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2017.04.03
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カテゴリ: 小説

父親の死について書いた「見えない人間の肖像」と「記憶の書」の二作の中篇集。

「見えない人間の肖像」のあらすじ52歳で離婚した後に一人で大きな家に15年住んでいた父親のサム・オースターがようやく家を売ろうとした矢先に前に死んでしまい、私は家を整理しながらとらえどころがなかった孤独な父親について回想する。サム・オースターは9歳のときに母親が父親を銃で殺すのを目撃して、金持ちになることを夢見ているのにケチで金を使う欲はなく、息子と孫が産まれても喜ばず、娘を何もできない天使扱いして病気には無理解で、黒人のスラムのアパートを経営して休み無く働いたもののアパートが荒れ果てて事業に失敗して、息子より甥をかわいがっていた。

「記憶の書」のあらすじパリの詩人のAが父親の死や、Sと交流や、妻との離婚や、母方の祖父が死にかけたことや、息子の成長を記憶の書に書く話。

●感想
「見えない人間の肖像」は詩人の私の一人称。父親についてとりとめもなく回想していて、エピソードが断片的で各回想の場面がつながっておらず物語になっていない。エッセイならこれでもよいのだろうけれど、物語になっていないので小説としては面白くない。
父親と息子の物語というのは小説の定番パターンで、ソフォクレスの『オイディプス王』やらツルゲーネフの『父と子』やら志賀直哉の『和解』やら古典がいろいろあるし、どの作家にも父親がいるわけで、親子の反目と和解とか、ユーモアと感傷とかの似た内容になって既視感がでてしまう。それゆえに親を小説にする際には作家の着眼点やテクニックの差が顕著にでる。ポール・オースターは父親の生涯をひとつの物語としてまとめずにエピソード回想集にしてしまったことで父親像がころころ変わって印象がぶれてしまい、テクニックとしては凡庸で下手なやりかた。
「記憶の書」はAの三人称。「見えない人間の肖像」と対になるように父親の死について書いているA(たぶんオースター自身)を書くという実験的試みなのだろうけれど、記憶の書の各章が断片的で物語になっておらず、人物名もアルファベットに省略されていて、メンタルモデルが形成できなくて内容が頭に残らないのでまったく面白くない。小説でもエッセイでも詩でもないメモのような形式の散文になっている。読者がAの生涯に興味を持って理解できるように書いていないし、読んで面白いどころかストレスしか感じないので読むのをやめた。普通に丁寧にわかりやすい言葉で書いた自伝やエッセイのほうがまし。私にとってポール・オースターの親父が死のうが、どんな人間でどんな人生だろうがどうでもよいのだけれど、作者は読者にとってどうでもよい話に興味を持たせて面白く読めるようにするための努力や工夫を放棄していて、作者のひとりよがりになっている。この本は詩人として活動していたポール・オースターの散文としての第一作目のようで、詩を書く感覚で散文を書いたせいのでプロットやストーリーがなくてくそつまらないのかもしれない。
巻末で吉本ばなながポール・オースターに会ったことがあると自慢しているのも意味不明。そもそも自慢するような相手でもないし、英語もわからないのに会ってちょろっとインタビューした程度のことを自慢するものでもないだろう。ポール・オースターのファンは吉本ばななの落書きが付いてる本なんてむしろいらないんじゃないかと思うのだけれど、当時の出版社は人気作家の落書きを載せれば本が売れると思ったんだろうか。大川隆法総裁先生にポール・オースターの親父の霊言を言ってもらうほうがネタとして面白いかもしれない。

さてこの本をブックオフオンラインで買ったのだけれど、どういうわけか前の所有者が日記を本に書き込んでいた。2003年9月20日にNIKON AD3を使って雨の中で等々力不動を撮り、平日10時までやっている本屋を発見して『もち歩き江戸東京散歩』を1600円で買い、2003年9月21日に雨の中を京急蒲田まで歩いて写真を撮り、ヒレカツ定食と小ビールで1080円で、サンマークでこの本を読んで、無印のボールペンを失くして、レインコートを500円で買っていて、テーマ主義で必ずその日の撮影テーマを決めることにしていて、モノクロ現像焼付けができるようになること、NIKON Kを使えるようにすること、リバーサルフィルムを使えるようにすること、ノーファインダーで撮ってみること、量を撮ることを目標にしていたようで、テーマは「東京の旅行者」と「六本木ヒルズ」だそうな。余白にメモ書きがある古本はよくあるけれど、本の内容とは関係の無い日記を3色ボールペンで色を変えながらつらつら書いているパターンは初めて見て、この日記が本自体より面白かった。わざわざ本の余白に日記を書いたのはつまらないゴミ本だからメモ帳代わりにでもしようと思ったんだろうかとか、レインコートを買ったことをメモしておく必要はあるのかとか、わざわざボールペンの色を変えて書く意味はあるんだろうかとか、いろいろ考えてしまう。私もブックオフに本を売る際には宝の地図とか未解決事件の真相とか秘密結社の暗号文とか、なにかしらファンキーな落書きをしてから売ろうと思う。

★★☆☆☆

孤独の発明 [ ポール・オースター ]






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最終更新日  2017.04.03 20:58:40
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