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2026.03.02
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最近は小学館のマンガワンという漫画サイトで犯罪を犯した漫画家がペンネームを変えてこっそり連載していたことが発覚して批判されているので、これについて考えることにした。

●批判の背景

マンガワンで連載していた『堕天作戦』の作者の山本章一(本名栗田和明)は2016年に北海道芸術高等学校札幌でデッサン講師をして16歳の生徒に3年間わいせつ行為をしたり排泄物を食べさせたりして被害者がPTSDや解離性同一性障害を発症して2020年に逮捕されて、わいせつ行為については不同意性交罪導入前で成立要件が厳しいため不起訴となったものの、女性の裸の写真を撮影した件で児童ポルノ法により略式起訴されて30万円の罰金刑を受けて連載休止になった。しかし2022年に一路一にペンネームを変えて『常人仮面』の原作者として連載を始めて、被害者が新連載の中止を希望したものの小学館の編集者が示談交渉に加わって150万円で口止めしようとして、被害者が山本と学校法人に対して1980万円の損害賠償を求めた民事訴訟を起こして2026年2月に判決が出て、被告が和解を主張しても原告が最終的な契約書に署名や押印をしていないことから和解契約は成立していないとみなされて山本に1100万円の賠償命令がされて、判決が報道されたことで事件が明るみになった。
弁護士ドットコムニュースの記事 ​によると山本から被害者への謝罪はなかったようである。未成年の未熟さに付け込んで尊厳を踏みにじった山本の行為は批判されて当然だけれど、示談交渉に参加した小学館の編集者の成田卓哉の対応も批判されている。
3月5日の週刊文春の「​ 【小学館マンガワン問題】被害女性が全告白「私は“性加害漫画家”と小学館を許せない」《漫画家を直撃すると…》 ​」によると、被害者が「小学館は隠蔽ばかりで本当に許せません」と言っていて、山本だけでなく小学館への怒りも強いようである。しかし3月8日の東京共同法律事務所の「​ 札幌地裁判決について ​」で被害者は小学館の取締役からの謝罪を受けて「連載を再開する際には読者の方々の為にも体調不良や療養など虚偽の理由を述べずに休載期間について事実に基づいた説明をしてもらいたい」「小学館に対して強い怒りや恨みを持っているわけではないこと、特に、漫画家さんの作品を小学館から引き揚げて欲しいとも思っていないし、多くの漫画家さんの活躍の場であるマンガワンをなくして貰いたいとも思っていない」とコメントしたように、被害者が怒っているのは休載の理由を隠蔽した部分であって、マンガワンをなくすことは望んでいない。

●批判の是非

・示談交渉の是非
有名人の犯罪の口止めのために示談交渉すること自体は問題ないだろう。しかし示談交渉というのは負い目がある側が相手が納得するほどの高い金額を出す代わりに要求を呑んでもらうもので、1100万円の賠償命令が出たのに比べたら交渉金額の150万円は少なすぎる。PTSDの慰謝料は入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の合計金額になるそうで、この事件の被害者の後遺障害の詳細は私は知らないけれど、Xだと重度のPTSDと解離性同一性障害でトイレに介助が必要だという情報を見かけたし、1100万円の賠償命令が出たことからして相当深刻な被害があると言える。記憶障害などの高次脳機能障害が起きて介護が必要な場合は後遺障害等級第2級で慰謝料は998万円以上、介護は必要ないけれど家事ができないレベルは後遺障害等級第3級で慰謝料は861万円以上が慰謝料の相場になるだろうし、そこに入通院慰謝料と口止め料を上乗せするのなら1500-2000万円くらいで示談交渉して平身低頭して許しを請うのが妥当じゃなかろうか。
児童ポルノ法の罰金を払っただけではまだ被害者にPDSDを負わせたことに対して法的な決着がついていなくて、まず被害者への慰謝料を含めた示談交渉をして、連載しないと慰謝料を払えないから連載させてくれと頼んで和解してから新連載を始めるのが筋だろうに、新連載を始めた後で口止めの交渉をするところに誠意がないし、謝罪せずに作者の年収にも及ばないであろう小銭で卑劣な行為を口止めしようとするのは批判されて当然だろう。
漫画家は若いうちにデビューする人が多くて企業での就労経験がなくて法的な対処とかの一般常識がない場合があるので、担当編集者が漫画家の私生活の問題のサポートにまわって創作に集中できるようにするのは分かる。しかし山本の担当編集者の成田が示談金の150万円が安すぎると気づかないのではサポートになっていない。

