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市場主義と道徳について考えて、いまは刑務所の待遇とか医者の電話番号とかグリーンカードとか何でも金で買えるけど、投票権とか子供とか買ったらいけないものがあるし、世の中が金で買える物ばかりになったら金がもっと重要になるから貧乏人が困るよと警鐘を鳴らす本。
私は貧乏なので何をいくらで売っていようがたいていのものは買えないし、誰が何を売買しようが双方の合意の上なら別にいいんじゃねーのと思うし、サンデルが買っちゃだめよと言う根拠もあまり説得力がないので、特に面白くなかった。子供の売買をすると恣意的な基準ができてしまうからよくないとサンデルは言うけれど、不妊治療で精子バンクを使うにしろ養子をもらうにしろ金で子供を買って幸福になる親子がいるなら別にいいんじゃないかと思う。サッカークラブが才能ある子供に契約金を払ってユースで英才教育をするのがOKなら、実業家が跡取りをほしがって優秀な養子を金で買って帝王学を教えるのも似たようなもんだろうし、サンデルが言うように子供を買うのがどんな理由でもだめだというなら貧乏な子供が貧乏を抜け出す手段が少なくなってしまう。世界が何かの原理主義に支配されない限りは絶対的かつ永続的な道徳の基準というのは存在しないので、何がよくて何が悪いのかはその時々の各国のコンセンサスで変わる。たとえば売春は世界各国で違法だけれど、今では考え方が変わりつつあり、非合法に犯罪組織に搾取されるよりも女性を保護するために売春を合法化する流れになっている。アメリカでは酒がいったん違法になった後にまた合法になって、今度は大麻が合法になった。スマートドラッグの売買とか代理母契約とか臓器移植の割り込みとかたとえ他の地域や他の時代では道徳的に非難されるものでも、ある時代のある地域で合法でなおかつ道徳の基準が一致する当事者同士で売買の合意がなされていれば、何を売買しようがいいんじゃないかと私は思うわけである。
何を買うかというより、売れるもんは何でも売れるようになるのが貧乏人が生きていくには大事なので、「それをお金で売りますか」と貧乏人目線の本にしたほうが99%の貧乏な読者にとっては面白かったかもしれない。
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