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2009年11月01日
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カテゴリ: ウマく行く恋愛術


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(こんにちは。トレーニング?)
振り向くと、あの娘が立っていた。

真夏の炎天下、噴水で涼むならまだしも羽ヶ崎学園の体育着なんか着込んで走っているのだ。
目立たないと言えば、嘘になる。

「毎日、1時間は走ってる」
俺は、ありのままを説明した。

(そんなに走るんだ、凄いね)
いちいち、感心する奴だ。

「これ位、普通だ」
(そうかぁ。私も、一緒に走ろうかな)

俺は、素早く遮った。
「お前には、無理」

(ええ!!どうして?)
相手は、またまた不服そうに聞き返している。

「ペースが違うだろ。思い付きで、言うな」
俺とは、体躯も基礎体力も運動量も違う。
無闇に走らせたら、身体を壊してしまう。

(う。そうだよね。ごめんなさい)

俺は、妥協案を提示してみた。
「軽いジョギング位なら、併走してやる」

(本当?)
一転して、笑顔が弾けた。
女って、よくこんな風にころころ顔を変えられるな。

「暇な時、前提で。じゃあな」

俺が、あいつ専用のジョギング・プログラムを思案していると携帯電話が鳴った。
見慣れない、番号だった。

「志波です」
思いがけず、女の子声が聞こえて来た。

あ、あの娘か。
「ああ」

(もしもし)

俺は、少なからず焦った。
「用事があって、掛けて来たんだろ?早くしろ」

(8月6日の花火大会に行かない?)
花火・・・か。

まぁ、一緒に夜空を見上げてりゃ間が持ちそうだ。
「暇だから、付き合う」

俺は、お袋に「浴衣を、買って置いて欲しい」と頼んだ。
紺地に狐のお面の柄、珍しいらしい。

「待たせた」
こんな時、物凄く怒り出す女子も多いらしい。

(あ。私も、今来たところだから)
少し、ほっとした。

「なら、良いか」
(う、うん)

落ち着いて見ると、彼女も着物姿だった。
「浴衣」
薄い緑色の生地に、濃い緑色の帯を締めている。
(うん!!着て来ちゃった。どうかな?)

こんな時、どう答えたら良いんだ?
「・・・」

「あ?ああ。うん」
上手い科白は浮かばないものの、兎に角頷いて置いた。

(わぁ。縁日だ!!)
「花火の前に、寄って行くか」

時間もあるし、女や子供は何か飲んだり食べたりしていた方が嬉しそうだ。
かと言って、ぎこちない動きに無理もさせられない。

「離れるなよ。こんな場所で迷ったら、二度と会えない」
(うん。判った)
当たり前の警告のつもりだったが、彼女の頬がぱっと明るくなった気がした。

「せっかくだし。何か、食うか?」
(うん。林檎飴食べたい!!)
「よし。じゃあ、あの店だ」

(あのお店の、美味しいの?)
「林檎飴を売っている店の中で、一番込んでいる。旨いに決まってる」

案の定、お菓子を持ったあの娘はご満悦だった。
「ん。そろそろ、花火始まりそうだ」

はばたき市にいながら、花火大会なんか見向きもしなかった。
学校生活と、トレーニング。
しかも、記録を伸ばしたところで誰も喜ぶ当ての無い練習だった。

それに比べて、この花火は精一杯輝き大勢の観客達を喜ばせている。
「凄ぇ。今の一尺玉、一番派手だった!!」

(夜空は花火のキャンバスだね)

俺は、彼女の言葉に感動した。
「成る程な。かなり臭いけど良い表現だ」

「年に一度ってのが、勿体無いな」

俺は、心から思った。
「ふぅ。たまには、良いかもな。こう言うのも。じゃ」

こんな機会をくれた相手に、感謝した。
「楽しかった。またな」





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最終更新日  2009年11月01日 22時59分58秒
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