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2026.07.29
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カテゴリ: 報徳
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報徳外記

(現代語訳)
 第十八備荒(下)
 衰廃の国は、飢饉に備えた備蓄が十分でなく、一度飢饉の年にあって、老人は路傍で倒れ死に、壮年の者は四方に離散し、餓死者の死体は道に満ちる。これはもともとは国君の失政によるが、これを哀しまい者がいようか。もし正しい道にかなった国君が、余った穀物を譲って隣国に及ぼそうとすれば、その救助するに道が有る。まずその領内の村において飢えに迫る村を投票させ、その村を挙げて、分って三等に分け、上を無難とし、中を中難とし、下を極難とする。
明らかに上等の無難の者に諭していう。汝、無難の民は、この凶作にあたり単に飢渇を免れただけでなく、穀物の価格が上昇したために利益を得たのは、普段から勤勉・倹約したことが報いた所である。極難の民は、飢渇に迫って飢え死にを免れないのは、常日頃の遊び怠ったことに応じた所である。勤勉・倹約で幸福を得て、遊び怠って禍いを得る、これ理の必然である。そうであれば貧困や飢えに迫る者は、自ら招いた天の罰であってあわれむに足らないといえる。しかしながら、昔から村を同じくし、同じ水を飲み、同じ風に浴し、病気があれば助け合い、葬儀のときは弔いあい、苦楽を共にすることは、一朝一夕ではない。かつ乞食のようなものは、もとから無頼の凶人であって財産を失いさまよっている。どうして憎むべき者であろうか。なおかつ一銅銭を施し、一つかみの米を与えるのは、人として常の情である。どうして同じ村の民を、立ったままでその死を見る道理が有ろうか。汝はそれこれを救済することを欲しないか。同村は同体であってなおその死を救済する心が無いならば、私がどうしてこれを救済する道理が有ろうか。汝らが、これを救済することを欲するならば、私は無利息の穀物を貸しだすであろう。しかしながら、朝か夕に命を失いかねない困窮の人民は、そうしてその債務を償還できよう。だから無難の民は、日ごとに五銭を積んで、中難の民は、日に三銭を積んで、極難の民は、日に一銭を積んで、五年で償還するがよい。五銭三銭の僅かな金は、これを物乞いの子供に施すことができよう。来年もし穀物が稔るならば、汝の村が施さなくても、また物乞いの子供も飢えないですむだろう。これが未来の豊作によって現在の飢渇を救済する方法であると。このように諭し終わってその村に臨んで、毎戸にその貯えた穀物を調査し、一人当たり一日五合を基準として、その足らないことはこれを足し、あるいは孝行な者は富んだ家に下僕とし、壮者で強健である者を荒地を開墾させて、食を得られる職に就かせる。あるいは老人・子ども・虚弱な者には草刈をさせて養い、明くる年、麦が実って米や金銭を与え、家に帰らせる。このようにして無利子貸付、飢饉救済の方法を施すならば、一国の人民は生活を全うすることができる。はたしてよく五年で償還することを得るときには、倉庫は穀物を損ずることなく、国は一人の人民を失わない。
ああ、これはやむを得ないときの方法に出たものである、またどうして平時の予備があることにまさろうか。

 第十八備荒(下)
 衰廃の国、備荒全からずして一度饑歳に遇ひて、老贏は溝壑に転び、壮者は四方に散り、餓莩は塗に満つ。是れ固より邦君の失政に因ると雖も、誰か之を哀しまざらんや。若し其れ有道の邦君、余粟を譲りて以て与国に及ぼさんとす、則ち其の之を救ふに道有り。先づ其の封邑をして飢に迫るの邑を投票せしめ、以てその邑を挙げて、分かちて三等と為し、上を無難と為し、中を中難と為し、下を極難と為す。明らかに之に諭して曰く、汝無難の民は、此の荒歉に啻に飢渇を免れたるのみならず、穀価翔貴の為利を得るは、平素勤倹の報ずる所なり。其れ極難の民、飢渇に迫り餓莩を免れざるは、生平遊惰の応ずる所なり。勤倹以て福を得、遊惰以て禍を得、此れ理の必然なり。然らば則ち貧困飢に迫る者、自得の天譴にして以て恤れむに足らざるなり。然りと雖も、世々邑を同じうし、同水を飲み、同風に沐し、疾病相ひ扶け、死葬相ひ弔し、苦楽相ひ倮にすること一朝一夕に非ざるなり。且つ乞児の若きは固より無頼の凶人にして産を失ひ漂蕩す。豈に悪む可き者に非ずや。猶ほ且つ一孔銭を施し、一掬米を与ふるは、人の常情なり。豈に同邑の民をして、立ちて其の死を見るの理有らんや。汝、其れ之を済ふを欲せざるか。同邑同体にして尚ほ其の死を済ふの心無ければ、則ち我に於て何ぞ之を済ふの理有らんや。汝、即ち之を済ふを欲せば、則ち我が無息の粟を賑貸す可し。然りと雖も、朝に夕を謀られざるの困民は、何を以て其の債を償はん。故に無難の民、日に五銭を積み、中難の民、日に三銭を積み、極難の民、日に一銭を積み、五年を以て償還す可し。其れ五銭三銭の微、之を乞児に施す可し。来歳若し稔らば、則ち汝が邑施さざるも亦た乞児飢ゆべからず。是れ未来の豊登を以て見在の飢渇を済ふの術なりと。諭し畢りて其の邑に臨み、毎戸に其の貯穀を検し、一口一日五合を以て率と為し、其の足らざるは之を足し、或いは孝弟なる者をして富家に僕とし、壮強なる者をして荒蕪を墾きて以て口食に就かしむ。或いは老小羸弱なる者をして之を草廠に養ひ、明年麦秋に及びて米銭を与へ、以て家に帰らしむ。則ち是くの如くして賑貸救荒の術を施さば、則ち一邦の天民全活を得。果たして能く五年を以て償還するを得るときは、則ち廩は一粟を損せず、国一民を失はざるなり。嗚呼、是れ已むを得ざるの術に出づ、又た何ぞ平時の予備あるに若かんや。





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最終更新日  2026.07.29 00:00:11


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