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我が家の近所には「境川」という川幅十メートルほどの川が流れている。そう綺麗な川では無いが、時折「カワセミ」が川辺に姿を見せ、天気の良い日には四~五人の週末カメラマンが集まることがある。 カワセミは、バードウオッチャーにとって「シグナルバード」というのだという。羽の色青く澄み、腹は熟れた柿のような毛色をし、生きた魚しか食べず人に懐く事は無い。その孤高な美しさに人は自然と魅せられて行く。実際にカメラを向け静かにその動作を見守っていると確かにその美しさはただものではない。 では「石拾い」にとって、「シグナルストーン」は何なのだろうか。 どうやら、それは「水晶」であり、人によっては「水晶に始まり水晶に終る」という言葉をいう人も居る。実際私が中学だか高校に鉱物学を勉強した際、一番印象に残ったのは透明に光り輝く「水晶」であった。なんて綺麗な石だろう。手にとって見るとひんやりと冷たくなんとも神秘的。残念ながら大学は物理学、生体工学の方に進んでしまったので鉱物学との縁は薄くなってしまったが、初めて鉱物標本を目の前にした時の感動は二十年以上経過した今でも薄れる事は無い。 初めて昇仙境に行った時は、怖いもの知らず。高速を抜けてからはとにかく頂上を目指して車をかっ飛ばして行った。ぐるぐると車酔いすることも厭わない。とにかく一秒でも早く水晶をゲットするのだーという勢いである。 が、 どうやらここは相当の人気スポットであるらしく「探しても探しても、駐車場が無い!」 見つからないのだ。全然車を止めていられない。 公営の無料駐車場は勿論、有料駐車場さえも止めることができない。川の周りをフラフラ、フラフラ。最期は川の一番上にある滝側の売店の駐車場に二時間限定で止めさせて貰うことが出来た。ヨロヨロの娘の表情に不憫さを感じてくれたのだろうか? その後その駐車場に止めようとする車が来たが、おじさんは中に入れなかった。「二時間以内にこのお店で買い物をして戻ってきてくれれば無料ですから」「あ、ありがとうございます……」 既に自宅を出て五時間以上が経過。 フラフラとバスケットにしまっておいたサンドイッチを出し川岸で食べる。おいしい……川岸には「川に立ち寄るべからず」という文字の手前に座り込むこと十五分。一応気にはかけながらも目は皿のようになって水晶を探していた。娘はまだ自然に落ちた「水晶」がどのような形をしているかを知らない。私自身この川に本当に「水晶が落ちているのかどうか」半信半疑。中々見つからないのでぼーっとしていると背後から娘の「あった!」という声が響く。何? 本当か? と側によると氷柱型の結晶がついた娘の手のひら程の水晶がそこに握られていた。「ほ、本当だ。確かにこれは水晶だ。これはすごい」 ある。と分かれば後は簡単。 後にも先にも氷柱型の水晶を見つける事はできなかったけれど、いくつかの水晶のかけらを発見しお土産に持ち帰ることができた。「川には水晶が落ちていることもある」「水晶は山から生まれる」「良く見ないと水晶は見つからない パパの側にいることが大事」 娘は最初に見つけた水晶に「リドリーナ」という名前をつけ、宝箱に大切にしまいこんだ。他の石はというと友達にあげてしまったり、死んでしまったインコの墓石に使ったりと用途はたくさん。まさかその時はこの「水晶取り行脚」が我が家毎年の恒例行事になろうとは考えもつかず。「とにかく水晶が見つかって良かった」「疑ってごめんなさい。パパの記憶が正しかったのね」 と石からのシグナルをピピピと娘が感じていたのには気がつかず、私はやれやれと胸をなでおろしたのでありました。ミレディ最新作★中国茶トリビアの泉★現在楽天BOOKSで絶賛発売中買えない場合は直接送ります。メールにてお問い合わせ下さい
December 18, 2006

水晶を探して■娘の疑問 我が家には三歳と八歳の子供がおり、私は家で仕事を請け負いドタバタと日々生活している。一時期は打ち合わせとなると土日を利用していたが、最近は娘が小学校、息子が幼稚園に行くようになったのを良いことに「平日午前中」を打ち合わせの時間に当てるようになった。個人事業主である私の取引先となるのは中小企業そして、週末起業している個人なのが多い。「え、土日あいてないんですか?」「休日は遊ぶのに忙しくて、出て来れないんですよ」 よくもまあそれで受注できるものだと思うが、結構何とかなってしまうのだから恐ろしい。数年前に比べ在宅で仕事を請け負う人の社会環境は値段が安くなった分格段に良くなってきている。日給二万円で夜中の二時までインターネット・サーバーの置かれているお台場のデータセンターにて作業をする。高いのか、安いのか。相場から考えるとかなり安い価格ではないかと思う。「できれば休日も出て欲しいんですけどね……」と苦虫を噛み潰すクライアント。私が遊びまわっている間、彼はパソコンと闘い残った作業を進めるという。「もう予約入れてしまっているんです。月曜日にまた来ますから」 週末私がいない理由。それは簡単。文字通り「遊びほうけて」いるからだ。 近い所では箱根、伊豆。遠い所では伊勢志摩、アメリカ、沖縄などなど。週末の短い休みを使って家族皆で月に一度は旅行に行く。本来なら日帰りをした方がお得なのかもしれないけれど、カローラスパシオに家族四人で元気に乗り込み、一泊六千円程度のビジネスホテルに家族で泊まり、「ビンボー旅行」ライフを楽しんでいる。二つのベッドに家族四人が寝るのは至難の技であるが、やろうと思えばこれが結構何とかなってしまうものである。「いいのよ。その分私が働いているんだから」 一生の内、親と旅行する数は十回と言うデータを見たことがあるが、こと我が家に関しては年間で十回は越える旅行を繰り返している。いつどこに行くかはあまり決めない。大体において旅のきっかけは娘の何気ない疑問から始まる。「真珠ってどうやって作られるの?」 口で説明するのは簡単であるが、実際見たほうが早い? と真珠島。