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2017.06.18
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私はこのブログでは主に小説の感想を書いているけれど、 作品の面白さとは何か に書いたように、面白さにはうるさい。私は暇つぶしにYouTubeもしばしば見ているけれど、つまらない動画を見てしまうと時間を無駄にした気分になって、ちょっと物申したくなるのである。というわけで、読書家の視点からYouTubeのつまらない動画はなぜつまらないのかということを論じることにする。

●コンテクストがないつまらない動画に共通している一番目立つ欠点は、コンテクストがなく説明不足なのである。たとえば旅行写真をスライドショーで表示してBGMを付け足したような動画は、写真に写っている人たちは誰なのか、なぜその写真を撮ったのかという説明がないままいきなりコロコロ場面が変わっている場合が多い。部屋の写真があってもどのホテルか不明で、料理の写真があってもどのレストランか不明で、景色の写真があってもどの観光地なのかか不明で、写真を撮影した本人なら記憶を思い出して楽しめるだろうけれど、第三者から見たら状況がわからないがゆえに面白くない。こういう動画は自分のために作られた動画で、他人を楽しませるための動画ではないので、再生数も伸びていない。個人的には旅行写真のスライドショー動画はコンテクスト、ストーリー、情報価値の全部が欠けていて一番つまらない類の動画だと思う。

●ストーリーがない
YouTubeで人気の動画にはたいていストーリーがあり、何かをやって、その結果がどうなったかという一連の過程が動画になっている。YouTubeの人気ジャンルといえばゲーム実況で、ゲーム自体にストーリーがあるのでYouTuber自身はあまり工夫をしなくてもわーわーきゃーきゃーリアクションをしていればそれなりに面白い動画になる。何かの実験をやってみた系の動画も、実験の準備から実験結果までのストーリーがある。人間は好奇心旺盛な動物なので結末を知りたがる。ストーリーがある動画なら視聴者は結末を知るために動画の最後まで見ようとするけれど、ストーリーがない動画では視聴者の興味を何十分も維持できないので、視聴者は途中で動画を見るのをやめてしまう。これは邦画を思い浮かべるとわかりやすい。いくらGyao!で無料で邦画が見れるといっても、最後まで見たいと思うような映画がない。『デッド寿司』を見たら30分が我慢の限界で、暇つぶしにもならなかった。金をかけて製作した映画でさえつまらないのだから、素人が予算も脚本もなしにだらだら撮影した動画がつまらないのはいうまでもない。
ストーリーがない動画の例は、監視カメラのライブ映像やドライブレコーダーの録画を延々と流す動画や、素人のカラオケ動画や、何かを食べておいしいだのまずいだのと言うだけの動画。こういうストーリーがないつまらない動画でも、カラオケで○点以下なら罰ゲームとか、路上パフォーマンスで昼飯代稼げるか挑戦してみたとか、食べたものの値段を当てるとおごってもらえるとか、一工夫して何かしら結末を用意してストーリー性を持たせればもっと面白い動画になる可能性はある。

●情報価値がない
在日外国人YouTuber(J-Vloggers)は外国人ならではの日本についての意見を言っていて、いわばエッセイの動画版のようなもので、YouTuberのいちジャンルになっている。他に仕事をしている人もいれば、YouTuber専業の人もいる。無職みたいなYouTuber専業でもビザが降りて日本に長期滞在できる理由は、どうやらJ-Vloggersを支援している日本の会社があるらしい。J-Vloggersは日本に来た当初は何もかもが新鮮ではりきって動画を投稿するけれど、日本に長年いて日本になじんだら外国人としてのアイデンティティも薄れて専門知識もなく惰性で日常生活を垂れ流す一般人になってしまうという構造的欠陥があるようだ。一通り観光地めぐりをして、カルチャーショックだの好きな日本食だの変な味のキットカットだのの定番ネタはやりつくしてネタ切れでマンネリになって、最終的に福袋の開封とか彼氏と別れたとかの動画を投稿するようになったけれど、これは別に在日外国人がやる必然性はない。外国人としてのユニークな視点や意見がないのでは動画としては面白くないし、誰でもできるようなことをやっても情報価値がない。
日本が好きな外国人は留学生や旅行者など何十万人もいるので、The Anime Manのように日本のアニメに特化するとか、Simon and Martinaのように食べ歩きをするだけでなくレストランのシェフに密着取材してドキュメンタリーにするとか、何かしらの付加価値をつけて差別化しないと似たような動画が無数にある中でわざわざ動画を見るほどの価値がなくなってしまう。視聴者は他では見たことがないような独自の映像や独自の視点がある動画が見たいのである。