・前科者の作品の掲載の是非
前科者の作品を掲載すること自体は違法でないし、マンガワンや小学館というブランドの毀損のリスクを負ってでも作品を掲載したいなら掲載すればよいと思う。例えば山本が小学館にすごい利益をもたらす才能があるので前科があっても連載させるべきだという経営上の判断もありうる。前科者なら一生作品を発表してはいけないのかというとそんなことはないわけで、凶悪な死刑囚にも表現の自由はあるし、基本的人権として保障されるべきものである。被害者が掲載中止を訴えるのはわかるけれど、事件の当事者でない人がしゃしゃり出てきて掲載中止の圧力をかけるのは言論弾圧で、掲載されても読まないというのが第三者として取りうるべき態度である。例えば和月伸宏は2017年に児童買春・ポルノ禁止法違反(単純所持)容疑で書類送検されたことでジャンプスクエアの『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』の連載を休止して、2018年に略式起訴されて罰金を払った後に連載を再開させたけれど、読みたくない人は読まなければいい。しかし前科がある作者の作品を掲載するならば読者に対して事情を明らかにしたうえで批判を覚悟で掲載するべきで、山本章一のペンネームを変えて犯罪がばれないようにしてこっそり掲載するのは被害者に対しても読者に対しても不誠実で、そこは担当編集者の成田の対応が批判されて当然だし、小学館がどこまで事情を把握していたのか不明だけれど知っていてこのやり方を許可したのなら会社のコンプライアンスも批判されて当然である。
小学館への抗議としてマンガワンへの掲載を停止する漫画家も数人いるけれど、それは事件とは直接関係がないし、読者が他の漫画家たちにも圧力をかけて掲載をやめさせようとしたり、マンガワンの味方をするのかと批判するのは筋が違うだろう。

・既存の作品の出荷停止・配信停止の是非
山本の問題が明らかになったことで『常人仮面』の配信と単行本出荷が停止された。出版社の対応としては事態が沈静化するまで作品をなかったことにするのが安全策なのだろうけれど、作者がどんな犯罪をしようが作品自体に問題があるわけではないので、出荷停止することにも批判がある。映画だと俳優が薬物とかで逮捕されたときに公開停止する場合とそのまま公開する場合があるように、必ずしも非公開にする必要はないので意見が分かれる。例えば配信を続ける代わりに原作者に渡る分の収益を被害者への寄付に充てるというやり方もありうる。
漫画の原作と作画が分かれているときに、片方の問題でもう片方が収入を失うのも問題である。世間の人は漫画の原作者と作画担当が『バクマン。』みたいな親しい間柄でコンビを組んでいると誤解している人がいるけれど、実際はほとんど会わない。音楽の演奏家が楽譜だけ見て演奏して作曲者と会う必要がないようなものである。『常人仮面』の作画を担当する鶴吉繪理は「山本氏の件につきまして、私は事前に何も知らされておらず、今回報道やSNSを通じて初めて知りました」「山本氏とは一度マンガワンの会合でお会いしたのみで、やり取りは全て担当の成田氏を通じて行っていました。名義変更での活動についても、何か事情があるものと受け止め、深く踏み込むことはしておりませんでした。そのため、過去の件については全く存じ上げておらず、私自身にとって全てが突然の出来事でした」とコメントしていて、とばっちりで収入を失った形になる。『常人仮面』と似たようなケースでは週刊少年ジャンプに掲載されていた『アクタージュ act-age』は原作のマツキタツヤが強制わいせつの疑いで逮捕されて連載終了して、既刊のコミックスが出荷停止になって電子版も配信停止になって、作画担当の宇佐崎しろには何の責任もないのに収入を失っている。
赤松健がXで「今回問題になっているのは原作者の方であり、作画担当の漫画家さんは全く関係ない。まさに降って湧いたような災難であり、もはやある程度の(例えば機会的な)補償がなされるべきではないか。」とコメントしているのに私は同意で、出版社の判断で出荷停止や配信停止をするのであればその分の補償をするのが筋だと思う。連載中止自体は仕方がないけれど、既刊分の増刷がかからなくなったりウェブ配信の広告収入がなくなった分は出版社が〇年分を〇割補償するとか、問題を起こした側に補償させる契約をするとか、別の原作を優先的に割り当てて仕事の機会を増やすとかの何らかの基準があるほうが収入が不安定な漫画家の保護になってよいと思う。成田が山本が犯罪を犯したことを作画担当に告げていないのも不誠実で、仕事上のリスクになることは契約前に告知するように改めるべきだろう。