人造真珠の本家三重県にある「ミキモト」本社工場まで出かける。実際に真珠の製造工程を見学し、真珠を作るには「真珠貝に外套膜をつけた核を入れ二年間海の中で寝かせる必要がある」ということを学習するのである。「のび太の恐竜に出ていた恐竜の卵は本当はどのぐらいの大きさなの?」「イルカと一緒に泳ぐことって出来るの?」「塩はどうやって作られるの?」「水晶はどうやって作るの?」 質問の内容は多岐に渡る。そして最期のかなり古い質問をしたのは思い出せば四年前のことだった。人造の私がビーズ細工で使う「スワロフスキークリスタル」のことかと聞くとそうではないらしい。どうやらゲームの隠しアイテムとして「水晶」という石が出て来、どうもそれに興味が湧いたようなのだ。「ママは良く知らない。ただパパが高校生の頃、川でたくさん拾って集めたって言ってたことがあるよ」「川で拾えるの! それはすごい。それはどこ?」「えっと、大分前に聞いたからなあ……どこだったっけか」 それは山梨県昇仙境。 うろ覚えの記憶。しかも「落ちているかも分からないのに」出かけて行く。その当時息子はまだ生まれていない。朝早く家を出、一般道から相模湖のインターチェンジに入り中央道へ。おりしもその時期は紅葉舞い落ちる秋の一番込む季節であった。「もう二十年以上前の話だからなあ。本当にあるかは分からんよ」「でもパパは昔拾ったんでしょ。だったら可能性は高い。絶対に行かないと!」ミレディ最新作★中国茶トリビアの泉★現在楽天BOOKSで絶賛発売中買えない場合は直接送ります。メールにてお問い合わせ下さい
December 13, 2006

おはようございますミレディです。やっとアメリカ旅行記・ようやく書き終わりましたー11/7からですから今日で一ヶ月と五日書いていた事になります結構毎日頑張って書いたような気がしますがこれでやっと原稿用紙160枚ぐらいなのです。実際公開しなかった部分のテーマとしては「グリーンカード」「アメリカは無痛分娩が九割」「利点・欠点」等々があります。現在ブログにて荒くザクザクに書いた原稿をセコセコ時間を見つけては推敲して直しています。書き始めた時は「私の24」という題をつけていましたが今は「パラシュート・ガール」という題にしています理由としては……その内全原稿を公開したら分かるかなと思います*出版化は現在未定。「企画のたまごやさん」にて http://tamagoyasan.net/index.html 本日企画書、原稿が出版社250社、編集者800人に公開されることになっています 明日からは新しい旅行記です。「水晶を探して」という題で書きます。ちなみに週末は沖縄に行って来ます。「水晶を探して」が書き終わったら、「沖縄」について書く予定ですではまたミレディ最新作★中国茶トリビアの泉★現在楽天BOOKSで絶賛発売中
December 12, 2006

飛行機はほぼ定刻にランディング姿勢を取り日本へと戻ってきた。 心の修行不足のせいか、本への誘惑を断ち切ることができず、殆ど寝ることができず飛行機を降りることになってしまった。そうそう。忘れる前に……と携帯の電源を入れると三本ぴしっとアンテナが立った。ああ、戻ってきたんだなあと入国審査に続く道を歩いている間にも旦那から電話があった。「おう。降りてくるの見えたぞ。ご苦労様」「お迎えありがとう。これから入国審査だけど、そう大したことは無いと思うから」 まだ会っていないのに、家族の声を聞くだけでほっとしてきた。 日曜日という事もあり、私の帰国を全員で迎えに来てくれたのだ。入国審査は勿論日本語で、ターンテーブルから出てきた荷物の中身も開けられることはなく、家族の待つゲートまでスタスタと行くことができた。「ただいまー」 三歳の息子と八歳の娘が駆け出してきて抱きしめてくれた。 息子はともかくとして娘が抱きついてくるなど珍しいことである。旦那に荷物の山を渡し、バッグが増えたことを簡単に説明する。荷物は入ったのだが、諸事情により分割したのだ、と。「このバッグはどうするんだ?」「あ、妹のだから実家に置いてくるから大丈夫」 全く買いすぎてからに……という迷惑顔の旦那の横顔さえもなぜか懐かしく感じる。 帰宅後は子供達にお土産を渡し、一段落。色々と話がしたいのもあるけれど、気が付けば朝起きてから食事は既に四食を食べ、二十時間以上起きっぱなしであることが判明。やりたいことはたくさんあるけれど、旦那のいうことに従いその日はそのまま大人しく寝ることにした。とろけるように身体の力が抜けて行く……やっぱりこの蒲団、この枕じゃないと私は眠れない……「やっぱり日本が、家が最高だね」 国際結婚の難しさというのはまずは言葉の壁。意見の相違にどれだけ耐えられるか。 その間を上手くやって行くのは子供の存在。妹の子供は生まれながら日本語、中国語、英語を話すようになるだろう。曲がること無く大きく育っていけば将来は無限に広がっていき、トリリンガルはおろかマルチリンガルさえ可能だろう。 でもそれを私ができるかというと、言語を勉強してそれが「大変なことである」ことを知っているからまずできない。配偶者に日本人以外を選ぶことは到底考えられない。日本人同士でも毎日のように喧嘩をするのに、言葉が通じなかったらどうなると思うからだ。 私は娘に三歳から英語を聞かせ、小学校一年生から英語に通わせているが、外国人に会ってもまず話せない。それは「勉強が足りない」からではなく、「経験が足りないから」「勇気が足りないから」だと思っている。将来娘が英語しか話さない従兄弟に出会った時にもし勇気を持てたなら、家族の輪が世界に広がるのだよと娘に説明している。「ということで、君は来年本場でサマーキャンプに参加してもらう」「えー」 これからのことを考えると良く分からない。 ただ、来年もまた十一月にアメリカに行く事は無いだろう。子供達のこともあるし、私一人が一週間近く海外で自由な時間を持つことはそう許されることではない。 楽しかったアメリカでの日々。私はそれを一生忘れることは無いと思う。「さ、次はどの国に行こうかな……世界が私を呼んでるぜ!」【了】参考書籍 アメリカ人はなぜ明るいか おい、ブッシュ世界を返せ マイケル・ムーア アーティストハウス アホでマヌケなアメリカ白人 マイケル・ムーア 柏書房 アホの壁 in USA マイケル・ムーア 柏書房 アメリカのやり方 世界がもし全てアメリカになったなら なんもかもわやですわ、アメリカはん 米谷ふみ子 岩波書店http://www.sweetnet.com/usalife/ミレディ最新作★中国茶トリビアの泉★現在楽天BOOKSで絶賛発売中
