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2009年10月18日
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 しかし、いつまでも伊予を留守にしているわけにもいかない。
 翡翠は、迎えに来た部下たちに乞われるままに、伊予へ戻った。

「京の姫さんをお迎えなさると聞いておりやすが?」

 留守を預かっていた男の問いに、翡翠は首を振った。京にいるうちに何人か、知り人から縁を取り持つ話をもらったが心に適う姫はなく、唯一心に適った姫は海賊暮らしに縁がない。

(興味深そうに聞いていたが、彼の姫にここの暮らしはそぐわないよ。)

 天に帰ったあの娘ならば、面白がってついてきただろうけれどね。
 海風に曝される暮らしに紫姫が耐えられるとは思えず、だからといって、自分がずっと京にいるわけにもいかず。
 久しぶりに吹かれる海風に、翡翠はらしくない執着を吹き払わせようとしていた。思う様船を操り、海と戯れた。

(忘れよう。)


 しかし、想いが止まることはなかった。翡翠は忘れたつもりだったが、温暖な伊予の気候にも咲く秋草の陰にふと懐かしい気配を感じて、翡翠は戸惑いを隠せなかった。

(紫姫……)

 深苑が禁じでもしたのだろうか、京からの文もない。
 こうして少しずつ消えていく物なのだ、無用の執着はみっともないと自分を戒めて、時を過ごした。
 いくつもの冬が、いくつもの春が巡り、想い出ももうとうに痛みを伴わなくなった頃。
 翡翠はまた、京へ上る機会を得た。
 誰にも言わず隠し通していた「橘の血」が、翡翠を京へ招いたのだった。





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最終更新日  2009年10月18日 19時51分22秒
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