三角猫の巣窟
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1
ヤクザのヒットマンがスナックのママと組んで公務員を脅して金を奪って逃げようとする話。●あらすじ1:下津町役場の出納室長の梶康男は奥野収入役の入院中に公印を預かって職務を代行して、「特別口座」を裏金的に利用していて、勤続18年の青江久美もその秘密を知っていた。梶はスナック「Bergman」のママの長崎出身の増本カヨ子と懇意になると、カヨ子はヤクザの峯尾の指示で梶を口説こうとして、身の上話や下ネタの手紙を送りつける。2:カヨ子は梶には夫が死んだと嘘をついたものの離婚しただけで生きていた。元夫の紙谷覚は不動産業を経営しながら娘の麻衣を育てていて、介護職の岸井と知り合って岸井を身寄りがない認知症の老人の息子に成りすまさせて土地を自分の物にしたら、峯尾がカヨ子と寝て自分の女にしようとして紙谷の不正を脅して別れさせた。3:峯尾がビデオカメラを買ってカヨ子と梶のハメ取りで梶を脅迫することにして1千万円を要求する。青江が出産休暇を取っていた隙に梶は裏口座を作って1千万円を工面して峯尾に渡すと、カヨ子は自分も被害者なのだとまた梶に手紙を送る。1978年に山口組三代目組長田岡一雄が京都で狙撃されて負傷して抗争が起きて、田岡の死後に跡目争いで山口組が分裂して戦争が起きつつあった。4:峯尾は春駒組組長の立花継男に呼ばれて、金指組との抗争に備えて拳銃を買うために金を要求されて、峯尾は梶にさらに二千万円を要求する。梶がBergmanに行っていると妻の陽子が浮気を突き止めてカヨ子と喧嘩して、梶は離婚して独身になって連日Bergmanに通うようになる。紙谷が白神忠のマンション探しを手伝わされる一方で、峯尾は白神のヒットマンをやることになったので白神を観察する。5:白神は那覇から大阪までフェリーで銃を運ぶ計画だったので、峯尾は那覇からフェリーに乗って寄港地に寄るタイミングで白神を暗殺しようとシミュレーションするものの、押しかけて襲撃した方が早いと判断して銃撃して高野山に逃げる。6:白神の妻の英子が遺品のベレッタでの復讐を希望して金指組が犯人を探し始めて深見組の組員を襲って峯尾が犯人だと聞き出して、立花は全面抗争に怖気づいて組を解散して峯尾を差し出すつもりだったものの、峯尾が深見組の宅和に電話したときに立花の思惑に気付いて西成にいると嘘をつく。7:立花は金指組に詫びを入れて春駒組を解散するものの自宅を放火されて、峯尾の子分の若林が金指組に入って峯尾とBergmanの関係をばらす。金指は組員が軽率な行動をしないように制したものの若頭の矢口を止められず、矢口は英子に惹かれて復讐を手助けして、英子はBergmanの求人に応募しようとする。峯尾はバスに乗って湯の峰温泉に行って白蝋病の湯治をして、若林に電話をして裏切りに気付いて、タイに逃亡するために梶に現金で3千万円を要求するものの、自暴自棄になった梶はナイフで峯尾を殺して自殺しようと準備していた。8:カヨ子は店で殺人が起きてほしくなくてハメ取りの事はぼかして紙谷に相談すると、紙谷はホステスの英子が白神の妻だと気づく。9:紙谷は梶に峯尾を殺させて死体をうまく処理して3千万円をせしめようと計画して、カヨ子は最後の逢瀬として梶を旅行に誘って補陀落渡海での心中を持ちかける。紙谷は岸井のせいで峯尾にカヨ子を寝取られたことを恨んでいて、峯尾のふりをして岸井を呼び出す一方で峯尾のふりをして英子に待ち合わせ場所の伝言を残して岸井を峯尾と勘違いさせて殺させようとする。10:峯尾は湯治中に他の客にやくざだと悟られて、部屋を荒らされて拳銃を盗まれた。紙谷は岸井が待ち合わせ場所で金指組の組員に銃撃されるのを見届ける。峯尾は拳銃を盗んだ奴に追いつくと、拳銃は既に暴力団に売られていて、峯尾は襲い掛かってきた女を返り討ちにしてナイフを奪うものの手にけがをする。11:Bergmanに峯尾がやってきて、梶の現金とハメ取りのビデオを交換した後、梶は峯尾に襲い掛かって殺して、カヨ子と梶は死体を車に積んで防潮堤で捨ててからボートに乗って沖に行き、ダイビング用のウエイトを体に巻き付けていると梶が睡眠薬が効いて寝てしまったので自首することにして、「南の花嫁さん」を口ずさみながらマリーナに戻り、カヨ子は紙谷に金を返さないと岸井を襲わせたことを警察に言うと脅して揉めていると、ロープがゆるんで梶を乗せたボートが沖に流れていく。●感想三人称で焦点人物を頻繁に切り替えていく形式。このやり方は展開の自由度が高いけれど、長編小説で登場人物が多いうえに誰が主人公なのかよくわからないというデメリットもある。1日に1章ずつ読んだけれど、登場人物が多いのに人物一覧表もないのでメモを取らないと人物名を覚えきれなくて、タイパ重視の現代の若者にはウケないタイプの小説である。男が中心の物語の中で女が因縁をつないでいく感じの展開はよい。前半はあまり盛り上がる場面がなくて青江の存在が何の伏線にもなっていなくて無駄に冗長に感じるけれど、後半になると登場人物は知らないけれど読者は知っている情報が増えていって、英子の復讐はどうなるのか、梶の復讐はどうなるのか、紙谷の計画はどうなるのか、峯尾は逃げ切れるのかと結末への期待が高まっていくのはよい。1970-80年代が舞台で、フェリーの旅や湯治とかの今はマイナーになった行動に昭和の雰囲気が出ていてよい。タイトルの「籠の鸚鵡」は高峰三枝子「南の花嫁さん」の歌詞からとったようで、何の比喩なのかよくわからないけれど、殺人の後に口ずさむのがのどかな歌というのも昭和っぽい感覚である。作者が得意とする実話にフィクションを混ぜていくスタイルで、やくざの事件をそのまま書くだけでもそれなりの物語になるけれど、実話に引っ張られすぎずに創作部分を主軸にしていて、金指組や春駒組とかは架空の組である。カヨ子のエロ手紙がぶっとんでいたり、峯尾に脅される梶の情けなさや開き直り具合とかの心情を掘り下げたりして、悪党にも人間味が感じられるのがよい。主人公らしい主人公がいなくて感情移入できるようなまともな登場人物もいないので感動するような物語ではないけれど、エンタメ小説としては楽しめた。小説として読むよりも映像化した方が面白いかもしれない。★★★☆☆籠の鸚鵡(新潮文庫) 【電子書籍】[ 辻原登 ]価格:693円 (2026/8/1時点)楽天で購入
2026.08.01
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