December 11, 2006

別れの日も赤ちゃんは元気に夜泣きをして私を楽しませてくれた。 ただ、妹も大分コツを掴んだらしく、泣き止まなければ自分の心音を聞かせるようになった。もう少しこの赤ちゃんを見ていたい気持ちは強いけれど、もう今は顔を忘れないように強く見つめていることしかできなかった。 準備を三十分で済ませ、姉さんと妹に空港まで送ってもらう。 やはりアメリカでも「出産後の妊婦」は長時間運転してはいけないのだという。空港に着き、カバンの中大事にしまっていた「eチケット」、帰国明細が書かれたコピー用紙を出す。正直これがチケットの替わりになるのかかなり不安であったが、このコピー用紙だけで入国できたから問題は無いだろう。 出国用のチケットを貰い、荷物のチェックをお願いする。日本と違い中を開けてまでの確認はしなかった。後で気が付いたのだが「バッグのカギは閉めないで下さい」と検査場には書いてあった。閉めて渡してしまったような気が……検査後は出国検査を受ける。特に問題は無く、検査時間は日本の半分ほどであった。 帰国後知ったのだが、もし私の荷物に疑いがかかり、係官が開けようとしてあかなかった場合は鍵を破壊し調査をするのだという。この際の保証は一切無いという。恐ろしい。中身が取られるのが怖いという人は「アメリカ運輸保安局公認の鍵」、での施錠であれば閉めても構わないという。これは係官がマスターキーを持っており、検査の障害にならないからだという。これは「TSAロック」という名前で売られている。検査後は荷物を触ることは禁止され、係官の手によって航空会社のゲートに運ばれる。面倒であるが、これもまたテロ対策なのだそうだ。「さようなら」「きてくれて、ありがとう」 隣の家に遊びに来たかのようにあっさりと、妹とは別れた。 アメリカなんて近い。近い。また何かあれば来るのだから。とそう深刻な物はお互いに無かった。そして妹には家で赤ちゃんが待っているのだ。日本からヒョコヒョコやってきた私などとっとと捨てて、一秒でも早く自宅に帰ったほうが良い。 空港に一人ぽつねんと取り残された私の手にはもう六ドルしか残っていなかった。これでは何も買えない……飛行機で寝るように首用枕だけでも買おうかなあ……と姉さんにおごってもらったコーヒー片手に免税店を放浪する。ゲートを潜ってしまったら、手持ちの水は捨てられてしまう。コーヒーを飲み終えた後はミネラルウオーターを片手にフラフラ、フラフラ達成できなかった目的の更なる達成を狙いお店を探した。「初志貫徹。やはりコーチのバッグを買って帰らねば。うんうん」 貰ったコーチのバッグは思ったより小さかった。私はもう少し大きなバッグが欲しかったのさー 極悪人の顔をしてコーチのお店内を放浪する。カードで買えば何とかなる。さ、このバッグはおいくら? 手にとったバッグの値段を見て私は騒然とした。「は、八百五十ドル???」 げ、これはどう転んでも買えない。 やはりアウトレットショップは安かったんだ……と改めて思い、それ以上免税店を放浪する気持ちがなくなってしまった。どうやら空港のお店では高級品ばかり扱っていて、一般人が買うような? 品は置いていないらしい。キーホルダー一つであっても五千円以上した。気持ちを振り切るためにミネラルウオーターを一気に飲み干し、最終ゲートへ向かう。ここでは日本と違い「靴を脱いで」赤外線ゲートを通るよう指示された。アメリカFOXのテレビドラマ、LOSTにて麻薬中毒者が靴の中に麻薬の包みを隠し、トイレでそれを吸引するシーンがあったが、まさか靴の中まで検査されることがあるとは思わなかった。 ゲート前には大きなバケツが置かれ、大量のペットボトルが飲み途中のまま捨てられていた。検査官もまた「持っているやつはここに入れろ」と指示をしていた。勿体無いなあと思うが仕方ない。 飛行機が出るまでまだ時間がある。待合室にはインターネットにつながった端末もあり、有料ではあってもメールチェックができるようになっていた。決済方法はドル紙幣とクレジットカード……ちょうど小銭も残っているし、やってみるかとシワシワのドル紙幣を入れるが認識できないのか動かなかった。 帰国便は勿論来た時と同じコリアンエアライン。 ただ行きとは違い機内では日本語でのアナウンスが流れ、その日の日本の新聞が配られている。ありがたい。ウエルカムドリンクを飲んだ後は後学のため、ビビンバではなく今度は「ビーフ」のメニューを選択した。しかしこれは大外れ。ビーフはビーフでもお酒で漬けられたビーフシチューが出てきたのだ。味が濃くて中々食べられない……カロリーも高そうなので半分ほど食べその後は日本から持ってきた雑誌を広げ時間をつぶした。 行きとは違い、今度は昼の時間を飛行機は飛ぶ。雑誌を読み終え新聞を読み終え、私はやることが無くなってしまった。「しょうがない。寝るか……」 といってすぐ寝られれば一番であろうが、残念ながらそうは上手く行きはしない。私の左側にはイギリス人の中年男性、右側には日本人の少々年配の女性が座っていた。別段人間に興味は無いのだが、私の意思を誘ったのはその女性の目の前にさされていた雑誌の数々だった。「あ、あれが読みたい……」 一週間に十冊以上の本を読む活字中毒が、一週間近く読み物から遠ざかっていたのである。目線が雑誌の方向を向いて止まる。何でもいいから本を読みたい。読みたい。読みたい…… でも恥ずかしくて「本を貸してもらえませんか」の一言がいえない。 悶々とするしかない飛行機の中の十二時間。映画を見たり、機内販売の冊子を読んだり。思いつくことは色々とやってみるのだけれど、時間が終らない。やはり次は帰国の飛行機のことも考え日本から本を買って行こうと思ったのであった。「やること無いと飛行機の中って地獄だ……」ミレディ最新作★中国茶トリビアの泉★現在楽天BOOKSで絶賛発売中
