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復活第一弾(大げさだ)がこれというのもどうかと思うが、近年の日本映画で一番気に入ったといっても過言ではないこの映画が、私は好きだ。これを見たのはたしか6月。パソコンが危篤状態だったとはいえ、よくぞ何も書かずにいられたと思う。そしてこのブログ、二カ月余り放置していても、カウントも上がってるしトラックバックもたくさんいただいた。多すぎてすべてをお返しできませんが、ありがとうございました。これからしばらくはここ二カ月で見た映画とこれから見る映画とまぜこぜで書いていくことになると思います。というわけで、『アウトレイジ』である。この映画、見ようと決めたきっかけはCMだ。あの、海岸沿いの道に死体が一つ転がっている。頭に袋が掛けてあるため顔はわからない。そして死体の脇を、ゆっくりと、ヌメヌメとした黒塗りの車が通って行く・・・。ああ観たい、という衝動が走ったのをいまも覚えている。そして同時にしてやられた!という感にもなった。あれを見せられて、見に行きたくならない映画ファンがいるだろうか?あのCMは誰が作ったのだろう、北野武本人だろうか、本人のような気がする。黒澤だって、CM予告編は自分で作ったのだから。面白くないシーンなんか一つもない。乱暴なようでいて、1カット1カットは艶めいていて美しいほどだ。冒頭の、法事が終わるのを待つヤクザ達をとるシーン。もうこれでまたヤラレたんだな・・・暑さと倦怠、フラストレーション。それでいて秩序がそこにある。このシーンのあとの、黒塗りの車が列となって道路を走っていくシーンも同じ。ああ、季節は夏。春でも冬でも秋でもなく、真夏。暑さで男たちは汗にまみれ、車の姿は熱気で揺らぐ、みんな瓦解寸前。この秩序が崩れていくのだ、という不安をあおりたてる音楽(音?)。計算ずくだとわかっていてもヤラレテしまう。こんなカットを撮ってしまう監督だからか、俳優陣も熱の入り方がすごい。生きている間にキャラクターに入り込んだ演技をしているから、殺されるときのあっけなさが際立つ。生き残った奴はまたさらに際立つ。最初はチンケに見えていた加瀬亮が、右肩上がりに凄味を出していてたまらなかった。まっとうに生きようなどという輩は一人もおらず、一人残らず我欲にまみれたアホだ。椎名桔平演じる水野とたけしの演じる大友だけが、少しばかり毛色が違うが、所詮は単なるチンピラだ。ここで描かれる悪は、たとえば『告白』で描かれたような人間性を深く考察するような悪ではなく、巨大であらがいようもない巨悪ですらなく、じつに矮小な悪でしかない。それなのにこれほど面白いのはなぜだろう。あまりに矮小すぎて、私はこの悪党どもがえらく身近に思えた。昨今のITヤクザだ経済ヤクザだという輩より、この一昔前の愚かなヤクザが人間的に思える。われわれ大衆の中から生まれたものだと思える。誰もが持っている、阿呆な自分、難解な悪ですらない、ただの愚かな自分。それを余すところなくさらけ出し、好きなだけ殺し合いをさせている北野武に、正直惚れてしまいそう。コーエン兄弟や、タランティーノの作品と同種の香りがすると思うのは、私だけだろうか。映画というものはその出自からして見世物・娯楽としてのDNAが基本にあって、そこから深く人間性を考察したり内面を掘り下げたりしたものを表現する手段として、発達したにすぎないんだと思う。娯楽というのは別に感情としての「楽しさ」ではなくて、非日常感覚を自分のことのように感じるできることだ、と思ってもらえばいい。私がアート系の映画を敬遠する理由はそこにあって、その手の映画は確かに非日常ではあるが、一方で、映画の作り手である「あなた」のことばかり書いていて、「私」にどう思って欲しいのかがさっぱりわからなくて見ていてこまるのだ。北野作品はその幅が極端で、すごく自分が彼の映画に寄っていくこともあれば、えらく遠い世界のような気がすることもある。本人もヤバいと思っていたらしく、パンフレットにある当人のコメントにこうある。「映画館で金をとっておいて、あんまり個人的なことばかり見せるのも、なんか変だよなって気がついてさ(笑)」(『アウトレイジ』パンフレット「北野武『アウトレイジ』を語る」より)世界の北野武ですらこう思うのだ。ともすれば単なる自己主張映画を撮りがちな、若い映画人は心して欲しいものだ。観客は「あんた」のことを知りたいんじゃない。「私」を楽しませてくれるものを見に来たのだ。
September 25, 2010
お久しぶりです。猛暑で倒れていたわけではありません。倒れていたのは私ではなく、パソコンでした。こんなに休んでたのに、思っていた以上のアクセス数があってびっくりです。ほんとにありがとうございます。もうかれこれ6~7年前の自作デスクトップPCくん。もっとも7割がたは人様に作ってもらったが・・・。グラフィックボードをわざわざのっけて当時としてはかなりのハイスペックマシンだったおかげで、世の進化にもなんとかついていった、ご自慢のパソコンだったのだ。でも、人類の進化にはついていっても今年の異常気象には勝てなかったようで、この夏は部屋の冷房を20度に下げても30分もしないうちに熱暴走を起こして落ちちゃってたのだ。先月末には、落ちるまでの時間がついに30分から10分になり、それでとうとう諦めてパソコンを買いに行ったのだ。今回はノートパソコン。紆余曲折の末、某家電量販店(値引きが自慢の店ではない)にて、COREi5でメモリ4GBで15.6インチでofficeプリインストールのノートパソコンが、ちょっとびっくりの値段で購入できてウハウハ。ネット中心に使うのがもったいないくらい。せっかく買ったがたまったネタを更新するには今度は仕事が忙しい。体力温存のために、もうちょっと休みます。
September 5, 2010
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