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2024.12.27
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カテゴリ: Figure Skating (2023-



坂本、島田、樋口、千葉という順位になった。

採点傾向を見ると、回転不足のうち、軽度のq判定はかなり厳密に適用された印象。また演技・構成点(プログラムコンポーネンツ)は5項目時代に比べて3項目になった現在のほうが選手間に差が「つく」ようになってきている。

Mizumizuはかねてから、回転不足や不正エッジを厳しく見るのは、それはそれで構わないけれど、軽度ならば減点は極力抑えるべきだと主張してきたが、昨今の判定を見ると、そうなってきている、と思う。特にイチャモンのようなエッジ判定で。

例えば、樋口選手のフリップ。これに執拗につく「!(アテンション)」がMizumizuはずっと気になっている。樋口選手のフリップは、Mizumizuにはインサイドで踏み切っているように見えるのだが、中立くさいとイチャモンつけられれば、それはそれでまぁ仕方ないかもしれない。

しかし、例えばショートの樋口選手のフリップには、!がつきながらGOEにマイナスはなく、逆に+1をつけたジャッジも複数いる。加点は抑えられているとはいえ、ジャンプの質自体は評価されていると考えていいだろう。

だが、これも何度も言ったが、なぜ樋口選手はショートでフリップにこだわるのか。樋口選手の場合、ループのほうが加点をもらえる。自分ではしっかりインサイドで踏み切っているつもりでも、多くの場合、イチャモン判定がつくのは明らかなので、一度ショートのフリップをループに変えて得点の傾向を見てみたらどうなのだろう。

回転不足判定が厳しくなると、不利になるのは島田麻央選手のように、3アクセル、4トゥループを跳べる――あるいは少なくとも、試合で着氷できるレベルに達してきている選手だろう。今回Mizumizuはスマホで演技を見ていたので、細かい部分は見えなかったのだが、島田選手のショートの3アクセルはやや足りない着氷だと思った。逆にフリーのほうがきれいに見えたのだが、判定は逆でショートの3アクセルがq判定、フリーは<判定だった。

フリーの<判定は、いくらなんでも厳しくないか? と思ったが、見る方向によっては、かなり足りない着氷だったのかもしれない。判定が正しいかどうかは神のみぞ知るなので、脇に置いておいて、島田選手が3アクセルやその上の4トゥループを跳ぶかぎり、回転不足判定は付きまとうということだ。

フィギュアスケート選手のジャンプのピークがいつなのか、それはもちろん個人差があるが、女子選手の場合は体の軽いジュニア時代のほうが跳べる。ベテランになるにしたがってジャンプは重くなり、回転不足が増えてくる。今、島田選手があれだけのジャンプを跳んでも、qやら<やらが付いているという状況を見るに、これから大人になって回り切った3アクセルや4トゥループを跳べる未来が待っているとは、なかなかに想像しがたい。

こういう話をするのは、 紀平梨花の先例があるからだ。

今、坂本選手のポジションにいるのは、怪我さえなければ紀平選手だったかもしれない。しかし、現実は試合にさえ出てこれない状態だ。難度の高いジャンプに挑戦したことが、紀平選手の選手生命に重大な影響を及ぼしたことは否定できないだろう。

島田選手の強みは何か? トリプルアクセル? 4回転トゥループ? もちろんそう思っているファンは多いかもしれない。だが、本当は島田選手には隠れた大きな強みがある、とMizumizuは思っている。それはルッツ、フリップの踏み分けだ。

今回の全日本、坂本選手のルッツにも千葉選手のルッツにも1つアテンションがついた。どちらもルッツからの連続ジャンプを跳んだ時だ。樋口選手のフリップは何度も話題にしたとおり。その中で、島田選手にはルッツにもフリップにもアテンションなし。地味に見えるが、これは非常に大きなアドバンテージではないか。

それからもう1つ。セカンドにつける3T。これも多くの選手が回転不足を取られるが、島田選手はクリアしている。樋口選手は3ルッツからの3Tを跳べる選手だが、2つ目のジャンプは垂直跳びになりやすく、qだけではく、それ以上の<を取られることも、年齢が上がるにつれ増えてきているように思う。もったいない話だ。

坂本選手は今回フリーでセカンドに3Tを跳ばなかったが、あれだけ質の高いジャンプを跳ぶ坂本選手でさえ、2つ目の3Tはあやういことがある。

だから、島田選手は高難度ジャンプに挑戦するより、1つ1つのジャンプをもっとダイナミックに大きく跳んで、加点を引き出すほうに注力したほうがよいのではないか。今回は失敗したが、成功した島田選手の4Tを見ると、かなり幅も高さもある。大きなジャンプを跳ぶ素質は十分にある。だが、高難度ジャンプに挑戦してしまうと、そこで体力が奪われるから、他のジャンプはどうしても省エネになってしまって加点を引き出せない。加点を引き出すジャンプのほうに、体力を使うべきではないか。

もうひとつ、採点の大きな傾向として、演技・構成点(プログラムコンポーネンツ)の比重が、5項目時代よりむしろ3項目時代になって上がったこと。これは多くの観客の予想に反する傾向だと思う。つまりジャッジは、選手間の演技・構成点に、5コンポーネンツ時代より「差」をつけているということなのだ。

ジャンプの基礎点だけで順位が決まるのではなく、滑りやつなぎの密度、表現力をより注視しましょうということだ。3つに項目を絞ったほうが、ジャッジも細かく見て採点がしやすいと思う。その結果なのか、あるいはISUの方針なのか、1位と2位を争うトップ選手間にも、以前以上に演技・構成点の差がでるようになってきている。

高難度ジャンプを入れると、どうしてもそちらに体力が奪われるから、細かい表現まではできなくなってくる。島田選手が力を入れるべきは、高難度ジャンプより、むしろこちらなのだ。今回のフリーの点をみると、技術点では島田選手が坂本選手を7.31点も上回っているが、演技・構成点で12.65点もの差をつけられた。

この点差が妥当かどうかの議論は脇に置いておこう。どのみち妥当か妥当でないかなど、主観が入るから正しい答えはでないのだ。Mizumizu自身はトップを争う選手同士の差は、あまり露骨につけないほうが公平な採点に「見える」と考えているが、一度こういう流れになると少なくとも次のオリンピックまではこの傾向が続く。

つまり、フィギュアをジャンプ大会にはしない。ギリギリの高難度ジャンプで攻めるのではなく、すべてのエレメンツをブラッシュアップしたプログラムを披露した選手に高い評価を与える。今季の採点の流れを見ていると、審判団はそう言っている。

例えば樋口選手は、3Aも跳べるが、跳ばないほうが強いのだ。成功することもあるが、失敗が多い状態では、高難度ジャンプは武器ではなくむしろ足を引っ張る要素になる。今の採点では、とりわけ。

島田選手には正確なルッツ・フリップの踏み分け、高い精度の連続ジャンプのセカンド3Tというアドバンテージがある。だが、つなぎの密度や表現の多彩さでは、坂本選手には遠く及ばない。もちろん島田選手はきれいに滑っている。だが、やはり全体的に滑りが淡泊で物足りない。いや、これはむしろ当然なのだ。フィギュアスケートに味が出てくるまでには長い年月がかかる。といって、ベテランになりすぎても、今度は体力がガタッと落ちるから、そうなるとピークを過ぎた選手ということになる。フィギュアスケート選手の命はやはり、短いのだ。

短い選手生命の中でどこに重点を置くべきか。島田選手にはその方向を見誤ってほしくない。






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最終更新日  2024.12.28 02:55:08


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