December 8, 2006

はっと気が付けば最期の夜。帰国前夜となっていた。 はてさて、明日の朝は七時半にここを出なくてはならない。となれば荷物は今日中に詰めなくてはならない。「ていやー」 と力いっぱい閉めていた大型旅行バッグのようやく出番である。全ての荷物を詰め終え一安心。と荷物を持ち上げようとしたが持ち上がらない。あれ? 来た時よりも重くなってる? そうだ思い出してみれば「持ち帰る荷物が多いから」大きなバッグで来たような気がする。「ん?」 私の奇妙な行動を察知し、妹の旦那さんが荷物を持ち上げ体重計の上にのせた。私の体重を計りだしたら訴訟問題になるやもしれないが、荷物は問題無い。何か問題があったのだろうか?「五十ポンドを超えている! 二つに分けないと追加料金を一杯取られるぞ」「お金なんて別にいいわよ。これで私は帰るんだから!」 会話の内容は全て英語。必至に言語を勉強しても伝える内容は大概このような意味も殆ど無い、結局は馬鹿馬鹿しい内容ばかりのような気がする。それがまた楽しい事なのだけれど。 旅行バッグを今更二つに! 家の中がバッグだらけになってしまう。事情を説明するが旦那さんは聞いてくれない。バッグの中を確認し、大量のパンを詰め込んでいるのを見て頭を抱える。なぜそんな物を買って帰るんだ……という顔つきである「日本で買うと高いんだから。いいの。タコスなんて日本で買うと六枚で五百円よ! 絶対持って帰るんだから」「とにかく、何を持って帰るにしても、このままじゃたくさんお金取られるから駄目だ。今すぐ二つに分けろ!」 いくら説明しても追いかけて説明しても聞いては貰えず、やむなく妹の旅行バッグを一つ借りることにした。 絶対に変だ。おかしい。私は極力「場所を取らない」「重くない」お土産を買った筈である。なのになぜこのような事に……だんだん腹が立ってきたので一つづつ荷物の重さを量りながら床に並べることにした。ん? 二キロのナッツ? 大量のサプリメント? これは一体誰が入れた? どうも買った記憶が私には無いのだが「お母さんに持って行って貰うんだから。これは出しちゃ駄目。パンを出して」「嫌よ。ナッツなんて日本でも買えるんだからやめてよこんな大きなの」 アメリカはサプリメントが安い国だ。だから足の悪い母にカルシウムのサプリメントを大量は仕方ない。だからといって他にも重い中国菓子からアメリカで不要になった弁当箱まで持って帰らねばならんのだ??? 私は便利屋じゃない!「弁当箱は絶対不可。ナッツは最期まで考えますからバッグの外に出しておきます」「それは絶対に許さない」 ちなみ一ポンドは約四百五十グラム。五十ポンドは約二十三キロに該当する。 私のバッグは七十ポンドを優に超えていたから三十一キロほどであっただろうか……八歳の娘の二倍である。それは持ち上げられない。えらいことである。二つに分割したことにより、一人で一つ何とか運べるようになった。大声で怒鳴りたい気持ちは抜けないけれど、これはこれでありがたい。 アメリカにいて寂しさを感じたことは一度だけ。 こうしたつまらない会話の節々、妹とその旦那が怒りながらもじゃれあっている姿を見たときだ。夫婦としては当たり前のことなのだろうけれど、「なぜ私の隣に私のパートナーが居ないのだろう」といつも私の左側に立つ旦那の姿を思い出し、左側をふっと向いてしまった。 私は離婚大賛成。一人で元気に力強く生きていく女性をもろ手を上げて応援する人間である。ハリウッドでもヒョンヒョン離婚をして、「結婚したことを後悔している」といった内容のコメントを発表するのにも関わらず、ビュンビュン結婚するのはこんなひと時を感じた時なのかもしれない。結婚していれば不自由な事もある、制限を感じることもある。でもまたそれが人として大切な時間なのかもしれない。 さあ、帰ろう。家族の元へ。後はやり残したことはあっただろうか。時差ぼけが大分良くなって来た所だけれど、待つ人の多い私はもう旅立たねばならない。「もう何日か延長したら」と妹はいうが、何しろ変更不可の格安チケットで来ている身である。そうした自由は許されていない。「ま、また来年おいで。次はラスベガスに三日、ディズニーランドに一日、そしてユニバーサルスタジオに一日で行こう!」「ありがとうございます」「次は大連で会おう! 日本からだったら二時間、一万円で行かれるよ!」 これらの約束はいくつ果たされるのだろうか。中国に留学中先生に重々いわれた事がある。くれぐれも中国人に対して「是非日本に来てください」といってはならないというのだ。理由というのは彼らはその言葉を本気で信じて「本当に来てしまう」ことが多々あるからだという。そていて来てすぐ帰ってくれるのなら良いのだが、これ幸いと長期滞在してしまう人もいるという。作り笑顔で蒲団に潜り込みながら、私は一人考え込んでいた。「うーん。でも大連は行ってみたいなあ……個人的には。ラスベガスも行きたいのは行きたい。でも無理だろうな……きっと。あたしは子持ちだから。今回の旅行だってかなり大サービス気味で来ているんだよね……」ミレディ最新作★中国茶トリビアの泉★現在楽天BOOKSで絶賛発売中
December 7, 2006
