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私の娘はとにかくごはんをよく食べる。歯がはえると、「てびち」という豚足を煮た大人でもてこずるような沖縄の郷土料理を食べていたし、三歳くらいになって外食をするようになると大人並みに一人前の料理を食べていた。(P8) ここから 「美味しいごはん」 と題されたこの章は 「ごはん」 がのどを通らなくて、生きていることが面倒くさかった本人の体験が語られます。一度目(?)の結婚の相手に 「不倫(?)」 を、された立場として体験した、まあ、カミングアウトのような話なのですが、最後にお子さん、 風花ちゃん に 「ごはん」 の作り方を教えた、こんな話が書かれています。
冷蔵庫には何もなくて、まあ、とりあえず料理の事始めはこれでいいのかなぁと思って、うどんに生卵を落としてネギと揚げ玉をかけただけのぶっかけうどんのつくり方を娘に教える。 かなり切実な 「カミングアウト」 を読んだ後のこの文章なので、ここに出てくる 「夫」 は、二度目(?)の方なのでしょうね、とか何とか、つまらぬことが浮かびます。しかし、そんなことより、今、目の前にいる食いしん坊のお嬢さん、 風花ちゃん が元気に 「たべていること」 を、文章の礎に据えたところに 上間さん の思想の確かさとでもいうものをぼくは感じました。
普段、私も夫もごはんをゆっくりつくるから、あっという間にできたごはんに、「すぐにできた」と娘はびっくりしながら食べはじめ、「カリカリしたのはもうちょっといれたほうがいい」と言った。もう一度冷蔵庫をあけて揚げ玉を取り出しながら、「納豆もあるよ」と声をかけると、「納豆もいれたい」と娘は言って、自分で納豆を丁寧にかきまぜると、それをうどんにのっけて全部ひとりでたいらげた。(P29~30)
目次 各章の題名は童話の世界を感じさせる、何やらファンタジックなイメージですが、なかなかどうして、書かれている文章は、ゆったりと構えながらも 「切ない叫び」 を響かせていて、立ち止まって考え始めることを促す内容でした。
美味しいごはん
ふたりの花泥棒
きれいな水
ひとりで生きる
波の音やら海の音
優しいひと
三月の子ども
私の花
何も響かない
空を駆ける
アリエルの王国
海をあげる
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