●具体例コンテクストやストーリーや情報価値の有無で動画の面白さが変わる例として、「釣りよかでしょう」というYouTuberの動画と、バス釣りのプロの秦拓馬氏の公式チャンネル「秦拓馬☆俺達。チャンネル」の動画を比較してみる。二つの釣りチャンネルが一緒に無人島に行って釣りをしていて、双方の視点からの動画が見れる。

こちらは釣りよかでしょうの動画。

・出発編、素潜り編、釣り編と場面ごとに動画を分けている。
・どうして無人島に行くことになったのか、動画の冒頭で説明している。
・無人島に同行した人の名前を字幕で説明している。

こちらはバス釣りのプロの秦拓馬氏の動画。

・タイトルに【釣りよかコラボ】とあるのに、釣りよかでしょうについての説明がなく、釣りよかでしょうを知らない人には誰が釣りよかでしょうのメンバーなのかわからない。
・動画に出てくる白髪まじりの人はジャッカルの代表取締役会長の加藤誠司氏で無人島の権利を買った人だけれど、動画では誰なのか説明がなく、視聴者の予備知識なしでは理解できない。・撮影者本人が動画に映っておらず、秦拓馬氏を知らない人は誰が撮影しているのかわからない。
・船の上でどんな道具を使って何の魚を狙っているのか、何の魚がつれたのか、釣りの状況について説明が乏しい。地形や水深がどうのこうのという釣りプロならではの釣りテクニックの詳しい説明がない。

せっかく無人島で釣りをするという面白い状況でも、その状況が視聴者に伝わっていなければ面白さを十分に伝えることはできない。無人島で思う存分釣りをするというのは釣り好きな人にとっては憧れのような状況で、なおかつ個人所有の無人島は一般人が入れない特殊な場所なので、動画のネタ自体は面白いだけにその面白さが引き出せないのはもったいない。私は釣りよかでしょうの動画をいくつも見たけれど、釣りよかでしょうは「これから○○さんと△△に××を釣りに行きます」「餌は○○を使います」「釣れないので移動しました」などの説明をして、適時字幕での説明も加えていて、視聴者を意識して状況がわかりやすいように動画を編集していることがわかる。釣りよかでしょうが釣りの素人であるにもかかわらず、釣りプロよりも登録者数や視聴回数が多いのは、状況説明をきちんとしていて、初見の視聴者でも状況がわかるようにしている点が大きな違いである。もちろん秦拓馬氏の本業は釣りで、動画撮影はファン向けのおまけのようなものかもしれないけれど、初見の人に動画の面白さを伝えられずにチャンネル登録につながらないのでは、自身やスポンサーの宣伝の面でももったいない。

秦拓馬氏の動画をもっと面白くするための改善点は以下のとおり。
・登場人物は字幕で紹介する。
・これから何をやろうとしているのか、どういうプランなのか、動画の目的を冒頭で説明して、人物が登場したり場面が転換したりする度に状況を説明する。
・顔出しNGというわけではないのだから、なるべく顔をみせる。表情が見えないと喜んだり驚いたりしても視聴者の共感が乏しくなる。
・専門家ならではの意見を言って付加価値をつける。
・風の音などが入って話し声がうまく録音できていない部分は字幕で補う。
・何の仕掛けで何の魚を狙うのか、何匹釣るのか、何センチ以上を狙うのかという目標を決めると、その魚が釣れたか釣れなかったのかという結末がはっきりして動画にストーリー性が出る。

●まとめ
大して手間をかけなくても、どういう状況になっているのか第三者から見てわかるように動画のコンテクストを説明するだけでだいぶましな動画になる。さらに動画にストーリー性があれば視聴者は結末に興味を持って動画を最後まで見るようになる。さらに動画に情報価値があれば、その動画を他人と共有したり、情報を参照するために何度も繰り返して見るようになる。
これらの点は小説の面白さの構成要素のうちの基本的な部分なので、小説を読んでいる人なら気づくけれど、小説を読まないYouTuberはつまらない動画を作っているという自覚がないのかもしれない。動画の再生数を増やして人気のYouTuberになりたい人は、小説を読んで面白さとは何かということを意識してみてはどうだろうか。






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最終更新日  2017.06.18 15:10:45
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