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アメリカでは十二歳までは子供だけで留守番することが法律で禁止・されている。煮たような法律で、あまり話題には上らないが日本でも六歳より小さい子供は道路に一人で出てはならない。 妹の姉夫婦は共働き。アメリカでは女性が働くのが普通であり、専業主婦をしている人は少ない。 ということで普段二人の子供は「ベビーシッター」が面倒を見ているのだという。現在は中国から両親が来ているので、そろそろ首にする予定といっていたが、私が行った時点ではまだ勤務していた。ベビーシッターといえど四十代後半の上品そうな女性である。英語で話しかけても反応は無い。中国語オンリーのベビーシッターさんであるらしい。下世話とは思いつつ妹に「彼女の月給はいくらぐらいなの?」「千八百ドル。結構高いよね」 それは高い。 日本円にすると二十万前後であろうか。但し二十四時間勤務、住み込み、子供の世話以外にも料理洗濯までしてくれるという。そう考えると高いか……とも思うが、食事も住むところもついてその値段だから決して悪くないと思う。ただ考えてみると日本でベビーシッターさんを頼むとこの金額ではまず無理。ましてや住み込みとなれば倍以上の金額になってしまうのでは無いだろうか……そう考えると安いのだろうか。詳細の事情を妹に聞くと「英語の話せない人はベビーシッターぐらいしかないからね、お姉さんはバンバン首にするよ。この人も頑張って貯金して中国に帰れば大金持ちでしょ。だからすごく頑張ってるよ」 しかし、お金のためというよりも、子供が好きだからこの仕事をしているといった感じの女性である。アメリカではベビーシッター代とママの稼ぐ金額がイコールであれば女性が外に出るという話を聞いたことがあるが、これは非常に格が高いベビーシッターである。日本ではベビーシッター代と稼ぐ金額が同額であれば、専業主婦となり、節約生活に入る可能性が高いだろう。 以前シンガポールでベビーシッターさんに会ったことがあるが、その女性は「女中部屋」という、主人が住む部屋とは一段低い日のあまり当たらない部屋に住み、食事の机も別であった。それが良いとか悪いとかではなく、それが当たり前。中国系のベビーシッターが一番高く、英語が話せない人間は特に安いと言っていた。 しかしアメリカは違う。住む部屋のランクも同じであるし、食事も同じ物を食べる。 勿論子供がメインの仕事なので、子供がバタバタ暴れ出したら一緒に食べてはいられないのだけれど。中国本土では「月一万円」でベビーシッターが雇えるというが、これはかなり格が低く、主人の持ち物を盗み、子供の世話も殆どしないような人が多いというが、それとは全然違う。小学生の頃読んだ「ハリスおばさんニューヨークへ行く」ハリスさんのような女性である。子供の世話も手馴れているし、両親の話し相手もしてくれる。さすがに突然現れた私は営業品目から外れるようであったが、本当に優秀な女性であった。「で、今は手が足りているのに何で首にしないの?」「お母さんの話し相手でしょ。でも本当のことは私も知らない」 楽しそうに両親と会話をしながら、料理を作るベビーシッターさん。 確かにこれでは首にしようが無いのかもしれない。*「ハリスおばさんニューヨークへ行く」ハリスおばさんが元の雇い主に頼まれ、ニューヨークまでメイドの仕事を手伝いに出かける話。雇い主は「ニューヨークのメイドは質が悪いから……」と新しいメイドを見つけるまで手伝いに来て欲しいといわれ出かけていく話。当時人のものを勝手に持って行く人がアメリカにはいるのかと思い、それはいけないなと思いよく覚えている。現在は復刊されているのですね。ミレディ最新作★中国茶トリビアの泉★現在楽天BOOKSで絶賛発売中
December 6, 2006

飛行機に乗ると、大概ウエルカムドリンクには「ジンジャエール」を飲むようにしている。特に理由は無いが、なぜか飛行機に乗ると小学生の頃カナダドライの工場に行きジンジャエールの缶を二つ貰ったのを思い出すのである。普段は滅多に飲まない琥珀色の液体を喉に運ぶと、ああ飛行機に乗っているんだなあという気持ちになってくる。 現在は「エコノミークラス症候群」という人間の血液が運動しないことにより血栓となってしまい最悪心臓にそれが回り死に至る病気が周知されたせいか、客室乗務員のお姉さんは結構まめに飲み物をのせたお盆を持って歩いていてくれた。私も暗闇の中気が付けば水を飲み、トイレまで足を運び血栓ができぬように運動を繰り返した。隣に座る人には迷惑な存在だが、健康のことを考えるとやむを得ない。 アメリカ人は普段何を飲んでいるのだろう。 生水はあまり身体に宜しくないらしい。人によっては「コカコーラ」や「ソーダ水」を飲んでいるという。妹も以前は値段が安いこともあり、ソーダ水を普段飲んでいたらしい。「でもね。やめたの。あれってある日突然歯が抜けちゃったりするのよ」「え、本当?」「目の前で見ちゃってさ。それからやめてる」 実際ダース単位の缶入りコーラを大量に持ち歩いているアメリカ人は珍しくない。私のライフスタイルとしては通常季節に合わせたタンブラーに麦茶や紅茶などお茶類を入れて持ち歩き飲むというのが普通であるが、これは「水筒」に飲料を入れて持ち歩くと、時には飲む時その場で浮くことがあるのが、タンブラーであると逆に「あ、あのタンブラー格好良い!」と羨望の目で見られることが快感だからである。「それに余計なお金も使わなくて済むしね」 また缶ジュースを飲まなければ確実に体重は落ちる。以前缶コーヒー一本に角砂糖が四個入っているという噂を聞いてぶっとびそうになったことがある。そんなものを通常的に飲んでいたらそれは太るよな……それからは外に出ても意識をして「砂糖なし」のコーヒーを選び飲むようになった。 妹の家では赤ちゃんが生まれたこともあり「浄水器」をつけているのだが、それとは別に外出となるとタンブラーではなく「ミネラルウオーター入りペットボトル」を持ち歩くよう指示された。ミネラルウオーターを持ち歩く? 何と二十四本で五ドルとか六ドルとかものすごく安い値段で買う事ができるのだという。「この方が楽だし、いらなくなったら捨てられるでしょ」「味もおいしい。これはいいねえ」 飲み終わった後は蓋をぽんと押すともう水は漏れてこない。 日本のペットボトルに比べペットボトルのプラスチックが薄いような気がするが、これは買い物の時に入れてもらうポリ袋も同様で、アメリカのプラスチック製品は日本よりも厚みが薄いような気がした。 