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ごみ処理の仕組みやリサイクルについて包括的に書いた本。
●面白かったところのまとめ
・奈良時代まではごみを捨て場や河川や空き地に投棄するだけだったが、平安時代にごみが社会問題化して清掃丁という職掌が設けられた。江戸時代は芥改役がゴミ処理業者を取り締まって、会所に集めたごみを東京湾の埋め立てに使っていた。明治20年代にペストが流行したので汚物処理が重視されて、明治33年に汚物掃除法が制定されてごみ処理が市町村の責任になって焼却が推奨された。
・廃棄物対策の政策として、廃棄物の回収のためのデポジット制度(アメリカ、北欧など)、廃棄物処理やリサイクルコストをあらかじめ製品価格に転嫁して徴収する課徴金制度(イタリア、フランスなど)、企業からあらかじめ処理コストを徴収しておきリサイクル目標率を達成したら企業に戻す預託金制度(アメリカ、韓国など)、廃棄物処理やリサイクルコストを排出者から徴収する有料制などがある。
・1986年のデータでは日本は焼却が72%で埋立が24%、デンマークは焼却が81%で埋立が19%で焼却の比率が高い。アメリカは焼却が10%で埋立が77%、イギリスは焼却が10%で埋立が70%で埋立の比率が高い。欧米は環境規制が厳しくて焼却による有害物質を懸念して焼却施設の建設が困難な一方で最終処分地の確保が比較的容易なので埋立が多いが、ドイツを中心に償却と溶融を中心に処理の方針を変えている。
・焼却炉の完全燃焼のための3T条件は、燃焼温度(Temperature)を850℃以上に保つ、蒸気温度で2秒間以上の滞留時間(Time)を確保する、燃焼ガスと燃焼用空気の十分なる混合攪拌(Turbulence)。
・廃熱ボイラで回収した蒸気を発電に用いる場合はできるだけ高圧で蒸気タービンの損傷防止から高温までスーパーヒートされていることが望ましいが、ごみには塩化ビニール製品や食塩などの塩化物が含まれていて、これを焼却すると有害な塩化水素ガスが発生して、このガスは温度によって金属を腐食させるので上記圧力とスーパーヒート温度はあまり高くできない。
・廃棄物の構成成分である炭水化物、脂肪、たんぱく質には好気性分解と嫌気性分解がある。好気性分解では好気性微生物の代謝作用で有機酸やアルコールに分解され、最終的には炭酸ガスや水に分解されて、嫌気性分解に比べて短時間で分解が完了して臭気のない物質が生成される。嫌気性分解は有機酸やアルコールに分解される液化の後、有機酸がメタンや炭酸ガスに分解されるガス化が進行する。1960年代後半に埋立地の自浄作用が発見されて、埋立地が好気的な場合は良好な浄化槽になりうるという埋立構造の概念が確立された。
・再生資源の多くは処女原料の代替原料であるため、処女原料を利用した場合の製造コストとの比較で再生資源価格は決定される。再生資源は一般に圧倒的な買い手市場で、ユーザーが価格決定権をもっており、再生資源の価格は再生資源を原料として作られる製品にリンクして決定されることが多い。再生資源は計画的に採取して供給されるものではないため、相場の変動が激しい。再生資源は品質の違いがあり、鉄屑などは上級屑の相場の変動が下級屑の需要に大きな影響を及ぼす。再生資源価格は国内の需要だけでなく国際的な市況によっても影響される。
私はごみのような生活をしているので、たまにはごみについて思いを馳せてみるのもよかろうと思ってこの本を読んでみた。生活していてごみを出さない人はいないのに、ごみ処理の仕組みについて詳しく知っている人はほとんどいないのではなかろうか。私は小学生の時にごみ処理場に社会科見学に行った程度の知識しかなかったけれど、単にごみを燃やしたり埋めたりすればよいというものではなく、技術的に難しいことがあるというのがわかって勉強になった。一般人が読んでもあまり役に立つものではないけれど、ごみが出る企業に勤めている人や役所の職員は読んでみるとよいかもしれない。ごみを適切に処理したりリサイクルしたりのも大事だけれど、「ガイアの夜明け」でユニクロがジーンズの加工に使う水を90%以上削減したのを特集したり、土に還る和紙の皿ののWASARAを特集していたりするように、有限の資源をどう効率よく使うかという製造側の技術革新も大事である。
