の謎」の解明だけでは、とても十分とは言えない気がする。ただ、生命科学の領域で、脳の解明と発生機構の解明がもっともフロンティアであることを考えると、少し消化不良だがこうしたアプローチもあながち間違いではないとは思う。
2011.04.10
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平成23年3月11日に東北・関東で発生した大地震と津波、そしてこれに続く福島第一原子力事故と関東地方計画停電の実施、この1カ月、ほとんど直接的に影響のない東京に住む私自身の身近にも様々なことが発生した。いまだに多数の行方不明者発見にいたらず、避難所での生活が長期にわたり、被災地でのがれきの処理も進まず、原発の炉心冷却も終息しない中、それでも救出・復興・復旧や支援に頑張っている数多くの人々がおり、被災地や福島原発周辺の人々に関しては、本当に心が痛みかつ心から応援する気持ちになる。一方、こういった非日常時に、比較的あまり影響のない東京に住む知り合いの行動や考え方について、改めて分かったことがある。東京からあてもなく逃げ出す人、水や食料品を必要以上に買いだめする人、訳もなく不安をあおる人、そしてなによりも不安をあおることが正しいことと思っているおせっかいな人、もういい加減うんざりだ。非常に身近な知り合いや関係者でさえ、ある程度の理由はあるにせよ、その人の中味がこうしたうんざりする種の人間であったのかと思うと、とても残念な気持ちになるとともに付き合い方も少し変えるべきだと思う次第であった。
2011.04.10
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