これについては一つの理由がある。 プラスチック製品の値段を決めるのは「サイクル」つまりは「製品一つを作るために使う時間」である。流し込む材料の量が少なければその分「サイクル」は短くなるため大量の製品を作り出すことができる。大量消費の国としては効率アップのため限界まで薄さを出すというのは当然やってしかるべきことなのだろう。 モデルを目指す人は新陳代謝を良くする為、一日二リットル水を飲むという。ということで外出する際は必ずミネラルウオーターを持ち移動するようになった。外で買うと一本二ドル程度するようだ。日本と違い外にぼーっとジュースの自動販売機が置かれていることはない。必ず建物の中。人の目がつく所に自販機は置かれていた。 アメリカにいる間、一度だけゴミの回収日があった。 妹はビニールにゴミを詰め階下にある大型の鉄製ゴミ入れにそれを投げ入れる。日本のように種類ごとに分別するといったことはしない。リサイクル精神が徹底していないのだろうか? と思ったのだが、それは少々事情が違うらしい。「ゴミの回収日になると、ペットボトルとか缶を集めている人がこのケースまで集めに来るのね。だから別に分けなくても大丈夫」「あ、そういわれてみるとここにはオートロックついてないものね」 そういえばテレビでも何度か、アメリカでも空き缶を集めて生計を立てている人を見たことがあった。しかし二十四本で五ドルのペットボトルを何本集めればお金になるのだろう? 疑問はあったが生ゴミはシンクに「ガガガ」と大きな音のするクラッシャーがついており、細かく粉砕して下水として流すのが普通だという。「魚の骨なんかを流すと詰まるんだけどね」といって妹は実際に水道に生ゴミを流す様子を見せてくれた。ボタン一つでキャベツや葉ものの野菜などは一瞬で粉々。子供が指を突っ込んだら恐ろしいなと思うけれど、シンクの高さ自体とても子供が届く位置に無いので、そうした心配は無さそうである。「日本はね。今はゴミをすてるのも有料だし、分別しないと怒られるし大変なのよ」 ということで、自宅にいる際は外出の際残ったペットボトルの水を飲むか、日本から持参した麦茶を妹に作ってもらい飲んでいた。アメリカ製インスタントコーヒーを何度か飲んだが、どうも味が合わず、味覚は徐々に中国茶に向かっていった。さすがは中国系の家庭。「中国茶の本を書いたことがある」というと最高級品の中国緑茶を出してくれた。「あ、これは今年の新茶ですね。龍井茶……葉も上の方だけで香りが甘い」 多少の薀蓄を披露すると、最期のお土産に中国茶を大量にいただいてしまった。アメリカで中国土産を貰ってしまうとは……とはいえお酒を飲むと暴力壁のある私としては、海外で問題を起こすわけにはいかず、食事の間楽しむ中国茶はとても楽しく、実際油の多い中国料理には口当たりの良い中国茶が良く合いおいしかった。妹はというと日本から持参した五十ケ百九十八円の麦茶を大切そうに作り飲んでいた。こんな物無駄だから……と思ったけれどやはり普段飲む物は飲みなれたものが一番良いということなのかもしれない。「でもアメリカのミネラルウオーターって安いね。私は気に入ったよ」「大型の機械でろ過しているんでしょ。これが普通」 その後、気になり、日本に帰国後、まず買ったのは日本のミネラルウオーターであった。やはり味が違う。アメリカの方が味が濃い? ような気がする。ミレディ最新作★中国茶トリビアの泉★現在楽天BOOKSで絶賛発売中
December 5, 2006

私の数少ない趣味の一つにパン教室通いがある。 もう四年以上通っている。家族は「パン」よりも「料理」の上達を願い、料理教室へ通うよういってくるが、料理に興味は無いので行く気は無い。言葉を選びつつ旦那が私にこう呟く。「パン教室に行ってはいかんと言っているんじゃないよ。もし良かったら、パン教室に行く三回の内の一回を料理教室に行くようにしたら家族皆が幸せになるんじゃないかなと思うだけ……」「興味が無いところに通うつもりはありません」 勢いに乗り、現在はパン教室の先生の資格まで取得したが、特にそれを使うあてはない。アメリカでもパン作成の技を披露したいと思ったが、残念ながらそのような時間も道具も足りなかった。次回は是非持参し、自慢の「技」を披露したいと思う。「そういえばさ、この間お姉さんが野菜を洗剤で洗ってたんだけど、あれって変だよね。日本では絶対に洗剤で野菜を洗わないよね」「そ、そうだねえ」 適当に笑顔で笑って会話を流したが、これは「知らないから」ではなく「真実を知ると辛くなるだろう」からという判断からである。実は中国では「野菜を洗剤で洗う」のは普通であり、きちんと「野菜専用の洗剤」が売られている。 洗う理由はいくつかあり、一つはまず人間の糞尿をそのまま肥料として使用しているため洗わずに使うと「寄生虫の問題」があるからである。上海などは外国人が出入りする場所は殆ど水洗になったというが、私が居た北京ではトイレットペーパーはそのまま流さず、前に置かれた箱に捨てるよう指示されていた。理由を聞くとそれは「肥料に使うから」であった。日本でも牛糞などは肥料として使うこともあるが、これは一度一箇所に集め発酵させてから使うため、寄生虫はその熱で死亡しまず問題などは起こらない。 また、もう一つの理由は「残留農薬」の問題である。 中国などではどうしても「農薬を多く使う」傾向があり、一時は香港で野菜のことを「毒菜」などと書いていた。まずこうした野菜も綺麗に洗い火を通せば問題無いのだけれど、日本人の一般的な感覚からすると、これは少しかけ離れているのかもしれない。 特に意識して見なければ、気がつくことはないが、アメリカでも「野菜専用」の洗剤が売られていることがある。これはリンゴなどに塗られた「ワックス」を取り除くためのものである。日本にいてもアメリカ製の「レモン」がいつまでも腐らないことに違和感を感じたことがあるが、つまりはこれ「ワックス」を塗ってあるおかげであるようだ。 