さてごみとデータについて考えることにする。現代社会のごみは廃棄物だけでなくて、ネット上のテキストや画像や動画といったデータもごみになりうる。喋った言葉なら音波として消えて、見た風景は記憶に残るだけだけれど、それが動画やテキストになるとデータとして排出されて形が残る。現代のデジタル世代は自撮りだのツイートだのをして電子ゴミを排出するようになったわけである。世界中のあちこちで写真や動画が取られて、人生の複製があちこちで作られて死後もSNSが残り、人生の廃棄物もあちこちに散乱している。うんこをしない人間がいないように、現代人で電子ごみをまったく出さない人間はいないんじゃなかろうか。
・ごみデータが生まれる仕組み
アフィリエイトブログやキュレーションサイトやテキストスクロール動画など、ごみのような情報や動画はたくさんあるけれど、これらはたいてい金儲けのために他のソースからコピーされたコンテンツである。テキストや動画のデータは無限にコピーできるので、コピーされてつぎはぎされて劣化したコンテンツがウェブ上に氾濫することになる。
技術革新もごみデータの原因になって、VHSテープに録画した昔のテレビ番組とか、解像度が低い古いビデオカメラで撮ったぼやけた動画とかは解像度が高い上位互換の動画が出てくるとごみデータになる。
情報が古くなるのもごみデータの原因になる。事件や事故のニュース記事とかはアーカイブしておく価値があるけれど、天気予報、バーゲン情報、求人情報とかの古くなったら役に立たなくなる記事は時間がたつとごみデータになる。こういうごみデータはウェブサイト側でもアーカイブしておくメリットがないので削除しているけれど、メンテナンスをさぼっている中小企業のサイトには古くて役に立たないごみデータがたまっていたりする。
・ごみデータの埋め立て
Googleは古い情報や役に立たない情報や有害な情報を直接削除できないにしても検索結果の上位に出にくくして、ごみデータの埋め立てのようなことをやっている。自前のサーバーでコンテンツを運用している企業は検索結果に出なくなるとPVが減って、広告代を稼げないごみデータを貯め込んでサーバー代や人件費で赤字になって、サービス終了とともにごみデータも浄化される仕組みになっているけれど、ごみが消えるまでに数年かかる。
・有料ごみデータ処理
無料で使えるサービスでも運営を続けるほど誰も見ないようなごみデータのアーカイブが増えてサーバー代がかさんで広告収入だけだとサービスを維持できなくなるので、ごみ排出者が料金を負担したりする。例えば5ちゃんねるはごみ溜めのような掲示板で、ごみコメントをたくさん投稿してストレスを発散したい人が「浪人」を買ってサービスを維持するビジネスモデルになっている。ニコニコ動画もプレミアム会員でないと生放送を配信できないので、快適にごみ動画を配信したいニコ生主やごみ動画をニラニラ眺めたい視聴者がプレミアム会員になっている。
・ごみデータの堆肥化
YouTuberがだらだら雑談するだけのつまらない動画でも外国語を勉強したい人にはネイティブの方言まじりの言葉が月並みな語学テキストよりも実践的で役に立つように、本来とは違う目的でデータに利用価値が残っている場合がある。ごみ動画やごみテキストでもAIの学習素材としてなら役に立つかもしれない。あるいは言語学的な研究の資料としてどの単語や音節が何回使われたのかとか、流行語がいつ流行っていつ廃れたのかとかの統計をとったりするのに役に立つかもしれない。
・ごみデータの焼却
SNSの炎上は有名人にごみゴシップ記事が火をつけて、Yahooニュースや5ちゃんねるに燃料になるごみコメントが投下されて拡散されて燃え広がる可燃ごみで、炎上が大きいほど有毒ごみコメントを排出する。意図的に火消しをするのは難しいものの、やがて世間の人も批判するネタがなくなって燃え尽きて鎮火して、時間がたってYahooのニュース記事がアーカイブから消えたり、5ちゃんねるのスレ立てがされなくなったりして燃えカスのごみコメントも一緒に消える。有名人は灰をかぶって汚名まみれになるけれど、これは原因があって批判されるので自業自得ともいえる。
・古いコンテンツのリサイクル
