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ゆっくりと瞳を閉じると、睫毛の上に薄く積もっていた雪が滑り落ちた。体温で溶けた雪は、頬を伝い涙の跡のような軌跡を残すはずだ。だが雪はいつまでも頬の上でその形を留めている。理由は簡単だった。何度も何度も雪を浴びたからだ。溶けてはその上にまた雪が重なり、それが溶けまた重なる。幾度も繰り返され、蒸発熱で体温は奪われ、顔面にはもう微かな温もりも無かった。雪は勝ち誇るかのように、ぼんやりとした視界の端に留まり続ける。それを手の甲で払おうと思ったが、動かない。すでに手足の感覚はなくなっていた。指先に感じていた悴んだ痛みも随分と前から感じない。必死で擦り少しでも暖をとろうとしていたのが遙か昔にすら感じられる。せめて首を左右に振って落とそうとしても、その体力さえ今はなかった。微かな木漏れ日から夕焼けの色を吸い淡く色づいた雪は温かい色なのに、無情にも朔夜《さくや》の体温を、体力を奪い取る凶器でしかない。照り返る光は、妙にまぶしく感じられ視線を逸らそうと考えたが、無駄だということに気づき、瞳を閉じた。雪を見ないですむなんて、できるわけがない。しんしんと静かに儚く、だが確実に一昨日から降り続けた雪はゆっくりと地を、木々を白く染め上げていた。朔夜が現在いる針葉樹が多い茂った山も例外なく雪に閉ざされている。白く閉ざされた山は、生命の息吹さえを封じ込められたかのようだった。静寂が山全体を覆い、生きているものがいないと錯覚しそうになるほどだ。「眠い、か?」小さく、少し震えが目立つが、それでもしっかりとした声が鼓膜をうった。まだ声変わりの前の声はまだ少し高めで、心地よい。声に誘われうっすらと瞳を開けると、そこには紅があった。淡く夕焼けに色づいた雪よりも鮮烈で、深く濃い紅だ。苛烈な全てを焼き払う赤々とした炎に似た、鮮血にも似た色。光加減により様変わりする瞳は、朔夜にはとても温かく優しいものに見えたもったない…な、ぁ。後悔にも似た感情がふと胸を過ぎった。それは優しく暖かな色が、ぼやけて見えることに対してだ。熱が出ているのか、涙腺すらバカになったのかはわからない。ただ瞳を覆う水面の量が常より多くなっていた。ゆらゆらと揺れる視界の先でさえ綺麗な紅は、この薄い水の膜を除けば、いったいどれほど綺麗に映るのだろう。心配そうにこちらを見つめる紅い瞳の彼を、これ以上心配させないように、と声を絞り出した。「……緋、深《ひしん》」予想以上に凍え震えた声に、どこか他人事のように驚いた。
2005年09月28日
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えっと……2つぐらい前の記事に「これからは頑張って週に1回は」と言っておきながら1ヶ月以上たっていて。すみません。今、かなり煮詰まっています。ぐるぐるとループしていて、一向に話が進みませんでした。で、互いの息抜きがてら、と『虚』の茜夜さんとリレー小説をすることになりました。で、喜々として設定を練り始めたら。……息抜きでなくなりました。とんでもなく長い話になりそうです。お付き合いくださると、嬉しいです。タイトル『サンセツキ』〈本編〉は三人称+心情で進みます。 この場合の心情は全てヒロインのものです。 私のヒロイン【朔夜】と茜夜さんのヒロイン【翡翠王】です。〈side story〉はヒロインを取り巻くキャラクターの視点で進みます。 視点は個々のものなので所々食い違ったりも…〈小咄〉は、言葉の通り小咄です。 本編では書かれなかった日常などを書く予定です。〈過去話〉も、名の通りです。 キャラクターの過去を書く予定です。の予定です。お互いに交互で書くので、煮詰まっても相談したりするので、今度はこんなに間隔が空かないかと…良かったら読んでください。
2005年09月28日
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