アメリカでは皮のままリンゴを齧るのが普通であるというが、話を聞く限り生で何かを食べるのはやめた方が良さそうだ。スーパーなどを回ると売られているリンゴの大きさは日本よりは小さく、見た目すっぱそうであった。以前中国では一瞬油断し生のトマトを一切れ食べ、腹痛を起こして倒れたことがある。 後で聞くとトマトは特に農薬を多く必要な野菜であるそうだ……海外に行ったら体調保持のため野菜はたくさん食べるけれど、生では絶対に食べない。必ず火を通してから。ちなみにトマトは「シーホンシー」という卵と一緒に炒めて良く食べた。これが安くてとてもおいしい。空港で同席した男性に「中国料理で一番おいしいのは何だ?」と聞かれて「シーホンシー」と答えて大笑いされたことがあるが、これは馬鹿にされたと思われたのかもしれない。 アメリカに来たのに中国料理ばかり食べているのも問題である。やはり私はパンの専門家! ということで突如としてピザを買いに行くことにした。中国人の両親は慌て始めた。ピザなどは到底食べられないというのだ。「絶対私達の分は買って来ないで」「どうしよっかなー」 両手をパタパタと振り悪魔をイメージして部屋をぐるぐると回る。意味は分からなくても私のいじわるをしたい気持ちは伝わったらしい。背後からは何度も「買って来ないでー」「食べないからやめてね」という言葉が聞こえてきた。「ここが安いのよ。ペパロニ・ピザ・ワンホール 五ドルなのね」「それは安い」 妹に連れて行かれたピザショップはそのピザがウリであるらしく、注文するとそれ以外のスナックなどをすすめられたが、それは買わなかった。 ホカホカのピザはトマトソースにサラミ、チーズがのったシンプルなものである。日本と違い「注文を受けてから焼く」のではなく、既にピザは焼かれておりお金を払えば後ろに置かれたピザをはいどうぞ、とばかりに渡される。途中で一個一ドルのチュロスを買い帰路につく。このチュロスは日本のものとは違い、長さは日本のものの一.五倍ほどちょっと生地が噛みごこち良く、幾分ふんわりとしており本当に「ドーナッツ」といったイメージのものであった。全体には砂糖に混じってシナモンがかかっている。香りはきつくなく日本人でも食べられる味である。「ごちそうさまでした」 勢い込んで出かけたのにも関わらず、私が食べたのはチュロス一本にピザ一切れ。何とか妹の顔を立てもう一切れピザを食べようと思ったが、しっかりとした厚手のパン生地は殊のほか腹に張り、思いはあっても身体が許してくれなかった。「全然食べないんだったら……買わないでよね……」「いや。明日食べるよ。うん。味はおいしい。アメリカといえばやっぱりピザだねえ~」 怒り狂う妹。気持ちは分かる。明日は帰国の日で朝から食事をしているような時間は無い。一つづつ野望を達成する私。後やり残しは無いだろうか……自問しつつ、私はこっそりピザの残りを冷蔵庫にしまいこんだ。「うーん。これでドーナッツも食べに行きたいと言ったら多分怒られるんだろうなあ……」 未練を残しつつ、旅はまだ続く。ミレディ最新作★中国茶トリビアの泉★現在楽天BOOKSで絶賛発売中
December 4, 2006

日本からロサンゼルスに来る際、ドルは必ず日本の空港で換金してきた方が良い。何故ならロサンゼルスの空港では手数料を取られるからである。「別に食費なんかは要らないし、一万も換金してくれば足りるんじゃない」 妹のアドバイス通り、私は一万円だけ成田空港にてドル換金しアメリカにやって来た。 日本からアメリカへのお金の持ち込みは千ドル以上は申請が必要となる。が、アメリカはカード社会なので現金が無くてもカードがあれば事は足りる。但しカードを使用する場合は日本のように「カードだけ」ではなく、「パスポート」または「ID」の提示を必ず求められる。「じゃ、カードがあれば大丈夫だね」「ごめん。この会員制ショッピングモールだけはカードが使えないの。ごめん」 それは何と面倒な……現金決済だから安いのだろうか? と聞くとそれは違い、この会員制ショッピングモールでは既に登録されたクレジットカード以外は使用ができないのだという。 噂では「アメリカでは会計前の食料を勝手に開け食べている人がいる」という伝説を聞き、本当にそのようなことが行われているのか、興味津々アメリカに到着した時から一生懸命観察していたのだが、それまでに行った「ドラッグストアー」や「おもちゃ屋」、「CDショップ」「アウトレットモール」には日本人的には「非常識な万引き行為」に近いそれらのことをしている人はいなかった。「噂はガセだったのかしらん」 アメリカの胃袋ともいえる巨大会員制・ショッピングモール。日本のような試食コーナーはあっても袋を持って食べている人は皆無だった。でも、もしかしたらいたかもしれないが、とにかくショッピングモール内がでかい。パンは一個単位ではなくて十二個、ダース単位。もし、これを開けてぼりぼり食べ始めてしまったら……いかな大食漢のアメリカ人といえど、出口に出るまでに食べきることは不可能だろう。 怪しい人物はいなくても、どのショップでも必ず「地崩れ」に近いような商品の散乱は見受けられた。子供のおもちゃ売り場などは燦々たる状態。もう売り物にならないんじゃないか……。まめな日本人としてはついつい手を伸ばし商品を元の位置に戻したくなるのだが「あれはいいの放っておいて。お店の人が直してくれるから」 アメリカは「大量消費」が基本の社会であり、多少のマイナスに目くじらを立てるよりもより品物の回転率を上げた方が良いという考え方なのだという。特売でない通常販売の商品はレシートさえあれば一年後? でも交換に応じてくれるという。それを聞き、ついうっかり値段を間違えてみて買ってしまった靴下を交換して貰おうかと思ったが、お店はなんといっても砂漠にあり、ここから二時間以上の距離である。可能であってもやるだけガソリン代が勿体無いだろう。 思い出せば日本にも会員制ショップというのがあった、イメージはその時のお店と変わらない。大きな倉庫の灰色にすすけたコンクリート打ちっぱなしの壁にカートに小山と積まれた商品類。