・編集者の是非
雑誌の編集者は普通のサラリーマンと働き方が違うので社会人としての一般常識がない人がいるし、漫画雑誌の編集者にはせっかく一流大学を卒業して大手出版社に就職したのに低学歴な漫画家の相手をしたくないと不満を持っている人もいるそうな。出版社の中でも小学館は過去に編集者がいろいろ問題を起こしていて評判が悪くて、マンガワンが小学館のウェブサイトだということが批判を加速させているようで、「週刊少年サンデー」の編集者の武居俊樹がバーで一条ゆかりに酒をかけて笑いものにした事件が蒸し返されたり、漫画家が編集者に失礼な態度を取られたエピソードがわんさか投稿されている。しかし小学館の編集者といっても大勢いて担当する雑誌や編集長が違えば部署の雰囲気や編集者の権限も違うだろうし、小学館全体のガバナンスの問題とマンガワンの編集部・編集者の問題は別個に考えるべきである。
小学館は「​ マンガワンにおける原作者起用について ​」で「弁護士を加えた調査委員会を立ち上げ、連載開始の経緯、編集者の和解協議を含む関わり方など、事実関係及び原因を迅速に解明して参ります。」と言っていて、成田やその上司がどこまで示談交渉やペンネーム変更に関与して責任があるのかはこれから解明されることになるだろう。森川ジョージや赤松健とかに対応を迫る人がいるけれど、日本漫画協会が「報道により、漫画家による性加害およびその対応を巡り、出版社の関与が指摘されております。この事案について、事実関係はいまだ十分に明らかになっていないと受け止めております」と声明を出したように、詳細が不明な段階ではどこが悪くてどうすべきだったのかをあまり批判しようがないだろう。

・部外者の是非
山本の事件に対して読者は部外者にすぎなくて、どうこう言う立場にない。成田卓哉が元マツモトキヨシの社長の成田一夫の息子だからマツモトキヨシを不買すると言っている人をXで見かけたけれど、それは「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」というようなナンセンスな白黒思考で、成田への批判を通り越して無関係なものに憎悪を向けている。こういう人はモンスタークレーマーみたいなもので批判できる対象があれば誰でもよくて、被害者に同情して憤っているのではなくて自分のストレス発散のために被害者を利用しているクズである。小学館と無関係な講談社と契約している森川ジョージに絡んで対応を迫っている人とかが典型的で、俺は怒っているんだぞ、この怒りをどうしてくれるんだ、誠意を見せろ、と誰かを屈服させて満足したいのだろう。部外者が山本や成田を批判してスッキリしたところで事件の被害者が報われるわけでもないし、キャンセルカルチャーで漫画業界から山本を締め出して働く場所がなくなれば山本の資産額によっては慰謝料の支払いが遅れたり払われなくなったりする可能性があるので、本当に被害者に同情して救済したいのなら加害者に怒りを向けるのではなく被害者に慈悲を向けて寄付のためのクラウドファンディングでもやればいい。
*「本文にわいせつ、もしくは公序良俗に反すると判断された表現が含まれています。」とエラーが出て弁護士ドットコムニュースの記事のタイトルの「〇行為」を記述できなかったので、楽天の言葉狩りに抗議する。このくだらない仕様を直さないから楽天はいつまでも三流IT企業なんだよ。






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最終更新日  2026.03.08 20:34:53
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