古くなって利用価値がなくなったコンテンツはリサイクルすればまた使えるようになる。音楽なら昔の曲の一部をサンプリングしたり、現代風にアレンジしたりして再利用できる。動画ならモノクロ映画のフルカラーリメイクとか、古いアニメの3Dアニメ化リメイクとかで再利用できる。アメコミで作品単体としては賞味期限が切れたものでも「アベンジャーズ」のようにヒーローを総出演させて再利用することができる。「スーパーロボット大戦」も同様の手法で、古いロボットを人気のガンダムと混ぜて再利用している。「艦隊これくしょん」の戦艦の萌え擬人化、ソーシャルゲームの戦国武将の女体化なんかも一種のリサイクルで、大幅に変更することで歴史以外の文脈で古いエンティティを使えるようになった。流行遅れになったファッションコーディネートのスナップ写真とかは流行が一巡したら古いものがかえって目新しくなってまた流行するかもしれない。小説は文章をそのままサンプリングすると剽窃になってしまうし、昔の小説を現代風にリメイクしようにも時代背景が変わってしまうと登場人物の価値観や行動も変わって物語が成立しなくなったりするので再利用しにくい。
・コンテンツ制作の省エネ化
コンテンツ制作にはかなり時間がかかるし、だからこそ無駄な労力を使うのはもったいないし、一人で試行錯誤するよりも先人が体系化した理論や技術を有効に使うほうが制作の労力を省エネ化できる。寿司職人は今まで一人前になるまで何年も下積みをして経験を積むのが一般的で3か月で技術を教える寿司学校に否定的だったけれど、寿司学校卒で技術を学んだ経験が浅い人の店がミシュランに掲載されて、寿司学校の有用性が証明されることになった。これはコンテンツ制作でも同様で、下積み修行で手探りで知識と技術を覚えるのはまったくの無駄ではないにしても非効率な部分がかなりあるわけである。
絵画の場合は光や形を正確にデッサンする技術や色彩学や解剖学などの理論を学ぶし、音楽の場合は変な癖をつけないように正しいフォームやリズムで正確に音を出す技術やコードなどの音楽理論を学ぶ。いったん基礎技術や理論を身に着けてしまえば、あとはどんなテーマで創作をしてもそれなりのクオリティがある仕上がりになる。例えば基礎技術を身に着けた漫画家やアシスタントは作業を分担して一人だと時間がかかりすぎる連載漫画作品を共同制作できるし、基礎技術を身に着けたミュージシャン同士ならコード進行を理解してすぐにいろいろな楽器でセッションできる。基礎技術や理論というのは地味でクリエイティブなところが何もないように見えるけれど、よく行う作業が細分化されてパターン化されているので効率よく制作できるようになって、無駄をなくして制作の省エネ化ができるわけである。あるいは電子楽器を使って効率よく録音してエフェクトをかけたり、イラストソフトを使ってレイヤーを何重にもして効率よく加工や修正したりして、最新機材で制作効率を高めることもできる。
小説の場合はプロ作家や編集者でさえ文学理論を理解していないまま創作したり文学賞の選考をしたりしているので、作品数が多くても質がばらばらでクオリティを保てていない。これは文学理論の研究者が少ないことや、作家ごとに異なる芸術観に基づいて異なる文章作法を教えていることに加えて、小説はたいてい一人で創作するのが原因だろう。絵や音楽と違って小説だと他人の創作の具体的な過程が見えないので、他人のやり方を見て細かい技術を覚えるということができない。小説教室もあるけれど、受講生の作品の添削が中心で文学理論を教えているわけではないようなので、美術予備校や音楽教室のような世界共通の基礎技術や理論を教え込む教室とは趣が異なる。それに小説は他のデジタルコンテンツと違って機材を最新の高性能パソコンにしたりOfficeをアップデートしたりしたところでほとんど創作に影響しないので、なおさら本人の能力次第で作品の質が変化しやすい。従来のやり方が非効率で質の向上につながらないからこそ小説を書く人は文学理論を学ぶべきだと私は思う。こないだ創作の技術について質問があったのだけれど、漫然と小説を書くよりも自分がどのテクニックを使ってどういう書き方をしているのか自覚していれば作中で文体がぶれることもなくなるし、他の作家がどういうテクニックを使っているのか識別できるようになれば違うテクニックで差異化しやすくなるので、うまく小説を書けるようになりたい人は面倒くさがらずに設備投資だと思って基礎的な文学理論だけでも勉強するほうがよいですよ。
★★★☆☆
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