入り口で子供が六人は乗れそうな大型のカートを受け取り、いざアメリカの胃袋に突進である。ここを見ずしては日本には帰れない。「大体食料品はここで買うかな。安いし」 妹は根っからの節約主義の人間である。安い物を探してアメリカ中走り回ったらしい。平日であるにも関わらず、ショッピングモール内は大勢の人間で溢れていた。恐るべきことに、ついに同朋の日本人を発見! してしまった。「うわーアメリカのお菓子はでかい!」「誰が買うんだこんなでかいケーキ」 どうせ日本語で騒いでも誰にも分からないだろうと思っているのか声がでかい。 少々恥ずかしいので他人の振りをして隣を抜ける。多少気持ちは分かる。大人一人が抱え込んでも持ちきれないような巨大なケーキが一つ売られているのだったら理解できるのだが、それが十個、二十個、三十個とあるとこれが特別なケーキではなくて「普通に食べるケーキ」であることが分かってくる。知り合いの社長はこれらのケーキを見「どうしても買いたい……」という気持ちを抑えきらず、ついつい買ってしまったものの、帰宅後クリームの強烈な匂いに恐怖を感じ、結局一口も食べずゴミ箱に投げ込んだと行っていた。 さもありなん。しかし私はこのケーキ日本の米軍キャンプで行われた「誕生日パーティ」にて出されていた際口にした事がある。白いクリームが食紅? で着色され、中は甘いバタークリーム……一口食べた後に好奇心を持ったことを後悔する味であった。甘い。甘い。これほど甘いケーキをアメリカ人はよくぞバクバク大量に食べられるものだ。 中国系のスーパーは魚を結構「生のまま」「生きている状態で」展示しており、それをそのまま売っていた。海老やカニ類は良いのだが、魚の一部はプカプカ死んで浮かんでいたり、色が変わっていたりと無理して「新鮮さ」をアピールするよりも、殺して生け締めしてしまった方が良いのではと思うけれど、そうした感覚は無いらしい。蛇、カエルなども普通にスーパーでげろげろやっている姿を見て「これはおいしいよー」という妹はかなり中国料理に慣れているようであった。「蛇はおいしいね。白身でさっぱりしてね。私は北京で良く田うなぎを食べたよ。鯉は店にある水槽からおいしそうなのを選んで目の前で揚げてもらって食べるの」 張り合うつもりはないけれど、姉である私はその上を行く経験をしてきている。目の前ですっぽんをさばいてもらい、生き血を飲む事も既に経験済みである。 しかし、アメリカ系のスーパーには生きている魚はいない。肉は大きな塊でスライスされていない状態で「どかん」「どかん」と置いてある。冷凍食品も多く、アイスなどは本当に「バケツ」状態で何種類も売られていた。うわーこれを食べるのか……と想像するだけで胸焼けがしてきた。お菓子も一個単位などという可愛い物はまず見当たらない。「箱単位」「ケース」単位が基本。色鮮やかに着色されたお菓子はパッケージを読まなければ玩具と間違えてしまいそうな様子である。「あ、これは指輪じゃなくてキャンディーなのね。でこれは鉛筆じゃなくてチョコレート……」 結局私が購入したのは、妹が毎日食べていて気持ち悪くなったという「クロワッサン」、日本のネットショップで「アメリカ直輸入!」とうたっていて気になっていた「ベーグル」二種類十個で三ドル。トウモロコシの粉で作られたタコスの皮五十枚で二ドル、チョコレート二種類であった。「パンばっかりだね」「やはり日々研究しないとさ。専門家としては」 会計後、カートにのせたままゲートをくぐる。ここでは一つ一つビニールに入れるような面倒なことはせず、空のダンボールにバコバコ商品を投げ込んで貰うばかりである。 出口ではレシートを見せ「この商品は会計が済んでいる」ことを確認してもらいチェックマークをつけてもらう。あまり買わなかったようで実際に車に乗せると結構な量があった。パンといえど買いすぎには注意だな…… 帰宅後は早速恐怖のクロワッサンをレンジで軽くチンしていただく。日本の格安・マーガリン・クロワッサンと違いきちんとバターで作られているのだが、どうも脂っこい。しつこい。まずくは無いのだが後味がするのだ。「うーん。これを毎日は辛いかなあ……」 しかしこれは食べ方が悪かったようだ。 日本に帰国後、オーブントースターでしっかり余分な油を落として食べたら香りよく、かなりいけた。その他購入したパン類は毎日楽しみながら一ヶ月も経たずに食べてしまった。ランキング的にいうとやはり一番おいしかったのは「チーズベーグル」であった。もちもちしていて、チーズもたっぷりしていて、これはくせになる。 帰国後気がついたのだが、今回行ったロサンゼルスは別にベーグルの聖地などではなく、ベーグルの生産が盛んなのはむしろニューヨークの方であるらしい。帰国後インターネットショップのベーグルのいくつかを確認したが「アメリカで売られていたものとそっくり同じ」ベーグルがいくつか売られていた。私が今回購入してきたベーグルは「大量生産物」として有名な種類のベーグルであるらしい。 フライパン大のタコスは両面軽く温めた後はトマトにハム、チーズ、レタスを挟んでふんわりと頂く。私の場合二個も食べればお腹が一杯になるので、非常に経済的。残ったタコスはそのまま冷凍して保存できるので、慌てて食べる必要も無い。今回買って来たのは生タコスだが、油で揚げるタイプの物も売られていた。これはサイズが人の手のひらぐらいで、チーズ、たまねぎ、ひき肉を入れたものをタコスにはさみ楊枝で上側を閉じさらっと油で揚げて食す。好みの問題であるが、正直これはあまりお勧めしない。「アメリカのパンも侮りがたしだなあ」 アメリカのパンがまずくて、やむなく日本に引っ越したというエッセイストに手紙を書きたい気持ちを抑えつつ、アメリカでの日々はしだいに終わりに近づいて来ていた。ミレディ最新作★中国茶トリビアの泉★現在楽天BOOKSで絶賛発売中
December 1, 2006
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